JP2008087032A - 熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】実際の鍛造形態に近く再現性の高い熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法を提供する。
【解決手段】熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法において、後方押し出し方式の鍛造形態であり、ワークを組み込んだダイを加熱装置にて鍛造温度より高い温度に加熱した後プレス装置に設置する工程と、該プレス装置に設置したワークを組み込んだダイが徐冷され鍛造温度に達した時点で、上記ワーク上方に上下進退自在に配置されたパンチと上記ワークとの接触面に介在する潤滑剤を介して、上記パンチを用いて鍛造加工を開始する工程と、該鍛造加工時の押し込み荷重を測定することにより潤滑剤の潤滑性を評価する。
【選択図】図1

Description

本発明は熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法に関する。
鍛造加工に用いる潤滑剤は、ワークと金型との間の摩擦係数を下げ、ワークと金型とが直接接触することによる早期焼き付きを防止するために極めて重要な要素である。このため、この潤滑剤の選択は、種々の潤滑剤の中から成形条件やワーク材質に応じて最適なものを選択する必要がある。
実際の鍛造形態を想定した潤滑剤の潤滑性評価方法としては、リング圧縮試験法、前方押し出し法に対応した評価方法、あるいは後方押し出し法に対応した評価方法などがあり、他にも工夫された様々な提案がなされている。
前方押し出し法に対応した評価方法としては、例えば潤滑剤を塗布したワークに一定押し込み量を与えたときの押し込み荷重を測定し、その塗布された潤滑剤の潤滑性を評価する方法が知られている(特許文献1)。また、後方押し出し法に対応した評価方法としては、例えば潤滑剤を塗布したワークに一定押し込み量を与えたときの押し込み荷重と引き抜き荷重を測定し、その塗布された潤滑剤の潤滑性を評価する方法が知られている(特許文献2)。
しかし、これらの方法は冷間鍛造用潤滑剤を評価するには適しているが、熱間鍛造用潤滑剤を評価するためには、予め昇温したワークをダイに設置する必要があり、ワークはダイに接触すると即座に冷却され所定の鍛造温度を確保・管理し難いため再現性の高い評価が難しいという問題がある。
一方、チムケン試験と呼ばれる評価方法は、加熱した平板状ワークに回転するリング状金型材を摺接させ、金型材に潤滑剤を連続的に吹き付けて、摩擦係数を測定することにより潤滑剤の潤滑性を評価している(特許文献3)。この評価方法は、高温での潤滑剤の純粋な摩擦特性を評価するには適しているが、実際の鍛造時における表面積拡大に伴う潤滑剤の追従性や局所的な衝撃力への耐性を考慮して評価できないという問題がある。
特開2001−286967号公報 特開2004−012296号公報 特開2005−343948号公報
本発明は、上記課題に対処するためになされたもので、実際の鍛造形態に近く再現性の高い熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法の提供を目的とする。
本発明の熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法は、熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法において、後方押し出し方式の鍛造形態であり、ワークを組み込んだダイを加熱装置にて鍛造温度より高い温度に加熱した後プレス装置に設置する工程と、該プレス装置に設置したワークを組み込んだダイが徐冷され鍛造温度に達した時点で、上記ワーク上方に上下進退自在に配置されたパンチと上記ワークとの接触面に介在する潤滑剤を介して、上記パンチを用いて鍛造加工を開始する工程と、該鍛造加工時の押し込み荷重を測定することにより潤滑剤の潤滑性を評価することを特徴とする。
また、上記ワークを組み込んだダイの徐冷速度を制御する手段をプレス装置に備えることを特徴とする。
また、上記パンチが温度制御手段を有することを特徴とする。
また、上記ワークを組み込んだダイを上記プレス装置に固定し、上記パンチと上記ワークとの接触面に介在する潤滑剤を介して鍛造加工する工程と、該鍛造加工後の引き抜き荷重を測定することにより上記潤滑剤の潤滑性を評価することを特徴とする。
本発明の潤滑性評価方法は、ワークを鍛造温度より高い温度に加熱した後に徐冷して鍛造温度に達した時点で鍛造加工を開始するので、実際の鍛造形態に近い評価形態でありながら、鍛造温度を正確に制御でき、再現性の高い熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価が可能となる。なお、鍛造温度を正確に制御できるので、温間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価にも適用できる。
本発明の潤滑性評価方法に用いる評価装置の一例を図1および図2に示す。図1は評価装置の概要図であり、図2はワーク内にパンチが押し込まれ、後方押し出し方式の鍛造がなされた状態を示す図である。
評価装置は、ワーク1を収容するダイ2が架台8上に固定されている。ワーク1の上方にはワーク1に押し込まれるためのパンチ3が配置されている。パンチ3をワーク1内に押し込むことで、ダイ2の内面に沿ってパンチ3の進行方向と反対の方向にワーク1が押し出され、後方押し出し方式による鍛造加工がなされる。
ダイ2は架台8上に固定され上方に開口部2aを有している。この開口部2aよりワーク1が収容される。ダイ2は取り外し自在に架台8に設置され、架台8にはヒータなどの加熱手段4と引張圧縮両用型ロードセル5が設けられている。また、ダイ2の下部近傍には熱電対などの温度センサー6が設けられて、放射温度計7と連動してダイ2の温度を制御する。放射温度計7はダイ2の温度を無接触で外部から監視している。
加熱手段4は、ダイ2を加熱すると共に、ダイ2を徐冷するときの徐冷速度を制御する。このため、ヒータの容量を変化させる、あるいは場合によっては冷却装置を加熱手段4に設ける。
架台8上へのダイ2の固定は、特に限定されるものではないが、差し込んで半回転させる鍵穴のようなもの、抜き止めピン、または、ねじなどによる固定が例として挙げられる。
パンチ3は、図1の図面上、ワーク2上方に上下進退自在に配置される。また、パンチ3の温度を制御するための加熱手段4および温度センサー6が設けられている。
なお、ダイ2とパンチ3との形態は、実際の後方押し出しより鍛造されるカップ型やステム型に応じて設定できる。例えばダイ2の平面視形状としては、真円、楕円などの円形、四角形、三角形などの多角形に設定でき、パンチ3の断面形状もこの平面視形状に対応して設定できる。
上記評価装置を用いる熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法について説明する。
ダイ2の中にワーク1を収容配置する。ワーク1の形状はダイ2の内面形状と嵌合できる形状とする。
ワーク1が収容されたダイ2を熱間鍛造温度以上に加熱する。加熱手段としては、ダイ2を架台8より取り外して外部恒温槽内で加熱する、架台8に固定したままでヒータなどの加熱手段4により加熱するなどの方法を採用できる。
ワーク1を外部恒温槽内で加熱する場合には、恒温槽から取り出し架台に取り付けるまでの作業時間でダイ2が徐冷されるため、ワーク1の加熱温度は、鍛造温度より30℃以上高い温度であることが好ましい。
本発明の評価方法は、ワーク1をダイ2内に収容して加熱するため、全体として熱容量が大きく、外部加熱後、架台8に設置しても即座に冷却されることはない。また、放射温度計7でワーク1を監視し、所定の鍛造温度となった時点で鍛造を開始できるので、再現性の高い評価方法となる。
熱間鍛造温度以上に加熱されたワーク1は、所定の鍛造温度まで徐冷される。ダイ2の温度を制御するための加熱手段4が架台8に設置されているので、徐冷速度を遅く制御できる。このため、熱容量が小さい小型のワークとダイであっても正確に冷却速度を制御でき、正確な鍛造開始温度を設定できる。
また、ワーク1の結晶状態と鍛造温度とに関連がある場合であっても、冷却速度を制御することで、予め測定された冷却速度と結晶状態との関連をみながら鍛造することができる。
さらに、熱間鍛造用潤滑剤の潤滑特性の温度依存性などについても測定できる。
ワーク1が所定の鍛造温度に達した時点で、パンチ3を用いて鍛造加工を開始する。パンチ3は加熱手段4により鍛造温度に設定する。
本評価方法における鍛造温度は現場の工場等での鍛造加工を模擬して設定できる。例えば、実際の連続熱間鍛造工程においては初期のパンチ温度は常温であっても、連続して熱間鍛造を繰り返すとパンチ温度は摩擦熱と鍛造エネルギーにより発熱し温度が数100℃となる。このような実際の鍛造条件を本発明の評価方法ではパンチ温度を制御することにより再現することができる。
評価するための熱間鍛造用潤滑剤は、鍛造加工の開始前に、パンチ3とワーク1との接触面に介在させる。具体的にはパンチ3またはワーク1の表面に評価対象の鍛造用潤滑剤を塗布する。あるいはパンチ3およびワーク1の両表面に評価対象の鍛造用潤滑剤を塗布する。塗布方法は刷け塗り、スプレ塗布、ディッピング塗装等を用いることができる。塗布量は、実際の後方押し出し方式の鍛造形態により、潤滑剤の表面拡大比などを考慮して定めることができる。塗布時期は、鍛造加工の開始直前、徐冷開始時など、鍛造開始前であればよい。
パンチ3とワーク1との接触面に評価対象の鍛造用潤滑剤を塗布して、パンチ3を図1に示す上下矢印の下方向に移動させることで、パンチ3をワーク1内に押し込む。図2に示すように、パンチ3の押し込み量に応じてワーク1はダイ2の内壁に沿って上部へ押し出されていく。このときの押し込み荷重がロードセル5により測定される。押し込み荷重が大きい場合潤滑性に劣り、押し込み荷重が小さい場合潤滑性に優れることになる。このように、鍛造加工時の押し込み荷重を測定することにより熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性を評価することができる。
本発明においては、ダイ2が架台8に固定できるので、該鍛造加工後にパンチ3の引き抜き荷重を測定することができる。この方法により、実際の鍛造加工に即した熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性を評価できる。
本発明の潤滑性評価方法は、実際の鍛造温度条件で評価できるので、熱間鍛造用潤滑剤の評価に利用できると共に、ワークと潤滑剤と鍛造温度条件とを変数とできるので鍛造温度条件の評価にも応用できる。
評価装置の概要図である。 後方押し出し方式の鍛造がなされた状態を示す図である。
符号の説明
1 ワーク
2 ダイ
3 パンチ
4 加熱手段
5 引張圧縮両用型ロードセル
6 温度センサー
7 放射温度計
8 架台

Claims (4)

  1. 熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法において、後方押し出し方式の鍛造形態であり、ワークを組み込んだダイを加熱装置にて鍛造温度より高い温度に加熱した後プレス装置に設置する工程と、該プレス装置に設置した前記ワークを組み込んだダイが徐冷され鍛造温度に達した時点で、前記ワーク上方に上下進退自在に配置されたパンチと前記ワークとの接触面に介在する熱間鍛造用潤滑剤を介して、前記パンチを用いて鍛造加工を開始する工程と、該鍛造加工時の押し込み荷重を測定することにより前記潤滑剤の潤滑性を評価することを特徴とする熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法。
  2. 前記ワークを組み込んだダイの徐冷速度を制御する手段を前記プレス装置に備えることを特徴とする請求項1記載の熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法。
  3. 前記パンチが温度制御手段を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法。
  4. 前記ワークを組み込んだダイを前記プレス装置に固定し、前記パンチと前記ワークとの接触面に介在する潤滑剤を介して鍛造加工する工程と、該鍛造加工後の引き抜き荷重を測定することにより前記潤滑剤の潤滑性を評価することを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法。
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