JP5031508B2 - 苦味が低減されたフェヌグリーク種子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、香辛料として有用な、苦味が低減されたフェヌグリーク種子及びその製造方法および該フェヌグリーク種子を用いた食品に関する。
フェヌグリークはマメ科の1年草である。フェヌグリークの種子はカレー粉に含まれるなど、香辛料として古くから知られている。
フェヌグリーク種子は苦味成分を有することが知られている。非特許文献1には、フェヌグリーク種子の苦味の主成分がフロスタノール型サポニンであるProtodioscinであることが報告されている。一方、フェヌグリーク種子には種々の有用成分が含まれている。例えば特許文献1にはフェヌグリーク種子に4−ヒドロキシイソロイシン(4-OH-Ile)が含まれることが開示されている。4-OH-Ileはインスリン抵抗性の治療に有用であることが知られている(特許文献2)。
フェヌグリーク種子中の苦味成分を除去するための方法として古くから行われている方法は、フェヌグリーク種子を水浸漬し、水を取り換える操作を繰り返すことで、フェヌグリーク種子中の苦味成分を水に溶出させ、苦味を低減するという方法である。しかし、この方法では、苦味以外の含有成分(特に機能性成分と言われている4-OH-Ile等)が共に失われてしまうという大きな欠点がある。
ホワイトアスパラガスやパルミラヤシの苦味成分であるサポニン化合物を減少させる方法として、β-グルコシダーゼを作用させる方法が提案されている(非特許文献2及び3)。しかし非特許文献2には植物あるいは植物の一部の形態を保ち、かつ機能性成分を維持して苦味のみを除去することは言及されていない。また非特許文献3に記載されているパルミラヤシの苦味成分であるフェラベリフェリンは、フェヌグリーク種子の苦味成分とは異なる構造を有していることから、フェヌグリーク種子の苦味除去が可能かどうかは非特許文献3の記載からは理解することができない。
米国特許出願公開第2004/0009247号公報 特表2003−508435号公報 1999年 日本香辛料研究会発表「フェヌグリーク苦味主成分(正村)」 Agric.Biol.Chem.,41(1),1〜8,1977「Isolation and Structure of Furostanol Saponin in Asparagus Edible Shoots」 J Sci Food Agric 1994,65,185-189 「Studies on the Bitter Principle and Debittering of Palmyrah Fruit Pulp 」
本発明は、フェヌグリーク種子に含まれる苦味成分以外の成分に大きな変化を与えることなく、苦味が低減されたフェヌグリーク種子を得ることを目的とする。
また、本発明は、上記フェヌグリーク種子を用いた食品を提供することを目的とする。
本発明者らは驚くべきことに、フェヌグリーク種子の成分を水に溶出させた溶出液にβ-グルコシダーゼを作用させることによって、フェヌグリーク種子の苦味が低減されることを見出した。また、前記フェヌグリーク種子に前記溶出液とβ-グルコシダーゼを吸収させることによって、フェヌグリーク種子から溶出した4-OH-Ileなどの水溶性の有用成分をほとんど失うことがないことを見出した。更に詳細には、フェヌグリーク種子に含まれる苦味成分は、本願出願時においては、フロスタノール型サポニンであるProtodioscinを主成分とすると考えられている(非特許文献1)。本発明の範囲を限定するものではないが、この苦味低減の機構は、溶出液中に含まれる苦味成分であるサポニン化合物がβ-グルコシダーゼによる分解を受け、苦味が消失することによるものと推定される。前記溶出液には苦味成分以外に4-OH-Ileなどの水溶性の有用成分も含まれるが、これらの有用成分はβ-グルコシダーゼ処理により実質的に分解されないため、β-グルコシダーゼ処理後の溶出液を種子自体の持つ吸水力を利用して種子に戻すことにより、苦味を低減しつつ有用成分を実質的に保持したフェヌグリーク種子の製造が可能になることを本発明者らは見出した。これらの知見に基づいて、本発明者らは以下の発明を完成させた。
(1) フェヌグリーク種子に水を加えて前記フェヌグリーク種子の成分を溶出させ、β-グルコシダーゼを添加して、β-グルコシダーゼ添加後に前記成分と前記β-グルコシダーゼとを前記フェヌグリーク種子に吸収させることを特徴とする、苦味が低減されたフェヌグリーク種子の製造方法。
(2) フェヌグリーク種子に水を加えて混合物を形成し、前記混合物中で前記フェヌグリーク種子の成分を前記水に溶出させ、前記混合物中で、前記成分が前記水中に溶出してなる溶出液にβ-グルコシダーゼを添加して、β-グルコシダーゼ添加後に前記溶出液と該溶出液中のβ-グルコシダーゼとを前記フェヌグリーク種子に吸収させることを特徴とする、(1) 記載の方法。
(3) フェヌグリーク種子に水を加えて浸漬させ、前記フェヌグリーク種子の成分を前記水に溶出させ、前記成分が前記水中に溶出してなる溶出液と前記フェヌグリーク種子とを分離し、分離された前記溶出液にβ-グルコシダーゼを添加して、β-グルコシダーゼ添加後に、前記溶出液と該溶出液中のβ-グルコシダーゼとを前記フェヌグリーク種子に吸収させることを特徴とする、(1) 記載の方法。
(4) フェヌグリーク種子の成分を溶出させる工程が、フェヌグリーク種子に水を加えて得られた混合物を加熱する工程であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 前記溶出液にβ-グルコシダーゼを作用させるに当たり、β-グルコシダーゼを前記溶出液に添加するか、或いは予めフェヌグリーク種子及び/又は水に添加することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(6) 前記水の量が、フェヌグリーク種子100重量部に対して30〜600重量部であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(7) 前記水の量が、フェヌグリーク種子100重量部に対して60〜400重量部であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(8) β-グルコシダーゼを作用させた後に、溶出液とβ-グルコシダーゼとを吸収した前記フェヌグリーク種子を乾燥することを更に含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(9) β-グルコシダーゼを作用させた後に失活させることを更に含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(10) (1)〜(9)のいずれかに記載の方法により製造されたフェヌグリーク種子を用いた食品。
本発明により、フェヌグリーク種子に含まれる苦味成分以外の成分の含量に大きな変化を与えることなく、苦味が低減されたフェヌグリーク種子が提供される。
本発明の方法により苦味が低減されたフェヌグリーク種子は通常のフェヌグリーク種子が利用できる用途において利用することができる。
1. フェヌグリーク種子
本発明において原料として用いるフェヌグリーク種子は粉砕などを行っていない状態の種子である。また、浸漬後、芽を出した発芽種子も含むものである。
フェヌグリーク種子の断面の写真を図1Aに、断面構造の模式図を図1Bにそれぞれ示す。図1Bに示すように、フェヌグリーク種子は、中央に子葉があり、子葉の周囲にガラクトマンナンを主成分とする層があり、当該ガラクトマンナン層の周囲を種皮が覆っている構造を有する。
使用するフェヌグリーク種子の水分含量は特に限定されないが、8〜12%程度が好ましく、約10%が最も好ましい。
2. フェヌグリーク種子と溶出液
本発明の方法は、フェヌグリーク種子に水を加えて前記フェヌグリーク種子の成分(サポニンなど)を溶出させ、β-グルコシダーゼを添加して、β-グルコシダーゼ添加後に前記成分と前記β-グルコシダーゼとを前記フェヌグリーク種子に吸収させることを特徴とする。本発明の方法はまた、フェヌグリーク種子に水を加えて前記フェヌグリーク種子の成分(サポニンなど)を溶出させ、溶出された前記成分にβ-グルコシダーゼを作用させ、該作用後に前記成分と前記β-グルコシダーゼとを前記フェヌグリーク種子に吸収させることを特徴とする。
フェヌグリーク種子の水の吸収量はフェヌグリーク種子の3倍以上あり、この吸収量を利用して溶出液の形態でβ-グルコシダーゼ作用後のフェヌグリーク種子の成分とβ-グルコシダーゼとをフェヌグリーク種子に吸収させるのである。その具体的方法として、2つの方法があり、以下にそれぞれの方法について述べる。
第一の方法は、フェヌグリーク種子に水を加えて混合物を形成し、前記混合物中で前記フェヌグリーク種子の成分を前記水に溶出させ、前記混合物中で、前記成分が前記水中に溶出してなる溶出液にβ-グルコシダーゼを添加して、β-グルコシダーゼ添加後に前記溶出液と該溶出液中のβ-グルコシダーゼとを前記フェヌグリーク種子に吸収させる方法である。
この方法の他の実施形態は、フェヌグリーク種子に水を加えて混合物を形成し、前記混合物中で前記フェヌグリーク種子の成分を前記水に溶出させ、前記混合物中で、前記成分が前記水中に溶出してなる溶出液にβ-グルコシダーゼを作用させ、該作用後に前記溶出液と該溶出液中のβ-グルコシダーゼとを前記フェヌグリーク種子に吸収させる方法である。
第二の方法は、フェヌグリーク種子に水を加えて浸漬させ、前記フェヌグリーク種子の成分を前記水に溶出させ、前記成分が前記水中に溶出してなる溶出液と前記フェヌグリーク種子とを分離し、分離された前記溶出液にβ-グルコシダーゼを添加して、β-グルコシダーゼ添加後に、前記溶出液と該溶出液中のβ-グルコシダーゼとを前記フェヌグリーク種子に吸収させる方法である。
この方法の他の実施形態は、フェヌグリーク種子に水を加えて浸漬させ、前記フェヌグリーク種子の成分を前記水に溶出させ、前記成分が前記水中に溶出してなる溶出液と前記フェヌグリーク種子とを分離し、分離された前記溶出液にβ-グルコシダーゼを作用させ、該作用後に、前記溶出液と該溶出液中のβ-グルコシダーゼとを前記フェヌグリーク種子に吸収させる方法である。
これらの方法は、フェヌグリーク種子の成分は早く水中に溶出され、フェヌグリーク種子への水の吸収は長時間を要するので、その時間差を利用し、酵素処理で溶出成分を処理し苦味を低減した溶出液を種子に吸収することにより回収することができる、という技術を使用するものである。回収は前記したフェヌグリーク種子の吸収力を利用して、上記成分が溶出している溶出液とβ-グルコシダーゼを回収する。活性のあるβ-グルコシダーゼがフェヌグリーク種子に回収されると、溶出し得なかったフェヌグリーク種子中の苦味成分が当該β-グルコシダーゼによって処理されて更なる苦味低減に繋がることになる。
フェヌグリーク種子にβ-グルコシダーゼを作用させる方法としては、添加する水にβ-グルコシダーゼを添加混合するか、水を添加した後にβ-グルコシダーゼを添加混合するか、あるいはフェヌグリーク種子にβ-グルコシダーゼを添加混合してβ-グルコシダーゼを作用させる方法等がある。
フェヌグリーク種子は、ガラクトマンナン層を中心として多量に水を吸収保持することができる。
第一の方法では、フェヌグリーク種子に水を加えて混合物を形成し、混合物中でフェヌグリーク種子の成分を水に溶出させる。このとき、水の量によって、ある程度の量の水はフェヌグリーク種子の内部に吸収され、吸収されなかった水はフェヌグリーク種子の外に存在することとなる場合(水の量が比較的多い場合)と、ほとんど全部の水をフェヌグリーク種子の内部に吸収する場合(水の量が比較的少ない場合)がある。前者の場合、フェヌグリーク種子の成分の溶出液は種子の内部と外部の両方に存在することとなる。後者の場合、フェヌグリーク種子の成分の溶出液は種子の内部に大部分が存在することとなる。
第一の方法はこれらのどちらの状態も包含する。第一の方法における水の量としては、フェヌグリーク種子100重量部に対して30重量部以上であれば得に限定されるものではないが、1000重量部以上になってくると使用するβ-グルコシダーゼの量が多くなっていることになる。このことを考慮すると、フェヌグリーク種子100重量部に対して30〜1000重量部(好ましくは30〜600重量部、より好ましくは60〜400重量部、更に好ましくは200〜300重量部)という水の量を例示することができる。殊に、前記水の量が前記した好ましくは30〜500重量部、更に好ましくは200〜300重量部の場合は、ほとんど全部の水をフェヌグリーク種子の内部に吸収する方法を採用する場合に好適である。
第二の方法では、フェヌグリーク種子に水を加えてフェヌグリーク種子を浸漬させることから、ある程度の量の水はフェヌグリーク種子の内部に吸収され、吸収されなかった水はフェヌグリーク種子の外に存在することとなる。第二の方法における水の量としては、フェヌグリーク種子100重量部に対して30〜1000重量部(好ましくは30〜600重量部、より好ましくは300〜700重量部、更に好ましくは300〜600重量部)という水の量を例示することができる。
フェヌグリーク種子の成分(苦味成分を含む)を溶出するための方法としては主として、フェヌグリーク種子と水との混合物を常温付近において長時間保持して苦味成分を水中に溶出させる方法と、フェヌグリーク種子と水との混合物を加熱して比較的短時間で苦味成分を水中に溶出させる方法があり、例えば80〜100℃において1〜20分間加熱することが好ましく、これによってβ-グルコシダーゼの作用による苦味低減を効果的に行うことができる。また、加熱により、フェヌグリーク種子の持つ酵素の失活による特有の青臭みの発生抑制、殺菌などの有利な効果が奏される。また、加熱後の混合物の量を、混合されたフェヌグリーク種子100重量部に対して120〜600重量部(好ましくは200〜400重量部)となるように調整することが好ましい。
なお、フェヌグリーク種子の水中での撹拌は、種子を上下入れ替える程度の弱いものであることが好ましい。撹拌を強く行うと種子が破壊されて外観が悪くなる場合があるからである。
3. β-グルコシダーゼ
本発明に使用するβ-グルコシダーゼとしては、微生物由来、植物由来等、特に限定されるものではないが、微生物由来のものを使用することの方が酵素活性の強さ、基質の適合性の点から好ましく、当該微生物としては、Trichoderma reesei(Trichoderma reesei RUT-C30(ATCC No.56765)、Trichoderma reesei QM9414(ATCC No.26921))を例示することができる。植物由来のものとしては、アーモンド由来のβ-グルコシダーゼが挙げられる。
また、β-グルコシダーゼとしては、精製したβ-グルコシダーゼの他に、β-グルコシダーゼを含む酵素製剤を用いることもできる。酵素製剤としては、微生物由来のMultifect BGL、SPEZYME CP(ジェネンコア協和)、ナリンギナーゼ(田辺製薬)が挙げられる。なお、Multifect BGLやSPEZYME CP(ジェネンコア協和)は液状の酵素製剤であり、ナリンギナーゼは粉末状の酵素製剤である。当該酵素製剤はβ-グルコシダーゼのほかに、マンナナーゼ等の食物繊維分解酵素を含むものが好ましい。食物繊維分解酵素はセルラーゼであってもよい。
β-グルコシダーゼの添加量は特に限定されないが、例えばβ-グルコシダーゼ含有酵素製剤としてSPEZYME CPを使用する場合、フェヌグリーク種子20gに対し、0.001mlから20mlを加えるのが好ましい。また、β-グルコシダーゼ含有酵素製剤としてSPEZYME CPを使用する場合、フェヌグリーク種子1gに対し、0.001mlから20mlを加えてもよい。
4. 酵素反応
本発明の方法は更に、β-グルコシダーゼ作用させ、好ましくはその後乾燥させる。
まず、前記第一の方法では、フェヌグリーク種子を水に浸漬することによって得ることのできる、フェヌグリーク種子と溶出液との混合物にβ-グルコシダーゼを含ませ、該β-グルコシダーゼを苦味成分(サポニン化合物)を含有する溶出液に作用させる。作用させる方法としては、β-グルコシダーゼを前記溶出液に添加するか、又は予めフェヌグリーク種子及び/又は水に添加する方法を採用することができる。例えば、β-グルコシダーゼを前記溶出液に添加する場合は、フェヌグリーク種子の成分を多く溶出させた溶出液にβ-グルコシダーゼを作用させることになる。また、予めフェヌグリーク種子及び/又は水に添加する場合は、添加した水にフェヌグリーク種子の成分を溶出させながらβ-グルコシダーゼを作用させることになる。フェヌグリーク種子に水を添加し、該水中にフェヌグリーク種子の成分が溶出する前にβ-グルコシダーゼを添加して、フェヌグリーク種子の成分を溶出させながらβ-グルコシダーゼを作用させる方法も本発明に含まれる。
溶出液には苦味成分以外にも種々の水溶性成分、例えば4-ヒドロキシ イソロイシン(以下、4-OH イソロイシンと記する。)が含まれており、β-グルコシダーゼによって溶出液中の苦味成分(サポニン化合物)は分解されるが、他の水溶性成分は分解されない。その後、溶出液とβ-グルコシダーゼをフェヌグリーク種子に吸収させ、必要により乾燥させる。乾燥させる場合は、β-グルコシダーゼ作用後の前記混合物全部を乾燥に供してもよいし、β-グルコシダーゼ作用後の混合物から、溶出液とβ-グルコシダーゼを吸収したフェヌグリーク種子と、フェヌグリーク種子外に存在する溶出液を分離し、分離した前記フェヌグリーク種子を乾燥に供してもよい。あるいは、乾燥した前記フェヌグリーク種子を前記分離した溶出液に浸漬して前記フェヌグリーク種子に吸収させた後に乾燥する。これを繰り返すことによって、フェヌグリーク種子の種々の水溶性成分をほとんど残さずに吸収することができることになる。あるいは、前記したように、添加する水の量を少なくすることによって、フェヌグリーク種子外に存在する溶出液がないようにする方法もある。
次に、前記第二の方法では、フェヌグリーク種子の浸漬後に、水を吸収したフェヌグリーク種子と、溶出液(浸漬液)とを分離し、分離した前記溶出液にβ-グルコシダーゼを添加し作用させて溶出液中の苦味成分(サポニン化合物)を分解し、次いでβ-グルコシダーゼ作用後の溶出液と、分離されたフェヌグリーク種子とを再び混合し、溶出液を種子に吸収させた後に、必要により乾燥させる方法である。この方法は、種子の外観が損なわれ難いという利点を有する。分離の手段は特に限定されない。β-グルコシダーゼ作用後の溶出液とフェヌグリーク種子とを混合する方法としては、前記溶出液にフェヌグリーク種子を浸漬し、フェヌグリーク種子に溶出液を吸収させる方法が挙げられる。なお、この方法においては、全ての溶出液が混合に用いられる必要はない。例えば、β-グルコシダーゼ作用後の溶出液にフェヌグリーク種子を浸漬し、一定時間保持して種子に前記溶出液を吸収させ、種子に吸収されなかった溶出液は廃棄し、浸漬液を吸収した種子を乾燥に供してもよい。また、種子に吸収されなかった溶出液を廃棄することなく、前記した乾燥した前記フェヌグリーク種子を吸収されなかった残余の溶出液に再び浸漬して前記フェヌグリーク種子に吸収させた後に乾燥することを繰り返すという方法を採用してもよい。種子に吸収される溶出液を増やすためには、45℃〜55℃の条件で吸水工程が行われることが望ましい。
前記第一の方法、第二の方法のいずれの場合にも、酵素反応は25〜60℃において行われることが好ましい。当該温度が60℃を超える温度になってくると、β-グルコシダーゼの活性が低下する可能性がある。反応時のpHは酵素の至適pHで行うことが好ましい。至適pHは温度に依存して変動することから、温度条件に合わせてpHを適宜設定することが好ましい。
目的の機能を達成した酵素は、他の影響を避けるため、加熱失活させることが好ましい。この失活は90℃以下の温度で行われることが好ましく、例えば90℃において15分間加熱するという条件を掲げることができる。なお、酵素の加熱失活は、乾燥処理の前に行うのが好ましい。
乾燥方法としては、温風乾燥法を用いることが好ましい。温風の温度としては55℃〜90℃が挙げられる。あるいは、乾燥方法として凍結乾燥法を用いることも可能である。乾燥後の水分量の目安としては、水分含量12質量%以下、好ましくは2〜10質量%である。
5. 用途
雑穀ごはんの雑穀、おかしの原料等、他の豆類と同様の食品用途に適している。また、粉末にして香辛料単品として、あるいは各種香辛料と混合して混合香辛料として、あるいはエキスを抽出してそのまま又は粉末として、健康素材として等の用途がある。
[実施例1]
加熱によるシードの苦味除去及び4-OHイソロイシン量測定
(苦味低減種子の作製)
120gの水をなべで沸騰させた後、フェヌグリーク種子(インド産)20gを加え沸騰水中で5分加熱した後、加熱後の混合物の重量が69gになるように水量を微調整した。加水後SPEZYME CP(ジェネンコア協和)を1.9ml添加した。SPEZYME CP添加後に35℃の恒温水槽で3時間インキュベートした。インキュベート中は、スパテラで内容物を1時間おきに撹拌した。インキュベート後、浸漬液から取り出した種子を90℃15分オートクレーブで加熱し、SPEZYME CPを失活させた後、冷却し、60℃2.5時間熱風乾燥に供した。
(種子の吸水の度合い)
この操作において種子は加えた水の80%の水を吸収した。
(苦味の官能評価)
得られた種子10g(乾燥重量)を白米1合に加えて炊飯した。コントロールとして未処理のフェヌグリーク種子10gを白米1合に加えて炊飯した。炊飯した種子入りごはんから種子を各々5粒取り出し、官能評価に供した。パネルは5人とし、コントロールの苦味にする処理区の苦味強度を2点比較法で評価し、コントロールに比べ危険率5%で有意に苦味強度が低いことを苦味低減の判定基準とした。結果、パネル5人全員が処理区の苦味強度が強いと判断した。この結果は、2点比較法で0.1%の危険率で有意差が認められた。
(外観の変化)
当条件で処理した場合、種子の外観が著しく損なわれることはなかった。
(4-OH-Ileの分析)
酵素処理した種子から70%エタノールで4-OH-Ileを抽出した。比較として、未処理種子を70%エタノール中で粉砕し、4-OH-Ileを抽出した。抽出液をアジレント社製HPLC(Agilent 1100シリーズ 1100HPLC)を用いて遊離アミノ酸の分析手法に準じて測定した結果、表1の結果が得られ、4-OH-Ileの量に著しい変化はなかった。
Figure 0005031508
[実施例2]
シードの苦味除去
(苦味低減種子の作製)
水道水58mlに種子20gを入れたものを2つ用意した。片方に、SPEZYME CPを1.9ml添加した。
スパテラで攪拌し、25℃の恒温槽に入れ浸漬した。47時間浸漬した後、種子は加えた水
の80%の水を吸収した。
(苦味の官能評価)
酵素を添加せず同様に浸漬した種子をコントロールとして、浸漬後の種子3粒を口に含み処理区の苦味を評価した。パネルは10人とし、順序効果を考慮して、5人はコントロールから先に検査し、残り5人は酵素処理物から検査した。コントロールの苦味に対する処理区の苦味強度を評価し、2点比較法で、コントロールに比べ危険率5%で有意に苦味強度が低いことを苦味低減の判定基準とした。結果、10人中9人が処理区の苦味が弱いと判断した。2点比較法で5%の危険率で有意差が認められた。
[実施例3]
浸漬時のサポニン溶出の確認
フェヌグリーク種子20gを2つ用意し、一方には、酵素処理区として蒸留水4.1mlを加えた後に酵素SPEZYME CP1.9mlを添加混合する。もう一方には、酵素未処理区として蒸留水6mlを加えた。その後、それぞれのサンプルを35℃で静置し、45分間後にそれぞれのサンプルからサンプリングし、官能とTLCでサポニンの溶出程度を確認した。なお、TLCによる確認とは、フロスタノール型サポニンを含む液をTLCプレート(Silica gel 60F245,Merck 1.05715)に1μlスポットし、Ehrlich試薬で染色することで行う。Ehrlich試薬は、12Nの塩酸20mlにエタノールを80ml加え、ジメチルアミノベンズアルデヒドを2g添加することで調製される。該試薬は、フロスタノール型サポニンを赤色に染色し、βグルコシダーゼにより前記サポニンが分解され減少した場合には染色しない。官能では酵素未処理区では苦味があったが、酵素処理区では苦味が感じられなかった。図2に示すTLCの結果では、酵素未処理区でサポニンの溶出が確認できたが、酵素処理区ではサポニンの溶出がわずかに確認できる。このことから、酵素処理区ではサポニンの溶出はあったが、酵素SPEZYME CPによってサポニンが分解されたために、官能で苦味が感じられなかったものと思われる。
[実施例4]
浸漬液の吸水率を上昇させる工夫を伴ったシードの苦味除去
(苦味低減種子の作製)
120gの水をなべで沸騰させた後、フェヌグリーク種子(インド産)20gを加え沸騰水中で5分加熱した後、加熱後の混合物の重量が73gになるように水量を微調整した。加水後、SPEZYME CP(ジェネンコア協和)を1.9ml添加した。SPEZYME CP添加後に、35℃の恒温水槽で6時間インキュベートした。インキュベート中は、スパテラで内容物を1時間おきに攪拌した。35℃でのインキュベート後に、45℃の恒温水槽で1時間インキュベートしてから、種子に吸水されなかった残りの液体部分を除去した。浸漬液から取り出した種子を90℃15分オートクレーブで加熱し、SPEZYME CPを失活させた後、冷却し、60℃2.5時間熱風乾燥を行った。
(種子の吸水の度合い)
この操作において種子は加えた水の90%を吸収した。
(苦味の官能評価)
得られた種子9g(乾燥重量)を白米2合に加えて炊飯した。コントロールとして未処理のフェヌグリーク種子9gを白米2合に加えて炊飯した。炊飯した種子入りごはんを1.7g秤とり(種子を6粒含むようにした)、官能評価に供した。パネルは5人とし、コントロールの苦味に対する処理区の苦味強度を2点比較法で評価し、コントロールに比べ危険率5%で有意に苦味強度が低いことを苦味低減の判定基準とした。結果、パネル5人全員が処理区の苦味強度が低いと判断した。この結果は、2点比較法で0.1%の危険率で有意差が認められた。
[実施例5]
外観の劣化を抑制する工夫を伴ったシードの苦味低減
(苦味低減種子の作製)
120gの水をなべで沸騰させた後、フェヌグリーク種子(インド産)20gを加え沸騰水中で5分加熱した。冷却してから液体部分16mlと吸水種子48gに分離して、種子は吸水工程まで冷蔵庫に保管しておいた。その後、得られた液体部分にSPEZYME CP(ジェネンコア協和)を1.9ml添加して、55℃の恒温水槽で6時間インキュベートした。その後、吸水工程として酵素処理した液に冷蔵保管していた種子を加えて、45℃の恒温水槽で1時間インキュベートしてから、種子に吸水されなかった残りの液体部分を除去した。この吸水後種子を90℃15分蒸気加熱し、SPEZYME CPを失活させた。得られた種子を冷却してから、60℃2.5時間熱風乾燥を行った。
(結果)
未処理種子、実施例5の種子、及び実施例4の種子の苦味及び外観を比較した。
苦味評価では苦味の強い順に、未処理種子、実施例5の種子、実施例4の種子の順となった。
図3に示した外観写真のように、実施例5の種子は実施例4の種子に比べて、未処理種子により近い外観であった。
[実施例6]
ナリンギナーゼとアーモンド由来のβ―グルコシダーゼで処理
フェヌグリーク種子20gを沸騰水120g中に添加し、5分間加熱した後に、冷却しながら水を添加して全量を67gにした後、種子と水をそれぞれ12.5gに分ける。
上記12.5gを1Nの塩酸によってpH4.5にした後、水部分にナリンギナーゼを2.5g添加した後、70℃で24時間静置する。これとは別に、ナリンギナーゼに替えてアーモンド由来のβ―グルコシダーゼを67.5mg添加すること、pH調整をしないこと以外はすべて上記と同様の方法で行った。また、双方ともに、未処理区を設けた。
その結果、ナリンギナーゼ処理、β―グルコシダーゼ処理ともに、未処理区よりも明らかに苦味が低減した。また、外観は、ナリンギナーゼ処理、β―グルコシダーゼ処理ともに、大きな変化は見られなかった。また、溶出液の吸収率はナリンギナーゼ処理84%、β―グルコシダーゼ処理100%であり、溶出液の全部ないしほとんどがフェヌグリーク種子に吸収されていた。
[実施例7]
酵素添加量の差による苦味低減効果の差
サンプル1:
フェヌグリーク種子20gを沸騰水120gに添加し5分間加熱する。その後、上記フェヌグリーク種子と沸騰水の合計の重さが69gになるように蒸留水を添加し、100倍希釈の酵素SPEZYME CP100μlを添加混合し、35℃で 5日間静置した。
サンプル2:
10倍希釈の酵素SPEZYME CP100μlを添加すること、35℃で2日間静置したこと以外は全てサンプル1と同様の方法で実施した。
サンプル3:
酵素SPEZYME CP100μlを添加すること、35℃で2日間静置したこと以外は全てサンプル1と同様の方法で実施した。
サンプル4:
フェヌグリーク種子と沸騰水の重さを51gとすること、酵素SPEZYME CP20mlを添加すること、35℃で3時間静置したこと以外は全てサンプル1と同様の方法で実施した。
比較サンプル:
フェヌグリーク種子と沸騰水の重さを71gにすること、酵素SPEZYME CPを添加しないこと以外は全てサンプル1と同様の方法で実施した。
上記4サンプルと比較サンプルとの苦味を確認したところ、上記4サンプルはすべて比較サンプルよりも明らかに苦味が低減していた。また、外観上の大きな変化は見られなかった。また、溶出液の吸収率は酵素SPEZYME CP量が1μl、10μl、100μl、未処理の場合が100%で、酵素SPEZYME CP量20mlの場合は約47%の吸収率であった。
[実施例8]
フェヌグリーク100重量部に対して、加水量30重量部、60重量部の効果確認
加水量30重量部:
フェヌグリーク種子20g に4.1gの水を加え、酵素SPEZYME CP 1.9mlを添加混合し、35℃で72時間、静置する。この間にフェヌグリーク種子の一部を3時間と72時間で採取して評価した。フェヌグリーク20gに水を6g加え、同条件で静置したものを未処理品とした。
加水量60重量部:
フェヌグリーク種子20g に10.1gの水を加え、酵素SPEZYME CP 1.9mlを添加混合し、35℃で72時間、静置する。この間にフェヌグリーク種子の一部を3時間と72時間で採取して評価した。フェヌグリーク20gに水を12g加え、同条件で静置したものを未処理品とした。
3時間静置した酵素処理フェヌグリーク種子(加水量30重量部と加水量60重量部)では未処理フェヌグリーク種子と比べて苦味低減効果は、官能的には区別し難いものであったが、72時間静置では酵素処理フェヌグリーク種子(加水量30重量部と加水量60重量部)は、未処理フェヌグリーク種子よりも明らかに苦味が低減していた。
次に、フェヌグリーク種子中のサポニンについて確認した。まず、3時間、72時間静置後の種子をそれぞれ20粒とり、メタノール2mlで粗抽出した液をTLCプレート(Silica gel 60F245,Merck 1.05715)にごく少量(1μl)滴下後乾燥させ、スポットを形成した後に、Ehrlich試薬で染色した。結果を図4に示す。その結果、静置後3時間では、30重量部、60重量部ともにスポットが染色され、フロスタノール型サポニンが残存していたが、72時間後においては、酵素処理品の種子の抽出液のスポットはほとんど染色されず、フロスタノール型サポニンが残存していないと判断できた。一方未処理品は、72時間経過しても、染色度合いに変化はなかった。
また、加水量30重量部と加水量60重量部では、加水量60重量部の方が苦味低減効果は優れていた。また、外観上の大きな変化は見られなかった。また、溶出液の吸収率はすべてのサンプルで100%であった。すなわち、フェヌグリーク種子を3時間静置することにより添加した水をほとんど全部吸収したが、苦味は低減されていなかったが、72時間後には苦味が明らかに低減していたという事実から、上記添加した水の吸収時に酵素SPEZYME CPも一緒に吸収されて、フェヌグリーク種子中でも酵素SPEZYME CPが活動していたということが言える。
[実施例9]
加水量400重量部での苦味低減の確認
フェヌグリーク種子20gに水78.1gと酵素SPEZYME CP1.9mlを添加混合し、35℃で24時間静置して酵素処理区とする。これとは別に、フェヌグリーク種子20gに水80gを添加混合し、35℃で24時間静置して未酵素処理区とする。得られた酵素処理区と未酵素処理区では、酵素処理区が未酵素処理区よりも明らかに苦味が低減していた。また、外観については大きな変化は見られなかった。また、溶出液の吸収率では酵素処理区が61%であったが、酵素処理区の4-OH-Ileについては、フェヌグリーク種子20gに含まれる4-OH-Ileの量が108mgで、残存している溶出液に含まれる4-OH-Ileの量が13.2mgであることから、酵素処理区のフェヌグリーク種子には87.8%の4-OH-Ileが含まれていることになり、浸漬による4-OH-Ileの減少が低く抑えられている。
参考例:加水量1000重量部での苦味低減の確認
フェヌグリーク種子20gに水198.1gと酵素SPEZYME CP1.9mlを添加混合し、35℃で24時間静置して酵素処理区とする。これとは別に、フェヌグリーク種子20gに水200gを添加混合し、35℃で24時間静置して未酵素処理区とする。得られた酵素処理区と未酵素処理区では、酵素処理区が未酵素処理区よりも苦味が低減していた。また、溶出液の吸収率では酵素処理区が34%であったが、酵素処理区の4-OH-Ileについては、フェヌグリーク種子20gに含まれる4-OH-Ileの量が108mgで、残存している溶出液に含まれる4-OH-Ileの量が6.4mgであることから、酵素処理区のフェヌグリーク種子には94.1%の4-OH-Ileが含まれていることになり、浸漬による4-OH-Ileの減少が低く抑えられている。しかしながら外観はわずかに変形していた。
[実施例10]
処理方法のバラエティ
フェヌグリーク種子20gに水12gを添加し、オートクレーブで90℃、5分間加熱処理した後、全量の重さが69gになるように冷却しながら蒸留水を加える。これを2つ用意した後、一方に酵素SPEZYME CP1.9mlを添加混合し、もう一方に蒸留水1.9mlを添加混合した(それらを酵素処理区、未処理区とする)後に、双方を35℃で5時間静置する。その後、官能と溶出液の吸収率を確認した。その結果、官能では酵素処理区が酵素未処理区よりも明らかに苦味が低減していた。一方、溶出液の吸収率は酵素処理区で83.8%であった。
[実施例11]
処理方法のバラエティ
フェヌグリーク種子20g に水12gを加え、オートクレーブで90℃、5分間蒸気加熱し、冷却後にフェヌグリーク種子の重量を測り、苦味を確認したとろ、明らかな苦味があった。その後、水道水でフェヌグリーク種子を洗い、4-OH-Ile含量を測定する。その後、当該フェヌグリーク種子と水の重量が69gになるように蒸留水を加え、酵素SPEZYME CP1.9mlを添加混合と35℃で3時間静置して苦味を確認したとろ、苦味は明らかに低減していた。その後、酵素処理したフェヌグリーク種子を水洗いし、4-OH-Ile含量を測定する。さらに、90℃で15分間蒸気加熱して酵素SPEZYME CPを失活させ、その後、再び水洗いし、4-OH-Ile含量を測定する。4-OH-Ile含量の結果を表2に示す。
Figure 0005031508
[実施例12]
処理方法のバラエティ
フェヌグリーク種子20gを沸騰水120gに添加し5分間加熱する。その後、上記フェヌグリーク種子と沸騰水の合計の重さが69gになるように蒸留水を添加し、さらに、酵素SPEZYME CP1.9mlを添加混合し、35℃で 3時間静置した。静置後、種子を水洗いした後、90℃で15分間蒸気加熱して酵素SPEZYME CPを失活させた。得られた種子は苦味が低減し、外観も維持されていた。
次に、当該酵素処理済みフェヌグリーク種子20粒と未処理のフェヌグリーク種子20粒をそれぞれ20mlの70%エタノール(v/v)で抽出後、3000rpm10分遠心後、上澄液を0.45μMのフィルターでろ過して2種のアミノ酸抽出液を作製した。次に、上記酵素処理済みフェヌグリーク種子から抽出した抽出液中のアミノ酸量を確認するために、未処理のフェヌグリーク種子の抽出液の80%希釈液を比較対照とした。
まず、上記酵素処理済みフェヌグリーク種子から抽出した抽出液をA液、上記80%希釈の未処理のフェヌグリーク種子の抽出液をB液とし、A液とB液を70%エタノール(v/v)で3倍、6倍に希釈した液を用意した。その後、A液、B液、3倍希釈液、6倍希釈液をTLCプレート(Silica gel 60F245,Merck 1.05715)に、ごく少量(1μl)滴下後乾燥させ、スポットを形成した後に、ニンヒドリンで染色した。結果を図5に示す。染色の結果、A液、B液は、各希釈段階で同程度の染色度合いであった。この結果から、上記酵素処理済みフェヌグリーク種子から抽出した抽出液中のアミノ酸量は、未処理のフェヌグリーク種子の抽出液の80%希釈液のアミノ酸量とほぼ同程度ある、すなわち、上記酵素処理済みフェヌグリーク種子を水洗い後の種子は、未処理のフェヌグリーク種子中の80%程度のアミノ酸を維持していることがわかった。なお、アミノ酸の組成がほとんど4-OH-Ileであることは実施例1で確認したとおりである。
[実施例13]
処理方法のバラエティ
フェヌグリーク種子20gを沸騰水120gに添加し5分間加熱する。その後、上記フェヌグリーク種子と沸騰水の合計の重さが69gになるように蒸留水を添加し、さらに、酵素SPEZYME CP1.9mlを添加混合し、35℃で 3時間静置した。静置後、90℃で15分間蒸気加熱して酵素SPEZYME CPを失活し、蒸気温度80℃でサンプルを取り出し、種子を水洗いした。種子の苦味は低減しており、外観も維持されていた。
次に、上記酵素処理済みフェヌグリーク種子から抽出した抽出液をC液、上記80%希釈の未処理のフェヌグリーク種子の抽出液をD液とする以外は実施例12と同一の方法で上記酵素処理済みフェヌグリーク種子を水洗い後のアミノ酸量について確認した。結果を図6に示す。その結果、未処理のフェヌグリーク種子中の80%程度のアミノ酸を維持していることがわかった。
[実施例14]
発芽フェヌグリーク
フェヌグリーク種子20gに蒸留水53.1mlを加え、酵素SPEZYME CP1.9ml を添加混合し恒温槽で25℃で48時間静置して、添加した蒸留水の77.6%を、発芽したフェヌグリーク種子に吸収させ、且つ酵素処理したフェヌグリーク種子を得た。これとは別に、酵素を添加混合しないこと以外は、上記と同様に蒸留水を加えて恒温槽で静置して酵素未処理のフェヌグリーク種子を得た。次に、2つの発芽したフェヌグリーク種子の苦味を確認したところでは、酵素処理した方が明らかに苦味が低減していた。
参考例
実施例1〜14において使用したフェヌグリーク種子の水分含量はいずれも10%であった。
フェヌグリーク種子の断面の写真示す。 フェヌグリーク種子の断面構造の模式図を示す。 実施例3の結果を示す写真である。 未処理種子、実施例5の種子、及び実施例4の種子の外観の写真である。 実施例8での染色結果を示す写真である。 実施例12での染色結果を示す写真である。 実施例13での染色結果を示す写真である。

Claims (9)

  1. フェヌグリーク種子に水を加えて前記フェヌグリーク種子の成分を溶出させ、β-グルコシダーゼを添加して、βグルコシダーゼ添加後に前記成分と前記β-グルコシダーゼとを前記フェヌグリーク種子に吸収させることを特徴とする、苦味が低減されたフェヌグリーク種子の製造方法。
  2. フェヌグリーク種子に水を加えて混合物を形成し、前記混合物中で前記フェヌグリーク種子の成分を前記水に溶出させ、前記混合物中で、前記成分が前記水中に溶出してなる溶出液にβ-グルコシダーゼを添加して、βグルコシダーゼ添加後に前記溶出液と該溶出液中のβ-グルコシダーゼとを前記フェヌグリーク種子に吸収させることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. フェヌグリーク種子に水を加えて浸漬させ、前記フェヌグリーク種子の成分を前記水に溶出させ、前記成分が前記水中に溶出してなる溶出液と前記フェヌグリーク種子とを分離し、分離された前記溶出液にβ-グルコシダーゼを添加して、βグルコシダーゼ添加後に、前記溶出液と該溶出液中のβ-グルコシダーゼとを前記フェヌグリーク種子に吸収させることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  4. フェヌグリーク種子の成分を溶出させる工程が、フェヌグリーク種子に水を加えて得られた混合物を加熱する工程であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. 前記溶出液にβ-グルコシダーゼを作用させるに当たり、β-グルコシダーゼを前記溶出液に添加するか、或いは予めフェヌグリーク種子及び/又は水に添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  6. 前記水の量が、フェヌグリーク種子100重量部に対して30〜600重量部であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記水の量が、フェヌグリーク種子100重量部に対して60〜400重量部であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  8. β-グルコシダーゼを作用させた後に、溶出液とβ-グルコシダーゼとを吸収した前記フェヌグリーク種子を乾燥することを更に含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  9. β-グルコシダーゼを作用させた後に失活させることを更に含む、請求項1〜3のいずれ
    か1項記載の方法。
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