JP5031174B2 - ゴム系重合体組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ゴム系重合体組成物に関するものである。更に詳しくは、耐傷つき性、耐油性及び機械的強度に優れたゴム系重合体組成物に関するものである。
ラジカル架橋性エラストマーとPP等のラジカル架橋性のない樹脂とをラジカル開始剤の存在下、押出機中で溶融混練させながら架橋する、いわゆる動的架橋による熱可塑性エラストマー組成物は、既に公知の技術であり、自動車部品等の用途に広く使用されている。
このようなゴム系組成物として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)により製造されたオレフィン系エラストマー(特許文献1、特許文献2 参照)を用いる動的架橋技術が知られているが、耐傷つき性に劣り、必ずしも市場では満足されていない。
一方、飽和ゴムを用いた動的架橋技術として例えば、オレフィン系共重合ゴムを主体に、水添ジエン系ゴムを補助的に使用し、更に結晶性α−オレフィン系重合体、エチレン系重合体、軟化剤を配合した動的架橋エラストマー組成物(特許文献3 参照)、ポリオレフィン系樹脂、共役ジエン−芳香族ビニル単量体のランダム共重合体またはブロック共重合体を架橋剤の存在下に溶融混合して得られた熱可塑性エラストマー組成物(特許文献4 参照)が知られている。
上記組成物は機械的強度、耐傷つき性、外観及び熱・光安定性が必ずしも充分でないために、実用的使用に耐えるゴム組成物が求められている。水素添加ゴムと熱可塑性樹脂とからなる熱可塑性架橋ゴム組成物も知られている(特許文献5)。しかし、いずれも主要成分である共役ジエン−芳香族ビニル単量体の水素添加共重合体の芳香族ビニル単量体含有量が少ないもののみを用いている組成物であったり、水素添加共重合体の結晶性が高いものを用いている組成物であり、本願発明のような耐傷つき性、耐油性、機械的強度等の物性バランスが不十分なものであった。
特開平8−120127号公報 特開平9−137001号公報 特開平9−302156号公報 特開平3−2240号公報 特開2002−167472号公報
本発明は、このような現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち、耐傷つき性及び機械的強度に優れたゴム系重合体組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者等はゴム系重合体組成物の改良を鋭意検討した結果、特定の架橋性ゴム系重合体を複数個組み合わせることにより、驚くべきことに耐傷つき性、耐油性及び機械的強度が飛躍的に向上する事を見出した。
本発明の組成物は、(A−1)および(A−2)の特定の架橋性ゴム系重合体二種と(B)熱可塑性樹脂とを架橋してなるゴム組成物である。
ここで、異なった構造の共重合体(A−1)と(A−2)が同時に架橋反応の際に存在することが重要である。複数個の共重合体の存在により、両者の相互作用が発現するために、上記共重合体単独の架橋反応により得られたゴム系重合体組成物よりも、本発明のように複数個の共重合体の存在により両者の相互作用が発現するように、同時架橋反応により得られたゴム系組成物の方が、耐傷つき性、耐油性及び機械的強度が飛躍的に向上する事を見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、下記(1)から()の発明に係わる。
(1) (A)芳香族ビニル単量体含有量が50重量%以上、90重量%以下である、共役ジエン系単量体単位と芳香族ビニル単量体単位とを含む共重合体を水素添加してなり、かつ示差走査熱量測定法(DSC法)での結晶化ピーク熱量が2J/g以下である水素添加共重合体(A−1)と、エチレン単位と炭素数3〜20のα−オレフィン単位を含む共重合体(a1)、または少なくとも一種の共役ジエン系単量体の単独重合体ゴムの水素添加ゴム、または芳香族ビニル単量体が5重量%未満である共役ジエン系単量体単位と芳香族ビニル単量体単位を含む共重合体ゴムの水素添加ゴム(a2)から選ばれる一種以上の架橋性ゴム状重合体(A−2)と、(B)熱可塑性樹脂とからなるゴム系重合体組成物であって、(A−1)と(A−2)が同時に架橋されたゴム系重合体組成物。
(2) (a1)がメタロセン触媒を用いて製造された共重合体であることを特徴とする上記(1)に記載のゴム系重合体組成物。
(3) 水素添加共重合体(A−1)の全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加されているか、あるいは側鎖の残存二重結合が5%以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のゴム系重合体組成物。
(4) (A−1)が、芳香族ビニル単量体部分がランダム状に結合したものであることを特徴とする上記(1)〜()のいずれかに記載のゴム系重合体組成物。
(5) (B)が、プロピレン系樹脂である(1)〜(4)のいずれかに記載のゴム系重合体組成物。
(6) (B)が、JIS K6758規定の曲げ弾性率が10〜1000MPaであり、かつプロピレンを主体とした炭素数2及び/または4〜20のα−オレフィンとのランダム共重合プロピレン系樹脂を含有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のゴム系重合体組成物。
(7) (B)がメタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン系樹脂であることを特徴とする上記(5)または(6)に記載のゴム系重合体組成物。
)更に軟化剤(D)を添加した上記(1)〜()のいずれかに記載のゴム系重合体組成物
本発明のゴム系重合体組成物は、優れた耐傷つき性、耐油性及び機械的強度を有している。
以下に本発明の各成分について詳細に説明する。
(A−1)成分
本発明において、(A−1)の水素添加共重合体は、芳香族ビニル単量体が5重量%以上、90重量%以下である、共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体からなる共重合体を水素添加してなる水素添加共重合体である。
上記水素添加共重合体において、必要に応じて、例えば、オレフィン系、メタクリル酸エステル系、アクリル酸エステル系、不飽和ニトリル系、塩化ビニル系単量体等の共役ジエン系単量体と共重合可能な単量体を共重合することができる。
上記共役ジエン系単量体としては、1、3−ブタジエン、イソプレン、2、3−ジメチル−1、3−ブタジエン、1、3−ペンタジエン、2−メチル−1、3−ペンタジエン、1、3−ヘキサジエン、4、5−ジエチル−1、3−オクタジエン、3−ブチル−1、3−オクタジエン、クロロプレン等を挙げることができ、1、3−ブタジエン、イソプレン、1、3−ペンタジエンが好ましく、1、3−ブタジエン、イソプレンが最も好ましい。
また前記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N、N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。上記芳香族単量体は一種または二種以上併用することができる。芳香族ビニル単量体含有量は、5〜90重量%であり、20〜90重量%が好ましく、更に好ましくは50〜80重量%、最も好ましくは60〜80重量%である。芳香族ビニル単量体含有量が50〜90%の場合は、最終的に得られるゴム系重合体組成物の耐磨耗性がより一層向上する。
水素添加共重合体(A−1)において、水素添加前の共役ジエン単量体部分のビニル結合は、分子内に均一に存在していても、分子鎖に沿って増減あるいは減少してもよいし、またはビニル結合含有量の異なった、複数個のブロックを含んでいてもよい。そして、芳香族ビニル単量体または前記共役ジエン単量体と共重合可能な単量体を含む場合は、上記共役ジエン単量体部分の中でランダムに結合することが好ましいが、ブロック状の芳香族ビニル単量体またはその他の単量体を含んでもよい。ブロック状の芳香族ビニル重合体の含有率は、水素添加共重合体中の20重量%以下が好ましく、更に好ましくは10重量%以下である。
上記水素添加共重合体中の全オレフィン性二重結合は、50%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が水素添加され、そして主鎖の残存二重結合が5%以下、側鎖の残存二重結合が5%以下であることが好ましい。このような水素添加共重合体の具体例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ポリイソプレン、ポリ(スチレン−イソプレン)、ポリクロロプレン等のジエン系重合体を部分的または完全に水素添加した共重合体を挙げることができ、特に水素添加ブタジエン系または水素添加イソプレン系ゴムが好ましい。
このような水素添加共重合体は、上述の共重合体を公知の水素添加方法で部分水素添加することにより得られる。例えば、F.L.Ramp、etal、J.Amer.Chem.Soc.、83、4672(1961)記載のトリイソブチルボラン触媒を用いて水素添加する方法、Hung Yu Chen、 J.Polym.Sci.Polym.Letter Ed.、15、271(1977)記載のトルエンスルフォニルヒドラジドを用いて水素添加する方法、あるいは特公昭42−8704号公報に記載の有機コバルト−有機アルミニュウム系触媒あるいは有機ニッケル−有機アルミニュウム系触媒を用いて水素添加する方法等を挙げることができる。
ここで、特に好ましい水素添加の方法は、低温、低圧の温和な条件下で水素添加が可能な触媒を用いる特開昭59−133203号、特開昭60−220147号公報あるいは不活性有機溶媒中にて、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム化合物と、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子またはセシウム原子を有する炭化水素化合物とからなる触媒の存在下に水素と接触させる特開昭62−207303号公報に示される方法である。
また、水素添加共重合体の25℃における5重量%スチレン溶液粘度(5%SV)は、20〜300センチポイズ(cps)の範囲にあることが好ましい。特に好ましい範囲は25〜150cpsである。
そして、水素添加共重合体は非結晶性を有することが好ましく、その指標として、示差走査熱量測定法(DSC法)での結晶化ピーク熱量が2J/g以下である。
本発明において、水素添加共重合体(A−1)中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の水素添加共重合体の割合が30%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下、極めて好ましくは10%以下である。上記割合が30%以下の場合には架橋性が著しく高まり、機械的強度、外観、感触、耐磨耗性及び耐油性が向上する。
本発明において(A−1)中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の水素添加共重合体の割合を制御する方法として、分子量が15万以下の部分が30%以下になるように全体の分子量を高める方法、または分子量15万以下の部分を抽出等の操作で除去する方法、あるいは重合触媒等により選択的に分子量15万以下が生成しない重合方法等が挙げられる。
(A−2)成分
本発明において、(A−2)の架橋性ゴム状重合体は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンからなる共重合体(a1)、または少なくとも一種の共役ジエン系単量体の単独重合体の水素添加ゴム、または芳香族ビニル単量体が5重量%未満である、共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体からなる共重合体ゴムの水素添加ゴム(a2)から選ばれる一種以上の架橋性ゴム状重合体である。
上記(a1)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンおよび炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体である。α−オレフィンとして、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。特に好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンであり、とりわけプロピレン、ブテン−1、オクテン−1が最も好ましい。また(a1)は必要に応じて、不飽和結合を有する単量体を含有することができ、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン、1、4−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン誘導体等の環状ジエン化合物、及びアセチレン類が好ましく、とりわけエチリデンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCP)が最も好ましい。
また(a1)の100℃で測定したムーニー粘度(ML)は、20〜150が好ましく、更に好ましくは50から120である。
本発明において(a1)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、公知のメタロセン系触媒を用いて製造することが好ましい。
一般にはメタロセン系触媒は、チタン、ジルコニウム等のIV族金属のシクロペンタジエニル誘導体と助触媒からなり、重合触媒として高活性であるだけでなく、チーグラー系触媒と比較して、得られる重合体の分子量分布が狭く、共重合体中のコモノマーである炭素数3〜20のα−オレフィンの分布が均一である。
本発明において用いられる(a1)のα−オレフィンの共重合比率が1〜60重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは20〜45重量%である。α−オレフィンの共重合比率が上記範囲では、組成物の引張強度等の機械的強度と柔軟性が向上する。
(a1)の密度は、0.8〜0.9g/cm3の範囲にあることが好ましい。この範囲の密度を有するオレフィン系エラストマーを用いることにより、柔軟性に優れ、硬度の低いエラストマー組成物を得ることができる。
本発明にて用いられる(a1)は、長鎖分岐を有していることが望ましい。長鎖分岐が存在することで、機械的強度を落とさずに、共重合されているα−オレフィンの比率(重量%)に比して、密度をより小さくすることが可能となり、低密度、低硬度、高強度のエラストマーを得ることができる。長鎖分岐を有するオレフィン系エラストマーとしては、USP5278272等に記載されている。
また、(a1)は、室温以上にDSCの融点ピークを有することが望ましい。融点ピークを有するとき、融点以下の温度範囲では形態が安定しており、取扱い性に優れ、ベタツキも少ない。
また、本発明にて用いられる(a1)のメルトインデックスは、0.01〜100g/10分(190℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられ、更に好ましくは0.2〜10g/10分である。上記範囲内では流動性と機械的強度のバランス特性に優れる。
本発明において、前記(a2)は、少なくとも一種の共役ジエン系単量体の単独重合体ゴムを水素添加したゴム状重合体、または芳香族ビニル単量体が5重量%未満である、共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体からなる共重合体を水素添加したゴム状重合体である。
(a2)中の全オレフィン性二重結合は、50%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が水素添加され、そして主鎖の残存二重結合が5%以下、側鎖の残存二重結合が5%以下であることが好ましい。
(a1)における上述の共重合組成比と結晶性に関する要件以外は、(a2)に求められる要件は(a1)と同一である。
(a2)の結晶性に関しては、特に制限はないが、(a2)は結晶性を有することが好ましく、その結晶性の指標である前記DSC法での結晶化ピーク熱量が3J/g以上であることが好ましい。結晶化熱量の制御は、テトラヒドロフラン等の極性化合物の添加または重合温度の制御により行う。結晶化ピーク熱量の低下は、極性化合物を増量するか、または重合温度を低下させて、1、2−ビニル結合を増大させることにより達成される。
(B)成分
本発明において(B)熱可塑性樹脂は、(A)と分散し得るものであればとくに制限はない。たとえば、ポリスチレン系、ポリフェニレンエーテル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリレート系等の単独もしくは二種以上を混合したものを使用することができる。特に熱可塑性樹脂としてオレフィン系樹脂(B−1)が最も好ましく、(B−1)以外の熱可塑性樹脂(B−2)も好適に用いられる。
本発明において上記(B−1)は、エチレン系またはプロピレン系樹脂等の炭素数2〜20であるエチレン及び/またはα−オレフィンの単独もしくは二種以上を含有する共重合樹脂であり、特にプロピレン系樹脂が好ましい。
本発明で最も好適に使用されるプロピレン系樹脂を具体的に示すと、ホモのアイソタクチックポリプロピレン、プロピレンとエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等の他のα−オレフィンとのアイソタクチック共重合樹脂(ブロック、ランダムを含む)等が挙げられる。
本発明において、(B)の中でも、架橋型オレフィン系樹脂(B−1a)であるエチレンとプロピレンとのランダム共重合樹脂等のプロピレン系ランダム共重合樹脂単独または、(B−1a)と分解型オレフィン系樹脂(B−1b)であるプロピレン系ブロック共重合樹脂またはホモポリプロピレン系樹脂との組み合わせが好ましい。このような架橋型オレフィン系樹脂と分解型オレフィン系樹脂の二種のオレフィン系樹脂を組み合わせることにより、外観と機械的強度が更に向上する。
(B−1a)として、例えばエチレンとプロピレンのランダム共重合樹脂を挙げることができ、エチレン成分がポリマー主鎖中に存在する場合は、それが架橋反応の架橋点となり、架橋型オレフィン系樹脂の特性を示す。
(B−1b)はα−オレフィンが主成分であり、ポリマー主鎖中にエチレン単位を含まないことが好ましい。但し、プロピレン系ブロック共重合樹脂のようにエチレン−αオレフィン共重合体が分散相として存在する場合は、分解型オレフィン系樹脂の特性を示す。
(B)は複数個の(B−1a)、(B−1b)成分の組み合わせでも良い。
(B−1a)の中で最も好ましいプロピレンを主体としたα−オレフィンとのランダム共重合樹脂は、高圧法、スラリー法、気相法、塊状法、溶液法等で製造することができ、重合触媒としてZiegler-Natta触媒、メタロセン触媒が好ましい。特に狭い組成分布、分子量分布が要求される場合には、メタロセン触媒を用いたランダム共重合法が好ましい。
ランダム共重合樹脂の具体的製造法は、欧州特許0969043A1または米国特許5198401に開示されており、液状プロピレンを攪拌機付き反応器に導入した後に、触媒をノズルから気相または液相に添加する。次いで、エチレンガスまたはα−オレフィンを反応器の気相または液相に導入し、反応温度、反応圧力をプロピレンが還流する条件に制御する。重合速度は触媒濃度、反応温度で制御し、共重合組成はエチレンまたはα−オレフィンの添加量により制御する。
また、本発明にて好適に用いられるオレフィン系樹脂のメルトインデックスは、0.1〜100g/10分(230℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられる。100g/10分を越えると、熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性、機械的強度が不十分であり、また0.1g/10分より小さいと流動性が悪く、成形加工性が低下して望ましくない。
本発明において、(B)成分の中でも好ましい成分としての前記(B−2)は、例えば、ポリフェニレンエーテル系、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリレート系、ポリウレタン系、スチレン系共重合体等の単独もしくは二種以上を混合した熱可塑性樹脂である。
前記(B−2)として使用する芳香族ポリカーボネートは、芳香族ホモポリカーボネートと芳香族コポリカーボネートより選ぶことができる。製造方法としては、2官能フェノール系化合物に苛性アルカリ及び溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法、あるいは、例えば、二官能フェノール系化合物と炭酸ジエチルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法を挙げることができる。該芳香族ポリカーボネートは粘度平均分子量が1万〜10万の範囲が好適である。
ここで、上記2官能フェノール系化合物は、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等であり、特に2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕が好ましい。本発明において、2官能フェノール系化合物は、単独で用いてもよいし、あるいはそれらを併用してもよい。
本発明において前記(B−2)成分として使用するポリ(メタ)アクリレートは、ポリメタクリレートまたはポリアクリレートであり、(メタ)アクリル酸エステル単量体単独、または上記単量体を主成分に、上記単量体と共重合可能な単量体との共重合体である。このような単量体として、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、主成分の(メタ)アクリル酸エステル以外の炭素数が1〜8のアルキル基からなる(メタ)アクリル酸エステル、α−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、N−置換マレイミド等の単量体が挙げられる。単量体混合物中に占める前記共重合可能な単量体の含量は0〜40重量%である。上記ポリ(メタ)アクリレートの中でも、メタクリル酸メチル80〜99重量%と、アクリル酸メチルまたはアクリル酸ブチル1〜20重量%との共重合体が特に好ましく、公知のラジカル重合法で製造される。
本発明において前記(B−2)成分として使用するスチレン系共重合体は、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル単量体を必須成分とし、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、炭素数が1〜8のアルキル基からなるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、あるいはアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、N−置換マレイミド等の単量体との共重合体である。また必要に応じて、スチレン系共重合体をゴム変性することも可能であり、上記スチレン系共重合体のマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなるゴム変性スチレン系共重合体が好ましい。
このようなゴム変性スチレン系共重合体の例としては、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)等が挙げられる。
本発明において(B−2)成分の一つのポリフェニレンエーテルは、主鎖に芳香環を有し、それらがエーテル結合で結合された単独重合体及び/又は共重合体であり、具体的には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体等が好ましく、中でもポリ(2,6−ジメチル−1、4−フェニレンエーテル)が好ましい。
かかるポリフェニレンエ−テルの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3,306,874号明細書記載の方法による第一銅塩とアミンの錯体を触媒として用い、例えば2、6キシレノールを酸化重合することにより容易に製造でき、そのほかにも米国特許第3、306、875号明細書、米国特許第3,257,357号明細書、米国特許3,257,358号明細書、及び特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報に記載された方法で容易に製造できる。本発明にて用いる上記ポリフェニレンエ−テルの還元粘度ηsp/c(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.20〜0.70dl/gの範囲にあることが好ましく、0.30〜0.60dl/gの範囲にあることがより好ましい。ポリフェニレンエ−テルの還元粘度ηsp/cに関する上記要件を満たすための手段としては、前記ポリフェニレンエ−テルの製造の際の触媒量の調整などを挙げることができる。
本発明において、(A)と(B)からなるゴム組成物100重量部中の(A)は、1〜99重量%が好ましく、更に好ましくは10〜90重量%、最も好ましくは20〜80重量%である。(A)成分が上記範囲内にある場合は、組成物の機械的強度、柔軟性のバランス特性に優れる。
(C)成分
本発明の組成物は、(C)架橋剤で架橋されることが好まい。(C)は、(C−1)架橋開始剤を必須成分とし、必要に応じて(C−2)多官能単量体、(C−3)単官能単量体を含有する。上記(C)は、(A)と(B)100重量部に対し0.001〜10重量部、好ましくは0.005〜3重量部の量で用いられる。0.001重量部未満では架橋が不十分であり、10重量部を越えると組成物の外観、機械的強度が低下する傾向にある。
ここで、(C−1)架橋開始剤は、有機過酸化物、有機アゾ化合物等のラジカル開始剤等が挙げられ、の具体的な例として、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;
アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドおよびm−トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、およびクミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類;
ならびに、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドおよび1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類を挙げることができる。
これらの化合物の中では、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2、5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
上記(C−1)は、(C)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。1重量%未満では架橋が不十分であり、80重量%を越えると機械的強度が低下する。
本発明において、(C)架橋剤の一つの(C−2)多官能単量体は、官能基としてラジカル重合性の官能基が好ましく、とりわけビニル基がこのましい。官能基の数は2以上であるが、(C−3)との組み合わせで特に3個以上の官能基を有する場合には有効である。
具体例としては、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、P−キノンジオキシム、P、P’−ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニルマレイミド、アリルメタクリレート、N、N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等が好ましく用いられる。特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。これらの多官能単量体は複数のものを併用して用いてもよい。
上記(C−2)は、(C)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられ、上記範囲内では機械的強度が向上する。
本発明において用いられる前記(C−3)は、架橋反応速度を制御するために加えるビニル系単量体であり、ラジカル重合性のビニル系単量体が好ましく、芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体等のエステル系単量体、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体等の不飽和カルボン酸単量体、無水マレイン酸単量体等の不飽和カルボン酸無水物、N−置換マレイミド単量体等を挙げることができる。
上記(C−3)は、(C)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられ、上記範囲内では機械的強度が向上する。
本発明において、最も好ましい(C)架橋剤の組み合わせについては、架橋開始剤として、日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(商品名パーヘキサ25B)または日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3と、多官能単量体として、日本化成(株)製、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)との組み合わせが、機械的強度、後述の(D)が存在する場合に(D)の保持性が優れている。
(D)成分
上記(D)は、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系などの炭化水素からなるプロセスオイルが好ましい。とりわけ、パラフィン系炭化水素主体またはゴムとの相容性の観点からナフテン系炭化水素主体のプロセスオイルが好ましい。熱・光安定性の観点から、プロセスオイル中の芳香族系炭化水素の含有量については、ASTM D2140−97規定の炭素数比率で10%以下であることが好ましく、更に好ましくは5%以下、最も好ましくは1%以下である。
これらの(D)成分は組成物の硬度、柔軟性の調整用に、(A)と(B)100重量部に対して、5〜500重量部、好ましくは10〜150重量部用いる。上記範囲内では柔軟性、加工性、耐オイルのブリード性のバランス特性に優れる。
本発明において、耐磨耗性が要求される場合は、必要に応じて、JIS−K2410規定の25℃における動粘度が5000センチストークス(5×10−3m/sec)以上であるポリオルガノシロキサンを添加することができる。
上記ポリオルガノシロキサンは、粘調な水飴状からガム状の様態であり、アルキル、ビニル及び/またはアリール基置換シロキサン単位を含むポリマーであれば特に制約されない。その中でもポリジメチルシロキサンが最も好ましい。
本発明に用いられるポリオルガノシロキサンの動粘度(25℃)は、5000CS(5×10−3m2/sec)以上であり、更に好ましくは、1万CS(1×10−2m2/sec)以上1000万(10m2/sec)未満、最も好ましくは5万CS(0.05m2/sec)以上200万(2m2/sec)未満である。
本発明において、ポリオルガノシロキサンの添加量は、(A)と(B)との合計100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜10重量部、最も好ましくは0.5〜5重量部である。
本発明の組成物の中でも(A)と(B)からなる組成物が、高温の圧縮永久歪または機械的強度等の高温ゴム特性が要求される場合は、該組成物中の(B)の結晶性を制御することが必要であり、以下で定義する(B)の示差走査熱量測定法(DSC法)での結晶化温度が、110〜150℃の範囲にあり、かつ(B)の結晶化熱量が30〜200J/gの範囲にあることが好ましい。
組成物中での(B)の結晶化温度、結晶化熱量
示差走査熱量測定法(DSC法)により測定した。具体的には、島津製作所(株)製、熱分析装置DSC50を用いて、5mg試料を窒素気流下、室温から30℃/分で昇温し、230℃に到達した後に、直ちに5℃/分で50℃まで降温し、この段階で検出された結晶化ピークから、本願では結晶化温度及び結晶化熱量を求めた。
ここで、結晶化温度はピークトップ温度(℃)であり、結晶化ピーク熱量(J/g)は、ベースラインに対して変化した熱量変化を示す曲線に囲まれたピーク面積から算出した。上記曲線はブロードな曲線または鋭利な曲線のいずれをも含む。また、ピークトップ温度とは、ベースラインと平行に直線を引き、熱量変化を示す曲線との接線との交点を言う。
本発明において、結晶性の制御方法については、結晶性の高いオレフィン系樹脂を用いて本願組成物を製造する方法、または結晶性の低いオレフィン系樹脂に対して結晶性向上剤を添加して本願組成物を製造する方法等があり、制御方法は制限されない。
上記結晶性向上剤は、リン酸エステル塩系、ソルビトール系、カルボン酸塩系で分類される結晶核剤、または無機フィラーが代表的である。
上記結晶核剤の具体例として、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール等を挙げることができる。
また上記無機フィラーの具体例として、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等の単体または、それらの複合体(合金)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、ゼオライト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズの水和物等の無機金属化合物の水和物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、ムーカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、クレー、マイカ、タルク等を挙げることができ、中でも板状フィラーが好ましく、タルク、マイカ、カオリンが特に好ましい。
上記結晶性向上剤の量は、(A)と(B)からなる組成物100重量部に対して、0.01〜200重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜150重量部、最も好ましくは0.1〜100重量部、極めて好ましくは0.1〜50重量部である。
また、本発明の組成物には、その特徴を損ねない程度にその他の無機フィラー、可塑剤、有機・無機顔料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、シリコンオイル、アンチブロッキング剤、発泡剤、帯電防止剤、抗菌剤を含有することが可能である。
本発明の組成物の製造には、通常の樹脂組成物、ゴム組成物の製造に用いられるバンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、2軸押出機、等の一般的な装置を採用することが可能である。とりわけ効率的に動的架橋を達成するためには2軸押出機が好ましく用いられる。2軸押出機は、(A)と(B)とを均一かつ微細に分散させ、さらに他の成分を添加させて、架橋反応を生じせしめ、本発明の組成物を連続的に製造するのに、より適している。
本発明の組成物は、好適な具体例として、次のような加工工程を経由して製造することができる。すなわち、(A)((A−1)および(A−2))と(B)とをよく混合し、押出機のホッパーに投入する。この際(A−1)と(A−2)を押し出し機に同時に添加し、溶融混練することが好ましい。(C)を、(A)と(B)とともに当初から添加してもよいし、押出機の途中から添加してもよい。またオイルを押出機の途中から添加してもよいし、当初と途中とに分けて添加してもよい。(A)と(B)の一部を押出機の途中から添加してもよい。押出機内で加熱溶融し混練される際に、前記(A)と(C)とが架橋反応し、さらに(D)軟化剤を添加して溶融混練することにより架橋反応と混練分散とを充分させたのち押出機から取り出すことにより、本発明の組成物のペレットを得ることができる。
また特に好ましい溶融押出法としては、原料添加部を基点としてダイ方向に長さLを有し、かつL/Dが5から100(但しDはバレル直径)である二軸押出機を用いる場合である。二軸押出機は、その先端部からの距離を異にするメインフィ−ド部とサイドフィード部の複数箇所の供給用部を有し、複数の上記供給用部の間及び上記先端部と上記先端部から近い距離の供給用部との間にニ−ディング部分を有し、上記ニ−ディング部分の長さが、それぞれ3D〜10Dであることが好ましい。
また本発明において用いられる製造装置の一つの二軸押出機は、二軸同方向回転押出機でも、二軸異方向回転押出機でもよい。また、スクリュ−の噛み合わせについては、非噛み合わせ型、部分噛み合わせ型、完全噛み合わせ型があり、いずれの型でもよい。低いせん断力をかけて低温で均一な樹脂を得る場合には、異方向回転・部分噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。やや大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。さらに大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。
本発明の組成物の最も好ましい製造法は、(A)と(B)とを溶融混合後、(C)により架橋する方法である。
本発明において、(A)の架橋度X及び架橋密度Yは、それぞれ架橋度、架橋密度の指標であり、以下のように定義される。前もって組成物中の(A)の重量W0を測定した後に、組成物をキシレン200ml中で20時間リフラックスさせ、溶液をフィルターで濾過し、膨潤組成物の重量(W1)を測定する。次いで、上記膨潤組成物を100℃で真空乾燥後、再度重量(W2)を測定する。このようにしてX、Yは、以下のように算出される。
X=(W2/W0)×100 (%)
Y=W2/W1
X、Yの制御は、(C−1)架橋開始剤、(C−2)及び/または(C−3)からなる架橋助剤の種類、添加量、反応温度、反応方式により行われる。Xの増大のためには、架橋開始剤または架橋助剤を増量し、かつ架橋開始剤の分解温度以上の、できるだけ低温・長時間反応を行うことにより達成される。一方、Yの増大のためには官能基数の多い多官能架橋助剤(C−2)を増量することにより達成される。Yの増大のためにはラジカル重合性のビニル単量体(C−3)を削減することが好ましい。また、反応速度は、(C−2)と(C−3)を併用することにより制御することができる。架橋開始剤、架橋助剤の過度の添加はXは増大すると共に、Yが増大し、本願の要件を満足しない。好ましい組み合わせは、(C−1)/(C−2)/(C−3)の量比が1/1〜5/0〜0.5の範囲が好ましく、更に好ましくは1/1〜4/0〜0.3、最も好ましくは1/1〜3/0〜0.1の範囲にあることである。
また、過度に高活性な架橋開始剤、架橋助剤、または高温反応条件は、XとYが過度増大し、本願の要件を満足しない。そして、(A)に前もって少量(D)を吸収させながら、架橋開始剤、架橋助剤を(A)に配合する事により、架橋反応が穏和に進行するために、Yの増大を抑制しつつ、Xを増大することができる。
本発明のX、Yを達成する具体的な製造方法として、例えば以下の混練度を満足する方法が好ましい。
M=(π2/2)(L/D)D3(N/Q)
10×106≦M≦1000×106
n但し、L:原料添加部を基点としてダイ方向の押出機長(mm)、D:押出機バレル内径(mm)、Q:吐出量(kg/h)、N:スクリュー回転数(rpm)
本発明のX、Yを達成するもう一つの具体的な製造方法として、例えば以下の関係式の溶融温度を満足することが好ましい。即ち、溶融温度T2(℃)で、まず溶融混練し、次いで溶融温度T3(℃)で溶融混練し、とりわけ原料添加口を基点としてダイ方向に長さLを有する溶融押出機において、原料添加口から0.1L〜0.5Lの長さの押出機ゾーンを溶融温度T2(℃)で、まず溶融混練し、次いでその後の押出機ゾーンを溶融温度T3(℃)で溶融混練する。
ここで、特にT1が150〜250℃であることが好ましく、溶融押出機の各ゾーンのT1またはT2は均一温度であっても良いし、または温度勾配を有していても良い。
T1:(C)の1分間半減期温度(℃)
T1−100<T2<T1+40
T2+1<T3<T2+200
本発明のX、Yを達成するには(D)の添加方法が重要であり、具体的な製造方法として、先端部からの距離を異にする一箇所のメインフィ−ド部と複数箇所のサイドフィード可能な供給用部を有する押出機を用い、(A)、(B)、(C)、(D)を溶融混練して動的架橋する際に、(D)を複数箇所のフィード供給用部に分割してフィードすることが好ましい。
ここで、(D)を複数箇所のフィード供給用部に分割してフィードすることが好ましい。(D)を分割フィードことにより、押出機の前段での動的架橋時の溶融粘度が低下して反応速度が抑制され、膨潤度が増大する。(D)の分割回数または添加量により、Yを制御することができる。
こうして得られたオレフィン系ゴム組成物は任意の成形方法で各種成型品の製造が可能である。射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、発泡成形等が好ましく用いられる。
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明する。なお、これら実施例および比較例において、各種物性の評価に用いた試験法は以下の通りである。
1.(A)の水素添加率(%)
NMR法で通常の方法で測定する。
2.結晶化温度、結晶化ピーク熱量
示差走査熱量測定法(DSC法)により測定した。具体的には、日本国(株)マックサイエンス(MAK SCIENCE)製、熱分析装置システムWS002を用いて、10mg試料を窒素気流下、室温から10℃/分で昇温し、100℃に到達した後に、直ちに10℃/分で−100℃まで降温し、この段階で検出された結晶化ピークから、本願では結晶化温度及び結晶化ピーク熱量を求めた。
ここで、結晶化温度はピークトップ温度(℃)であり、結晶化ピーク熱量(J/g)は、ベースラインに対して変化した熱量変化を示す曲線に囲まれたピーク面積から算出した。上記曲線はブロードな曲線または鋭利な曲線のいずれをも含む。また、ピークトップ温度とは、ベースラインと平行に直線を引き、熱量変化を示す曲線との接線との交点を言う。
3.引張破断強度[MPa]
JIS K6251に準じ、23℃にて評価した。
4.耐傷つき性
先端が長さ10mm、幅1mmの長方形で、重さが600gのくさびを高さ5cmからシートに落下させてできた、シートの傷を目視で以下の基準で評価を行なう。
◎ 極めて良好
○ 良好
△ 良好であるが、傷が目立つ
× 傷つきが著しい
また同時にシートの傷をレーザー光で走査して傷深さを測定する。
5.耐油性
前もって2mm厚さの組成物シートの重量W0を測定した後に、組成物シートを80℃の流動パラフィン中で20時間静置した後に、組成物シートの重量(W1)を測定し、以下のように重量変化率を算出する。ここで、数値が小さいほど耐油性が優れていることを示す。
重量変化率=(W1−W0 )/W0×100 (%)
6.架橋度(X)、架橋密度(Y)
(A)のX、Yは、それぞれ架橋度、架橋密度の指標であり、前述のように定義される。
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いた。
(イ)水素添加共重合体(A−1)、水素添加ゴム(a−2)
内容積10リッターの攪拌機付、ジャケット付きオートクレーブを反応器として用いて、ブタジエン/n−ヘキサン溶液(ブタジエン濃度20重量%)を20リッター/hrの速度で、n−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液(濃度5重量%)を70ミリッター/hrで導入し、重合温度110℃でブタジエンの連続重合を実施した。得られた活性重合体をメタノールで失活させ、別の内容積10リッターの攪拌機付、ジャッケット付きの反応器に重合体溶液8リッターを移し、温度60℃にて水素添加触媒としてジ−p−トリルビス(1−シクロペンタジエニル)チタニウム/シクロヘキサン溶液(濃度1ミリリッター/リッター)250ミリリッターと、n−ブチルリチウム溶液(濃度5ミリリッター/リッター)50ミリリッターとを、0℃、2kg/cm2の水素圧下で混合したものを添加し、水素分圧3kg/cm2にて30分間反応させた。得られた水素添加重合体溶液は、酸化防止剤として2、6−ジターシャルブチルヒドロキシトルエンを重合体当たり、0.5部添加して、溶剤を除去した。
この際にブタジエン重合体を水素添加反応条件(水素添加圧力、水素添加温度、時間及び触媒量)を変えて水素添加して水素添加重合体を得た。また結晶化ピーク熱量の制御は、極性化合物テトラヒドロフラン(THF)の添加または重合温度の制御により行う。結晶化ピーク熱量の低下は、極性化合物を増量するか、または重合温度を低下させることにより達成される。そして、水素添加スチレン−ブタジエン共重合体は、前記製造法において、ブタジエンと共にスチレンを添加し同様に重合を行うことにより得られる。
かくして、成分(A−1)としての水素添加共重合体を得た。得られた共重合体の特性を表1に示す。なお、得られた共重合体は、ランダム共重合体である。(HSBC−1〜HSBC−9の略称を用いた。)また同様にして成分(a2)としての水素添加ゴムを得た。その特性を表1に示す。(HBR、HSBRの略称を用いた。)
ここで、HSBC−6〜HSBC−9は、ブタジエン重合部分の1、2−ビニル量が高いものであり、結晶性のないものとなっている。
Figure 0005031174
(ロ)架橋性ゴム状重合体
1)エチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)
a)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(EOR−1)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(EOR−1と称する)
b)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(EOR−2)
通常のチーグラー触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は105である。(EOR−2と称する)
c)エチレンとオクテン−1との共重合体(EOR−3)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造した。共重合体のエチレン/オクテン−1の組成比は、72/28(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(EOR−3と称する)
(ハ)オレフィン系樹脂
(1)ホモポリプロピレン
サンアロマー(株)製、アイソタクチックホモポリプロピレン(PPと称する)
(ニ)架橋剤
1)架橋開始剤(C−1)
日本油脂社製、2、5−ジメチル−2、5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン( 商品名パーヘキサ25B)(POXと称する)
2)多官能単量体(C−2)
日本化成(株)製、トリアリルイソシアヌレート(TAICと称する)
(ホ)パラフィン系オイル(D)
出光興産(株)製、ダイアナプロセスオイル PW−90(MOと称する)
実施例1〜9、 比較例 1〜7
(A−1)成分として、上記表1のHSBC−1〜−9、(A−2)成分として、前記EOR−1〜EOR−3、または上記表1のHBRまたはHSBRを用い、(A−1)及び/または(A−2)/(B)PP/(C−1)POX/(C−2)TAIC/(D)MO(=合計50/50/0.2/0.4/30 重量比)からなる組成物を、バレル中央部に注入口を有した2軸押出機(40mmφ、L/D=47)を用いて以下の条件で製造する。スクリューとしては注入口の前後に混練部を有した2条スクリューを用いた。
このようにして得られた組成物からTダイ押出機を用いて、200℃で2mm厚のシートを作製し、各種評価を行なう。
その結果を表2、3に示す。
(押出条件)
1)溶融押出温度 220℃一定
2)吐出量Q=12kg/h
3)押出機 バレル内径D=25mm
4)押出機長さをL(mm)とした時のL/D=47
5)スクリュー回転数N=280rpm
Figure 0005031174
Figure 0005031174
表1〜4によると、本発明の要件を満足する二種の(A−1)、(A−2)を用い、同時に架橋反応することにより、耐傷つき性、耐油性及び機械的強度に優れたゴム系重合体組成物を得ることができることが分かる。
表3には、表2に記載の実施例1、比較例4、5、7のデータに、ゴム構造の指標である架橋度と架橋密度を併記した。実施例1は二種の(A−1)、(A−2)を等量用い、同時に架橋反応を行なって、得られた組成物であり、比較例4、5はそれぞれ(A−1)単独、(A−2)単独を架橋反応して、得られた組成物であり、比較例7は比較例4、5の組成物を等量溶融ブレンドして、得られた組成物である。その結果を図1、2に示した。比較例4の(A−2)はラボプラストミルでの溶融試験において、架橋ピークはなく、得られた組成物の架橋度、架橋密度はきわめて低い。一方、上記ニ種を用い、同時に架橋反応を行う場合は、加成性を越える、高い架橋度、架橋密度が発現する。この高い架橋度、架橋密度により、優れた引張強度、耐傷性、耐油性が発現する。また、ここで上記ニ種を同時に架橋反応を行うことが重要であり、単独に架橋反応を行った組成物のブレンド(比較例7)では、優れた上記特性が発現しない。
尚、図1は、実施例1、比較例4,5,7の組成物を東洋精機製作所製ラボプラストミルを用いて、設定温度160℃で回転数100rpmの条件で10分間溶融混練した時のトルク(kgm)と時間の温度(℃)の変化を示した図であり、図1中の記号の比較例4は、架橋性ゴム状重合体として(A−1)のみ使用の意であり、同様に比較例5:架橋性ゴム状重合体として(A−2)のみ使用、実施例1:架橋性ゴム状重合体として(A−1)/(A−2)=50/50使用の意である。図2は、比較例4、比較例5、実施例1、比較例7の架橋度、架橋密度の関係を示した図であり、比較例7は、実施例1(A−1)/(A−2)=50/50と同一組成になるように製造した架橋性を見たの意である
本発明の組成物は、自動車用部品、自動車用内装材、エアバッグカバー、機械部品、電気部品、ケーブル、ホース、ベルト、玩具、雑貨、日用品、建材、シート、フィルム等を始めとする用途に幅広く使用可能であり、産業界に果たす役割は大きい。
実施例1、比較例4,5,7の組成物を東洋精機製作所製ラボプラストミルを用いて、設定温度160℃で回転数100rpmの条件で10分間溶融混練した時のトルク(kgm)と時間(分)との温度(℃)の変化を示した図である。 比較例4、比較例5、実施例1、比較例7の架橋度(%)、架橋密度(100Y)とHSBC−1/HBR(wt%)との関係を示した図である。
符号の説明
比較例4:架橋性ゴム状重合体として(A−1)のみ使用。
比較例5:架橋性ゴム状重合体として(A−2)のみ使用。
実施例1:架橋性ゴム状重合体として(A−1)/(A−2)=50/50使用。
比較例7:実施例1(A−1)/(A−2)=50/50と同一組成になるように製造した架橋性ゴム状重合体を使用。

Claims (8)

  1. (A)芳香族ビニル単量体含有量が50重量%以上、90重量%以下である、共役ジエン系単量体単位と芳香族ビニル単量体単位とを含む共重合体を水素添加してなり、かつ示差走査熱量測定法(DSC法)での結晶化ピーク熱量が2J/g以下である水素添加共重合体(A−1)と、エチレン単位と炭素数3〜20のα−オレフィン単位を含む共重合体(a1)、または少なくとも一種の共役ジエン系単量体の単独重合体ゴムの水素添加ゴム、または芳香族ビニル単量体が5重量%未満である共役ジエン系単量体単位と芳香族ビニル単量体単位を含む共重合体ゴムの水素添加ゴム(a2)から選ばれる一種以上の架橋性ゴム状重合体(A−2)と、(B)熱可塑性樹脂とからなるゴム系重合体組成物であって、(A−1)と(A−2)が同時に架橋されたゴム系重合体組成物。
  2. (a1)がメタロセン触媒を用いて製造された共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のゴム系重合体組成物。
  3. 水素添加共重合体(A−1)の全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加されているか、あるいは側鎖の残存二重結合が5%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム系重合体組成物。
  4. (A−1)が、芳香族ビニル単量体部分がランダム状に結合したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム系重合体組成物。
  5. (B)が、プロピレン系樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム系重合体組成物。
  6. (B)が、JIS K6758規定の曲げ弾性率が10〜1000MPaであり、かつプロピレンを主体とした炭素数2及び/または4〜20のα−オレフィンとのランダム共重合プロピレン系樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゴム系重合体組成物。
  7. (B)がメタロセン触媒を用いて製造されたプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項5または6に記載のゴム系重合体組成物。
  8. 更に軟化剤(D)を添加した請求項1〜のいずれかに記載のゴム系重合体組成物
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