JP4213995B2 - 良外観熱可塑性重合体組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性重合体組成物に関するものである。更に詳しくは、機械的強度、外観及び成形性に優れた熱可塑性重合体組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ラジカル架橋性オレフィン系エラストマー等のゴム状重合体とPP等のラジカル架橋性のないオレフィン系樹脂とをラジカル開始剤の存在下、押出機中で溶融混練させながら架橋する、いわゆる動的架橋による熱可塑性エラストマー組成物は、既に公知の技術であり、自動車部品等の用途に広く使用されている。
このようなオレフィン系エラストマーとして、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)またはメタロセン触媒により製造されたオレフィン系エラストマー[特許文献1](特開平8−120127号公報)、[特許文献2](特開平9−137001号公報)が知られている。しかしながら、上記組成物は外観と成形性が必ずしも充分でない。
一方、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との水素添加重合体とを動的に架橋してなる熱可塑性エラストマー組成物[特許文献3](特開平3−2240号公報)が開示されているが、機械的強度、外観及び成形性のバランス特性が充分でなく、実用的使用に耐える熱可塑性重合体組成物が求められている。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−120127号公報
【特許文献2】
特開平9−137001号公報
【特許文献3】
特開平3−2240号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち機械的強度、外観及び成形性に優れた熱可塑性重合体組成物を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は機械的強度、外観及び成形性に優れた熱可塑性重合体組成物を鋭意検討した結果、ゴム状重合体が特定の粒子径を有することにより、驚くべきことに外観だけでなく、機械的強度及び成形性をも飛躍的に向上せしめることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、(A)共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体ゴムの全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加された水素添加ゴムである架橋性ゴム状重合体と、(B)オレフィン系樹脂と、(C)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンからなり、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムとからなる架橋された組成物において、(A)の重量平均粒子径が1〜500nmであり、かつ(A)は芳香族ビニル単量体がブロック構造を有し、水素添加前の共役ジエン系単量体部分のビニル結合が均一に分布していることを特徴とする熱可塑性重合体組成物を提供するものである。
【0006】
以下、本発明に関して詳しく述べる。
本発明の組成物は、特定のゴム形態を有する、(A)架橋性ゴム状重合体と(B)熱可塑性樹脂とからなる架橋された熱可塑性重合体組成物である。
ここで、(A)の重量平均粒子径が1〜500nmであり、好ましくは1〜300nm、より好ましくは5〜200nm、最も好ましくは5〜100nmである。重量平均粒子径が上記範囲にあるときは、機械的強度、外観及び成形性のバランス特性が向上する。このようなゴム形態を得るためには、とりわけ(A)は芳香族ビニル単量体単位、エチレン単量体単位、α−オレフィン単量体単位を含有し、芳香族ビニル単量体単位が、1〜30重量%であり、好ましくは5〜20重量%であり、エチレン単量体単位が、1〜35重量%であり、好ましくは1〜20重量%であり、α−オレフィン単量体単位が、35〜98重量%であり、好ましくは50〜98重量%であり、そのような場合には、外観、機械的強度及び成形性に優れることを見出し、本発明を完成した。
本発明において、(A)の重量平均粒子径は、組成物の超薄切片法により撮影した透過型電子顕微鏡写真中の500個のゴム状重合体の各平均粒子径を測定し、次式により算出した値をいう。但し、各粒子の最大径(長径)d1と最小径(短径)d2との算術平均を各粒子の平均粒子径とする。また、平均粒子径が100μmを越える巨大粒子は本願規定の粒子から除外する。
重量平均粒子径=ΣNi・Di 4 /ΣNi・Di 3
(ここでNiは、粒子径がDiのゴム状重合体粒子の個数である。)
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の各成分について詳細に説明する。
(A)成分
本発明において、(A)架橋性ゴム状重合体は、芳香族ビニル単量体単位、エチレン単量体単位、炭素数3〜20のα−オレフィン単量体単位を含有する架橋性ゴム状重合体であり、上記単量体を直接重合することにより製造しても良いし、または前駆体として、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体等との共重合体を製造した後に、水素添加することにより製造しても良いが、後者の製造法が好ましい。
【0008】
(A)の芳香族ビニル単量体単位、エチレン単量体単位、α−オレフィン単量体単位の組成比は、それぞれ1〜30重量%、1〜35重量%、35〜98重量%であることが好ましい。また芳香族ビニル単量体はブロック構造を有することが好ましく、またエチレン単量体単位、α−オレフィン単量体単位は均一に分布することが好ましい。例えば、α−オレフィンが50重量%含有する時に、25重量%含有するブロックと75重量%含有するブロックを等量存在するより、α−オレフィンが50重量%均一に存在する方が好ましい。
【0009】
(A)として好ましい製造法により得られた水素添加共重合体である、架橋性ゴム状重合体は、芳香族ビニル単量体と、例えば共役ジエン単量体との重合により製造されるが、必要に応じて、例えば、オレフィン系、メタクリル酸エステル系、アクリル酸エステル系、不飽和ニトリル系、塩化ビニル系単量体等の共役ジエンと共重合可能な単量体を共重合することができる。
上記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。上記芳香族単量体は一種または二種以上併用することができる。芳香族ビニル単量体含有量は、0〜80重量%が好ましく、更に好ましくは0〜50重量%、最も好ましくは0〜30重量%である。
【0010】
また前記共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1、3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1、3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等を挙げることができ、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが最も好ましい。
【0011】
(A)としての水素添加共重合体において、水素添加前の共役ジエン単量体部分のビニル結合は、分子内に均一に存在していても、分子鎖に沿って増減あるいは減少してもよいし、またはビニル結合含有量の異なった、複数個のブロックを含んでいてもよいが、(B)との相容性の観点から均一の方が好ましい。そして、芳香族ビニル単量体または前記共役ジエン単量体と共重合可能な単量体を含む場合は、上記共役ジエン単量体部分の中でランダムに結合することが好ましいが、ブロック状の芳香族ビニル単量体またはその他の単量体を含んでもよい。芳香族ビニル重合体はブロック状である方が(B)との相容性に優れる。
【0012】
上記水素添加ゴム中の全オレフィン性二重結合は、50%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が水素添加され、そして主鎖の残存二重結合が5%以下、側鎖の残存二重結合が5%以下であることが好ましい。このようなゴムの具体例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系ゴムを部分的または完全に水素添加したゴム状重合体を挙げることができ、特に水素添加ブタジエン系または水素添加イソプレン系ゴムが好ましい。
【0013】
このような水素添加ゴムは、上述のゴムを公知の水素添加方法で部分水素添加することにより得られる。例えば、F.L.Ramp,etal,J.Amer.Chem.Soc.,83,4672(1961)記載のトリイソブチルボラン触媒を用いて水素添加する方法、Hu ng Yu Chen,J.Polym.Sci.Polym.Letter Ed.,15,271(1977)記載のトルエンスルフォニルヒドラジドを用いて水素添加する方法、あるいは特公昭42−8704号公報に記載の有機コバルト−有機アルミニュウム系触媒あるいは有機ニッケル−有機アルミニュウム系触媒を用いて水素添加する方法等を挙げることができる。
【0014】
ここで、特に好ましい水素添加の方法は、低温、低圧の温和な条件下で水素添加が可能な触媒を用いる特開昭59−133203号、特開昭60−220147号公報あるいは不活性有機溶媒中にて、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム化合物と、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子またはセシウム原子を有する炭化水素化合物とからなる触媒の存在下に水素と接触させる特開昭62−207303号公報に示される方法である。
また、水素添加ゴムの25℃における5重量%スチレン溶液粘度(5%SV)は、20〜300センチポイズ(cps)の範囲にあることが好ましい。特に好ましい範囲は25〜150cpsである。
【0015】
本発明にて用いられる(A)は、複数の種類のものを混合して用いても良い。そのような場合には、加工性のさらなる向上を図ることが可能となる。
本発明において、(A)中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の該重合体の割合が30%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下、極めて好ましくは10%以下である。上記割合が30%以下の場合には架橋性が著しく高まり、機械的強度、外観、感触、耐磨耗性及び耐油性が向上する。
本発明において(A)中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の該重合体の割合を制御する方法として、分子量が15万以下の部分が30%以下になるように全体の分子量を高める方法、または分子量15万以下の部分を抽出等の操作で除去する方法、あるいは重合触媒等により選択的に分子量15万以下が生成しない重合方法等が挙げられる。
【0016】
(B)成分
本発明において(B)熱可塑性樹脂は、(A)と分散し得るものであれば良い。たとえば、ポリスチレン系、ポリフェニレンエーテル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリレート系等の単独もしくは二種以上を混合したものを使用することができる。特に熱可塑性樹脂としてオレフィン系樹脂(B−1)、含酸素、含窒素、含硫黄官能基から選ばれる一種以上の官能基を含有した熱可塑性樹脂(B−2)が好ましい。
【0017】
本発明において上記(B−1)は、エチレン系またはプロピレン系樹脂等の炭素数2〜20であるエチレン及び/またはα−オレフィンの単独もしくは二種以上を含有する共重合樹脂であり、特にプロピレン系樹脂が好ましい。
本発明で最も好適に使用されるプロピレン系樹脂を具体的に示すと、ホモのアイソタクチックポリプロピレン、プロピレンとエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等の他のα−オレフィンとのアイソタクチック共重合樹脂(ブロック、ランダムを含む)等が挙げられる。
【0018】
本発明において、(B)の中でも、(B−1a)架橋型オレフィン系樹脂であるエチレンとプロピレンとのランダム共重合樹脂等のプロピレン系ランダム共重合樹脂単独または、(B−1a)と(B−1b)分解型オレフィン系樹脂であるプロピレン系ブロック共重合樹脂またはホモポリプロピレン系樹脂との組み合わせが好ましい。このような架橋型オレフィン系樹脂と分解型オレフィン系樹脂の二種のオレフィン系樹脂を組み合わせることにより、外観と機械的強度が更に向上する。
【0019】
(B−1a)として、例えばエチレンとプロピレンのランダム共重合樹脂を挙げることができ、エチレン成分がポリマー主鎖中に存在する場合は、それが架橋反応の架橋点となり、架橋型オレフィン系樹脂の特性を示す。
(B−1b)はα−オレフィンが主成分であり、ポリマー主鎖中にエチレン単位を含まないことが好ましい。但し、プロピレン系ブロック共重合樹脂のようにエチレン−αオレフィン共重合体が分散相として存在する場合は、分解型オレフィン系樹脂の特性を示す。
【0020】
(B)は複数個の(B−1a)、(B−1b)成分の組み合わせでも良い。
(B−1a)の中で最も好ましいプロピレンを主体としたα−オレフィンとのランダム共重合樹脂は、高圧法、スラリー法、気相法、塊状法、溶液法等で製造することができ、重合触媒としてZiegler-Natta触媒、シングルサイト、メタロセン触媒が好ましい。特に狭い組成分布、分子量分布が要求される場合には、メタロセン触媒を用いたランダム共重合法が好ましい。
【0021】
ランダム共重合樹脂の具体的製造法は、欧州特許0969043A1または米国特許5198401に開示されており、液状プロピレンを攪拌機付き反応器に導入した後に、触媒をノズルから気相または液相に添加する。次いで、エチレンガスまたはα−オレフィンを反応器の気相または液相に導入し、反応温度、反応圧力をプロピレンが還流する条件に制御する。重合速度は触媒濃度、反応温度で制御し、共重合組成はエチレンまたはα−オレフィンの添加量により制御する。
また、本発明にて好適に用いられるオレフィン系樹脂のメルトインデックスは、0.1〜100g/10分(230℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられる。100g/10分を越えると、熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性、機械的強度が不十分であり、また0.1g/10分より小さいと流動性が悪く、成形加工性が低下して望ましくない。
【0022】
本発明において、(B)の中で好ましい前記(B−2)は、含酸素、含窒素、含硫黄官能基から選ばれる一種以上の官能基を含有した熱可塑性樹脂であり、とりわけカーボネート基、エステル基、アミノ基、アミド基、ウレタン基、ニトリル基、エーテル基、水酸基、エポキシ基、ケトン基、アルデヒド基、カルボン酸基、酸無水物基、ケテン基、メルカプト基から選ばれる一種以上の官能基を含有する熱可塑性樹脂である。例えば、ポリフェニレンエーテル系、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリレート系、ポリウレタン系、スチレン系共重合体等の単独もしくは二種以上を混合した熱可塑性樹脂である。
【0023】
前記(B−2)として使用する芳香族ポリカーボネートは、芳香族ホモポリカーボネートと芳香族コポリカーボネートより選ぶことができる。製造方法としては、2官能フェノール系化合物に苛性アルカリ及び溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法、あるいは、例えば、二官能フェノール系化合物と炭酸ジエチルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法を挙げることができる。該芳香族ポリカーボネートは粘度平均分子量が1万〜10万の範囲が好適である。
【0024】
ここで、上記2官能フェノール系化合物は、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等であり、特に2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕が好ましい。本発明において、2官能フェノール系化合物は、単独で用いてもよいし、あるいはそれらを併用してもよい。
【0025】
本発明において前記(B−2)成分として使用するポリ(メタ)アクリレートは、ポリメタクリレートまたはポリアクリレートであり、(メタ)アクリル酸エステル単量体単独、または上記単量体を主成分に、上記単量体と共重合可能な単量体との共重合体である。このような単量体として、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、主成分の(メタ)アクリル酸エステル以外の炭素数が1〜8のアルキル基からなる(メタ)アクリル酸エステル、α−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、N−置換マレイミド等の単量体が挙げられる。単量体混合物中に占める前記共重合可能な単量体の含量は0〜40重量%である。上記ポリ(メタ)アクリレートの中でも、メタクリル酸メチル80〜99重量%と、アクリル酸メチルまたはアクリル酸ブチル1〜20重量%との共重合体が特に好ましく、公知のラジカル重合法で製造される。
【0026】
本発明において前記(B−2)成分として使用するスチレン系共重合体は、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル単量体を必須成分とし、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、炭素数が1〜8のアルキル基からなるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、あるいはアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、N−置換マレイミド等の単量体との共重合体である。また必要に応じて、ゴム変性することも可能であり、上記スチレン系共重合体のマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなるゴム変性スチレン系共重合体が好ましい。このようなゴム変性スチレン系共重合体の例としては、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)等が挙げられる。
【0027】
本発明において(B−2)成分の一つのポリフェニレンエーテルは、主鎖に芳香環を有し、それらがエーテル結合で結合された単独重合体及び/又は共重合体であり、具体的には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体等が好ましく、中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。かかるポリフェニレンエーテルの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3,306,874号明細書記載の方法による第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば2,6キシレノールを酸化重合することにより容易に製造でき、そのほかにも米国特許第3,306,875号明細書、米国特許第3,257,357号明細書、米国特許3,257,358号明細書、及び特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報に記載された方法で容易に製造できる。本発明にて用いる上記ポリフェニレンエーテルの還元粘度ηsp/c(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.20〜0.70dl/gの範囲にあることが好ましく、0.30〜0.60dl/gの範囲にあることがより好ましい。ポリフェニレンエーテルの還元粘度ηsp/cに関する上記要件を満たすための手段としては、前記ポリフェニレンエーテルの製造の際の触媒量の調整などを挙げることができる。
本発明において、(A)と(B)からなるゴム組成物100重量部中の(A)は、1〜99重量%が好ましく、更に好ましくは10〜90重量%、最も好ましくは20〜80重量%である。(A)成分が上記範囲内にある場合は、組成物の機械的強度、柔軟性のバランス特性に優れる。
【0028】
(C)成分
本発明において、必要に応じて、架橋性ゴム状重合体としてエチレン・α−オレフィン共重合体を添加することができ、例えば(C)エチレンおよび炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体である。α−オレフィンとして、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。中でもヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1が好ましく、特に好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンであり、とりわけプロピレン、ブテン−1、オクテン−1が最も好ましい。また(C)は必要に応じて、不飽和結合を有する単量体を含有することができ、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン、1,4−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン誘導体等の環状ジエン化合物、及びアセチレン類が好ましく、とりわけエチリデンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCP)が最も好ましい。
【0029】
また(C)の100℃で測定したムーニー粘度(ML)は、20〜150が好ましく、更に好ましくは50から120である。
本発明において(C)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、公知のメタロセン系触媒を用いて製造することが好ましい。
一般にはメタロセン系触媒は、チタン、ジルコニウム等のIV族金属のシクロペンタジエニル誘導体と助触媒からなり、重合触媒として高活性であるだけでなく、チーグラー系触媒と比較して、得られる重合体の分子量分布が狭く、共重合体中のコモノマーである炭素数3〜20のα−オレフィンの分布が均一である。
【0030】
本発明において用いられる(C)のα−オレフィンの共重合比率が1〜60重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは20〜45重量%である。α−オレフィンの共重合比率が上記範囲では、組成物の引張強度等の機械的強度と柔軟性が向上する。
(C)の一つのエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、0.8〜0.9g/cm3の範囲にあることが好ましい。この範囲の密度を有するオレフィン系エラストマーを用いることにより、柔軟性に優れ、硬度の低いエラストマー組成物を得ることができる。
【0031】
本発明にて用いられる(C)の一つのエチレン・α−オレフィン共重合体は、長鎖分岐を有していることが望ましい。長鎖分岐が存在することで、機械的強度を落とさずに、共重合されているα−オレフィンの比率(重量%)に比して、密度をより小さくすることが可能となり、低密度、低硬度、高強度のエラストマーを得ることができる。長鎖分岐を有するオレフィン系エラストマーとしては、USP5278272等に記載されている。
【0032】
また、(C)の一つのエチレン・α−オレフィン共重合体は、室温以上にDSCの融点ピークを有することが望ましい。
融点ピークを有するとき、融点以下の温度範囲では形態が安定しており、取扱い性に優れ、ベタツキも少ない。
また、本発明にて用いられる(C)のメルトインデックスは、0.01〜100g/10分(190℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられ、更に好ましくは0.2〜10g/10分である。上記範囲内では流動性と機械的強度のバランス特性に優れる。
【0033】
本発明において、更に(A)(C)以外の架橋性ゴム状重合体を添加することができ、種類については特に制限されない。例えば、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以下であることが好ましく、このようなゴム状重合体は、例えば、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴム及び上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム等の架橋ゴムまたは非架橋ゴム、並びに上記ゴム成分を含有する熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0034】
(D)成分
本発明の熱可塑性重合体組成物は、(D)架橋剤で架橋されることが好ましい。(D)は、(D−1)架橋開始剤を必須成分とし、必要に応じて(D−2)多官能単量体、(D−3)単官能単量体を含有する。上記(D)は、(A)、(B)、(C)100重量部に対し0.001〜10重量部、好ましくは0.005〜3重量部の量で用いられる。上記範囲内では、組成物の外観、機械的強度が向上する。
【0035】
ここで、(D−1)架橋開始剤は、有機過酸化物、有機アゾ化合物等のラジカル開始剤等が挙げられ、の具体的な例として、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;
【0036】
アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドおよびm−トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、およびクミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類;
【0037】
ならびに、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドおよび1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類を挙げることができる。
これらの化合物の中では、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
上記(D−1)は、(D)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。1重量%未満では架橋が不十分であり、80重量%を越えると機械的強度が低下する。
【0038】
本発明において、(D)架橋剤の一つの(D−2)多官能単量体は、官能基としてラジカル重合性の官能基が好ましく、とりわけビニル基がこのましい。官能基の数は2以上であるが、(D−3)との組み合わせで特に3個以上の官能基を有する場合には有効である。具体例としては、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ダイアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、P−キノンジオキシム、P,P’−ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニルマレイミド、アリルメタクリレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等が好ましく用いられる。特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。これらの多官能単量体は複数のものを併用して用いてもよい。
【0039】
上記(D−2)は、(D)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。1重量%未満では架橋が不十分であり、80重量%を越えると機械的強度が低下する。
本発明において用いられる前記(D−3)は、架橋反応速度を制御するために加えるビニル系単量体であり、ラジカル重合性のビニル系単量体が好ましく、芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体等のエステル系単量体、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体等の不飽和カルボン酸単量体、無水マレイン酸単量体等の不飽和カルボン酸無水物、N−置換マレイミド単量体等を挙げることができる。
【0040】
上記(D−3)は、(D)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。1重量%未満では架橋が不十分であり、80重量%を越えると機械的強度が低下する。
本発明において、最も好ましい(D)架橋剤の組み合わせについては、架橋開始剤として、日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン( 商品名パーヘキサ25B)または日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3と、多官能単量体として、日本化成(株)製、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)との組み合わせが、機械的強度、後述の(D)が存在するときの(D)の保持性が優れている。
【0041】
(E)成分
上記(E)軟化剤は、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系などの炭化水素からなるプロセスオイルが好ましい。とりわけ、パラフィン系炭化水素主体またはゴムとの相容性の観点からナフテン系炭化水素主体のプロセスオイルが好ましい。熱・光安定性の観点から、プロセスオイル中の芳香族系炭化水素の含有量については、ASTM D2140−97規定の炭素数比率で10%以下であることが好ましく、更に好ましくは5%以下、最も好ましくは1%以下である。
【0042】
これらの(E)成分は組成物の硬度、柔軟性の調整用に、(A)、(B)、(C)100重量部に対して、5〜500重量部、好ましくは10〜150重量部用いる。上記範囲内では、柔軟性、加工性、耐ブリード性のバランス特性が向上する。
本発明において、耐磨耗性が要求される場合は、必要に応じて、JIS−K2410規定の25℃における動粘度が5000センチストークス(5×10ー3m2/sec)以上であるポリオルガノシロキサンを添加することができる。
【0043】
上記ポリオルガノシロキサンは、粘調な水飴状からガム状の様態であり、アルキル、ビニル及び/またはアリール基置換シロキサン単位を含むポリマーであれば良い。その中でもポリジメチルシロキサンが最も好ましい。
本発明に用いられるポリオルガノシロキサンの動粘度(25℃)は、5000CS(5×10ー3m2/sec)以上であり、更に好ましくは、1万CS(1×10ー2m2/sec)以上1000万(10m2/sec)未満、最も好ましくは5万CS(0.05m2/sec)以上200万(2m2/sec)未満である。
【0044】
本発明において、ポリオルガノシロキサンの添加量は、(A)、(B)、(C)との合計100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜10重量部、最も好ましくは0.5〜5重量部である。
本発明の組成物の中でも(A)、(B)、(C)からなる組成物が、高温の圧縮永久歪または機械的強度等の高温ゴム特性が要求される場合は、該組成物中の(B)の結晶性を制御することが必要であり、以下で定義する(B)の示差走査熱量測定法(DSC法)での結晶化温度が、110〜150℃の範囲にあり、かつ(B)の結晶化熱量が30〜200J/gの範囲にあることが好ましい。
【0045】
組成物中での(B)の結晶化温度、結晶化熱量
示差走査熱量測定法(DSC法)により測定した。具体的には、島津製作所(株)製、熱分析装置DSC50を用いて、5mg試料を窒素気流下、室温から30℃/分で昇温し、230℃に到達した後に、直ちに5℃/分で50℃まで降温し、この段階で検出された結晶化ピークから、本願では結晶化温度及び結晶化熱量を求めた。
【0046】
ここで、結晶化温度はピークトップ温度(℃)であり、結晶化ピーク熱量(J/g)は、ベースラインに対して変化した熱量変化を示す曲線に囲まれたピーク面積から算出した。上記曲線はブロードな曲線または鋭利な曲線のいずれをも含む。また、ピークトップ温度とは、ベースラインと平行に直線を引き、熱量変化を示す曲線との接線との交点を言う。
本発明において、結晶性の制御方法については、結晶性の高いオレフィン系樹脂を用いて本願組成物を製造する方法、または結晶性の低いオレフィン系樹脂に対して結晶性向上剤を添加して本願組成物を製造する方法等があり、制御方法は制限されない。
上記結晶性向上剤は、リン酸エステル塩系、ソルビトール系、カルボン酸塩系で分類される結晶核剤、または無機フィラーが代表的である。
【0047】
上記結晶核剤の具体例として、リン酸2、2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール等を挙げることができる。 また上記無機フィラーの具体例として、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等の単体または、それらの複合体(合金)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、ゼオライト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズの水和物等の無機金属化合物の水和物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、ムーカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、クレー、マイカ、タルク等を挙げることができ、中でも板状フィラーが好ましく、タルク、マイカ、カオリンが特に好ましい。
【0048】
上記結晶性向上剤の量は、(A)と(B)からなる組成物100重量部に対して、0.01〜200重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜150重量部、最も好ましくは0.1〜100重量部、極めて好ましくは0.1〜50重量部である。
また、本発明の組成物には、その特徴を損ねない程度に無機フィラーおよび可塑剤を含有することが可能である。ここで用いる無機フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、カーボンブラック、ガラス繊維、酸化チタン、クレー、マイカ、タルク、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。また、可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ジオクチルフタレート(DOP)等のフタル酸エステル等が挙げられる。また、その他の添加剤、例えば、有機・無機顔料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、シリコンオイル、アンチブロッキング剤、発泡剤、帯電防止剤、抗菌剤等も好適に使用される。
【0049】
本発明におけるゴム状重合体の粒子径の制御は、(A)と(B)の溶融粘度比、架橋開始剤、架橋助剤の種類、添加量、反応温度、反応方式により行われる。小粒子であり、好ましくは均一粒子(即ち、粒子長径d1と粒子短径d2との比が1に近づける)であるためには、高せん断力下で、かつ架橋速度を抑制することが重要である。具体的には、200℃、せん断速度1000 1/secでの(A)と(B)の溶融粘度比ηA/ηBが0.5〜5の範囲になる組み合わせを選定し、かつ架橋開始剤または架橋助剤を減量し、かつ架橋開始剤の分解温度以上の、できるだけ低温・長時間反応を行うことにより達成される。また架橋助剤として多官能単量体と単官能単量体の併用によっても達成することができる。架橋開始剤、架橋助剤の過度の添加、または、過度に高活性な架橋開始剤、架橋助剤、または高温反応条件は、ゴム状重合体の凝集が発生し、本願の要件を満足しない。そして、(A)または(C)に前もって少量(E)軟化剤を吸収させながら、架橋開始剤、架橋助剤を(A)に配合する事により、架橋反応が穏和に進行するために、小粒子で均一粒子を生成させることができる。
【0050】
更に良好な外観と機械的強を達成するためには、以下の関係式の溶融温度を満足することが好ましい。即ち、溶融温度T1(℃)で、まず溶融混練し、次いで溶融温度T2(℃)で溶融混練し、とりわけ原料添加口を基点としてダイ方向に長さLを有する溶融押出機において、原料添加口から0.1L〜0.5Lの長さの押出機ゾーンを溶融温度T1(℃)で、まず溶融混練し、次いでその後の押出機ゾーンを溶融温度T2(℃)で溶融混練する。
【0051】
ここで、特にT1が150〜250℃であることが好ましく、溶融押出機の各ゾーンのT1またはT2は均一温度であっても良いし、または温度勾配を有していても良い。中でもT1/2より30℃低い温度からT1/2より30℃高い温度で架橋度30%以上に架橋することが極めて好ましい。
T1/2:(D)の1分間分解半減期温度(℃)
T1/2−100<T1<T1/2+40
T1+1<T2<T1+200
【0052】
本発明の組成物は、先に説明した(A)架橋性ゴム状重合体、(B)オレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂、(E)軟化剤を特定の組成比で組み合わせることにより、機械的強度と柔軟性、加工性のバランスが改善され、好ましく用いることができる。
本発明の組成物の製造には、通常の樹脂組成物、ゴム組成物の製造に用いられるバンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、2軸押出機、等の一般的な方法を採用することが可能である。とりわけ効率的に動的架橋を達成するためには2軸押出機が好ましく用いられる。2軸押出機は、(A)、(B)、(C)とを均一かつ微細に分散させ、さらに他の成分を添加させて、架橋反応を生じせしめ、本発明の組成物を連続的に製造するのに、より適している。
【0053】
本発明の組成物は、好適な具体例として、次のような加工工程を経由して製造することができる。すなわち、(A)、(B)、(C)とをよく混合し、押出機のホッパーに投入する。(D)を、(A)、(B)、(C)とともに当初から添加してもよいし、押出機の途中から添加してもよい。またオイルを押出機の途中から添加してもよいし、当初と途中とに分けて添加してもよい。(A)、(B)、(C)の一部を押出機の途中から添加してもよい。押出機内で加熱溶融し混練される際に、前記(A)と(C)と、(D)が架橋反応し、さらに(E)軟化剤を添加して溶融混練することにより架橋反応と混練分散とを充分させたのち押出機から取り出すことにより、本発明の組成物のペレットを得ることができる。
【0054】
また特に好ましい溶融押出法としては、原料添加部を基点としてダイ方向に長さLを有し、かつL/Dが5から100(但しDはバレル直径)である二軸押出機を用いる場合である。二軸押出機は、その先端部からの距離を異にするメインフィード部とサイドフィード部の複数箇所の供給用部を有し、複数の上記供給用部の間及び上記先端部と上記先端部から近い距離の供給用部との間にニーディング部分を有し、上記ニーディング部分の長さが、それぞれ3D〜10Dであることが好ましい。
【0055】
また本発明において用いられる製造装置の一つの二軸押出機は、二軸同方向回転押出機でも、二軸異方向回転押出機でもよい。また、スクリューの噛み合わせについては、非噛み合わせ型、部分噛み合わせ型、完全噛み合わせ型があり、いづれの型でもよい。低いせん断力をかけて低温で均一な樹脂を得る場合には、異方向回転・部分噛み合わせ型スクリューが好ましい。やや大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリューが好ましい。さらに大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリューが好ましい。
【0056】
本発明の組成物の製造方法において、以下の混練度を満足することがより好ましい。
M=(π2/2)(L/D)D3(N/Q)
10×106≦M≦1000×106
但し、L:原料添加部を基点としてダイ方向の押出機長(mm)、D:押出機バレル内径(mm)、Q:吐出量(kg/h)、N:スクリュー回転数(rpm)混練度M=(π2/2)(L/D)D3(N/Q)が10×106≦M≦1000×106であることが重要である。Mが10×106未満ではゴム粒子が肥大化、凝集するために外観が低下し、一方Mが1000×106を越えると過度のせん断力のために、機械的強度が低下する。
【0057】
本発明の組成物の最も好ましい製造法は、(A)、(B)、(C)とを溶融混合後、(D)により架橋する方法である。
こうして得られたゴム系組成物は任意の成形方法で各種成型品の製造が可能である。射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、発泡成形等が好ましく用いられる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明する。なお、これら実施例および比較例において、各種物性の評価に用いた試験法は以下の通りである。
1.ゴム状重合体の粒子径
ゴム状重合体の重量平均粒子径は、組成物の超薄切片法により撮影した透過型電子顕微鏡写真中の500個のゴム状重合体の各平均粒子径を測定し、次式により算出する。但し、各粒子の最大径(長径)d1と最小径(短径)d2との算術平均を各粒子の平均粒子径とする。また、平均粒子径が100μmを越える巨大粒子は本願規定の粒子から除外する。
重量平均粒子径=ΣNi・Di4/ΣNi・Di3
(ここでNiは、粒子径がDiのゴム状重合体粒子の個数である。)
【0059】
尚、成形品中の平均粒子径を算出する際に、成形品中のゴム状重合体の濃度が低い場合は、成形品そのものあるいは熱プレス成形により方向性緩和した成形品から平均粒子径を算出することが可能となるが、成形品中のゴム状重合体の濃度が高い場合は、ゴム粒子が重なり合い、正確に一個一個のゴム状重合体の粒子径を求めることができない。この場合は、成形品を切り出した後、例えばプラストミル等を用いて、オレフィン系樹脂で希釈(ゴム状重合体濃度20%以下が好ましい)し、それをプレス成形したシートから平均粒子径を測定する。
【0060】
2.(A)の水素添加率(%)
NMR法で通常の方法で測定した。
3.真空成形性
底面が15cmの正方形で深さが5cmの直方体の金型に1mm厚さのシートを接触させて、赤外線ヒーターにてシート表面が140℃になるまで加熱した後に、真空下で成形体を作製した。得られた成形体の型再現性、転写性を目視で以下の基準で評価した。
◎ 極めて型再現性、転写性が良好
○ 良好
△ 良好であるが、ややコーナー部の型再現性、転写性が悪い。
× 不良
【0061】
また一方で、キャピラリーメーターとして、東洋精機製作所製キャピログラフ1C・3Aを用いて、溶融ポリマーの溶融張力、溶融伸びを測定する。
具体的には、下記の条件で引き取り速度を変化させて、各引き取り速度での溶融張力を測定する。また、その際に糸切れ時の引き取り速度を溶融伸びの指標とし、真空成形性と対応する。
ランド長10mm、オリフィス孔径1mm、溶融温度200℃、
クロスヘッド速度 50mm/分
【0062】
4. 引張破断強度(引張強さ)[MPa]
JIS K6251に準じ、23℃にて評価した。
5. 外観
シート肌から以下の基準で目視で外観評価を行なう。
◎ 極めて良好
○ 良好
△ 良好であるが、ややざらつく
× 全体的にざらつく。光沢無し
【0063】
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いた。
(イ)架橋性ゴム状重合体
1)水素添加共役ジエン系ゴム(A成分)
特開平3−2240号公報に記載の方法により、スチレンとブタジエンを用いて製造する。その際にスチレン/ブタジエンの量比、水素添加条件を変更して各種組成の水素添加共役ジエン系ゴムを製造する。
2)エチレン・α−オレフィン共重合体(C成分)
エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE)特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(TPEと称する)
【0064】
(ロ)熱可塑性樹脂(B成分)
(1)ホモポリプロピレン
サンアロマー(株)製、アイソタクチックホモポリプロピレン(PPと称する)
(ハ)架橋剤(D成分)
1)架橋開始剤(D−1)
日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(商品名パーヘキサ25B)(POX−1と称する)
2)多官能単量体(D−2)
日本化成(株)製、トリアリルイソシアヌレート(TAICと称する)
実施例1 比較例1〜6
バレル中央部に注入口を有した二軸押出機を用いて、表1記載の(A)及び、または(C)の合計/(B)PP/(D−1)POX/(D−2)TAIC=70/30/1/2(重量比)からなる組成物を以下の溶融条件で溶融混練を行なう。スクリューとしては注入口の前後に混練部を有した2条スクリューを用いる。
【0065】
(溶融条件)
1)溶融押出温度 220℃一定
2)吐出量Q=12kg/h
3)押出機 バレル内径D=25mm
4)押出機長さをL(mm)とした時のL/D=47
5)スクリュー回転数N=280rpm
このようにして得られた組成物から200℃にて射出成形機により2mm厚のシートを作製し、各特性を評価する。
その結果を表1に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、優れた機械的強度、外観及び成形性を有している。
本発明の組成物は、自動車用部品、自動車用内装材、エアバッグカバー、機械部品、電気部品、ケーブル、ホース、ベルト、玩具、雑貨、日用品、建材、シート、フィルム等を始めとする用途に幅広く使用可能であり、産業界に果たす役割は大きい。
Claims (5)
- (A)共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体ゴムの全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加された水素添加ゴムである架橋性ゴム状重合体と、(B)オレフィン系樹脂と、(C)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンからなり、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムとからなる架橋された組成物において、(A)の重量平均粒子径が1〜500nmであり、かつ(A)は芳香族ビニル単量体がブロック構造を有し、水素添加前の共役ジエン系単量体部分のビニル結合が均一に分布していることを特徴とする熱可塑性重合体組成物。
- (A)の芳香族ビニル単量体単位の組成比は1〜30重量%であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性重合体組成物。
- (B)がプロピレン系樹脂である請求項1または2に記載の熱可塑性重合体組成物。
- (B)が、JIS K6758規定の曲げ弾性率が10〜1000MPaであり、かつプロピレンを主体とした炭素数2及び/または4〜20のα−オレフィンとのランダム共重合プロピレン系樹脂を含有する請求項3に記載の熱可塑性重合体組成物。
- (B)がメタロセン触媒を用いて製造されている請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性重合体組成物。
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