JP5029968B2 - 開きの魚干物及びその製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、アジなどの魚の開きの魚干物に関し、魚干物の食べやすさを図り魚食普及に供するものである。
開きの魚干物は、水分を除去されてなる干物であるので保存性に優れ、開きであるので内蔵等を取り出す必要がないために料理の手間が省けるので好まれている。
魚の腹側を開いた腹開きの魚干物、魚の背側を開いた背開きの魚干物においては、図5に示すように、左右の身のどちらかに背骨7が残る。魚干物を焼いて食べる時、背骨7がうまく除去できない為に魚干物は消費者に敬遠される傾向がある。その為に、背骨7などの骨を除去した干物も知られている。
例えば魚の頭部を除いて開いた魚の塩干物において、尾鰭は残し、中骨、腹骨等を除いた魚の塩干物が実用新案登録第3137124号公報に開示されている。
また魚体脊柱の中間開口部より尾部側脊柱の骨髄内容物が排出除去されて身の表面及び内面に滲血班を生じない血抜き開き魚を、塩汁浸漬後に、乾燥加工処理されてなる血抜き開き干物が実用新案登録第3119925号公報に開示されている。
実用新案登録第3137124号公報 実用新案登録第3119925号公報
本発明は、魚干物の焼き魚から背骨を容易に除去できて食べ易く、また背骨を取り除いた後も魚の姿を有し、かつ製造し易く、しかも魚の旨みが損なわれていない開きの魚干物、及びこの魚干物の製造法を提供することを課題とする。
なお魚の旨みは背骨等の骨まわりに多い。これらの骨を、魚の開き加工等の加工時に除去してしまうと加工時の水洗浄などによって旨みが流出してしまう。よって加工時には背骨等の骨を除去しないで、魚の干物を食べる間際まで背骨等の骨を残しておきたい。
本発明の開きの魚干物は、頭部と、この頭部に連なる胴部と、この胴部に連なる尾部とを有する開きの魚干物であって、前記胴部は分断されている複数の背骨を有し、この複数の背骨は、頭骨に連なる頭部側背骨と、この頭部側背骨と分断されている主背骨と、この主背骨と分断され、尾骨に連なる尾部側背骨とであり、前記開きの魚干物の胴部長をLとして、前記頭部の付け根から前記頭部側背骨と前記主背骨との分断箇所までの距離は、L×1/100〜L×1/4であり、前記尾部のくびれ部から前記主背骨と前記尾部側背骨との分断箇所までの距離は、L×1/20〜L×1/3である開きの魚干物である。
前記主背骨が、1個の背骨であることが好ましい。
また、前記胴部長Lが、5cm以上で40cm以下の範囲であることが好ましい。
また、魚干物が、アジ、キンメ鯛、エボ鯛、サンマから選ばれた魚のいずれかの干物であることが好ましい。
前記開きの魚干物の好ましい製造法は、前記背骨の分断は、開きの魚干物を製造するための原料である原魚の背骨を分断することでされたものであるとともに、前記原魚の背骨の分断は、原魚を腹開き又は背開きした後であって、腹開き又は背開きされた原魚を乾燥して魚干物とする前にされることを特徴とする開きの魚干物の製造法である。
本発明に係る開きの魚干物(以下、単に干物ということがある。)は、頭部と胴部と尾部とが連結して一体である開きの干物であるので、干物は魚の姿を有し美観に優れる。
本発明に係る干物はその胴部に、頭骨に連結する頭部側背骨と、この頭部側背骨と頭部側の分断箇所で分断されている主背骨と、この主背骨と尾部側の分断箇所で分断され、尾骨に連結する尾部側背骨との3種類の背骨を有している。
これらの3種類の背骨は魚の背骨の全てであるので、干物には骨周りの旨みが残る。
また、頭部側の分断箇所と尾部側の分断箇所の位置は特定範囲であるので、干物やその焼き魚の移動等の際に、これらから頭部、尾部が欠落し難い。従って、これらの外観が損なわれ難い。
また焼き魚は、頭部側の分断箇所、尾部側の分断箇所を有しているので、これらの分断箇所において、主背骨の端部を魚の身から剥がすのが容易である。従って焼き魚から主背骨を容易に取り除ける。
また、分断箇所の位置は特定範囲であるので、焼き魚から主背骨を取り除いた後に、焼き魚の胴部に残る背骨(頭部側背骨と尾部側背骨)の量は少ない。しかも背骨の大半を占める主背骨は取り除ける。
従って、本発明に係る干物は食べやすい。
また、主背骨を取り除いた後の焼き魚は、頭部と胴部と尾部とが連結したものであり、魚の姿を有し美観に優れる。
また、分断箇所の位置は特定範囲であるので、本発明に係る干物は製造し易い。
主背骨が1個の背骨であると、焼き魚から一度で主背骨を取り除ける。
干物の胴部長Lが5cm〜40cmであると、主背骨の長さが適当であるので、焼き魚から主背骨を取り除くのが容易である。また、この範囲の胴部長Lを有する干物は、魚体が小さ過ぎず、大き過ぎず、大きさが適当なので製造し易い。
アジ(鯵)、エボ鯛、キンメ鯛(金眼鯛)等のきんめだい科、サンマ(秋刀魚)等のさんま科などの魚は、硬骨魚類であり背骨を有していて食べ難い。これらの魚の干物であっても、本発明に係る干物は食べ易い。
また、サンマ等と比較してアジ、エボ鯛、キンメ鯛などの魚は魚体の幅が大きく、また背骨も太い。このため、本発明の干物が分断されている背骨を有していても、移動等の際にアジ等の干物からは尾部、頭部が欠落し難い。従って、本発明の開きの干物はアジ等の魚の場合に特に有用である。
原魚の背骨の分断が、腹開き又は背開きした後であって、腹開き又は背開きされた原魚を乾燥して開きの干物とする前になされたものであると、原魚の背骨の切断が容易である。また分断箇所が目立ち難く、かつ頭部や尾部が欠落し難い干物が容易に製造できる。
図1は、本発明に係る開きの魚干物の好ましい例を示す平面図であって、アジの腹開き干物の腹側を見た平面図であり、図5はアジの腹開きの干物の従来例を示す平面図である。
本発明の開きの魚干物の例は、図1に示すように、頭部2と、この頭部2に連なる(連結した)胴部3と、この胴部3に連なる尾部4とを有する開きの魚干物1であって、前記胴部3は分断されている複数の背骨を有し、この複数の背骨は、頭骨6に連なる頭部側背骨7aと、この頭部側背骨7aと分断箇所11で分断されている主背骨7bと、この主背骨7bと分断箇所12で分断され、尾骨8に連なる尾部側背骨7cとの3種類の背骨であり、魚干物1の胴部長をLとして、頭部2の付け根17から頭部側背骨7aと主背骨7bとの分断箇所11までの距離eは、L×1/100〜L×1/4であり、尾部4のくびれ部21から主背骨7bと尾部側背骨7cとの分断箇所12までの距離fは、L×1/20〜L×1/3である魚干物1である。
尚、本発明は背骨を容易に除去できる干物を提供する等を課題とするので、干物の胴部長Lが約5cm〜40cm、特に約10cm〜35cmの範囲の干物に好適である。
頭部側背骨7aは、その周辺の魚の身23、頭骨6とともに頭部2を支える。また胴部3の頭部側背骨7aは付け根17の所で頭骨6に連なる。
そして、図1に示すように、頭部側背骨7aは、胴部3の頭部2側に位置し、1個又は数個の脊椎骨10が連結した背骨である。
主背骨7bは背骨の大半を占めるとともに胴部3を支える。この主背骨7bは、頭部側背骨7aと尾部側背骨7cとの中間に位置するとともに、多数の脊椎骨10が連結してなる1個の背骨である。
尾部側背骨7cは、その周辺の魚の身23、尾部4の尾骨8等とともに、尾部4及びその周辺の胴部3を支える。この尾部側背骨7cは、胴部3の尾部4側に位置し、数個の脊椎骨10が連結してなる背骨である。また、尾部側背骨7cはくびれ部21の所で尾骨8に連なる。
尚、これら3種類の背骨は、頭部側の分断箇所(切れ目)11と、尾部側の分断箇所(切れ目)12との所で切断により切り離されていることで分断されている。
また、頭部2の付け根17から尾部4のくびれ部21に至るまで主背骨7b等の背骨が存在する。
図5に示す従来例の干物は、頭骨6に連なるとともに、頭部の付け根17の所から、尾部4のくびれ部21の所まで連なる背骨7を有している。この背骨7が、図1に示すように、頭部側の分断箇所11と、尾部側の分断箇所12の所で分断されて、頭部側背骨7a、主背骨7b、尾部側背骨7cの3個の背骨とされている点が、図1に示す干物1の特徴である。
干物1の頭部2は、図1に示すように、餌を食べるためにあった口部と、脳などの中枢神経や感覚器等を保護するためにあった頭骨6と、鰓を保護するためにあった鰓蓋16等を有する。この頭部2は、つけけ根17の所で胴部3に連なっている。
頭部2とは、図1に示すように、付け根17を含んで、付け根17より口部側の範囲の魚体をいう。
頭部の付け根(頭部の基部とも言える。)17とは、干物1の頭部2と胴部3との接続部であって、頭部2と胴部3との間において魚体の幅が最も小さい部位をいう。この付け根17は、右側の鰓の開口部19の背側端部と、左側の鰓の開口部の背側端部とを結ぶ部位とも言える。
胴部3は、干物1が有する魚の身23の大半を有し、頭部側背骨7a、主背骨7b、尾部側背骨7c等の背骨と、これら背骨から延びる肋骨9等を有し、くびれ部21の所で尾部4に連なっている。背骨(脊柱)は魚体の中心部を縦走し魚体を支える。
背骨は脊椎骨(椎骨)10から構成されており、脊椎骨10はその中に脊髄を入れる。本発明では脊椎骨10を有する骨を背骨といい、脊椎骨10は靱帯等により連結される。
本発明において胴部3とは、図1、5に示すように、頭部2の付け根17と、尾部4のくびれ部21との間の魚体をいう。
なおくびれ部21とは、胴部3と尾部4との接続部であって、胴部3と尾部4との間において魚体の幅が最も小さい部位をいう。このくびれ部21は、尾鰭20の付け根と言ってもよい。
尾部4は、くびれ部21の所で胴部3に連なり、尾鰭20、この尾鰭20を支持する尾骨8等を有する。本発明において尾部4とは、図1に示すように、くびれ部21を含んで、このくびれ部21より尾鰭21側の範囲の魚体をいう。
なお、いくつかの脊椎骨10は尾部4のくびれ部21の付近で変形して尾骨8となる。
次に、頭部側背骨7aと主背骨7bとを分断する、頭部側の分断箇所11の位置について述べる。
頭部2の付け根17から分断箇所11までの距離e(図1中に示す。)は、開きの魚干物1の胴部長をLとして、L×1/100以上でL×1/4以下の範囲、好ましくはL×1/50以上でL×1/5以下の範囲である。
胴部長Lとは、図1に示すように、頭部2の付け根17と、尾部4のくびれ部21との間の長さである。
前記の距離eがL×1/4を越えると、焼き魚の身から除去できない頭部側背骨7aが多くなり過ぎる。前記の距離eがL×1/100未満だと、干物1の頭骨までも切断されていて干物1の頭部が欠落し易い。またこのような干物1は製造し難い。
次に、主背骨7bと尾部側背骨7cとを分断する、尾部側の分断箇所12の位置について述べる。
尾部4のくびれ部21から分断箇所12までの距離f(図1中に示す。)は、L×1/20以上でL×1/3以下の範囲、好ましくはL×1/10以上でL×1/3以下の範囲である。
前記距離fがL×1/20未満であると、分断箇所12がくびれ部21に接近し過ぎて、干物1の尾部4が欠落し易い。距離fがL×1/3を越えると、焼き魚の身に残る尾部側背骨7cが多くなり過ぎる。
次に、塩漬けしたアジの開きの干物であって、図1に示すものの例を挙げる。
大きさ(干物1の左端と右端との間の長さ)が26cmで、胴部長Lが16cmのアジの開き干物の好ましい例として、頭部2の付け根17から頭部側背骨7aと主背骨7bとの分断箇所11までの距離eが0.4cm〜2.5cmの範囲で、尾部4のくびれ部21から主背骨7bと尾部側背骨7cとの分断箇所12までの距離fが2cm〜5cmの範囲であるアジの開き干物が挙げられる。
即ち、距離eがL×1/40〜L×2.5/16の範囲で、距離fがL×1/8〜L×5/16の範囲であるアジの開き干物である。
上記アジ干物を脊椎骨10を用いて表せば、付け根17の所から尾部4側に向かって数えて、ほぼ1番目の脊椎骨10と6番目の脊椎骨10との間にある脊椎骨10が1箇所切断されていることで分断箇所11が形成されていると共に、くびれ部21の所から頭部2側に向かって数え始めてほぼ2番目と5番目の脊椎骨10との間にある脊椎骨10が1箇所切断されていることで分断箇所12が形成されているアジ干物である。このようなアジの開き干物は製造し易い等の利点を有する。
尚、上記のアジ干物は、図4に示す行程により製造できる。
サンマの塩漬けした開き干物であって、図1に示すものの例を挙げる。
大きさが31cmで、胴部長Lが24cmのサンマの開き干物として、頭部2の付け根17から分断箇所11までの距離eが、2cm〜4cmで、尾部4のくびれ部21から分断箇所12までの距離fが2cm〜5cmのサンマの開き干物が挙げられる。
即ち距離eが、L×1/12〜L×1/6であり、距離fがL×1/12〜L×5/24であるサンマの開き干物が挙げられる。このようなサンマ干物は製造し易い等の利点を有している。
次に、図1に示す干物1の食べ方について図2,3に基づき説明する。
干物1を焼いて焼き魚とした後に、この焼魚を皿等の上に載せる。そして、図2に示すように、切れ目12の所で、箸25等を用いて主背骨7bの端部を魚の身23から剥がす。主背骨7bの端部には切れ目12があるので、主背骨7bの端部は魚の身23から容易に剥がせる。そして、主背骨7bの端部を持ち上げ、頭部2側に向かって持ち上げていく。そうすると主背骨7bは魚の身23から剥がれていく。頭部2側には切れ目11があるので、図3に示すように、切れ目11の所で主背骨7bは魚の身23から外れる。
図3に示すように、主背骨7bは魚の身23から一度で取り除かれたが、焼き魚には頭部2と胴部3と尾部4とが連結した状態で残る。このため、魚の姿が損なわれていない焼き魚を食べることができる。主背骨7bが取り除かれた焼き魚には、図3に示すように、頭部側背骨7aと尾部側背骨7cとの少しの背骨が胴部3に残るだけである。このため魚の身23を食べ易い。また背骨の大半(主背骨7b)は除去されているので、焼き魚を裏返しにしなくとも、魚の身23の大半を食べることができる。また、主背骨7b等の骨は焼き魚を食べる間際まで残っていたので、魚の旨みは失われていない。
焼き魚において切れ目11、切れ目12等の分断箇所の位置が判り難くなる場合がある。
干物1の切れ目12等の分断箇所を着色剤、例えば烏賊の墨等により着色しておいて、焼き魚における分断箇所を目立ち易くしてもよい。
着色剤は、干物1の分断箇所(切れ目)11,12に施されてもよいし、好ましくは原魚の背骨の切断箇所に乾燥直前に施される。着色剤は人体に無害で、乾燥によって水に溶解し難くなるものが好ましい。
次に、本発明に係る干物の製造法を説明する。
本発明に係る魚干物は、原魚の背骨又はこの原魚を乾燥した干物の背骨の分断を、頭部側の分断箇所11を形成せしめるために頭部側にて分断し、かつ尾部側の分断箇所12を形成せしめるために尾部側にて分断することで製造できる。尚、原魚(原料魚)とは魚干物の原料となる魚であって、乾燥されていないものを言う。
原魚又はこの原魚を乾燥した干物の背骨の分断は切断により行うことができる。切断による背骨の分断は、切断具の刃部に背骨を挟み、次いで切断することで行うがよい。背骨を挟み切れば、背骨の切断の際に、切断箇所周辺の魚の身が過剰に切断されるのを防げる。挟み切るための切断具の例は、調理用はさみ等のはさみ、作業工具であるニッパーである。
干物、例えば図5に示す干物の背骨7を分断箇所11と分断箇所12との位置において切断することで、図1に示す魚干物1を製造すると、魚干物1の切れ目11等が目立ち易く、またその頭部2、尾部4が欠落し易いという問題がある。
上記問題は、乾燥されていない原魚の背骨を切断により分断して魚干物を製造することで改良される。原魚は水を多く含んで身が柔らかい。従って、背骨を切断し易く、また切断の際に原魚の身を過剰に切断しなくてすむ。その結果、切れ目付近の強度の低下が少ない。また、背骨を切断された原魚を乾燥すると、原魚に含まれる水分の蒸発に伴って、背骨の切断と同時に切断された魚の身が癒着する。この癒着により魚干物の切れ目が目立ち難くなる。またこの癒着により切れ目11,12付近の強度も向上して、干物の頭部、尾部が欠落し難い。
以下に、原魚の背骨を切断することで図1に示す干物を製造する方法の例を図4に基づき説明する。
冷凍保存されていた冷凍原魚は、開き等の調理のために流水解凍される。解凍された原魚は、腹開き又は背開きの開きをされた後に、胴部内の内臓を取り出され、また頭部の顎部を切り裂かれ、鰓などを除去される。次いで、流水洗浄されて魚に付着していた内臓や血液等が除去されて開き原魚とされる。次いで、この開き原魚は、調味、脱水、肉質を座らせる等のために塩漬けされる。塩漬けは、開き原魚を塩水に浸漬する或いは塩をふりかける等でなされる。次いで、流水洗浄により余分な塩や付着した汚物が取り除かれて塩漬け開き原魚とされる。
次いで、干物1の分断箇所11と分断箇所12とを形成させるために、塩漬け開き原魚の背骨は頭部側と尾部側の2箇所で切断される。この切断の際は、前記切断具を用いて切断箇所周辺の魚の身が切断されるのを極力少なくする。
次いで、背骨を切断された塩漬け開き原魚は、乾燥により含まれる水分を強制的に除去されて本発明に係る干物1とされる。乾燥法として、天日乾燥、熱風乾燥、冷風乾燥が挙げられる。熱風乾燥の場合の乾燥温度は気温より高い温度、例えば約5℃高い温度であり、冷風乾燥の場合の乾燥温度は約15℃〜25℃である。冷風乾燥によれば、つやが良く、またしわが少ない干物1が得られ易く好ましい。熱風乾燥、冷風乾燥の場合は乾燥機が用いられる。
乾燥により製造された干物1は、次いで包装される。この包装法として、プラスチック製のトレイ上に干物1を載せた後に透明性プラスチックラップで被覆する包装方法、或いは透明性のプラスチック製袋内に干物1を収容する包装方法が挙げられる。包装された干物1は、その残留水分を凍結(例えば−30℃で)されて凍結保存され、箱詰めされ、出荷される。
干物1は切断により分断された背骨を有するので、背骨が分断されていない干物(例えば、図5に示す干物。)と比較して、移動の際等に頭部、尾部が欠落し易い。この欠落は干物1を包装することで防止できる。
図4に示す行程において、開き原魚の背骨の切断を、内臓を取り出した後であって、内臓等を除去するための流水洗浄の前に行ってもよい。この場合、内臓等から出た血が背骨の切断面付近から原魚の身に浸透して、開き原魚の身が汚染される虞がある。前記したように、背骨の切断を前記梳水洗浄の後に行うとこの汚染の虞がない。
また、図4に示す行程において、開き原魚の背骨の切断は、内臓等を除去するための流水洗浄の後であって、塩漬けする前に行われてもよい。しかし、図4に示すように塩漬けの後に背骨の切断を行うと、背骨の切り口が存在しないために塩が原魚の身に均等に浸透し易い。
前記した塩漬け開き原魚(以下、開き原魚と言う。)の背骨を切断する際の切断位置は、開き原魚と干物とでは胴部長等はほぼ同じなので干物1の場合と同じである。
即ち、開き原魚の頭部側の背骨の切断は、開き原魚の胴部長をL’として、開き原魚の頭部の付け根から尾部側に向かっての距離e’が、L’×1/100〜L’×1/4、好ましくはL’×1/50〜L’×1/5の範囲にある背骨を1箇所切断することで行われる。
距離e’がL’×1/100未満だと、開き原魚の頭骨の存在のために開き原魚の背骨を切断し難く、また開き原魚の背骨の切断の際に頭骨の切断も起こり易くて頭部が欠落し易い。その結果、干物1を製造し難い。
尚、開き原魚の頭部の付け根とは、干物1と同様であって、頭部と胴部との接続部であって、頭部と胴部との間において魚体の幅が最も小さい部位を言う。また前記胴部長L’とは、開き原魚の頭部の付け根と尾部のくびれ部との間の長さを言う。
開き原魚の尾部側の背骨の切断は、開き原魚の尾部のくびれ部からの距離f’が、L’×1/20〜L’×1/3、好ましくはL’×1/10〜L’×1/3の範囲にある背骨を1箇所切断することで行われる。
距離f’がL’×1/20未満であると、切断部位の魚体幅が小さくて背骨を切断し難いし、また開き原魚の尾部が欠落し易い。その結果、干物1を製造し難い。
尚、開き原魚の尾部のくびれ部とは、干物1と同様であって、開き原魚の胴部と尾部との接続部であって、胴部と尾部との間において魚体の幅が最も小さい部位を言う。
図1に示す于物1においては、主背骨7bは1個の背骨である。しかしながら、図1に示す主背骨7bが数個に分断されてなる背骨を主背骨として有し、他は図1に示す干物1と相違するところがない干物でもよい。
例えば、図1に示す主背骨7bの代わりに、図1に示す主背骨7bが2個ないし5個に分断されてなる、例えばほぼ2等分ないし5等分に分断されてなる背骨を主背骨として有する魚干物でもよい。
この魚干物の場合、主背骨を構成する背骨数は2〜5個であるので、焼き魚の背骨の端部を魚の身から剥がすのに2〜5回を要する。なお、図1に示す干物1の場合は、図2に示すように、主背骨7bの端部を魚の身23から剥がすことは1回で済む。
しかしながら長い背骨を有する魚、例えば胴部長Lが40cmの太刀魚の場合は、数個に分断されてなる背骨を主背骨として有する魚干物は、その焼き魚からの背骨の除去が容易である。
なお、主背骨を構成する背骨の個数が6個以上であると、焼き魚から背骨を除去するのが煩わしくなる。従って、主背骨を構成する背骨の個数は、図1の場合を含めて、1〜5が好ましいと言える。
分断されている背骨の数個を主背骨とする魚干物は、例えば、干物1の前記製造法の例において、塩漬け開き原魚の頭部側の背骨の切断箇所と尾部側の背骨の切断箇所とに加えて、これら2箇所の切断箇所間に存在する背骨を数個に切断により分断することで製造でき、他は干物1の場合と、その製造法は変わる所がない。
所で、図1に示す干物1は、分断箇所(切れ目)11と、分断箇所12の所で分断されて、頭部側背骨7aと主背骨7bと尾部側背骨7cとの3個の背骨を胴部3に有している。
図1に示す干物1において、胴部3に存在する背骨が尾部4側の分断箇所12の所でのみ分断され、頭部2側の分断箇所11を有さない点を除いて、他は図1に示す干物1と変わるところがない干物イが挙げられる。即ち、この干物イは、尾骨8に連なる尾部側背骨7cと、この尾部側背骨7cと分断箇所12の所で分断され頭骨6に連なる背骨との2個の背骨を、胴部3に背骨として有する干物である。
この干物イの焼き魚には、切れ目12が存在するので、頭骨6に連なる背骨の端部は切れ目12の所で魚の身23から容易に剥がせる。そして、この背骨の端部を持ち上げ、頭部2側に向かって持ち上げていくと、前記背骨は魚の身23から剥がれていく。頭部2側には切れ目が存在しないので、頭骨6に連なる背骨は頭部2と連なった状態で、付け根17辺りで胴部3から外れ易い。その結果、焼き魚は、胴部3と尾部4とが連なり、頭部2を有さない姿となり易い。
但し、背骨の大半は焼き魚から一度に除去できるので、魚の身23を食べ易い。
また、全ての背骨が干物イに残っているので、背骨周りの旨みの全てが干物イに有る。また、この干物イは、尾部側にて原魚の背骨を分断(切断)して分断箇所12を形成させれば良いので製造が容易である。また、干物イの背骨は、分断箇所12の位置で分断されているので、干物イの尾部4は、干物1と同様に欠落し難い。
また、図1に示す干物1において、胴部3に存在する背骨が頭部2側の分断箇所11の所でのみ分断され、尾部4側の分断箇所12を有さない点を除いて、他は図1に示す干物1と変わるところがない干物ロが挙げられる。この干物ロは、頭骨6に連なる頭部側背骨7aと、この頭部側背骨7aと分断箇所11の所で分断され尾骨8に連なる背骨との2個の背骨を、胴部3に背骨として有する干物である。
この干物ロの焼き魚には、切れ目11が存在するので、尾骨8に連なる背骨の端部は、切れ目11の所で魚の身23から容易に剥がせる。そして、この背骨の端部を持ち上げ、尾部4側に向かって持ち上げていく。そうすると前記背骨は魚の身23から剥がれていく。尾部4側には切れ目が存在しないので、尾骨8に連なる背骨は尾部4と連なった状態で、くびれ部21辺りで胴部3から外れ易い。その結果、焼き魚は、頭部2と胴部3とが連なり、尾部4を有さない姿となり易い。
但し、背骨の大半を焼魚から一度に除去できるので魚の身23を食べ易いし、また背骨周りの旨みは干物ロに有る。また、この干物ロは、頭部側にて原魚の背骨を分断して分断箇所11を形成させれば良いので製造が容易である。また、干物ロの背骨は分断箇所11の位置で分断されているので、干物ロの頭部2は、干物1と同様に欠落し難い。
本発明は、魚干物、その製造分野において利用できる。
本発明の開きの魚干物の例を示す平面図である。 図1に示す魚干物を焼いた焼き魚から主背骨を除去している状態を示す平面図である。 図1に示す魚干物を焼いた焼き魚から主背骨を除去した状態の例を示す平面図である。 本発明の開きの魚干物の製造法の例を示す工程図である。 従来例の開きの魚干物を示す平面図である。
符号の説明
1・・魚干物(干物)、2・・頭部、3・・胴部、 4・・尾部、6・・頭骨、7・・背骨、7a・・頭部側背骨、7b・・主背骨、7c・・尾部側背骨、7’・・背骨の除去跡、8・・尾骨、9・・肋骨、10・・脊椎骨、11・・分断箇所(切れ目)、12・・分断箇所(切れ目)、16・・鰓蓋、17・・付け根、19・・鰓の開口部、20・・尾鰭、21・・くびれ部、23・・魚の身、25・・箸、L・・胴部長、e・・距離、f・・距離

Claims (5)

  1. 頭部と、この頭部に連なる胴部と、この胴部に連なる尾部とを有する開きの魚干物であって、前記胴部は分断されている複数の背骨を有し、この複数の背骨は、頭骨に連なる頭部側背骨と、この頭部側背骨と分断されている主背骨と、この主背骨と分断され、尾骨に連なる尾部側背骨であり、前記魚干物の胴部長をLとして、前記頭部の付け根から前記頭部側背骨と前記主背骨との分断箇所までの距離は、L×1/100〜L×1/4であり、前記尾部のくびれ部から前記主背骨と前記尾部側背骨との分断箇所までの距離は、L×1/20〜L×1/3であることを特徴とする開きの魚干物。
  2. 前記主背骨が、1個の背骨であることを特徴とする請求項1に記載の開きの魚干物。
  3. 前記胴部長Lが、5cm以上で40cm以下の範囲である請求項1又は2に記載の開きの魚干物。
  4. 魚干物が、アジ、キンメ鯛、エボ鯛、サンマから選ばれた魚のいずれかの干物であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の開きの魚干物。
  5. 請求項1に記載の開きの魚干物の製造法であって、前記背骨の分断は、開きの魚干物を製造するための原料である原魚の背骨を分断することでされたものであるとともに、前記原魚の背骨の分断は、原魚を腹開き又は背開きした後であって、腹開き又は背開きされた原魚を乾燥する前にされることを特徴とする開きの魚干物の製造法。
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