以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る走行軌跡生成装置は、車両の走行軌跡を生成する装置であって、例えば、自動運転機能を備えた車両や、追従運転や車線維持運転などの運転者支援システムを搭載した車両に好適に採用されるものである。
最初に、本実施形態に係る走行軌跡生成装置(走行軌跡生成部)の構成を説明する。図1は本発明の実施形態に係る走行軌跡生成装置を備えた車両の構成を示すブロック図である。
図1に示す車両5は、自動運転機能あるいは運転者支援システムを備えた車両であって、GPS受信機30、センサ31、操作部32、ナビゲーションシステム33、ECU2、操舵アクチュエータ40、スロットルアクチュエータ41及びブレーキアクチュエータ42を備えている。ここで、ECU(Electronic Control Unit)とは、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(CentralProcessing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。
GPS受信機30は、例えば、運転者の位置情報を受信する機能を有している。ここで、GPS(Global Positioning System)とは、衛星を用いた計測システムのことであり、自車両の現在位置の把握に好適に用いられるものである。また、GPS受信機30は、位置情報をECU2へ出力する機能を有している。
センサ31は、車両5の周囲の走行環境や、自車両の走行状態を取得する機能を有している。センサ31としては、例えば、車両5が走行する道路のレーンを認識するためのレーン認識センサや画像センサ、車両5の周辺障害物を検知する電磁波センサやミリ波センサ、車両5のヨーレートを計測するヨーレートセンサ、車両5のハンドル舵角及びタイヤ角を検知する舵角センサ、車両5の加速度を検出する加速度センサ、車両5の車輪速を計測する車輪速センサ、乗員がシートに着座したことを検知する着座センサ、タンク内の燃料を計測できる燃料センサ等が用いられる。また、センサ31は、取得した情報をECU2へ出力する機能を有している。
操作部32は、運転者の要求する条件を入力する機能を有している。操作部32としては、例えば、目標通過時間、目標燃費、乗員の乗り心地を優先させる座席等を入力する操作パネル等が用いられる。また、操作部32は、入力した情報をECU2へ出力する機能を有している。
ナビゲーションシステム33は、主に目的地までの経路案内等を行う機能を有している。また、ナビゲーションシステム33は、例えば地図データベースから現在走行中の道路の形状情報を読み出し、その道路形状情報をナビ信号としてECU2へ出力する機能を有している。車両5は、ナビゲーションシステムの代わりとして、少なくとも道路形状情報を格納したデータベースを備え、そのデータベースに格納された道路形状情報をECU2へ出力する機能を有する構成としてもよい。また、通信を介して道路形状情報を参照し、参照した道路形状情報をECU2へ出力する機能を有する構成としてもよい。
ECU2は、走行軌跡生成部1、車両運動制御部27、操舵制御部28及び加減速制御部29を備えている。
走行軌跡生成部1は、車両5の走行軌跡を最適化して生成する機能を有している。本実施形態においては、走行軌跡生成部1が実行する最適化手法の一例として、SCGRA[Sequential Conjugate Gradient Restoration Algorithm]を用いた例を説明する。SCGRAは、拘束条件を満たすまで最急降下法に基づいて収束演算し、評価関数の評価値が最小となるまで共役勾配法に基づいて収束演算して走行軌跡を生成する最適化手法である。ここで、拘束条件とは、走行軌跡が満たさなければならない必須条件であり、評価関数とは、走行において重視する条件を評価するためのものである。
そして、走行軌跡生成部1が生成する走行軌跡は、位置、速度パターン、加速度パターン、ヨー角、ヨーレートなどの車両の走行に必要な多数のパラメータから構成されている。このような走行軌跡の生成手法の一例として、本実施形態では、所定の区間をブロック単位とし、各ブロックでの走行軌跡を、走行路を分割した区間であるメッシュ単位で生成する例を説明する。
ECU2に備わる走行軌跡生成部1は、評価関数生成部21、収束演算部22及び走行軌跡導出部23を備えている。
評価関数生成部21は、車両の前後左右に発生する加速度及びジャークを評価する項を含み乗員の乗り心地を評価するための評価関数を生成する機能を有している。一般的に、加速度の最大値及びジャークの最大値を小さくすると乗員の乗り心地が向上することが知られているので、加速度及びジャークを評価することで、乗り心地を向上させた走行軌跡を生成することが可能となる。評価関数生成部21は、具体的には、センサ31から乗員の着座位置情報を入力し、操作部32から乗員の乗り心地優先度を示す設定情報を入力し、入力した着座位置情報及び設定情報に基づいて乗り心地を評価する位置を特定し、特定した位置における加速度及びジャークを評価する項を含む評価関数を生成する機能を有している。また、評価関数生成部21は、評価関数に含まれる項の係数を設定する機能を有している。さらに、評価関数生成部21は、生成した評価関数を走行軌跡導出部23へ出力する機能を有している。
収束演算部22は、ナビゲーションシステム33から道路境界線等の道路環境情報を入力し、入力した情報に基づいて拘束条件を設定する機能を有している。このように、拘束条件は、例えば、道路上を走行する等の交通上の要求や、摩擦円、加減速限界、操舵限界等の車両性能から生じる要求に基づいて設定される。また、収束演算部22は、例えば最急降下法を用いて、設定した拘束条件を満たすまで収束演算して、拘束条件を満たす走行軌跡を生成する機能を有している。さらに、収束演算部22は、生成した拘束条件を満たす走行軌跡を拘束条件達成状態としてECU2が有するメモリに保存する機能を有している。
走行軌跡導出部23は、ECU2のメモリから収束演算部22が生成した拘束条件及び拘束条件達成状態を入力し、又、評価関数生成部21から評価関数を入力し、拘束条件を達成している状態で拘束条件達成状態を初期値として評価関数を収束演算して、乗員の乗り心地が良好な走行軌跡を生成する機能を有している。具体的には、共役勾配法に基づいて収束演算を実施して走行軌跡を生成する。また、走行軌跡導出部23は、算出した走行軌跡を車両運動制御部27へ出力する機能を有している。
車両運動制御部27は、走行軌跡導出部23から入力した走行軌跡及びセンサ31からの周囲の走行環境や自車両の走行状態に基づいて、操舵制御情報や加減速制御情報を算出する機能を有している。また、車両運動制御部27は、算出した操舵制御情報を操舵制御部28へ、算出した加減速制御情報を加減速制御部29へ出力する機能を有している。
操舵制御部28は、車両運動制御部27から入力した操舵制御情報に基づいて操舵アクチュエータ40を制御するための信号を生成し、生成した制御信号を操舵アクチュエータ40へ出力する機能を有している。なお、操舵アクチュエータ40は、車両の走行を制御する機械的な構成要素であり、例えば、操舵角制御モータ等である。
加減速制御部29は、車両運動制御部27から入力した加減速制御情報に基づいてスロットルアクチュエータ41及びブレーキアクチュエータ42を制御するための信号を生成し、生成した制御信号をスロットルアクチュエータ41及びブレーキアクチュエータ42へ出力する機能を有している。スロットルアクチュエータ41は、車両の走行を制御する機械的な構成要素であり、例えば電子スロットル等である。また、ブレーキアクチュエータ42は、例えば油圧式ブレーキの場合には、各車輪のブレーキ油圧の調整を行うバルブ等である。
次に、第1実施形態に係る走行軌跡生成部1の動作について説明する。図2は、第1実施形態に係る走行軌跡生成部1の動作を示すフローチャートである。また、図3は第1実施形態に係る走行軌跡生成部1の動作を説明するための概要図である。
図2に示す制御処理は、例えばイグニッションオンされてから所定のタイミングで繰り返し実行される。
図2に示す制御処理が開始されると、走行軌跡生成部1は、評価関数初期設定処理から開始する(S10)。S10の処理は、評価関数生成部21が実行し、評価関数を構成する項の係数を仮設定する処理である。評価関数生成部21は、例えば前後横方向の加速度を評価する項の係数KGr,KGf,KGs、及び、前後横方向のジャークを評価する項の係数KJr,KJf,KJsを規定値(例えば0.3)に仮設定する。S10の処理が終了すると、燃費重視要求判定処理へ移行する(S12)。
S12の処理は、ECU2が実行し、燃費重視の走行を運転者から要求されているか否かを判定する処理である。ECU2は、例えば、操作部32から入力した情報に基づいて運転者の要求する条件の中に低燃費で走行することが含まれているか否かを判定する。S12の処理において、ECU2が運転者から低燃費走行の要求がないと判定した場合には、図2に示す制御処理を終了する。一方、S12の処理において、ECU2が運転者から低燃費走行の要求があると判定した場合には、評価関数係数補正処理へ移行する(S14)。
S14の処理は、評価関数生成部21が実行し、燃費を重視するように評価関数の加速度を評価する項の係数を補正する処理である。評価関数生成部21は、例えば、横加速度係数KGsを小さくし(例えば0.2)、後方の減速加速度の係数KGfを大きく(例えば0.4)するように補正する。S14の処理が終了すると、乗員重心位置算出処理へ移行する(S16)。
S16の処理は、評価関数生成部21が実行し、乗り心地を評価する位置を決定する処理である。まず、評価関数生成部21は、センサ31の着座センサ等から入力した情報に基づいて車両5内の乗員の有無を判定し、乗員がいると判定した場合には乗員が着座している座標を入力する。例えば、図3に示すように、車両5が4人乗り(座席ST1〜ST4)であって、乗員が座席ST1〜ST3にそれぞれ着座している旨の情報をセンサ31から入力した場合、車両重心位置G0を原点(0,0)として、各乗員P1〜3が座っている座席ST1〜ST3の座標(1,1),(−1,1),(−1,−1)を入力する。
次に、評価関数生成部21は、入力した座標と乗り心地優先度に基づいて乗員重心G1の座標を決定する。乗り心地優先度は、乗員の乗り心地を優先させる度合いであって、各座席に対して予め設定する。例えば、送迎する乗員を助手席に乗せる場合には、助手席の乗り心地優先度を予め大きく設定すればよい。また、一般的に後部座席の乗員は前方の動きを確認しづらいため、車酔いし易い傾向となることが知られているので、このような車酔いを回避したい場合には後部座席の乗り心地優先度を予め大きく設定すればよい。設定された各乗り心地優先度をC
i(iは座席)、入力した座席iの中心座標をi(X
i,Y
i)、座席iの乗客存在有無のフラグ値(初期0、存在すれば1)をF
iとすると、乗員重心G1の座標(X,Y)は以下式で表される。
評価関数生成部21は、例えば、図3に示す車両5において、後部座席の乗り心地を優先させるとし、後部座席の乗り心地優先度を2,前部座席の乗り心地優先度を1と設定したとすると、式1を用いて、乗員重心G1の座標(−1/2,0)を算出する。S16の処理が終了すると、評価関数生成処理へ移行する(S18)。
S18の処理は、評価関数生成部21が実行し、S16の処理で算出した乗員重心G1の座標に基づいて、乗員重心G1の座標における加速度及びジャークを評価する項を含む評価関数を生成する処理である(評価関数生成ステップ)。評価関数生成部21は、一般的な幾何手法や車両運動解析手法を用いて、センサ31から入力した車両重心G0の加速度及びジャークを、乗員重心G1の座標に基づいて乗員重心G1の加速度及びジャークに変換する。評価関数生成部21は、変換した前後横方向の加速度の時間積分をG
Gr,G
Gf,G
Gs(但し、G
Grは前方方向に正の場合のみであり、G
Gfは後方方向に正の場合のみ)、変換した前後横方向のジャークの時間積分をJ
Jr,J
Jf,J
Js(但し、J
Jrは前方方向に正の場合のみであり、J
Jfは後方方向に正の場合のみ)とすると、S10の処理又はS14の処理で設定した係数K
Gr,K
Gf,K
Gs,K
Jr,K
Jf,K
Jsを用いて以下式に示す評価関数J1を生成する。
評価関数生成部21が式2に示す評価関数J1を生成すると、S18の処理が終了し、走行軌跡生成処理へ移行する(S20)。
S20の処理は、収束演算部22が実行し、ブロックの走行軌跡を、拘束条件を満足するように算出する処理である。最初に、収束演算部22は、道路境界線に基づいた拘束条件である拘束条件を設定する。収束演算部22は、例えば、ナビゲーションシステム33から道路境界線を含む道路環境情報を入力して、拘束条件を設定する。例えば、出発地点から目標地点までをブロックとし、当該ブロックを走行する軌跡を生成する場合、収束演算部22は、出発地点と目標地点とを結ぶ道路の幅、傾斜、カーブ半径等を入力して、拘束条件を設定する。これにより、車両はブロックにおいては道路上を走行しなければならないという、基本的な拘束条件が設定される。
次に、収束演算部22は、前回求めた走行軌跡(初回の収束演算の場合には初期軌跡)を用いて、拘束条件を満たすべく今回の走行軌跡を生成する。具体的には、例えば最急降下法で用いられる補正式に基づいて、前回求めた走行軌跡(初回の収束演算の場合には初期軌跡)を構成するパラメータに対して変更を加え、拘束条件を達成する走行軌跡に近い走行軌跡を生成する。S20の処理が終了すると、拘束条件判定処理へ移行する(S22)。
S22の処理は、収束演算部22が実行し、S20の処理で生成した走行軌跡が、拘束条件を満足するか否かを判定する処理である。S22の処理において、算出した走行軌跡が拘束条件を満たさないと判定した場合には、走行軌跡生成処理へ再度移行する(S20)。これにより、収束演算部22は、拘束条件を満たす走行軌跡を生成できるまで、S20に示す収束演算とS22に示す判定とを繰り返し行い(収束演算)、拘束条件を満たす走行軌跡を生成する(収束演算ステップ)。なお、S20及びS22の処理は、例えばブロックを所定距離で分割したメッシュごとにおいて行われる。
一方、S22の処理において、生成した走行軌跡が拘束条件を満たすと判定した場合には、走行軌跡生成処理へ移行する(S24)。S24の処理は、走行軌跡導出部23が実行し、S18の処理で生成した評価関数を用いて走行軌跡を導出する処理である。走行軌跡導出部23は、収束演算部22から拘束条件を入力し、入力した拘束条件を達成している状態で、例えば共役勾配法で用いられる補正式に基づいて、前回求めた走行軌跡(初回の収束演算ではS20で算出した収束条件を満たした走行軌跡)の評価値が小さくなるように、前回求めた走行軌跡のパラメータを変更して今回の走行軌跡を生成する。S24の処理が終了すると、評価条件判定処理へ移行する(S26)。
S26の処理は、走行軌跡導出部23が実行し、S24の処理で生成した走行軌跡を用いて、評価条件を満足しているか否かを判定する処理である。具体的には、走行軌跡導出部23は、S24の処理で生成した走行軌跡を用いて評価関数J1から評価値を算出し、算出した評価値が最小となった場合には、評価条件を満足していると判定する。評価値が最小となったか否かの判定は、今回の処理までに算出した評価値の変動、すなわち評価値の微分値が0あるいは略0になった場合に、評価値が最小であると判定する。S26の処理において、評価条件を満足していないと判定した場合には、走行軌跡生成処理へ再度移行する(S24)。これにより、走行軌跡導出部23は、乗り心地を優先させる評価条件を満たす走行軌跡を生成できるまでS24に示す収束演算とS26に示す判定とを繰り返し行い(収束演算)、乗り心地が優先された走行軌跡を生成する(走行軌跡導出ステップ)。S20の処理が終了すると、図2に示す制御処理を終了する。
以上で図2に示す制御処理は終了する。このように、走行軌跡生成部1は、乗り心地を評価する対象位置を設定し、当該対象位置の加速度及びジャークを評価関数の中に含めることで、乗り心地が確保された走行軌跡を生成することができる。
上述した通り、第1実施形態に係る走行軌跡生成部1によれば、車両5の前後左右に発生する加速度及びジャークを評価する項を含み乗り心地を優先させるための評価関数J1を生成し、道路境界線に基づいた拘束条件を達成するように収束演算して走行軌跡を導出し、拘束条件を達成している状態において、乗り心地を優先させるための評価関数J1を収束演算して走行軌跡を導出する。これにより、加減速及びジャークを抑え、乗員の乗り心地を向上させた走行軌跡を導出することができる。
また、第1実施形態に係る走行軌跡生成部1によれば、複数の乗員の着座位置や、一般的に乗り物酔いし易いとされる着座位置、送迎する対象者が座る着座位置等を考慮し、加速度及びジャークを評価する基準位置G1を決定することができる。よって、評価する基準位置G1がより正確となるため、乗員の乗り心地を一層向上することができると共に、評価する基準位置G1を乗り心地優先度Kiに基づいて決定することで、特定の乗員の乗り心地を優先的に向上させることができる。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る走行軌跡生成部は、第1実施形態に係る走行軌跡生成部1とほぼ同様に構成されるものであって、走行軌跡生成部1と比べ、運転者が操舵する転舵量を評価して走行軌跡を生成する機能を有する点が相違する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と重複する部分は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
本実施形態に係る走行軌跡生成装置(走行軌跡生成部)を備えた車両の構成は、第1実施形態に係る走行軌跡生成装置(走行軌跡生成部1)を備えた車両と同様であり、運転者支援システムを備え、特に、システムによる自動運転制御及び運転者による手動運転制御を協調させて運転制御を行う車両である。すなわち本実施形態に係る走行軌跡生成部を備えた車両においては、自動運転制御中に運転者の操舵をセンサ31によって検知した場合には、ECU2によって手動運転制御と自動運転制御とを協調させることが可能な構成とされている。
また、本実施形態に係る走行軌跡生成部は、第1実施形態に係る走行軌跡生成部1と同様に構成され、評価関数生成部21が有する機能が相違する。すなわち、本実施形態に係る評価関数生成部21は、運転者によって操舵された転舵量を評価する項を含み操舵の際に運転者が受ける違和感を評価するための評価関数を生成する機能を有している。その他の機能は、第1実施形態の評価関数生成部21と同様である。
次に、第2実施形態に係る走行軌跡生成部の動作について説明する。図4は、第2実施形態に係る走行軌跡生成部の動作を示すフローチャートである。また、図5は第2実施形態に係る走行軌跡生成部の動作を説明するための概要図である。なお、以下では、説明理解の容易性を考慮して、図5に示すように、第2実施形態に係る走行軌跡生成部を備える車両5がレーンチェンジを行う場合について説明する。また、乗員の乗り心地については評価せず、所定区間の目標到達時間を達成しつつ、運転者の違和感が解消された走行軌跡を生成する例を説明する。
図4に示す制御処理は、例えばイグニッションオンされてから所定のタイミングで繰り返し実行される。
図4に示す制御処理が開始されると、ECU2は、レーンチェンジ確認処理から開始する(S30)。S30の処理は、ECU2が実行し、車両5が所定区間においてレーンチェンジを実行する予定であるか否かを判定する処理である。ECU2は、例えば、ナビゲーションシステム33から車線情報等を含む道路環境情報を入力し、センサ31によって周辺の車両情報や、ナビゲーションシステム33等を用いて交通情報を入力し、車両5がレーンチェンジする予定であるか否かを判定する。S30の処理において、車両5がレーンチェンジを行う予定がないと判定した場合には、図4に示す制御処理を終了する。一方、S30の処理において、車両5がレーンチェンジを行う予定であると判定した場合には、評価関数生成処理へ移行する(S32)。
S32の処理は、評価関数生成部21が実行し、運転者による転舵量を評価する項を含む評価関数を生成する処理である(評価関数生成ステップ)。まず、評価関数生成部21は、例えば図5に示すように、車両5がレーン1からレーン2へレーンチェンジする場合において、レーンチェンジ開始から終了までの区間L1を、レーンチェンジ序盤ブロックL11、レーンチェンジ中盤ブロックL12、レーンチェンジ終盤ブロックL13の3つのブロックに分割し、それぞれのブロックにおける転舵角を評価する項の係数KL11,KL12,KL13を0に仮設定する。
ここで、一般的に、運転者は乗員と異なり、操舵容易性に優れた軌跡を好む傾向にあり、運転者が想定する走行軌跡と異なる走行軌跡に違和感を覚える傾向にある。具体的には、レーンチェンジにおいて、乗員の乗り心地や摩擦円使用率のみを考慮して走行軌跡を導出する場合には、一定速の転舵を断続的に行う走行軌跡、又は、符号を変えながら一定速の転舵を断続的に行う走行軌跡となるが、運転者は、レーンチェンジ前半ではレーン位置合わせの目標が遠いため、不必要な転舵は行わず、レーンチェンジ後半では目標レーン位置合わせをスムーズかつ容易に行うために転舵を継続的に行うという感覚を持っている。すなわち運転者は、目標位置にある程度到着する前までは、常に操舵が発生するような運転よりも操舵角を一定とする運転を好む傾向にある。よって、評価関数生成部21はレーンチェンジ中盤ブロックL12における操舵角が一定になるべく近くなる走行軌跡を生成するために、レーンチェンジ中盤ブロックL12における単位時間内の舵の変化量である転舵角を評価する項の係数K
L12を、例えば0から0.3に再設定する。そして、評価関数生成部21は、1つのブロックがn(n:自然数)個のメッシュに分割されているとし、先頭からn番目のメッシュにおける、メッシュ通過時間をt
n、単位時間内の舵の変化量である転舵量をθ
nとすると、係数K
Li(i:11,12,13)用いて以下式に示す評価関数J2を生成する。
評価関数生成部21が式3に示す評価関数J2を生成すると、S32の処理が終了し、走行軌跡生成処理へ移行する(S34)。
S34の処理は、収束演算部22が実行し、ブロックの走行軌跡を、拘束条件を満足するように算出する処理である。最初に、収束演算部22は、道路境界線に基づいた拘束条件である拘束条件を設定する。収束演算部22は、例えば、第1実施形態と同様に、車両はブロックにおいては道路上を走行しなければならないという、基本的な拘束条件を設定する。
次に、収束演算部22は、第1実施形態と同様に、前回求めた走行軌跡(初回の収束演算の場合には初期軌跡)を用いて、拘束条件を満たすべく今回の走行軌跡を生成する。S34の処理が終了すると、拘束条件判定処理へ移行する(S36)。
S36の処理は、収束演算部22が実行し、S34の処理で生成した走行軌跡が、拘束条件を満足するか否かを判定する処理である。S36の処理において、算出した走行軌跡が拘束条件を満たさないと判定した場合には、走行軌跡生成処理へ再度移行する(S34)。これにより、収束演算部22は、第1実施形態と同様に、拘束条件を満たす走行軌跡を生成できるまで、S34に示す収束演算とS36に示す判定とを繰り返し行い(収束演算)、拘束条件を満たす走行軌跡を生成する(収束演算ステップ)。なお、S34及びS36の処理は、例えばブロックを所定距離で分割したメッシュごとにおいて行われる。
一方、S36の処理において、生成した走行軌跡が拘束条件を満たすと判定した場合には、走行軌跡生成処理へ移行する(S38)。S38の処理は、第1実施形態と同様に、走行軌跡導出部23が実行し、S32の処理で生成した評価関数を用いて走行軌跡を導出する処理である。S38の処理が終了すると、評価条件判定処理へ移行する(S40)。
S40の処理は、走行軌跡導出部23が実行し、第1実施形態と同様に、S38の処理で生成した走行軌跡を用いて、評価条件を満足しているか否かを判定する処理である。S40の処理において、評価条件を満足していないと判定した場合には、走行軌跡生成処理へ再度移行する(S38)。これにより、走行軌跡導出部23は、単位時間内の舵の変化量が小さい走行軌跡、すなわち運転者が受ける違和感を低減させる評価条件を満たす走行軌跡を生成できるまでS38に示す収束演算とS40に示す判定とを繰り返し行い(収束演算)、運転者が受ける違和感を低減させた走行軌跡を生成する(走行軌跡導出ステップ)。S40の処理が終了すると、図4に示す制御処理を終了する。
以上で図4に示す制御処理は終了する。このように、走行軌跡生成部は、運転者が保舵を好む領域において、単位時間当たりの舵の変化量である転舵量を評価する項を含む評価関数を生成して走行軌跡を生成することにより、運転者が受ける違和感を抑制した走行軌跡を生成することができる。
上述した通り、第2実施形態に係る走行軌跡生成部によれば、転舵量を評価する項を含み運転者が操舵時に受ける違和感の度合いを評価するための評価関数J2を生成することで、レーンチェンジ中において転舵角が一様な走行軌跡とならず、運転者が保舵を好む領域において転舵量を抑えて、運転者が受ける違和感を抑制することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態に係る走行軌跡生成部は、第1実施形態に係る走行軌跡生成部1とほぼ同様に構成されるものであって、走行軌跡生成部1と比べ、運転者が操舵した転舵量を評価して走行軌跡を生成する機能を有する点が相違する。また、運転者が操舵した転舵量に基づいて運転者の介入の度合いを評価し、転舵量を評価する項の係数を介入の度合いに基づいて決定して走行軌跡を生成する機能を有する点が相違する。なお、第3実施形態においては、第1実施形態及び第2実施形態と重複する部分は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
本実施形態に係る走行軌跡生成装置(走行軌跡生成部)を備えた車両の構成は、第1実施形態に係る走行軌跡生成装置(走行軌跡生成部1)を備えた車両と同様であり、運転者支援システムを備え、特にシステムによる自動運転制御及び運転者による手動運転制御を協調させて運転制御を行う車両である。すなわち本実施形態に係る走行軌跡生成部を備えた車両においては、自動運転制御中に運転者が操舵したハンドル舵角をセンサ31によって検知した場合には、ECU2によって手動運転制御と自動運転制御とを協調させることが可能な構成とされている。
また、本実施形態に係る走行軌跡生成部は、第1実施形態に係る走行軌跡生成部1と同様に構成され、評価関数生成部21が有する機能が相違する。すなわち、本実施形態に係る評価関数生成部21は、運転者によって操舵された転舵量を評価する項を含み操舵の際に運転者が受ける違和感を評価するための評価関数を生成する機能を有している。また、評価関数生成部21は、転舵量を評価する項の係数をハンドル角に基づいて決定する機能を有している。具体的には、車両5においてハンドル角に応じてタイヤ角を変化させる制御が行われている場合であって、運転者が操舵するハンドル角に応じたタイヤ角の変化量が大きいほど手動による介入度合いが大きいとして、転舵量を評価する項の係数を大きく設定する機能である。その他の機能は、第1実施形態の評価関数生成部21と同様である。
次に、第3実施形態に係る走行軌跡生成部の動作について説明する。図6は、第3実施形態に係る走行軌跡生成部の動作を示すフローチャートである。以下では、所定区間の目標到達時間を達成しつつ、乗員の乗り心地向上及び運転者の違和感解消の両方を実現した走行軌跡を生成する例を説明する。なお、走行軌跡生成部はステアリングギア比可変機構を有する操舵制御装置を備えた車両5に採用されているものとする。
図6に示す制御処理は、例えばイグニッションオンされてから所定のタイミングで繰り返し実行される。
図6に示す制御処理が開始されると、評価関数生成部21は、乗員数カウント処理から開始する(S50)。S50の処理は、評価関数生成部21が実行し、センサ31の着座センサ等から入力した情報に基づいて車両5内の運転者以外の乗員の有無を判定し、乗員がいると判定した場合には乗員の数PDをカウントし合計乗員数を算出する処理である。また、運転者以外の乗員がいると判定した場合には、第2実施形態の処理(図2のS16)と同様に、乗員が着座している座標を入力する。S50の処理が終了すると、評価関数の係数設定処理へ移行する(S52)。
S52の処理は、評価関数生成部21が実行し、評価関数の係数を設定する処理である。本実施形態において求める走行軌跡は、所定の目標走行時間を満たす状態において、乗員の乗り心地向上及び運転者の違和感解消の両方を実現した走行軌跡であるので、評価関数には、到着時間を評価する項、運転者が受ける違和感を評価する項、及び乗員の乗り心地を評価する項を含んでおり、これらの項の係数をそれぞれ設定する。
まず、評価関数生成部21は、運転者が受ける違和感を評価する項の係数を、手動運転制御の介入度合い(手動率S
T)に応じて設定する。手動率S
Tは、例えば図7に示すグラフのハンドル角タイヤ角対応マップによって決定される。このマップは、ステアリングギア比可変機能におけるギア比マップに対応するものであり、横軸がハンドル角、縦軸がタイヤ角、それぞれの正の値が右回転方向、負の値が左回転方向を示している。車両5は、運転者が操舵すると、このマップに基づいて、ステアリングギア比が変更される構成とされている。図示した基本マップBMは、ハンドル角に対してタイヤ角を45°とした基本的なマップであり、例えば通常走行(ステアリングギア比が一定)を想定して予め用意されたものである。これに対して、システムが制御目標とする目標誘導タイヤ角(基本マップBMと誘導目標タイヤ角マップGMとの交点)P付近において、ハンドル角に対してタイヤ角の変化量を小さくしたハンドル角タイヤ角対応マップが誘導目標タイヤ角マップGMである。誘導目標タイヤ角マップGMは、走行中に目標走行軌跡から動的に生成してもよいし、道路形状に対応させて予め設定されていてもよい。このような誘導目標タイヤ角マップGMを誘導操舵制御に採用した場合、例えば運転者がハンドル角をH2に示す範囲内となるように操舵をすると、ハンドル角に対してタイヤ角があまり変化せず、操舵後のタイヤ角が誘導目標タイヤ角P付近になるように制御され、反対に、例えば運転者がハンドル角をH1,H3に示す範囲内となるように操舵をすると、通常走行かそれ以上にハンドル角に対してタイヤ角が変化するように制御される。すなわち、運転者がH2に示す範囲内を超えたハンドル操作をする場合は、システムが誘導する走行軌跡に満足していないことを示しており、この度合い(手動率S
T)を誘導目標タイヤ角マップGMの傾きとして評価する。手動率S
Tは、センサ31が入力したハンドル角における誘導目標タイヤ角マップGMの傾きをT
Hとして以下式で表すことができる。
評価関数生成部21は、式4で生成した手動率S
T及び補正係数μ
0(例えば、3以上)を用いて、運転者が受ける違和感を評価する項の係数K
JBを式5のように設定する。
次に、評価関数生成部21は、乗員の乗り心地を評価する項の係数を、乗員数に応じて設定する。最初に、評価関数生成部21は、S50の処理で検知した乗員数P
D及び手動率S
Tを用いて、運転者を含めた乗員数P
Cを式6に示す式を用いて算出する。
評価関数生成部21は、式6を用いて算出した乗員数P
C、車両定員数Z
0及び補正係数μ
1(例えば、3以上)を用いて、乗員の乗り心地を評価する項の係数K
JAを式7のように設定する。
このように、評価関数生成部21は、運転者が受ける違和感を評価する項の係数KJB及び乗員の乗り心地を評価する項の係数KJAを設定する。なお、評価関数には、到着時間を評価する項が含まれているが、この係数は、他の係数との数学的関係により(1−KJA−KJB)と算出される。S52の処理が終了すると、評価関数の生成処理へ移行する(S54)。
S54の処理は、評価関数生成部21が実行し、S52の処理で設定した評価関数の係数に基づいて評価関数を生成する処理である(評価関数生成ステップ)。評価関数生成部21は、1つのブロックがn(n:自然数)個のメッシュに分割されているとし、先頭からn番目のメッシュにおいて、メッシュ通過時間をt
n、乗員の乗り心地を評価する評価関数(例えば、第1実施形態で説明した評価関数J1)をJA、運転者が受ける違和感を評価する評価関数(例えば、第2実施形態で説明した評価関数J2)をJBとすると、S52の処理で設定した評価関数の係数に基づいて以下式に示す評価関数を生成する。
評価関数生成部21が式8に示す評価関数J3を生成すると、S54の処理が終了し、走行軌跡生成処理へ移行する(S56)。
S56の処理は、収束演算部22が実行し、ブロックの走行軌跡を、拘束条件を満足するように算出する処理である。最初に、収束演算部22は、道路境界線に基づいた拘束条件である拘束条件を設定する。収束演算部22は、例えば、第1実施形態と同様に、車両はブロックにおいては道路上を走行しなければならないという、基本的な拘束条件を設定する。
次に、収束演算部22は、第1実施形態と同様に、前回求めた走行軌跡(初回の収束演算の場合には初期軌跡)を用いて、拘束条件を満たすべく今回の走行軌跡を生成する。S56の処理が終了すると、拘束条件判定処理へ移行する(S58)。
S58の処理は、収束演算部22が実行し、S56の処理で生成した走行軌跡が、拘束条件を満足するか否かを判定する処理である。S58の処理において、算出した走行軌跡が拘束条件を満たさないと判定した場合には、走行軌跡生成処理へ再度移行する(S56)。これにより、収束演算部22は、第1実施形態と同様に、拘束条件を満たす走行軌跡を生成できるまで、S56に示す収束演算とS58に示す判定とを繰り返し行い(収束演算)、拘束条件を満たす走行軌跡を生成する(収束演算ステップ)。なお、S56及びS58の処理は、例えばブロックを所定距離で分割したメッシュごとにおいて行われる。
一方、S58の処理において、生成した走行軌跡が拘束条件を満たすと判定した場合には、走行軌跡生成処理へ移行する(S60)。S60の処理は、第1実施形態と同様に、走行軌跡導出部23が実行し、S54の処理で生成した評価関数J3を用いて走行軌跡を導出する処理である。S60の処理が終了すると、評価条件判定処理へ移行する(S62)。
S62の処理は、走行軌跡導出部23が実行し、第1実施形態と同様に、S60の処理で生成した走行軌跡を用いて、評価条件を満足しているか否かを判定する処理である。S62の処理において、評価条件を満足していないと判定した場合には、走行軌跡生成処理へ再度移行する(S60)。これにより、走行軌跡導出部23は、通過時間をなるべく短くし、運転者が受ける違和感を減らしつつ、乗員の乗り心地を向上させた走行軌跡を生成できるまでS60に示す収束演算とS62に示す判定とを繰り返し行い(収束演算)、運転者が受ける違和感を低減させた走行軌跡を生成する(走行軌跡導出ステップ)。S62の処理が終了すると、図6に示す制御処理を終了する。
以上で図6に示す制御処理は終了する。このように、走行軌跡生成部は、運転者が受ける違和感を評価する項及び乗員の乗り心地を評価する項の両方を評価関数に含ませることにより、運転者が受ける違和感を抑制しながら乗員の乗り心地を向上させた走行軌跡を生成することができる。
上述した通り、第3実施形態に係る走行軌跡生成部によれば、評価関数生成部21は、乗員の乗り心地を優先した際に運転者が受ける違和感の程度を運転者の介入の度合いによって規定することで、運転者の操舵操作の介入度合いが高いほど転舵量を評価する項の重み付けを自動で大きく設定できるので、運転者が受ける違和感の低減と乗員の乗り心地の向上を両立させることができる。
(第4実施形態)
第4実施形態に係る走行軌跡生成部は、第1実施形態に係る走行軌跡生成部1とほぼ同様に構成されるものであって、走行軌跡生成部1と比べ、特に運転者の実操作による走行軌跡と理想的な走行軌跡とを比較して学習し、運転者が受ける違和感を抑制する機能を有する点が相違する。なお、第4実施形態においては、第1〜3実施形態と重複する部分は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
本実施形態に係る走行軌跡生成装置(走行軌跡生成部)を備えた車両の構成は、第1実施形態に係る走行軌跡生成装置(走行軌跡生成部1)を備えた車両の構成と同様であり、運転者支援システムを備え、自動運転制御及び手動運転制御を切替可能な構成とされている。また、システムによる自動運転制御及び運転者による手動運転制御を協調させて運転制御を行える構成とされている。すなわち本実施形態に係る走行軌跡生成部を備えた車両において自動運転制御中に運転者が操舵したハンドル舵角をセンサ31によって検知した場合には、ECU2によって手動運転制御と自動運転制御とを協調させることが可能な構成とされている。
また、本実施形態に係る走行軌跡生成部は、第1実施形態に係る走行軌跡生成部1と同様に構成され、評価関数生成部21が有する機能が相違する。すなわち、本実施形態に係る評価関数生成部21は、運転者が実操作によって走行をした場合の走行軌跡(実走行軌跡)を取得する機能を有している。また、道路形状や運転者の希望する通過時間、燃費、乗員の乗り心地、及び運転者が受ける違和感を満たす理想的な走行軌跡(理想走行軌跡)を生成する機能を有している。さらに、取得した実走行軌跡と算出した理想走行軌跡とをそれぞれ比較して、その差が大きい走行軌跡に係る評価項目ほど、評価関数における当該評価項目を評価する項の重み付けを大きくする機能を有している。評価関数における評価項目としては、例えば、到達時間、燃費、操舵の際に運転者が受ける違和感、乗員の乗り心地等が含まれる。これらの評価項目の評価方法は、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。また、その他の機能は、第1実施形態の評価関数生成部21と同様である。
次に、第4実施形態に係る走行軌跡生成部の動作について説明する。図8は、第4実施形態に係る走行軌跡生成部の動作を示すフローチャートである。以下では、所定区間の目標到達時間及び所定の低燃費を達成しつつ、乗員の乗り心地向上及び運転者の違和感解消の両方を実現した走行軌跡を生成する例を説明する。
図8に示す制御処理は、例えばイグニッションオンされてから所定のタイミングで繰り返し実行される。
図8に示す制御処理が開始されると、走行軌跡生成部は、手動運転確認処理を実行する(S70)。S70の処理は、ECU2が実行し、運転者の実操作による完全な手動運転が行われているか否かを判定する処理である。例えば、ECU2は、操舵制御部28や加減速制御部29が制御信号を出力しているか否かを確認し、制御信号が出力されていない場合には完全な手動運転制御中であると判定し、制御信号が出力されている場合には完全な手動運転制御でないと判定する。あるいは、自動運転フラグ等を用いてもよいし、操舵量を検知して手動運転であると判定してもよい。S70の処理において、完全手動運転制御であると判定した場合には、各評価項目に係る走行軌跡生成処理へ移行する(S72)。
S72の処理は、評価関数生成部21が実行し、各評価項目に係る走行軌跡を生成する処理である。ここでは、走行時間、燃費、運転者が受ける違和感、乗り心地の4つの評価項目を評価関数が含む場合を説明する。例えば、最も乗り心地のよい走行軌跡であれば、第1実施形態とほぼ同様に、車両の前後左右に発生する加速度及びジャークを評価する項のみを含んだ評価関数を用いて導出する。また、運転者が受ける違和感を最も低減した走行軌跡であれば、第2実施形態とほぼ同様に、転舵量を評価する項のみを含んだ評価関数を用いて導出する。また、最速走行軌跡であれば、通過時間を評価する項のみを含む評価関数、低燃費走行軌跡であれば、燃費を評価する項のみを含む評価関数をそれぞれ用いて導出する。導出方法として、具体的には、例えば、道路境界線に基づいた拘束条件を達成するように収束演算して走行軌跡を導出し、拘束条件を達成している状態において、評価関数を収束演算して走行軌跡を導出する。なお、低燃費走行軌跡においては、速度が0の場合が最も低燃費であるという解を除外するために、燃費を評価する項に比べて小さい重み付けで、通過時間を評価する項目を含んでもよい。このように、評価関数生成部21は、各評価項目それぞれにおいて、最も理想的な走行軌跡を生成する。S72の処理が終了すると、評価関数の係数生成処理へ移行する(S74)。
S74の処理は、評価関数生成部21が実行し、評価関数が評価する評価項目にかかる項の係数をそれぞれ決定する処理である。まず、評価関数生成部21は、運転者の実操作における走行軌跡を取得する。例えば、センサ31からタイヤ角等を入力して走行軌跡を取得する。ここで、図9に示すように、区間ABに示すブロックにおいて、S74の処理で導出した最速走行軌跡をR2、低燃費走行軌跡をR3とし、実操作によって得られた走行軌跡がR4とすると、実操作の走行軌跡R4は低燃費走行軌跡R3に近いので、評価関数において低燃費を評価する項の係数を大きく設定することにより、実操作に近い走行軌跡を得ることができる。よって、評価関数生成部21は、実操作における走行軌跡と、S72の処理で導出した各評価項目における理想軌跡とをそれぞれ比較し、理想軌跡が実走行軌跡にどの程度類似しているかを、手動類似度Mを用いて確認する。例えば、実走行軌跡上の各地点(n個)から最速走行軌跡の最も近い点までの距離をL
nとし、最速走行軌跡の手動類似度M
H1を以下式で表す。
評価関数生成部21は、上述した最速走行軌跡の場合と同様の方法で、各評価項目に係る走行軌跡と実走行軌跡とを比較し、各手動類似度を算出する。ここでは、例えば、低燃費走行軌跡の手動率類似度M
H2、最も運転者が受ける違和感が抑制された走行軌跡の手動率類似度M
H3、最も乗り心地のよい走行軌跡の手動率類似度M
H4等を算出する。そして、評価関数生成部21は、例えば、ある評価関数の評価項目にかかる走行軌跡の手動率類似度をM
Hmとすると、その評価項目の係数K
Hmを、以下式を用いて算出する。
評価関数生成部21は、式10を用いて各評価項目の係数KHmを手動率類似度に基づいてそれぞれ決定する。ここでは、例えば、走行時間を評価する項の係数KH1、燃費を評価する項の係数KH4、運転者が受ける違和感を評価する項の係数KH3、乗り心地を評価する項の係数KH2を決定する。S74の処理が終了すると、図8に示す制御処理は終了する。
一方、S70の処理において、完全手動運転制御であると判定しない場合には、協調運転判定処理へ移行する(S76)。S76の処理は、ECU2で実行され、自動運転制御と手動運転制御とを協調させた協調運転制御をしているか否かを判定する処理である。例えば、ECU2は、センサ31から操舵を検知しており、かつ、操舵制御部28が制御信号を出力している場合には、協調運転制御をしていると判定する。他方、ECU2は、センサ31から操舵を検知していない場合には、協調運転制御をしていないと判定する。S76の処理において、協調運転制御をしていると判定した場合には、走行軌跡生成処理へ移行する(S78)。
S78の処理は、収束演算部22が実行し、ブロックの走行軌跡を、拘束条件を満足するように算出する処理である。最初に、収束演算部22は、道路境界線に基づいた拘束条件である拘束条件を設定する。収束演算部22は、例えば、第1実施形態と同様に、車両はブロックにおいては道路上を走行しなければならないという、基本的な拘束条件を設定する。また、例えば操作部32から運転者によって到達時間(平均車速)が指定されている場合には、拘束条件に加える。この場合、後述する評価関数には到達時間を評価する項を除くために、到達時間を評価する項の係数を0に設定する。
次に、収束演算部22は、第1実施形態と同様に、前回求めた走行軌跡(初回の収束演算の場合には初期軌跡)を用いて、拘束条件を満たすべく今回の走行軌跡を生成する。S78の処理が終了すると、拘束条件判定処理へ移行する(S80)。
S80の処理は、収束演算部22が実行し、S78の処理で生成した走行軌跡が、拘束条件を満足するか否かを判定する処理である。S80の処理において、算出した走行軌跡が拘束条件を満たさないと判定した場合には、走行軌跡生成処理へ再度移行する(S78)。これにより、収束演算部22は、第1実施形態と同様に、拘束条件を満たす走行軌跡を生成できるまで、S78に示す収束演算とS80に示す判定とを繰り返し行い(収束演算)、拘束条件を満たす走行軌跡を生成する(収束演算ステップ)。なお、S78及びS80の処理は、例えばブロックを所定距離で分割したメッシュごとにおいて行われる。
一方、S80の処理において、生成した走行軌跡が拘束条件を満たすと判定した場合には、燃費優先係数補正処理へ移行する(S82)。S82の処理は、評価関数生成部21が実行し、評価関数における燃費を優先させる項を補正する処理である。評価関数生成部21は、燃料残量に基づいてS74の処理で生成した燃費を優先させる係数KH4を補正する。例えば、センサ31等から燃料残量を入力し、入力した燃料残量がタンク最大量の25%未満である場合には、KH4を2倍とする補正を行う。S82の処理が終了すると、評価関数生成処理へ移行する(S84)。
S84の処理は、評価関数生成部21が実行し、S74、S78、S82の処理で決定した評価関数に含まれる項の係数に基づいて、評価関数を生成する処理である(評価関数生成ステップ)。評価関数生成部21は、1つのブロックがn(n:自然数)個のメッシュに分割されているとし、先頭からn番目のメッシュにおける、メッシュ通過時間をt
n、乗員の乗り心地を評価する評価関数(例えば、第1実施形態で説明した評価関数J1)をJA、運転者が受ける違和感を評価する評価関数(例えば、第2実施形態で説明した評価関数J2)をJB、燃費を優先する評価関数をJCすると、燃費優先評価関数JCの係数に基づいて以下式に示す評価関数J4を生成する。
なお、評価関数生成部21は、S82の処理において、燃費を評価する係数KH4が補正されている場合には、その補正を反映する。また、S78の処理において、到達時間を拘束条件の中に含ませた場合には、到達時間を評価する係数KH1を0とする。S84の処理が終了すると、走行軌跡生成処理へ移行する(S86)。
S86の処理は、走行軌跡導出部23が実行し、S78の処理で生成した評価関数を用いて走行軌跡を導出する処理である。走行軌跡導出部23は、第1実施形態と同様に、収束演算部22から拘束条件を入力し、入力した拘束条件を達成している状態で、例えば共役勾配法で用いられる補正式に基づいて、前回求めた走行軌跡(初回の収束演算ではS56で算出した収束条件を満たした走行軌跡)の評価値が小さくなるように、前回求めた走行軌跡のパラメータを変更して今回の走行軌跡を生成する。S86の処理が終了すると、評価条件判定処理へ移行する(S88)。
S88の処理は、走行軌跡導出部23が実行し、S86の処理で生成した走行軌跡を用いて、評価条件を満足しているか否かを判定する処理である。具体的には、走行軌跡導出部23は、第1実施形態と同様に、S86の処理で生成した走行軌跡を用いて評価関数J4から評価値を算出し、算出した評価値が最小となった場合には、評価条件を満足していると判定する。評価値が最小となったか否かの判定は、今回の処理までに算出した評価値の変動、すなわち評価値の微分値が0あるいは略0になった場合に、評価値が最小であると判定する。S88の処理において、評価条件を満足していないと判定した場合には、走行軌跡生成処理へ再度移行する(S86)。これにより、走行軌跡導出部23は、通過時間をなるべく短くし、低燃費で、運転者が受ける違和感を減らしつつ、乗員の乗り心地を向上させた走行軌跡を生成できるまでS86に示す収束演算とS88に示す判定とを繰り返し行い(収束演算)、走行軌跡を生成する(走行軌跡導出ステップ)。S88の処理が終了すると、図8に示す制御処理を終了する。
一方、S76の処理において、協調運転制御をしていると判定した場合には、図8に示す制御処理を終了する。
以上で図8に示す制御処理は終了する。このように、走行軌跡生成部は、運転者が実際に操舵した走行軌跡と理想的な走行軌跡とを比べて、実操作の走行軌跡に近づくように学習して評価関数の重み付けを変更し走行軌跡を算出することができるので、運転者が受ける違和感を低減することができる。
上述した通り、第4実施形態に係る走行軌跡生成部によれば、運転者が実際に操作した走行軌跡と、道路状況や路面状態等によって決定される理想的な走行軌跡とを比較して学習し、運転者が実際に操舵した走行軌跡に近くなるように評価関数J4の係数を補正することができる。これにより、運転者が受ける違和感をより一層抑えることが可能となる。
なお、上述した各実施形態は本発明に係る走行軌跡生成方法又は走行軌跡生成装置の一例を示すものである。本発明に係る走行軌跡生成方法又は走行軌跡生成装置は、各実施形態に係る走行軌跡生成方法又は走行軌跡生成装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、各実施形態に係る走行軌跡生成方法又は走行軌跡生成装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、上記各実施形態の評価関数には、通過時間を評価する項、低燃費走行を評価する項等を評価する項目に応じて適宜含んでもよい。すなわち、通過時間を評価する項を含んだ評価関数とすることで、例えば第1実施形態においては、乗り心地に影響する区間においては加減速及びジャークを抑え、反対に、乗り心地に影響しない区間においては最大加減速及び最大ジャークを実行する走行軌跡とすることができる。また、低燃費走行を評価する項を含んだ評価関数とする場合には、横加速度評価係数KGsを他の評価項目の係数よりも小さく設定することにより、カーブを高速で通過することが可能となり、最低限の乗り心地低下と燃費向上の両立が可能となる。また、車両5がハイブリット車両の場合であって、低燃費走行を評価する項を含んだ評価関数とする場合には、減速加速度評価係数KGfを大きく設定することにより、エネルギーを大気放出させるような回生範囲を超えた減速が少なくなり、燃費向上と乗り心地との両立を図ることができる。
また、第1実施形態において、乗員の着座位置や乗員の乗り心地優先度に基づく評価関数の例を説明したが、これらを考慮しない場合であっても乗員の乗り心地の評価関数を導出できる。
また、第2実施形態において、評価関数には乗員の乗り心地を評価する項を含んでもよい。これにより、乗員の乗り心地の向上と運転者が受ける違和感の低減を達成した走行軌跡を生成することができる。また、第2実施形態においては、レーンチェンジの例を説明したが、レーンチェンジ以外の場面でも運転者が受ける違和感を評価した評価関数を用いて、運転者が受ける違和感を低減させた走行軌跡を生成することができる。
また、第3実施形態において、運転者の介入度合いを、マップを用いて導出する例を説明したが、運転者の介入度合いの求め方は他の方法でもよい。
さらに、第4実施形態において、通過時間、燃費、乗員の乗り心地、運転者が受ける違和感を評価する評価関数を用いた例を説明したが、評価関数は、これら4つの評価項目のうちの少なくとも2つ、又は他の評価項目としてもよい。さらに、優先係数の求め方は他の方法でもよい。
1…走行軌跡生成部(走行軌跡生成装置)、2…ECU、21…評価関数生成部(評価関数生成ステップ)、22…収束演算部(収束演算ステップ)、23…走行軌跡導出部(走行軌跡導出ステップ)。