JP5029157B2 - プロピレン(共)重合体の満液重合法 - Google Patents

プロピレン(共)重合体の満液重合法 Download PDF

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Description

本発明は、満液状態でスラリー重合が行われている重合反応器中のプロピレン重合体のスラリー濃度を測定する方法、および該スラリー濃度を測定しつつプロピレン重合体を製造する方法に関する。
オレフィンを満液状態で重合させてオレフィン重合体を製造する方法は公知である。例えば、特開平11−12310号公報には、均一系触媒を用いた塊状重合による満液状態でのプロピレンの重合方法が開示されており、特開2002−60402号公報には、満液重合反応器、該反応器から重合体スラリーを排出する方法、および該排出方法を用いるオレフィン重合体の製造方法が開示されている。
特開平11−12310号公報 特開2002−60402号公報
上記公報等に記載されているオレフィンを満液状態で重合させてオレフィン重合体を製造する方法で、オレフィンの満液重合中に重合条件を変更する場合、例えば、オレフィン重合体の製造量を増加または減少させるために重合温度および重合圧力を一定に維持したままオレフィンの供給速度を増加または減少させる場合、重合を安定に継続するために重合温度および重合圧力が設定値から過度に変動しないよう注意深く制御しながら、オレフィンの供給速度と、重合熱を除去するための冷却水の供給速度とを変更する。そして、上記のような重合条件を変更する場合に、満液重合を安定に継続するために常時監視し把握する項目は、重合反応器中のオレフィン重合体のスラリー濃度である。
かかる従来技術の状況の下、本発明の目的は、満液状態でスラリー重合が行われている重合反応器中のプロピレン重合体のスラリー濃度を測定する方法、および該スラリー濃度を測定しつつプロピレン重合体を安定に製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、安定な満液重合によってプロピレン重合体を製造する方法について鋭意検討を続けてきた。その結果、本発明が上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
満液状態でプロピレン又はプロピレンとコモノマーとのスラリー重合が行われている重合反応器中のプロピレン単位とコモノマー単位との合計を100重量%として、プロピレン単位96〜100重量%と、エチレン単位および炭素数4〜8のα−オレフィン単位からなる群から選ばれるコモノマー単位0〜4重量%とを含有する重合体であるプロピレン重合体のスラリー濃度を下式(1)に基づいて測定する方法に係るものである。
スラリー濃度(重量%)=0.1(QO−QI)/(QPI) (1)
(式中、QOは重合反応器から除去される単位時間あたりの熱量(kcal/時間)を表し;QIは重合反応器へ持ち込まれる単位時間あたりの熱量(kcal/時間)を表し;QPはプロピレンの単位重量あたりの重合熱量(kcal/kg)を表し;PIは重合反応器へのプロピレンの供給速度(トン/時間)を表す。)
また、本発明は、
満液状態でスラリー重合が行われている重合反応器中のプロピレン単位とコモノマー単位との合計を100重量%として、プロピレン単位96〜100重量%と、エチレン単位および炭素数4〜8のα−オレフィン単位からなる群から選ばれるコモノマー単位0〜4重量%とを含有する重合体であるプロピレン重合体のスラリー濃度を下式(1)に基づいて測定しつつ、プロピレンを単独重合またはプロピレンとコモノマーとを共重合させる工程からなるプロピレン重合体の製造方法に係るものである。
スラリー濃度(重量%)=0.1(QO−QI)/(QPI) (1)
(式中、QOは重合反応器から除去される単位時間あたりの熱量(kcal/時間)を表し;QIは重合反応器へ持ち込まれる単位時間あたりの熱量(kcal/時間)を表し;QPはプロピレンの単位重量あたりの重合熱量(kcal/kg)を表し;PIはプロピレンの供給速度(トン/時間)を表す。)
本発明のスラリー濃度を測定する方法によれば、満液状態でスラリー重合が行われている重合反応器中のプロピレン重合体のスラリー濃度を測定することができる。
また、本発明のプロピレン重合体の製造方法によれば、該スラリー濃度を測定しつつプロピレン重合体を安定に製造することができる。
本発明における「満液」とは、重合反応器の内部が全て液相のみで満たされていて気相が存在しないことを意味する。該液相とは実質上、重合される単量体自体を液状の媒体とする液相を意味する。該媒体として、より好ましくはプロピレンである。
本発明における「スラリー重合」は公知のスラリー重合であってもよい。したがって、それに用いられる重合反応器や重合条件のような要件は公知の要件であってもよい。本発明における重合温度は通常50〜70℃に設定され、重合圧力は通常3〜5MPaGに設定される。
本発明における「重合反応器」としては、槽型反応器であってもループリアクターであってもよい。満液状態の重合反応器は、満液状態でない他の重合反応器と組合せてもよい。該組合せとして、満液状態の重合反応器と、その後に直列に連結された気相重合槽との組合せを例示することができる。50,000〜100,000g−重合体/g−固体触媒成分のような高い重合活性を有する重合触媒を用いてプロピレン重合体を製造する場合に、該組合せのような、液相重合反応器と気相重合反応器との組合せによるプロピレン重合体の製造方法を一般的に例示することができる。
本発明において用い得る代表的な重合反応器である槽型反応器またはループリアクターは、通常、重合反応器から熱を除去するためのジャケットをその外周に有し、重合反応混合物を重合反応器内で循環させ攪拌するためのポンプを重合反応器内に有し、通常は、重合反応混合物を上記ジャケット以外でも冷却するための外部冷却器を備えた外部循環装置(モーター付)も有する。
本発明における「プロピレン重合体」は、プロピレン単独重合体、または多量のプロピレンに由来する単位(プロピレン単位と称する)と、少量のコモノマーに由来する単位(コモノマー単位と称する)とからなる共重合体を意味する。コモノマー単位として、エチレンに由来する単位(エチレン単位と称する)および炭素数4〜8のα−オレフィンに由来する単位(α−オレフィン単位と称する)からなる群から選ばれるコモノマーに由来する単位(コモノマー単位)を例示することができる。
該共重合体は、プロピレン単位とコモノマー単位との合計を100重量%として好ましくは、プロピレン単位96〜99重量%とコモノマー単位1〜4重量%とを含む。該α−オレフィンとして、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンを例示することができる。中でも、コモノマーとして、エチレンまたは1−ブテンが好ましい。該プロピレン重合体として、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン-1−ブテン共重合体またはプロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体が好ましい。
式(1)は、満液重合によるプロピレン重合体の製造に関して蓄積された、スラリー濃度(ただし、実際に製造されたプロピレン重合体の量と重合条件とに基づいて算出されたスラリー濃度であって、式(1)に基づいて測定されたスラリー濃度ではない)に関するデータ、重合反応器から除去される熱量に関するデータ、重合反応器へ持ち込まれる熱量に関するデータ、重合反応器へのプロピレンの供給量に関するデータ、重合温度に関するデータ、重合圧力に関するデータ、および分子量調節剤としての水素ガスの供給量に関するデータのような種々のデータを整理し、色々な角度から検討・考察した結果見出されたものである。
式(1)中のQOは重合反応器から除去される単位時間あたりの熱量(kcal/時間)であって、上記ジャケットによって除去される熱量(QO1)と、重合反応器へ供給される単量体を重合温度にまで昇温させるに要する熱量(QO2)と、大気中へ放出される熱量(QO3)と、場合によっては外部冷却器によって除去される熱量(QO4)との合計である。QO1〜QO4の熱量を求めるための種々の算出方法が知られている。
式(1)中のQIは重合反応器へ持ち込まれる単位時間あたりの熱量(kcal/時間)であって、それを構成する代表的な熱量は、上記ポンプの動力からの入熱(QI1)および上記外部循環装置の循環動力(QI2)からの入熱である。
式(1)中のQPは、プロピレン1kgの重合によって生じる熱量(kcal/kg)であって、510kcal/kgなる定数である。ちなみに、本発明におけるプロピレンとコモノマーとの共重合体は上記したとおり、多量のプロピレン単位と少量のコモノマー単位とからなるので、コモノマーの重合によって生じる熱量を考慮しなくても、式(1)の精度上の問題はない。
式(1)中のPIは、重合反応器へのプロピレンの単位時間あたりの供給量(トン/時間)である。プロピレンが複数の箇所から重合反応器へ供給される場合、これら供給量の合計をプロピレンの供給量とする。ちなみに、上記と同じ理由によって、コモノマーの供給量を考慮しなくても、式(1)の精度上の問題はない。
式(1)中の(QO−QI)は重合反応器内で発生した熱量であって、重合反応器への熱収支を測定することによって求めることができる。QPIは、重合反応器へ供給されたプロピレンの全量が重合した場合の重合熱量であって、プロピレンの重合熱量であるQP(510kcal/kg)と、重合反応器へのプロピレンの供給量であるPIとの積である。
本発明のスラリー濃度の測定法は以下のような場合に好ましく用いられ、(1)の場合に、より好ましく用いられる:
(1)プロピレン重合体の製造量を変更するために(増加または減少させるために)、満液重合中に、単量体の供給量を変更する(増加または減少させる)場合;
(2)重合温度を変更するために(上げる又は下げるために)、満液重合中に、ジャケットや外部冷却器へ供給する冷媒(通常は冷却水)の量を変更する(減少または増加させる)場合;
(3)プロピレン重合体のメルトインデックスを変更するために(上げる又は下げるために)、満液重合中に、分子量調節剤である水素ガスの供給量を変更する(増加または減少させる)場合。
上記(1)の場合は、式(1)で測定されるスラリー濃度を、変更後のプロピレン重合体製造量に基づいて別途算出されるスラリー濃度にまで安定に到達させるよう、式(1)で測定されるスラリー濃度を監視しつつ単量体の供給量を変更する。上記(2)のように重合温度を変更する場合や、上記(3)のように分子量調節剤の供給量を変更する場合は、単量体の重合反応性そのものが変化するので、単量体の供給量を変更させなくても、プロピレン重合体の製造量が変化する。したがって、該変化の下に、重合温度を安定に変更したり分子量調節剤の供給量を安定に変更したりするために、式(1)で測定されるスラリー濃度を監視する。
本発明のプロピレン重合体の製造方法において、プロピレン重合体のスラリー濃度、すなわち、重合反応混合物中のプロピレン重合体の量は、重合反応混合物の量を100重量%として、好ましくは5〜50重量%である。従って、該製造方法は、式(1)で測定されるスラリー濃度が好ましくは該範囲に入る条件下で実施される。スラリー濃度が5重量%未満であると、満液重合反応器の後に気相重合槽を直列に連結させた態様の場合、必要以上に多い量のプロピレンが該気相重合槽に供給され、経済的でなくなることがある。スラリー濃度が50重量%を超えると、満液重合反応器においてスラリーの流動性が悪化し外部循環装置のポンプの負荷が大となり、その結果、重合反応が不安定になることがある。
本発明におけるプロピレン重合体を製造するための重合触媒としては、公知の重合触媒であってもよい。公知の重合触媒として、チタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を必須成分として含有する固体触媒成分と、トリエチルアルミニウムのような有機アルミニウム化合物と、シクロヘキシルエチルジメトキシチタンのような外部電子供与体とを組合せて生成される重合触媒を例示することができる。該固体触媒成分として、US4223117A、GB1498862A、US4107413A、GB1492618A、US4412049A、GB2033910A、GB2097413A、EP575118B、US4302565A、US5068489A、US4490475A、US6521560B、US2001/21687AおよびUS2003/195108Aのような特許文献に記載された固体触媒成分を例示することができる。
満液スラリー重合中の式(1)に基づくスラリー濃度の測定は、プロピレン重合体製造プラントのコンピュータに実行させて、該濃度を常時把握し得るようにしておくことが、本発明の目的を達成する上でより好ましい。
本発明を以下の実施例に基づいてさらに詳しく説明する。
実施例1
単量体供給ラインと、重合触媒供給ラインと、スラリー状の重合反応混合物を重合反応器内で循環させ攪拌するためのポンプとを下部に有し、重合反応器から熱を除去するためのジャケット(冷却水供給ラインと冷却水排出ラインとを有する)をその外周に有し、重合反応混合物を次工程へ移送するためのスラリー移送ラインを上部に有する連続重合用の、特開2003−301004号公報に図示されたループリアクターと類似の、内容積30リットルのループリアクターに、単量体供給ラインからプロピレンを0.044トン/時間の供給速度(P1)で、重合触媒供給ラインから別途調整された、チタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を必須成分として含有する固体触媒成分を0.65g/時間の供給速度で、トリエチルアルミニウムを4.57g/時間の供給速度で、シクロヘキシルエチルジメトキシチタン(外部電子供与体)を0.81g/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給しつつ、70℃(設定温度)および4.5MPaG(設定圧力)下で連続的にバルク重合で満液重合して、プロピレン単独重合体を製造した。この重合条件下における、式(1)で測定されるスラリー濃度は約20重量%であった。
この満液重合下、プロピレン単独重合体の製造量(製造速度)を増加させるために、式(1)で測定されるスラリー濃度を約20重量%から約35%重量%まで増加させるよう、式(1)で測定されるスラリー濃度を監視しつつ、プロピレンの供給速度(P1)を0.044トン/時間から0.051トン/時間まで増加させながら満液重合を続行した。このプロピレンの供給速度は重合温度および重合圧力を大幅に変動させることなく増加させることができ、重合温度は69.4〜70.7℃(設定温度は70℃)、重合圧力は4.42〜4.47MPaG(設定圧力は4.5MPaG)であった。また、ポンプの電流値の大幅な上昇も認められなかった。該増加過程においては、重合体の製造量の増加と共に重合反応器から除去される熱量(QO)も増加するので(ちなみに、重合反応器へ持ち込まれる熱量(QI)も変動する)、重合温度を70℃に固定しておくために、冷却水(水温は外部設備によって一定に管理されている)の量を自動的に増加させた。
実施例2
実施例1の前工程(プロピレンの供給速度の変更より前の工程)と同様にして、プロピレンの供給速度0.059トン/時間の下でスラリー濃度約30重量%にて、70℃(設定温度)および4.5MPaG(設定圧力)下で満液重合して、プロピレン単独重合体を製造した。
この満液重合下、プロピレン単独重合体の製造量(製造速度)を減少させるために、式(1)で測定されるスラリー濃度を約30重量%から約15%重量%まで減少させるよう、式(1)で測定されるスラリー濃度を監視しつつ、プロピレンの供給速度を0.059トン/時間から0.043トン/時間まで減少させながら満液重合を続行した。このプロピレンの供給速度は重合温度および重合圧力を大幅に変動させることなく減少させることができ、重合温度は69.2〜71.0℃(設定温度は70℃)、重合圧力は4.41〜4.49MPaG(設定圧力は4.5MPaG)であった。また、ポンプの電流値の大幅な変動も認められなかった。該減少過程においては、重合体の製造量の減少と共に重合反応器から除去される熱量(QO)も減少するので(ちなみに、重合反応器へ持ち込まれる熱量(QI)も変動する)、重合温度を70℃に固定しておくために、冷却水(水温は外部設備によって一定に管理されている)の量を自動的に減少させた。

Claims (7)

  1. 満液状態でプロピレン又はプロピレンとコモノマーとのスラリー重合が行われている重合反応器中のプロピレン単位とコモノマー単位との合計を100重量%として、プロピレン単位96〜100重量%と、エチレン単位および炭素数4〜8のα−オレフィン単位からなる群から選ばれるコモノマー単位0〜4重量%とを含有する重合体であるプロピレン重合体のスラリー濃度を下式(1)に基づいて測定する方法。
    スラリー濃度(重量%)=0.1(QO−QI)/(QPI) (1)
    (式中、QOは重合反応器から除去される単位時間あたりの熱量(kcal/時間)を表し;QIは重合反応器へ持ち込まれる単位時間あたりの熱量(kcal/時間)を表し;QPはプロピレンの単位重量あたりの重合熱量(kcal/kg)を表し;PIは重合反応器へのプロピレンの供給速度(トン/時間)を表す。)
  2. プロピレン重合体が、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン-1−ブテン共重合体またはプロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体である請求項1記載の測定方法。
  3. コモノマーがエチレン、1−ブテン又はこれらの組合せである請求項1記載の測定方法。
  4. 満液状態でスラリー重合が行われている重合反応器中のプロピレン単位とコモノマー単位との合計を100重量%として、プロピレン単位96〜100重量%と、エチレン単位および炭素数4〜8のα−オレフィン単位からなる群から選ばれるコモノマー単位0〜4重量%とを含有する重合体であるプロピレン重合体のスラリー濃度を下式(1)に基づいて測定しつつ、プロピレンを単独重合またはプロピレンとコモノマーとを共重合させる工程からなるプロピレン重合体の製造方法。
    スラリー濃度(重量%)=0.1(QO−QI)/(QPI) (1)
    (式中、QOは重合反応器から除去される単位時間あたりの熱量(kcal/時間)を表し;QIは重合反応器へ持ち込まれる単位時間あたりの熱量(kcal/時間)を表し;QPはプロピレンの単位重量あたりの重合熱量(kcal/kg)を表し;PIはプロピレンの供給速度(トン/時間)を表す。)
  5. 測定されるスラリー濃度が5〜50重量%である請求項4記載の製造方法。
  6. プロピレン重合体が、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン-1−ブテン共重合体またはプロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体である請求項4記載の製造方法。
  7. コモノマーがエチレン、1−ブテン又はこれらの組合せである請求項4記載の製造方法。
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