JP5028850B2 - 高立体選択性l−スレオニンアルドラーゼおよびそれをコードする遺伝子 - Google Patents

高立体選択性l−スレオニンアルドラーゼおよびそれをコードする遺伝子 Download PDF

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Description

本発明は、産業上有用な光学活性L−スレオ−3,4−ジヒドロキシフェニルセリン(以下、L−threo−DOPSと略記する)、L−スレオ−3−シクロヘキシルセリン(以下、L−threo−CHSと略記する)およびその他のL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体を合成するのに有利な酵素を発現する遺伝子および従来知られていない高立体選択性を有するL−スレオニンアルドラーゼを遺伝子工学的手法により提供するものであり、さらに、この遺伝子を導入した組換え微生物を利用した合成反応によって、産業上有用なL−threo−DOPS、L−threo−CHSおよびその他のL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造法を提供するものである。より具体的には、本発明は、L−threo−DOPSおよびL−threo−CHSの合成に有用な高立体選択性を有するL−スレオニンアルドラーゼをコードする遺伝子およびその組換えベクターと形質転換体を提供し、この遺伝子を導入した組換え微生物による合成反応により、産業上有用なL−threo−DOPS、L−threo−CHSおよびその他のL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造法を提供するものである。
β−ヒドロキシアミノ酸誘導体の一種であるL−threo−DOPSは、体内で芳香族アミノ酸脱炭酸酵素により天然型のノルアドレナリンとなり、すくみ足や起立性低血圧に有効なノルアドレナリンの前駆物質として、年間60億円以上の市場があるパーキンソン病の治療薬である。これらは現在、化学合成法により合成されているが、L−threo−DOPSの化学合成については多段階の面倒な保護・脱保護を必要とし、また、合成物質は4種類の異性体からなり、目的のL−threo−DOPSを得るためには繁雑な分離工程や分割工程を必要とし、非常に高価な医薬品である。即ち、ベンズアルデヒド誘導体とグリシンを強アルカリ存在下で縮合させ、ラセミ−スレオ/エリスロ−フェニルセリン誘導体を得た後、スレオ/エリスロ体の相互分離処理を行い、エリスロ−体を除く。次に、得られたラセミ−スレオ−フェニルセリン誘導体のアミノ酸部分に置換基を導入した後、キニン、ブルシンなどの光学分割剤を用いて光学分割を行い、最後にアミノ基部分の置換基を除去しなければならないなど非常に複雑なプロセスである。
一方、L−threo−CHSも非天然型のL型アミノ酸で、医薬品や農薬等の中間体として有用な化合物であり、L−threo−DOPSの合成法と同様に、化学合成法として、シクロヘキシルアルデヒドとグリシンを強アルカリ存在下で縮合させ、ラセミ−スレオ/エリスロ−3−シクロヘキシルセリンを得た後、スレオ/エリスロ体の煩雑な相互分離処理を行わなければならない。又、D−スレオニンアルドラーゼを用いる酵素的分割法が知られている(特許第3240011号公報;特許文献6)。即ち、ラセミ−スレオ/エリスロ−3−シクロヘキシルセリンにD−スレオニンアルドラーゼを作用させ、D−スレオ/エリスロ−3−シクロヘキシルセリンをグリシンとシクロヘキシルアルデヒドに分解し、さらに、L−アロスレオニンアルドラーゼを作用させ、L−エリスロ−3−シクロヘキシルセリンを分解し、L−スレオ−3−シクロヘキシルセリンを得る方法である。しかし、この方法は反応の基質の濃度が限定される上、得られる生成物の単離が難しく、これも工業的製法とは言い難い。
一方、酵素による一段階合成法は化学合成と比べ、面倒な保護・脱保護を必要としないなどメリットは大きく、さらに安価な基質を利用することにより安価に合成することができる。酵素による一段階合成法は最も簡単かつ効率的で、近年最も注目され、様々なβ−ヒドロキシアミノ酸の一段階合成に利用されている。酵素による一段階合成法でβ−ヒドロキシアミノ酸誘導体を合成できる酵素としてスレオニンアルドラーゼが知られている。スレオニンアルドラーゼ(EC4.1.2.5)は、β−ヒドロキシアミノ酸を分解して、グリシンとアルデヒドを生成する反応を触媒することが知られている酵素である。この酵素は二つの不斉炭素原子を有するスレオニンを基質とした場合、α−位の立体特異性によって、L−タイプとD−タイプに区別される。さらに、β−位の立体特異性によりL−スレオニンにのみ作用するL−スレオニンアルドラーゼ、L−アロスレオニンにのみ作用するL−アロスレオニンアルドラーゼ、さらにL−スレオニンとL−アロスレオニンの両方に作用する低立体選択性L−スレオニンアルドラーゼに分類されている。D−タイプでも同様に分けられる(非特許文献1〜3)。
酵素による一段階合成法は、エシェリヒア属に属す微生物などにより得られるL−スレオニンアルドラーゼや、バチルス属に属す微生物により得られるフェニルセリンアルドラーゼに様々なアルデヒド誘導体とグリシンを作用させL−スレオ−フェニルセリン誘導体を得る方法が知られている。しかし、これら公知の微生物による一段階合成に利用されているL−スレオニンアルドラーゼはスレオ体/エリスロ体比率に関する立体選択性に関する記載がなく、L−エリスロ−フェニルセリン誘導体の合成量は不明であったり(特許文献1〜5)、又、エシェリヒア属に属する微生物由来のL−スレオニンアルドラーゼを用いた場合のベンズアルデヒド誘導体とグリシンからL−スレオ−フェニルセリン誘導体を合成する場合の選択性は−50〜46%d.e.(非特許文献1)、シュードモナス属に属する微生物により得られるL−スレオニンアルドラーゼにアルデヒド誘導体とグリシンを作用させてL−スレオ−フェニルセリン誘導体を合成する場合の選択性は57.5〜100%d.e.(非特許文献2)、アエロモナス属に属する微生物により得られるL−アロ−スレオニンアルドラーゼにベンズアルデヒドとグリシンを作用させてL−スレオ−フェニルセリンを合成する場合の選択性は73.2%d.e.(非特許文献3)であることが知られているが、その他の微生物での報告はなかった。又、その他のL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体の合成例も報告されているが収量が少なく、効率的な合成法と言えるものではなかった(特許文献1、2)。
特に、発明者らが目的とするL−threo−DOPSの酵素縮合反応での立体選択性を示した例は非特許文献2のみであるが、L−threo−DOPSの合成量は少ないという欠点を有している。尚、選択性を表わす指標、L−スレオ体過剰率(%d.e.)は次の計算式により算出される。L−スレオ体過剰率(%d.e.)={(L−スレオ体−L−エリスロ体)÷(L−スレオ体+L−エリスロ体)}×100
一方、光学活性3−シクロヘキシルセリンの酵素による一段階合成法は、D−スレオニンアルドラーゼを用いて、シクロヘキシルアルデヒドとグリシンから、D−3−シクロへキシルセリンを合成する方法が知られているがその合成量は0.1mMと極わずかで(特許文献7)ある。又、L−3−シクロへキシルセリンの酵素による一段階合成法の報告はなかった。その他のL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体の合成量も1.0〜10g/L(特許文献1)、0.6〜4.4g/L(特許文献2)と低く、満足できるものではなかった。
特公昭52−46313号公報 特公昭51−6239号公報 特公昭54−3952号公報 特公昭54−12554号公報 特開平9−238680号公報 特許第3240011号公報 特許第3006615号公報 キムラ・ティー(Kimura,T.)他3名、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1997年、第119巻、p.11734−11742 リュー・ジェイ・キュー(Liu,J.Q.)他5名、アプリード・マイクロバイオロジー・アンド・バイオテクノロジー(Appl Microbiol Biotechnol)、1998年、第49巻、p.702−708 日本農芸化学会誌、1998年、第72(5)巻、p.746−747
本発明の目的とする合成反応を触媒する高立体選択性のL−スレオニンアルドラーゼをコードする遺伝子を単離し、また、その遺伝子を導入・高発現した組換え微生物を創製し、L−threo−DOPS、L−threo−CHSおよびその他のL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体の安価な一段階酵素合成法を提供することが本発明の課題である。
本発明者らは、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドとグリシンから、L−threo−DOPSの合成に関与する遺伝子を取得するべく鋭意検討を行った。その結果、今までそのような性能を有することが知られていなかったエンシファー・アルボリス(Ensifer arboris)に属するNBRC100383(独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部生物遺伝資源部門生物資源カタログ番号)細菌から取得したL−スレオニンアルドラーゼをコードする遺伝子が本発明のL−threo−DOPSおよびL−threo−CHSの高立体選択合成に適うものであることを見出した。更に、上記L−スレオニンアルドラーゼ組換え大腸菌を用いてその他のL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体合成検討を行った結果、炭素数7以上の直鎖脂肪族アルデヒドまたはカルボキシ基もしくは臭素置換芳香族アルデヒドとグリシンを反応させると、反応液に対応するL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体が沈殿し、平衡反応が合成方向に進み、高濃度のL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体が沈殿蓄積することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1] 下記の(1)、(2)、(3)または(4)に示す遺伝子:
(1)配列番号4に示す塩基配列のDNAからなる遺伝子:
(2)配列番号4に示す塩基配列のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつL−スレオニンアルドラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子:
(3)配列番号5に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子:
(4)配列番号5に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつL−スレオニンアルドラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
[2] 下記の(1)または(2)に示すタンパク質:
(1)配列番号5に示すアミノ酸配列からなるタンパク質:
(2)配列番号5に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつL−スレオニンアルドラーゼ活性を有するタンパク質、
[3] 前項1に記載の遺伝子を含有する組換えベクター、
[4] 前項3に記載の組換えベクターを含む微生物、
[5] 宿主が大腸菌である前項4に記載の微生物、
[6] 受託番号NITE P−110として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託された微生物、
[7] 前項4、5または6に記載の微生物またはその調製物を、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドおよびグリシンを含有する液と接触せしめ、前記液中にL−スレオ−3,4−ジヒドロキシフェニルセリンを生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするL−スレオ−3,4−ジヒドロキシフェニルセリンの製造法、
[8] 前項4、5または6に記載の微生物またはその調製物を、シクロヘキシルアルデヒドおよびグリシンを含有する液と接触せしめ、前記液中にL−スレオ−3−シクロヘキシルセリンを生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするL−スレオ−3−シクロヘキシルセリンの製造法、および
[9] 前項4、5または6に記載の微生物またはその調製物を、炭素数7以上の直鎖脂肪族アルデヒドまたはカルボキシ基もしくは臭素置換芳香族アルデヒド、およびグリシンを含有する液と接触せしめ、前記液中に対応するL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体を生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造法からなる。
本発明により、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドとグリシンを原料として光学活性を有するL−threo−DOPSを、また、シクロヘキシルアルデヒドとグリシンを原料として光学活性を有するL−threo−CHSを高い比率で合成できるL−スレオ高選択性L−スレオニンアルドラーゼをコードする遺伝子が提供される。そして、これらのL−スレオ高選択性L−スレオニンアルドラーゼをコードする遺伝子を保有する菌体もしくはその調製物を用いて、高選択的にL−threo−DOPSあるいはL−threo−CHSを合成することができる。更に炭素数7以上の直鎖脂肪族アルデヒドまたはカルボキシ基もしくは臭素置換芳香族アルデヒドとグリシンを原料としてL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体を高収量で合成することができる。
L−スレオニンアルドラーゼは主としてL−スレオニンをグリシンとアセトアルデヒドに分解する反応を触媒する酵素である。また、この酵素は分解反応以外にもその逆反応としてグリシンとアセトアルデヒドからL−スレオニンとL−アロスレオニンの合成反応をも触媒する酵素である。この逆(合成)反応を利用して、グリシンと3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドからL−threo−DOPSを、グリシンとシクロヘキシルアルデヒドからL−threo−CHSを、炭素数7以上の直鎖脂肪族アルデヒドまたはカルボキシ基もしくは臭素置換芳香族アルデヒドとグリシンから対応するL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体を合成するのが本発明の目的である。従って、このL−スレオニンアルドラーゼが細胞内で著量蓄積できれば、L−threo−DOPS、L−threo−CHSあるいはその他のL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体の生産に有効に使用できると考えられる。
本発明のL−スレオニンアルドラーゼとしては、例えば配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質が好ましく挙げられる。また、本発明のL−スレオニンアルドラーゼには、前記配列番号5において1若しくは複数個(約2〜20個、好ましくは約2〜10個程度)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつL−スレオニンアルドラーゼ活性を有するタンパク質なども含まれる。
本発明で用いられるL−スレオニンアルドラーゼをコードする遺伝子としては、好ましくは、エンシファー属(Ensifer)に属する微生物由来の遺伝子、さらに好ましくは、エンシファー・アルボリス(Ensifer arboris)由来の遺伝子、とりわけ好ましくはエンシファー・アルボリスNBRC100383株由来の遺伝子が挙げられる。エンシファー・アルボリスNBRC100383株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部に保存されており、誰でも入手可能である。
エンシファー・アルボリスNBRC100383株由来のL−スレオニンアルドラーゼをコードするDNAを含む遺伝子としては、例えば配列番号4で表される塩基配列のDNAを含む遺伝子を挙げることができる。
また、前記配列番号4で示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつL−スレオニンアルドラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む遺伝子も、本発明に用いられる遺伝子である。「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列」とは、例えば配列番号4に示す塩基配列をプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法またはプラーク・ハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるDNAを意味する。なお、ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、例えば相同性が高いDNA同士、少なくとも配列番号4で示される塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約80%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは、約0.1〜2倍程度の濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる。)、温度約65℃程度でのハイブリダイズ条件をいう。なお、相同性は塩基配列解析ソフト、例えばEMBOSSなどにより計算され得る。
ただし、本発明における遺伝子は、上記当該の遺伝子に限定されず、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むL−スレオニンアルドラーゼをコードするすべての遺伝子を含む。
発明の遺伝子には、DNA、mRNAおよびcDNAの全てが含まれる。
本発明において「相補的な配列」とは、L−スレオニンアルドラーゼをコードする塩基配列に対して塩基対合則(アデニン/チミン、シトシン/グアニン)に従って形成される塩基配列をいう。
エンシフアー・アルボリスNBRC100383株からのL−スレオニンアルドラーゼをコードする遺伝子の取得およびその配列決定は以下の方法により行うことができる。
まず、エンシフアー・アルボリスNBRC100383株を、例えばグルコース1%、ポリペプトン1%、酵母エキス0.2%、硫酸マグネシウム0.1%からなる栄養培地(pH7.0)で培養し菌体(微生物)を得る。なお前記栄養培地は、前記の外、通常の微生物の培養に使用される培地であればいずれも好ましく用いることができる。
菌体エンシフアー・アルボリスNBRC100383株からの染色体DNAの抽出は公知の方法で行なうことができ、また市販のDNA抽出キットを用いて簡便に行なうことができる。市販のDNA抽出キットとしては、例えばPuregene DNA Isolation Kit(Gentra社製)、GFX Genomic Blood DNA Purification Kit(アマシャムバイオサイエンス社製)、MagPrep Bacterial Genomic DNA Kit(Novagen社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
次に、エンシファー属細菌と染色体DNAの相同性が高いメソリゾビウム(Mesorhizobium)属細菌やシノリゾビウム(Sinorhizobium)属細菌のL−スレオニンアルドラーゼ遺伝子のN末端およびC末端配列の共通塩基配列をもとにオリゴヌクレオチドを設計する。
設計したオリゴヌクレオチドをプライマーとして、エンシファー・アルボリスNBRC100383株から抽出したDNAを鋳型にPCRを行い、エンシファー・アルボリスNBRC100383株由来のL−スレオニンアルドラーゼをコードするDNAを得る。このようなプライマーとしては、例えば配列番号1〜3の塩基配列で示されるプライマーが挙げられる。PCR反応は公知のPCR増幅装置、例えばサーマルサイクラーなどを利用し得る。PCRのサイクルは、公知技術に従って行なわれてよく、例えばデナチュレーション→アニーリング→エクステンションを1サイクルとして、約10〜100サイクル、好ましくは約20〜50サイクル程度増幅するのが好ましい。PCRによって得られた遺伝子は適当なクローニングベクターへ導入し、サブクローニングする。
クローニングベクターとしては、商業的に入手可能なクローニングベクター例えばpCR2.1−TOPO(TOPO TA Cloning kit;Invitrogene社製)、pT7 Blue T−Vector(Novage社製)、pCITE−4 T−Vector(Novage社製)などを好ましく挙げることができる。
次いで、PCRで得られた遺伝子のクローニングベクターを、例えばエシェリヒア・コリJM109菌株などに導入し、該菌株を形質転換する。この形質転換された菌株を適当な抗生物質(例えば、アンピシリンやクロラムフェニコール等)を含む培地で培養し、培養物から菌体を回収する。回収された菌体からプラスミドDNAを抽出する。プラスミドDNAの抽出は、公知の方法で行なうことができ、また市販のDNA抽出キットを用いてプラスミドDNAを簡便に抽出できる。市販のプラスミドDNA抽出キットとしては、例えばQIAquick plasmid purification kit(Qiagen社製)などが挙げられる。この抽出されたプラスミドDNAの塩基配列を決定することにより、本発明のL−スレオニンアルドラーゼをコードする全DNAを決定することができる。
得られたDNAの塩基配列は、公知の方法、例えばジデオキシヌクレオチド酵素法などにより決定することができる。また、キャピラリー電気泳動システムを用い、検出には多色蛍光技術を使用して塩基配列を決定することもできる。また、DNAシークェンサー、例えばABI PRISM 3700 DNA ANALYZER(アプライドバイオシステム社製)などを使用して自動的に分析して塩基配列を決定することもできる。
上記のようにして、L−スレオニンアルドラーゼをコードするDNAの塩基配列を決定し、配列番号4に示す塩基配列を決定し得る。次いで該塩基配列をアミノ酸配列に翻訳して解析し、配列番号5に示すL−スレオニンアルドラーゼの全アミノ酸配列を決定することができる。
次に、組換えL−スレオニンアルドラーゼ発現ベクターの作製は、全アミノ酸配列が決定された該酵素をコードする遺伝子を適当な発現用ベクターに挿入することにより行なうことができる。
発現用ベクターとしては、例えば細菌プラスミド(pBluescript SK+、pBluescript KS+、pUC18、pUC19、pBR322、pET 16b、pET 32a(+)、pCITE 4a、pGEX−5X−1、pGEX−5X−3、pMAL−p2、pMAL−c2、pBridge Vecto、pKF18k DNA、pKF19k DNA、pTrc99A、pSPORT 1、Charmomid 9−36 DNA、pEU−DFR、pIVEX 2.3−MCS、pIVEX 2.4c、pIVEX 2.3、pIVEX 2.4b Nde、pIVEX 2.4aなど)、ファージDNA(ラムダファージなど)、酵母プラスミド(pG−1など)、哺乳類細胞用のベクターとしてのバキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなどのウイルスDNA、SV40とその誘導体などが挙げられ、宿主において複製可能である限り他のいかなるベクターも用いることができる。
ベクターは例えば複製開始点、選択マーカー、プロモーターを含み、必要に応じてエンハンサー、転写終結配列(ターミネーター)、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナルなどを含んでいてもよい。ベクターは、種々の制限酵素部位をその内部にもつポリリンカーを含んでいるか、または単一の制限酵素部位を含んでいることが望ましい。制限酵素部位としては、例えばPstIサイト、NotIサイト、SalIサイト、KpnIサイトまたはHindIIIサイトなどが挙げられる。これら制限酵素サイトは、各々制限酵素PstI、NotI、SalI、KpnIまたはHindIIIなどで切断され得る。
ベクターへの遺伝子導入は、公知の手段で行なうことができる。具体的には、ベクター中の特定の制限酵素部位を特定の制限酵素によって切断し、その切断部位に本発明の遺伝子を挿入するのが好ましい。このようにして、本発明の遺伝子を含む組換えベクターを調製できる。
例えば、配列番号1に示した酵素遺伝子のN末端配列の上流に、例えば制限酵素KpnIの認識配列を追加したプライマーと、配列番号2に示した酵素遺伝子のC末端配列の下流に例えば制限酵素HindIIIの認識配列を追加したプライマーを設計し、これを用いてPCR法によりL−スレオニンアルドラーゼをコードするDNAを増幅させる。この増幅した断片を制限酵素KpnIと制限酵素HindIIIで処理し、同じく両制限酵素で処理した発現用ベクター、例えばpTrc99A(アマシャムバイオサイエンス製)と連結させることにより本発明の遺伝子を含む組換えベクター、すなわちL−スレオニンアルドラーゼ発現ベクターを得ることができる。
次いで、この発現ベクターを、宿主に挿入し、宿主(菌株)を形質転換する。
宿主としては、例えば細菌、例えば大腸菌(例えば、エシェリヒア・コリJM109菌株等)、コリネバクテリウム属菌、バチルス属菌、ストレプトミセス、枯草菌など;真菌細胞、例えばアスペルギルス属菌株など;酵母細胞、例えばパン酵母、メタノール資化性酵母など;昆虫細胞、例えばドロソフィラS2、スポドプテラSf9など;ヒト培養細胞を含む哺乳類細胞、例えばCHO、COS、BHK、3T3、C127など;あるいはこれらのコンピテントセルなどが挙げられ、好ましくは大腸菌のコンピテントセルである。
形質転換は、例えば塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン介在トランスフェクション、電気穿孔法などの公知の方法で行うことができる。
具体的には、例えば本発明の遺伝子を含む組換えベクターとエシェリヒア・コリJM109(以下、大腸菌JM109ともいう。)のコンピテントセルとを混合することにより、形質転換された微生物を得ることができる。
上記方法は、遺伝子工学実験の常法に基づいて行うことができる。大腸菌や放線菌等の種々の微生物のベクターの情報や外来遺伝子の導入・発現法は、多くの実験書に記載されているので(例えば、Sambrook,J.,Russel,D.W.,Molecular Cloning A Laboratory Manual,3rd Edition,CSHL Press,2001;Hopwood,D.A.,Bibb,M.J.,Chater,K.F.,Bruton,C.J.,Kieser,H.M.,Lydiate,D.J.,Smith,C.P.,Ward,J.M.,Schrempf,H.Genetic manipulation of Streptomyces:A laboratory manual,The John Innes Institute,Norwich,UK,1985等)、それらに従ってベクターの選択、遺伝子の導入、発現を行うことができる。
上述のL−スレオニンアルドラーゼをコードする遺伝子を含む組換えベクターにて形質転換された微生物(以下、単に形質転換された微生物または形質転換微生物という。)は下記する微生物培養培地等で、培養温度約20〜40℃、培養時間約1〜7日間、培地のpH約5.0〜8.0程度で培養されることが好ましい。
形質転換された微生物またはその調製物を、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドとグリシンを含有する液、シクロヘキシルアルデヒドとグリシンを含有する液、あるいは炭素数7以上の直鎖脂肪族アルデヒドまたはカルボキシ基もしくは臭素置換芳香族アルデヒドとグリシンを含有する液(以下、反応液と略記する。)と接触させ、目的のL−threo−DOPS、L−threo−CHSあるいはその他の対応するL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体の一段階合成反応を行い生成蓄積せしめる。
すなわち、本発明のL−threo−DOPS、L−threo−CHSあるいはその他のL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造方法において、形質転換された微生物またはその調製物を用いて、グリシンと3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、あるいは炭素数7以上の直鎖脂肪族アルデヒドまたはカルボキシ基もしくは臭素置換芳香族アルデヒドから一段階で収率よくL−threo−DOPS、L−threo−CHSあるいはその他のL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体を得ることができる。
形質転換された微生物は、培養液中に存在する状態や培養液から該微生物を分離・濃縮等して使用することもできる。また、微生物の調製物としては、例えばアクリルアミドやカラギーナン等の担体上に固定化した固定化菌体、あるいは、凍結乾燥やアセトン処理等による乾燥菌体等の菌体調製物等が挙げられる。また、前記調製物には形質転換体に生成蓄積した酵素を抽出し、好ましくは精製等して樹脂担体等に固定化した固定化酵素も含まれる。酵素の精製法は、菌体を超音波やガラスビーズで破砕した後、硫安沈殿、イオン交換およびゲルろ過カラムクロマトといった通常酵素精製に用いられる精製法を組み合わせて行なうことができる。
又、形質転換された微生物は、紫外線、エックス線または薬品等を用いる人工的な変異手段で変異しうるが、このように得られるどのような変異株であっても本発明の対象とするL−スレオニンアルドラーゼ生産能を有するかぎり、本発明の形質転換された微生物として使用することができる。
反応液の基礎となる溶液としては、形質転換された微生物の生育やL−スレオニンアルドラーゼの酵素の働きを阻害しない溶液であれば特に制限はなく、例えば微生物培養培地または緩衝液等が好ましく挙げられる。
微生物培養培地は、通常の微生物の培養に使用される培地であれば好ましく用いることができ、例えば炭素源、窒素源、無機塩類およびその他の栄養物質等を含有する天然培地または合成培地等が用いられる。
炭素源としては、例えばグルコース、フルクトース、シュークロース、マンノース、マルトース、マンニトール、キシロース、ガラクトース、澱粉、糖蜜、ソルビトールまたはグリセリン等の糖質および糖アルコール、酢酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸またはグルコン酸等の有機酸、エタノールまたはプロパノール等のアルコール等が挙げられる。また、所望によりノルマルパラフィン等の炭化水素等も用いることができる。炭素源は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
これら炭素源の培地における濃度は通常約0.1〜10%(wt)程度である。
窒素源としては、窒素化合物、例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機もしくは有機アンモニウム化合物、尿素、アンモニア水、硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。また、コーンスティープリカー、肉エキス、ペプトン、NZ−アミン、蛋白質加水分解物またはアミノ酸等の含窒素有機化合物等も使用可能である。窒素源は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
窒素源の培地濃度は、使用する窒素化合物によっても異なるが、通常約0.1〜10%(wt)程度である。
無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硝酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸コバルトまたは炭酸カルシウム等が挙げられる。これら無機塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
無機塩類の培地濃度は、使用する無機塩によっても異なるが、通常約0.01〜1.0%(wt)程度である。
栄養物質としては、例えば肉エキス、ペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、乾燥酵母、コーンスティープリカー、脱脂粉乳、脱脂大豆塩酸加水分解物または動植物若しくは微生物菌体のエキスやそれらの分解物等が挙げられる。
栄養物質の培地濃度は、使用する栄養物質によっても異なるが、通常約0.1〜10%(wt)程度である。
培地のpHは約5.0〜8.0程度が好ましい。
好ましい微生物培養培地としては、LB(Luria−Bertani培地)、NZYM培地、Terrific Broth、SOB培地、2xYT培地、AHC培地、χ1776培地、M9培地、YPD培地、SD培地、YPAD培地またはSuper broth培地等が挙げられる。
緩衝液としては、例えばリン酸バッファー、トリスバッファー、リン酸緩衝食塩水、酢酸緩衝液等が挙げられる。緩衝液のpHは、通常約5〜10、さらに約6.5〜8.5が好ましい。
反応液中に含まれる3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、炭素数7以上の直鎖脂肪族アルデヒド(例えば、1−ヘプタナール、1−オクタナール、1−ノナナール、1−デカナール、1−ウンデカナール、1−ドデカナール等)、あるいはカルボキシ基もしくは臭素置換芳香族アルデヒド(例えば、テレフタルアルデヒド酸、m−ブロムベンズアルデヒド等)は、L−スレオニンアルドラーゼの酵素活性を阻害しない程度の濃度で用いられ、通常、反応液の約0.1〜10%(wt)程度である。またその供給方法としては分割添加や連続的に添加する方法などで行うことが出来る。
反応液中に含まれる他方の反応基質であるグリシンは、通常約0.1〜30%(wt)程度を反応系に存在せしめて使用されるが、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドあるいはシクロヘキシルアルデヒド等に対しては等モル以上で使用することが好ましい。グリシンは、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドあるいはシクロヘキシルアルデヒド等と同様に反応液に添加できる。
反応液と微生物との接触は、例えば培養した形質転換微生物を遠心分離機やろ過等で集め、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドとグリシンあるいはシクロヘキシルアルデヒド等とグリシンを含有する反応液に加えて接触せしめてもよく、また集めた形質転換微生物を例えば水媒体中で超音波やガラスビーズ等で破砕した後のL−スレオニンアルドラーゼを含む遠心分離上清または該上清から精製したL−スレオニンアルドラーゼを反応液に加える方法であってもよい。また、固定化微生物や固定化酵素を反応液と接触させても良い。
反応液と微生物との接触方法は、公知の方法、例えばバッチ方式または連続方式(例えば、カラム法、固定化微生物、固定化酵素法等)など、いずれの方法も用いることができる。
また、反応液と微生物をフィルターなどにより分離し、微生物を連続的に回収し、繰り返し再使用することもできる。
本発明の反応は、pH約5〜10、特に好ましくは約6.5〜8.5において、温度約5〜60℃、特に約10〜50℃で静置若しくは攪拌下に反応を進行せしめるのが好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間の範囲が好ましい。
また、本発明の反応は、好気、嫌気いずれの条件でも行なうことができる。また、反応液と微生物の反応は、微生物が生存できる条件、例えば上記微生物の培養における条件と同様の条件で実施することが好ましい。
本酵素系には補酵素としてビタミンB6が要求されるため、反応液には、例えばピリドキシン、ピリドキサールまたはピリドキサール−5’−リン酸などを添加することが好ましい。該補酵素を添加することにより反応が高められ得る。
また。反応液には、所望により例えば2−メルカプトエタノールのような還元剤を添加することもできる。
かくして反応せしめた反応液中には、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドとグリシンから両化合物の反応生成物であるL−threo−DOPSが、又シクロヘキシルアルデヒドとグリシンから両化合物の反応生成物であるL−threo−CHSが高選択的にかつ高収率(反応条件により一概にはいえないが、約15%d.e.以上、好ましくは約20%d.e.以上、より好ましくは約20〜95%d.e.程度である。)に生成し、炭素数7以上の直鎖脂肪族アルデヒドまたはカルボキシ基もしくは臭素置換芳香族アルデヒドとグリシンから対応するL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体が高収量(反応条件により一概にはいえないが、約15g/L以上、好ましくは約20g/L以上、より好ましくは約20〜40g/L程度である。)に生成し得る。
合成されたL−threo−DOPSあるいはL−threo−CHSの精製は、公知の方法、例えばイオン交換樹脂、吸着樹脂やシリカゲルなどのクロマト分離、酢酸エチルやトルエンなどの有機溶媒を用いた溶媒抽出、溶解度の差を利用した分別結晶化などを組み合わせて行なうことができる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、本発明において配列中、Aはアデニン、Gはグアニン、Cはシトシン、Tはチミンを示し、Wはアデニンまたはチミンを、Kはグアニンまたはチミンを、Yはチミンまたはシトシンを示す。本明細書において%は特に断らない限り質量%を意味する。
L−スレオニンアルドラーゼ産生株のゲノムDNAの取得
まず、斜面培養したエンシファー・アルボリス(Ensifer arboris)NBRC100383(以下、NBRC100383という。)のコロニーから白金耳を用いて採取した菌体を、ポリペプトン1.0%、酵母エキス0.2%および硫酸マグネシウム0.1%を含む培地10mL(pH7.0)に植菌し、30℃、2日間振騰培養した。この培養液5mLを15mLのファルコンチューブへ移し、10,000rpmで5分間遠心した。上清を捨て、得られたペレットをキットに添付のCell Lysis Solution 3mLに懸濁した。80℃、5分間の熱処理により細胞を溶菌させた。その後、15μLのRNase A Solutionを添加し、溶液を良く混合の後、37℃、30分間静置処理を行なった。次に1mLのProtein Precipitation Solutionを添加し、溶液を激しく混合した後、15,000×g、3分間の遠心分離によりゲノムDNAを含む溶液を上清として回収した。更に、回収した溶液に3mLのイソプロパノール(Isopropanol)を添加し混合の後、15,000×g、1分間の遠心分離によりゲノムDNAを白いペレットとして回収した。得られたゲノムDNAは、DNA Hydration Solution 500μLに溶解し、1μLをアガロース電気泳動して確認後、4℃または−20℃で保存した。
L−スレオニンアルドラーゼをコードする遺伝子の増幅
取得したNBRC100383のゲノムDNAよりL−スレオニンアルドラーゼをコードする遺伝子をPCR反応より増幅するためのプライマーを合成した。現在、L−スレオニンアルドラーゼをコードする遺伝子の塩基配列は様々な細菌のゲノム解析の結果、様々な微生物にてその推定塩基配列が公開されている。また、16S rDNAの分析の結果から、NBRC100383と高い相同性を示すMesorhizobium lotiやSinorhizobium属(例えばSinorhizobium meliloti 1021等)のゲノム解析もすでに公開され、それぞれL−スレオニンアルドラーゼをコードする遺伝子が存在することも示されている。そこで、この遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)のN末端およびC末端部分の共通塩基配列を利用し表1のDNAプライマーを合成しPCRによる増幅反応を行った。
なお、Mesorhizobium lotiおよびSinorhizobium meliloti 1021のゲノムは、それぞれGeneBankに登録番号BA000012およびAL591688として登録されている。
Figure 0005028850
PCRには、タカラバイオ株式会社のLA−PCRキットを用い、2種類のHigh GCバッファーで反応を行った。PCRの条件は以下の通りである。
PCR条件:1μL上記NBRC100383ゲノムDNA(350.5ng/μL;鋳型DNA)、0.5μL(5U/μL)TaKaRa LA Taq DNA polymerase、25μL LA−Taq DNA polymerase添付のHigh GCバッファー(I)(1X)、8μL dNTP(各2.5mM)、0.5μL 5’プライマー(配列番号1)25pmol/mL、0.5μL 3’プライマー(配列番号2)または0.5μL プライマー(配列番号3)25pmol/mLに水を加え、総量50μLの溶液を作製し、94℃で2分間熱処理後、94℃で1分、50℃で30秒、72℃で2分の条件で30サイクルのプログラムで増幅を行い、その後72℃で5分間処理した。また、増幅の確認は1%のアガロース電気泳動を行った。その結果、2種類の遺伝子が増幅された(約1kbpと約0.8kbp)。
PCR増幅断片のクローン化。
PCRにより増幅された約1kbpと約0.8kbpの遺伝子をTAクローニングベクターpCR2.1−TOPO(TOPO TA Cloning kit, Invitrogne製)に挿入することによりクローン化させた。即ち、PCRにより増幅された約1kbpと約0.8kbpの遺伝子を含むPCR溶液4μLに塩溶液(Salt solution:1.2M NaCl、0.06M MgCl)1 μLとTOPOクローニングベクターpCR2.1−TOPOを1μL加え、室温で5分間連結反応を行った。反応後の溶液5μLを用いて大腸菌JM109を形質転換した。形質転換細胞を含む溶液を100μg/mLのアンピシリン、0.1mMのIPTGおよび0.004%のX−galを含むLB寒天培地上に塗布し、37℃で一晩培養してコロニーを形成させた。それぞれについて白色の陽性コロニーを選択し、3mLの100μg/mLのアンピシリンを含んだLB液体培地(1% Bacto Tripton、0.5% Yeast Extract、1% NaCl)に植菌し、37℃で一晩培養した。培養液を遠心分離して集菌後、QIAquick plasmid purification kit(Qiagen社製)により約3μgのプラスミドDNAを精製した(pCR−ensi1とpCR−ensi2)。
塩基配列の解析
上記にて精製したNBRC100383のクローンpCR−ensi1とpCR−ensi2より挿入断片の塩基配列の決定を行った。シークエンス反応は、GeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステム社製)、 Dyeterminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit (アプライドバイオシステム社製)を用い、96℃ 10秒、50℃ 5秒、60℃ 4分、25サイクルで行った。反応生成物のシークエンスは全自動シークエンサー ABI Prism 3700 DNA Analyzer(アプライドバイオシステム社製)にて解析することにより決定した。その結果、pCR−ensi2に含まれている挿入断片の配列はpCR−ensi1に含まれている挿入断片の一部分であることが明らかになった。pCR−ensi1に含まれている挿入断片は、配列番号4に示す塩基配列の1番目から1047番目に相当する配列になっていることが分かった。
組換えL−スレオニンアルドラーゼ発現ベクターの作製。
上記の塩基配列解析により確認されたPCRにより増幅されたNBRC100383由来のL−スレオニンアルドラーゼ(pCR−ensi1)を大腸菌内で発現させるために、発現ベクターpTrc99A(アマシャムバイオサイエンス製)にサブクローニングした。即ち、NBRC100383由来のL−スレオニンアルドラーゼをコードする遺伝子の塩基配列を鋳型として、該塩基配列の全長である1047kbpのN末端の前にKpnI認識配列を追加したDNAプライマー配列:
5’−AAAGGTACCATGATCTTTTCCTCCGACAAC−3’(配列番号6)、
C末端の後にHindIII認識配列を追加したDNAプライマー配列:
5’−AGAATTCAAGCTTTCAGCAGGCGGCGACGAAACGG−3’(配列番号7)
を合成し、PCRを行った。PCRの条件は以下の通りである。
PCR条件:1μL鋳型ゲノムDNA(387.5ng/μL)、0.5μL(5U/μL)TaKaRa LA Taq DNA polymerase、25μL LA−Taq DNA polymerase添付のHigh GCバッファー(I)(1X)、8μL dNTP(各2.5mM)、0.5μL 5’プライマー(配列番号6)25pmol/mL、0.5μL 3’プライマー(配列番号7)25pmol/mLに水を加え、総量50μLの溶液を作製し、94℃で2分間熱処理後、94℃で1分、55℃で30秒、72℃で1分20秒の条件で29サイクルのプログラムで増幅を行い、その後72℃で5分間処理した。また、増幅の確認は1%のアガロース電気泳動を行った。その結果、制限酵素部位を含むおよそ1kb前後の1種類のL−スレオニンアルドラーゼ遺伝子が増幅された(1097bp)。PCRにより増幅されたL−スレオニンアルドラーゼ遺伝子断片を含むPCR溶液を精製(QIAquick PCR purification kit、Qiagen社製)し、各々10Uの制限酵素KpnIおよびHindIIIを用いて37℃で3時間切断反応を行った。反応後の溶液を1%(W/V)濃度のアガロースゲル電気泳動より分離し、1081bpに相当するバンドをゲルより切り出してQIAquick Gel extraction kit(Qiagen社製)により精製した。
次に1μgのpTrc99A(アマシャムバイオサイエンス製)を各10Uの制限酵素KpnIおよびHindIIIを用いて37℃で一晩中切断反応を行った。反応後の溶液を0.7%(W/V)濃度のアガロースゲル電気泳動より切断を確認し、QIAquick PCR purification kit(Qiagen社製)により精製し、30μLのトリス−塩酸緩衝液(10mM,pH8.5)により溶解した。
制限酵素KpnIおよびHindIIIで切断して得た1081bpのL−スレオニンアルドラーゼ遺伝子断片8μLとKpnIおよびHindIIIで切断して得たpTrc99Aの2μLに5μLのLigation high(TOYOBO社製)を混合し、16℃で5時間連結反応を行った。反応後の溶液5μLを用いて大腸菌JM109を形質転換した。形質転換細胞を含む溶液を100μg/mLのアンピシリン、0.1mMのIPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)および0.004%のX−galを含むLB寒天培地上に塗布し、37℃で一晩培養してコロニーを形成させた。それぞれについて白色の陽性コロニーを選択し、3mLの100μg/mLのアンピシリンを含んだLB液体培地に植菌し、37℃で一晩培養した。培養液を遠心分離して集菌後、QIAquick plasmid purification kit(Qiagen社製)により約2μgのプラスミドDNAを精製した。そのうち約0.5μgのプラスミドDNAをKpnIおよびHindIIIで切断し、1%(W/V)濃度のアガロースゲル電気泳動より1047bpに相当する挿入断片の存在を確認した。さらに挿入断片の塩基配列をシークエンス反応により確認したところ、変異は認められなかった。この発現プラスミドをplth−EAとした。
組換えL−スレオニンアルドラーゼの大腸菌での発現および活性測定
挿入断片が確認されたplth−EAを含む大腸菌JM109株を100μg/mLのアンピシリンを含む3mLの液体培地に植菌し、一晩37℃で培養した。この培養液のうち、0.1mLを10mLのLB培地(100μg/mLのアンピシリンを含む)に接種した。約3時間後、培養液の菌体濃度(OD600)が0.4〜0.7に上昇したことを確認後、最終濃度で2mMになるように1MのIPTGを添加し組換えL−スレオニンアルドラーゼの大腸菌での発現を誘導させた。その培養液をさらに、一晩37℃で培養し、培養液を10,000×g,5分間の遠心操作により細胞を沈殿させ、上清を除いた後、0.85%のNaClで1回洗浄した。遠心操作により細胞を沈殿させ、大腸菌形質転換体を得た。(この形質転換体は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託されている。寄託番号:受託番号NITE P−110)
この形質転換体を用いたL−threo−DOPS合成反応は以下の方法で行った。
反応液の組成は1gのグリシン、100mgの3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、10μLのメルカプトエタノ−ル(2−Mercaptoethanol)、250μLのピリドキサール−5’−リン酸(PLP、0.6mg/mL)、4.74mL 0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)、0.0158gの亜硫酸ナトリウムおよび0.0375gのTriton X−100であって、1N塩酸で最終pHを6.5に調整した。この反応液に−80℃で凍結保存しておいた前記菌体全量を加え15℃で5時間酵素反応を開始させ、3倍量のメタノールを加えることにより反応を停止させた。合成産物であるL−threo−DOPSの合成量はHPLC(日立L2000シリーズ、日立製作所製)で測定した。HPLC分析は、COSMOSIL 5C18−MS−II(Φ4.6×150mm)カラム、カラム温度30℃、移動相は0.1% 1−ヘプタンスルホン酸Na(pH2.5)/メタノール/1,4−ジオキサン=[500:50:15(V/V/V)]で行った。HPLCの移動相流速は0.75mL/分で、分離産物の検出はUV=220nmの吸光で分析した。その結果、NBRC100383のゲノムDNAよりクローニングしたL−スレオニンアルドラーゼ組換え大腸菌は1.5g/LのL−threo−DOPSの合成活性能を有していることがわかった。NBRC100383由来のL−スレオニンアルドラーゼはスレオ体/エリスロ体に対するスレオ体過剰率が73%(%d.e.)であり(図1)、従来の酵素に比べ立体選択性が非常に高く、今まで問題になっていたL−エリスロ−DOPSがほとんど合成されていないことが分かった。尚、ここで、スレオ体過剰率(%d.e.)は以下の計算式により求めた。
Figure 0005028850
組換えL−スレオニンアルドラーゼの大腸菌によるL−threo−CHSの合成
実施例6と同様の方法で100mLのLB培地より得られた形質転換体をL−threo−CHSの合成反応に用いた。すなわち、反応液の組成は7.5gのグリシン、1gのシクロヘキシルアルデヒドおよび0.125gのTriton X−100に0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)を加え全量を50mLに調整した。この反応液に−80℃で凍結保存しておいた100mLのLB培地より得られた前記菌体全量を加え10℃で酵素反応を行い、32時間後に1gのシクロヘキシルアルデヒドを添加し、さらに酵素反応を行わせ53時間で反応を1/4倍量の2N塩酸を加えることにより停止させた。合成産物であるL−threo−CHSの合成量はHPLC(日立L2000シリーズ、日立製作所製)で測定した。HPLC分析は、COSMOSIL 5C18−MS−II(Φ4.6×150mm)カラム、カラム温度30℃、移動相は0.1% 1−ヘプタンスルホン酸Na(pH2.5)/アセトニトリル=[85:15(V/V)]で行った。HPLCの移動相流速は1.0mL/分で、分離産物の検出はUV=210nmの吸光で分析した。その結果、39g/L(208mM)のL−threo−CHSが生成していることがわかった。NBRC100383由来のL−スレオニンアルドラーゼはスレオ体/エリスロ体に対するスレオ体過剰率が95%(%d.e.)であり、立体選択性が非常に高く、しかも高濃度のL−threo−CHS合成されていることが分かった。
2−アミノ−3−ヒドロキシノナン酸の合成
反応液の組成は50gのグリシン、10gの1−ヘプタナールおよび1.25gのTriton X−100を0.1Mりん酸ナトリウム緩衝液pH7.5に添加し全量を500mLに調整した。この反応液に−80℃で凍結保存しておいた1Lの培養液から集めた菌体全量を加え、10℃で15時間合成反応を行なった。合成産物である2−アミノ−3−ヒドロキシノナン酸の合成量は、実施例7で、移動相を0.1% 1−ヘプタンスルホン酸Na(pH2.5)/アセトニトリル=[80:20(V/V)]に変えた以外は同様の方法で測定した。その結果、29g/Lの2−アミノ−3−ヒドロキシノナン酸を合成していることがわかった。
2−アミノ−3−ヒドロキシノナン酸の分離
上記実施例8で得られた反応液500mLをヌッチェでろ過し、更に100mLの水で固形分を洗浄した。2−アミノ−3−ヒドロキシノナン酸は固形分として回収した。固形分を800mLの2N塩酸で溶解し、15gのハイフロスーパーセルでプレコートしたヌッチェでろ過し、菌体を含む不溶物を除去した。更に、2N塩酸50mLで洗浄し、850mLの2−アミノ−3−ヒドロキシノナン酸を含む濾液を得た。濾液をスターラーで攪拌しながら27%水酸化ナトリウム溶液230mLを滴下し、pH6.3に中和した。溶解していた2−アミノ−3−ヒドロキシノナン酸は、中和することにより沈殿させることができる。4℃に冷却後30分静置した後、ろ過を行い沈殿を回収した。沈殿を50mLの水で2回、10mLのアセトンで2回洗浄した。得られた沈殿を50℃に加熱しながら真空乾燥を行った。7.92gの2−アミノ−3−ヒドロキシノナン酸の結晶が得られた。収率は54.8%であった。
2−アミノ−3−ヒドロキシドデカン酸の合成と分離
上記実施例8でアルデヒドを1−デカナールに代えて、5℃、33時間合成反応を行った。合成産物である2−アミノ−3−ヒドロキシドデカン酸の分析は、実施例7で移動相を0.1% 1−ヘプタンスルホン酸Na(pH2.5)/アセトニトリル=[75:25(V/V)]に代えた以外は同様の方法で行った。その結果、25g/Lの2−アミノ−3−ヒドロキシドデカン酸が合成していることがわかった。この反応液から、実施例9記載の方法と同様の方法により、2−アミノ−3−ヒドロキシドデカン酸の結晶11.5gを得た。収率は90%であった。
p−カルボキシフェニル−L−セリンの合成
反応液の組成は3.75gのグリシン、0.5gのテレフタルアルデヒド酸および0.0625gのTriton X−100を0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液pH7.5に添加し全量を25mLに調整した。この反応液に−80℃で凍結保存しておいた前記50mLの培養液から集めた菌体全量を加え10℃で22時間合成反応を行った。合成産物であるp−カルボキシフェニル−L−セリンの合成量は実施例6と同様のHPLC法で測定した。その結果、30g/Lのp−カルボキシフェニルセリンが合成されていることがわかった。
m−ブロムフェニル−L−セリンの合成
実施例11と同様の方法でアルデヒドをm−ブロムベンズアルデヒドに代えて0.625gを添加し、10℃、24時間酵素反応を行った。合成産物であるm−ブロムフェニル−L−セリンの分析は、実施例7で移動相を0.1% 1−ヘプタンスルホン酸Na(pH2.5)/アセトニトリル=[80:20(V/V)]、移動相流速を0.75mL/分、検出はUV=220nmに代えた方法で行った。その結果、34g/Lのm−ブロムフェニル−L−セリンを合成していることがわかった。
医薬品や医薬品・農薬中間体として有用なL−threo−DOPS、L−threo−CHSあるいはその他のL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造を煩雑な分離精製工程を行うこともなく工業的に有利に実施できる。
エンシファー・アルボリス(Ensifer arboris)NBRC100383由来のL−スレオニンアルドラーゼのスレオ/エリスロに対する立体選択性を示すHPLCの図である。図中(1)はエリスロ体を、(2)はスレオ体を示す。

Claims (9)

  1. エンシファー・アルボリス由来の、下記の(1)、(2)、または(3に示す遺伝子:
    (1)配列番号4に示す塩基配列のDNAからなる遺伝子:
    (2)配列番号5に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子:
    )配列番号5に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつL−スレオニンアルドラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
  2. 下記の(1)または(2)に示すタンパク質:
    (1)配列番号5に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
    (2)配列番号5に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつL−スレオニンアルドラーゼ活性を有するタンパク質
  3. 請求項1に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
  4. 請求項3に記載の組換えベクターを含む微生物。
  5. 宿主が大腸菌である請求項4に記載の微生物。
  6. 受託番号NITE P−110として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託された微生物。
  7. 請求項4、5または6に記載の微生物またはその調製物を、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドおよびグリシンを含有する液と接触せしめ、前記液中にL−スレオ−3,4−ジヒドロキシフェニルセリンを生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするL−スレオ−3,4−ジヒドロキシフェニルセリンの製造法。
  8. 請求項4、5または6に記載の微生物またはその調製物を、シクロヘキシルアルデヒドおよびグリシンを含有する液と接触せしめ、前記液中にL−スレオ−3−シクロヘキシルセリンを生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするL−スレオ−3−シクロヘキシルセリンの製造法。
  9. 請求項4、5または6に記載の微生物またはその調製物を、炭素数7以上の直鎖脂肪族アルデヒドまたはカルボキシ基もしくは臭素置換芳香族アルデヒド、およびグリシンを含有する液と接触せしめ、前記液中に対応するL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体を生成蓄積せしめ、これを採取することを特徴とするL−β−ヒドロキシアミノ酸誘導体の製造法。
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