以下に、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は複数の電動ブレーキ装置を制御するブレーキ制御装置を搭載した自動車の概略図を示す。自動車の車輪W1(前左),W2(前右),W3(後左),W4(後右)には、それぞれ電動ブレーキユニットB1,B2,B3,B4が取り付けられており、ブレーキ制御装置1からの制御信号に従って、各車輪W1〜W4に制動力を発生させる。
ブレーキ制御装置1には運転者のブレーキペダル2の操作量を検出するブレーキ操作量検出装置3が接続されており、ブレーキ制御装置は入力された運転者の踏込み量に基づいて必要な制動力を算出し、この制動力を実現するように各輪の電動ブレーキユニットB1乃至B4に対して制御信号を出力する。電動ブレーキユニットB1乃至B4は、ブレーキ制御装置から受け取った制御信号に基づいて、各車輪に制動力を発生させる。ここでブレーキペダル2はジョイスティック等、運転者が自動車のブレーキ操作を入力する手段を示し、ブレーキ操作量検出装置としては、力センサとストロークセンサの両方を用いるか、もしくは、どちらか一方を用いることができる。
また、ブレーキ制御装置1には、自動車の各輪の速度(前後左右輪で合計4輪の車輪速度)を検出する車速センサ6,自動車のヨーレートを検出するヨーレートセンサ7,操舵角度を検出する操舵角センサ8,自動車の前後方向加速度を検出する前後加速度センサ9,自動車の横方向の加速度を検出する横加速度センサ10などからの信号が入力される構成となっている。
ブレーキ制御装置1と各輪の電動ブレーキユニット及び、これらを結ぶ信号線、電力線を含むシステム構成を図2に示す。
図1でも示したが、ブレーキ制御装置1には、運転者のブレーキペダル2の操作量を検出するブレーキ操作量検出装置3、自動車の各輪の速度(前後左右輪で合計4輪の車輪速度)を検出する車速センサ6、自動車のヨーレートを検出するヨーレートセンサ7、操舵角度を検出する操舵角センサ8、自動車の前後方向加速度を検出する前後加速度センサ9、自動車の横方向の加速度を検出する横加速度センサ10などからの各種センサ情報が入力される構成となっている。ここでブレーキペダル2はジョイスティック等、運転者が自動車のブレーキ操作入力手段を示す。また、ブレーキ操作量検出装置としては、力センサとストロークセンサもしくは、どちらか一方を用いることができる。また、ブレーキ制御装置1は通信ライン98に接続されており、必要に応じて他のコントロールユニットと情報の送受信を行うことができる。本実施例では、エンジンコントロールユニットと通信を行っている。通信ライン98はCANなどにより実現できる。
各輪の電動ブレーキユニットB1〜B4は、自動車の各輪W1〜W4に取り付けられて各輪と一体に回転する被制動部材23と、制動部材(図示しない)と、この制動部材をモータの力で被制動部材23に押し付ける電動ブレーキアクチュエータ(電動ブレーキアクチュエータ)22とを備えている。被制動部材23の例としてはブレーキディスクやブレーキドラムがあり、制動部材の例としてはブレーキパッドがある。電動ブレーキアクチュエータ22の構造の一例としては、例えば特開2002−213507号公報に記載されているような構造が知られている。本発明は電動ブレーキアクチュエータの特定の機械的構造に限定されるものではなく、様々な構造の電動ブレーキアクチュエータを用いることができる。電動ブレーキユニットB1〜B4は、前記電動ブレーキアクチュエータ22の被制動部材23を押し付ける力(推力)により、各車輪W1〜W4に制動力を発生させる。
図2において、各電動ブレーキユニットB1〜B4ブレーキ制御装置1から各電動ブレーキユニットB1〜B4へ制御信号を伝達し、各電動ブレーキユニットB1〜B4からブレーキ制御装置1へ各電動ブレーキアクチュエータ22の推力または電流値等の情報を伝達する通信ライン28が接続されている。なお、前記通信手段としては、CANなどにより実現できる。また、電動ブレーキアクチュエータ22に電力を供給する電力線26が接続されている。
また、本実施例の電動ブレーキシステムは、パーキングブレーキ機能を備えている。ブレーキ制御装置1にはパーキングブレーキスイッチ4からの信号が入力されるようになっており、各輪の電動ブレーキユニットB1〜B4にはパーキング機構部21が設けられている。パーキングブレーキ機構部21は外部からの指令に従ってブレーキパッドの移動または電動ブレーキアクチュエータ22の動作を規制する機構であり、電動ブレーキアクチュエータに対する通電を停止してもそのときのブレーキ推力(制動部材を被制動部材23に押し付ける力)を保持する。
パーキングブレーキ機構部21にはブレーキ制御装置1からの指令信号を入力する信号線29が接続されており、パーキングブレーキスイッチ4が操作されるとブレーキ制御装置1は電動ブレーキアクチュエータ22を動作させブレーキ推力を発生させる。このブレーキ推力が発生した状態でパーキングブレーキ機構部21に指令を送り、ブレーキ推力を保持する。
また、ブレーキコントロールユニット1は通信ライン98に接続されており、必要に応じて他のコントロールユニットと情報の送受信を行うことができる。本実施例では、エンジンコントロールユニットと通信を行っている。通信ライン98はCANなどにより実現できる。
また、ブレーキコントロールユニット1には、運転者のブレーキペダル2の操作量を検出するブレーキ操作量検出装置3、自動車の各輪の速度(前後左右輪で合計4輪の車輪速度)を示す車速センサ6、自動車のヨーレートを示すヨーレートセンサ7、操舵角度を示す操舵角センサ8、自動車の前後方向加速度を示す前後加速度センサ9、自動車の横方向の加速度を示す横加速度センサ10などからの各種センサ情報が入力される構成となっている。
ここでブレーキペダル2はジョイスティック等、運転者が自動車のブレーキ操作入力手段を示す。また、ブレーキ操作量検出装置としては、力センサとストロークセンサもしくは、どちらか一方を用いることができる。
ブレーキコントロールユニット1は、CPU、ROM、RAM、入力部、出力部及び通信部から構成されている。ブレーキコントロールユニットは、運転者のブレーキペダル2の操作量を検出するブレーキ操作量検出装置3等の各種センサ情報を入力部から取り込み、ROMの情報及び通信の情報と共に、CPUで各輪の目標制動力を計算し、その制御信号を出力部から出力する。この制御信号に従って、各電動ブレーキユニットはモータを制御し、各車輪W1〜W4に制動力を発生させる。
図3は、図1の電動ブレーキユニットの回路構成を示す。
まず、太線枠Aで囲まれた駆動回路部DCPの回路において、車両内の電源ラインPWLを介して供給される電源が電源回路110に入力されるようになっている。そして、この電源回路110によって得られる安定した電源(Vcc、Vdd)は中央制御回路(CPU)112に供給されるようになっている。
また、前記電源回路110からの電源(Vcc、Vdd)はVCC高電圧検知回路114によって検知されており、このVCC高電圧検知回路114によって高電圧が検知された場合にはフェールセーフ回路116を動作させるようにしている。
該フェールセーフ回路116は後述の三相モータインバータ回路118に供給する電源をスイッチングするリレー制御回路120を動作させるようになっており、前記VCC高電圧検知回路114によって高電圧が検知された場合には該電源の供給をOFF状態にするようになっている。
前記リレー制御回路120を介して供給される電源はフィルタ回路122を介することによってノイズが除去され、前記三相モータインバータ回路118に供給されるようになっている。
前記中央制御回路112には前記ブレーキ制御装置1(図2参照)からの制御信号がCAN通信インターフェース回路124を介して入力されるようになっているとともに、電動ブレーキのキャリパ側に配置された推力センサ54、回転角検出センサ52、およびモータ温度センサ56からの出力が、それぞれ、推力センサインターフェース回路126、回転角検出センサインターフェース回路128、およびモータ温度センサインターフェース回路130を介して、入力されるようになっている。現時点における前記電動モータ42の状況等に関する情報を入力し、前記ブレーキ制御装置1からの制御信号に基づき、フィードバック制御をすることにより、該電動モータ42に適切な推力が得られるようにするためである。
すなわち、前記中央制御回路112は、前記ブレーキ制御装置1からの制御信号、および前記各センサの検出値に基づいて、三相モータプリドライバ回路132に適切な信号を出力させ、この三相モータプリドライバ回路132は前記三相モータインバータ回路118を制御するようになっている。この場合、三相モータインバータ回路118には相電流モニタ回路134および相電圧モニタ回路136が具備されており、これら相電流モニタ回路134および相電圧モニタ回路136によって、それぞれ相電流および相電圧を監視し、それらの出力は前記中央制御回路112を介して前記三相モータプリドライバ回路132を適切に動作させるようにしている。前記三相モータインバータ回路118は電動ブレーキのキャリパ内の前記電動モータ42に接続されて前記中央制御回路112による制御に応じた駆動がなされるようになっている。
また、前記中央制御回路112は、前記ブレーキ制御装置1からの制御信号、および前記各センサの検出値等に基づいて、PKB(パーキングブレーキ)ソレノイドドライバ回路138を介して、駆動機構部DMP内のPKBソレノイド50′を動作させてパーキングブレーキを行うことができるようになっている。なお、前記PKBソレノイドドライバ回路138には前記三相モータインバータ回路118に供給される電源が供給されるようになっている。
また、駆動回路部DCPには、前記中央制御回路112との間で信号の送受がなされる監視用制御回路140、たとえば故障情報等が格納されたEEPROMからなる記憶回路142が備えられており、前記中央制御回路112は、これら監視用制御回路140および記憶回路142からの情報に基づき前記電動モータ42の駆動において適切な推力を得るための制御を行っている。
図4は、図1のブレーキ制御装置の制御ブロック構成を示す。
要求制動力算出部においては、ブレーキ操作量検出装置3で検出したブレーキ操作量に基づき運転者の要求制動力Fcmdを算出する。
故障判断部においては、各電動ブレーキユニットの故障検出部からの故障状態に基づき、どの輪が故障しているかを判断する。
制動力配分制御部においては、前記要求制動力Fcmdを、前記故障判断部からの故障箇所に基づき、各輪で発生させる目標制動力に配分し、電動ブレーキユニットで発生させる推力指令値に換算する。
電動ブレーキユニットB1〜B4の推力制御部では、前記推力指令値に基づき、各輪の電動ブレーキアクチュエータを制御し、制動力を発生させる。
また、電動ブレーキユニットB1〜B4の故障検出部においては、推力指令値と、電動ブレーキアクチュエータ内にある推力センサからの実推力を参照しており、この比較によって電動ブレーキユニットB1〜B4の故障を判断する。具体的には、推力指令値と実推力の差が所定以上である場合や、推力指令値と実推力の所定以上の差が所定時間以上続いた場合などに、その電動ブレーキユニットが故障したと判断する。この構成によれば、少なくとも電動ブレーキアクチュエータB1〜B4の故障を独立に検出することができる。
また、故障検出部は、各種の故障を直接的に検出するための電圧、電流検出部からの情報が入力される構成とすることもできる。例えば、信号線(27 or 28)の断線または接触不良、電源線(26a or 26b)の断線または接触不良、電源(24)電圧低下または故障等に起因する電動ブレーキアクチュエータ(22)の故障を検出するための電圧検出部からの値を参照し、故障を検出しても良い。
図5は、本発明の他の実施形態をなすブレーキ制御装置の制御ブロック構成を示す。これは、制御構成としてブレーキ制御装置の下位システムとして、電動ブレーキユニットの変わりに油圧電動ブレーキユニットにしたものである。
制動力配分制御部で前記要求制動力Fcmdを、前記故障判断部からの故障箇所に基づき、各輪で発生させる目標制動力に配分するまでは、電動ブレーキユニットも用いた場合と同じであり、各輪の目標制動力を油圧電動ブレーキユニットで発生させているだけである。本発明は各輪の目標制動力を算出する方法であり、本発明の実施例を電動ブレーキユニットを用いた場合で説明するが、下位システムが油圧電動ブレーキであっても同じことである。
また、電動ブレーキユニットもしくは油圧電動ブレーキユニットにおいて、各輪の目標制動力に対してほぼ忠実な制動力を発生できるので、目標制動力=制動力として述べる。
図6は、本発明の一実施形態をなすブレーキ制御装置の制御フローチャートを示す。
図6のフローチャートは、ステップ3(以下、S3と略称する。他のステップについても同様とする。)の正常時の制動力配分とS4からS23の故障時の制動力配分に大きく二つの構成に分かれている。本発明では、各輪で発生させる制動力を算出するモードとして、正常時はS3で行ない、故障時はS4、からS11のように故障輪に基づいてモードを切り替えて制御する。
まず、S1においては、ブレーキ操作量検出装置3に基づき運転者の要求制動力Fcmdを算出する。
S2でブレーキ装置に異常があるかないかを下記の故障検出部にて判断する。
ここで、ブレーキに異常がないと判断された場合は、S3の通常制御モードで通常通り要求制動力Fcmdを前後左右輪に分配する。
S2でブレーキに異常があると判断された場合は、S4〜S7、S20、S21においてどの輪のブレーキ装置が故障しているかの判断を行ない、ブレーキ装置が故障している輪に応じて、S8〜S11、S22、S23の制御モードで各輪に発生させる目標制動力を算出する。ここで各失陥輪に対応した目標制動力配分の制御モードとして、要求制動力に対して、本来故障により失陥した輪で発生させる制動力分を失陥輪以外の正常輪に割振り、通常時より割振られた分だけ余計に目標制動力を配分する。
以上S1からS23により、算出された各輪で発生させる目標制動力に基づき、各輪ごとの推力指令値を算出し、電動ブレーキユニットで制動力を発生させる。
このように故障輪で発生する制動力分を他輪で補うことで、各輪で発生する制動力の合計が最大制動力に達するまで、要求制動力と等しくなる。
本実施形態により、故障が発生した場合でも、最大制動力の範囲内においては、要求制動力どおりの制動力を発生することができ、正常時と停止距離を同じにすることができる。
図7は、本発明の一実施形態をなすブレーキ制御装置の制御フローチャートを示す。
故障している輪に応じて、図6のS8〜S11、S22、S23の制御モードで各輪に発生させる目標制動力を算出する具体的な方法の一例として、前右輪のブレーキ装置が故障した場合を例に図7のフローチャートで説明する。図7のS1からS4は図6のS1からS4と同じであり、S3においては通常ブレーキにおける各輪への制動力配分を具体的な式で表している。
図7のS81からS86は、図6のS8の前右輪故障時用制御モードについて、各輪で発生させる目標制動力を算出する方法の一例を示す。
S2の故障判断でブレーキに異常がないと判断された場合は、S3の通常制御モードで要求制動力Fcmdを前後左右輪に分配する。
ここで、図7に記述している記号の定義を行う。Ffr*は前右輪の電動ブレーキユニットB1で発生させる目標制動力である。前記目標制動力Ffr*はB1への推力指令値又は電流指令値に換算され、電動ブレーキユニットB1は推力指令値又は電流指令値に基づきモータを制御し、車輪W1に制動力を発生させる。Ffl*、Frr*、Frl*も同様にそれぞれ前左輪、後右輪、後左輪の電動ブレーキユニットB2、B3、B4で制動力を発生させるための目標制動力である。また、Fl*は左側の車輪の電動ブレーキユニットB2とB4で発生させる目標制動力である。
Kfr、Kfl、Krr、Krlは、それぞれ電動ブレーキユニットB1、B2、B3、B4で発生させる制動力の配分比を表しており、車両緒言に基づきKfr、Kfl、Krr、Krlの合計が100%になるように設定する。一般的にはKfr=Kfl、Krr=KrlでKfr=Kfl:Krr=Krlの比率が2:1から3:1になるように設定されている。なお、Kfr、Kfl、Krr、Krlは走行状態に応じて可変させてもよい。図7のフローチャートでS3を通った場合に、各輪の電動ブレーキユニットB1、B2、B3、B4で制動力制御した結果の一例を図9に示す。なお、図9では、Kfr=Kfl=32.5%、Krr=Krl=12.5%とした例である。
S2でブレーキに異常があると判断された場合は、S4で前右輪の電動ブレーキユニットB1が故障しているかの判断を行ない、前右輪の電動ブレーキユニットB1が故障していない場合は、図7のS5以降へ続く。
S4で前右輪の電動ブレーキユニットB1が故障している場合は、S81〜S88にて、電動ブレーキユニットB1が故障している場合用の制御モードで各輪に発生させる制動力を算出する。
まず、S81では、前右輪の電動ブレーキユニットB1の制御を停止させ、前右輪の電動ブレーキユニットB1で発生させる目標制動力Ffr*=0とする。次に、後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*を
Frr*=Fcmd/2−Ffr (式1)
で算出する。ここで、Ffrは前右輪で発生する実制動力であり、電動ブレーキユニットを制御停止した時に、踏力で制動力を発生できるようなシステム(以下、メカバックアップ)になっている場合は、電動ブレーキが機能失陥している輪にも制動力が発生するので、(式1)で後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*を算出する時に、W1のメカバックアップによる制動力Ffr分を減算しておくことにより、前右輪W1と後右輪W3で発生させる制動力の合計を要求制動力Fcmdの1/2にし、残りの要求制動力Fcmdの1/2を前左輪W2と後左輪W4で発生させるように目標制動力の配分を行うと、右側の車輪W1とW3で発生させる制動力の合計と左側の車輪W2とW4で発生させる制動力の合計を等しく配分することができる。もちろん、メカバックアップがない電動ブレーキユニットにおいても、本ステップの最初にFfr*=0としていることから、Ffr=0となり、(式1)(式2)より、要求制動力Fcmdを後右輪の電動ブレーキユニットB3と、左側の車輪の電動ブレーキユニットB2、B4とで2等分して発生させる目標制動力配分となる。また、(式1)では、Ffrは前右輪で発生する実制動力としたが、メカバックアップ時の踏力から算出した推定制動力を用いても良い。
S81にて後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*を算出したが、後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させることができる制動力と後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させることができる制動力には限界があるため、S82では、まず後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*が制動力限界Frr limの範囲内であるか判断し、範囲外である場合には、S83で、電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*を制動力限界Frr limに制限する。
ここで、電動ブレーキユニットB3の制動力限界Frr limは、車両緒言に基づいて固定値を設定しても良いし、車両の走行状態および路面状態に応じて可変できるようにしても良い。この場合、路面μの推定値と各輪の荷重と推定横力の関係から計算する。また、右後輪W3がロック傾向になった時の液圧から求めても良いし、ABSが作動した時の制動力を基に本制動力以下に更新するなどして求めても良い。
S82で範囲内である場合、またはS83で電動ブレーキユニットB3の制動力が制動力限界Frr limに制限されたら、S84に移行する。
S84では、左側の車輪の電動ブレーキユニットB2とB4で発生させる目標制動力配分Fl*を
Fl*=Fcmd/2 (式2)
で算出し、次に左側の車輪の電動ブレーキユニットB2とB4で発生させる目標制動力Fl*を、前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*と後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*に配分する。ここで、本実施形態では、先に後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*から算出する場合について説明する。後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*は
Frl*=K1×Fcmd/2−K2×Ffr (式3)
により算出する。ここで、FfrはS81の(式1)と同じ値を用いる。K1とK2はそれぞれ0以上1以下の比例係数であり、K1=1、K2=0の場合、左側の車輪W2とW4で発生させる目標制動力の内W4で発生させる目標制動力の割合が100%となる。また、K1=0、K2=0の場合、左側の車輪W2とW4で発生させる目標制動力の内W4で発生させる目標制動力の割合が0%となり、K1=0.5、K2=0.5の場合、左側の車輪W2とW4で発生させる目標制動力の内W4で発生させる目標制動力の割合が50%となる。また、K1=1、K2=1の場合、(式3)のFrl*と(式1)のFrr*が同じ式となり、要求制動力に対して、後左輪と後右輪で発生させる目標制動力が等しい。なお、K1とK2の関係において、K1×Fcmd/2<K2×Ffrとならないようにする必要がある。このようにS84で後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*が算出されたらS85に移行する。
S85では、後右輪と同様に、S84にて算出された後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*に関しても、後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させることができる制動力には限界があるため、S85、S86にて、S82、S83と同様に、後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*を電動ブレーキユニットB4の制動力限界Frl lim以下となるように制限する。
次に、S87では、前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*を
Ffl*=Ffl*−Frl* (式4)
により、算出する。Ffl*を(式4)のように算出することにより、左側の車輪の電動ブレーキユニットB2とB4で発生させる目標制動力Fl*に対して、後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*の不足分の制動力を前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させるような目標制動力配分となる。
以上、図7のフローチャートS84からS87により、後右輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Frr*がFrr lim以下では、4輪の制動力の合計が要求制動力になるように制御することが可能であり、かつ、右側の車輪W1とW3で発生させる制動力の合計と左側の車輪W2とW4で発生させる制動力の合計を等しく配分することができる。また、後右輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Frr*がFrr limを超えた場合でも、要求制動力は満たせなくなるが、右側の車輪W1とW3で発生させる目標制動力の合計と左側の車輪W2とW4で発生させる目標制動力の合計を均等に配分することができる。
また、上述では、図6のS8の前右輪故障時用制御モードについて説明したが、図6のS9から11の前左輪、後右後輪、後左輪故障時用の制御モードについても図8と同様な考え方のロジックで適用できる。
図8は、ブレーキ制御装置のフローチャートを示す図である。
故障している輪に応じて、図6のS8〜S11、S22、S23の制御モードで各輪に発生させる目標制動力を算出する具体的な方法の一例として、前右輪のブレーキ装置が故障した場合を例に図8のフローチャートで説明する。図8のS1からS4は図6のS1からS4と同じであり、S3においては通常ブレーキにおける各輪への制動力配分を具体的な式で表している。
図8のS81からS86は、図6のS8の前右輪故障時用制御モードについて、各輪で発生させる目標制動力を算出する方法の一例を示す。
S2の故障判断でブレーキに異常がないと判断された場合は、S3の通常制御モードで要求制動力Fcmdを前後左右輪に分配する。
ここで、図8に記述している記号の定義を行う。Ffr*は前右輪の電動ブレーキユニットB1で発生させる目標制動力である。前記目標制動力Ffr*はB1への推力指令値又は電流指令値に換算され、電動ブレーキユニットB1は推力指令値又は電流指令値に基づきモータを制御し、車輪W1に制動力を発生させる。Ffl*、Frr*、Frl*も同様にそれぞれ前左輪、後右輪、後左輪の電動ブレーキユニットB2、B3、B4で制動力を発生させるための目標制動力である。Kfr、Kfl、Krr、Krlは、それぞれ電動ブレーキユニットB1、B2、B3、B4で発生させる制動力の配分比を表しており、車両緒言に基づきKfr、Kfl、Krr、Krlの合計が100%になるように設定する。一般的にはKfr=Kfl、Krr=KrlでKfr=Kfl:Krr=Krlの比率が2:1から3:1になるように設定されている。なお、Kfr、Kfl、Krr、Krlは走行状態に応じて可変させてもよい。図8のフローチャートでS3を通った場合に、各輪の電動ブレーキユニットB1、B2、B3、B4で制動力制御した結果の一例を図9に示す。なお、図9では、Kfr=Kfl=32.5%、Krr=Krl=12.5%とした例である。
S2でブレーキに異常があると判断された場合は、S4で前右輪の電動ブレーキユニットB1が故障しているかの判断を行ない、前右輪の電動ブレーキユニットB1が故障していない場合は、図8のS5以降へ続く。
S4で前右輪の電動ブレーキユニットB1が故障している場合は、S81〜S88にて、電動ブレーキユニットB1が故障している場合用の制御モードで各輪に発生させる制動力を算出する。
まず、S81では、前右輪の電動ブレーキユニットB1の制御を停止させ、前右輪の電動ブレーキユニットB1で発生させる目標制動力Ffr*=0とする。次に、後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*、前左輪の電動ブレーキユニットB2と後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力の合計Fl*をそれぞれ、
Frr*=Fcmd/2−Ffr (式5)
Fl*=Fcmd/2 (式6)
で算出する。ここで、Ffrは前右輪で発生する実制動力であり、電動ブレーキユニットを制御停止した時に、踏力で制動力を発生できるようなシステム(以下、メカバックアップ)になっている場合は、電動ブレーキが機能失陥している輪にも制動力が発生するので、(式5)で後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*を算出する時に、W1のメカバックアップによる制動力Ffr分を減算しておくことにより、前右輪W1と後右輪W3で発生させる制動力の合計を要求制動力Fcmdの1/2にし、残りの要求制動力Fcmdの1/2を前左輪W2と後左輪W4で発生させるように目標制動力配分を行うと右側の車輪W1とW3で発生させる制動力の合計と左側の車輪W2とW4で発生させる制動力の合計を等しく配分することができる。もちろん、メカバックアップがない電動ブレーキユニットにおいても、本ステップの最初にFfr*=0としていることから、Ffr=0となり、(式5)(式6)より、要求制動力Fcmdを後右輪の電動ブレーキユニットB3と、左側の車輪の電動ブレーキユニットB2、B4とで2等分して発生させる目標制動力配分となる。また、(式5)では、Ffrは前右輪で発生する実制動力としたが、メカバックアップ時の踏力から算出した推定制動力を用いても良い。
あとは、左側の車輪の電動ブレーキユニットB2とB4で発生させる目標制動力Fl*を、前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*と後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*に配分するのだが、本実施例では、先に後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*から算出する場合について説明する。後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*は
Frl*=K1×Fcmd/2−K2×Ffr (式7)
により算出する。ここで、FfrはS81の(式5)と同じ値を用いる。K1とK2はそれぞれ0以上1以下の比例係数であり、K1=1、K2=0の場合、左側の車輪W2とW4で発生させる目標制動力の内W4で発生させる目標制動力の割合が100%となる。また、K1=0、K2=0の場合、左側の車輪W2とW4で発生させる目標制動力の内W4で発生させる目標制動力の割合が0%となり、K1=0.5、K2=0.5の場合、左側の車輪W2とW4で発生させる目標制動力の内W4で発生させる目標制動力の割合が50%となる。また、K1=1、K2=1の場合、(式7)のFrl*と(式5)のFrr*が同じ式となり、要求制動力に対して、後左輪と後右輪で発生させる目標制動力が等しい。なお、K1とK2の関係において、K1×Fcmd/2<K2×Ffrとならないようにする必要がある。
S81にて後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*を算出したが、後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させることができる制動力と後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させることができる制動力には限界があるため、S82では、まず後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*が制動力限界Frr limの範囲内であるか判断し、範囲外である場合には、S83で、電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*を制動力限界Frr limに制限する。
ここで、電動ブレーキユニットB3の制動力限界Frr limは、車両緒言に基づいて固定値を設定しても良いし、車両の走行状態および路面状態に応じて可変できるようにしても良い。この場合、路面μの推定値と各輪の荷重と推定横力の関係から計算する。また、右後輪W3がロック傾向になった時の液圧から求めても良いし、ABSが作動した時の制動力を基に本制動力以下に更新するなどして求めても良い。
S82で範囲内である場合、またはS83で電動ブレーキユニットB3の制動力が制動力限界Frr limに制限されたら、S84に移行する。
後右輪と同様に、S81にて算出された後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*に関しても、後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させることができる制動力には限界があるため、S84、S85にて、S82、S83と同様に、後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*を電動ブレーキユニットB4の制動力限界Frl lim以下となるように制限する。
次に、S86では、前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*を
Ffl*=Fcmd−(Frr*+Frl*+Ffr) (式8)
により算出する。ここで(式8)のFfrはS81(式5)(式7)と同じ値を用いることにより、前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*は、要求制動力Fcmdに対して、他の3輪で発生する制動力の不足分の制動力を発生させるようになる。
前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*を(式8)のように算出することにより、S1の(式5)で算出した後右輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Frr*がFrr lim以下では、車両右側にある車輪W1とW3で発生させる目標制動力の合計と車両左側にある車輪W2とW4で発生させる目標制動力の合計が等しくなり、後右輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Frr*がFrr limを超えた場合は、Frr lim−Frr*の制動力分が前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*で補われ、前左輪で発生する制動力の限界まで、4輪の制動力の合計が要求制動力になるように制御することが可能と
なる。
図8のフローチャートでS81からS86を通った場合に、各輪の電動ブレーキユニットB1、B2、B3、B4で制動力制御した結果の一例として、要求制動力に対して各輪の制動力と左右の制動力差により生じるヨーモーメントの関係を図10、図11、図12に示す。いずれもK1=1、K2=0の場合で、メカバックアップがないシステムの例であり、図10はFrr lim=Frl lim=4000Nの場合、図11はFrr lim=4000N、Frl lim=2500Nの場合、図12はFrr lim=2500N、Frl lim=4000Nの場合を表している。なお、前左輪の制動力の限界Ffl limを7500Nと仮定した。
いずれの場合においても、正常輪で発生できる最大制動力まで、要求制動力を満たすように制動力を発生することができる。
また、故障輪と左右同方向の車輪で発生する制動力限界の2倍の要求制動力まで、車両の右側の車輪で発生する制動力と左側の車輪で発生する制動力を等しくすることができる。
また、要求制動力が、故障輪と左右同方向の車輪で発生する制動力限界の2倍を超える場合でも、要求制動力を満たすように故障輪と左右反対方向の車輪の制動力を増力させることができる。
また、本実施例では、前右輪が失陥した場合、K1=1としたことで後右輪と後左輪ができるだけ同じ制動力になるようなロジックになっている。
ここで、K=0とすると、後右輪と前左輪ができるだけ同じ制動力になるようなロジックとなる。しかしこの場合、前左輪が制動力限界に達しても要求制動力と目標制動力の差分を後左輪で補うことができないため、図8フローチャートのS81からS86のFrl*とFfl*を置き換えるロジックとすると、前左輪が制動力限界に達した場合、要求制動力と目標制動力の差分を後左輪で補うことを実施できる。この場合においても、要求制動力Fcmdに対して左右の制動力差により生じるヨーモーメントの関係は図10、図11、図12の場合と同様である。
以上のように、S81からS86のように、前右輪の電動ブレーキユニットB1が故障した場合に、できるだけ車両の進行方向に対して右側輪の制動力と左側輪の制動力が等しくなるように、かつ、要求制動力を満たせるように、各正常輪で発生させる目標制動力Ffl*、Frr*、Frl*を算出することで、不要なヨーモーメントを発生させないように、かつ最大制動力の低下を抑制するような制御モードとなる。
また、上述では、図6のS8の前右輪故障時用制御モードについて説明したが、図6のS9から11の前左輪、後右後輪、後左輪故障時用の制御モードについても図8と同様な考え方のロジックで適用できる。
次に図6のS22の前右輪と後左輪のブレーキ装置故障時用の制御モードについて説明する。
図13は、本発明の一実施形態をなすブレーキ制御装置のフローチャートを示す。
故障している輪に応じて、図6のS8〜S11、S22、S23の制御モードで各輪に発生させる目標制動力を算出する具体的な方法の一例として、前右輪と後左輪のブレーキ装置が故障した場合を例に図13のフローチャートで説明する。図13のS1からS3およびS20は、図6のS1からS3およびS20同じであり、また、S1からS3については、図8のS1からS3とも同じであるため説明を省略する。
図13のS221からS224は、図6のS22の前右後左輪故障時用制御モードについて、各輪で発生させる目標制動力を算出する具体的な方法の一例を示す。
S20で前右輪と後左輪の電動ブレーキユニットB1とB4が機能失陥している場合は、S221〜S224にて、電動ブレーキユニットB1とB4が機能失陥している場合用の制御モードで各輪に発生させる制動力を算出する。
まず、S211では、前右輪と後左輪の電動ブレーキユニットB1とB4の制御を停止させ、前右輪の電動ブレーキユニットB1で発生させる目標制動力をFfr*=0とし、後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力をFrl*=0にする。次に、後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*を
Frr*=Fcmd/2−Ffr (式9)
で算出する。(式9)により後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*を算出する方法は図8のS81と同じである。
次に、S222、S223もそれぞれ図8のS82、S83と同じため説明を省略する。S222で後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*が制動力限界Frr limの範囲内である場合、またはS223で電動ブレーキユニットB3の制動力が制動力限界Frr limに制限されたら、S224に移行する。
S224では、前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*を
Ffl*=Fcmd−(Frr*+Frl+Ffr) (式10)
により算出する。(式10)により、前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*は、要求制動力Fcmdに対して、他の3輪で発生する制動力の不足分の制動力を発生させるようになる。
以上、図6のS22の前右後左輪故障時用制御モードについて、図13のS221からS224のロジックにすることにより、S221で算出した後右輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Frr*がFrr lim以下では、車両右側にある車輪W1とW3で発生させる目標制動力の合計と車両左側にある車輪W2とW4で発生させる目標制動力の合計が等しくなり、後右輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Frr*がFrr limを超えた場合は、Frr lim−Frr*の制動力分が前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*で補われ、前左輪で発生する制動力の限界まで、4輪の制動力の合計が要求制動力になるように制御することが可能となる。
図13のフローチャートでS221からS226を通った場合に、各輪の電動ブレーキユニットB1、B2、B3、B4で制動力制御した結果の一例として、要求制動力に対して各輪の制動力と左右の制動力差により生じるヨーモーメントの関係を図14に示す。なお、図14はメカバックアップがないシステムにおいてFrr lim=4000Nの場合であり、前左輪の制動力の限界Ffl limを7500Nと仮定した。
図14より、正常輪で発生できる最大制動力まで、要求制動力を満たすように制動力を発生することができ、故障輪と左右同方向の車輪で発生する制動力限界の2倍の要求制動力まで、車両の右側の車輪で発生する制動力と左側の車輪で発生する制動力を等しくすることができることがわかる。
また、要求制動力が、故障輪と左右同方向の車輪で発生する制動力限界の2倍を超える場合でも、要求制動力を満たすように故障輪と左右反対方向の車輪の制動力を増力させることができる。
以上のように、図13のS221からS224のように、前右輪と後左の電動ブレーキユニットB1とB2が機能失陥した場合に、できるだけ車両の進行方向に対して右側輪の制動力と左側輪の制動力が等しくなるように、かつ、要求制動力を満たせるように、各正常輪で発生させる目標制動力Ffl*、Frr*を算出することで、不要なヨーモーメントを発生させないように、かつ最大制動力の低下を抑制するような制御モードとなる。
また、上述では、図6のS22の前右後左輪故障時用制御モードについて説明したが、図6のS23の前左輪後右輪故障時用の制御モードについても図13と同様な考え方のロジックで適用できる。
図15、図16は、本発明の他の実施形態をなすブレーキ制御装置の制御ブロック構成を示す。
要求制動力算出部においては、ブレーキ操作量検出装置3で検出したブレーキ操作量に基づき運転者の要求制動力Fcmdを算出する。
故障判断部においては、各電動ブレーキユニットの故障検出部からの故障状態に基づき、どの輪が故障しているかを判断する。
許容ヨーモーメント算出部においては、車速と舵角の少なくとも片方に基づき、車両挙動を乱さない実ヨーモーメントの許容値を算出する。
制動力配分制御部においては、前記要求制動力Fcmdを、前記故障判断部からの故障箇所に基づき、各輪で発生させる目標制動力に配分し、電動ブレーキユニットで発生させる推力指令値に換算する。なお、本制動力配分制御部は、前記許容ヨーモーメント算出部において算出された許容ヨーモーメントを参照し、車両進行方向に対して左側の車輪で発生させる制動力と右側の車輪で発生させる制動力の差により、車両挙動を不安定にさせるような制動力配分とならないように、各輪で発生させる目標制動力を算出する。
電動ブレーキユニットB1〜B4の推力制御部では、前記推力指令値に基づき、各輪の電動ブレーキアクチュエータを制御し、制動力を発生させる。
また、電動ブレーキユニットB1〜B4の故障検出部においては、推力指令値と、電動ブレーキアクチュエータ内にある推力センサからの実推力を参照しており、この比較によって電動ブレーキユニットB1〜B4の故障を判断する。具体的には、推力指令値と実推力の差が所定以上である場合や、推力指令値と実推力の所定以上の差が所定時間以上続いた場合などに、その電動ブレーキユニットが故障したと判断する。この構成によれば、少なくとも電動ブレーキアクチュエータB1〜B4の故障を独立に検出することができる。また、故障検出部は、各種の故障を直接的に検出するための電圧、電流検出部からの情報が入力される構成とすることもできる。例えば、信号線(27 or 28)の断線または接触不良、電源線(26a or 26b)の断線または接触不良、電源(24)電圧低下または故障等に起因する電動ブレーキアクチュエータ(22)の故障を検出するための電圧検出部からの値を参照し、故障を検出しても良い。
また、制御構成としてブレーキ制御装置の下位システムとして、電動ブレーキユニットの変わりに油圧電動ブレーキユニットにすることもできる。
油圧電動ブレーキユニットを用いた場合の制御ブロック構成を図16に示す。
制動力配分制御部で前記要求制動力Fcmdを、前記故障判断部からの故障箇所に基づき、各輪で発生させる目標制動力に配分するまでは、電動ブレーキユニットも用いた場合と同じであり、各輪の目標制動力を油圧電動ブレーキユニットで発生させているだけである。本発明は各輪の目標制動力を算出する方法であり、本発明の実施例を電動ブレーキユニットを用いた場合で説明するが、下位システムが油圧電動ブレーキであっても同じことである。
また、電動ブレーキユニットもしくは油圧電動ブレーキユニットにおいて、各輪の目標制動力に対してほぼ忠実な制動力を発生できるので、目標制動力=制動力として述べる。
図17と図19は、図15、図16のブレーキ制御装置のフローチャートを示す。
この実施形態についても、図6のS8からS11およびS22とS33の各輪故障時用制御モードについて、S8の前右輪故障時用制御モードの一例を説明するが、図6のS9からS11およびS22とS33の前左輪、後右後輪、後左輪、前右後左輪、前左後右輪故障時用の制御モードについても同様な考え方のロジックで適用できる。
本実施例の図17のS1からS86は図8のS1からS86と同じであり、車両挙動を乱さないように安全に制動力を発生させるために、S86の出力に許容ヨーモーメントの範囲内で制動力制御するためのロジックを追加した制御モードである。
ここで実ヨーモーメントとは、少なくとも1輪が失陥したことにより発生する、車両に対して右側の車輪で発生する制動力と、左側の車輪で発生する制動力の差に基づき発生する、車両重心回りのヨーモーメントのことであり、許容ヨーモーメントとは、車速と舵角の少なくとも片方に基づき、車両挙動を乱さない実ヨーモーメントの許容値のことである。
S871では、まず許容ヨーモーメントMlimを算出する。ここで、許容ヨーモーメントの算出方法としては、予め設定した車速と舵角の少なくとも片方に基づく値(車速と舵角に対応するマップ)を用いても良いし、規範ヨーレートγtと実ヨーレートγとの偏差Δγを算出し、予め設定しておいたΔγに基づく値(Δγと許容ヨーモーメントの関係を表したマップ)を用いても良い。この場合、規範ヨーレートγtは、Aはスタビリティファクタ、Vは車速、lは車両のホイールベース、δは舵角、Tは時定数、sはラプラス演算子とした(式11)で算出し、
実ヨーレートγは、ヨーレートセンサで検出する。そして、(式12)に基づき、規範ヨーレートγtと実ヨーレートγの偏差Δγを算出する。
次に、S872では、実ヨーモーメントMを算出する。ここで、実ヨーモメントMは、(式13)のように、各輪の制動力とトレッドから算出する。
M=df(Ffr−Ffl*)+dr(Frr*−Frl*) (式13)
(式13)は各車輪W1〜W4が、車両重心位置の進行方向に対して線対称に配置されており、右回り(時計回り)のヨーモーメントを正、左回り(反時計回り)のヨーモーメントを負とした例であり、df、drはそれぞれフロント側のトレッドの1/2、リア側のトレッドの1/2である。
また、Ffrは前右輪W1で発生する実制動力であり、Ffl*、Frr*、Frl*は、S81からS86で求めた各正常輪で発生させる目標制動力である。ここで、故障輪である前右輪W1で発生する実制動力Ffrは、前右輪W1のブレーキ装置により発生している、制動部材を被制動部材23に押し付ける力を、力センサで検出して、路面μの推定値と輪荷重に基づいて算出しても良いし、メカバックアップシステムであれば、前右輪W1のブレーキ装置により発生している、制動部材を被制動部材23に押し付ける力をブレーキペダル踏力から換算し、路面μの推定値と輪荷重に基づいて算出しても良い。
また、実ヨーモメントMは、ヨーレートセンサから求めても良いし、(式14)で求めても良い。
M=df(Ffr−Ffl)+dr(Frr−Frl) (式14)
(式14)のFfl、Frr、Frlは正常輪である前左輪W2、後右輪W3、後左輪W4の実制動力であり、各正常輪で発生する実制動力は各輪のブレーキ装置により発生している、制動部材を被制動部材23に押し付ける力を、力センサで検出するか、モータ電流から推定し、路面μの推定値と輪荷重に基づいて算出する。
S873では、S872で求めた実ヨーモーメントMがS871で求めた許容ヨーモーメントMlimの範囲内であるか判定し、実ヨーモーメントが許容ヨーモーメントの範囲内である場合は、各正常輪の目標制動力がS81からS86で算出されたFfl*、Frr*、Frl*となる。
実ヨーモーメントが許容ヨーモーメントの範囲内でない場合は、S874において、許容ヨーモーメントの範囲内になるような前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力の制限値Ffl limを算出する。
ここで、Ffl limは(式15)により算出する。
Ffl lim=Ffr+(dr(Frr*−Frl*)×Mlim)/df(式15)
(式15)のMlimに許容ヨーモーメントを、Ffrに実制動力を、Frr*、Frl*にそれぞれ後右輪、後左輪で発生させる目標制動力を代入して算出する。また、実ヨーモメントMを算出する際に、(式14)を用いた場合は、Ffl limを(式16)により算出する。
Ffl lim=Ffr+(dr(Frr−Frl)×Mlim)/df(式16)
ここで、Frr、Frlは、それぞれ後右輪W3、後左輪W4の実制動力である。
そして、S88で許容ヨーモーメントの範囲内となるように、Ffl=Ffl limとし、前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*に制限をかける。
図17のフローチャートにおいて、図10と同じ条件でS81からS88を通った場合に、各輪の電動ブレーキユニットB1、B2、B3、B4で制動力制御した結果を図18に示す。図10に対して、前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*が、S871からS88により、許容ヨーモーメントの範囲内になるようにFfllimで制限がかかる。このように、常に許容ヨーモーメントの範囲内になるように、各輪で制動力を発生させることにより、ブレーキ装置に故障が発生しても、できるだけ制動力を確保し、かつ、故障による左右の制動力差により、車両挙動が不安定になることを抑制することのできるブレーキ制御装置を提供することができる。
また、本発明は、図19に示すブレーキ制御装置のフローチャートを用いても実施することができる。
図19に示すブレーキ制御装置のフローチャートについても、図6のS8からS11の各輪故障時用制御モードについて、S8の前右輪故障時用制御モードの一例を説明するが、図6のS9から11の前左輪、後右後輪、後左輪故障時用の制御モードについても同様な考え方のロジックで適用できる。
図19に示すブレーキ制御装置のフローチャートにおいて、S1からS871までは、図17と同様であるが、S871以降の許容ヨーモーメントの範囲内で制動力制御するためのロジックが前述の実施例と異なった例である。
S871までは実施例3と同様に算出し、S872で、許容ヨーモーメントの範囲内になるような前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力の制限値Ffl limを図17のS874と同様に算出する。
そして、S873では、S86で算出した前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*が、S874で算出したFfl limより小さいかの判定を行ない、小さい場合は、各正常輪の目標制動力がS81からS86で算出されたFfl*、Frr*、Frl*となる。
Ffl*がFfl lim以上の場合は、S88でFfl*=Ffl limとし、前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*に制限をかける。
図19のフローチャートにおいて、図10と同じ条件でS81からS88を通った場合に、各輪の電動ブレーキユニットB1、B2、B3、B4で制動力制御した結果は図18と同様になり、図10に対して、前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*が、S871からS88により、許容ヨーモーメントの範囲内になるようにFfl limで制限がかかる。
また、本実施例において、図19のS871とS872より、最初に許容ヨーモーメントを算出してから許容ヨーモーメントを用いてFfl limを算出しているが、許容ヨーモーメントの算出を省略し、最初から、車速と舵角の少なくとも片方に基づくFfl limの値(車速と舵角に対応するマップ)を設定しておき、Ffl limを直接算出しても良いし、規範ヨーレートγtと実ヨーレートγとの偏差Δγに基づくFfl limの値(ΔγとFfl limの関係を表したマップ)からFfl limを直接算出しても良い。
以上、制動力ベースで計算している例を示しているが、要求制動力Fcmdを先に要求押し付け力に変換し、押し付け力ベースで計算することもできる。
図20と図21は、本発明の他の実施形態をなすブレーキ制御装置のフローチャートを示す図であり、図21は、図20に記載のS15の処理内容の1例を示したフローチャートである。また、ヨーモーメントの向きは、右回り(時計回り)を正、左回り(反時計回り)を負とした例である。
まず、図20のフローチャートについて説明する。S1においては、ブレーキ操作量検出装置3に基づき運転者の要求制動力Fcmdを算出する。S10においては、許容ヨーモーメントを、実施例2の図17のS871と同様に求める。S11においては、実ヨーモーメントを算出する。ここで、実ヨーモメントは、ヨーレートセンサから求めても良いし、実施例2の(式8)と同様に各輪の制動力とトレッドから算出しても良い。
S12では、許容ヨーモーメントの範囲内で制動力制御できるかの判定を行う。ここで、実ヨーモーメントが許容ヨーモーメントの範囲内の場合は、S13で各輪で発生させる目標制動力Ffr*、Ffl*、Frr*、Frl*を算出する。ここで、ΔFfr、ΔFfl、ΔFrr、ΔFrlは、それぞれ、前右輪、前左輪、後右輪、後左輪の電動ブレーキユニットB1、B2、B3、B4で発生させる目標制動力の補正値であり、初期値は、ΔFfr =ΔFfl=ΔFrr=ΔFrl=0である。
実ヨーモーメントが許容ヨーモーメントの範囲内でない場合は、車両の右側にある車輪W1、W3で発生している制動力の合計と左側にある車輪W2、W4で発生している制動力の合計のバランスが不適切と判断し、許容ヨーモーメントの範囲内になるように、S14以降で各輪で発生させる制動力の補正値ΔFfr、ΔFfl、ΔFrr、ΔFrlを算出する。
S14では、実ヨーモーメントが右回り(時計回り)であるか、左回り(反時計回り)であるかを判定する。
右回り(時計回り)である場合は、車両の右側にある車輪W1、W3で発生している制動力の合計が左側にある車輪W2、W4で発生している制動力の合計より大きいと判断し、S15では、許容ヨーモーメントの範囲内に入るような左右の制動力配分にするために、車両の右側にある車輪W1、W3で発生する制動力を下げ、左側にある車輪W2、W4で発生する制動力を上げるような、各輪で発生させる制動力の補正値ΔFfr、ΔFfl、ΔFrr、ΔFrlを算出する。
左回り(反時計回り)である場合は、左側にある車輪W2、W4で発生している制動力の合計が車両の右側にある車輪W1、W3で発生している制動力の合計より大きいと判断し、S16では、許容ヨーモーメントの範囲内に入るような左右の制動力配分にするために、車両の左側にある車輪W2、W4で発生する制動力を下げ、右側にある車輪W1、W3で発生する制動力を上げるような、各輪で発生させる制動力の補正値ΔFfr、ΔFfl、ΔFrr、ΔFrlを算出する。
そして、S13では、S15またはS16で算出された各輪で発生させる制動力の補正値ΔFfr、ΔFfl、ΔFrr、ΔFrlが加えられた、各輪で発生させる目標制動力Ffr*、Ffl*、Frr*、Frl*が算出される。
次に、図20に記載のS15の処理内容の一例を図21を用いて説明する。
まず、図21に記述している記号の定義を行なう。ΔFfrb、ΔFflb、ΔFrlbは、それぞれ前右輪、前左輪、後左輪の電動ブレーキユニットB1、B2、B4で発生させる目標制動力の補正値を仮決めした値であり、初期値はΔFfrb=ΔFflb=ΔFrlb=0である。Fmは、実ヨーモーメントが許容ヨーモーメントを超えた分による車両に対して左側の制動力の合計と右側の制動力の合計との制動力差であり、例えば、前後のトレッドが等しい場合は、トレッドの1/2をd、実ヨーモーメントMが許容ヨーモーメントMlimの範囲からはみ出した分のヨーモーメントをΔMとすると、(式17)で表すことができる。
Fm=ΔM/d (式17)
Ffr*b、Ffl*b、Frl*bは、それぞれ前右輪、前左輪、後左輪の電動ブレーキユニットB1、B2、B4で発生させる制動力指令値の仮決め値であり、あとは図4と同様に、Kfl、Krlはそれぞれ、電動ブレーキユニットB2、B4で発生させる制動力の配分比、Fcmdは要求制動力である。
S12とS14で、実ヨーモーメントが右回り(時計回り)で許容ヨーモーメントを超えていると判定されるので、車両の右側にある車輪W1、W3で発生している制動力の合計が左側にある車輪W2、W4で発生している制動力の合計より大きいと考えられる。そこで、S151からS157では、許容ヨーモーメントの範囲内に入るような左右の制動力配分にするために、かつ、各輪が制動力の限界に達しないように、車両の右側にある車輪で発生する制動力を下げ、左側にある車輪で発生する制動力を上げるように、各輪で発生させる制動力の補正値ΔFfr、ΔFfl、ΔFrr、ΔFrlを算出する方法を示す。
まず、S151では、(式6)で求めた許容ヨーモーメントの範囲内にするために補正が必要な左右の制動力差Fmを2等分し、右側の制動力からFm/2以上減力し、左側の制動力をFm/2以上増力するための補正値を仮決めする。そこで、本フローチャートでは、前右輪の電動ブレーキユニットB1で発生させる制動力の補正値をΔFfrb=−Fm/2、前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる制動力の補正値をΔFflb=Fm/2と仮決めする。そして、増力させる前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*をFfl*bとして仮算出する。
次に、S152では、仮算出した前左輪の目標制動力Ffl*bが制動力限界Ffl limの範囲内であるか判定する。範囲内であれば、S151で仮決めした補正値ΔFfrb、ΔFflbで許容ヨーモーメントの範囲内で制動力制御が成立するので、S156で、仮決め補正値ΔFfrb、ΔFflb、をそれぞれ、ΔFfr、ΔFflへ代入し、補正値を決定してS13で各輪の目標制動力を算出する。
仮算出した前左輪の目標制動力Ffl*bが前左輪の制動力限界Ffl limを超えてしまう場合は、許容ヨーモーメントの範囲内で制動力制御できるようにS153以降で補正値を再算出する。
S153では、まず、仮算出した前左輪の目標制動力Ffl*bが制動力限界Ffl limをどのくらい超えているか算出する。ここで算出した制動力をS153ではΔFmbとしている。ここでΔFmbにより、S151で仮決めした前左輪の制動力補正値ΔFflbがFm/2−ΔFmb以下であれば、前左輪の目標制動力Ffl*bが、制動力限界の範囲内になるため、前左輪の制動力補正値ΔFflをFm/2−ΔFmbと決定する。そうすると、左側の制動力がΔFmb分不足してしまうので、ΔFmb分を後左輪で補うために、後左輪の制動力補正値をΔFrlb=ΔFmbと仮決めする。そして、後左輪の目標制動力Frl*bを仮算出する。
次に、S154では、仮算出した後左輪の目標制動力Frl*bが後左輪の制動力限界Frl limの範囲内であるか判定する。範囲内であれば、S153で仮決めした補正値ΔFrlbで許容ヨーモーメントの範囲内での制動力制御が成立するので、S157にてS153までで仮決めした補正値を補正値として決定しS13で各輪の目標制動力を算出する。
仮算出した後左輪の目標制動力Frl*bが制動力限界Frl limを超えてしまう場合は、左側にある車輪の制動力が両輪とも限界であることから、右側にある車輪の制動力を低下させることにより許容ヨーモーメントの範囲内で制動力制御する。
そこでS155では、S153と同様にまず、仮算出した後左輪の目標制動力Frl*bが制動力限界Frl limをどのくらい超えているか算出する。ここで算出した制動力をS155ではΔFmとしている。ここでΔFmにより、S153で仮決めした後左輪の制動力補正値ΔFrlbがΔFmb−ΔFm以下であれば、S153で仮算出した後左輪の目標制動力Frl*bが、制動力限界の範囲内になるため、後左輪の制動力補正値ΔFrlをΔFmb−ΔFmと決定する。そうすると、左側の制動力がΔFm分不足してしまう。しかしΔFm分をこれ以上左側の車輪で補うことができないため、右側の制動力をΔFm分下げる。そこで、本実施例では前右輪の制動力補正値ΔFfrに−ΔFmを代入しているが、後右輪の制動力補正値ΔFrrに代入しても良い。以上のように各輪の制動力補正値を決定し、S13で各輪の目標制動力を算出する。
以上、図21を用いて図20フローチャートのS15の処理内容の1例を示したが、S16の処理も、左回り(反時計回り)のヨーモーメントを許容ヨーモーメントの範囲内にするために、左側の車輪で発生する制動力を下げ、右側にある車輪で発生する制動力を上げるロジックを図21の左右輪を入れ替えたとロジック同様にすることで実現できる。
また、図21のS151では補正値の仮決めを左右輪とも前輪から行ったが、後輪から行っても良い。
図7は、本発明の他の実施形態によるブレーキ制御装置のフローチャートを示す。
故障している輪に応じて、図6のS8〜S11、S22、S23の制御モードで各輪に発生させる目標制動力を算出する具体的な方法の一例として、右前輪のブレーキ装置が故障した場合を例に図7のフローチャートで説明する。図7のS1からS4は図21のS1からS4と同じなので説明を省略する。
まず、S81では、前右輪の電動ブレーキユニットB1の制御を停止させ、前右輪の電動ブレーキユニットB1で発生させる目標制動力Ffr*=0とする。次に、後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*を
Frr*=Fcmd/2−Ffr (式18)
で算出する。ここで、Ffrは前右輪で発生する実制動力であり、電動ブレーキユニットを制御停止した時に、踏力で制動力を発生できるようなシステム(以下、メカバックアップ)になっている場合は、失陥している輪にも制動力が発生するので、(式18)で後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*を算出する時に、W1のメカバックアップによる制動力Ffr分を減算しておくことにより、前右輪W1と後右輪W3で発生させる制動力の合計を要求制動力Fcmdの1/2にし、残りの要求制動力Fcmdの1/2を前左輪W2と後左輪W4で発生させるように目標制動力配分を行なうと右側の車輪W1とW3で発生させる制動力の合計と左側の車輪W2とW4で発生させる制動力の合計を等しく配分することができる。もちろん、メカバックアップがない電動ブレーキユニットにおいても、本ステップの最初にFfr*=0としていることから、Ffr=0となり、(式18)より、要求制動力Fcmdを後右輪の電動ブレーキユニットB3と、左側の車輪の電動ブレーキユニットB2、B4とで2等分して発生させる目標制動力配分となる。また、(式18)では、Ffrは前右輪で発生する実制動力としたが、メカバックアップ時の踏力から算出した推定制動力を用いても良い。
S81にて後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*を算出したが、後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させることができる制動力と後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させることができる制動力には限界があるため、S82では、まず後右輪の電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*が制動力限界Frr limの範囲内であるか判断し、範囲外である場合には、S83で、電動ブレーキユニットB3で発生させる目標制動力Frr*を制動力限界Frr limに制限する。
ここで、電動ブレーキユニットB3の制動力限界Frr limは、車両緒言に基づいて固定値を設定しても良いし、車両の走行状態および路面状態に応じて可変できるようにしても良い。この場合、路面μの推定値と各輪の荷重と推定横力の関係から計算する。また、右後輪W3がロック傾向になった時の液圧から求めても良いし、ABSが作動した時の制動力を基に本制動力以下に更新するなどして求めても良い。
S82で範囲内である場合、またはS83で電動ブレーキユニットB3の制動力が制動力限界Frr limに制限されたら、S84に移行する。
S84では、前左輪の電動ブレーキユニットB2と後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力の合計Fl*を
Fl*=Frr*+Ffr (式19)
より、算出する。(式19)のようにFl*を算出することで、S83によりFrr*がFrr limに制限されても、車両の右側にある車輪で発生する制動力の合計と車両の左側にある車輪で発生する制動力の合計が等しくなるような目標制動力配分となる。
あとは、左側の車輪の電動ブレーキユニットB2とB4で発生させる目標制動力配分Fl*を、前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*と後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*に配分するのだが、本実施例では、先に後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*から算出する場合について説明する。後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*は
Frl*=K1×Fcmd/2−K2×Ffr (式20)
により算出する。ここで、FfrはS81と同じ値を用いる。K1とK2はそれぞれ0以上1以下の比例係数であり、K1=1、K2=0の場合、左側の車輪W2とW4で発生させる目標制動力の内W4で発生させる目標制動力の割合が100%となる。また、K1=0、K2=0の場合、左側の車輪W2とW4で発生させる目標制動力の内W4で発生させる目標制動力の割合が0%となり、K1=0.5、K2=0.5の場合、左側の車輪W2とW4で発生させる目標制動力の内W4で発生させる目標制動力の割合が50%となる。また、K1=1、K2=1の場合、(式20)のFrl*と(式18)のFrr*が同じ式となり、要求制動力に対して、後左輪と後右輪で発生させる目標制動力が等しい。なお、K1とK2の関係において、K1×Fcmd/2<K2×Ffrとならないようにする必要がある。
後右輪と同様に、S81にて算出された後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*に関しても、後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させることができる制動力には限界があるため、S85、S86にて、S82、S83と同様に、後左輪の電動ブレーキユニットB4で発生させる目標制動力Frl*を電動ブレーキユニットB4の制動力限界Frl lim以下となるように制限する。
次に、S87では、前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*を
Ffl*=Fl*−Frl* (式21)
により、算出する。前左輪の電動ブレーキユニットB2で発生させる目標制動力Ffl*を(式21)のように算出することで、車両の左側の車輪で発生させる制動力の不足分を発生させるようになる。
以上、S81からS87により、各輪で発生させる目標制動力を算出することにより、車両右側にある車輪W1とW3で発生させる制動力の合計と車両左側にある車輪W2とW4で発生させる制動力の合計が等しくなるような目標制動力配分を実現できる。