以下、本発明に係るガスセンサの製造方法の実施の形態例を図1〜図16Cを参照しながら説明する。
先ず、本実施の形態に係る製造方法にて製造されるガスセンサ10について図1〜図5Dを参照しながら説明する。
このガスセンサ10は、図1に示すように、例えばジルコニア磁器(ZrO2)等による酸素イオン伝導性の固体電解質体11によって直方体状に形成され、被測定ガスのうち、特定のガス成分の濃度を検出するセンサ素子12と、内部にセンサ素子12を支持する円筒状の金属製の筐体13とを有する。
センサ素子12は、緻密な気密の複数の酸素イオン伝導性の固体電解質層(例えば第1固体電解質層14a〜第6固体電解質層14f)が積層された一体構造の板状体とされている。なお、第1固体電解質層14a〜第6固体電解質層14fは、いずれも、ジルコニア磁器(ZrO2)等の公知の酸素イオン伝導性の固体電解質材料を用いて形成されている。一体構造のセンサ素子12は、従来と同様にして、未焼成の固体電解質層の積層構造物を焼成して一体化することにより、容易に得ることができる。
センサ素子12内には、少なくとも4つの内部空所(第1内部空所16、第2内部空所18、第3内部空所20、第4内部空所22)が形成されている。
第1内部空所16、第2内部空所18、第3内部空所20は、図2において最上部に位置する第1固体電解質層14aと、上から3番目に位置する第3固体電解質層14cとが、スペーサ層となる第2固体電解質層14bを介して、積層、一体化されることによって、これら第1固体電解質層14a及び第3固体電解質層14c間に形成されている。
第1内部空所16、第2内部空所18、第3内部空所20は、第2固体電解質層14bの厚さに対応する高さを有し、第1固体電解質層14a及び第3固体電解質層14c間において第2固体電解質層14bの存在しない空間として、センサ素子12の長手方向に延びるように形成されている。
すなわち、第1内部空所16、第2内部空所18、第3内部空所20は、それぞれ矩形形状の平面形態を呈し、且つ、それぞれ別個に仕切られた形態において、センサ素子12の長手方向に所定幅で延びるようにして、順次、配設されている。
第1内部空所16、第2内部空所18、第3内部空所20のうち、後述するガス導入口26に最も近接している第1内部空所16は、外部空間における排気圧の脈動による酸素濃度の急激な変化を緩衝する緩衝空間として機能し、第2内部空所18は、被測定ガス中の酸素分圧を調整するための調整室として機能し、第3内部空所20は、被測定ガス中の酸素分圧を微調整し、さらに被測定ガス中の酸化物、例えば窒素酸化物(NOx)を測定するための測定室として機能する。
第4内部空所22は、第1内部空所16、第2内部空所18、第3内部空所20とは独立した形態において、第2固体電解質層14b及び第4固体電解質層14d間において、第3固体電解質層14cの存在しない空所として、センサ素子12の長手方向に延びるように設けられている。この第4内部空所22は、基準ガスをセンサ素子12内に導入するための基準ガス導入通路として機能し、この基準ガス導入通路は、従来と同様に、センサ素子12の基部側の端部において開口し、大気に連通するようになっている。
従って、以下の説明では、第1内部空所16を緩衝空間16、第2内部空所18を調整室18、第3内部空所20を測定室20、第4内部空所22を基準ガス導入通路22として記載する。
そして、緩衝空間16の外側、すなわち、センサ素子12の先端側には、外方に開口する目詰まり防止空所24が第1固体電解質層14a及び第3固体電解質層14c間に形成されており、この目詰まり防止空所24の開口部が、外部空間における被測定ガスをセンサ素子12内に取り入れるためのガス導入口26とされている。
目詰まり防止空所24と緩衝空間16とは、第2固体電解質層14bにて構成される第1隔壁28によって区画され、緩衝空間16と調整室18とは、第2固体電解質層14bにて構成される第2隔壁30によって区画され、調整室18と測定室20とは、第2固体電解質層14bにて構成される第3隔壁32によって区画されている。
第1隔壁28は、上部(第1固体電解質層14aとの間)と下部(第3固体電解質層14cとの間)にそれぞれ第1スリット34が形成されている。第1スリット34は、被測定ガスの第1拡散律速手段として機能し、ガス導入口26から目詰まり防止空所24を通って導かれた外部空間の被測定ガスが、第1スリット34によって所定の拡散抵抗の下に、緩衝空間16内に導入されるようになっている。
緩衝空間16と調整室18とを区画する第2隔壁30においても、上部(第1固体電解質層14aとの間)と下部(第3固体電解質層14cとの間)にそれぞれ第2スリット36が形成されている。第2スリット36は、被測定ガスの第2拡散律速手段として機能し、緩衝空間16に導かれた被測定ガスが、第2スリット36によって所定の拡散抵抗の下に、調整室18内に導入されるようになっている。
調整室18と測定室20とを区画する第3隔壁32においても、上部(第1固体電解質層14aとの間)と下部(第3固体電解質層14cとの間)にそれぞれ第3スリット38が形成されている。第3スリット38は、被測定ガスの第3拡散律速手段として機能し、調整室18に導かれて酸素濃度(分圧)が調整された被測定ガスが、第3スリット38によって所定の拡散抵抗の下に、測定室20内に導入されるようになっている。
また、本実施の形態に係るガスセンサ10は、調整室18の内壁面に多孔質サーメット電極からなる内側ポンプ電極40が形成され、第1固体電解質層14aの上面のうち、内側ポンプ電極40に対応する部分に外側ポンプ電極42が形成されており、これら内側ポンプ電極40、外側ポンプ電極42及び第1固体電解質層14a〜第3固体電解質層14cにて電気化学的なポンプセル、すなわち、主ポンプセル44が構成されている。
そして、主ポンプセル44の内側ポンプ電極40と外側ポンプ電極42間に、外部の第1可変電源46を通じて所望の制御電圧(ポンプ電圧)Vp1を印加して、外側ポンプ電極42と内側ポンプ電極40間に、正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、調整室18内における雰囲気中の酸素が外部空間に汲み出され、あるいは外部空間の酸素を調整室18内に汲み入れられることで、調整室18内の雰囲気中の酸素濃度(分圧)が、所定の濃度に制御されるようになっている。
上述した緩衝空間16、第1隔壁28、第2隔壁30、第1スリット34及び第2スリット36を設けることによって、次のような効果を奏することが可能となる。
すなわち、通常、外部空間における排気圧の脈動によって、ガス導入口26を通じて、酸素がセンサ素子12の内部空所に急激に入り込むこととなるが、この外部空間からの酸素は、直接内部空所(処理空間)に入り込まずに、第1スリット34を介して緩衝空間16に入り込み、さらに、第2スリット36を通じて調整室18内に導き入れられる。従って、排気圧の脈動による酸素濃度の急激な変化は、緩衝空間16や、第1スリット34及び第2スリット36によって打ち消され、調整室18に対する排気圧の脈動の影響は、ほとんど無視することができる程度となる。その結果、調整室18における主ポンプセル44での酸素ポンピング量と、被測定ガス中の酸素濃度との相関性がよくなり、測定精度の向上が図られ得ることになると共に、調整室18を、例えば、空燃比を求めるためのセンサとして兼用させることも可能となる。なお、このような効果を有利に発揮させるために、第1隔壁28及び第2隔壁30にそれぞれ設けられる第1スリット34及び第2スリット36は、それぞれ、10μm以下の間隙を有するスリット形状であることが望ましい。
また、センサ素子12の先端において外方に開口する目詰まり防止空所24は、ガス導入口26を通じて導入される外部空間の被測定ガス中に発生する粒子物(スート、オイル燃焼物等)が、緩衝空間16の入口付近において詰まるということを回避するために設けられる。従って、より高精度にNOx成分を測定することが可能となる。
ところで、調整室18に配設される主ポンプセル44の内側ポンプ電極40及び外側ポンプ電極42は、一般に、多孔質サーメット電極とされ、例えばPt等の金属とZrO2等のセラミックス材料とから構成されることになるが、被測定ガスに接触する調整室18内に配置される内側ポンプ電極40は、被測定ガス中のNOx成分に対して変化を惹起させない材料、すなわち、NOやNO2のようなNOx成分に対する還元能力又は分解能力を弱めた、あるいはそのような還元/分解能力のない材料を用いる必要があり、例えば、La3CuO4等のペロブスカイト構造を有する化合物、あるいはAu等の触媒活性の低い金属とセラミックス材料とのサーメット、あるいはAu等の触媒活性の低い金属とPt族金属とセラミックス材料とのサーメットで構成されることとなる。なお、ここでは、外側ポンプ電極42を覆うようにアルミナ等からなる多孔質保護層48を設けることにより、外部空間の被測定ガスに含まれるオイル成分等が、外側ポンプ電極42に付着しないようにして、外側ポンプ電極42を保護している。
一方、測定室20の内壁面に多孔質サーメット電極からなる補助ポンプ電極50が形成されており、該補助ポンプ電極50と、センサ素子12の外側の適当な電極、例えば外側ポンプ電極42と、第1固体電解質層14a〜第3固体電解質層14cにて補助的な電気化学的ポンプセル、すなわち、補助ポンプセル52が構成され、測定室20内の雰囲気中の酸素濃度(分圧)を所定濃度に制御し得るようになっている。
補助ポンプ電極50は、主ポンプセル44の内側ポンプ電極40と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元/分解能力を弱めた、あるいは還元/分解能力のない材料を用いて形成されており、例えば、Au(金)1%を含むPt(白金)とZrO2との多孔質サーメット電極にて形成されている。
さらに、本実施の形態では、測定室20内に検出電極54が形成され、該検出電極54の周りの雰囲気中における窒素酸化物(NOx)の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量を検出すべく、前記検出電極54と、外側ポンプ電極42と、第1固体電解質層14a〜第3固体電解質層14cとから、電気化学的なポンプセル、すなわち、測定用ポンプセル56が構成されている。
この測定室20内に配置される検出電極54には、同じく測定室20内に配設された補助ポンプ電極50から揮散する金属のような不活性成分等が付着することを防ぎ、検出電極54の触媒活性(NOx分解/還元能)を有効に保持し得るように、図2に示すように、検出電極54を覆うようにしてアルミナを含む多孔質セラミックス層からなる電極保護層58が形成されている。
また、このセンサ素子12においては、第3固体電解質層14cの測定室20とは反対側において、基準ガス導入通路22内の基準ガスに接触する形態において基準電極60が設けられている。
基準電極60は、シール層としての第4固体電解質層14d上に設けられ、さらに、それを覆うように、空気導入用の多孔質アルミナ層62が設けられており、基準ガス導入通路22内の基準ガスが、多孔質アルミナ層62を通じて、基準電極60に接触するようになっている。
この基準電極60を用いて調整室18や測定室20内の雰囲気中の酸素濃度(分圧)を測定することが可能となっている。
すなわち、本実施の形態では、調整室18内の酸素濃度(分圧)を検出するために、主ポンプセル44の内側ポンプ電極40と、基準電極60と、第1固体電解質層14a〜第4固体電解質層14dとから、主ポンプセル44を制御するための第1酸素分圧検出セル64が構成されている。
また、測定室20内の酸素分圧を検出するために、補助ポンプセル52の補助ポンプ電極50と、基準電極60と、第1固体電解質層14a〜第4固体電解質層14dとから、補助ポンプセル52を制御するための第2酸素分圧検出セル66が構成されている。この第2酸素分圧検出セル66によって電圧制御される第2可変電源68により、補助ポンプセル52がポンプ作動させられるようになっていると共に、そのポンプ電流値Ip1が、第1酸素分圧検出セル64における起電力V0の制御に用いられるようになっている。
さらに、検出電極54の周りの雰囲気中の酸素分圧を検知するための第3酸素分圧検出セル70が、検出電極54、基準電極60、第1固体電解質層14a〜第4固体電解質層14dによって構成されている。
そして、この第3酸素分圧検出セル70にて検出された起電力V2に基づいて制御される第3可変電源72によって、測定用ポンプセル56がポンプ作動させられて、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に対応したポンプ電流値Ip2が得られるようになっている。
なお、外側ポンプ電極42と、基準電極60と、第1固体電解質層14a〜第4固体電解質層14dとによって、電気化学的なセンサセル74が構成されており、このセンサセル74によって得られる起電力Vrefによって、センサ外部の被測定ガス中の酸素分圧(濃度)が検出できるようになっている。
さらに、このセンサ素子12においては、図2に示すように、第3固体電解質層14cの上述した内部空所(16、18、20)の配設側とは反対側に複数のセラミックス層、すなわち、第4固体電解質層14d〜第6固体電解質層14fが積層一体化され、そして、隣り合う第4固体電解質層14d及び第5固体電解質層14eにて上下から挟まれた形態において、外部からの給電によって発熱するヒータ層76が設けられている。
このヒータ層76は、センサ素子12を構成する第1固体電解質層14a〜第6固体電解質層14fにおける酸素イオンの導電性を高めるために、それらを所定の温度に加熱すべく設けられたものであって、ヒータエレメント78を、第4固体電解質層14d及び第5固体電解質層14eとの電気的絶縁を得るためのアルミナ等の電気絶縁層にて、上下から挟んだ形態において配設され、さらに、ヒータ層76は、該センサ素子12の基部側において、第4固体電解質層14dを貫通する圧力放散孔80によって、基準ガス導入通路22に連通されて、ヒータ層76内の内圧上昇が緩和されるようになっている。また、ヒータ層76のヒータエレメント78は、第5固体電解質層14e及び第6固体電解質層14fを貫通して設けられ、且つ、周囲が絶縁されたスルーホール82を通じて、素子表面に取り出され、さらに、第6固体電解質層14fとは絶縁して形成されたコネクタパッド84のうち、対応するコネクタパッドに導通されるようになっている。そして、ヒータ層76のヒータエレメント78は、少なくとも調整室18及び測定室20を区画する第1固体電解質層14a〜第3固体電解質層14cを所定の温度に加熱するように構成されている。
本実施の形態に係るガスセンサ10を用いて、被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度を検出するに際しては、先ず、外部の被測定ガスが、センサ素子12の先端の目詰まり防止空所24から、第1隔壁28の上下に設けた第1スリット34を通じて、緩衝空間16内に導入された後、さらに、第2隔壁30の上下に設けた第2スリット36を通じて、調整室18内に導き入れられ、そこで、第1酸素分圧検出セル64における起電力V0が一定となるように、第1可変電源46の電圧が制御されて、主ポンプセル44におけるポンプ電流Ip0が制御される。なお、ここで、調整室18内の雰囲気中の酸素分圧は、所定の値、例えば10−7atm程度となるように制御される。
また、第3隔壁32の上下の第3スリット38を通じて、調整室18から測定室20内に導かれた被測定ガスは、第2酸素分圧検出セル66にて検知される起電力V1に基づいて電圧制御される第2可変電源68からの給電によって、補助ポンプセル52が酸素のポンピング作動を行い、測定室20内の雰囲気中の酸素分圧を、NOxの測定に実質的に影響がない低い酸素分圧値に制御するようになっている。また、この補助ポンプセル52のポンピング電流Ip1は、制御信号として、第1酸素分圧検出セル64に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3スリット38から補助ポンプ電極50に至る測定室20内の雰囲気中の酸素分圧の勾配が、常に一定となるように制御されている。
さらに、測定室20内において、酸素分圧が制御された雰囲気は、電極保護層58を通じて、所定の拡散抵抗の下に、検出電極54に到達するようになるが、その導かれた雰囲気中のNOxは、検出電極54の周りにおいて、還元又は分解されて、酸素を発生する。
そして、この発生した酸素が、測定用ポンプセル56によって、ポンピングされることとなるが、その際、第3酸素分圧検出セル70における起電力V2が一定となるように第3可変電源72の電圧が制御される。ここで、このように検出電極54の周りにおいて発生する酸素の量は、被測定ガス中のNOxの濃度に比例するものであるところから、測定用ポンプセル56におけるポンプ電流Ip2を用いて、目的とする被測定ガス中のNOxの濃度が、算出されることとなる。
上述した各種電極やヒータからのリード線は外部に導出されて、図3に示すように、固体電解質体11の後部に形成されたコネクタパッド84のうち、それぞれ対応するコネクタパッドに電気的に接続されている。
一方、図1に示す筐体13は、その内部に、センサ素子12の長手方向ほぼ中央部分を支持するセラミック製の3つの支持部材(第1支持部材86a〜第3支持部材86c)と、センサ素子12の後部を支持すると共に、固体電解質体11の外部に導出されたコネクタパッド84と電気的に接続するためのコネクタ88とを有する。筐体13の先端には保護カバー90が取り付けられている。保護カバー90には、被測定ガスを筐体13内に導入するための挿入孔92が形成されている。
また、第1支持部材86aと第2支持部材86b間には第1タルク94aが充填され、第2支持部材86bと第3支持部材86c間には第2タルク94bが充填され、筐体13の先端寄りに取り付けられた実装用のボルト部96と筐体13との間に気密リング98がはめ込まれ、筐体13の後部にゴム栓100がかしめ固定されている。これらの構成によって、センサ素子12は、筐体13内に固定、気密封止されるようになっている。なお、ゴム栓100には、外部の電気回路系につながるリード線102が挿入され、筐体13の内部においてコネクタ88に電気的に接続されている。第1タルク94a及び第2タルク94bによるセンサ素子12の固定は、タルク粉末を第1支持部材86a〜第3支持部材86cを介して加圧圧縮することにより行われる。
そして、このガスセンサ10は、図3に示すように、センサ素子12の固体電解質体11の4つの稜部が、固体電解質体11の全長にわたって、面取り加工されている。すなわち、4つの稜部に対応して4つの面取り部(第1面取り部104a〜第4面取り部104d)が形成されている。これにより、センサ素子12が高温の排気ガス等の被測定ガスに晒され、また、センサ素子12に内蔵された例えばヒータにより高温に保持されたとしても、センサ素子12の固体電解質体11への熱応力による応力集中を緩和させることができ、耐熱衝撃性を向上させることができる。
第1面取り部104a〜第4面取り部104dの各幅Wは、30μm以上、240μm以下とされている。第1面取り部104a〜第4面取り部104dの幅Wとは、図4A及び図4Bに示すように、面取り加工によって、仮想線(二点鎖線)で示す稜部106の角を落としてC面(平坦面108)とした際に、平坦面108の法線110(図4B参照)に対して直交する方向の長さを指す。
また、このガスセンサ10では、図5Aに示すように、固体電解質体11のうち、第1支持部材86aに対応した部分と、第1支持部材86aとの間に形成される隙間の面積(第1隙間面積)をAa、図5Bに示すように、固体電解質体11のうち、第2支持部材86bに対応した部分と、第2支持部材86bとの間に形成される隙間の面積(第2隙間面積)をAb、図5Cに示すように、固体電解質体11のうち、第3支持部材86cに対応した部分と、第3支持部材86cとの間に形成される隙間の面積(第3隙間面積)をAcとしたとき、第1隙間面積Aa、第2隙間面積Ab及び第3隙間面積Acを、それぞれ1.5mm2以上、3.0mm2以下としている。
さらに、本実施の形態では、図5Dに示すように、固体電解質体11のうち、コネクタ88に対応した部分と、コネクタ88との間に形成される隙間の面積(第4隙間面積Ad)を、1.5mm2以上、3.0mm2以下にしている。
固体電解質体11に形成した第1面取り部104a〜第4面取り部104dとして上述の寸法関係を有するようにしたので、センサ素子12の内燃機関等への実装において、センサ素子12を支持する筐体13との接触、例えば第1支持部材86a〜第3支持部材86cとセンサ素子12の固体電解質体11との接触や、コネクタ88とセンサ素子12の固体電解質体11との接触による破損の問題を解消することができ、ガスセンサ10の高信頼性をさらに向上させることができる。
さらに、固体電解質体11の4つの稜部の角を、固体電解質体11の全長にわたって落とすだけでよいため、加工が簡単であり、製造工程も簡略化することができる。これは、製造コストの低廉化につながる。
次に、本実施の形態に係る2つの製造方法(第1製造方法及び第2製造方法)について図6〜図16Cを参照しながら説明する。
先ず、第1製造方法は、図6及び図7に示すように、固体電解質体11の1つの稜部106が挿通される貫通孔112が形成されたガイド板114と、ガイド板114の一主面114aに対向して設けられ、且つ、上面にセンサ素子12の固体電解質体11が載置、固定される押さえ治具116と、ガイド板114の他主面114bに沿って摺動するカッタ118とを用いて行われる。押さえ治具116は、固体電解質体11が載置、固定される上板120と、該上板120を移動駆動する移動機構122とを有する。
上板120は、移動機構122の駆動によって、ガイド板114の一主面114aに対して接近する方向と離間する方向に移動可能とされ、また、その中心線124(上板120の長手方向に沿って延長する中心線)を中心に回転するようになっている。
そして、第1製造方法は、図8Aに示すように、押さえ治具116の上板120に固体電解質体11を載置、固定する。このとき、固体電解質体11の例えば一主面(例えば上面)がガイド板114の一主面114a、この場合、貫通孔112に対向するように載置、固定される。
その後、図8Bに示すように、移動機構122によって上板120を回転させて、固体電解質体11を一方向に傾斜させると共に、その状態でガイド板114の他主面114bに向けて移動して、固体電解質体11の1つ目の稜部(第1稜部106a)をガイド板114の貫通孔112から突出させる。
その後、図8Cに示すように、ガイド板114の他主面114bに沿ってカッタ118(図7参照)を摺動させることによって、第1稜部106aを面取りして第1面取り部104aとする。
上述の図8Bで示すステップにおいては、その後の図8Cで示すステップにて形成される第1面取り部104aの幅が、好ましくは30μm以上、240μm以下となるように、上板120の回転角(固体電解質体11の傾斜角)や上板120のガイド板114に対する移動量が調整、制御される。
その後、図9Aに示すように、移動機構122によって上板120を逆方向に回転させて、固体電解質体11を逆方向に傾斜させると共に、その状態でガイド板114の他主面114bに向けて移動して、固体電解質体11の2つ目の稜部(第2稜部106b)をガイド板114の貫通孔112から突出させる。
その後、図9Bに示すように、ガイド板114の他主面114bに沿ってカッタ118を摺動させることによって、第2稜部106bを面取りして第2面取り部104bとする。
この場合も、上述の図9Aに示すステップにおいては、その後の図9Bに示すステップにて形成される第2面取り部104bの幅が、好ましくは30μm以上、240μm以下となるように、上板120の回転角(固体電解質体11の傾斜角)や上板120のガイド板114に対する移動量が調整、制御される。
その後、図9Cに示すように、固体電解質体11の他主面(例えば下面)がガイド板114の一主面と対向するように、固体電解質体11を上板120上に載置、固定する。
その後、図10Aに示すように、移動機構122によって上板120を回転させて、固体電解質体11を一方向に傾斜させると共に、その状態でガイド板114の他主面114bに向けて移動して、固体電解質体11の3つ目の稜部(第3稜部106c)をガイド板114の貫通孔112から突出させる。
その後、図10Bに示すように、ガイド板114の他主面114bに沿ってカッタ118を摺動させることによって、第3稜部106cを面取りして第3面取り部104cとする。
その後、図10Cに示すように、移動機構122によって上板120を逆方向に回転させて、固体電解質体11を逆方向に傾斜させると共に、その状態でガイド板114の他主面114bに向けて移動して、固体電解質体11の4つ目の稜部(第4稜部106d)をガイド板114の貫通孔112から突出させる。
その後、図10Dに示すように、ガイド板114の他主面114bに沿ってカッタ118を摺動させることによって、第4稜部106dを面取りして第4面取り部104dとする。
上述した図9Aに示すステップ及び図10Cに示すステップにおいても、第3面取り部104c及び第4面取り部104dの幅Wが、好ましくは30μm以上、240μm以下となるように、上板120の回転角(固体電解質体11の傾斜角)や上板120のガイド板114に対する移動量が調整、制御される。
また、カッタ118で面取り加工する場合においては、カッタ118と固体電解質体11にそれぞれ熱をかけ、固体電解質体11の温度をTg(ガラス転移点)以上に上げて行うことが好ましい。これにより、固体電解質体11がやわらかくなり、面取り加工面にささくれ等の不具合は生じなくなる。
次に、第2製造方法について図11〜図16Cを参照しながら説明する。
この第2製造方法は、図11に示すように、位置決め治具126と、カッタ128(図12参照)と、第1押さえ治具130及び第2押さえ治具132とを使用して行われる。位置決め治具126は、第1板134と、端面136aが第1板134の端面134aに近接して設置され、且つ、第1板134に対して非平行に設置された第2板136と、第1板134と第2板136との間に存在する隙間138(図13A参照)とを有する。第1板134の端面134aと隙間138と第2板136の端面136aとで1つの面140(一点鎖線で示す)が構成されるようになっており、カッタ128(図12参照)は、この1つの面140に沿って長手方向に摺動するようになっている。第1押さえ治具130は、第1板134に載置された固体電解質体11を第1板134に向けて押圧するように構成され、第2押さえ治具132は、第1板134に載置された固体電解質体11を第2板136に向けて押圧するように構成されている。
また、この位置決め治具126は、隙間138の間隔Daを調整する調整機構142を有する。この調整機構142は、第1板134を水平方向に移動させる第1移動機構144と、第2板136を垂直方向に移動させる第2移動機構146とを有する。調整機構142は、第1板134と第2板136を移動させると共に、第1板134の端面134aと隙間138と第2板136の端面136aとで1つの面140が構成されるように調整する。
そして、第2製造方法は、図13Aに示すように、第1板134と第2板136間の隙間138の間隔Daが調整される。
その後、図13Bに示すように、第1板134上に固体電解質体11を載置する。このとき、固体電解質体11の例えば一主面(例えば上面11a)が第1板134に対向するように載置される。
その後、図13Cに示すように、第1押さえ治具130によって固体電解質体11を第1板134に向けて押圧すると共に、第2押さえ治具132によって固体電解質体11を第2板136に向けて押圧して固体電解質体11の第1側面11cを第2板136に接触させる。これによって、隙間138から固体電解質体11の第1稜部106aが突出することとなる。
その後、図13Dに示すように、隙間138から突出する第1稜部106aの長手方向にカッタ128を摺動させることによって、第1稜部106aを面取りして第1面取り部104aとする。
その後、図14Aに示すように、例えば固体電解質体11の上面11aが第1板134に対向し、且つ、固体電解質体11の第2側面11d(第1側面11cと対向する側面)が第2板136と対向するように固体電解質体11を載置し直す。
その後、図14Bに示すように、第1押さえ治具130によって固体電解質体11を第1板134に向けて押圧すると共に、第2押さえ治具132によって固体電解質体11を第2板136に向けて押圧して固体電解質体11の第2側面11dを第2板136に接触させる。これによって、隙間138から固体電解質体11の第2稜部106bが突出することとなる。
その後、図14Cに示すように、隙間138から突出する第2稜部106bの長手方向にカッタ128を摺動させることによって、第2稜部106bを面取りして第2面取り部104bとする。
その後、図15Aに示すように、今度は固体電解質体11の下面11bが第1板134に対向し、且つ、例えば固体電解質体11の第1側面11cが第2板136と対向するように固体電解質体11を載置し直す。
その後、図15Bに示すように、第1押さえ治具130によって固体電解質体11を第1板134に向けて押圧すると共に、第2押さえ治具132によって固体電解質体11を第2板136に向けて押圧して固体電解質体11の第1側面11cを第2板136に接触させる。これによって、隙間138から固体電解質体11の第3稜部106cが突出することとなる。
その後、図15Cに示すように、隙間138から突出する第3稜部106cの長手方向にカッタ128を摺動させることによって、第3稜部106cを面取りして第3面取り部104cとする。
その後、図16Aに示すように、固体電解質体11の下面11bが第1板134に対向し、且つ、固体電解質体11の第2側面11dが第2板136と対向するように固体電解質体11を載置し直す。
その後、図16Bに示すように、第1押さえ治具130によって固体電解質体11を第1板134に向けて押圧すると共に、第2押さえ治具132によって固体電解質体11を第2板136に向けて押圧して固体電解質体11の第2側面11dを第2板136に接触させる。これによって、隙間138から固体電解質体11の第4稜部106dが突出することとなる。
その後、図16Cに示すように、隙間138から突出する第4稜部106dの長手方向にカッタ128を摺動させることによって、第4稜部106dを面取りして第4面取り部104dとする。
上述の図13Aに示すステップにおいては、その後の図13D、図14C、図15C及び図16Cに示す各ステップにて形成される第1面取り部104a〜第4面取り部104dの各幅Wが、好ましくは30μm以上、240μm以下となるように、調整機構142によって、第1板134と第2板136間の隙間138の間隔Daが調整、制御される。
また、この第2製造方法においても、カッタ128で面取り加工する場合、カッタ128と固体電解質体11にそれぞれ熱をかけ、固体電解質体11の温度をTg(ガラス転移点)以上に上げて行うことが好ましい。これにより、固体電解質体11がやわらかくなり、面取り加工面にささくれ等の不具合は生じなくなる。
上述した第1製造方法及び第2製造方法においては、特許文献3に示す耐熱衝撃性の向上を図ったガスセンサを改良して、耐熱衝撃性の向上と筐体13の支持部材等への接触に伴う破損を回避することができ、高信頼性をさらに向上させることができるガスセンサ10を容易に製造することができる。
なお、本発明に係るガスセンサの製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。