JP5027854B2 - ウレタン防水材用上塗り塗料 - Google Patents

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Description

本発明は、ウレタン防水材用上塗り塗料に関し、特に、意匠性、及び/又は遮熱性及び塗膜強度等に優れると共に、ウレタン防水材の伸縮に対し十分な追従性を有し、ひび割れや剥離等の問題がない塗膜を形成することができる、上塗り塗料に関する。
従来、ビルの屋上、ベランダ、バルコニー、開放廊下等の防水施工には、施工対象となる基材の割れに追従可能であるなどの種々の利点を有することから伸縮性の大きなウレタン防水材が広く用いられており、様々なウレタン防水材が開発されている(特許文献1から24、33及び34)。
ウレタン防水材を用いる工法では、コンクリートやモルタルなどの基材表面に必要に応じてプライマー層を形成し、その上にウレタン系防水材の層を形成し、さらにその上にウレタン防水材を保護する主要コート層(トップコート層とも呼ばれる)を形成する、多層構造体とするのが一般的である(特許文献19、21、26、27、28)。また、このような主要コート層等の塗膜が形成されたウレタン防水材の改修工事を行う場合には、当該多層構造体に直接主要コート層を形成したり、プライマー層を形成した後、主要コート層を形成する場合もあるが、通常ウレタン防水層を形成した後、主要コート層を形成する。
プライマー層は、基材と防水材との密着性を向上させる目的で設けられ、主要コート層は、ウレタン防水材の保護等の主要目的を達成するために設けられるが、防水材を長期に亘って保護するためには、主要コート層の耐久性及び遮熱性、並びに防水材への接着を維持することが重要である。また、近年にあっては、防水材であっても、単なる補修目的だけではなく意匠性の高い施工が要求されるに至っている。
従来、主要コート層を形成するための塗料としては、1液型若しくは2液型のアクリルウレタン樹脂塗料が広く用いられている(特許文献18〜21、27、28、32)。
また、ウレタン防水材の強度、遮熱性等の特性を向上させるために、防水材や主要コート層にセラミックス等の不燃性又は難燃性の材料を含有させる試みが提案されている(特許文献27及び31)。
しかしながら、セラミックス等の不燃性又は難燃性の材料を防水材や主要コート層に多量に含有させると、伸び率等の塗膜性能や層間の密着性が低下し、塗膜の剥離等を生じてしまう問題がある(特許文献27段落0063参照)。
また、織物、編物等の布帛の表面化粧塗材として、天然石粉砕粒子等を樹脂エマルジョン中に含有する組成物が提案されている(特許文献30)。
しかし、この引用文献は、織物、編物等の布帛のための表面化粧塗材を開示するものであり、伸縮性に富むウレタン防水材に対する装飾材を教示するものではない。
また、特許文献29には、基体の上面に、繊維含有熱硬化性樹脂を塗布し、当該繊維含有熱硬化性樹脂が未硬化の状態で、繊維含有熱硬化性樹脂層に骨材を散布して骨材の一部を埋没させ、繊維含有熱硬化性樹脂を硬化させて骨材層を形成させる複合構造体の製造方法、及び当該製造方法により得られる、基体の上面に、繊維含有熱硬化性樹脂が積層され、さらに当該繊維含有熱硬化性樹脂層に骨材の一部が埋没した骨材層が形成されている、複合構造体が開示されている。
しかし、この引用文献も、弾力性に富むウレタン防水材に対し骨材を付加する技術を教示するものではない。また、繊維含有熱硬化性樹脂が未硬化の状態で、骨材を散布する必要があり、骨材の飛散という点でも改善の余地がある。
特開2008−214617号公報 特開2008−201980号公報 特開2002−37832号公報 特開2002−37846号公報 特開2002−12645号公報 特開2008−184554号公報 特開2008−144106号公報 特開2008−74971号公報 特開2008−63351号公報 特開2002−30277号公報 特開2002−364128号公報 特開2007−246691号公報 特開2007−119664号公報 特開2006−298970号公報 特開2006−249226号公報 特開2006−232971号公報 特開2006−232963号公報 特開2002−309156号公報 特開2004−263121号公報 特開2007−720号公報 特開2009−91474号公報 特開2002−146268号公報 特開2006−152220号公報 特開2006−70185号公報 特開2005−314681号公報 特開2008−169688号公報 特開2008−127898号公報 特開2005−299103号公報 特開2002−292769号公報 特開2001−207128号公報 特開2001−131403号公報 特開2002−146268号公報 特開2005−306893号公報 特開2008−197338号公報
本発明は、上記従来技術の問題に鑑み、意匠性、及び/又は遮熱性及び塗膜強度等に優れると共に、ウレタン防水材の伸縮に対し十分な追従性を有し、ひび割れや剥離等の問題がない塗膜構造体を形成することができる、ウレタン防水材用塗料システム、及び簡易な塗工方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題に関し検討を重ねたところ、ウレタン防水材に、従来主要コート層用として用いられていたアクリルウレタン樹脂塗料を適用して下地層を形成し、その上に、同一若しくは他のアクリルウレタン樹脂塗料組成物中に(有色)セラミックス粒子を含有する塗料を用いて主要コート層を形成したところ、ウレタン防水材の伸縮に対し十分な追従性が得られ、多量のセラミックス粒子を主要コート層に存在させても、ひび割れや剥離等の問題を生じることなく、意匠性、及び/又は遮熱性、及び塗膜強度等の特性を防水材に付与できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、その一の実施の形態において、アクリルウレタン樹脂塗料組成物からなる下地層用塗料と、セラミックス粒子を含有するアクリルウレタン樹脂塗料組成物からなる主要コート層用塗料とを含む、ウレタン防水材用の塗料システムを提供するものである。
また本発明は、他の実施の形態において、ウレタン防水材に、アクリルウレタン樹脂塗料組成物を塗布して下地層を形成する工程と、セラミックス粒子を含有するアクリルウレタン樹脂塗料組成物を塗布して主要コート層を形成する工程とを含む、塗膜形成方法を提供するものである。
ここで、本願明細書中、「アクリルウレタン樹脂塗料組成物」とは、アクリルポリオール樹脂又はメタクリルポリオール樹脂、或いはそれらの樹脂を形成可能な反応性成分と、ポリイソシアネート樹脂、或いはポリイソシアネート樹脂を形成可能な反応性成分とを有機塗膜成分として含み、これら反応性成分が塗料中の有機反応成分の80質量%以上を占める組成物を意味する。また、本願明細書中で特に言及しない限り、下地層用塗料の「アクリルウレタン樹脂塗料組成物」は、粒径1μm以上のセラミックス粒子は含まないものとする。
「ウレタン樹脂塗料組成物」とは、イソシアネート基を有するモノマー又はプレポリマーとアルコール基を有するモノマー又はプレポリマーとを主要な有機塗膜成分として含み、これらの反応性成分が塗料中の有機反応成分の90質量%以上を占める組成物を意味する。「ウレタン防水材」とは、ウレタン樹脂塗料組成物によって形成された硬化体を意味する。但し、本願明細書においては、当該ウレタン樹脂塗料組成物によって形成された硬化体上に、塗膜(例えば、アクリルウレタン樹脂、シリコン樹脂、又はフッ素樹脂からなる塗膜が挙げられ、プライマー塗料により形成される塗膜を含む)を有するものも「ウレタン防水材」とする。このような塗膜を有する構造体は、通常、改修工事などで施工対象となる。
「主要コート層」とは、本発明による膜構造体が奏する意匠性、及び/又は塗膜強度、及び遮熱性等のセラミックス粒子に起因する特性を主に付与する層を意味する。主要コート層は、通常、下地層の上に直接設けられるが、ウレタン樹脂塗料組成物等によって形成されるプライマー層を介して設けることもできる。また、主要コート層は一層に限るものではなく、複数の層で構成することもできる。このような例としては、セラミックス粒子の含有量を段階的に変化させた複数の層や、反応性成分の組成又は含有量、或いは添加物を変更して層の伸び率を段階的に変化させた複数の層で構成したものを挙げることができる。
「下地層」とは、主要コート層とウレタン防水材の間に形成される層を意味する。通常、下地層は、防水材上に直接設けられるが、ウレタン樹脂塗料組成物等で形成されるプライマー層を設けた後、その上に設けることもできる。また、下地層は一層に限るものではなく、複数の層で構成することもできる。このような例としては、反応性成分の組成又は含有量、或いは添加物を変更して層の伸び率を段階的に変化させた複数の層で構成したものを挙げることができる。
「保護層」とは、主要コート層を保護する目的で主要コート層の上に設けられる層を意味する。但し、更に他の機能を付与することを目的とするものも含まれる。また、複数の層で構成することもできる。
本発明による塗料システムによれば、ウレタン防水材に、アクリルウレタン樹脂からなる下地層を介在させて、同一若しくは他のアクリルウレタン系樹脂を有機塗膜成分としセラミックス粒子を含有する主要コート層が形成されることから、塗膜構造全体としてウレタン防水材の伸縮に追従できるようになり、ひび割れや剥離等の問題を生じることなく、多量のセラミックス粒子を塗膜に含有させることができる。これにより、遮熱性、塗膜強度等のセラミックス粒子に由来する特性が飛躍的に向上し、従来の主要コート層では達成不可能であった高レベルでこれらの特性を付与することができる。また、セラミックス粒子は、多彩な色を有する物が市販されており、これらをブレンドすることで、高級感のある仕上りが可能になると共に、防水材の色調に多数のバリエーションを持たせることができる。
また、本発明による塗料システム及び施工方法によれば、このような特性を有する塗膜構造を現場で簡易に提供することが可能となる。特に、本発明の塗料システム及び施工方法では、主要コート層用塗料にセラミックス粒子を含有させるので、塗布の際に粒子の飛散という問題を生じることはない。また、本発明の塗料システム及び施工方法の好適な態様では、下地層に所定の粒径の粒子を少量含有させて下地層の表面に当該粒子に起因する凸部を形成しておくことで、主要コート層用の塗料をコテ、ヘラ、レーキなどの塗布面に対して平行の接触端又は接触面を有する塗工具を用いて当該接触端又は接触面により引き延ばしながら塗布する際、一部のセラミックス粒子が凸部にひっかかり、セラミックス粒子の分配が促進される。この結果、セラミックス粒子を多量に含有する主要コート層用塗料の良好な施工性を確保しながら形成される主要コート層の仕上りを向上させることができる。
図1(a)は、楕円体状とみなされる粒子を示すとともに、当該粒子の真球度の計測基準を示す模式図であり、図1(b)は、球状とみなされる粒子を示すとともに、当該粒子の真球度の計測基準を示す模式図である。 図2(a)は、表面が平坦の下地層にコテで主要コート層用塗料を延ばしながら塗布した際のセラミックス粒子の状態を示す模式図であり、図2(b)は、表面に凸部を形成しておいた下地層にコテで主要コート層用塗料を延ばしながら塗布した際のセラミックス粒子の状態を示す模式図である。
以下、本発明の実施の形態を説明することにより、本発明をより詳細に説明する。但し、以下の説明は、本発明を限定することを意図するものではなく、本発明の本質に反しない限り他の実施の形態も本発明に包含される。
本発明のウレタン防水材用塗料システムでは、アクリルウレタン樹脂塗料組成物からなる下地層用塗料を含み、この塗料により、ウレタン防水材と主要コート層との間に下地層を形成する。一方、本発明の塗料システムは、アクリルウレタン樹脂塗料組成物中にセラミックス粒子を含有する主要コート層用塗料を含み、この塗料によりセラミックス粒子を含有する主要コート層を形成する。このような塗膜構造により、ウレタン防水材に対する密着性に優れ且つウレタン防水材の伸縮に追従可能な塗膜構造を実現しながら、セラミックス粒子に起因する特性(遮熱性、塗膜強度及び意匠性等)を従来の主要コート層では達成できなかった高レベルで達成する。
以下、各塗料について具体的に説明する。
1.下地層用塗料
本発明で用いる下地層用塗料は、アクリルウレタン樹脂塗料組成物からなるものであれば特に制限はなく、従来、ウレタン防水材の主要コート層を形成させるために用いていたアクリルウレタン樹脂塗料を使用することができる。(特許文献18〜22、27、28参照)。また、アクリルウレタン樹脂塗料組成物は、1液型であっても2液型であってもよいが、ウレタン防水材に対する接着性及び耐久性の点で2液型塗料組成物が好ましい。
本発明の下地層用塗料として使用可能な塗料組成物の典型例としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネートをポリオールと反応させて得られるポリイソシアネート樹脂を反応成分の主成分として含む主剤と、(メタ)アクリルポリオール樹脂、又は(メタ)アクリルポリオール樹脂及びビニル重合性モノマーを反応成分の主成分として含む硬化剤とを含む、アクリルウレタン塗料組成物を挙げることができる(特許文献18〜22、27、28参照)。
主剤の反応成分であるポリイソシアネートの好適な例は、無黄変型ポリイソシアネートであり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、水添キシリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート等の無黄変型ポリイソシアネート化合物、又はそのビウレット体、イソシアヌレート体、アダクト体、ダイマー体、プレポリマー、又はこれらの変性体(例えば、極性の低い溶剤への溶解性を付与させるための変性体)等が使用でき、これらは1種または2種以上組み合わせて使用できる。
無黄変型ポリイソシアネートは、当技術分野で一般的に使用されている方法により合成することができる(例えば、特許文献1から25参照)。
本発明で使用可能なポリイソシアネートの他の好適な例は、1分子中に1個以上のアロファネート結合および2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート(以下、「アロファネート化多官能性ポリイソシアネート」と略称する)を30質量%以上含むポリイソシアネートである(特許文献21参照)。このポリイソシアネートを主剤に含有する塗料によって形成される塗膜は、耐候性に優れると共に、ウレタン防水材に対する密着性に優れ、且つ充分な伸縮性を有し、本発明の下地層用塗料として好適である。
アロファネート化多官能性ポリイソシアネートは、所定のポリイソシアネートと、アルコールとを、イソシアネート基が過剰な状態でウレタン化およびアロファネート化させて得ることができ、ウレタン化およびアロファネート化は同時に進行させてもよく、ウレタン化させた後、アロファネート化させてもよい。
アロファネート化用のポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート、水添化キシレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート等を挙げることができ、これらは、単独、又は2種以上混合して用いることができる。
これらの中でも、耐侯性の点からは、脂肪族イソシアネート、脂環式ジイソシアネートが好適であり、特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートが好ましい。
また、アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール等のモノオール類;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物、水添化ビスフェノールA、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネート等のジオール類;トリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオール類などを使用することができ、これらは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
ウレタン化およびアロファネート化反応は、ポリイソシアネートとアルコールとを有機溶剤の存在下または非存在下、50〜150℃程度に加熱して行うことができる。
ウレタン化とアロファネート化とを同時に行う場合、アロファネート化触媒の存在下で反応を行えばよく、ウレタン化後にアロファネート化を行う場合、アロファネート化触媒の非存在下で、所定時間ウレタン化反応を行った後、アロファネート化触媒を添加してアロファネート化反応を行えばよい。
アロファネート化触媒としては、例えば、有機カルボン酸の金属塩を用いることができる。
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸等の飽和脂環式カルボン酸;ビシクロ(4.4.0)デカン−2−カルボン酸等の飽和複環カルボン酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸等の不飽和脂肪族カルボン酸;ジフェニル酢酸等の芳香脂肪族カルボン酸;安息香酸、トルイル酸等の芳香族カルボン酸等が挙げられる。
また、カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属;マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム等の遷移金属等が挙げられる。
反応後は、リン酸、酸性リン酸エステル等の公知の反応停止剤にてアロファネート化反応を停止させ、薄膜蒸留等の公知の手法により未反応成分を除去して目的とするアロファネート結合を有するアロファネート化多官能性ポリイソシアネートを得ることができる。
本発明において、アロファネート化多官能性ポリイソシアネートの官能基数は、特に限定されるものではないが、2〜4が好ましく、2〜2.5が特に好ましい。
上記ポリイソシアネートと反応させるポリオールも、各種ポリオールを用いることができ、好適な例としてはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を挙げることができる。
ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、トリメット酸等のポリカルボン酸、酸エステル、または酸無水物の1種以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上との脱水縮合で得られるポリエステルポリオール、或いは低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステルモノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合して得られる、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等、およびこれらの共重合体等が挙げられる。
これらのポリオールは、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明においては、ポリオールの平均官能基数についても特に制限はないが、2〜4が好ましい。また、ポリオールの数平均分子量についても特に制限はないが、ウレタン防水材の伸縮に対する追従性と主要コート層に対する耐剥離性の点から、数平均分子量(示差屈折率計検出によるGPC法によるポリスチレン換算値)200〜3000のものを用いることが好ましい。
ポリイソシアネート樹脂は、上述したポリイソシアネートと、ポリオールとを、溶媒の存在下または非存在下で反応させて得ることができる。
ポリイソシアネートとポリオールとの反応条件について特に制限はないが、例えば、必要に応じてジブチル錫ラウレート、ジオクチル錫ラウレートなどのウレタン化触媒を用いて、20〜150℃で過剰量のポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させればよい。
硬化剤中に含有される(メタ)アクリルポリオール樹脂は、(メタ)アクリル樹脂主鎖中に2個以上の水酸基を含む化合物であり、通常、重量平均分子量100,000以下、好ましくは60,000以下、より好ましくは40,000以下、特に好ましくは、30,000以下のものを用いる。
(メタ)アクリルポリオール樹脂は、水酸基を有するアクリルモノマーと、不飽和二重結合を有するその他の重合性モノマーとをラジカル共重合して得ることができる。
水酸基を有するアクリルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のN−メチロール化アクリルアミド、ε−カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、カーボネート変性メタクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、HEMAC)等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
不飽和二重結合を有するその他の重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デカニル(メタ)アクリレート、ウンデカニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレートまたはアルコキシアルキル(メタ)アクリレート等のC1〜C24のアルキル(メタ)アクリレートモノマー;
スチレン、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系モノマー;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸と1価アルコールとのジエステル類;
グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;
酢酸ビニル、安息香酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルエステル等のビニルエステル類;
パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジ−パーフルオロアクリルシクロヘキシルフマレート、N−i−プロピルパーフルオロオクタンスルホアミドエチル(メタ)アクリレート等の(パー)フルオロアルキル基含有のビニルエステル類;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;
(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和カルボン酸エステル類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル系モノマー類;
ビニルエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシリコン系モノマー類;
(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド2−(メタ)アクロイロキシエチルアシッドホスフェート、ジブチル(2−(メタ)アクリロイロキシジエチル)ホスフェート、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有ビニル系モノマー類;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー等を挙げることができる。
これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。特に、不飽和二重結合を有する重合性モノマーとして、C1〜C24のアルキル(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましい。
上記モノマーのラジカル共重合は、無溶媒または適当な有機溶媒存在下、重合開始剤を用いて行うことができ、重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等を使用することができる。また、重合反応の温度及び反応時間は、適宜選択すればよいが、重合反応の温度は、例えば60〜150℃程度であり、反応時間は、例えば、1〜12時間程度である。
市販品としては、例えばエクセロール290、エクセロール170(以上、亜細亜工業(株)製)などを挙げることができる。
また、本発明の下地層用塗料は、ポリイソシアネートと(メタ)アクリルポリオール樹脂との割合について特に制限はないが、ウレタン防止材の伸縮に対する追従性と主要コート層に対する耐剥離性の点からは、ポリイソシアネート中のイソシアネート基および(メタ)アクリルポリオール樹脂中の水酸基のモル比が[NCO]/[OH]=0.8以上となる割合が好ましく、[NCO]/[OH]=0.8〜2.0がより好ましく、[NCO]/[OH]=1.0〜1.5が特に好ましい。
本発明の下地層用塗料は他の固形成分を含有することができ、後述する主要コート層用塗料をコテ、ヘラ又はレーキ等の塗布面に対して実質的に平行の接触端又は接触面を有する塗工具で塗布する場合には、下地層用塗料に、粒子を含有させておくことが好ましい。詳しくは主要コート層のところで述べるが、この粒子によって形成される下地層表面の凸部によって主要コート層中のセラミック粒子の分配を促進することができる。
粒子は、有機、無機又は有機・無機ハイブリッド材料の何れの材料からなるものでもよく、非中空又は中空の何れでもよい。非中空の有機系粒子としては、例えば、アクリルビーズ又はウレタンビーズからなる粒子を挙げることができ、非中空の無機系粒子としては、例えば、珪砂又はガラス等のセラミックスからなる粒子を挙げることができる。また、中空の有機系粒子としては、プラスチックからなる中空球状粒子を挙げることができ、中空の無機系粒子としては、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン、又は珪酸アルミを主成分としたバルーン粒子を挙げることができ、中空の有機・無機ハイブリッド系粒子としては、例えばプラスチックからなる粒子の表面を無機材料で被覆した粒子を挙げることができる。
これら中でも生産コストの点から、セラミックスからなる粒子が好ましく、他の有機成分との比重差が小さく分離が起き難いとともに、塗膜の軽量化が可能となる点で中空のセラミックス粒子がより好ましい。
有機・無機ハイブリッドからなる中空球状粒子の市販品としては、EMC(日本フィライト(株)製)を挙げることができ、中空の無機系粒子の市販品としては、フィライトFG(52/7)(日本フィライト(株)製)を挙げることができる。
また、主要コート層用塗料をコテ、レーキ又はヘラ等の塗布面に対して実質的に平行の接触端又は接触面を有する塗工具で引き延ばしながら塗布する場合には、塗工具の円滑な動きを確保しながらセラミックス粒子の分配を促進する点から下地層用塗料に含有する粒子に起因して形成される凸部は曲面で構成されることが好ましい。このため、下地層用塗料に含有させる粒子は、球状か楕円体状であることが好ましい。
ここで、本願明細書において、「球状若しくは楕円体状」の形状とは、下地層表面の凸部が曲面で構成されるために要求される形状であり、粒子の表面が、凹部等の凸曲面以外の面を含む場合でも、凹部等の凸曲面以外の部分の面積(凹部の場合はその開口部の面積、平面の場合は、その表面積)が粒子表面の1/3以下程度であれば図1(a)に示すように当該部分を捨象して「球状若しくは楕円体状」とみなされるかを判断する。また、粒子の表面が凹部等の凸曲面以外の部分を複数含む場合には、図1(b)に示すように当該部分の開口部及び平面等の面積の総和が粒子表面の1/3以下程度であれば当該部分を捨象して「球状若しくは楕円体状」とみなされるかを判断する。
「球状若しくは楕円体状」に該当するか否かは、真球度=長径a/短径bにより求められる値を指標として判断することができ、1〜2の真球度(長径a/短径b)であれば、本願明細書においては「球状若しくは楕円体状」の形状を有するものとみなすことができる。但し、コテ、ヘラ等の塗工具を円滑に動作させながらセラミックス粒子の分配を促進するという点からは、1〜1.3(長径a/短径b)の真球度の粒径を有するものが好ましく、1〜1.15(長径a/短径b)の真球度の粒径を有するものがより好ましい(なお、表面に凹部を有する場合には、上記のように凹部等を捨象し、図1(a)及び(b)に示すようにして真球度を測定する)。
下地層用塗料に含有させる粒子(1μm以上の粒径を有する)は、通常、その製造でのばらつき、粒子の破壊、粒子同士の結合などで総ての粒子が球状又は楕円体状でないことが多いが、このような球状又は楕円体状以外の粒子が混入した粒子混合物でも所望の効果を達成することはできる。このような球状又は楕円体状以外の粒子は、通常、下地層用塗料に含有させる粒子中20質量%未満であり、10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることが特に好ましい(即ち、通常、粒子の80質量%以上が球状若しくは楕円体状の形状を有し、好ましくは粒子の90質量%以上が球状若しくは楕円体状の形状を有し、特に好ましくは粒子の95質量%以上が球状若しくは楕円体状の形状を有する)。
また、下地層用塗料で用いる粒子は、主要コート層用塗料中のセラミックス粒子に対する障害となって当該粒子の分配が促進される粒径を有するものであればよく、下地層の乾燥塗膜の厚さにもよるが、通常、1μm以上の粒径(JIS K 0069−1992によるふるい分け試験法)を有する粒子が好ましく、40μm以上の粒径を有する粒子がより好ましく、60μm以上の粒径を有する粒子が更に好ましく、80μm以上の粒径を有する粒子が特に好ましい。一方、粒径が過度に大きくなると、コテ等の円滑な動き支障をきたし易くなるので、500μm未満の粒径(JIS K 0069−1992によるふるい分け試験法)を有する粒子が好ましく、400μm未満の粒径(JIS K 0069−1992によるふるい分け試験法)を有する粒子がより好ましく、300μm未満の粒径(JIS K 0069−1992によるふるい分け試験法)を有する粒子が特に好ましい。
また、同様の点から、粒径40μm以上、より好ましくは60μm以上、特に好ましくは80μm以上で、粒径300μm以下、より好ましくは200粒径以下、特に好ましくは190μm以下の粒子が、全粒子中70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上を占めるものが好ましい。また、平均粒径が60〜200μmである粒子が好ましく、平均粒径が80〜180μmである粒子が好ましく、平均粒径が100〜170μmである粒子が特に好ましい。また、下地層の厚さ(乾燥膜厚)に対し、0.6〜10倍の粒径の粒子、好ましくは1.0〜7倍の粒径の粒子、より好ましくは1.3〜6倍の粒径の粒子を、全粒子中70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上を占めるものが好ましい。
このような粒径分布の粒子であれば、主要コート層用塗料をコテ等の塗工具で塗布する際に、主要コート層用塗料中のセラミック粒子の分配が促進されると共にコテ等の円滑な動きが可能となる適度な大きさの凸部を下地層表面に形成させておくことができる。
また、上記のような下地層用塗料に含有させる粒子は、下地層用塗料中1質量%〜15質量%含有させることが好ましく、下地層用塗料中2質量%〜13質量%含有させることがより好ましく、下地層用塗料中3質量%〜12質量%含有させることが更に好ましく、下地層用塗料中5質量%〜9質量%含有させることが特に好ましい。
下地層用塗料中の粒子含有量をこの範囲とすると、下地層表面に、5個/2mm×2mmから75個/2mm×2mmの密度で、より好ましくは10個/2mm×2mmから65個/2mm×2mmの密度で、より好ましくは15個/2mm×2mmから60個/2mm×2mmの密度で、より好ましくは25個/2mm×2mmから45個/2mm×2mmの密度で凸部が形成され、後述するように、コテ等の円滑な動作を確保しながら、主要コート層用塗料中のセラミックス粒子の均一な分配が可能となる。
本願発明の下地層用塗料には、銅フタロシアニン(粒径0.02〜0.2μm程度)等の有機の着色顔料、カーボンブラック(粒径10〜90nm程度)、黄色や赤色の酸化鉄(粒径0.1〜0.8μm程度)、酸化チタン(粒径0.3μm程度)等の無機の着色顔料、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム(粒径0.03〜1μm程度)等の体質顔料、顔料湿潤/分散剤、表面調整剤、ビニルエーテルやシリコーン系等の消泡剤、増粘剤、光安定剤、酸化防止剤などのその他の添加物を含ませることができ、2液型の塗料の場合には、これらを、硬化剤と主剤のどちらか一方に配合しても、両方に配合してもよい。
ただし、ウレタン防水材に対する十分な追従性を確保する点からは、反応性成分以外の固形成分は、全固形成分中45質量%未満とすることが好ましく、全固形成分中40質量%未満とすることがより好ましい。また、同様の点から前記粒子以外の無機成分は全固形成分中35質量%未満であることが好ましく、全固形成分中30質量%未満とすることがより好ましい。
主剤及び硬化剤を調製する際に用いる溶剤としては、従来、広く用いられていたトルエン及び/又はキシレンを主成分とする溶剤、或いは沸点が85℃から230℃の脂肪族エステル類、炭素数7〜10の脂環族炭化水素、低沸点芳香族ナフサおよび芳香族含有石油系炭化水素、並びに脂肪族および脂環族石油系炭化水素からなる群から選択される1種または2種以上有機成分を含有する溶剤を挙げることができる。環境に配慮した塗料を提供することができる点では、沸点が85℃から230℃の脂肪族エステル類、炭素数7〜10の脂環族炭化水素、低沸点芳香族ナフサおよび芳香族含有石油系炭化水素、並びに脂肪族および脂環族石油系炭化水素からなる群から選択される1種または2種以上の有機成分を含有する溶剤が好ましく、中でもアクリルウレタン樹脂成分に対する溶解性が大きく、ウレタン防水材の構成成分の溶出が少ない点で、沸点が85℃から230℃の脂肪族エステル類及び低沸点芳香族ナフサからなる群から選択される1種または2種以上の有機成分を主成分とする溶剤がより好ましい。
沸点が85℃から230℃の脂肪族エステル類としては、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、オクテン酸メチル、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシ−ブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGEAC)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートといったモノカルボン酸エステル類;プロピレングリコールジアセテート、アジピン酸ジメチル、グルタミン酸ジメチル、コハク酸ジメチルといったジカルボン酸エステル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートといった、エチレングリコールおよびジエチレングリコールより合成されるエステル類を挙げることができる。ただし、酢酸プロピルおよび酢酸ブチルは臭気が強く有機溶剤中毒予防規則で第2種溶剤に該当するので、他の脂肪族エステル系溶剤が好ましく、特に、アクリルウレタン樹脂成分に対する溶解性が良好で、且つ有機溶剤中毒予防規則の第2種溶剤に該当しないという点でオクテン酸メチル、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシ−ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート又は3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテートが好ましい。
低沸点芳香族ナフサ及び芳香族含有石油系炭化水素溶剤としては、例えば、ソルベッソ100(エクソンモービル化学(株)製)、カクタスソルベントP100((株)ジャパンエナジー製)、SS−100(新日本石油(株)製)等を挙げることができる。ただし、低沸点芳香族ナフサは溶解性と作業性の観点から、溶剤中80質量%未満で使用することが好ましく、70質量%未満で使用することがより好ましい。
また、炭素数7〜10の脂環族炭化水素系溶剤としては、例えば、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンを挙げることができる。芳香族含有石油系炭化水素溶剤としては、例えば、HAWS、LAWS(シェルケミカルズジャパン(株)製)を挙げることができる。脂肪族および脂環族石油系炭化水素溶剤としては、例えば、シェルゾールD40、シェルゾールS(シェルケミカルズジャパン(株)製)、エクソールD30、エクソールD40(エクソンモービル化学(株)製)、及びIPソルベント(出光石油化学(株)製)を挙げることができる。
これらは、低臭性であり有機溶剤中毒予防規則外のものが多いが、単独では、アクリルウレタン樹脂に対する溶解性が十分とはいえないため、補助的に使用することが好ましく、溶剤中30質量%未満とすることが好ましい。
また、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといった比較的臭気が強い第2種溶剤(有機溶剤中毒予防規則)も溶剤の一部としては使用することができる。
本発明において、以上のような化合物を配合できるが、主剤および硬化剤ともにトルエン及びキシレンの含有量を1%以下とすることが好ましい。また、主剤および硬化剤ともに、有機溶剤中毒予防規則に該当しない沸点が85℃から230℃の脂肪族エステル類、及び/又は低沸点芳香族ナフサを主成分(90質量%以上)とする溶剤を用いることが好ましく、臭気の軽減と十分な溶解性の付与という観点から両者を組み合わせることがより好ましい。この際、沸点が85℃から230℃の脂肪族エステル類と低沸点芳香族ナフサは、同様の点から、30質量部:70質量部で混合することが好ましく、40質量部:60質量部で混合することがより好ましい。
また、本発明の下地層用塗料は、施工性や塗膜厚の確保の点から通常固形成分の含有量を30〜60質量%とすることが好ましく、40〜50質量%とすることがより好ましい。
本発明は、下地層用塗料の塗布法について特に制限はなく、刷毛、コテ、ヘラ、レーキ、ローラー、スプレーなどの公知の方法で塗布すればよいが、施工性の点で刷毛、ローラーを用いて塗布することが好ましい。また、塗布量、塗膜の厚み、乾燥時間などは、ウレタン防水材の種類などに応じて適宜設定すればよいが、主要コート層の伸縮に対する追従性の確保、凸部形成、及び塗工時間の短縮化の観点から、通常、塗布量は0.1〜0.2kg/m(乾燥膜厚30〜60μm)とすることが好ましく、0.12〜0.17kg/m(乾燥膜厚35〜50μm)とすることがより好ましい。
2.主要コート層用塗料
本発明の主要コート層用塗料は、本発明による膜構造体に意匠性、及び/又は塗膜強度及び遮熱性等の特性を付与する層を形成するための塗料である。
本発明の主要コート層用塗料は、下地層用塗料と同様に、アクリルウレタン樹脂塗料組成物からなる(アクリルウレタン樹脂塗料組成物の詳細は下地層用塗料で述べた通りである)。但し、下地層用塗料と同じである必要はなく、モノマー又はプレポリマー等の反応性成分の組成又は含有量、溶剤の組成又は含有量、更には添加物を変更し、伸び率やその他の特性を変えることもできる。また、本発明の主要コート層用塗料は、従来の主要コート層では困難であった多量のセラミックス粒子を含有することができる。セラミックス粒子の含有量については特に制限はないが、主要コート層用塗料中、セラミックス粒子を、例えば、従来の主要コート層ではウレタン防水材の伸縮に対する追従性の点で問題のあった15質量%以上(固形分換算値)のセラミックス粒子を含ませることができ、意匠目的、塗膜強度の向上、遮熱性又は耐候性の付与などの目的に応じて適宜選択すればよい。これらの目的を満足させるためには多くの場合セラミックス粒子を主要コート層用塗料中、30質量%以上含ませることが好ましく、40質量%以上含ませることがより好ましい。一方、過度にセラミックス粒子を含有させると、主要コート層が脆く成り易いので、セラミックス粒子は、主要コート層用塗料中、90質量%未満で含有させることが好ましく、80質量%以下で含有させることがより好ましい。例えば、主要コート層の可視面に有色セラミックス粒子で色を与えるなどの目的では、可視面を有色セラミックス粒子で覆うため40質量%から80質量%(固形分換算値)含ませることが好ましい。
なお、セラミックス粒子の含有量が、主要コート層用塗料中80質量%を超えると、形成された塗膜が脆くなったり、塗膜からセラミックス粒子が脱落し易くなるが、セラミックス粒子の含有量が、主要コート層用塗料中90質量%未満であれば後述する保護層で被覆することで、塗膜の強度を実用レベルで確保することができる。
また、主要コート層用塗料中のセラミックス粒子が中空の場合には、形成される主要コート層の強度が不十分な場合もあるため、非中空粒子を用いることが好ましい。もっとも、この場合でも、後述する保護層により被覆することで強度を高めることが可能である。
また、前述したように下地層表面に凸部を形成しておき、主要コート層用の塗料をコテ、レーキ又はヘラ等の塗布面に対して平行の接触端又は接触面を有する塗工具で塗布する場合には、主要コート層用塗料に含有されるセラミックス粒子が、下地層表面の凸部と曲面接触(好ましくは凸曲面同士での接触)することが、コテ等の円滑な動作を可能としながらセラミックス粒子を均一に分配する点で好ましい。このため、主要コート層用塗料に含有されるセラミックス粒子は、球状若しくは楕円体状の形状を有することが好ましい。
より具体的には、主要コート層用の塗料に含有されるセラミックス粒子も、真球度が1〜2(長径a/短径b)のものが好ましく、真球度が1〜1.3(長径a/短径b)の形状を有するものがより好ましく、真球度が1〜1.15(長径a/短径b)の形状を有するものが特に好ましい。
下地層用の塗料に含有される粒子と同様に、主要コート層用の塗料に含有されるセラミックス粒子は、通常、その製造でのばらつき、粒子の破壊、粒子同士の結合などで総ての粒子が球状又は楕円体状でないことが多いが、このような球状又は楕円体状以外の粒子が混入したものでも所望の効果を達成することはできる。このような球状又は楕円体状以外の粒子は、通常、下地層用塗料に含有させる粒子中20質量%未満であり、10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることが特に好ましい。
一方、主要コート層用塗料に含有されるセラミックス粒子は、粒径について特に制限はなく、一般的に入手可能な平均粒径300〜1200μmの粒子を用いればよい。但し、主要コート層が表面層の場合には、1500μmを超える粒径の粒子を多く含有すると粒子の脱落が生じ易いため、1500μm以下、より好ましくは、1200μm以下の粒径を有する粒子を、全粒子中70質量%以上含むものが好ましい。また、コテ等の円滑な動作を確保する点からは、下地層塗料中の粒子の粒径に対して、2から6倍程度の粒径を有する粒子を多く含むことが好ましく、より具体的には300〜850μmの粒径を有する粒子を全粒子中70質量%以上含むことが好ましく、更に総ての粒子が1200μm以下の粒径であることがより好ましい。もっとも、後述する保護層を設けることにより、少なくとも3000μm以下の粒径であれば脱落を防止することができる。
また、塗膜に意匠性を付与する場合には、有色のセラミックス粒子を用いることができる。有色のセラミックス粒子としては、着色タイプのものと、焼成タイプのものがあり、前者としては、例えば、天然石や硅砂等の表面に着色顔料等でコーティングしたものがあり、後者としては、例えば、シリカやアルミナを主成分とした粒子を無機系着色顔料と共に焼成したものがある。耐退色性の点では、焼成タイプのセラミックス粒子が好ましい。また、焼成タイプのセラミックス粒子を用いる場合には、主要コート層の遮熱性への影響を低減する点から日射反射率(JIS K 5602:2008,300nm〜2500nmの波長帯)が15%以上の顔料と共に焼成したものが好ましく、30%以上の顔料と共に焼成したものがより好ましい。
焼成タイプの市販品としては、例えば、美州興産株式会社製「セラサンド」(不定形)、柴田陶器株式会社製「セラミックボール」(球状)を挙げることができる。
本発明において有色のセラミックス粒子を用いる場合には、下地層用塗料中にセラミックス粒子の色に対して保護色となる色を提示する顔料、色素等を含有させておくことが好ましい。仮に、セラミックス粒子が脱落してもその保護色の存在で粒子の脱落を目立たないようにすることができる。典型的には、色相、明度及び彩度が同じ色を提示する顔料を含有させておくことで保護色としても効果を達成することができる。
本発明の主要コート層用塗料で用いる溶剤は、下地層用塗料で用いるものと同様のものを用いることができる。但し、主要コート層用塗料は、セラミックス粒子を含有すると共に塗布量は多いのが通常であるため、施工には通常時間を要する。このため、揮発し易くコート層用塗料の硬化を早めるトルエン及び/又はキシレンを主成分とする溶剤よりは、揮発性の低い沸点が85℃から230℃の脂肪族エステル類及び/又は低沸点芳香族ナフサを主成分(溶剤成分中80質量%以上)とする溶剤が好ましい。
また、本発明の主要コート層用塗料は、セラミックス粒子を多量に含有するため、比重の高いセラミックス粒子の沈降を抑制し、塗料の貯蔵安定性を高めるために、酸化ポリエチレンワックスやアマイドワックス等の増粘剤を含有させることが好ましい。
また、本願発明の主要コート層用塗料は、硬化触媒、表面調整剤、消泡剤、ハジキ防止剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの他の添加物を含むことができる。
本発明は、主要コート層用塗料の塗布方法についても特に制限はなく、刷毛、ローラー、コテ、ヘラ、レーキ、スプレーなどの公知の方法で塗布すればよい。ただし、下地層表面に凸部を形成しておいた場合には、主要コート層用の塗料をコテ、レーキ、又はヘラ等の塗布面に対して実質的に平行の接触端又は接触面を有する塗工具で塗布することが好ましい。
アクリルウレタン樹脂で形成される下地層の表面はセラミックス粒子にとって滑り易く、図2(a)に示すように、下地層3の表面が平坦である場合にコテ等(図示せず)で主要コート層用塗料1を延ばそうとするとセラミックス粒子2が塗布終端に集り易く、セラミックス粒子2の均一な分配が困難になり易い。これに対して、図2(b)に示すように、下地層3の表面に凸部3’を形成しておいた場合には、当該凸部3’がセラミックス粒子の滑り止めとして機能し、コテ等で引き延ばすと均一にセラミックス粒子2を分配することができる。
また、塗布量は、施工目的などに応じて適宜変更すればよく、通常、1.2〜3.0kg/mとし、好ましくは、1.5〜2.5kg/mとする。
3.保護層用塗料
本発明のウレタン防水材用の塗料システムは、必要に応じて、上記主要コート層を保護するための保護層用塗料を含むことができる。保護層は、例えば、主要コート層中のセラミックス粒子の脱落を防止したり、主要コート層の強度を補強することができるため、塗膜設計に応じて保護層用塗料を含めることが好ましい。より具体的には、粒径1500μmを超えるセラミックス粒子、より好ましくは、粒径1200μmを超えるセラミックス粒子を主要コート層に含有する場合や、強度の点で不十分なセラミックス粒子を用いる場合には、保護層用塗料を含めることが有益である。
保護層用の塗料も、基本的に、下地層用塗料において詳述したアクリルウレタン樹脂塗料組成物からなる。但し、下地層用塗料や主要コート層用塗料と全く同じである必要はなく、モノマー又はプレポリマー等の反応性成分の組成又は含有量、溶剤或いは添加物等を変更し、伸び率やその他の特性を変えてもよい。また、主要コート層の意匠性を向上させたり、塗膜構造体の不燃若しくは難燃性を向上させたり、追加の機能を付与するなどの目的で、反応成分を異なる組成又は含有量としたり、添加物を加えたりしてもよい。例えば、顔料や有色セラミックスを含まず且つ透明層となる組成とすることで透明保護層を形成し、主要コート層に高級感を付与することができる。また、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の不燃若しくは難燃剤を含有させることで、塗膜構造体の耐熱性を更に高めることもできる。
保護層用塗料は、必要に応じて、消泡剤、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、及び追加溶剤等といった他の成分を含めることができる。
本発明では、保護層用塗料の塗布法についても特に制限はなく、例えば、刷毛、コテ、ヘラ、レーキ、ローラー、スプレーなどを用いて塗布することができるが、施工性の点で刷毛、ローラーを用いて塗布することが好ましい。また、塗布量、塗膜の厚み、乾燥時間などは、施工目的、用いる溶剤、施工時間等に応じて変更すればよい。通常、塗布量は0.15〜0.3kg/mとすればよい。
4.ウレタン防水材
本発明の塗料システムでは、各塗料を、基本的に、従来の主要コート層(トップコート層)用塗料で実績があるアクリルウレタン樹脂塗料組成物で構成するためウレタン防水材であれば特に制限なく適用可能であり(例えば、特許文献18〜22、27、28参照)、適用可能な具体的なウレタン防水材としては、特許文献1〜20に記載されているものを挙げることができる。
また、ウレタン防水材の施工では、主要コート層(トップコート層)等からなる塗膜を有するウレタン防水材に対する改修を目的とする場合があり、本発明の塗料システムでは、このような塗膜を有するウレタン防水材をも施工対象とすることができる。
例えば、シリコン樹脂、フッ素樹脂又はアクリルウレタン樹脂からなる塗膜を有するウレタン防水材を施工対象とする場合には、ウレタン樹脂塗料組成物からなるプライマー塗料を塗布した後、又は直接、アクリルウレタン樹脂塗料組成物からなる下地層用塗料を塗布してもよいが、必要に応じてウレタン樹脂塗料からなるプライマー塗料を塗布した後ウレタン防水層用塗料を塗布してウレタン防水層を形成し、その上にアクリルウレタン樹脂からなる下地層用塗料を塗布することが好ましい。
プライマー塗料は、層間の接着性向上を目的として塗布されるものであり、通常固形成分が10〜30質量%程度で溶剤成分を多く含み、通常は透明の樹脂を塗膜成分とする。また、プライマー塗料は、通常0.1〜0.2kg/mの量で塗布されて薄層を形成することで目的を達成する。
一方、ウレタン防水層用塗料は、塗工対象の動きに追従可能とするとともに、防水機能を持たせることを目的として塗布されるものであり、通常固形成分が97質量%以上であり、隠蔽性を確保する目的でグレーやグリーン色に着色されることが多い。また、ウレタン防水層用塗料は、1.0kg/m以上(通常2.0kg/m)の量で塗布されて厚い層を形成することで目的を達成する。
塗工対象がヒビ割れ等による劣化が進み、漏水が懸念される場合にはウレタン防水層を設けた後、主要コート層を設けることが好ましく、実質的に化粧目的だけの場合には、必要に応じてプライマー層を設けた後主要コート層を設けることができる。
プライマー塗料の典型例は、1液湿気硬化型ウレタンプライマー塗料であり、例えば、特開2005−299103に記載するような、イソシアネート末端プレポリマーを含む、1液湿気硬化型ウレタンプライマー塗料を挙げることができる。
イソシアネート末端プレポリマーのイソシアネート成分としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネートを挙げることができ、より速硬性にできることから、TDIとMDIの併用系及びMDI単独系が好ましい。また、イソシアネート末端プレポリマーのポリオール成分としては、前記下地層で述べたものを挙げることができる。
また、ウレタン防水層用塗料としては、前記のウレタン防水材を形成するための塗料でよく、例えば特許文献1〜20に記載されている塗料を用いることができる。
5.膜構造体
上記の塗料システム及び施工方法で得られる本発明の膜構造体は、ウレタン防水材上に、アクリルポリウレタン樹脂を有機塗膜成分とする下地層と、アクリルポリウレタン樹脂を有機塗膜成分とし、且つセラミックス粒子を含有する主要コート層とを有するものであり、アクリルポリウレタン樹脂を有機塗膜成分とする下地層の存在により、ウレタン防水材に対する接着性とその伸縮に対する追従性が付与され、その一方で、多量の(有色)セラミックス粒子を含有する主要コート層の存在で、意匠性、及び/又は塗膜強度、及び遮熱性等のセラミックス粒子に起因する特性を従来の主要コート層では達成できない高水準で付与することができる。図2に示す好ましい態様においては、下地層の表面付近に存在する粒子4により下地層3表面に凸部3’が形成され、下地層3表面の表面積が大きくなっている。この下地層3表面の多くは樹脂で覆われており、主要コート層1を構成する樹脂と接触して接着性が付与されている。主要コート層1中のセラミックス粒子2同士は、通常接触せず樹脂が介在する。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。但し、本発明は実施例により限定して理解されるべきではない。
[実施例1]
1.下地層
1−1.硬化剤の調製
まず、攪拌装置、温度計、冷却管および滴下装置を備えた反応器に、ソルベッソ100(エクソンモービル化学(株)製、成分:低沸点芳香族ナフサ)400質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部からなる溶剤を仕込み、撹拌しながら110℃まで昇温した。そこに、2−ヒドロキシエチルメタクリレート80質量部、メチルメタクリレート467質量部、n−ブチルメタクリレート250質量部、n−ブチルアクリレート200質量部、アクリル酸3質量部、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート12質量部、及びソルベッソ100 100質量部からなる混合物(固形分/溶剤=59.2質量%/40.8質量%)を4時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で1時間反応させた。さらに、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート3質量部、及びソルベッソ100 100質量部からなる混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で3時間反応させ、固形分56.0質量%、粘度4,000mPa・s(25℃)、水酸基価34.0mgKOH/g(固形分)、重量平均分子量25,000の透明なアクリルポリオール樹脂溶液を得た。
次いで、得られたアクリルポリオール樹脂溶液268質量部に、酸化チタンCR−95(石原産業(株)製)80質量部、消泡剤(商品名:フローレンAC−903HF、共栄社化学(株)製、主成分:ビニルエーテルポリマー)1質量部、ソルベッソ100 35質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート16質量部、ガラスビーズ400質量部を混合し、混合液をペイントシェイカーで1時間分散した。分散終了後、ガラスビーズを取り除くことにより固形分57.6質量%、粘度1,500mPa・s(25℃)の白色塗料を調製した。
次いで、この白色塗料100質量部に、無色で略球状の中空セラミックス粒子(商品名:フィライトFG(52/7)、日本フィライト(株)製)を5.3質量部配合し、固形分59.7質量%の硬化剤を調製した。
なお、全中空セラミックス粒子中、40〜300μm(JIS K 0069−1992によるふるい分け試験法)を有する粒子が約98質量%を占め、60〜200μmを有する粒子が約85質量%を占め、80〜190μmを有する粒子が約72質量%を占め、平均粒径は約140μmであった。
またセラミックス粒子を拡大鏡で視認し、長径と短径の差が大きいと思われる粒子数個について真球度を確認したところ、約1.10であった。
1−2.主剤の調製
1−2−1.ポリイソシアネートの調製
まず、温度計、攪拌機、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応器に、ヘキサメチレンジイソシアネート950質量部、イソプロパノール50質量部、2−エチルヘキサン酸ジルコニウムのミネラルスピリット溶液(ジルコニウム含有量:20質量%)0.5質量部を仕込み、攪拌しながら110℃まで昇温した。その後、同温度で2時間反応を行った。次いで、リン酸0.1質量部を仕込み、50℃で1時間停止反応を行った。停止反応後の反応生成物のイソシアネート(NCO)含量は40.5質量%であった。
次に、得られた生成物を130℃、0.04kPaの条件下で薄膜蒸留を行い、イソシアネート(NCO)含量19.4質量%、粘度150mPa・s(25℃)、フリーHDI0.2質量%、アロファネート基含有成分95質量%のポリイソシアネートを得た。
1−2−2.ポリイソシアネート樹脂溶液の調製
攪拌装置、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応器に、前記のポリイソシアネート37.8質量部、ポリテトラメチレングリコール1000(保土谷化学(株)製、PTG1000SN、数平均分子量1000)42.2質量部、ソルベッソ100 12質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8質量部を仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温した。
同温度で6時間反応させ、固形分80質量%、イソシアネート(NCO)含量38質量%のポリイソシアネート樹脂溶液を得た。
次に、反応器中のポリイソシアネート樹脂溶液100質量部に対してイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業(株)製、コロネートHX)30質量部、ソルベッソ100 55質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート23質量部を仕込み、イソシアネート含量4.9質量%、固形分52.9質量%の主剤を調製した。
1−3.下地層の形成
塗布時に主剤/硬化剤を固形分比で16.5部/83.5部で混合して混合溶液([NCO]/[OH]モル比=1.2)とし、得られた主剤/硬化剤の混合溶液100質量部に対して、ソルベッソ100とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを質量比70:30で混合した混合溶剤を30質量部添加して、ローラー塗装に適する粘度に調整したものを下地層用の塗料とした(溶剤のソルベッソ100とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの質量比は、67.0:33.0、フィライトFG(52/7)の下地層用塗料中含有量は、7質量%(固形分換算値)、固形成分含有量は、45.0質量%)。
この下塗層用の塗料をウレタン防水材(商品名:ミリオネートC、保土谷バンデックス建材(株)製)に、ローラーで0.15kg/m塗布した。約3時間後には塗料が硬化して塗膜(乾燥膜厚:約40μm)が形成され、その表面を手で触れると表面がざらざらしており、表面に曲面で区画される凸部35個/2mm×2mmの密度で形成されていた。
2.主要コート層
2−1.硬化剤の調製
下地層用塗料の硬化剤で述べた手順で同じアクリルポリオール樹脂を調製した。
次いで、得られたアクリルポリオール樹脂溶液62質量部に、増粘剤(商品名:ディスパロン6820−20M、楠本化成(株)製、成分:脂肪酸アマイド)12質量部、消泡剤(商品名:フローレンAC−903HF、共栄社化学(株)製、主成分:ビニルエーテルポリマー)0.5質量部、ソルベッソ100 17.5質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8質量部を混合し、混合液をディゾルバーで1時間撹拌することにより、固形分37.3質量%、粘度7,000mPa・s(25℃)の透明塗料を調製した。
次いで、この透明塗料47質量部に、粒径300〜850の粒子が全粒子中約70質量%以上を占めるシリカとアルミナを主成分とする非中空で白色のセラミックス(商品名:セラミックボール、柴田陶器(株)製)53質量部を混練して、固形分70.5質量%の硬化剤を調製した。
なお、セラミックス粒子を拡大鏡で視認し、長径と短径の差が大きいと思われる粒子数個について真球度を確認したところ、約1.10であった。
2−2.主剤の調製
下地層用塗料の主剤と同様にして主剤を調製した。
2−3.主要コート層の形成
使用時に、主剤/硬化剤を固形分比で7.1質量部/92.9質量部の割合で混合したもの([NCO]/[OH]モル比=1.2)を主要コート層用の塗料とした(溶剤のソルベッソ100とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの質量比は、66.0:34.0、セラミックボールの主要コート層用塗料中含有量は、70質量%(固形分換算値))。下地層用塗料を塗布してから約3時間後に、この主要コート層用塗料を、コテ(大塚刷毛製造(株)製、商品名:角ゴテ(ステンレス製)300型)で引き伸ばしながら下地層に塗布した。目視にて確認したところ、セラミックス粒子が均一に分散していることが確認できた。
3.保護層
3−1.硬化剤の調製
下地層用塗料の硬化剤で述べた手順で同じアクリルポリオール樹脂を調製した。
次いで、得られたアクリルポリオール樹脂溶液62質量部に、増粘剤(商品名:ディスパロン6820−20M、楠本化成(株)製、成分:脂肪酸アマイド)12質量部、消泡剤(商品名:フローレンAC−903HF、共栄社化学(株)製、主成分:ビニルエーテルポリマー)0.5質量部、ソルベッソ100 17.5質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8質量部を混合し、混合液をディゾルバーで1時間撹拌することにより、固形分37.3質量%、粘度7,000mPa・s(25℃)の透明塗料を調製した。
3−2.主剤の調製
下地層用塗料の主剤と同様にして主剤を調製した。
3−3.保護層の形成
使用時に、主剤/硬化剤を固形分比で23.4質量部/76.6質量部で混合したもの([NCO]/[OH]モル比=1.2)を保護層用の塗料とした(溶剤のソルベッソ100とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの質量比は、66.0:34.0)。この塗料を、主要コート層用塗料を塗布してから約16時間経過した時点で、ローラーで0.2kg/m主要コート層に塗布した。
[参考例]
特許文献21〜25、27及び28の実施例等には、種々のアクリルウレタン樹脂について、ウレタン防水材に対する接着性、耐侯性等の特性が確認されており、本発明の下地層、主要コート層及び保護層を構成する樹脂として有益であることが理解できる。
[実施例2]
溶剤として、ソルベッソ100及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる溶剤に代え、同量のキシレンを使用した以外は、実施例1と同様にして主要コート層用塗料を調整し、他の塗料については、実施例1と同様にして調製し、各塗料を実施例1と同様にして塗布した。
[実施例3]
白色塗料100質量部に、無機系の粒子で略球状の中空セラミックス(商品名:フィライトFG(52/7)、日本フィライト(株)製)を9.6質量部(下地層用塗料中12質量%(固形分換算値))配合して、硬化剤を調製したこと以外は実施例1と同様にして、下地層用塗料を調整した。主要コート層用塗料及び保護層用塗料は、実施例1と同様にして調製し、各塗料の塗布も実施例1と同様にして行った。
[実施例4]
白色塗料100質量部に、無機系の粒子で略球状の中空セラミックス(商品名:フィライトFG(52/7)、日本フィライト(株)製)を2.2質量部(下地層用塗料中3質量%(固形分換算値))配合して、硬化剤を調製したこと以外は実施例1と同様にして、下地層用塗料を調整した。主要コート層用塗料及び保護層用塗料は、実施例1と同様にして調製し、各塗料の塗布も実施例1と同様にして行った。
[実施例5]
フィライトFG(52/7)に代え、フィライトFG(52/7)同様、珪酸アルミを主成分とする粒径5〜150μmで平均粒径約84μmの略球状の中空セラミックス(商品名:フィライト200/7、日本フィライト(株)製)を白色塗料100質量部に9.6質量部(下地層用塗料中12質量%(固形分換算値))配合して硬化剤を調製したこと以外は実施例1と同様にして、下地層用塗料を調整した。主要コート層用塗料及び保護層用塗料は、実施例1と同様にして調製し、各塗料の塗布も実施例1と同様にして行った。
[比較例1]
フィライトFG(52/7)に代え、黒曜石からなる粒径300〜760μmの略球状の中空セラミックス(商品名:Fバルーン600、芙蓉パーライト(株)製)を白色塗料100質量部に9.6質量部(下地層用塗料中12質量%(固形分換算値))配合して、硬化剤を調製したこと以外は実施例1と同様にして、下地層用塗料を調整した。主要コート層用塗料及び保護層用塗料は、実施例1と同様にして調製し、各塗料の塗布も実施例1と同様にして行った。
[比較例2]
下地層を設けず、ウレタン防水材に直接主要コート層用塗料を塗布し、さらに保護層用塗料を塗布した。主要コート層用塗料及び保護層用塗料の調製は、実施例1と同様にして行い、各塗料の塗布も実施例1と同様に行った。
[比較例3]
透明塗料34.0質量部に、セラミックボールを66.0質量部(主要コート層用塗料中80質量%(固形分換算値)))を混練して、固形分78.7質量%の硬化剤を調製した。また、下地層を設けず、ウレタン防水材に直接主要コート層用塗料を塗布した。その他の点は、実施例1と同様にして各塗料を調製し、塗布した。
[比較例4]
フィライトFG(52/7)を加えずに硬化剤を調製したこと以外は実施例1と同様にして、下地層用塗料を調整した。主要コート層用塗料及び保護層用塗料は、実施例1と同様にして調製し、各塗料の塗布も実施例1と同様に行った。
[実施例6]
透明塗料34.0質量部に、セラミックボールを66.0質量部(主要コート層用塗料中80質量%(固形分換算値))を混練して、固形分78.7質量%の硬化剤を調製した。下地層用塗料及び保護層用塗料は、実施例1と同様にして調製し、各塗料の塗布も実施例1と同様にして行った。
[実施例7]
セラミックボールに代え、ほぼ粒径1000〜3000μm(若干この範囲外の粒子を含んでいた)の粒子からなり、非中空で略球状(真球度:1.25(若干真球度を測定不能な不定形粒子を含んでいたため、測定可能な粒子の中で長辺と短辺差の大きなものを選択した)の白色のセラミックス粒子(商品名:ダオラレック、日本セラウェイ(株)製)を配合して、硬化剤を調製したこと以外は実施例1と同様にして、主要コート層用塗料を調整した。下地層用塗料及び保護層用塗料は、実施例1と同様にして調製し、各塗料の塗布も実施例1と同様にして行った。
[実施例8]
セラミックボールに代え、球状若しくは楕円体状ではなく(外表面が殆ど曲面で構成されておらず真球度は測定不能)、粒径500〜1000μmの白色の不定形セラミックス粒子(商品名:セラサンド、美州興産(株)製)を同量配合して、硬化剤を調製したこと以外は実施例1と同様にして、主要コート層用塗料を調整した。下地層用塗料及び保護層用塗料は、実施例1と同様にして調製し、各塗料の塗布も実施例1と同様にして行った。
[実施例9]
セラミックボールに代え、球状若しくは楕円体状ではなく(外表面が殆ど曲面で構成されておらず真球度は測定不能)、不定形で粒径400〜1200μmの粒子が95質量%以上を占める(マイクロスコープにて確認したところこの範囲外の粒子が若干含まれていた)白色の焼成タイプのセラミックス粒子(商品名:カラーサンド、神東陶料(株)製)を同量配合して、硬化剤を調製したこと以外は実施例1と同様にして、主要コート層用塗料を調整した。下地層用塗料及び保護層用塗料は、実施例1と同様にして調製し、各塗料の塗布も実施例1と同様にして行った。
[評価]
各実施例及び比較例で得られた塗膜構造体を、以下のようにして評価した。
1.ウレタン防水材の伸縮に対する追従性
各実施例及び比較例で得られた塗膜構造体について、以下の試験によりウレタン防水材の伸縮に対する追従性を評価した。
評価は、耐湿潤冷熱繰返し性試験(JIS K 5600−7−4−1999)によって実施した。試験条件としては、サイクル試験条件を2に設定し、30サイクル行った。評価は、以下の2段階で行った。
○・・・塗膜構造体に、割れやはがれが認められない。
×・・・塗膜構造体に、割れやはがれが認められた。
評価結果は、表2に示す。
2.遮熱性
各実施例及び比較例の下地層用塗料(比較例2及び3を除く)及び主要コート層用塗料を、形成される塗膜の色がマンセル値N6付近に設定されるように調整し、形成された塗膜構造体について、以下の試験により遮熱性を評価した。
赤外線ランプ(使用ランプ:フォトリフレクタ500W、Toshiba製写真用ライト)を、主要コート層を形成する前の塗膜構造体(比較例2及び3の場合には、ウレタン防水材)と、主要コート層を形成した後の塗膜構造体とに照射し、下地層の表面温度上昇が平衡に達したときの温度と主要コート層の表面温度上昇が平衡に達したときの温度とを測定し両者の差を求め、その差に応じて、以下の3段階で評価した。
○・・・両温度間において10℃以上の温度差が認められた。
△・・・両温度間において5℃以上の温度差が認められた。
×・・・主両温度間において温度差が5℃未満であった。
評価結果は、表2に示す。
3.耐退色性
各実施例及び比較例で得られた塗膜構造体(但し、セラミックス粒子の色は以下の通り)について、以下の試験により耐久性を評価した。
評価試験は、JIS K 5600−7−7−1999の促進耐侯性試験(キセノンランプ法)に準拠して、キセノンウェザーメーター(スガ試験機(株)製、キセノンX75)を用いて実施した。キセノンウェザーメーターの試験条件としては、ブラックパネル温度を65℃として、キセノンランプで120分間照射中にイオン交換水の噴霧を18分間行う湿潤サイクルを選択し、1000時間暴露試験を実施し、マンセル値N6付近の色を有するセラミックス粒子から形成される暴露試験前の塗膜に対する試験後の塗膜の耐退色性を目視、及び色差にて、以下の2段階で評価した。
○・・・目視評価した結果から、退色は殆ど認められず、塗膜の初期に対する色差が3未満である。
×・・・目視評価した結果から、明らかに退色が認められ、塗膜の初期に対する色差が3以上である。
評価結果は、表2に示す。
4.ウレタン防水材に対する接着性
各実施例及び比較例において、ウレタン防水材上に形成した下地層若しくは主要コート層について、JIS K 5600−6−2−1999の耐水接着性試験(水浸漬法)を行い、ウレタン防水材に対する接着性について評価した。
評価は、以下の2段階で行った。
○・・・1ヶ月水に浸漬した後、ウレタン防水材との界面剥離は全く認められない。
×・・・1ヶ月水に浸漬した後、ウレタン防水材との界面剥離が認められた。
評価結果は、表2に示す。
5.主要コート層用塗料の施工性
各実施例及び比較例において、主要コート層用塗料をコテ又はヘラで塗布した際に、その施工容易性を以下の3段階で評価した。
○・・・コテまたはヘラでの材料配りが良好で施工が容易。
△・・・材料配りしている間に塗料粘度が高くなり塗布の最中に施工性が低下した。或いは、コテ又はヘラが下地層表面の凸部にひっかかり円滑に操作し難かった。
×・・・材料配りができず、一定の厚さで塗膜を形成するのが困難。
評価結果は、表2に示す。
6.主要コート層用塗料中のセラミックス粒子の分散性(仕上がり性)
各実施例及び比較例において、主要コート層用塗料をコテ又はヘラで塗布した際に、セラミックス粒子が均一に分配されるかについて以下の3段階で評価した。
○・・・セラミックス粒子を容易に均一に分配することができる。
△・・・セラミックス粒子が一部に寄り易い傾向が見られ、セラミックス粒子を均一に分配することが容易ではない。
×・・・セラミックス粒子が一部に寄り集まり、セラミックス粒子を均一に分配することができなかった。
評価結果は、表2に示す。
7.塗膜強度
主要コート層が形成された時点並びに保護層が形成された時点で、実施例及び比較例で得られた塗膜構造体の強度を評価した。
評価試験は、JIS K 5600−5−3−1999の耐おもり落下性試験(落球式)によって行った。試験条件としては、質量300.0±0.5gの鋼球を用い、50cmの高さから落下させた後の、塗膜の外観を目視にて評価した。
評価は、以下の3段階で行った。
○・・・主要コート層が形成された時点で鋼球による衝撃を加えても塗膜が破壊されなかった。
×・・・保護層が形成された時点で、鋼球による衝撃を加えると、塗膜が破壊された。
評価結果は、表2に示す。
8.主要コート層用塗料に含有するセラミックス粒子の欠落
主要コート層が形成された時点並びに保護層が形成された時点で、非中空セラミックス粒子の欠落を評価した。
評価試験は、床の滑り試験方法(振子形)(JIS A 1407−1994)に準拠して行った。試験条件としては、滑り衝撃試験機(滑り片として硬質ゴム系の靴底を使用)を用い、振子を振り下ろして、塗膜表面と接触した後のセラミックス粒子の欠落を肉眼で確認することによって実施した。
評価は、以下の3段階で行った。
○・・・主要コート層が形成された時点でセラミックス粒子は欠落しなかった。
△・・・主要コート層が形成された時点で、数個のセラミックス粒子の欠落が認められたが、保護層が形成された時点では、セラミックス粒子は欠落しなかった。
×・・・保護層が形成された時点でも、セラミックス粒子が欠落した。
評価結果は、表2に示す。
1 主要コート層用塗料
2 セラミックス粒子
3 下地層
3’ 凸部
4 粒子

Claims (26)

  1. アクリルウレタン樹脂塗料組成物からなる下地層用塗料と、セラミックス粒子を含有するアクリルウレタン樹脂塗料組成物からなる主要コート層用塗料とを含む、ウレタン防水材用の塗料のセットであって、
    該主要コート層用塗料が、該セラミックス粒子を40質量%から80質量%(固形分換算値による)含有する、塗料セット
  2. 前記下地層用塗料が、1μm〜500μmの粒径(JIS K 0069−1992によるふるい分け試験法)を有する粒子を1質量%から15質量%(固形分換算値による)含有する、請求項に記載の塗料セット
  3. アクリルウレタン樹脂塗料組成物からなる下地層用塗料と、セラミックス粒子を含有するアクリルウレタン樹脂塗料組成物からなる主要コート層用塗料とを含む、ウレタン防水材用の塗料のセットであって、
    該下地層用塗料が、1μm〜500μmの粒径(JIS K 0069 −1992 によるふるい分け試験法)を有する粒子を1質量%から15質量%(固形分換算値による)含有する、塗料セット。
  4. 前記下地層用塗料が、前記粒子を3質量%から12質量%(固形分換算値による)含有する、請求項2又は3に記載の塗料セット
  5. 前記下地層用塗料に含有される粒子中、粒径40〜300μmの粒子が80質量%以上を占める、請求項2から4の何れか1項に記載の塗料セット
  6. 前記粒子の平均粒径が、60〜200μmである、請求項に記載の塗料セット
  7. 前記下地層用塗料に含有される粒子の90質量%以上が、球状若しくは楕円体状の形状を有する、請求項から6の何れか1項に記載の塗料セット
  8. 前記主要コート層用塗料に含有されるセラミックス粒子が、球状若しくは楕円体状の形状を有する、請求項1から7の何れか1項に記載の塗料セット
  9. 前記主要コート層用塗料に含有されるセラミックス粒子が、有色であり、前記下地層用塗料が、該セラミックス粒子が有する色に対して保護色となる色を付与する顔料若しくは色素を含む、請求項1から8の何れか1項に記載の塗料セット
  10. 更にアクリルウレタン樹脂塗料組成物からなる保護層用塗料を含む、請求項1から9の何れか1項に記載の塗料セット
  11. ウレタン防水材上に形成されたアクリルウレタン樹脂からなる下地層上に主要コート層を形成するための塗料であって、
    40質量%から80質量%(固形分換算値による)のセラミックス粒子を含有するアクリルウレタン樹脂塗料組成物からなる塗料。
  12. ウレタン防水材上に形成され、セラミックス粒子を含有するアクリルウレタン樹脂からなる主要コート層の直下に形成される下地層用の塗料であって、
    1μm〜500μmの粒径(JIS K 0069 −1992 によるふるい分け試験法)を有する粒子を1質量%から15質量%(固形分換算値による)含有するアクリルウレタン樹脂塗料組成物からなる、下地層用塗料。
  13. ウレタン防水材に、アクリルウレタン樹脂塗料組成物を塗布して下地層を形成する工程と、40質量%から80質量%(固形分換算値による)のセラミックス粒子を含有するアクリルウレタン樹脂塗料組成物を該下地層に塗布して主要コート層を形成する工程とを含む、ウレタン防水材にセラミックス粒子含有塗膜を形成する方法。
  14. 前記下地層を形成するための塗料組成物に、1μm〜500μmの粒径(JIS K 0069 −1992 によるふるい分け試験法)を有する粒子を1質量%から15質量%(固形分換算値による)含有させ、該粒子の少なくとも一部に起因する凸部を該下地層表面に形成しておき、前記主要コート層用塗料を、塗布面に対して平行の接触端又は接触面を有する塗工具で引き延ばしながら塗布する、請求項13に記載の方法。
  15. ウレタン防水材に、アクリルウレタン樹脂塗料組成物を塗布して下地層を形成する工程と、セラミックス粒子を含有するアクリルウレタン樹脂塗料組成物を塗布して主要コート層を形成する工程とを含む、ウレタン防水材にセラミックス粒子含有塗膜を形成する方法であって、
    該下地層を形成するための塗料組成物に、1μm〜500μmの粒径(JIS K 0069 −1992 によるふるい分け試験法)を有する粒子を1質量%から15質量%(固形分換算値による)含有させ、該粒子の少なくとも一部に起因する凸部を該下地層表面に形成しておき、前記主要コート層用塗料を、塗布面に対して平行の接触端又は接触面を有する塗工具で引き延ばしながら塗布する、方法。
  16. 前記下地層用塗料組成物が、前記粒子を3質量%から12質量%(固形分換算値による)含有する、請求項14又は15に記載の方法。
  17. 前記下地層用塗料に含有される粒子中粒径40〜300μmの粒子が80質量%以上を占める、請求項14から16の何れか1項に記載の方法。
  18. 前記粒子の平均粒径が、60〜200μmである、請求項17に記載の方法。
  19. 前記下地層用塗料に含有される粒子の90質量%以上が、球状若しくは楕円体状の形状を有する、請求項14から18の何れか1項に記載の方法。
  20. 前記主要コート層用塗料に含有されるセラミックス粒子が、球状若しくは楕円体状の形状を有する、請求項14から19の何れか1項に記載の方法。
  21. 前記主要コート層を形成した後、該主要コート層に、アクリルウレタン樹脂塗料組成物を塗布して保護層を形成する工程を含む、請求項13から20の何れか1項に記載の方法。
  22. 前記下地層を形成する工程の前に、ウレタン樹脂塗料組成物を塗布してプライマー層を形成する工程を含む、請求項13から21の何れか1項に記載の方法。
  23. ウレタン防水材上に、アクリルポリウレタン樹脂を有機塗膜成分とする下地層と、アクリルポリウレタン樹脂を有機塗膜成分とし、且つセラミックス粒子を40質量%から80質量%(固形分換算値による)含有する主要コート層とを有する塗膜構造。
  24. 前記下地層が、1μm〜500μmの粒径(JIS K 0069 −1992 によるふるい分け試験法)を有する粒子を1質量%から15質量%(固形分換算値による)含有し、該粒子により該下地層の表面に凸部が形成されている、請求項23に記載の塗膜構造。
  25. 前記下地層表面に、5個/2mm×2mmから75個/2mm×2mmの密度で凸部が形成されている、請求項24に記載の塗膜構造。
  26. ウレタン防水材上に、アクリルポリウレタン樹脂を有機塗膜成分とする下地層と、アクリルポリウレタン樹脂を有機塗膜成分とし、且つセラミックス粒子を含有する主要コート層とを有する塗膜構造であって、
    該下地層が、1μm〜500μmの粒径(JIS K 0069 −1992 によるふるい分け試験法)を有する粒子を1質量%から15質量%(固形分換算値による)含有し、該粒子により該下地層の表面に5個/2mm×2mmから75個/2mm×2mmの密度で凸部が形成されている、塗膜構造。
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