JP5027424B2 - 新規な芳香族エーテル化合物と光重合開始剤 - Google Patents
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最近になって基本骨格に、窒素、ホウ素、硫黄、リン、および金属を含まないエーテル化合物よりなる光開始剤が報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。しかし、この光重合開始剤は、ナフチル基上にシアノ基を有し、これによる生成重合体の汚染、品質悪化は避けられず、また、これを用いた光カチオン重合反応による重合体の収率は不十分であった。
(1) 下記一般式(I)で表される芳香族エーテル化合物、
一般式(I)
(2) 前記(1)に記載の一般式(I)で表される芳香族エーテル化合物よりなる光重合開始剤、及び
(3) Ar2OHとAr1C(R1R2)Xとを反応させることを特徴とする(1)に記載の一般式(I)で表される芳香族エーテル化合物の製造方法(式中Ar1、Ar2、R1及びR2は前記と同じ意味を持つ。Xはハロゲン原子、水酸基又は−SO3Qで表される基(ここで、Qは置換されていてもよい1価の炭化水素基を示す。)を示す。)
を提供するものである。
本発明によれば上記のような優れた性質を有する芳香族エーテル化合物を好収率で製造できる。
上記一般式(I)において、好ましくは、Ar1は置換されていてもよく、かつ2以上10以下のベンゼン環が縮環した芳香族炭化水素基を表す。Ar2は置換されていてもよい3以上10以下のベンゼン環が縮環した芳香族炭化水素基を表す。ただし、十分な溶解性を保つためにAr1は、好ましくは5以下、さらに好ましくは2つのベンゼン環が縮環した芳香族炭化水素基であり、Ar2は好ましくは5以下、さらに好ましくは3つのベンゼン環が縮環した芳香族炭化水素基である。R1およびR2は水素原子または炭化水素基を表す。
Ar1の置換されていてもよいベンゼン環が縮環した芳香族炭化水素基については、好ましくはナフタレンの1、2、3、4、5、6、7、8位の炭素原子の1つの上の、水素原子を1つ取り除くことにより示される基であり、より好ましくはナフタレンの1、2、4、5位の炭素原子の1つの上の水素原子を1つ結合する取り除くことにより示される基であり、さらに好ましくは、ナフタレンの炭素原子1つから水素原子を1つ取り除くことにより示される基である。Ar2の置換されていてもよいベンゼン環が縮環した芳香族炭化水素基については、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8位の炭素原子1つから水素原子を1つ取り除くことにより示される基であり、より好ましくは1、2、4、5位の炭素原子1つから結合する水素原子を1つ取り除くことにより示される基であり、さらに好ましくは、1の炭素原子1つから結合水素原子を1つ取り除くことにより示される基である。
アルコキシ基、アラルキロキシ基、アリーロキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピロキシ基、iso−プロピロキシ基、シクロプロピロキシ基、n−ブチロキシ基、iso−ブチロキシ基、t−ブチロキシ基、シクロブチロキシ基、ペンチロキシ基、iso−ペンチロキシ基、neo−ペンチロキシ基、シクロペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、シクロヘキシロキシ基、メチルシクロヘキシロキシ基、シクロヘキセニロキシ基、シクロヘキサジエニロキシ基、メンチロキシ基、ピナニロキシ基、ビシクロヘプチロキシ(ノルボニロキシ)基、オクチロキシ基、ノニロキシ基、デシロキシ基、ウンデシロキシ基、ドデシロキシ基、1-フェニルエトキシ基、2-フェニルエチロキシ基、2−メチルフェニロキシ基、3−メチルフェニロキシ基、4−メチルフェニロキシ基、ベンジロキシ基、フェニロキシ基、キシリロキシ基、メシチロキシ基、クミロキシ基、1−ナフチロキシ基、2−ナフチロキシ基等が挙げられる。アルキル基の例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、メンチル基、ピナニル基、ビシクロヘプチル(ノルボニル)基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられる。アラルキル基又はアリールの例としては、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、ベンジル基、フェニル基、キシリル基、メシチル基、クミル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。アルキロキシカルボニル基、アルキルカルボニロキシ基、アルキルカルボニル基としては、前述のアルキル基にそれぞれオキシカルボニル基、カルボニロキシ基、カルボニル基が結合した基が挙げられる。
Ar1およびAr2のベンゼン環が縮環した芳香族炭化水素基の置換基として好ましくはアルコキシ基、アラルキロキシ基又はアリーロキシ基であり、より好ましくはアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基である。
R1およびR2として好ましくは水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
前記のXは、ハロゲン原子、水酸基又は−SO3Qで表される基(ここで、Qは置換されていてもよい1価の炭化水素基を表す。)である。Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。−SO3Qで表される基中のQで表される1価の炭化水素基としては、前記R1およびR2で表される1価の炭化水素基の具体例及び好ましい例が挙げられる。このQで表される1価の炭化水素基は、置換されていてもよく、その置換基としては、例えば、フッ素原子が挙げられる。−SO3Qで表される基の好ましい具体例としては、メタンスルフォネート基、ベンゼンスルフォネート基、p−トルエンスルフォネート基、トリフルオロメタンスルフォネート基が挙げられる。
Xは、好ましくはハロゲン原子、−SO3Qで表される基であり、より好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、−SO3Qで表される基であり、さらに好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルフォネート基であり、特に好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
対応するAr2OHをアルゴンガス雰囲気下で、N,N-ジメチルホルムアミド、クロロホルム等の溶媒に溶かし、冷却しながら等モル量以上の水素化ナトリウムを少しずつ加え水素ガスが発生しなくなるまで撹拌する。次いで、Ar1C(R1R2)X(Xは上記のようにハロゲン原子等。)の等モル量をN,N-ジメチルホルムアミド、クロロホルム等の溶媒に溶かし加え、反応が終了するまで撹拌する。反応が進行しないようなら還流させる。反応終了後、脱イオン水で洗浄し適切な溶媒で抽出を行う。無水硫酸マグネシウム等で乾燥させた後、減圧下で濃縮すると粗結晶が得られる。シリカゲルカラムおよび再結晶等により精製を行う。
下記化合物1〜4を以下に述べるようにして合成した。
(i)1-(4-メトキシベンジルオキシ)アントラセン(化合物1)(比較化合物)の合成
1-ヒドロキシアントラセン(Tetrahedron Lett. 44, 1215-1219(2003)参照。)0.50 g(2.59 mmol)をアルゴンガス雰囲気下でN,N-ジメチルホルムアミド10mlに溶かし、氷冷しながら水素化ナトリウム(純度60%)0.15 g(3.89 mmol)を少量ずつ加え、水素ガスが発生しなくなるまで撹拌した。次いで、4-メトキシベンジルクロリド0.41 g(2.59 mmol)を加え、室温で約2時間撹拌を行った。攪拌終了後、脱イオン水 200 ml(50 ml×4回)で洗浄し、酢酸エチル75 ml(25 ml×3回)で抽出を行った。無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮し粗結晶を得た。シリカゲルカラム(展開溶媒:クロロホルム)により予備精製を行なった後、酢酸エチルを用いた再結晶により精製した。収量:0.59 g 収率:73.4 %
以下の試験結果より上記の化合物1であることを確認した。
<1>1H-NMR (ppm/600MHz, CDCl3)3.85 (3H,s), 5.23 (2H, s), 6.81 (1H, d), 7.00 (2H, d), 7.35 (1H, dd) , 7.44 (2H, m), 7.51 (2H, d), 7.59 (1H, d), 7.98 (1H, d), 8.02 (1H, d), 8.37 (1H, s), 8.87 (1H, s)
<2>13C-NMR (ppm/150MHz, CDCl3)68.9, 103.0, 120.9, 121.3, 123.9, 125.1, 125.2, 125.6, 126.0, 126.5, 126.7, 127.8, 128.7, 128.8, 129.1, 131.2, 131.8, 132.4, 132.7, 133.8, 154.7.
<3>IR(cm-1/KBr):1248(C‐O)
<4>融点:108.0-109.0℃
1-ヒドロキシアントラセン(Tetrahedron Lett. 44, 1215-1219(2003)参照。)0.45 g(2.33 mmol)をアルゴンガス雰囲気下でN,N-ジメチルホルムアミド10mlに溶かし、氷冷しながら水素化ナトリウム(純度60%)0.14g(3.50mmol)を少量ずつ加え、水素ガスが発生しなくなるまで撹拌した。次いで、1-クロロメチル-ナフタレン0.38g(2.33mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド1 mlに溶かし加え、室温で約3 h撹拌を行った。攪拌終了後、脱イオン水200ml(50ml×4回)で洗浄し、酢酸エチル75 ml(25 ml×3回)で抽出を行った。無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮し粗結晶を得た。シリカゲルカラム(展開溶媒:クロロホルム)により予備精製を行なった後、酢酸エチルを用いた再結晶により精製した。
以下のデータより目的とする芳香族エーテル化合物(化合物2)であることを同定した。収量:0.56g、収率:71.8%
<1>1H-NMR (ppm/600MHz, CDCl3) 5.75(2H, s), 6.98 (1H, d), 7.25−7.45 (3H, m), 7.53−7.56 (3H, m), 7.64 (1H, d), 7.76 (1H, d), 7.92−7.98 (4H, m), 8.18(1H, d), 8.39(1H, s), 8.82 (1H, s)
<2>13C-NMR (ppm/150MHz, CDCl3) 68.9, 103.0, 120.9, 121.3, 123.9, 125.1, 125.2, 125.4, 125.7(2C), 126.0, 126.5, 126.7, 127.8, 128.7, 128.8, 129.1, 131.2, 131.8, 132.0, 132.4, 132.7, 133.8, 154.7.
<3>IR(cm-1/KBr):1260(C‐O)
<4>元素分析 (C25H18O) 計算値C(89.79%)、H(5.43%)/ 測定値C(89.89%)、H(5.87%)
<5>融点:129.2−130.0℃
1-ヒドロキシアントラセン(Tetrahedron Lett. 44, 1215-1219(2003)参照。)0.30g(1.55mmol)をアルゴンガス雰囲気下でN,N-ジメチルホルムアミド10mlに溶かし、氷冷しながら水素化ナトリウム(純度60%)0.09g(2.3mmol)を少量ずつ加え、水素ガスが発生しなくなるまで撹拌した。次いで、1-クロロメチル-2-メチルナフタレン0.29g(1.55mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド1 mlに溶かし加え、室温で約3時間撹拌を行った。攪拌終了後、脱イオン水 200 ml(50 ml×4回)で洗浄し、酢酸エチル75ml(25ml×3回)で抽出を行った。無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮し粗結晶を得た。シリカゲルカラム(展開溶媒:クロロホルム)により予備精製を行なった後、酢酸エチルを用いた再結晶により精製した。収量:0.35g 収率:64.8 %
以下のデータより目的とする芳香族エーテル化合物であることを同定した。
<1>1H-NMR (ppm/600MHz, CDCl3) 2.70 (3H,s), 5.71 (2H, s), 7.08 (1H, d), 7.36 (1H, d), 7.40−7.48 (5H, m) , 7.66 (1H, d), 7.84−7.96 (4H, m), 8.15(1H, d), 8.38(1H, s), 8.68 (1H, s)
<2>13C-NMR (ppm/150MHz, CDCl3) 64.0, 102.6, 120.8, 121.4, 123.8, 125.0, 125.1, 125.3, 125.5, 125.6, 126.7(2C), 127.8, 128.4, 128.8, 129.1, 129.1, 129.2, 131.2, 132.0, 132.5, 132.7, 133.2, 136.1, 155.2.
<3>IR(cm-1/KBr):1257(C‐O)
<4>元素分析 (C26H20O) 計算値C(89.62%)、H(5.79%)/ 測定値C(89.19%)、H(5.88%)
<5>融点:180.5-181.7℃
1-ヒドロキシアントラセン(Tetrahedron Lett. 44, 1215-1219(2003)参照。)0.40g(2.07mmol)をアルゴンガス雰囲気下でN,N-ジメチルホルムアミド10mlに溶かし、氷冷しながら水素化ナトリウム(純度60%)0.12g(3.10mmol)を少量ずつ加え、水素ガスが発生しなくなるまで撹拌した。次いで、1-クロロメチル-2-メトキシナフタレン0.42g(2.07mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド1 mlに溶かし加え、室温で約3時間撹拌を行った。攪拌終了後、脱イオン水200 ml(50ml×4回)で洗浄し、酢酸エチル75ml(25ml×3回)で抽出を行った。無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮し粗結晶を得た。シリカゲルカラム(展開溶媒:クロロホルム)により予備精製を行なった後、酢酸エチルを用いた再結晶により精製した。収量:0.66 g 収率:65 %
以下のデータより目的とする芳香族エーテル化合物であることを同定した。
<1>1H-NMR (ppm/600MHz, CDCl3) 4.01 (3H, s), 5.80 (2H, s), 7.11 (1H, d), 7.33−7.48 (6H, m) , 7.61 (1H, d), 7.85−7.96 (4H, m), 8.15(1H, d), 8.38(1H, s), 8.68 (1H, s)
<2>13C-NMR (ppm/150MHz, CDCl3) 56.9, 61.2, 102.9, 113.4, 117.2, 120.5, 121.5, 123.5, 123.8, 123.9, 124.9, 125.3, 125.4, 125.4, 125.5, 127.1, 127.8, 128.3, 128.8, 129.2, 130.9, 131.9, 132.7, 134.1, 155.6.
<3>IR(cm-1/KBr):1257(C‐O)
<4>元素分析 (C22H18O2) 計算値C(85.20%)、H(5.51%)/ 測定値C(85.69%)、H(5.53%)
<5>融点:144.0-145.2℃
(v)化合物1〜4を用いたシクロヘキセンオキシドの光重合
実施例1の(i)〜(iv)で合成した化合物1〜4を、蒸留精製したシクロヘキセンオキシドに0.2mol%で加え、コック付き反応管内で凍結-脱気-融解を三回繰り返した後に60℃で撹拌しながら、500W超高圧水銀灯からの340nmよりも長波長の光(3.0mW cm-2)を8時間または16時間照射した。反応を下記反応式で示した。照射後、反応液をメタノールに注ぎ生成高分子を沈殿させ、ろ過および真空乾燥(40℃)させてポリ(シクロヘキセンオキシド)を得た。重合結果を表1に示す。
Claims (3)
- 下記一般式(I)で表される芳香族エーテル化合物。
一般式(I)
Ar1及びAr2は炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素原子数7〜11のアラルキロキシ基、炭素原子数6〜10のアリーロキシ基及び炭素原子数1〜12のアルキル基から選ばれる置換基を有してもよい。R1およびR2は水素原子、または、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素原子数7〜11のアラルキロキシ基、炭素原子数6〜10のアリーロキシ基及び炭素原子数1〜12のアルキル基から選ばれる置換基を有してもよい炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。) - 請求項1に記載の芳香族エーテル化合物よりなる光重合開始剤。
- Ar2OHとAr1C(R1R2)Xとを反応させることを特徴とする請求項1に記載の芳香族エーテル化合物の製造方法(式中Ar1、Ar2、R1及びR2は前記と同じ意味を持つ。Xはハロゲン原子、水酸基又は−SO3Qで表される基(ここで、Qはフッ素原子を置換基として有してもよい1価の炭化水素基を示す。)を示す。)。
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