JP5027022B2 - 圧着端子および圧着端子コネクタ - Google Patents

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本発明は、被覆電線の絶縁被覆を剥いで露出させた電線導体(芯線)と圧着接続される圧着端子および圧着端子コネクタに関する。
従来、このような圧着端子として、例えば、特許文献1に開示された技術がある。この従来技術では、電線導体を載置する底板部と、底板部の両側に延出されて電線導体に加締め付けられる一対の加締め爪とを備え、底板部の内面に、電線導体の軸線と交差する方向に延在する複数本の溝(セレーション)が形成されている。複数本の溝は、加締め爪が加締め付けられたとき、溝の縁が電線導体に食い込むようになっている。
このような複数本の溝を有する従来の圧着端子では、溝の縁を電線導体に食い込ませ、或いは、電線導体を溝に埋め込ませる(電線導体を塑性変形させる)ことにより、
(1)長期間にわたって抵抗変化の少ない安定した電気的特性と、
(2)(電線導体を溝の縁で塑性変形させた金属間結合により)圧着強度の大きな機械的特性と、を得ることができるようにしている。
そのため、導体係止溝(セレーション)を有する従来の圧着端子では、電線導体として銅電線が使用され、圧着端子は銅電線より硬い(ヤング率が電線より高い)材質を用いている。
特開2003−31274号公報
ところで、上記圧着端子に圧着される芯線は、軽量化及び細径化を図るために、圧着端子と同等或いはそれより高いヤング率を有する銅合金線などの硬い合金線を使用するのが望まれている。ところが、上記従来技術のように、溝の縁を電線導体に食い込ませる等、電線導体を塑性変形させる圧着方式の圧着端子では、電線導体(芯線)として銅合金線など、圧着端子と同等或いはそれより硬い合金線を用いた場合、芯線が溝の縁に過度に押し付けられて、芯線が細くなり、圧着強度が極端に低下してしまう。その結果、抵抗変化の少ない安定した電気的特性や圧着強度の大きい安定した機械的特性を長期間にわたって保持できないという問題があった。
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたもので、その目的は、銅合金線を圧着する端子であって、安定した電気的特性と圧着強度の大きい安定した機械的特性を長期間にわたって保持できるようにした圧着端子および圧着端子コネクタを提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る圧着端子は、被覆電線の芯線である合金線が載置される底板部と、該底板部の両側から延出し加締めにより前記合金線を圧着する左右の加締め部とを備え、前記合金線と同じ或いはそれより小さいヤング率を有する材料からなる圧着端子であって、前記底板部の内面に、該底板部に載置される前記合金線と交差する方向に延びる溝が形成されており、前記溝は、前記左右の加締め部を前記合金線に加締め付けた状態で、前記合金線が前記溝内で弾性変形し該溝の底面に圧接するのを許容する深さに設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、芯線として圧着端子と同じヤング率或いはそれより高いヤング率を有する合金線を用い、左右の加締め部を芯線である合金線に加締め付けた状態で、合金線の、合金線と交差する方向に延びる溝を跨る部分が、溝の幅方向両側の縁(エッジ)で支持された両端支持梁となり、この両端支持梁が弾性変形して溝の底面に圧接する。この両端支持梁がばね性を保持し、この両端支持梁のばねが、加締め部に機械的な応力を与えることで、安定した電気的特性が得られる。また、合金線の両端支持梁となった部分がばね性を保持し、合金線に対する押し付け力を適正に保持できるので、圧着強度の大きい安定した機械的特性が得られる。
従って、圧着端子と同じヤング率或いはそれより高いヤング率を有する合金線を圧着する端子であって、安定した電気的特性と圧着強度の大きい安定した機械的特性を長期間にわたって保持できる圧着端子が得られる。
請求項2に記載の発明に係る圧着端子は、前記左右の加締め部の内面には、前記芯線の前記溝を跨る部分の中央部を押圧するボスが設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、左右の加締め部を圧着端子と同じヤング率或いはそれより高いヤング率を有する芯線である合金線に加締め付けた状態で、合金線の、合金線と交差する方向に延びる溝を跨る部分が、その中央部がボスで押圧されることで、溝の幅方向両側の縁(エッジ)で支持された両端支持梁となり、この両端支持梁が弾性変形して溝の底面に圧接する。この両端支持梁がばね性を保持し、この両端支持梁のばねが、加締め部に機械的な応力を与えることで、安定した電気的特性が得られる。また、合金線の両端支持梁となった部分がばね性を保持し、合金線に対する押し付け力を適正に保持できるので、圧着強度の大きい安定した機械的特性が得られる。
請求項3に記載の発明に係る圧着端子は、前記溝は、1個又は2個設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明に係る圧着端子は、前記溝の深さは、前記合金線の直径の35%以下であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明に係る圧着端子は、前記合金線は、銅を主成分とする銅合金であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明に係る圧着端子コネクタは、芯線を圧着方式により圧着端子に取り付ける圧着端子コネクタにおいて、前記圧着端子と同じヤング率或いはそれより高いヤング率を有する前記芯線と、被覆電線の前記芯線が載置される底板部と、該底板部の両側から延出し加締めにより前記芯線を圧着する左右の加締め部と、前記底板部の内面に該底板部に載置される前記芯線と交差する方向に延びる溝とを有する前期圧着端子とを備え、
前記左右の加締め部を前記芯線に加締め付けた状態で、前記芯線が前記溝内で弾性変形し該溝の底面に圧接することを特徴とする。
本発明によれば、銅合金線を圧着する端子であって、安定した電気的特性と圧着強度の大きい安定した機械的特性を長期間にわたって保持できる圧着端子および圧着端子コネクタを得ることができる。
次に、本発明を具体化した一実施形態を図1乃至図6に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る圧着端子10を示す展開図である。図2は図1のX−X線に沿った断面図である。図3は複数の芯線を圧着した状態を示す横断面図である。図4は、芯線を圧着した状態における芯線と溝が交差する部分を、溝の幅方向(芯線の軸線方向)に切断した断面図である。図5は、溝の数と溝の深さをそれぞれ変えて行った熱ストレス試験前と熱ストレス試験後での引張試験の結果を示すグラフである。
圧着端子10は、図1に示すように、被覆電線20の絶縁被覆部21を剥いで露出させた芯線(電線導体)22を圧着するための端子である。この被覆電線20は、複数本の(例えば、7本の)芯線22を有している。これらの芯線22として、ヤング率が100GPaから135GPaの銅を主成分とする銅合金線が使用されている。一方、圧着端子10は、芯線22と同じヤング率か、それより低いヤング率を有する金属板である。
圧着端子10は、被覆電線20の絶縁被覆部21を保持するインシュレーションバレル11と、複数本の芯線22を圧着するワイヤバレル12とを備える。このワイヤバレル12は、被覆電線20の芯線22が載置される底板部13と、底板部13の両側から延出し加締めにより複数本の芯線22を圧着する左右の加締め部14,15とを備えている。
底板部13の内面には、底板部13に載置される複数本の芯線22と交差する方向に延びる2つの矩形状の溝31,32が形成されている。以下の説明において、各溝31,32についての「溝の幅B」は、図1および図4に示すように、芯線22の軸線方向における各溝31,32の両側の縁(エッジ)31a,32a間の距離である。また、各溝31,32についての「溝の長さC」は、図1および図2に示すように、芯線22の軸線と交差する方向における両側の縁(エッジ)間の距離である。
溝31,32は、左右の加締め部14,15を複数本の芯線22に加締め付けた状態(図3参照)で、図4に示すように複数本の芯線22が溝31,32内でそれぞれ弾性変形し、各溝31,32の底面に圧接するのを許容する深さAにそれぞれ設定されている。
また、左右の加締め部14,15の内面には、図1および図2に示すように、複数の(本実施形態では4つの)ボス16が形成されている。これら4つのボス16は、左右の加締め部14,15を複数本の芯線22に加締め付けた状態(図3参照)で、図4に示すように各芯線22の溝31,32を跨る部分22aの中央部を押圧する位置にそれぞれ設けられている。そして、左右の加締め部14,15の外面にある複数の凹部17は、複数のボス16をプレス加工した際にできる凹部である。
このような構成を有する圧着端子10で被覆電線20の複数本の芯線22を圧着する場合には、まず、図1に示すように展開した形状の圧着端子10のインシュレーションバレル11の内面上に被覆電線20の絶縁被覆部21を、ワイヤバレル12の底板部13の内面上に複数本の芯線22をそれぞれ載置する。
次に、インシュレーションバレル11を加締めてその内面を絶縁被覆部21に圧着させると共に、ワイヤバレル12の左右の加締め部14,15を複数本の芯線22に加締める。
左右の加締め部14,15を銅合金線である複数本の芯線22に加締め付けた状態では、複数本の(ここでは7本の)芯線22が図3に示すように配置で保持される。このような加締め付けた状態では、図4に示すように、各芯線22の、各芯線22と交差する方向に延びる溝31,32を跨る部分22aが、その中央部をボス16で押圧されることで、各溝31,32の幅方向両側の縁31a,32aでそれぞれ支持された両端支持梁となる。この両端支持梁となる部分22aが弾性変形して各溝31,32の底面に圧接する。この両端支持梁となる部分22aがばね性を保持し、この部分22aのばねが、左右の加締め部14,15に機械的な応力を与える。つまり、両端支持梁となる部分22aが各溝31,32の底面から反力を受けることで、両端支持梁となる部分22aのばね性(ばね力)により、左右の加締め部14,15に図4の矢印40で示す機械的な応力を与える。これにより、長期間にわたり抵抗変化の少ない安定した電気的特性が得られるようになっている。
また、各芯線22の両端支持梁となった部分22aがばね性を保持し、各芯線22に対する押し付け力を適正に保持できる。これにより、長期間にわたり圧着強度の大きい安定した機械的特性が得られるようになっている。
さらに、圧着端子10の溝31,32の深さA(図4参照)は、銅合金線である各芯線22の直径の15%〜35%程度が好ましい。溝31,32の幅B(図1、図4参照)は、例えば、各芯線22の直径の1倍〜2.5倍程度が好ましい。また、溝31,32の長さC(図1、図2参照)は、例えば、ワイヤバレル12の展開長Eの45%〜75%程度が好ましい。
以上のように構成された一実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○左右の加締め部14,15を銅合金線である複数本の芯線22に加締め付けた状態で、各芯線22の、各芯線22と交差する方向に延びる溝31,32を跨る部分22aが、その中央部をボス16で押圧されることで、各溝31,32の幅方向両側の縁31a,32aでそれぞれ支持された両端支持梁となる。この両端支持梁となる部分22aが弾性変形して各溝31,32の底面に圧接する。これにより、各芯線22の両端支持梁となる部分22aがばね性を保持し、この部分22aのばねが、左右の加締め部14,15に機械的な応力を与えることで、安定した電気的特性が得られる。
○各芯線22の両端支持梁となった部分22aがばね性を保持し、各芯線22に対する押し付け力を適正に保持できるので、圧着強度の大きい安定した機械的特性が得られる。
○従って、銅合金線を圧着する端子であって、安定した電気的特性と圧着強度の大きい安定した機械的特性を長期間にわたって保持できる圧着端子10を得ることができる。
○図5は、一実施形態に係る圧着端子10について、溝(溝31,32)の数と溝の深さA(図4)をそれぞれ変えて行った熱ストレス試験前と熱ストレス試験後での引張試験の結果を示す。図5では、溝の数を「1」〜「3」に変えた場合における熱ストレス試験前と熱ストレス試験後での引張試験の結果と、溝の深さAを変えた場合における熱ストレス試験前と熱ストレス試験後での引張試験の結果とを示している。図5では、溝の深さAを、深さ1(銅合金線である芯線22の直径の30%)、深さ2(芯線22の直径の45%)および深さ3(芯線22の直径の60%)にそれぞれ変えた場合を示している。
また、図5の実線で示す熱ストレス試験後の各データは、120℃で30分保持するステップと−40℃で30分保持するステップとを1サイクルとして240サイクルのストレスを圧着端子10に掛けた後での引張試験の結果をそれぞれ示している。
○芯線は、直径が110μm程度の銅合金線を用い、また、圧着端子はその材料が黄銅でヤング率96GPa程度のものを用いて、引張試験を行なった。
○芯線22として、圧着端子10の金属板よりも硬い(ヤング率が高い)銅合金線を使用するので、被覆電線20の各芯線22の軽量化及び細径化を図ることができる。
図5から、溝31,32の数を、「1」或いは「2」にした場合(数1,2の場合)には、大きな引張強度(N)が得られているのに対し、その数を「3」にした場合(数3の場合)には、「1」或いは「2」にした場合よりも引張強度が弱くなることが分かる。これらの結果から、溝31,32の数は、「1」或いは「2」であるのが好ましい。
また、溝31,32の深さAについては、図5から、その深さAを芯線22の直径の45%或いは芯線22の直径の60%に設定した場合には、その深さAを芯線22の直径の30%に設定した場合よりも引張強度が弱くなることが分かる。これらの結果から、溝31,32の深さAは、合金線の直径の35%以下であるのが好ましい。
このようにすることによって、芯線をセレーションに押し付けたとき、芯線の曲がりを弾性内に収めることができ、芯線の弾性を最大限に利用することが可能となる。
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
上記一実施形態では、芯線22として、ヤング率が100GPaから135GPaの銅合金線を使用し、圧着端子10として、芯線22と同じヤング率か、それより低いヤング率を有する金属板を用いているが、本発明はこれに限らない。芯線22は銅合金線に限らず、圧着端子10と同じヤング率或いはそれより高いヤング率を有する合金線であっても良い。このような合金線として、例えば、ヤング率が120GPa程度のリン青銅合金、もしくは130GPa程度のベリリウム銅合金が使用可能である。
・上記一実施形態では、圧着端子10の底板部13の内面に、2つの溝31,32を設けた構成について説明したが、図5で示す引張試験の結果から明らかなように、2つの溝31,32に代えて一つの溝を設けた圧着端子10にも本発明は適用可能である。
・上記一実施形態では、溝31,32の各縁(エッジ)での傾き角度を0度としているが、溝31,32として、図6に示すように各縁(エッジ)に傾き角度θを持つ溝であっても良い。つまり、各溝31,32溝の内周面が傾斜面になって構成でも良い。その傾き角度θは、例えば、0度から15度程度である。
本発明の一実施形態に係る圧着端子を示す展開図。 図1のX−X線に沿った断面図。 複数の芯線を圧着した状態を示す横断面図。 芯線を圧着した状態における芯線と溝が交差する部分を、溝の幅方向(芯線の軸線方向)に切断した断面図。 溝の数と溝の深さをそれぞれ変えて行った熱ストレス試験前と熱ストレス試験後での引張試験の結果を示すグラフ。 一実施形態に係る圧着端子の変形例の一部を示す断面図。
符号の説明
10:圧着端子
11:インシュレーションバレル
12:ワイヤバレル
13:底板部
14,15:加締め部
16:ボス
20:被覆電線
21:絶縁被覆部
22:芯線(銅合金線)
22a:両端支持梁となる部分
31,32:溝
31a,32a:溝の縁(エッジ)

Claims (6)

  1. 被覆電線の芯線である合金線が載置される底板部と、該底板部の両側から延出し加締めにより前記合金線を圧着する左右の加締め部とを備え、前記合金線と同じ或いはそれより小さいヤング率を有する材料からなる圧着端子であって、
    前記底板部の内面に、該底板部に載置される前記合金線と交差する方向に延びる溝が形成されており、
    前記溝は、前記左右の加締め部を前記合金線に加締め付けた状態で、前記合金線が前記溝内で弾性変形し該溝の底面に圧接するのを許容する深さに設定されていることを特徴とする圧着端子。
  2. 前記左右の加締め部の内面には、前記芯線の前記溝を跨る部分の中央部を押圧するボスが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の圧着端子。
  3. 前記溝は、1個又は2個設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧着端子。
  4. 前記溝の深さは、前記合金線の直径の35%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の圧着端子。
  5. 前記合金線は、銅を主成分とする銅合金であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の圧着端子。
  6. 芯線を圧着方式により圧着端子に取り付ける圧着端子コネクタにおいて、前記圧着端子と同じヤング率或いはそれより高いヤング率を有する前記芯線と、
    被覆電線の前記芯線が載置される底板部と、該底板部の両側から延出し加締めにより前記芯線を圧着する左右の加締め部と、前記底板部の内面に該底板部に載置される前記芯線と交差する方向に延びる溝とを有する前期圧着端子とを備え、
    前記左右の加締め部を前記芯線に加締め付けた状態で、前記芯線が前記溝内で弾性変形し該溝の底面に圧接することを特徴とする圧着端子コネクタ。
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