JP5021451B2 - 伸縮シート - Google Patents

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Description

本発明は、弾性フィラメントと不織布とを複合化してなる伸縮シートに関する。
弾性を有する繊維と不織布とを複合化してなる伸縮シートに関する従来の技術としては、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。
同文献に記載の伸縮シートは、同文献の図1及び図2に示されているように、ギア形状を有する波形部材20,21によって一枚のシート12を波状に変形させ、該シートに弾性ストランド16を融着してなるもの、あるいは同文献の図4及び図5に示されているように、二枚のシート12,32それぞれを波状に変形させ、該シートそれぞれを、波の頂部の位置を一致させて、共通する弾性ストランド16を融着してなるものである。
しかし、一枚のシート12を弾性ストランド16と融着してなるものは、伸縮シートの片面に弾性ストランド16が露出しているため、べたついたり、ハンドリング性が悪い。また、アーチ部分13が、弾性ストランド16から離間して形成されているため、該アーチ部分13は、加圧に対して、折れたり潰れたりしやすい。
また、二枚のシート12,32を弾性ストランド16と融着してなるものは、弾性ストランド16の長手方向の同じ位置に二枚のシート12,32が接合されて、弾性ストランド16の上下に亘る空間が形成されるため、例えば、生理用ナプキン等の吸収性物品の表面シート材として用いる場合に、二枚のシート12,32の固定部分14が吸収体などの部材と離れてしまうために、吸収体への液の移行性に劣る。
特表平10−501195号公報
したがって本発明の目的は、弾性部材が露出せず、凹凸形状が安定に維持され、液、排泄物やゴミ等の取り込み性、また液の移行性に優れた伸縮シートを提供することにある。
本発明は、一方向に延びるように配列した多数の弾性フィラメントが2枚の不織布間に固定されており、これらが一体的に変形して、一方の面側に開口する第1溝及び他方の面側に開口する第2溝が前記一方向に交互に形成されている、伸縮シートを提供するものである。
本発明の伸縮シートは、弾性フィラメントが2枚の不織布間に固定され、表面に露出していないため、弾性フィラメントによるべたつきを生じにくく、例えばシートをロール状に巻き取るときや製造した巻き取りロールを再び繰り出して使用する際に、必然的に触れるローラーへのべたつきによるテンション変動や摩擦が少なく、ハンドリング性にも優れている。
また、伸縮シートの凹凸形状が、弾性フィラメントによって安定に維持され、第1及び/又は第2溝は、液、排泄物やゴミ等の被捕集物の取り込み性に優れている。
また、吸収性物品の構成部材、例えば、生理用ナプキンや使い捨ておむつの表面シートやサブレーヤー等として用いた場合、それに接する吸収体等への液の移行性にも優れている。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の伸縮シートの一実施形態の斜視図が示されている。図2には、図1に示す伸縮シートの、弾性フィラメントが延びる方向(Y方向)に沿い且つ該伸縮シートの厚み方向に沿う断面図が示されている。
本実施形態の伸縮シート10は、第1の不織布11及び第2の不織布12の計2枚の不織布と、両不織布間に挟持された多数の弾性フィラメント13とから構成されている。各弾性フィラメント13は、第1及び第2の不織布11,12と接合している。第1の不織布11と第2の不織布12は、同種のものでもよく、或いは異種のものでもよい。ここで言う同種の不織布とは、不織布の製造プロセス、不織布の構成繊維の種類、構成繊維の繊維径や長さ、不織布の厚みや坪量等がすべて同じである不織布どうしを意味する。これらのうちの少なくとも一つが異なる場合には異種の不織布であるという。また本発明において弾性とは、伸ばすことができ、且つ元の長さに対して100%伸ばした状態(元の長さの200%の長さになる)から力を解放したときに、元の長さの125%以下の長さまで戻る性質を言う。
各不織布11,12は何れも伸長可能なものであることが好ましい。本伸縮シート10における各不織布11,12は、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に伸長可能になっている。伸長可能とは、(イ)不織布11,12の構成繊維自体が伸長する場合と、(ロ)構成繊維自体は伸長しなくても、交点において結合していた繊維どうしが離れたり、繊維どうしの結合等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたり、繊維のたるみが引き伸ばされたりして、不織布全体として伸長する場合とを包含する。
各不織布11,12は、弾性フィラメント13と接合される前の原反の状態で既に伸長可能になっていてもよい。或いは、弾性フィラメント13と接合される前の原反の状態では伸長可能ではないが、弾性フィラメント13と接合された後に伸長可能となるように加工が施されて、伸長可能になるものであってもよい。不織布を伸長可能にするための具体的な方法としては、熱処理、ロール間延伸、歯溝やギアによるかみ込み延伸、テンターによる引張延伸などが挙げられる。後述する伸縮シート10の好適な製造方法に鑑みると、弾性フィラメント13を不織布11,12に融着させるときの該不織布11,12の搬送性が良好になる点から、不織布11,12はその原反の状態では伸長可能でないことが好ましい。
各不織布11,12は伸長可能であり、実質的に非弾性の繊維を含んでなるものであり、実質的に非弾性である。
各弾性フィラメント13は、伸縮シート10の全長にわたって実質的に連続している。弾性フィラメント13は弾性樹脂を含んでいる。各弾性フィラメント13は、互いに交差せずに一方向に延びるように配列している。但し、伸縮シート10の製造条件の不可避的な変動に起因して、意図せず弾性フィラメント13が交差することは許容される。各弾性フィラメント13は、互いに交差しない限り、直線状に延びていてもよく、或いは蛇行しながら延びていてもよい。
弾性フィラメント13の延びる方向は、第1及び第2の不織布11,12の製造時の流れ方向と一致していてもよく、或いは不織布11,12の製造時の流れ方向と直交していてもよい。後述する好適な製造方法に従い伸縮シート10を製造すると、弾性フィラメント13の延びる方向は、第1及び第2の不織布11,12の製造時の流れ方向と一致する。
弾性フィラメント13は、実質的に非伸長状態で不織布11,12に接合されている。弾性フィラメント13が伸長していない状態で不織布11,12に接合されるため、本実施形態の伸縮シート10は、伸長による緩和(クリープ)が起こらず、伸縮性が低下しにくいという利点がある。弾性フィラメント13が伸長していない状態で、これを不織布11,12に接合させることには次の利点もある。本実施形態の伸縮シート10は、例えば、実質的に非伸長状態の弾性フィラメント13を、非伸長状態の不織布11,12に接合して一旦巻き取り原反とし、(このとき、弾性フィラメント13と接合した非伸長状態の不織布11,12は非伸縮性である)、この原反を繰り出して別工程において弾性発現処理(例えば歯溝延伸)して、非伸長状態の不織布11,12を伸長可能な不織布となすことで製造される。前記の原反の状態では、該原反は非伸長でかつ非伸縮性なので、弾性フィラメント13に外力が作用しない。その結果、前記の原反を長期間保存しても、伸長に起因する緩和が起こらないという利点がある。
弾性フィラメント13としては、糸状の合成ゴムや天然ゴムが使用できる。或いは乾式紡糸(溶融紡糸)や、湿式紡糸によって得られたものも使用できる。このうち、後述する好適な製造方法に鑑みると、弾性フィラメント13は、これを一旦巻き取ったり、蓄えたりすることなしに直接溶融紡糸によって得られたものであることが好ましい。
弾性フィラメント13は、ノズルから吐出された溶融樹脂を紡糸線上で延伸して得られたものであることが好ましい。延伸することで、弾性フィラメント13を構成する高分子が、該弾性フィラメント13の長さ方向に分子配向するので、弾性フィラメント13の延びる方向に沿って100%伸長させ、その状態から50%戻したときの荷重A(以下、50%戻り強度ともいう)と、弾性フィラメント13の延びる方向に沿って50%伸長させたときの荷重B(以下、50%行き強度ともいう)との比(A/B)が高まり、ヒステリシスロスが小さくなる。また、延伸によって細い弾性フィラメントが得られる。この観点から、弾性フィラメント13は、1.1〜400倍、特に4〜100倍に延伸されたものであることが好ましい。これに対して、先に述べた特許文献1においては、ダイから溶融状態で押し出された弾性ストランドが未延伸の状態でシートに接合されるので、該弾性ストランドのヒステリシスロスは十分に小さいものとはならない。
特に、弾性フィラメント13は、弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されて形成されたものであることが好ましい。これにより、十分に細化したフィラメントを得ることが可能になり、後述する理由で、風合いが良くなる。また、弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されることで、不織布11、12と貼り合わせた後、常温になった弾性フィラメント13は縮もうとする力は示さず、弾性フィラメント13は非伸長状態で不織布11,12に接合させたことと同じ状態になる。本実施形態における延伸の具体的な操作としては、(イ)弾性フィラメント13の原料となる樹脂を溶融紡糸して一旦未延伸糸を得、その未延伸糸の弾性フィラメントを再度加熱して軟化温度(ハードセグメントのガラス転移点温度Tg)以上の状態で延伸する操作や、(ロ)弾性フィラメント13の原料となる樹脂を溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸する操作が挙げられる。後述する好適な製造方法に従い伸縮シート10を製造すると、弾性フィラメント13は、溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸することで得られる。
紡糸後の延伸により得られた弾性フィラメント13は、その直径が10〜200μm、特に20〜130μmであることが好ましい。弾性フィラメント13は、その断面が円形であり得るが、場合によっては楕円形や扁平形状の断面のこともある。隣り合う弾性フィラメント間の隙間の距離は、0.2〜5mm、特に0.5〜1.5mmであることが、見た目の美しさ、通気性、肌触り(隣り合うフィラメント同士が接触せず正しく配置されることによる)等の点から好ましい。
弾性フィラメント13は、その全長にわたって各不織布11,12に接合している。ここで、「その全長にわたって接合している」とは、弾性フィラメント13と接触しているすべての繊維(不織布11,12の構成繊維)が、該弾性フィラメント13と接合していることを要せず、弾性フィラメント13に、意図的に形成された非接合部が存在しないような態様で、弾性フィラメント13と不織布11,12の構成繊維とが接合されていることを言う。弾性フィラメント13が各不織布11,12にその全長にわたって接合していることで、弾性ストランド13と各不織布11,12との接合力を十分に高めることができる。その結果、伸縮シート10を引き伸ばしても、弾性フィラメント13が各不織布11,12から剥離しづらくなる。弾性フィラメント13が各不織布11,12から剥離しにくいことは、後述する連続波形形状の伸縮シート10の立体形態が、弾性フィラメント13により安定に維持されるようにする点から好ましい。
伸縮シート10は、少なくとも自然状態においては、弾性フィラメント13及びそれに接合している各不織布11,12が一体的に変形して、連続波形形状の立体形状を有している。より具体的には、自然状態(収縮状態)の伸縮シート10には、図2に示すように、一方の面P側に開口する第1溝1と他方の面Q側に開口する第2溝2とが、弾性フィラメント13が延びる方向(Y方向)に交互に形成されている。また、伸縮シート10の一方の面P側及び他方の面Q側それぞれにおける、相隣接する第1溝1,1間又は相隣接する第2溝2,2間には、それぞれY方向と直交する方向(X方向)に延びる畝部3,4が形成されている。
第1溝1は、第2溝2の底部2aの位置に達する深さD1(図2参照)を有していることが好ましく、第2溝2は、第1溝1の底部1aの位置に達する深さD2(図2参照)を有していることが好ましい。
ここで、第1溝1が、第2溝2の底部2aの位置に達する深さD1を有するとは、伸縮シート10の厚み方向(Z方向,図2参照)において、第1溝1の底部1aが、第2溝2の底部2aと同じ位置に位置するか又はそれよりQ側に位置することを意味し、第2溝2が、第1溝1の底部1aの位置に達する深さD2を有するとは、伸縮シート10の厚み方向(Z方向,図2参照)において、第2溝2の底部2aが、第1溝1の底部1aと同じ位置に位置するか又はそれよりP側に位置することを意味する。底部1a,2aは、各溝の最も深い部分である。
伸縮シート10の厚み方向(Z方向)において、第1溝1と第2溝2とが重なる長さT1、即ち、第1溝1の底部1aと第2溝2の底部2aとの間のZ方向の距離(D1+D2−T)は好ましくは、−3mm以上、より好ましくは0mm以上である。また、長さT1は、伸縮シート10の厚みTの−50〜75%、特に0〜40%であることが好ましい。T1が0より大きいことは、第1溝1と第2溝2がY方向において隣接し、Z方向において重なる部分を有することを意味し、液が、第1溝1から第2溝2に流れ込みやすい。なお、T1が0より小さい場合でも、第1溝の底部1aと第2溝の底部2bの距離が比較的小さい場合には、同様の第1溝1から第2溝2に液が流れ込みやすい効果は維持される。また、第1溝1及び第溝2それぞれの深さD1,D2は、伸縮シート10の厚みTの10〜80%、特に40〜80%であること、また、1mm以上、特に2mm以上が、溝12と畝部3,4による縞模様の形成性や、液、排泄物やゴミ等の被捕集物の保持性等の点から好ましい。また、第1溝1の底部1aは、伸縮シート10の厚み方向(Z方向)において、伸縮シート10の厚みを2等分した位置より、Q側に位置することが好ましく、第2溝2の底部2aは、伸縮シート10の厚み方向(Z方向)において、伸縮シート10の厚みを2等分した位置より、P側に位置することが好ましい。
また、伸縮シート10のX方向における、第1溝1,1のピッチP10(図2参照)及び第2溝2,2のピッチP20(図2参照)は、例えば、1〜10mmであり、好ましくは2〜3.5mmである。
本実施形態の伸縮シート10は、弾性フィラメント13が、不織布11,12と共に屈曲して、上述した連続波形形状の立体形状を有しているため、弾性フィラメント13の弾性伸縮性によって伸縮シート10の立体形状が安定に維持される。
即ち、伸縮シート10が厚み方向に加圧されて、畝部3,4や溝1,2が潰れても、畝部3,4が折れるような潰れ方はせず、また、加圧が解除された場合には、畝部3,4や溝1,2が元の立体形態に良好に復帰する。
また、伸縮シート10は、弾性フィラメント13の弾性に起因して、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に伸縮可能になっている。
伸縮シート10を、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に引き伸ばすと、連続波形形状の伸縮シート10の立体形態が平面状に近づくように変化するとともに、弾性フィラメント13並びに第1及び第2の不織布11,12が伸長するが、伸縮シート10の引き伸ばしを解除すると、弾性フィラメント13が収縮し、その収縮に連れて第1及び第2の不織布11,12が引き伸ばし前の状態に復帰し、伸縮シート10も元の立体形状に復帰する。
本実施形態の伸縮シート10は、このように連続波形形状の立体形状の安定性に優れているため、肌触りが良好である。また、おむつの外包材や生理用ショーツの生地等のように、使用状態において伸縮が繰り返されるような用途や、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面シートやサブレイヤー、床や家具の清掃用シートなどのように、厚み方向の圧縮を繰り返し受けるような用途に用いても、溝1,2の機能が損なわれない。
また、目に触れる場所に用いた場合においても、畝部3,4及び溝1,2によって生じる縞模様が安定に維持される点も利点となる。
また、本実施形態の伸縮シート10は、このように立体形状の安定性に優れた伸縮シートに、深さの深い上記の第1及び第2溝1,2を有するため、第1及び第2溝1,2内に、液、排泄物、ゴミ等の被捕集物をスムーズに取り込ませることができる。
例えば、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いた場合は、経血や尿等を吸収すると同時に便、軟便、おりもの等の、固形物や粘度の高い排泄物を閉じ込めて、肌から遠ざけることができる。
吸収体の肌側に本実施形態の伸縮シートを用いる場合は、吸収体に触れる繊維の面積が大きいため、吸収体の液の引き込み力をこのシートに効果的に伝えることができ、シート中の液が移行しやすくなる。
また、第1溝1が、第2溝2とY方向における位置がずれていることにより、第1溝1の底部1aと吸収体との間に畝部4の繊維が配置されているため、吸収体の液の引き込み力を本実施形態の伸縮シートに効果的に伝えることができ、該伸縮シート中の液が移行しやすくなる。また、第1溝1と第2溝2のずれがピッチ(P10)の約半分であると、見た目の美しさ、シワの寄りにくさの観点から好ましい。
尚、第1溝1および第2溝2どちらを肌側に向かって開口するようにして使用しても同様の効果が得られる。
また、床や家具等の清掃用シートとして用いた場合には、パンくずや砂、髪の毛などの比較的大きなゴミも、第1溝1や第2溝2に取り込むことができるため、効果的に清掃ができる。
また、本実施形態の伸縮シート10における第1溝1及び第2溝2は、図2に示すように、それぞれ、弾性フィラメント13が延びる方向の幅が狭い幅狭部1b,2bと、各溝の深さ方向において、該幅狭部1b,2bより底部1a,2a側に位置し、該幅狭部の前記幅より広い幅(Y方向の幅)を有する幅広部1c,2cとを有している。
また、幅狭部1b、2bの幅は、自然長のときは0.5mm以上が好ましく、より好ましくは1mm、更に好ましくは2mm以上である。また、幅広部1c,2cの幅は、それぞれ、幅狭部1b、2bの幅の1.2倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましい。
また、幅狭部1b、2bはシート全体の伸縮、特に初期の伸縮にあわせて、他の部分よりも優先的に寸法が変化する。
ピッチP20と幅狭部1bとの寸法比(1b/P20)は、0.5以下、つまり溝でない部分の幅は溝の幅狭部の幅よりも大きいことが好ましい。このことにより、吸収性物品等に使用した場合には、液や排泄物等の被捕集物を効果的に取り込みながら、使用者の肌から被捕集物を遠ざけることができる。
第1及び第2溝1,2が、このような形態を有すると、溝内に取り込んだ液やゴミ等が、逆戻りして外部に排出されることを防止することができる。また、シートが伸縮性を有するため、人への装着物として用いた場合には使用者の動きに容易に追従して、清掃用シートとして用いた場合には、ふき取る動作に応じて、幅狭部1b、2bの寸法が増減するので、一層溝内に液や固形物、ゴミなどを取り込み易くなる。
例えば、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面シートやサブレイヤーに用いた場合には、肌側に向けた溝1又は2内に取り込まれた液、排泄物等が、肌に接する表面に逆戻りしにくいので、肌にべたついたり、接触してカブレを引き起こしたりすることを防止ないし低減することができる。
また、床や家具等の清掃用シートとして用いた場合には、一度取り込んだ被捕集物を再び放出しにくく、永続的に取り込みやすい。
弾性フィラメント13と、第1及び第2の不織布11,12との接合の様式としては、例えば融着が挙げられる。後述する好適な製造方法に従い伸縮シート10を製造すると、弾性フィラメント13は、各不織布11,12に融着により接合される。融着とは、弾性フィラメントと不織布11,12を構成する繊維が互いに溶融して接着している状態、又はどちらか一方が溶融し、他方がそれに食い込んで接着している状態の双方を含む。この方法によれば、各不織布11,12に過度な熱は加えられず、溶融紡糸により得られた弾性フィラメント13の固化前に、該弾性フィラメント13を不織布に融着させるので、該弾性フィラメント13の周囲に存在する繊維のみが該弾性フィラメント13と接合し、それよりも離れた位置にある繊維は不織布11,12の風合いを維持したままになっているので、伸縮シート10の風合いが良好に保たれるという利点がある。この場合、各不織布11,12と弾性フィラメント13とを接合させる前に、補助的な接合手段として接着剤を塗布することもできる。或いは、各不織布11,12と弾性フィラメント13とを接合させた後に、補助的な接合手段として、熱処理(スチームジェット、ヒートエンボス)や、機械交絡(ニードルパンチ、スパンレース)などを行うこともできる。尤も、これらの補助的な接合手段は、得られる伸縮シート10の風合いを損なったり、弾性フィラメント13にダメージを与えたりする場合がある。したがって、弾性フィラメント13をその溶融熱で不織布11,12と融着することが好ましい。但し、補助的な接合手段として、エアスルー法による熱風吹き付けからなる熱処理を用いた場合には、得られる伸縮シート10の風合いは損なわれず、また不織布11,12の接合強度の高いものが得られる点で好ましい。
また、本実施形態の伸縮シート10においては、弾性フィラメント13と直交した状態で結合している他の弾性フィラメントは存在していない。したがって伸縮シート10を、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に引き伸ばしても、該伸縮シート10が幅縮みをほとんど起こさずに伸長する。つまり、伸縮シート10はその引き伸ばし状態において、その長手方向にわたり幅がほぼ一様になっている。その結果、伸縮シート10を、その伸長状態で搬送させてこれを加工するときのハンドリング性が良好になる。また、伸縮シート10を例えばパンツ型おむつの外包材として用いた場合、おむつの着用中にずれ落ちが起こったり、皺が寄ったりすることが効果的に防止される。
伸縮シート10は、これを1.5倍に伸長したときの幅縮みの割合が、伸長前の幅の1%〜10%、特に1%〜5%であることが好ましい。幅縮みは(1−伸長後の幅÷伸長前の幅)×100として求めることができる。伸長後の幅は次のように測定する。サンプルを、その長さ方向が概ね流れ方向に沿うように(角度差15度以内)幅50mmにて切り出す。長さは150mm超とする。サンプルの幅を50mmに保った状態で、サンプルの長手方向両端部を、把持間隔150mmで把持する。このとき、サンプルがその長手方向にたるまず、かつ伸長しないように注意する。この状態から、把持間隔を1.5倍まで伸長させたときの、サンプルの長さ方向の中央部の幅を測定し、その値を伸長後の幅とする。
次に、伸縮シート10を構成する第1及び第2の不織布11,12並びに弾性フィラメント13の構成材料について説明する。各不織布11,12を構成する繊維としては、実質的に非弾性の繊維が用いられる。その例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。各不織布11,12を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でもよく、親水性でも撥水性でもよい。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイドの複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。各不織布11,12は、連続フィラメント又は短繊維の不織布であり得る。特に、伸縮シート10を厚みのある嵩高なものとする観点からは、各不織布11,12は、短繊維の不織布であることが好ましい。伸縮シート10を、肌に接触する部材として用いる場合には、肌の接触する側に風合いの良い短繊維不織布を用い、その反対面に強度の高い連続フィラメントの不織布を用いてもよい。
各不織布11,12は、その構成繊維が低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなることが好ましい。その場合には、少なくとも低融点成分の熱融着により、その構成繊維同士が繊維交点で接合させることができる。低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなる芯鞘型の複合繊維としては、芯が高融点PET、PPで、鞘が低融点PET、PP、PEのものが好ましい。
各不織布11,12の厚みは、好ましくは0.05〜5mm、更に好ましくは0.1〜1.0mm、一層好ましくは0.15〜0.5mmである。厚みの測定は、0.5cN/cm2の荷重にて平板間に挟み伸縮シート10の断面をマイクロスコープにより50〜200倍の倍率で観察し、各視野において平均厚みをそれぞれ求め、3視野の厚みの平均値として求めることができる。シート全体の厚みは平板間の距離を測ることで求められる。各不織布11,12の坪量は、風合い、厚み及び意匠性等の観点から、それぞれ3〜100g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。
各不織布11,12は、風合い、べたつき等の観点から、実質的に非弾性の繊維からなることが好ましい。不織布中の非弾性繊維の割合としては、70重量%以上、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%が好ましい。また、実質的に非弾性の繊維には、非弾性樹脂に、弾性樹脂を含んでいてもよく、非弾性樹脂の割合は、70重量%以上、好ましくは90重量%、さらに好ましくは100重量%が良い。
不織布に用いる繊維は、長繊維でも短繊維でも良いが、引張強度試験における破断時伸度が100%を超えるものを用いると、本実施形態の形を効率的に作りやすい。
弾性フィラメント13は、前述のとおり、例えば熱可塑性エラストマーやゴムなどの弾性樹脂を原料とするものである。特に弾性樹脂に熱可塑性エラストマーを原料として用いると、通常の熱可塑性樹脂と同様に押出機を用いた溶融紡糸が可能であり、またそのようにして得られたフィラメントは熱融着させやすいので、本実施形態の伸縮シートに好適である。熱可塑性エラストマーとしては、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー(エチレン系のα−オレフィンエラストマー、エチレン・ブテン・オクテン等を共重合したプロピレン系エラストマー)、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーを挙げることができる。これらは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらの樹脂からなる芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維を用いることもできる。特にスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、又はそれらを組み合わせて用いることが、弾性フィラメント13の成形性、伸縮特性、コストの面で好ましい。
弾性フィラメント13と不織布11,12を構成する繊維との好適な組み合わせは、弾性フィラメント13にSEBS樹脂又はSEPS樹脂を用い、不織布11,12の構成繊維にPP/PE芯鞘型複合繊維又はPET/PE芯鞘型複合繊維を用いる組み合わせである。この組み合わせを採用することで、融着をしっかりと行うことができる。また、芯の融点が高いので、繊維が融着時に溶けきらず(芯が残る)、最大強度の高い伸縮シート10が得られる。
次に、本実施形態の伸縮シート10の好ましい製造方法を、図3を参照しながら説明する。本製造方法においては、紡糸ノズル16から紡出された溶融状態の多数の弾性フィラメント13を所定速度で引き取って延伸しつつ、該弾性フィラメント13の固化前に、該弾性フィラメント13が互いに交差せず一方向に配列するように該弾性フィラメント13を不織布11,12に融着させ、次いで該弾性フィラメント13が融着した複合体19を、該弾性フィラメント13の延びる方向に沿って弾性発現処理して該複合体19に伸縮性を付与する。
紡糸ノズル16は、紡糸ヘッド17に設けられている。紡糸ヘッド17は、押出機に接続されている。ギアポンプを介して紡糸ヘッド17へ樹脂を供給することもできる。該押出機によって溶融混練された弾性樹脂は、紡糸ヘッド17に供給される。紡糸ヘッド17には、多数の紡糸ノズル16が直線状に一列に配置されている。紡糸ノズル16は、第1及び第2の不織布11,12の幅方向に沿って配置されている。隣り合う紡糸ノズル16の間隔は、目的とする伸縮シート10における弾性フィラメント13の間隔に相当する。紡糸ノズル16は通常円形であり、その直径は弾性フィラメント13の直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。この観点から、紡糸ノズル16の直径は0.1〜2mm、特に0.2〜0.6mmであることが好ましい。不織布11,12との接合強度を高める目的、弾性フィラメント13の紡糸性を上げる目的、及び伸縮シート10の伸縮特性を向上させる目的で、弾性フィラメント13を複合の形態(サイドバイサイド、芯鞘、海島構造)とすることもできる。具体的にはPP系のエラストマー樹脂とスチレン系のエラストマー樹脂とを組み合わせることが好ましい。
紡出された溶融状態の弾性フィラメント13は、それぞれ原反から互いに同速度で繰り出された第1の不織布11及び第2の不織布12と合流し、両不織布11,12間に挟持されて所定速度で引き取られる。弾性フィラメント13の引き取り速度は、両不織布11,12の繰り出し速度と一致している。弾性フィラメント13の引き取り速度は、該弾性フィラメント13の直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。延伸によって弾性フィラメント13に生じる張力は、該弾性フィラメント13を不織布11,12と貼り合わせるときの風や静電気に起因する該弾性フィラメント13の乱れを防止する。それによって弾性フィラメントどうしを交差させずに一方向へ配列させることができる。これらの観点から、弾性フィラメント13の引き取り速度は、紡糸ノズル孔内の樹脂吐出速度に対し、その延伸倍率が1.1〜400倍、特に4〜100倍、更に10〜80倍となるように調整されることが好ましい。
弾性フィラメント13は、その固化前に、即ち融着可能な状態で第1及び第2の不織布11,12と合流する。その結果、弾性フィラメント13は、第1及び第2の不織布11,12に挟持された状態で、これらの不織布11,12に融着する。つまり、固化前の弾性フィラメントを搬送される不織布11,12に融着させながら弾性フィラメント13は引き取られて延伸される。弾性フィラメント13の融着に際しては第1及び第2の不織布11,12には、外部から熱は付与されていない。つまり、融着可能になっている弾性フィラメント13に起因する溶融熱によってのみ、該弾性フィラメント13と両不織布11,12とが融着する。その結果、両不織布11,12の構成繊維のうち、弾性フィラメント13の周囲に存在する繊維のみが該弾性フィラメントと融着し、それよりも離れた位置に存在する繊維は融着しない。その結果、両不織布11,12に加わる熱は最小限にとどまるので、該不織布自身が本来的に有する良好な風合いが維持される。それによって、得られる伸縮シート10の風合いが良好になる。
紡出された弾性フィラメント13が、第1及び第2の不織布11,12と合流するまでの間、該弾性フィラメント13は延伸されて延伸方向に分子が配向する。また直径が小さくなる。分子配向によって、50%戻り強度(A)/50%行き強度(B)の比の大きく、ヒステリシスロスの小さい弾性フィラメント13が得られる。弾性フィラメント13を十分に延伸させる観点及び弾性フィラメント13の糸切れを防止する観点から、紡出された弾性フィラメント13に所定温度の風(熱風、冷風)を吹き付けて、該弾性フィラメント13の温度を調整してもよい。
弾性フィラメント13の延伸は、原料樹脂の溶融状態での延伸(溶融延伸)だけでなく、その冷却過程における軟化状態の延伸(軟化延伸)であってもよい。溶融状態とは、自重を含む外力を加えたとき樹脂が流動する状態である。樹脂の溶融温度は粘弾性測定による(例えば円形並行平板間に挟んだ樹脂に回転方向の振動歪を加えて測定される)Tanδのピーク温度として測定される。弾性樹脂の時に糸切れが起こらないようにするために、延伸区間を長く確保することがよい。また、同様に糸切れが起こらないようにするために弾性樹脂の溶融温度は130〜300℃が好ましい。さらに、弾性樹脂の耐熱性の観点から、溶融温度は220℃以下が好ましい。弾性フィラメント13の成形温度(ダイスの温度)は樹脂の流動性を上げて成形性をよくするために原料樹脂の溶融温度の+50℃以上が好ましく、耐熱性のため原料樹脂の溶融温度の+110℃以下が好ましい。軟化温度は、シート状にした弾性樹脂の測定試料の粘弾性特性におけるTg温度として測定される。軟化温度から溶融温度までの範囲を軟化状態という。また、軟化温度より低い温度の状態を固化状態という。軟化温度は、伸縮シート10の保存時における弾性樹脂の結晶の成長や、体温による伸縮シート10の伸縮特性の低下の観点から、60℃以上が好ましく、80℃〜180℃がより好ましい。
弾性フィラメント13と不織布11,12とを接合させるときの弾性フィラメント13の温度は、繊維融着を確実にするために100℃以上であることが好ましい。より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上である。また弾性フィラメント13の形状を保持して伸縮特性の良好な伸縮シート10を得る観点から、弾性フィラメントの温度は180℃以下であることが好ましい。より好ましくは160℃以下である。これらの結果、最適なフィラメント温度は120〜180℃、さらに好ましくは140〜160℃の範囲である。接合時の温度は、弾性フィラメント13と接合させるラミネート基材として、弾性フィラメントを構成する弾性樹脂の融点と異なる融点を有する変性ポリエチレンや変性ポリプロピレンなどからなるフィルムを用いて、その接合状態を観察することで測定できる。このとき、弾性フィラメントとラミネート基材が融着していれば、接合温度はラミネート基材の融点以上である。
弾性フィラメント13と不織布11,12との接合時には、弾性フィラメント13は実質的に非伸長状態(外力を取り除いたときに縮まない状態)である。両者の接合状態においては、不織布11,12を構成する繊維の少なくとも一部が、弾性フィラメントへ融着するか、更には弾性フィラメント13と不織布11,12を構成する繊維の少なくとも一部との両方が融着することがより好ましい。十分な接合強度が得られるからである。得られる伸縮シート10の伸縮特性は、弾性フィラメント13と不織布11,12との接合点の密度に影響を受ける。また、伸縮特性は、接合温度、接合圧力、後述する不織布11,12の弾性発現処理による接合点のはずれによって調整することができる。不織布11,12の構成繊維を弾性フィラメント13に融着させることで、接合点一つ一つの接合強度が高くなる。接合点の密度を低くすると、不織布11,12による伸縮阻害が少なくなり、且つ十分な接合強度を有する伸縮シート10が得られるので好ましい。
弾性フィラメント13を第1及び第2の不織布11,12と合流させるときには、各弾性フィラメント13が互いに交差せず一方向に配列するようにする。そして、弾性フィラメント13を第1及び第2の不織布11,12と合流させて両不織布11,12間に該弾性フィラメント13を挟持させた状態で、これら三者を一対のニップロール18,18によって挟圧する。挟圧の条件は、得られる伸縮シート10の風合いに影響を及ぼす。挟圧力が大きすぎると弾性フィラメント13が両不織布11,12内に食い込みやすくなり、それに起因して得られる伸縮シート10の風合いが低下しやすい。この観点から、ニップロール18,18による挟圧力は、弾性フィラメント13が両不織布11,12に接触する程度で足り、過度に高い挟圧力は必要とされない。
ニップロール18による挟圧の別の条件として、ニップロール18の温度が挙げられる。本発明者らの検討の結果、ニップロール18を加熱した状態で挟圧を行うよりもむしろ、加熱しないか(つまり成り行きにまかせるか)、又は冷却しながら挟圧を行う方が、風合いの良好な伸縮シート10が得られることが判明した。ニップロール18を冷却する場合には、冷却水等の冷媒を用い、ニップロール18の表面設定温度が10〜50℃になるように温度調節することが好ましい。
このようにして2枚の不織布11,12間に弾性フィラメント13が挟持された複合体19が得られる。次いで、この複合体19に対して、図2に示すような屈曲状態が発現するように誘導する共に部分的に延伸させて伸縮性を付与する操作を行う。本製造方法においては、この操作を、それぞれ歯と歯底が周方向に交互に形成された一対の歯溝ロール20,21を備えた弾性発現装置22を用いて行う。
弾性発現装置22は、一方又は双方の歯溝ロール20,21の枢支部を上下に変位させる公知の昇降機構(図示せず)を有し、歯溝ロール20,21間の間隔が調節可能になっている。本製造方法においては、各歯溝ロール20,21を、一方の歯溝ロール20の歯が他方の歯溝ロール21の歯間に遊挿され、他方の歯溝ロール21の歯が一方の歯溝ロール20の歯間に遊挿されるように組み合わせ、その状態の両歯溝ロール20,21間に、複合体19を挿入してこれを延伸させる。
弾性発現装置22においては、一対の歯溝ロール20,21の両方が駆動源によって駆動するようになっていてもよく(共回りロール)、一方の歯溝ロール20又は21のみが駆動源によって駆動するようになっていてもよい(連れ回りロール)が、本製造方法においては、下側の歯溝ロール21のみが駆動源によって駆動し、上側の歯溝ロール20は駆動源に接続されておらず、歯溝ロール21の回転に伴って従動する(連れ回る)ようになっている。連れ回りロールを用いることは、第1及び第2溝1,2や畝部3,4がくっきりと明瞭に形成されやすくなるので好ましい。歯溝ロール20,21の歯形としては、一般的なインボリュート歯形、サイクロイド歯形が用いられるが、これらの歯幅を細くし、バックラッシ(噛み合った1対のロールの、お互いの歯と歯の隙間)を大きくしたものを用いることが好ましい。バックラッシの値としては好ましくは0.3mm〜3mm、さらに好ましくは0.5mm〜1.5mmである。
図4には、複合体19が部分的に弾性発現処理される状態が模式的に示されている。複合体19が歯溝ロール20,21間を通過する際には、複合体19は、歯溝ロール20,21の歯23,24に当接する領域(P3−P2間、P1−P4間)においては、ほとんど延伸されない。これに対し、駆動ロールである歯溝ロール21の歯24の歯面によって、従動ロールである歯溝ロール20の歯23の歯面に向けて押圧される領域(P2−P1間)においては、両歯20,21によって大きく延伸される。また、歯溝ロール21の歯24の先端部によって、歯溝ロール20の歯23から引き離される領域(P4−P3間)においては、前記領域(P2−P1間)程ではないが、大きく延伸される。
また複合体19は、歯溝ロール20,21の歯23,24の先端部に当接する領域(P3−P2間、P1−P4間)においては、前述のとおりほとんど延伸されないが、歯23,24の先端部によって、その径方向に、つまり複合体19の厚み方向に片押しされるので、厚み方向に薄くなる。但し領域(P3−P2間)と領域(P1−P4間)とは片押しされる方向が反対向きであるため、薄くなる方向が反対向きとなる。
前記の弾性発現処理工程によって、弾性フィラメント13と両不織布11,12との剥離を防止しつつ、複合体19における両不織布11,12を効率的に弾性発現処理させ、複合体19に伸縮性を付与することができる。
また、図2に示す断面形状の伸縮シート10を得るには、このような部分的な弾性発現処理を行う際に、歯溝ロール20,21を加熱するか、雰囲気の温度を高くし、弾性発現処理と同時に、弾性フィラメント13及び/又は両不織布11,12に、収縮したときに図1及び図2に示すような連続波形形状の立体形状に変形するように、くせ付けを行う。歯溝ロール20,21又は雰囲気の温度は、25℃〜90℃、特に30〜70℃とすることが好ましい。また、歯溝ロール20,21の歯形として、これらの歯幅を細くし、バックラッシを大きくしたものを用いることにより、繊維はフィラメントに過度なダメージを与えず、図2に示す断面形状の伸縮シート10を安定的に得ることができる。
このとき、弾性フィラメント13は、緩やかに波打っているために、厚み方向にも形状維持の力が働き、凹凸形状の安定性が高くなる。
また、図2に示す断面形状の伸縮シート10を得るには、歯溝ロール20,21それぞれの円ピッチを、好ましくは1〜5mm、より好ましくは2〜3.5mmとする。
これにより、自然状態としたときに、図1及び図2に示すような連続波形形状の立体形状となる複合体19を効率よく製造することができる。
複合体19は、歯溝ロール20,21の歯23,24に当接する領域(P3−P2間、P1−P4間)が、伸縮シート10の第1及び第2溝1,2に対応する。
複合体19が一対の歯溝ロール20,21によって部分的に弾性発現処理されると共に収縮後の屈曲状態を方向づけられることで、目的とする伸縮シート10が得られる。得られた伸縮シート10は、歯溝ロール20,21を通過した後、自身の収縮復元力により速やかにMD方向への延伸状態が解放される。その結果、伸縮シート10は、搬送方向へ長さが概ね復元して、図1及び図2に示すような、連続波形形状の立体形状を発現する。
このようにして得られた伸縮シート10は、50%戻り強度(A)/50%行き強度(B)の比が50%以上、特に65%以上となることが、十分な伸縮特性の発現や立体形状の安定性の向上の点から好ましい。
また、具体的な用途にもよるが、伸縮シート10は、その全体の坪量が10〜150g/m2、特に25〜60g/m2であることが好ましい。伸縮シート10は、自然状態における厚みTが、0.5〜20mm、特に2〜5mmであることが好ましい。
伸縮シート10の厚みTは、先に述べた各不織布11,12の厚みの測定と同様の方法で測定される。また、第1及び第2溝の深さD1,D2も、伸縮シート10に0.5cN/cm2の荷重を加えた状態において測定する。
本実施形態の伸縮シート10は、上述したように、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面シートや、床や家具等の清掃シートとして好適に用いられる。またこの用途以外に、その良好な風合いや、毛羽立ち防止性、伸縮性、通気性等の利点を生かし、医療用使い捨て衣類、眼帯、マスク、包帯等の各種の用途に用いることもでき、排泄物の取り込み性の観点から、皮膚に傷等がある場合にも有用である。特に生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の構成材料として好ましく用いられる。該構成材料としては、例えば、吸収体よりも肌側に位置する液透過性のシート、特に表面シートや、表面シートと吸収体との間に配されるサブレイヤー等や、使い捨ておむつの外面を構成するシート、胴回り部やウエスト部、脚周り部等に弾性伸縮性を付与するためのシート等が挙げられる。使い捨ておむつの外面を構成するシートとして用いた場合には、伸縮性、形状安定性が高いことから、高いフィット感を奏するとともに、凹凸形状のパターンの有する意匠性もあり、見た目にもよい印象を与えることができる。また、ナプキンのウイングを形成するシート等として用いることができる。また、それ以外の部位であっても、伸縮性を付与したい部位等に用いることができる。伸縮シート10の坪量や厚みは、その具体的な用途に応じて適切に調整できる。例えば吸収性物品の構成材料として用いる場合には、坪量20〜60g/m2程度、厚み0.5〜1.5mm程度とすることが望ましい。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
例えば、伸縮シート10に部分的にエンボス加工を行ったり、弾性フィラメント13を部分的にカットしたり部分的に熱シールしたりすることもできる。これらの操作は、伸縮シート10に伸縮しない部分を形成したり、強度を部分的に上げたりする目的で行われる。或いは、他の部材と貼り合わせたり、デザイン性を持たせたりする目的で行う。
また、弾性フィラメント13を不織布11,12に接合した後に行う部分的な延伸に関し、弾性発現処理方向は不織布11,12の流れ方向のみでなく、例えば斜めであっても良い。
更に、前記の製造方法において、弾性フィラメント13と不織布11,12とを接合する方法の別法として、一方の不織布上に直接弾性フィラメント13を溶融延伸することなしにダイレクト押出することもできる。この場合の延伸倍率は1倍である。また、弾性フィラメント13と不織布11,12とを接合する前に、不織布又は弾性フィラメントに補助的に接着剤を塗布し、その後に弾性フィラメントを実質的に未伸長の状態で貼り合わせることもできる。更に、接着剤を塗布せずに、弾性フィラメント13と不織布11,12とを重ねた後に補助的に熱処理(エアスルー法による熱風の吹き付け、スチームジェット、ヒートエンボス)や、機械交絡(ニードルパンチ、スパンレース)などを行うこともできる。このとき、不織布の代わりに繊維ウエブを片面又は両面に用いることもできる。
図1は、本発明の伸縮シートの一実施形態を示す斜視図である。 図2は、図1に示す伸縮シートの、弾性フィラメントが延びる方向(Y方向)に沿い且つ該伸縮シートの厚み方向に沿う自然状態の断面図である。 図3は、図1に示す伸縮シートの製造に好適に用いられる装置を示す模式図である。 図4は、図3に示す装置によって、複合体が部分的に延伸されると共に収縮後の屈曲状態を方向づけられる様子を示す模式図である。
符号の説明
10 伸縮シート
1 第1溝
1a 底部
1b 幅狭部
1c 幅広部
2 第2溝
2a 底部
2b 幅狭部
2c 幅広部
3 畝部
4 畝部
11 第1の不織布
12 第2の不織布
13 弾性フィラメント

Claims (5)

  1. 一方向に延びるように配列した多数の弾性フィラメントが2枚の不織布間に固定されており、これらが一体的に変形して、一方の面側に開口する第1溝及び他方の面側に開口する第2溝が前記一方向に交互に形成されている伸縮シートであって、
    前記2枚の不織布は、それぞれ伸長可能であり、
    第1溝及び第2溝は、それぞれ、前記弾性フィラメントが延びる方向の幅が狭い幅狭部と、該幅狭部より溝の底部側に位置し、該幅狭部の前記幅より同方向の幅が広い幅広部とを有している伸縮シート。
  2. 第1溝は、第2溝の底部の位置に達する深さを有し、第2溝は、第1溝の底部の位置に達する深さを有する、請求項1記載の伸縮シート。
  3. 前記弾性フィラメントは、弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されて形成されたものである請求項1又は2記載の伸縮シート。
  4. 前記弾性フィラメントが、紡糸ノズルから紡出された弾性樹脂を溶融延伸して得られたものである請求項記載の伸縮シート。
  5. 前記弾性フィラメントは、前記弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で1.1〜400倍に延伸されて得られたものであり、直径が10〜200μmになっている請求項記載の伸縮シート。
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