JP5018126B2 - Icタグ付き金属物品 - Google Patents
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Description
そして、このような各種の金属容器には、例えば商品名や内容物の成分、生産者、生産地、賞味期限等、所定の商品情報を表示した文字やバーコード等が付されている。この種の商品情報の表示は、通常、金属容器の外面に直接印刷されたり、ラベルに印刷されて貼付されるようになっている。
また、バーコード表示の場合、リーダで読み取るためにバーコード自体を容器表面に平面状に表示等しなければならず、また、傷や汚れ等があると読み取り不能となってしまい、しかも、バーコードでコード化できる情報量は限られていることから、文字による表示の場合と同様に、商品情報を表示、認識する手段としては一定の限界があった。
ICタグは、非接触ICタグ、RFID(Radio Frequency Identification)タグ、RFタグ等とも呼ばれ、ICチップと無線アンテナを樹脂やガラス等で封止してタグ(荷札)状に形成した超小型の通信端末で、ICチップに所定の情報を記録して対象物にタグを取り付け、記録した情報を無線通信により読取装置(リーダ・ライタ)側でピックアップすることにより、ICチップに記録された情報を認識、表示するものである。
そして、このようなICタグを用いることで、商品に関する種々の情報、例えば商品の名称や重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限・賞味期限等の種々の情報が記録可能となり、従来の文字やバーコードによる商品表示では不可能であった多種多様な商品情報であっても、小型・薄型化されたタグを商品に装着するだけで利用することが可能になった。
ICタグを容器に取り付けると、ICタグが発生する磁束は容器を貫通する方向に生じることになる。このため、タグを金属容器に取り付けた場合、アンテナ部が発する磁波・電磁波が金属容器側に吸収される熱損失等が生じてしまい、タグの通信特性が損なわれる事態が生じる。
また、金属容器101の影響によりタグ100のアンテナコイル部のインダクタンス等が変化してしまい、これによりアンテナの共振回路の共振周波数もずれてしまう。
このようにして、通常の汎用されているICタグをそのまま金属容器に取り付けると、タグが誤動作したり、リーダ・ライタとの無線通信が行えないという問題が発生した。
具体的には、図14に示すように、従来提案されている金属容器専用のICタグ102は、タグ内部の金属容器101と対向する側に、シート形状等に形成した磁性体(高透磁率体)103や誘電体が配設されるようになっており、これによって、ICタグ102が発する磁束を磁性体103内に通過させて、金属容器101側に渦電流が発生することを防止するようになっていた。
また、外見上目立たないようにICタグを小型化することも可能であるが、この場合には、必要なアンテナ長を確保できずに、無線通信の距離(範囲)が狭い範囲に限られたり、隣接する金属容器の影響等によって通信特性が損なわれるおそれがあった。
これにより、金属容器の蓋部等にICチップを実装するだけで、ICタグ付きの金属容器を構成することができ、ICタグ本体を小型化しつつ、金属容器からなるアンテナによって、通信に必要となる十分なアンテナ長を確保することができ、金属による通信特性の劣化等の問題も解消することができる。
さらに、金属容器をアンテナとすることにより、タグ側のアンテナを省略することができ、アンテナ用のコストを削減できるとともに、タグを可能な限り小型化することができ、小型かつ低コストな金属用ICタグを実現することができる。
これにより、金属蓋自体がアンテナとなることにより、金属蓋や金属容器により通信特性が影響を受けることなく、ICチップはリーダ・ライタとの間で通信が行え、しかも、容器の外観上デッドスペースとなる金属蓋にICチップが実装されるのみでICタグを構成でき、容器の外観を損なうことなく、金属蓋からなるアンテナによって通信に必要となる十分なアンテナ長を確保でき、リーダ・ライタとの間で良好な無線通信を行うことができる。
また、金属蓋に実装されるICチップは、既存の汎用タグのICチップを使用することができ、小型かつ安価に構成でき、本発明により、低コストで良好な通信特性が得られる金属対応のICタグを実現することができる。
また、ICタグが外観上目立たなくなることで、人目に付きにくくなり、人為的なICタグの剥離、損壊等も抑制することができる。
さらに、金属蓋は、容器の保管、出荷、陳列等の際にも、他の容器や器具、他の商品等とほとんど接触することがなく、金属蓋に装着されたICチップが他の容器や商品等と接触して破損したり、容器から脱落したりすることも有効に防止できるようになる。
特に、前記容器の胴部は、表面が樹脂被覆された樹脂被覆金属材からなる構成とすることが好ましい。
金属容器の金属蓋をタグのアンテナとして機能させる場合に、金属蓋の面積部分で十分なアンテナ長が得られれば、金属容器の胴部が蓋部と導通することで却って通信特性が劣化することがある。
そこで、本発明では、金属容器の蓋部をアンテナとして利用する場合に、蓋部と胴部を積極的に絶縁するようにしてあり、これによって胴部を構成する金属からの影響を回避して良好な通信特性が得られるようにしてある。
但し、巻締め部は、蓋部と胴部とが強固にかしめられた状態で圧着・密着するため、ウレタン樹脂等の充填では十分な絶縁効果が得られない場合がある。
そこで、本発明では、金属蓋をICタグ用アンテナとして機能させる場合に、容器胴部を樹脂被覆金属で構成するようにしてある。
このような樹脂被覆缶容器では、容器胴部を構成する金属材の外面や内面にPET樹脂等が被覆されており、このような樹脂被覆された胴部と蓋部とは、ウレタン樹脂等の有無に拘わらず、もともと完全な絶縁状態にある。
本発明では、この樹脂被覆缶容器の蓋部にICチップを実装することで、胴部側と完全に絶縁された蓋部をICタグ用アンテナとして機能させるようにしてある。これによって、巻締め部に別途絶縁部材の充填等を必要とすることなく、蓋部を胴部と完全に絶縁された状態として、良好な通信特性を得ることができるようになる。
金属容器に備えられる開封用タブ(プルタブ)のリング孔は、一般に、開封時の指掛け用の孔として認識されているが、近年の開封用タブは、開封後も金属蓋から分離されない構造となっており、小型化され、容器から完全に切り離される旧来の大型のプルタブとは異なり、リング孔も小さいものとなっている。
すなわち、現在流通している金属容器の開封用タブのリング孔は、実際には孔に指が入れられることはなく、せいぜい開封時に指の腹で押えられる程度のものとなっている。
また、ICチップをリング孔内に隠蔽して、外観上目立たなくすることができ、リング部によってICチップを保護することもできる。
ICチップから突出するコンタクト部材は、封止部材から外部に突出し、開封用タブに接触・導通することになる。
また、弾性を有する封止部材で被覆・封止されることで、ICチップは外部からの接触・衝撃等からも保護され、信頼性の高いICタグ付き金属容器を提供できるようになる。
このような係止溝を開封用タブ側に形成することで、コンタクト部材をより確実に開封用タブと接触させることができ、ICチップの装着の際の位置決め等も容易となり、開封用タブに対するコンタクト部材の接続作業が容易に行えるようになる。
また、コンタクト部材を溝に係止・係合させることで、コンタクト部材は係止溝によって堅固に保持され、コンタクト部材の接続不良等を長期に亘って防止することができ、より信頼性の高いICタグ付き金属容器を提供できるようになる。
これによって、タグ本体を小型化しつつ、必要なアンテナ長を確保でき、金属による通信特性への影響も回避することができ、外見上タグが目立たなくなって金属容器等の外観が保たれ、かつ、リーダ・ライタとの間で良好な無線通信が行える、特にアルミニウム缶やスチール缶等の金属容器に好適なICタグ付き金属物品を実現することができる。
[金属物品]
図1は、本発明の一実施形態に係るICタグ付き金属物品となる金属容器を示す斜視図であり、図2は、本実施形態に係る金属容器を示す部分断面図、図3は、同じく本実施形態に係る金属容器の巻締め部を示す断面図である。
これらの図に示すように、本実施形態の金属容器10は、飲料が充填されるアルミニウム缶、スチール缶等の缶容器であり、缶の胴部及び底部からなる容器本体20と、缶の蓋部となる金属蓋30とで構成されている。
そして、このような金属容器10の金属蓋30に、リーダ・ライタとの間で通信を行うICタグ40が装着されるようになっている。
本実施形態の金属容器10は、胴部及び底部を形成する容器本体20に、蓋部を形成する金属蓋30を巻締めるツーピース缶によって構成してある。
但し、金属容器10は、スリーピース缶によって構成してもよい。
そして、本実施形態では、後述する図4〜図6に示すように、容器本体20に巻締められる金属蓋30にICチップ40を実装し、コンタクト部材43を介して電気的に接続することにより、金属蓋30をICタグ用のアンテナとして機能させるようにしてある。
このような構成から、容器本体20と金属蓋30は、絶縁部材であるウレタン樹脂22を介して電気的に絶縁されることになる。
そこで、本実施形態では、金属容器10の蓋部(金属蓋30)と胴部(容器本体20)を積極的に絶縁するようにしてあり、これによって胴部を構成する金属からの影響を回避して良好な通信特性が得られるようにしてある。
具体的には、本実施形態では、容器本体20を樹脂被覆金属で構成することで(図3に示す樹脂被覆層23,23参照)、金属蓋30と容器本体20とが完全に絶縁されるようにしてある。
このような樹脂被覆缶容器では、容器胴部を構成する金属材の外面や内面にPET樹脂等が被覆されており、このような樹脂被覆された胴部と蓋部とは、ウレタン樹脂等の有無に拘わらず、もともと完全な絶縁状態にある。
本実施形態では、容器本体20をこのような樹脂被覆缶容器で構成し、この侍史被覆缶容器の蓋部にICチップを実装することで、胴部側と完全に絶縁された蓋部をICタグ用アンテナとして機能させるようにしてある。これによって、巻締め部に別途絶縁部材の充填等を必要とすることなく、金属蓋30を容器本体20と完全に絶縁された状態として、良好な通信特性が得られるようにしてある。
ただし、容器本体20と金属蓋30が完全に絶縁されていなくても、ICタグ(ICチップ)の通信は可能である。その意味で、容器本体20と金属蓋30とは、完全に絶縁されていることがより好ましいが、一定の絶縁性が得られれば良いことになる。
樹脂被覆金属板は、例えば、厚さが0.18mmのティンフリースチール板等の金属薄板の両面に、厚み20μmのポリブチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネートしたものが好適に用いられる。
また、金属薄板に被覆される樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体,エチレンテレフタレート−アジペート共重合体,ブチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂,ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン−ポリプロピレン共重合体,エチレン−酢酸共重合体,アイオノマー等のポリオレフィン系樹脂,ナイロン6,ナイロン66等のポリアミド系樹脂などがある。
図4は、本発明の一実施形態に係る金属蓋の平面図である。
同図に示すように、金属蓋30は、円形の蓋パネル32と開封用タブ33を備えた構成となっている。
蓋パネル32は、円形の金属板であり、周縁部には、上述したカバーフック31が形成され、中央部オフセット位置には、開口予定領域を囲むようにスコア34が形成されている。
開封用タブ33は、剛性のある金属板状部材であって、リベット35を介して蓋パネル32に固定される固定部36と、固定部36から蓋パネル32に沿って延びるリング部37とが一体的に備られており、リベット35を介して蓋パネル32と電気的に導通されている。
固定部36は、スコア34に囲まれた開口予定領域にオーバーラップするように蓋パネル32に固定されており、リング部37は、スコア34から遠ざかる方向に延びている。
リング部37の一部又は全体は、蓋パネル32の表面から離間するように形成することが好ましい。このようにすると、リング部37と蓋パネル32の間に指掛け空間が確保されるので、リング部37の指掛けや引き起しが容易になる。
開封用タブのリング孔は、一般には、開封操作時の指掛け用の孔として認識されているが、近年の開封用タブは、開封後も金属蓋から分離されない構造となっており、小型化され、容器から完全に切り離される旧来の大型のプルタブとは異なり、リング孔も小さいものとなっている。本実施形態の開封用タブ33も、このような開封後も金属蓋から分離されない、リング孔の小さいタイプのものとなっている。そして、このようなタイプの開封用タブのリング孔は、実際には孔に指が入れられることはなく、せいぜい開封時に指の腹で押えられる程度のものとなっている。
そこで、本実施形態では、このように実際にはデッドスペース化している開封用タブ33のリング部37のリング孔38をICタグ40(ICチップ41)の装着空間として有効活用するようにしてある。
図5は、本実施形態に係る金属蓋の開封用タブにICタグを装着した状態を示す拡大平面図である。
同図に示すように、このICタグ40は、封止部材42で封止された状態で、金属蓋30の開封用タブ33に装着されるようになっている。
一般に、ICタグは、ICチップとアンテナとを有し、これらを樹脂などからなる基材に搭載して構成されるが、本実施形態に係るICタグ40は、専用のアンテナを備えず、金属容器10の一部を、ICタグ用のICチップ41に電気的に接続し、ICタグ40のアンテナとして機能させるようにしてある。
具体的には、ICタグ40は、ICチップ41と、このICチップ41から外部に突出するコンタクト部材43を備え、コンタクト部材43を介してICチップ41と金属容器10の一部(本実施形態では金属蓋30)とが電気的に接触・導通するようになっている。
そして、このICタグ40は、図5に示すように、ゴム等の封止部材42で封止された状態で、金属蓋30の開封用タグ33に装着されるようになっている。
そして、ICチップ41から突出するコンタクト部材43が、封止部材42から外部に突出し、開封用タブ33に接触し、ICチップ41は金属蓋30と電気的に導通することになる。
本実施形態では、金属蓋30は、上述したように容器本体20と完全に絶縁されているので、金属蓋30のアンテナとしての機能が、容器本体20を構成する金属の影響を受けない。
例えば、4本突出しているコンタクト部材43のうち、実際にICと接触するコンタクト部材は、アンテナの設計により1本でも2本でもよく(後述する図7〜8参照)、その他のコンタクト部材はICと導通させず、ICタグ40とプルタブとの固定・支持の役割だけとしても構わない。
また、コンタクト部材43の材質としては、Cu製やAl製のワイヤが好適であるが、ICとの導通性が必要な場合には、金属のような導電性のある材質で形成し、一方、プルタブとの固定だけでICとの導通性が必要ない場合には、金属等の導電性物質である必要はなく、樹脂材料等、ICタグ40の支持・固定に好適な任意の材質・部材を使用することができる。
上述したように、現在流通している金属容器の開封用タブのリング孔は、実際には孔に指が入れられることはなく、せいぜい開封時に指の腹で押えられる程度のものとなっている。そこで、本実施形態では、実際にはデッドスペース化している開封用タブ33はリング孔38をICタグの装着空間として有効活用して、開封用タブ33のリング孔38にICチップ41を装着してある。
このようにすることで、開封用タブ本来の機能を損なうことなく、金属蓋30の空間を有効に利用でき、また、ICチップ41をリング孔38内に隠蔽して、外観上目立たなくすることができるとともに、リング部37によってICタグを保護することもできる。
具体的には、図5に示すように、ICタグ40からは放射状に4本のコンタクト部材43が突出しており、これらコンタクト部材43が係止可能な4本の係止溝39が、開封用タブ33のリング部37の上面部に形成してある。
また、コンタクト部材43を溝に係止・係合させることで、コンタクト部材43は係止溝39によって堅固に保持され、コンタクト部材43の接続不良等を長期に亘って防止することもできるようになる。
そして、アンテナを介して図示しないリーダ・ライタとの間で無線通信による読み書き(データ呼び出し・登録・削除・更新など)が行われ、ICチップ41に記録されたデータが認識されるようになっている。
ICチップ41に記録されるデータとしては、例えば、商品の識別コード、名称、重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限等、任意のデータが記録可能であり、また、書換も可能である。
本実施形態では、金属蓋30をアンテナとして機能させることから、金属蓋30の径・面積を所定の値に設定することで、特定周波数帯(例えば2.45GHz帯)に適したアンテナとすることができる。
ウレタン樹脂に硬化剤のイソシアネート樹脂を混合し、ICタグを入れた型に流し込み、硬化させて封止する。また、樹脂やゴムでできた基板をICタグが装着できるように成形し、挟み込んだり装着したりすることで封止してもよい。
これにより、ゴム等の弾性部材で封止されたICタグ40は、装着のための基材や接着剤等を必要とすることなく、金属蓋30に脱落不能に取り付けることができ、ICタグ40の装着作業はきわめて容易に行うことができる。また、このように圧入状態で装着されたICタグ40は、取り外しも簡単に行え、容器の使用後の廃棄・回収の際にも、容器とICタグとの分別が容易となりリサイクルに資する金属容器を実現することができる。
さらに、ゴム等の弾性部材で封止されたICタグ40は、外部からの接触・衝撃等からも保護されることになる。
さらに、金属蓋30に装着されるICタグ40は、外見上目立つことなく大型化できるので、金属蓋30によって十分なアンテナ長を容易に確保できるだけでなく、隣接する金属容器10で隠れてしまう可能性を低減し、リーダ・ライタとの間で良好な無線通信を行うことができる。
つぎに、金属蓋30に対するICタグ40の装着方法について、図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係るICタグの装着方法を示す金属容器の部分斜視図であり、(a)はICタグの装着前の状態、(b)はICタグを装着した状態を示している。
まず、ICタグ40は、上述したように、ICチップ41が予め封止部材42で被覆・封止される。ICチップ41を封止した封止部材42は、適度な弾性を有している。
また、ICタグ40を被覆・封止した封止部材42の外形は、開封用タブ33に形成されるリング孔38の形状に対応しており、リング孔38よりも若干大きく形成される(図6(a)参照)。
また、ICタグ40からは、ICチップ41に電気的に接続されたコンタクト部材43が四方に延出されており、このコンタクト部材43が封止部材42を貫通して外部に突出している。
装着作業は、封止部材42から突出するコンタクト部材43と開封用タブ33の係止溝39とを位置合わせしつつ、弾性を有する封止部材42をリング孔38に押し込むようにして簡単に装着することができる。
ICタグ40が装着されると、突出するコンタクト部材43がリング部37に当接して開封用タブ33と導通するとともに、リング部37に形成された係止溝39に係止・保持される。
そして、容器の使用後等に廃棄・回収する際には、リング孔38に圧入状態で装着されている封止部材42を押し出すことで、ICタグ40を開封用タブ33から取り外すことができる。
次に、本実施形態に係るICタグ付き金属物品によって構成されるICタグの通信特性について図7を参照して説明する。
図7は、共振周波数2.45GHzのICタグ20を絶縁封止して、本実施形態の金属蓋を介して金属容器30に実装・装着した場合のICタグの共振周波数と無線信号の強度の関係を示すグラフである。同図に示すグラフは、コンタクト部材2本をICと導通させて、プルタブの部分をダイポールアンテナと見立てた場合の結果を示している。なお、同図は、周囲環境などの影響を考慮せずに設計されている既存の汎用タグを使用した結果を示している。
同図に示すように、RFIDタグは共振周波数2.9GHz帯域でリターンロスが−12dB以下となり、本実施形態に係る構成をとることで、良好な通信特性を確保できることがわかる。
また、図8は、コンタクト部材1本をICと導通させて、プルタブをモノポールアンテナと見立てた場合の結果示している。2本導通させた場合の結果と同様の良好な通信特性を確保できることが確認できる。
金属蓋30の大きさによりアンテナ性能を比較すると、例えば、図9に示すように、φ52mmとφ60mmの金属蓋をICタグのアンテナとして機能させたところ、両アンテナともほぼ同様のリターンロスとなることが確認された。
ICタグでは、アンテナ部分のインピーダンス(Zan)とIC部分のインピーダンス(Zic)とが整合されていなければならない。
つまり、インピーダンスは複素数であり、実数部{Re(Zan)}と{Re(Zic)}の値が一致し、及び虚数部{Im(Zan)}と{Im(Zic)}の和が0となれば最高の性能となる。これらが不整合になれば、それだけICタグ40の性能は劣化することになる。
同図に示すように、金属蓋アンテナにおいては、ICインピーダンスを
Zic=25Ω−j110Ω
とした場合、リターンロスが最高性能(−25db)となる結果を得た。
また、
Zic=12.5Ω−j110Ω
とした場合、整合がずれたため、リターンロスが−10dbと性能が劣化した。
これらの図はスミスチャートと呼ばれるもので、整合がとれているかを判断するためのものである。
具体的には、周波数ごとに計算されたICインピーダンスをチャート上にプロットしたもので、円の中心に線がくれば、その周波数で整合が取れていることを表す。チャートの中心部に描画されている点線円は、その内側に線が入れば、リターンロスが−10db以下であることを意味する。
図11及び図12のスミスチャートでは、Zicの実数部及び虚数部を変化させた場合の結果を示している。この結果より、金属蓋をアンテナに用いる場合のICインピーダンス(Zic)の範囲として、
実数部Re(Zic): 12.5〜150Ω
虚数部Im(Zic): −110〜−125Ω
であれば、ICタグとして機能することが確認された。
これにより、金属容器10の蓋部にICチップ41を実装するだけで、ICタグ付きの金属容器を構成することができ、ICタグ本体を小型化しつつ、金属蓋30からなるアンテナによって、通信に必要となる十分なアンテナ長を確保することができ、金属による通信特性の劣化等の問題も解消することができる。
さらに、金属容器10の一部をアンテナとすることにより、タグ側のアンテナを省略することができ、アンテナ用のコストを削減できるとともに、タグを可能な限り小型することができ、小型かつ低コストな金属用ICタグを実現することができる。
また、金属蓋30に実装されるICチップ41は、既存の汎用タグのICチップを使用することができ、小型かつ安価に構成でき、低コストで良好な通信特性が得られる金属対応のICタグを実現することができる。
また、ICタグ40が外観上目立たなくなることで、人目に付きにくくなり、人為的なICタグ40の剥離、損壊等も抑制することができる。
さらに、金属蓋30は、容器の保管、出荷、陳列等の際にも、他の容器や器具、他の商品等とほとんど接触することがなく、金属蓋30に装着されたICチップ41が他の容器や商品等と接触して破損したり、容器から脱落したりすることも有効に防止できるようになる。
なお、本発明を以下の実施例により更に説明するが、本発明は下記実施例により何らかの制限を受けるものではない。
(実施例1)
ICチップとコンタクト部材(Cu製 φ0.25mmのワイヤ)と封止部材(エポキシ樹脂)を用いてICタグを作製した。使用したICは2.45GHzのもので、コンタクト部材は1本だけICと導通させて他の3本は導通しない状態にした。このICタグを市販されているアルミ缶(350ml、缶蓋径φ60mm)のプルタブに取り付けて、コンタクト部材を介して導通させて通信特性試験を行った。
使用したリーダ・ライタの出力は約30dBmで、リーダ・ライタに接続したアンテナは、約6dBiの直線偏波であった。この時の通信距離は、約10cmであり、金属表面にもかかわらず、良好な通信特性を確保できた。
例えば、上述した実施形態では、本発明を適用する金属容器として、飲料等が充填される金属製の缶容器を例にとって説明したが、本発明を適用できる金属容器としては、容器の用途や収納する内容物、容器の構成成分等は特に限定されるものではない。すなわち、ICチップと電気的に導通されてアンテナとして機能できる金属蓋等を備える容器であれば、どのような大きさ、形状、材質等の容器であってもよく、また、容器に収納される内容物がどのようなものであってもよい。
また、上述した実施形態では、本発明の金属物品として金属容器を例にとって説明したが、本発明の金属物品は、金属容器に限定されるものではない。すなわち、ICタグのICチップに電気的に接続し、ICタグのアンテナとして機能可能な金属部材を備える金属物品であれば、どのような対象物にも本発明を適用することができる。
20 容器本体
23 樹脂被覆層
30 金属蓋
32 蓋パネル
33 開封用タブ
34 スコア
35 リベット
36 固定部
37 リング部
38 リング孔
39 係止溝
40 ICタグ
41 ICチップ
42 封止部材
43 コンタクト部材
Claims (8)
- 一部又は全部が金属部材からなる金属物品と、
外部に突出するコンタクト部材を備えたICタグ用のICチップと、を備え、
前記金属物品が金属製の容器であり、前記金属部材が、前記金属製の容器の一部からなり、
前記金属部材と前記ICチップとが、前記コンタクト部材を介して電気的に接続されることにより、当該金属部材がICタグ用アンテナとして機能することを特徴とするICタグ付き金属物品。 - 一部又は全部が金属部材からなる金属物品と、
外部に突出するコンタクト部材を備えたICタグ用のICチップと、を備え、
前記金属部材が、容器を封止する金属蓋からなり、
前記金属部材と前記ICチップとが、前記コンタクト部材を介して電気的に接続されることにより、当該金属部材がICタグ用アンテナとして機能することを特徴とするICタグ付き金属物品。 - 一部又は全部が金属部材からなる金属物品と、
外部に突出するコンタクト部材を備えたICタグ用のICチップと、を備え、
前記金属物品が金属製の容器であり、前記金属部材が、前記金属製の容器を封止する金属蓋からなり、
前記金属部材と前記ICチップとが、前記コンタクト部材を介して電気的に接続されることにより、当該金属部材がICタグ用アンテナとして機能することを特徴とするICタグ付き金属物品。 - 前記金属蓋が、前記容器の胴部と絶縁されている請求項2又は3記載のICタグ付き金属物品。
- 前記容器の胴部が、表面が樹脂被覆された樹脂被覆金属材からなる請求項4記載のICタグ付き金属物品。
- 前記金属蓋が、リング孔を有する開封用タブを備え、
前記ICチップが前記開封用タブのリング孔内に配設され、前記コンタクト部材が前記開封用タブに接触することにより、前記金属蓋と前記ICチップとが電気的に接続される請求項2乃至5のいずれかに記載のICタグ付き金属物品。 - 前記ICチップが封止部材によって被覆され、当該封止部材が前記リング孔内に圧入されることにより、前記ICチップが前記リング孔内に装着される請求項6記載のICタグ付き金属物品。
- 前記開封用タブが、前記コンタクト部材が係止可能な係止溝を備える請求項6又は7記載のICタグ付き金属物品。
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