JP5649798B2 - Icタグ付き金属蓋及び金属容器 - Google Patents
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Description
そして、このような各種の金属容器には、例えば商品名や内容物の成分、生産者、生産地、賞味期限等、所定の商品情報を表示した文字やバーコード等が付されている。この種の商品情報の表示は、通常、金属容器の外面に直接印刷されたり、ラベルに印刷されて貼付されるようになっている。
また、バーコード表示の場合、リーダで読み取るためにバーコード自体を容器表面に平面状に表示等しなければならず、また、傷や汚れ等があると読み取り不能となってしまい、しかも、バーコードでコード化できる情報量は限られていることから、文字による表示の場合と同様に、商品情報を表示、認識する手段としては一定の限界があった。
ICタグは、非接触ICタグ、RFID(Radio Frequency Identification)タグ、RFタグ等とも呼ばれ、ICチップと無線アンテナを樹脂やガラス等で封止してタグ(荷札)状に形成した超小型の通信端末で、ICチップに所定の情報を記録して対象物にタグを取り付け、記録した情報を無線通信により読取装置(リーダ・ライタ)側でピックアップすることにより、ICチップに記録された情報を認識、表示するものである。
そして、このようなICタグを用いることで、商品に関する種々の情報、例えば商品の名称や重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限・賞味期限等の種々の情報が記録可能となり、従来の文字やバーコードによる商品表示では不可能であった多種多様な商品情報であっても、小型・薄型化されたタグを商品に装着するだけで利用することが可能になった。
ICタグを容器に取り付けると、ICタグが発生する磁束は容器を貫通する方向に生じることになる。このため、タグを金属容器に取り付けた場合、アンテナ部が発する磁波・電磁波が金属容器側に吸収される熱損失等が生じてしまい、タグの通信特性が損なわれる事態が生じる。
また、金属容器101の影響によりタグ100のアンテナコイル部のインダクタンス等が変化してしまい、これによりアンテナの共振回路の共振周波数もずれてしまう。
このようにして、通常の汎用されているICタグをそのまま金属容器に取り付けると、タグが誤動作したり、リーダ・ライタとの無線通信が行えないという問題が発生した。
具体的には、図20に示すように、従来提案されている金属容器専用のICタグ102は、タグ内部の金属容器101と対向する側に、シート形状等に形成した磁性体(高透磁率体)103や誘電体が配設されるようになっており、これによって、ICタグ102が発する磁束を磁性体103内に通過させて、金属容器101側に渦電流が発生することを防止するようになっていた。
また、外見上目立たないようにICタグを小型化することも可能であるが、この場合には、必要なアンテナ長を確保できずに、無線通信の距離(範囲)が狭い範囲に限られたり、隣接する金属容器の影響等によって通信特性が損なわれるおそれがあった。
また、金属蓋を構成するタブとICチップを、整合回路を介して電気的に接続することにより、タブをICタグ用のアンテナとして機能させ、タブとICチップが一体となってICタグを構成するようにしてある。
これにより、金属容器の蓋部等にICチップを実装するだけで、ICタグ付きの金属容器を構成することができ、ICタグ本体を小型化しつつ、金属容器からなるアンテナによって、通信に必要となる十分なアンテナ長を確保することができ、金属による通信特性の劣化等の問題も解消することができる。
さらに、タブをアンテナとすることにより、タグ側のアンテナを省略することができ、アンテナ用のコストを削減できるとともに、タグを可能な限り小型化することができ、小型かつ低コストな金属用ICタグを実現することができる。
式(1):Re(Zma)=Re(Zic)−Re(Zan)
式(2):Im(Zma)=−Im(Zic)−Im(Zan)
このような構成とすると、ICチップ及びアンテナであるタブ間のインピーダンス整合を行なうことができる。
例えば、タブのリング部の周囲長を所定の長さとすることによりタブの構造を変化させて、インピーダンスの虚数部成分を調整することができる。
これにより、タブのアンテナ動作利得を向上させることができ、この点でも通信距離を延長することができる。また、整合回路の回路長や、回路パターンを簡略化することができるようになり、ICタグの小型化を容易に行なうことができる。
また、整合回路及びタブの構造の双方でインピーダンス整合を行なうので、どちらか一方だけでインピーダンス整合を行なう場合に比較して、整合回路の回路パターンやタブの形状を、複雑なものとすることなくICチップとアンテナ間のインピーダンス整合を行なうことができる。そのため、製造コストを低減することができる。
このような構成からなる金属蓋は、タブ自体が邪魔になることなく缶の開封を行なうことができる。
このような構成からなる金属蓋は、ICチップを実装するだけで、ICタグ付きの金属容器を構成することができ、ICタグ本体を小型化しつつ、金属蓋からなるアンテナによって、通信に必要となる十分なアンテナ長を確保することができ、金属による通信特性の劣化等の問題も解消することができる。
このような構成からなる金属蓋は、突出部が設けられることにより、タブを流れる電流長を調整することができる。
すなわち、突出部を、その位置や数を異ならせて設けることにより電流長を調整して、タブのインピーダンスを適当なものとすることができるので、より容易に所望の通信周波数帯域での通信を行なうことが可能となる。
このような構成からなる本発明の金属容器によれば、本発明に係るICタグ付き金属蓋を備えることで、アルミニウム缶、スチール缶等の金属容器において、容器の外観・デザインを損なうことなく、また、ICタグの破損・脱落等を防止しつつ、リーダ・ライタとの間で良好な無線通信を行うことができる。
また、ICチップを金属蓋と電気的に接触させることにより、金属蓋自体をICタグのアンテナとして機能させ、金属蓋とICチップとが一体となってICタグを構成することができる。これによって、タグ本体を小型化しつつ、必要なアンテナ長を確保でき、金属による通信特性への影響も回避することができ、外見上タグが目立たなくなって金属容器等の外観が保たれ、かつ、リーダ・ライタとの間で良好な無線通信が行えるようになる。
従って、本発明によれば、特に、アルミニウム缶やスチール缶等の金属容器に好適なICタグ付き金属蓋を実現することができる。
[第一実施形態]
まず、図1〜9を参照して、本発明の第一実施形態に係るICタグ付き金属蓋及びこの金属蓋を備えた金属容器について説明する。
(金属容器)
図1は、本発明の第一実施形態に係るICタグ付き金属蓋を備えた金属容器を示す斜視図であり、図2は、本実施形態に係る金属容器を示す部分断面図、図3は、同じく本実施形態に係る金属容器の巻締め部を示す断面図である。
これらの図に示すように、本実施形態の金属容器10は、飲料が充填されるアルミニウム缶、スチール缶等の缶容器であり、缶の胴部及び底部からなる容器本体20と、缶の蓋部となる金属蓋30とで構成されている。
そして、このような金属容器10の金属蓋30に、リーダ・ライタとの間で通信を行うICタグ40が装着されるようになっている。
本実施形態の金属容器10は、胴部及び底部を形成する容器本体20に、蓋部を形成する金属蓋30を巻締めるツーピース缶によって構成してある。
但し、金属容器10は、スリーピース缶によって構成してもよい。
この巻締め部は、金属容器10に充填された内容物の品質保持に大きな影響を与える部分であり、通常は、巻締め部の重ね合わせ部分にウレタン樹脂P等を塗布し、必要な密封性が確保されるようになっている。
このような構成により、金属容器10は、容器本体20と金属蓋30は、絶縁部材であるウレタン樹脂Pを介して絶縁されるが、厳密には、容器本体20と金属蓋30が直接接触する部分も存在しているので、完全な絶縁状態とはなっていない。
このような樹脂被覆缶容器では、容器胴部を構成する金属材の外面や内面にPET樹脂等が被覆されており、このような樹脂被覆された胴部と蓋部とは、ウレタン樹脂等の有無に拘わらず、もともと完全な絶縁状態にある。
従って、容器本体20をこのような樹脂被覆缶容器で構成し、この樹脂被覆缶容器の蓋部にICチップを実装することで、胴部側と完全に絶縁された蓋部をICタグ用アンテナとして機能させることができる。これによって、巻締め部に別途絶縁部材の充填等を必要とすることなく、金属蓋30を容器本体20と完全に絶縁された状態として、良好な通信特性が得られるようになる。
同図に示す金属容器10は、蓋部(金属蓋30)と胴部(容器本体20)が樹脂被覆によって絶縁されるようになっており、これによって胴部を構成する金属からの影響を回避して良好な通信特性が得られるようになる。
具体的には、本実施形態では、容器本体20を樹脂被覆金属で構成することで(樹脂被覆層23,23参照)、金属蓋30と容器本体20とがほぼ完全に絶縁されるようにしてある。
樹脂被覆金属板は、例えば、厚さが0.18mmのティンフリースチール板等の金属薄板の両面に、厚み20μmのポリブチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネートしたものが好適に用いられる。
また、金属薄板に被覆される樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体,エチレンテレフタレート−アジペート共重合体,ブチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂,ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン−ポリプロピレン共重合体,エチレン−酢酸共重合体,アイオノマー等のポリオレフィン系樹脂,ナイロン6,ナイロン66等のポリアミド系樹脂などがある。
従って、金属容器10の構成は、容器本体20及び金属蓋30が導通するタイプ(図3参照)、これらが絶縁させられるタイプ(図4参照)のどちらであってもよい。
図5は、本発明の第一実施形態に係るICタグ付き金属蓋を及びこの金属蓋を備える金属容器の一部拡大斜視図である。図6は、本実施形態に係る金属蓋及び金属容器を示す図であって、(a)は、平面図、(b)は、側面断面図である。
これらの図に示すように、金属蓋30は、円形の蓋パネル32と開封用タブ33を備えた構成となっている。
蓋パネル32は、円形の金属板であり、周縁部には、上述したカバーフック31が形成され、中央部オフセット位置には、開口予定領域を囲むようにスコア34が形成されている。
また、タブ33は、タブ33の先端側端縁と蓋パネル32の内径との間に、指を挿入可能な空間が形成される形状に形成されている。
固定部36は、スコア34に囲まれた開口予定領域にオーバーラップするように蓋パネル32に固定されており、リング部37は、スコア34から遠ざかる方向に延びている。
リング部37の一部又は全体は、蓋パネル32の表面から離間するように形成することが好ましい。このようにすると、リング部37と蓋パネル32の間に指掛け空間が確保されるので、リング部37の指掛けや引き起しが容易になる。
開封用タブのリング孔は、一般には、開封操作時の指掛け用の孔として認識されているが、近年の開封用タブは、開封後も金属蓋から分離されない構造となっており、小型化され、容器から完全に切り離される旧来の大型のプルタブとは異なり、リング孔も小さいものとなっている。本実施形態の開封用タブ33も、このような開封後も金属蓋から分離されない、リング孔の小さいタイプのものとなっている。そして、このようなタイプの開封用タブのリング孔は、実際にはリング孔38に指が入れられることはなく、せいぜい開封時に指の腹で押えられる程度のものとなっている。
そこで、本実施形態では、このように実際にはデッドスペース化している開封用タブ33のリング部37のリング孔38にまたがってICタグ40(ICチップ41)を搭載することによりリング孔38を装着空間として有効活用するようにしてある。
図5及図6に示すように、ICタグ40は、金属蓋30の開封用タブ33に装着される。
一般に、ICタグは、ICチップとアンテナとを有し、これらを樹脂などからなる基材に搭載して構成されるが、本実施形態に係るICタグ40は、専用のアンテナを備えず、金属容器10の一部を、ICタグ用のICチップ41に電気的に接続し、ICタグ40のアンテナとして機能させるようにしてある。
具体的には、ICタグ40は、矩形状の基板45(図8参照)上に搭載されるICチップ41と、基板45上に形成され、ICチップ41及びタブ33に電気的に接触されるとともに、ICチップ41とタブ33間のインピーダンス整合をとる整合回路50(図7、8参照)とを備えている。
そして、このICタグ40は、金属蓋30の開封用タグ33に装着されている。
ICチップ41は、メモリ等の半導体チップからなり、例えば数百ビット〜数キロビットのデータが記録可能となっている。
そして、金属蓋30で構成されるアンテナを介して図示しないリーダ・ライタとの間で無線通信による読み書き(データ呼び出し・登録・削除・更新など)が行われ、ICチップ41に記録されたデータが認識されるようになっている。
ICチップ41に記録されるデータとしては、例えば、商品の識別コード、名称、重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限等、任意のデータが記録可能であり、また、書換も可能である。
本実施形態では、金属蓋30をアンテナとして機能させることから、金属蓋30の径・面積を所定の値に設定することで、特定周波数帯(例えば2.45GHz帯)に適したアンテナとすることができる。
これらの図に示すように、整合回路50は、基板45上に、例えば、アルミニウムなどの導電性金属で形成された回路パターンで構成されている。そして、整合回路50は、基板45を貫通してタブ33に接触するコンタクト部51を備えている。
また、このコンタクト部51は、整合回路50とタブ33とを電気的に接続している。
なお、コンタクト部51は、少なくとも1箇所においてタブ33と電気的に接続していれば良く、従って、コンタクト部51は複数設けられていても良い。
インピーダンス整合は、ICチップ41、アンテナ(タブ33)及び整合回路50のインピーダンスにおいて、ICチップ41の実数部成分の値と、アンテナ及び整合回路の実数部成分の和の値とが一致し({Re(Zic)}={Re(Zan)}+{Re(Zma)})、かつ、ICチップ41、アンテナ及び整合回路の虚数部成分の和の値が0({Im(Zic)}+{Im(Zan)}+{Im(Zma)}=0)となれば最高の性能となる。
そして、これらが不整合になれば、それだけICタグ40の性能は劣化することになる。
式(1):Re(Zma)=Re(Zic)−Re(Zan)
式(2):Im(Zma)=−Im(Zic)−Im(Zan)
なお、本回路は、整合回路の一例であって、上述の式(1)及び式(2)を満たす回路であればどのような回路であってもよい。
ICチップ41は、そのインピーダンス(Zic)の虚数部成分{Im(Zic)}がマイナスである。これは、ICチップ41は、リーダ・ライタ側からの電波のエネルギーを直流成分に変換するための整流回路を備えており、これがリアクタンス成分を有していることに起因する。
そのため、ICチップ41及びアンテナであるタブ33のインピーダンスの整合を行なうには、実数部及び虚数部の成分をともに増やす必要がある。
また、整合回路50は、インピーダンス(Zma)の実数部成分{Re(Zma)}を増やすため、コの字状の部分を備えている(図8中、符号56)。この部分56は、回路長を長くするのでインピーダンスの実数部成分{Re(Zma)}の値を増やすことができる。また、この部分56においても、虚数部成分{Im(Zma)}の値の調整も行なっている。
以上のような構成からなる本発明の第一実施形態に係る金属蓋及び金属容器の通信特性について以下に説明する。
以下の例では、ICチップ41として、インピーダンスが、Zic=10−j100程度のものを使用し、特定小電力のリーダ・ライタとの間で通信を行った。リーダ・ライタに接続したアンテナは、約6dBiの直線偏波である。
また、ICタグ40は、大きさが、縦×横=約10mm×10mm、厚さ0.8mmであり、基板45として、誘電率3.9の基板を用いた。
そして、このICタグ40を、市販されているスチール缶(190ml、缶蓋径約φ50mm)のプルタブに取り付けた。
図9は、金属蓋及び金属容器に実装・装着した場合のICタグの共振周波数と無線信号の強度の関係を示すグラフ図であって、(a)本発明の第一実施形態に係るグラフ図、(b)比較例に係るグラフ図である。
また、通信距離は、2.0〜2.5cmであった。
これに比較して、本発明に係る整合回路を備えない従来の同様のタイプのICタグを、上記のスチール缶に取り付けた場合は、通信周波数帯域内において、リターンロスの最大性能が、約−1.5dB(通信周波数=2.40GHz)であった(図9(b)参照)。
また、このものの通信距離は、整合回路をもつものより減少し、リーダアンテナと接触しないと読み取りは不可能となった。このことより、整合回路が、通信距離に影響を及ぼすことを確認した。
そのため、このICタグ40を金属容器10に装着した場合、整合回路50を備えない既存のICタグと比較して、通信距離を大幅に延長することができる。
従って、本実施形態の金属蓋30及び金属容器10によれば、ICチップの設計変更等が一切不要となり、製造コストを低減することができるとともに、既存の汎用タグのICチップを使用することができ、小型かつ安価に構成でき、汎用性、拡張性に優れ、低コストで良好な通信特性が得られる金属対応のICタグを実現することができる。
これにより、金属容器10の蓋部にICチップ41を実装するだけで、ICタグ付きの金属容器10を構成することができ、ICタグ40本体を小型化しつつ、金属蓋30からなるアンテナによって、通信に必要となる十分なアンテナ長を確保することができ、金属による通信特性の劣化等の問題も解消することができる。
さらに、金属容器10の一部又は全部をアンテナとすることにより、ICタグ40側のアンテナを省略することができ、アンテナ用のコストを削減できるとともに、タグを可能な限り小型することができ、小型かつ低コストな金属用ICタグを実現することができる。
また、ICタグ40が外観上目立たなくなることで、人目に付きにくくなり、人為的なICタグ40の剥離、損壊等も抑制することができる。
さらに、金属蓋30は、容器の保管、出荷、陳列等の際にも、他の容器や器具、他の商品等とほとんど接触することがなく、金属蓋30に装着されたICチップ41が他の容器や商品等と接触して破損したり、容器から脱落したりすることも有効に防止できるようになる。
次に、本発明の第二実施形態に係る金属蓋及び金属容器について、図10〜14を参照して説明する。
図10は、本実施形態に係る金属蓋及び金属容器の一部を拡大した状態で示す斜視図である。図11は、本実施形態に係る金属蓋を示す図であって、(a)は平面図を(b)は側面断面図をそれぞれ示している。
また、図12は、本実施形態に係る金属蓋のICタグの回路パターンを示す平面図である。
これらの図に示すように、本実施形態に係る金属蓋30のタブ33aの形状及び整合回路50aの回路パターンが、上記第一実施形態のものと異なる。
具体的には、タブ33aのリング部37aが、第一実施形態のものに比較して横幅が大きな、ほぼ涙滴状に形成されている。また、リング孔38は、外形にそって大きく形成されている。
また、リング部37aは、リング孔38を横断する架設される架設バー71を備えている。
突出部60は、本実施形態では、約0.3mmに形成してある。
このように、金属蓋30に突出部60を設け、この突出部60をタブ33aと接触させることにより、タブ33aを流れる電流長を調整することができる。
突出部60は、その位置や数を異ならせて設けることにより電流長を調整して、タブ33aのインピーダンスを適当なものとすることができるので、より容易に所望の通信周波数帯域での通信を行なうことが可能となる。
整合回路50aは、図12に示すように、ループ部、コの字状部がなく、また全長も短い構成となっていることから、第一実施形態の整合回路のインピーダンスに比較して、虚数部成分Im(Zma)の値が小さくなっている。
以上のような構成からなる本発明の第二実施形態に係る金属蓋及び金属容器の通信特性について、以下に説明する。
本実施形態においては、上記第一実施形態と同様に、例えば、インピーダンスがZic=10−j100程度のICチップ41、特定小電力のリーダ・ライタ及びリーダ・ライタに接続されるとともに約6dBiの直線偏波を出力するアンテナを用いる。
図13は、本発明の第二実施形態に係る金属蓋及び金属容器に実装・装着した場合のICタグに対する角度と無線信号のアンテナ利得の関係を示すグラフ図である。また、図14は、比較例に係る金属蓋及び金属容器に実装・装着した場合のICタグに対する角度と無線信号のアンテナ利得の関係を示すグラフ図である。
本実施形態の金属蓋30は、アンテナ利得が、真上では−2.5dBiであった(図13参照)。また、この金属蓋30の通信距離は、約7.0〜7.5cmであった。
これにより、整合回路50aの回路長や、回路パターンを簡略化することができるようになり、ICタグ40の小型化を容易に行なうことができる。
また、整合回路50a及びタブ33aの構造の双方でインピーダンス整合を行なうので、どちらか一方だけでインピーダンス整合を行なう場合に比較して、回路パターンやタブの形状を、複雑なものとすることなくICチップ41とアンテナ間のインピーダンス整合を行なうことができる。そのため、製造コストを低減することができる。
次に、本発明の第三実施形態に係る金属蓋及び金属容器について、図15〜16を参照しつつ説明する。
図15は、本実施形態に係る金属蓋及び金属容器を示す図であって、(a)は平面図、(b)はタブ部分の拡大平面図である。
同図に示すように、本実施形態に係る金属蓋及び金属容器は、ICタグ40において、ICチップ41及び整合回路50が形成された基板45が封止部材42で封止された状態で、金属蓋30の開封用タブ33のリング孔38内に装着される点で上記実施形態と異なる。
そして、このICタグ40aは、樹脂やゴム等の封止部材42で封止された状態で、金属蓋30の開封用タグ33に装着されるようになっている。
そして、整合回路から突出するコンタクト部材43が、封止部材42から外部に突出し、開封用タブ33に接触し、ICチップ41は金属蓋30と電気的に導通することになる。
例えば、図15に示すワイヤ状のコンタクト部材の例では、4本突出しているコンタクト部材43のうち、実際にICと接触するコンタクト部材は、アンテナの設計により1本でも2本でもよく、その他のコンタクト部材はICと導通させず、ICタグ40aとタブとの固定・支持の役割だけとしても構わない。
また、後述する図16に示すように、コンタクト部材43を板状、薄膜状等に形成して封止部材42から突出させて開封用タブ33と接触・導通させることもできる。
上述したように、現在流通している金属容器の開封用タブのリング孔は、実際には孔に指が入れられることはなく、せいぜい開封時に指の腹で押えられる程度のものとなっている。そこで、本実施形態では、実際にはデッドスペース化している開封用タブ33はリング孔38をICタグ40aの装着空間として有効活用して、開封用タブ33のリング孔38にICチップを装着してある。
このようにすることで、開封用タブ本来の機能を損なうことなく、金属蓋30の空間を有効に利用でき、また、ICチップをリング孔38内に隠蔽して、外観上目立たなくすることができるとともに、リング部37によってICタグを保護することもできる。
具体的には、ICタグ40aからは放射状に4本のワイヤ状のコンタクト部材43が突出しており、これらコンタクト部材43が係止可能な4本の係止溝39が、開封用タブ33のリング部37の上面部に形成してある。
また、コンタクト部材43を溝に係止・係合させることで、コンタクト部材43は係止溝39によって堅固に保持され、コンタクト部材43の接続不良等を長期に亘って防止することもできるようになる。
封止部材42によるICチップ41及び整合回路50の封止は、例えば、ウレタン樹脂に硬化剤のイソシアネート樹脂を混合し、整合回路50及びICチップ41を設けた基板を入れた型に流し込み、硬化させて行なう。基板は、樹脂フィルムからなるフレキシブル基板で構成してもよい。また、樹脂やゴムで形成された外装材をICタグが装着できるように予め成形し、挟み込んだり装着したりすることで封止してもよい。
また、後述する図16に示すように、フィルム状の基板にICチップ41と整合回路50を形成し、そのフィルム状基板を樹脂・ゴム等で形成した封止部材42の表面に貼着・接着することで、封止部材42とICチップ41(及び整合回路50)を一体的に構成することもできる。
これにより、樹脂やゴム等の弾性部材で封止がなされたICタグ40aは、装着のための基材や接着剤等を必要とすることなく、金属蓋30に脱落不能に取り付けることができ、ICタグ40aの装着作業はきわめて容易に行うことができる。また、このように圧入状態で装着されたICタグ40aは、取り外しも簡単に行え、容器の使用後の廃棄・回収の際にも、容器とICタグとの分別が容易となりリサイクルに資する金属容器を実現することができる。
さらに、ゴム等の弾性部材で封止がなされたICタグ40aは、外部からの接触・衝撃等からも保護されることになる。
同図に示すように、この例では、まず、薄膜状に形成したフィルム樹脂等により構成された基板上に、ICチップ41が搭載されるとともに、フィルム状基板の表面に配線パターンが印刷等されて、ICチップ41と電気的に接続される整合回路50が形成される。
さらに、フィルム状基板の一端縁からはICチップ41及び整合回路50の配線パターンと電気的に導通した金属薄膜からなるコンタクト部材43が突出するように形成されている。
そして、このようにフィルム状に形成された基板が、樹脂,ゴム等で開封用タブのリング孔38に圧入可能に形成された封止部材42の表面に貼着・接着されることで、封止部材42とICチップ41及び整合回路50が一体的に構成されるようになっている。
また、フィルム状基板は、ICチップ41が搭載されている方と逆の面が、封止部材42の表面と接触するようにして、封止部材42に重ね合わされ貼着されてもよい。この場合、ICチップ41を保護するため、ICチップ41上にエポキシ樹脂などの樹脂で覆ってもよい。
また、フィルム状基板は、基板縁部から突出している薄膜状のコンタクト部材43が、封止部材42の一端縁(図16の例では封止部材42の長手方向の一端縁)から突出するように位置合わせされて、封止部材42に接着・固定される。
なお、フィルム状基板と封止部材42は接着剤等を用いて剥離不能に接着・固定することができるが、接着方法はどのような方法であってもよい。
そして、このようにフィルム状のICチップ41及び整合回路50が一体化された封止部材42を、外部に突出したコンタクト部材43が開封用タブ33に接触するように、開封用タブ33の上面又は下面からリング孔38内に装着・圧入する。
また、図16に示したような構成によれば、ICタグ40aを構成する基板を樹脂フィルムにより形成してあるので、ガラス基板等の場合と比較して小型化、薄膜化することができる。さらに、開封用タブ33と電気的導通を取るためのコンタクト部材43も薄膜形成することで、ワイヤ状のコンタクト部材43を設ける場合と比較して、ICタグ40aの全体をより小型化、薄膜化することができ、また、製造も容易となる。
次に、金属蓋30に対するICタグ40aの装着方法について、図15に示すワイヤ状のコンタクト部材43を備えるICタグ40aを例にとって説明する。なお、以下に示す装着方法は、図16に示すICタグ40aでも同様である。
まず、ICタグ40aは、上述したように、ICチップ41が予め封止部材42で被覆・封止される。ICチップ41を封止した封止部材42は、適度な弾性を有している。
また、ICタグ40aを被覆・封止した封止部材42の外形は、開封用タブ33に形成されるリング孔38の形状に対応しており、リング孔38よりも若干大きく形成される。
また、ICタグ40aからは、整合回路に電気的に接続されたコンタクト部材43が四方に延出されており、このコンタクト部材43が封止部材42を貫通して外部に突出している。
装着作業は、封止部材42から突出するコンタクト部材43と開封用タブ33の係止溝39とを位置合わせしつつ、弾性を有する封止部材42をリング孔38に押し込むようにして簡単に装着することができる。
ICタグ40aが装着されると、突出するコンタクト部材43がリング部37に当接して開封用タブ33と導通するとともに、リング部37に形成された係止溝39に係止・保持される。
そして、容器の使用後等に廃棄・回収する際には、リング孔38に圧入状態で装着されている封止部材42を押し出すことで、ICタグ40aを開封用タブ33から取り外すことができる。
次に、本発明の第四実施形態に係る金属蓋及び金属容器について、図17を参照しつつ説明する。
図17は、本実施形態に係る金属蓋及び金属容器の一部を拡大して示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面断面図である。
同図に示すように、本実施形態に係る金属蓋30のタブ33bの形状が、上記第二実施形態のものと異なる。
このような構成とすると、タブ33bのリング部37bの形状が大きくなるので、通信周波数帯域内におけるアンテナとしてのインピーダンス(Zan)の実数部成分{Re(Zan)}及び虚数部成分{Im(Zan)}を所定の値以上とすることができる。
そのため、整合回路を簡略化することができる。
さらに、図18を参照して、本発明の第五実施形態に係る金属蓋及び金属容器について説明する。
図18は、本実施形態に係る金属蓋及び金属容器の一部を拡大して示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面断面図である。
同図に示すように、本実施形態に係る金属蓋30は、タブ33cの形状が、そのリング部37cの先端部において、固定部36側にほぼVの字状に凹設形成された凹設部70を有した、ほぼハート型形状に形成されている点で第二実施形態のものと異なる。
そのため、整合回路を簡略化することができる。
その他の構成は、上述した第二実施形態と同様である。
例えば、上述した実施形態では、本発明を適用する金属容器として、飲料等が充填される金属製の缶容器を例にとって説明したが、本発明を適用できる金属容器としては、容器の用途や収納する内容物、容器の構成成分等は特に限定されるものではない。すなわち、ICチップと電気的に導通されてアンテナとして機能できる金属蓋等を備える容器であれば、どのような大きさ、形状、材質等の容器であってもよく、また、容器に収納される内容物がどのようなものであってもよい。
20 容器本体
23 樹脂被覆層
30 金属蓋
32 蓋パネル
33 開封用タブ
34 スコア
35 リベット
36 固定部
37 リング部
38 リング孔
39 係止溝
40 ICタグ
41 ICチップ
42 封止部材
43 コンタクト部材
45 基板
50 整合回路
Claims (7)
- 開封用のタブを有する金属蓋であって、
前記タブに搭載されるICタグ用のICチップと、
ICタグ用のアンテナと、
前記アンテナ及び前記ICチップ間のインピーダンス整合をとる整合回路と、
を備え、
前記ICチップが前記タブに電気的に接触することにより、当該タブが前記アンテナとして機能するとともに、
前記整合回路が、
当該整合回路のインピーダンス(Zma)の実数部成分{Re(Zma)}と、ICチップのインピーダンス(Zic)の実数部成分{Re(Zic)}と、前記タブのインピーダンス(Zan)の実数部成分{Re(Zan)}との関係が、下記式(1)の関係に設定されるとともに、前記整合回路のインピーダンス(Zma)の虚数部成分{Im(Zma)}と、前記ICチップのインピーダンス(Zic)の虚数部成分{Im(Zic)}と、前記タブのインピーダンスZanの虚数部成分{Im(Zan)}との関係が、下記式(2)の関係に設定されるICタグ付き金属蓋。
式(1):Re(Zma)=Re(Zic)−Re(Zan)
式(2):Im(Zma)=−Im(Zic)−Im(Zan) - ICチップが搭載される基板と、該基板上に導電性金属で形成された整合回路としての回路パターンとを備える請求項1記載のICタグ付き金属蓋。
- 前記タブが、前記ICタグ用アンテナとして所定の動作利得が得られるインピーダンスを有する所定形状に形成されている請求項1又は2記載のICタグ付き金属蓋。
- 前記金属蓋が、前記タブが固定される蓋パネルを備え、
前記タブの先端側端縁と前記蓋パネルの内径との間に、指を挿入可能な空間が形成される形状に前記タブが形成される請求項1〜3のいずれか一項に記載のICタグ付金属蓋。 - 前記タブが、前記蓋パネルと電気的に接触し、該タブ及び該蓋パネルが前記ICタグ用アンテナとして機能する請求項4記載のICタグ付き金属蓋。
- 前記蓋パネルが、前記タブ側に突出するとともに当該タブに接触する一又は二以上の突出部を備える請求項4又は5記載のICタグ付き金属蓋。
- 容器本体と、該容器本体に被せられる金属蓋とを備える金属容器であって、
前記金属蓋が、請求項1〜6のいずれかに記載の金属蓋からなる金属容器。
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