JP5016962B2 - 殺菌剤組成物および殺菌方法 - Google Patents
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Description
なかでも、オゾン水浸漬処理は、オゾン曝気処理に比べ、オゾン濃度が比較的低いオゾン水を利用することから、オゾンの空中への揮散が少なく作業安全性に優れ、また、オゾン発生装置の能力が小さくてよい等のメリットがある。
たとえば、食品を、オゾン水と、有機酸溶液および/またはアルコール溶液とに、交互に浸漬処理する殺菌方法が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、この方法では、オゾンで処理する工程の他に、別の処理を行う工程が必要であり、プロセスが複雑化する問題がある。
たとえば、オゾン水と界面活性剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル)とを併用し、さらにpHを3〜7に調整した殺菌剤組成物により食品を殺菌処理する方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、オゾンおよび界面活性剤を含有する殺菌剤組成物中に処理対象物を浸漬する方法が提案されている(特許文献3参照)。
すなわち、本発明の殺菌剤組成物は、下記一般式(I)で表されるグリセリン脂肪酸エステル(A)と、オゾンと、水とを含有することを特徴とする。
また、本発明の殺菌剤組成物においては、前記オゾンの含有量が0.05〜20ppm(質量基準)であることが好ましい。
本発明の殺菌剤組成物は、前記一般式(I)で表されるグリセリン脂肪酸エステル(A)と、オゾンと、水とを含有する。
本発明におけるグリセリン脂肪酸エステル(A)(以下、(A)成分という。)は、前記一般式(I)で表される化合物、いわゆるモノグリセリンの脂肪酸エステルである。
前記一般式(I)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して水素原子または前記一般式(II)で表される基を示す。
前記一般式(II)中、Rは、1価の、炭素数7〜9の炭化水素基を示す。当該炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基;ベンジル基(C6H5CH2−)、フェネチル基(C6H5CH2CH2−)等の側鎖に結合をもつ芳香族基が挙げられる。
Rにおいて、アルキル基、アルケニル基、および芳香族基の側鎖は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
なかでも、Rは、炭素数7〜9のアルキル基であることが好ましい。
R1、R2およびR3のうちの2つまたは3つが前記一般式(II)で表される基である場合、それらは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
本発明において、(A)成分としては、モノグリセリンモノカプリレート単独、モノグリセリンモノカプレート単独、またはモノグリセリンモノカプリレートもしくはモノグリセリンモノカプレートを主成分とするモノグリセリンの脂肪酸エステルの混合物であることが好ましい。ここでいう「主成分」とは、好ましくは、(A)成分の全量に対して50質量%以上であることを意味する。
(A)成分の含有量は、殺菌剤組成物中、0.001〜0.5質量%であることが好ましく、0.005〜0.5質量%であることがより好ましく、0.01〜0.5質量%であることがさらに好ましく、0.05〜0.1質量%であることが特に好ましい。
当該含有量が下限値以上、特に0.005質量%以上であると、より良好な殺菌効果が得られる。一方、当該含有量が上限値以下であれば、オゾンの自己消化無しに顕著な殺菌効果が得られる。
本発明において、オゾンの含有量は、殺菌剤組成物中、0.05〜20ppmであることが好ましく、0.1〜10ppmであることがより好ましく、0.5〜5ppmであることが特に好ましい。
当該含有量が下限値以上であると、オゾン自体が殺菌作用に寄与する前に消失することがなく、殺菌効果がより良好に得られる。一方、上限値以下であれば、充分な殺菌効果が得られる。
なお、本発明において、「ppm」は質量基準の割合を示す。
水としては、特に限定されるものではなく、オゾンが強い酸化力を有し、溶存金属、塩素あるいは有機物等と容易に反応するため、これらの不純物の含有量が少ない(純度が高い)水であることが好ましく、たとえば電気抵抗率が0.00001MΩ以上、より好ましくは0.001MΩ以上、さらに好ましくは1MΩ以上の超純水であることが、殺菌効果に有利であることからより好ましい。
かかる水は、本発明の殺菌剤組成物における溶媒として好適に用いられる。
本発明の殺菌剤組成物には、前記(A)成分、オゾン、および水以外に、殺菌効果を阻害しない範囲で、使用性、製品の安定化、または機能付与のために、各種界面活性剤、pH調整剤、香料、酵素、蛍光剤、増粘剤、分散剤、無機塩、アルコール類、糖類等を適宜、配合することができる。
界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の界面活性剤の中から、目的に応じて適宜選択でき、たとえば、下記(1)〜(4)に例示するものが挙げられる。
(1)アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アシルアミドアルキル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホカルボン酸塩、またはそれらのエステル塩等の水溶性塩、石鹸等のアニオン界面活性剤。
(2)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のエトキシ化ノニオン;ポリグリセリン脂肪酸エステル、(A)成分以外のグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グルコシドエステル、シュガーエステル、メチルグルコシドエステル、エチルグルコシドエステル、アルキルポリグルコキシド等の糖系界面活性剤;アルキルジエタノールアミド、脂肪酸N−アルキルグルカミド等のアミド系界面活性剤;アルキルアミンオキサイド等のノニオン界面活性剤。
(3)アルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホキシベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルアラニネート等のアミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体等の両性界面活性剤。
(4)アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤。
上記のなかでも、ノニオン界面活性剤が好ましく、(A)成分(特に(A)成分として好適なグリセリンカプリレート、グリセリンカプレート)の溶解性が高まってその使用性が向上することから、炭素数が少ない(好ましくは炭素数6以下の)アシル基を有するグリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。具体的には、炭素数1〜4のアシル基を有するモノグリセリンモノエステル、炭素数1〜4のアシル基を有するモノグリセリンジエステル、および炭素数1〜4のアシル基を有するモノグリセリントリエステルから選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
上記の界面活性剤は、1種または2種以上混合して用いることができる。
pH調整剤としては、特に限定されるものではなく、リン酸、ホウ酸、炭酸、塩酸、硫酸、硝酸、またはそれらの塩等が挙げられる。
また、有機酸として酸性基(酸解離性の官能基)であるカルボキシ基、リン酸、またはホスホン酸基等を有する水溶性化合物が挙げられ、たとえば、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトロソ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン−N,N,N’,N’,N’’’,N’’’,N’’’−六酢酸などの多価カルボン酸化合物;ヘキサメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、フィチン酸などのリン酸化合物;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸などのホスホン酸化合物等が挙げられる。
また、上記例示の化合物を、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤で一部を中和した塩も挙げられる。
上記のなかでも、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸が好ましい。
上記のpH調整剤は、1種または2種以上混合して用いることができる。
本発明の殺菌剤組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、一例としてオゾン水と、(A)成分を含む水溶液とを混合する方法が挙げられる。
オゾン水の製造方法としては、水中でオゾンを生成させる方法と、オゾンガスを生成させた後、水に溶解させる方法とに大別される。
水中でオゾンを生成させる方法としては、二酸化鉛などの特殊な電極や電解液を陽極に用いた水の電気分解法が最も一般的である。
他方、水に溶解させる方法としては、紫外線照射、放電、または放射線照射によりオゾンガスを発生させて、曝気処理する方法、ディフューザーを用いる方法、またはテフロン(登録商標)製の膜などを通じて溶解させる方法などが挙げられる。
オゾンガスの発生には、一般的な、濃度コントロールが可能な放電法(沿面放電、無声放電など)を用いることができる。その他オゾンの発生源としては、フッ素と水との反応、リンの酸化などの方法も知られており、それらの方法を適宜使用することができる。
オゾンは、強アルカリ性の条件下では自己分解が促進されるため、殺菌効率が悪くなる。また、(A)成分は、強酸性または強アルカリ性の条件下では分解するため、殺菌効果が発現し難くなる。そのため、殺菌剤組成物のpHとしては、良好な殺菌効果が得られやすいことから、弱酸性〜中性付近が好ましい。
オゾンは、高い酸化力を有することから殺菌効果が高いことで知られている。しかし、高濃度のオゾンを水に溶解することは困難である。また、オゾン濃度が高くなるほど自己分解により消費され、殺菌作用に寄与する前に消失してしまう等、殺菌効果に対する有効率が下がってしまう問題があった。そのため、従来は、水中に有効に残存するオゾン残存量を高めるための技術開発が行われてきた(たとえば、上記特許文献3など参照)。
本発明者らは、種々の検討から、オゾンと、水と、特定のモノグリセリン脂肪酸エステルとを併用することにより、顕著に殺菌効果が向上することを見出した。
かかる効果が得られる理由としては、本発明者らのさらなる検討によると、従来のオゾン残存量を高める技術とは全く異なるメカニズムに基づくものと推測される。すなわち、オゾンから発生するラジカルがモノグリセリン脂肪酸エステルと反応して有機過酸を生成し、生じた低濃度の有機過酸とオゾンとが協調的に菌に作用するため、顕著に殺菌効果が向上すると考えられる。
本発明における(A)成分とは異なり、グリセリンの重合度が高まると、すなわちポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合、オゾンから生じるラジカルをトラップする水酸基の個数が多くなるため、有機過酸の生成効率が低下すると考えられる。また、アシル基の炭素数が少なすぎると、菌体への吸着性が低下する等によって殺菌効果が下がると考えられる。一方、アシル基の炭素数が多すぎると、疎水性が高くなってミセルが形成しやすくなる等によって有機過酸が生成しにくくなると考えられる。
以上の理由から、本発明における(A)成分は有機過酸の生成や菌体への吸着性の面で格段に有利であるため、本発明の殺菌剤組成物によれば、優れた殺菌効果が得られると推測される。
本発明の殺菌方法は、上記本発明の殺菌剤組成物を用いて殺菌処理することを特徴とする。当該殺菌方法によれば、優れた殺菌効果が得られる。
処理対象物としては、たとえば、食品、包装容器、調理器具、床、手指、配管、半導体、装置等が挙げられる。
なかでも、本発明の殺菌方法は、食品の殺菌洗浄に特に好適であり、具体的には、レタス、キャベツ、ネギ等の野菜;イチゴ、リンゴ等の果実;イカ、カキ、ハマグリ、エビ、アジ、シラス等の魚貝類などの殺菌洗浄に好適である。
また、本発明の殺菌方法は、水の浄化にも好適である。
表1に示す各例の殺菌剤組成物を下記調製方法により調製した。
[殺菌剤組成物の調製方法]
殺菌剤組成物は、株式会社神戸製鋼所製の「直接電解型オゾン水生成装置DO−30」(オゾン濃度計装備)を用いて10ppm(質量基準)のオゾン水を製造し、当該オゾン水を超純水により希釈して、表1に示す濃度の2倍濃度のオゾン水を調製した。
一方、グリセリン脂肪酸エステルを超純水に溶解して、表1に示す濃度の2倍濃度のグリセリン脂肪酸エステル水溶液を調製した。
そして、2倍濃度のオゾン水と、2倍濃度のグリセリン脂肪酸エステル水溶液とを、質量比50/50で混合することによって各例の殺菌剤組成物を調製した。
なお、表中の配合量の単位は、殺菌剤組成物の全質量を基準とする値を示す。
以下に、使用した原料について説明する。
・グリセリン脂肪酸エステル(A)
モノグリセリンカプリレート:ポエムM−100(商品名、理研ビタミン株式会社製)、モノグリセリンは90質量%以上、モノエステルは85質量%以上。
モノグリセリンカプレート:ポエムM−200(商品名、理研ビタミン株式会社製)、モノグリセリンは90質量%以上、モノエステルは85質量%以上。
ヘキサグリセリンモノ・ジカプリレート:Q−81F(商品名、太陽化学株式会社製)、グリセリンの平均重合度4、モノグリセリンモノカプリレートは5質量%以下。
デカグリセリンカプリレート:MCA−750(商品名、阪本薬品工業株式会社製)、グリセリンの重合度は未規定、モノグリセリンは10質量%以下、モノエステルは90質量%以上。
モノグリセリンラウレート:ポエムM−300(商品名、理研ビタミン株式会社製)、モノグリセリンは90質量%以上、モノエステルは80質量%以上。
各例の殺菌剤組成物について、以下に示す測定方法により菌数を測定して殺菌効果を評価した。その結果を菌数[c.f.u./mL]および殺菌効果として表1に併記した。
市販の無漂白もやし20gをフィルタ付ホモジナイズバックに入れ、リン酸緩衝生理食塩水90mLを加えた。
ホモジナイザ((株)エルメックス製SH−IIM)にて60秒間破砕し、得られた破砕液を、株式会社アテクト製ホモジェナイズバッグに添付のフィルタでろ過した。ろ過された破砕液を、一般細菌溶液として使用した。菌種は、大腸菌群が主であった。
上記調製方法により得られた各例の殺菌剤組成物792mLに、前記一般細菌溶液8mLをそれぞれ添加した後、25℃にて10分間、テフロン(登録商標)スターラーにより200rpmの回転速度で撹拌して、合計800mLの試験溶液を調製した。
次いで、調製した試験溶液を、予め滅菌した試験管に1mLずつ 素早く採取し、ペプトン食塩緩衝液を用いて試験管内で10倍ずつ5段階希釈した。
各希釈液100μLをマイクロピペットにて採取し、シャーレ中の標準寒天培地に滴下した。ディスポコーンラージ棒により培地上に塗抹後、インキュベータにて、37℃で24時間培養した後、菌により形成されるコロニー数が1シャーレ当たり300以下の範囲のものについて、培地シャーレ上のコロニー数を計数することによって残存生菌数(菌数)を調べた。
各段階希釈ともシャーレ2枚ずつ培養し、求めた菌数を平均化して、下記評価基準に基づいて殺菌効果を評価した。
(評価基準)
◎:菌数が500以下であった。
○:菌数が500超1000以下であった。
△:菌数が1000超3000以下であった。
×:菌数が3000超であった。
なお、超純水792mLに一般細菌溶液8mLを添加した試験溶液の菌数を、上記と同様に測定し、これを初期菌数とした。初期菌数は10000c.f.u./mLであった。
標準寒天培地、ペプトン食塩緩衝液、およびリン酸緩衝生理食塩水は、いずれも株式会社アテクト製のものを用いた。
Claims (2)
- モノグリセリンカプリレート及び/又はモノグリセリンカプレート0.005〜0.5質量%と、オゾン0.05〜20ppm(質量基準)と、水とを含有することを特徴とする殺菌剤組成物。
- 請求項1記載の殺菌剤組成物を用いて殺菌処理することを特徴とする殺菌方法。
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