JP5016901B2 - カラートナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法に用いられるカラートナーに関する。
従来、電子写真法は、種々の手段により感光体上に静電荷像を形成し、次いで、該静電荷像をトナーを用いて現像して感光体上にトナー画像を形成し、必要に応じて紙の如き転写材にトナー画像を転写した後、加熱、圧力、加熱圧力、或いは溶剤蒸気等によりトナー画像を転写材に定着し、画像を得るものである。
トナーを用いて現像する方法、或いはトナー画像を定着する方法としては、従来各種の方法が提案され、それぞれの画像形成プロセスに適した方法が採用されている。従来、これらの目的に用いるトナーは、一般に、結着樹脂に染料や顔料といった着色剤を溶融混練して混練物を形成し、この溶融混練物を、微粉砕装置、分級機により製造されてきた。
これらの製造方法では、かなり優れたトナーを製造し得るが、ある種の制限がある。例えば、前記混練物が十分に脆く、経済的に可能な製造装置で微粉砕し得るものでなければならない。ところが、混練物に脆い材料を用いるとトナーも割れやすくなり、現像器内の帯電部材やトナー担持部材、感光体との接触により、特にトナーの凸部が割れやすい。トナーが割れることにより生じた微粉が上記部材に蓄積することにより、現像安定性が低下する(以下、現像安定性能と称する)場合がある。
一方、これらトナーの問題点を克服するために、湿式製法によるトナーが提案されている(特許文献1、2参照)。これらの湿式製法は、粉砕工程が含まれていないために、用いる材料が脆い必要はなく、柔軟性を有する材料を使用することができる。また、樹脂微粒子でトナー表面を被覆することにより、比較的良好な定着性能と現像安定性能とを有する。
トナー画像を定着する工程としては、熱ローラーによる圧着加熱法(以下、熱ローラー定着法と称する)や、定着フィルムを介して加熱体に被定着シートを密着させながら定着する加熱定着法(以下、フィルム定着法と称する)などが開発されている。
熱ローラー定着法やフィルム定着法では、熱ローラー或いは定着フィルムの表面に被定着シート上のトナー画像を、当接する加圧部材により加圧下で接触しながら通過せしめることにより定着を行うものである。該定着法では熱ローラーや定着フィルムの表面と被定着シートのトナー画像とが加圧下で接触するため、該シート上にトナー画像を融着する際の熱効率が極めて高く、迅速で良好な定着を行うことができる。特にフィルム定着法は、省エネルギー化に対する効果は大きく、また、電子写真装置の電源を入れてから1枚目のプリントが完了するまでの所用時間が短いなどの効果も期待できる。
近年の電子写真装置は、高画質化、小型軽量化、高速高生産性化、省エネルギー化の如き様々の要請を受けており、その中でも特に定着工程においてはさらに一層の高速化、省エネルギー化、及び、高信頼性化を達成できるシステムや材料の開発が重要な技術課題となっている。しかし、熱ローラー定着法やフィルム定着法でこれらの課題を解決するためには、特にトナーの定着特性能を大幅に改善することが必須であり、より低い温度で十分に被定着シートに定着できる性能(以下、低温定着性能と称する)の向上と、加熱ローラーやフィルム表面上に付着したトナー汚れによって次の定着シートを汚す現象であるオフ
セットを防止できる性能(以下、耐オフセット性能と称する)の向上が必要である。
加熱加圧定着に用いられるトナーにおいて、水系媒体中で製造され、ワックスを含有せしめたトナーにおいて、動的粘弾性試験による貯蔵弾性率(G’)を制御したトナーは、比較的良好な低温定着性能と耐オフセット性能とを有する(特許文献3、4、5参照)。しかしながら、これらのトナーは、プロセススピードのさらなる増大を目指した場合には、定着画像の一部が膨れ上がるブリスター現象が発生しやすい(以下、耐ブリスター性能と称する)。この現象は、特に厚紙を使用した場合に著しい。また、耐ブリスター性能の向上を目指した場合、画像の色域が低下するという課題(以下、色域性能と称する)が見いだされた。この現象は、熱ローラー定着法でもみられるが、特にフィルム定着法の場合に著しく、また、薄紙を使用した場合に著しい。
このため、ワックスを含有する球形カラートナーにおいて、低温定着性能、耐オフセット性能を損ねることなく、良好な現像安定性能を有し、且つ、優れた色域性能、耐ブリスター性能を兼ね備え、画像品位の高い画像を形成し得るカラートナーが待望されている。
特開2004−226572号公報 特開2004−226670号公報 特開2004−177656号公報 特開2004−184551号公報 特開2005−62857号公報
本発明の目的は、前述の如き問題点を解決し得るトナーを提供することにある。
即ち、本発明の目的は、ワックスを含有せしめたカラートナーにおいて、良好な転写性能を有し、低温定着性能と同時に耐オフセット性能に優れ、耐ブリスター性能と色域性能とを兼ね備え、良好な現像安定性能を有するカラートナーを提供するものである。
本発明の目的は、ワックスを含有せしめたカラートナーにおいて、良好な低温定着性能を有し、フィルム定着法を用いた場合にも、画像全面において均一、且つ、高光沢の画像を形成可能なカラートナーを提供するものである。
本発明は、少なくとも結着樹脂と着色剤とワックスとを含有するカラートナーであって、
該カラートナーは、ソックスレー抽出法による酢酸エチル不溶成分を5.0乃至16.0質量%含有し、該酢酸エチル不溶成分は10.0乃至80.0質量%のテトラヒドロフラン(THF)可溶成分を含有し、該THF可溶成分はポリエステルを含有するカラートナーに関する。
本発明によると、ワックスを含有せしめたカラートナーにおいて、良好な転写性能を有し、低温定着性能と同時に耐オフセット性能に優れ、耐ブリスター性能とグロス性能とを兼ね備え、良好な現像安定性能を有する。また、本発明のカラートナーは、良好な低温定着性能を有し、フィルム定着法を用いた場合にも、画像全面において均一、且つ、高光沢の画像の形成が可能となる。
本発明によると、結着樹脂と着色剤とワックスとを含有するカラートナーにおいて、該トナーは、ソックスレー抽出法による酢酸エチル不溶成分を3.0乃至33.0質量%含
有し、該酢酸エチル不溶成分は10.0乃至80.0質量%のテトラヒドロフラン(THF)可溶成分を含有し、該THF可溶成分はポリエステルを含有する場合に、良好な転写性能を有し、低温定着性能や耐オフセット性能を損ねることなく、現像安定性能を高めることができることを見出した。また、高速のフィルム定着方式に使用した場合においても、ブリスターや高温オフセットが抑制され、良好な色再現性を有する色域性能を発現することが可能となる。
本発明のカラートナーに含有される酢酸エチル不溶成分の含有量、及び、該酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分の含有量とは、具体的には以下に示すソックスレー抽出法により測定される値をもって定義する。また、本発明のカラートナーに含有される酢酸エチル可溶成分、酢酸エチル不溶成分、及び、該酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分とは、以下のようにして得られた成分を示す。
円筒濾紙(例えば、東洋濾紙製No.86Rを用いることができる)を、40℃で24時間真空乾燥した後、25℃60%RHの温湿度に調整された環境下に3日間放置する。トナーの真密度をρ(g/cm)としたとき、トナー(1×ρ)gを秤量し(W1g)、この円筒濾紙に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒として酢酸エチル200mlを用い、90℃のオイルバスで24時間抽出する。その後、毎分1℃の冷却速度でソックスレー抽出器を冷却した後、円筒濾紙を静かに取り出して、40℃で24時間真空乾燥する。これを25℃60%RHの温湿度に調整された環境下に3日間放置した後、円筒濾紙に残存する固形分の量を秤量する(W2g)。この固形分を、カラートナーに含有される酢酸エチル不溶成分とする。
トナーの酢酸エチル不溶成分の含有量は、下記式から算出される。
トナーの酢酸エチル不溶成分の含有量(質量%)=(W2/W1)×100
カラートナーに含有される酢酸エチル可溶成分は、上記で得られた溶出成分を、定量濾紙(例えば、ADVANTEC製定量濾紙No.5Aを用いることができる)を用いて濾過する。得られた溶液を、40℃に設定したエバポレーターを用いて揮発分を留去した後、40℃で24時間真空乾燥した固形分を、前記酢酸エチル可溶成分と定義する。
カラートナーが有する酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分の含有量は、前記ソックスレー抽出法によって得られた酢酸エチル不溶成分を有する円筒濾紙を、溶媒としてTHF200mlを用い、ソックスレー抽出器にかけ、90℃のオイルバスで24時間抽出する。その後、毎分1℃の冷却速度でソックスレー抽出器を冷却した後、円筒濾紙を静かに取り出して、40℃で24時間真空乾燥する。これを25℃60%RHの温湿度に調整された環境下に3日間放置した後、円筒濾紙に残存する固形分の量を秤量する(W3g)。
トナーの酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分の含有量は、下記式から算出される。
トナーの酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分の含有量(質量%)={1−(W3/W2)}×100
カラートナーの酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分の組成分析及び分子量測定を行う場合は、上記で得られた溶出成分を、定量濾紙(例えば、ADVANTEC製定量濾紙No.5Aを用いることができる)を用いて濾過し、得られた溶液を、40℃に設定したエバポレーターを用いて揮発分を留去した後、40℃で24時間真空乾燥した固形分を用いる。
尚、トナーの真密度は、例えば、乾式自動密度計アキュピック1330(島津製作所(株)社製)により測定することができる。
本発明のカラートナーは、一般に知られているTHF不溶成分に併せ、酢酸エチルには不溶であるがTHFには可溶である成分を含有し、該THFに可溶の成分はポリエステルを含有している。一般に、酢酸エチルはTHFよりも樹脂の溶解性が小さい。このため、本発明のカラートナーでは、一般に知られているTHF不溶成分(即ち、酢酸エチルに不溶且つTHFに不溶の成分)と、酢酸エチルに不溶であるがTHFに可溶である成分とで、酢酸エチル不溶成分を構成していると考えられる。また、酢酸エチルに不溶且つTHFに不溶の成分と比較すると、酢酸エチルに不溶であるがTHFに可溶の成分は、ポリエステルが比較的柔らかく架橋した成分と考えられる。本発明では、THF不溶成分(即ち、酢酸エチルに不溶且つTHFに不溶の成分)の含有量だけでなく、THFに可溶であるが酢酸エチルには不溶の成分(即ち、酢酸エチルに不溶であるがTHFに可溶の成分)の含有量を制御することで、本発明の目的が良好に達成される。さらに、やわらかく架橋した成分がポリエステルを有することにより、酢酸エチルには不溶であるがTHFには可溶といった物性が達成され、低温定着性能、色域性能を低下させることなく、良好な耐オフセット性能、耐ブリスター性能を発現することが可能になるものと考えられる。
上記のTHF不溶成分と、酢酸エチルに不溶であるがTHFに可溶の成分との物性の違いは、それぞれの架橋成分の組成と、架橋の密度の違いによるものと考えられる。即ち、架橋の密度が大きいものはTHF不溶成分となるが、架橋の密度が十分に小さく、ポリエステルを含有することで十分に柔軟性を有する場合に、酢酸エチルに不溶であるがTHFに可溶といった物性が発現されるものと考えられる。
上記酢酸エチル不溶成分の含有量と、酢酸エチルに不溶であるがTHFに可溶の成分の含有量は、結着樹脂及び架橋剤の種類や添加量、トナーの製造条件等によって制御することが可能である。
上記酢酸エチル不溶成分の含有量が3.0質量%未満の場合は、十分な低温定着性能、耐オフセット性能が得られないか、色域性能が低下する。酢酸エチル不溶成分の含有量が33.0質量%を越える場合、耐ブリスター性能が低下する。このため、酢酸エチル不溶成分の含有量は、3.0乃至33.0質量%であり、5.0乃至20.0質量%であることが好ましく、5.0乃至16.0質量%であることがより好ましい。
前記酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分の含有量が10.0質量%未満の場合、耐ブリスター性能が低下する。該THF可溶成分の含有量が80.0質量%を越える場合、色域性能と耐オフセット性能が低下する。このため、酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分の含有量は、10.0乃至80.0質量%であり、10.0乃至60.0質量%であることが好ましく、20.0乃至65.0質量%であることがより好ましく、20.0乃至40.0質量%であることが特に好ましい。
前記酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)によるスチレン(St)換算の分子量分布において、分子量4000乃至40000に極大値を有することが好ましい。該THF可溶成分が上記範囲に極大値を有することで、トナーのシャープメルト化と溶融時の粘性保持とのバランスが良好となり、低温定着性能、色域性能、及び、耐ブリスター性能が更に良好になる。前記極大値が4000未満の場合は、耐オフセット性能と色域性能が低下する場合がある。前記極大値が40000を越える場合は、低温定着性能と耐ブリスター性能が低下する場合がある。なお、前記極大値の範囲としては、分子量4000乃至30000にあることがより好ましく、分子量5000乃至20000にあることが特に好ましい。
前記酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分が、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)によるスチレン(St)換算の分子量分布において、上記範囲に極大値を有するようにするためには、結着樹脂及び架橋剤の種類や添加量、トナーの製造条件等を制御することにより可能となる。
前記酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分は、GPCによるSt換算の分子量分布において、分子量3000乃至30000の成分の含有量(M1)と、分子量100000以上の成分の含有量(M2)との比(M2/M1)が0.03乃至0.80にあることが好ましい。M2/M1が上記範囲にあることで、トナーのシャープメルト化と溶融時の粘性保持とのバランスが良好となり、低温定着性能、色域性能、耐オフセット性能、及び、耐ブリスター性能が更に良好になる。M2/M1が0.03未満の場合、耐オフセット性能と色域性能が低下する場合がある。M2/M1が0.80を越える場合、低温定着性能と耐ブリスター性能が低下する場合がある。なお、前記M2/M1の範囲としては、0.05乃至0.60にあることがより好ましく、0.10乃至0.40にあることが特に好ましい。
上記M1の含有量としては、15.0乃至40.0質量%であることが好ましい。該含有量が15.0質量%未満であると、低温定着性能、或いは、色域性能が低下する場合がある。また、該含有量が40.0質量%を越える場合、耐オフセット性能が低下する場合がある。なお、前記M1の含有量としては、20.0乃至35.0質量%であることがより好ましく、20.0乃至30.0質量%であることが特に好ましい。
上記M2/M1、M1の含有量を上記範囲に調整するためには、結着樹脂及び架橋剤の種類や添加量、トナーの製造条件等を制御すればよい。
前記酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分は、分子量100乃至400の成分を20.0乃至70.0質量%含有し、且つ、分子量500乃至1000の成分を0.50乃至10.0質量%含有することが好ましい。分子量100乃至400の成分は、本発明のカラートナーが有するワックスを主成分としており、その含有量は、該ワックスと、前記THF可溶成分に含有される特定の結合を有するポリエステルとの親和性を示す。上記のような溶解性、及び、分子量を有するワックスを含有することで、低温定着性能、現像安定性能と耐ブリスター性能と色域性能とがより良好になる。また、分子量500乃至1000の成分は、前記特定の結合を有するポリエステルを主成分とする。分子量100乃至400の成分及び分子量500乃至1000の成分の含有量を上記範囲に制御することで、ワックスとの親和性が制御され、低温定着性能、現像安定性能と耐ブリスター性能と色域性能とがより良好になる。
また、上記分子量100乃至400の成分の含有量及び分子量500乃至1000の成分の含有量は、例えば、後述するゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)によるスチレン(St)換算の分子量測定の方法により求めることが可能である。
前記酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分は、ウレタン結合、ウレア結合、イミド結合、アミド結合から選ばれる一つ以上の結合を有するポリエステルを含有することが好ましい。
エステル結合により比較的固い架橋成分を形成して酢酸エチル不溶成分を形成し、エステル結合以外の結合により、比較的柔らかい架橋構造を形成することで、前記M1とM2との含有量がより良好に制御され、色域性能と耐ブリスター性能がより良好になる。上記の結合は、反応条件やトナーの帯電性などから好適に選択することができる。中でも、緩やかな条件で結合を形成できるため、ウレタン結合、又は、ウレア結合が好ましい。
上記ウレタン結合、ウレア結合、イミド結合及びアミド結合の存在は、例えば、フーリエ変換赤外線分光法(FT−IR)により、ウレタン結合、ウレア結合、イミド結合及びアミド結合に由来する特性吸収ピークを測定することにより確認することが可能である(図2及び図3参照)。具体的には、例えば、以下の方法により測定することが出来る。
FT−IR装置 Spectrum One(Perkin−Elmer社製)を用い、1回反射ATR法により各波長における吸光度を測定する。
・Range Start:4000cm−1
End :400cm−1
・Scan number :32
原材料の種類や量により多少変化するが、1630〜1720cm−1付近に吸収ピークがみられることで、ウレタン結合、ウレア結合、イミド結合、或いは、アミド結合が存在することを確認できる。さらには、ウレタン結合に由来する特性吸収ピークとしては、1550cm−1付近、1640cm−1付近、3350cm−1付近にみられ、ウレア結合としては1640cm−1付近、イミド結合としては1710cm−1付近、アミド結合としては1540cm−1付近に吸収ピークを確認することができる。
上記測定にあわせ、フーリエ変換核磁気共鳴分光法(例えば、日本電子製 FT−NM
R装置 JNM−EX400)、熱分解質量分析法(例えば、日本分析工業社製 JPS
−330 を用いることができる)を併せて解析することも好ましい。
上記ポリエステルは、炭素数2乃至6のアルキル基を有するジオールと、炭素数4乃至10のアルキル基を有するジカルボン酸とを含有することが好ましい。炭素数が2乃至6にあるアルキル基を有するジオールと、炭素数4乃至10のアルキル基を有するジカルボン酸とを有するポリエステルは、架橋構造を形成した場合の柔らかさと溶融時の粘性保持とのバランスが良好であり、色域性能と耐ブリスター性能とがさらに良好になる。
また、上記アルキル基を有するジオールの含有量(A1モル%)と、上記アルキル基を有するジカルボン酸の含有量(A2モル%)との比(A1/A2)が2.0乃至20.0にあることが好ましい。さらに、上記(A1/A2)が2.0乃至20.0にあることで、架橋構造を形成した場合の柔らかさと溶融時の粘性保持とのバランスが特に良好になる。
上記アルキル基を有するジオールは、炭素数1乃至3のアルキル基を側鎖に有するアルキルジオールを、全アルキルジオールに対し、40モル%以上含有することが好ましい。側鎖を有することで樹脂にやわらかさが付与され、グロス性能が更に良好になる。前記アルキル基を有するジカルボン酸におけるアルキル基の炭素数は、4乃至8であることがより好ましい。
本発明のカラートナーは、動的粘弾性試験における貯蔵弾性率(G’)のカーブにおいて、110乃至170℃にショルダーピークを有し、該ショルダーピークのG’が100乃至10000Paにあることが好ましい。上記範囲にショルダーを有することで耐ブリスター性能と耐オフセット性能とがさらに良好になる。該ショルダーピークのG’が100Pa未満に存在する場合、色域性能と耐オフセット性能が低下しやすくなる。該ショルダーピークのG’が10000Paを越える場合、耐ブリスター性能と色域性能が低下する場合がある。なお、前記ショルダーピークのG’の値は、200乃至5000Paであることがより好ましく、300乃至3000Paであることが特に好ましい。また、ショルダーピークの温度としては、120乃至160℃にあることがより好ましい。
なお、動的粘弾性試験における貯蔵弾性率(G’)のショルダーピークとは、ショルダー前の基線とショルダー後の基線との交点をもってショルダーピークとするものである(図4参照)。
上記ショルダーピークは、本発明のトナーに含有される酢酸エチル不溶成分と、該酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分とを有することにより、良好に発現される。また、その組成と含有量とを制御することにより、ショルダーピークにおけるG’の値が良好に制御される。前記酢酸エチル不溶成分の含有量が33.0質量%を越える場合、或いは、前記酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分の含有量が10.0質量%未満の場合、ショルダーピークのG’の値は10000Paを超える値となりやすく、耐ブリスター性能が低下しやすい。前記酢酸エチル不溶成分の含有量が3.0質量%未満の場合、或いは、前記酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分の含有量が80.0質量%を越える場合、ショルダーピークのG’の値は100Pa未満の値となりやすく、色
域性能が低下しやすい。
本発明のカラートナーは、動的粘弾性試験における貯蔵弾性率(G’)のカーブにおいて、130℃における貯蔵弾性率(G’130)が400乃至6000Pa、150℃における貯蔵弾性率(G’150)が200乃至2000Paにあり、G’130とG’150との比(G’130/G’150)が1.05乃至20.00にあることが好ましい。本発明のカラートナーが該範囲を満たすことで、低温定着性能と色域性能が更に良好になる。G’130が400Pa未満の場合、耐オフセット性能が低下しやすくなり、G’130が6000Paを越える場合、低温定着性能が低下しやすくなる。G’150が200Pa未満の場合、色域性能が低下しやすくなり、G’150が2000Paを越える場合、低温定着性能が低下しやすくなる。また、G’130/G’150が1.05未満の場合、耐ブリスター性能が低下する場合があり、G’130/G’150が20.0を越える場合、耐オフセット性能が低下する場合がある。なお、上記G’130は、600乃至5000Paにあることがより好ましい。上記G’150は、300乃至900Paにあることがより好ましい。上記G’130/G’150は、1.10乃至8.00にあることがより好ましい。
上記G’130、G’150、G’130/G’150の値は、本発明のトナーに含有される酢酸エチル不溶成分と、該酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分との含有量を制御することにより、良好に制御される。前記酢酸エチル不溶成分の含有量が33.0質量%を越える場合や、前記THF可溶成分の含有量が10.0質量%未満の場合は、G’130、は6000Paを超える値となりやすく、G’150は2000Paを超える値となりやすい。また、ショルダーピークのG’の値は10000Paを超える値となりやすい。前記酢酸エチル不溶成分の含有量が3.0質量%未満の場合や、前記THF可溶成分の含有量が80.0質量%を越える場合は、G’130、は400Pa未満の値となりやすく、G’150は200Pa未満の値となりやすい。
本発明において、動的粘弾性試験による貯蔵弾性率(G’)の測定方法について説明する。
測定装置としては、例えばARES(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー株式会社製)を用いることができる。下記の条件で、70〜200℃の温度範囲における貯蔵弾性率の測定を行う。
・測定冶具:直径25mmの円形パラレルプレートを使用する。
・測定試料:トナー0.5gを秤量し、20kNの荷重を2分間かけて、直径25mm、厚さ約1mmの円盤状に成型し測定試料とする。
・測定周波数:6.28ラジアン/秒
・測定歪の設定: 初期値を0.1%に設定した後、自動測定モードにて測定を行う。
・試料の伸長補正: 自動測定モードにて調整する。
・測定温度:70〜200℃まで1℃/分の昇温速度で30秒毎に弾性率の測定を行う。
本発明においてゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)によるスチレン(St)換算の分子量測定の方法について説明する。
40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。具体的には、例えば、Polymer Laboratories社製 標準ポリスチ
レンEasical PS−1(分子量7500000,841700,148000,28500,2930の混合物、及び、分子量2560000,320000,59500,9920,580の混合物)及びPS−2(分子量377400、96000,19720,4490,1180の混合物、及び、分子量188700,46500,9920,2360,580の混合物)を組み合わせて用いることができる。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgelG1000H(HXL),G2000H(HXL),G3000H(HXL),G4000H(HXL),G5000H(HXL),G6000H(HXL),G7000H(HXL),TSKguardcolumnの組み合わせが挙げられる。
本発明のカラートナーが有する、酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分が有する極大値は、上記測定で得られた分子量分布の極大値より求める。
本発明のカラートナーが有する、酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分が有する分子量3000乃至30000の成分の含有量(M1)、分子量10万以上の成分の含有量(M2)は、それぞれ上記測定で得られた分子量分布の積分値より求める。
GPC装置に用いる試料は以下のようにして作製する。
測定するサンプルをTHF中に入れて十分に混合し、18時間静置する。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45〜0.5μm、例えば、マイショリディスクH−25−5 東ソー社製、エキクロディスク25CR ゲルマン・サイエンス・ジャパン社製などが利用できる)を通過させたものを、GPCの試料とする。測定するサンプルのTHFに対する濃度は5mg/mlとする。
本発明に用いるワックス、結着樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)なども、上記方法と同様にして測定することができる。
本発明のカラートナーは、45.0乃至65.0℃にガラス転移点(Tg)を有することが好ましい。トナー製造過程において架橋反応を行うことにより、酢酸エチルに不溶且つTHFに可溶の成分をトナーに含有せしめることが、該成分の含有量のトナー間における均一性の観点から好ましい。トナーのTgが45.0℃未満であると、トナーが柔らかいため架橋反応が進行しすぎる場合があり、トナーに含有される酢酸エチル不溶成分の含有量が33質量%を超える値となったり、該酢酸エチルに含有されるTHF可溶成分の含有量が10質量%未満となる場合がある。一方、トナーのTgが65.0℃を越える場合、トナーが固いため架橋反応が十分に進行しにくく、トナーに含有される酢酸エチル不溶成分の含有量が3質量%未満となったり、該酢酸エチルに含有されるTHF可溶成分の含有量が80質量%を越える値となる場合がある。このため、トナーのTgは45.0乃至65.0℃であり、46.0乃至60.0℃であることが好ましく、51.0乃至59.0℃であることがより好ましい。
本発明において、カラートナー及び使用する材料のガラス転移点(Tg)、融点(Tm)は、示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて測定する。DSC測定装置としては、例えば、Q1000(TAインストルメンツ社製)が利用できる。測定方法は、アルミパンに試料約6mg精秤し、リファレンスパンとして空のアルミパンを用い、窒素雰囲気下、モジュレーション振幅1.0℃、周波数1/分で測定する。測定温度は、10℃で1分間保持した後、昇温速度1℃/分で10℃から200℃まで走査して得られたリバーシングヒートフロー曲線を用い、中点法によりTgを求める。なお、中点法によって求められたガラス転移点とは、昇温時のDSC曲線において吸熱ピーク前の基線と吸熱ピーク後の基
線の中線と、立ち上がり曲線での交点をもってガラス転移点とするものである(図1参照)。
トナーの融点の測定は、上記と同様に測定して得られたリバーシングヒートフロー曲線において、融解ピークの極大値となる温度を融点とする。また、融点のオンセット値とオフセット値は、前記融解ピークにおいて、ピークの立ち上がり部分の最大傾斜の点で引いた接線とピーク前の外挿基線との交点の温度を、融点のオンセット値とし、融解ピーク終了前の最大傾斜の点で引いた接線とピーク後の外挿基線との交点の温度を、融点のオフセット値とする。
吸熱量は、上記測定で得られたリバーシングヒートフロー曲線において、融解ピーク前の外挿基線からピークが立ち上がる点と、融解ピーク終了後の外挿基線とピークが接する点とを結んだ直線と融解ピークとで囲まれる面積より求める。
本発明において色域性能とは、トナー画像の色の鮮やかさを示し、具体的には、CIE−L***系表色系を用いて測定することができる。L***系表色系の立体概念図を図5に示す。図5において、横軸のa*及びb*はそれぞれ色相を表す。色相とは、赤、黄、緑、青、紫等、色あいを尺度化したものである。本発明では、赤−緑方向の色相をa*
とし、黄−青方向の色相をb*とする。縦軸のL*は明度を表す。明度とは、色相に関係なく比較でき、色の明るさの度合いを示す。c*は、彩度であり、下記式により求められ、
色の鮮やかさの度合いを示している。
Figure 0005016901
上記CIE−L***系表色系の測定としては、市販の反射分光光度計を用いること
ができる。具体的には、例えば、SpectroScan Transmission(GretagMacbeth社製)を用い、装置の校正時に非画像部の測定をした後、画像部を測定することで、各波長におけるトナーの吸光度、L、cを求めることができる。以下に具体的な測定条件を示す。
<測定条件>
観測光源 :D50
観測視野 :2°
濃 度 :DIN NB
白色基準 :Pap
フィルター:No(無し)
測定モード:Reflectance
上記測定条件により測定されるCIE Lch(ab)(前記のL、cに相当)の値より、所望のデータを用いる。
尚、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナーでは、cの値が大きいほど画像が鮮やかであることを示し、ブラックトナーでは、Lの値が小さい程、黒色度が大きいことを示している。
本発明に用いられる結着樹脂としては、従来電子写真用の結着樹脂として知られる各種の樹脂が用いられるが、その中でも(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、(c)ハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物、(d)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、(e)ポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物、及び(f)ポリエステル樹脂、ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、ビ
ニル系共重合体との混合物からなるグループから選択される樹脂を主成分とすることが好ましい。
さらに結着樹脂として、主鎖中にエステル結合を有し、多価アルコールと多塩基酸との重縮合体であるポリエステルユニットと、不飽和炭化水素基を有する重合体であるビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂を用いる場合、さらに良好なワックス分散性と、低温定着性、耐オフセット性の向上が期待できる。本発明に用いられるハイブリッド樹脂とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合した樹脂を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成する樹脂であり、好ましくはビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(或いはブロック共重合体)である。
本発明の結着樹脂に用いることができるモノマーとしては、具体的には、例えば以下の化合物を用いることができる。
二価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、下記式(VII)
Figure 0005016901

(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基を示し、x,yはそれぞれ1以上の整数を示し、且つx+yの平均値は2〜10を示す。)
で示されるビスフェノール誘導体、または下記式(VIII)
Figure 0005016901

で示される化合物等が挙げられる。
三価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
多価カルボン酸成分等としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換された琥珀酸若しくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、トリメリット酸等が挙げられる。
それらの中でも、特に、前記一般式(VIII)で代表されるビスフェノール誘導体、
及び、炭素数2乃至6のアルキルジオールをジオール成分とし、二価のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、炭素数4乃至10のアルキルジカルボン酸、及びこれらの化合物の酸無水物等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステルが、カラートナーとして、良好な帯電特性を有するので好ましい。
本発明のカラートナーに含有される酢酸エチル可溶成分は、炭素数2乃至6のアルキル基を有するジオールを25乃至55モル%含有することが好ましい。炭素数が前記範囲にあるアルキル基を有するジオールを有するポリエステルは、トナー製造時に結着樹脂に相溶するワックスの量と、定着工程において結着樹脂に相溶するワックスの量とのバランスが良好になり、なお、該アルキルジオールの含有量は、35乃至55モル%であることがより好ましく、さらには40乃至55モル%であることが特に好ましい。アルキルジオールの含有量が55モル%を超える場合、結着樹脂に相溶するワックスの量が多くなりやすくなる。一方、アルキルジオールの含有量が25モル%未満であると、結着樹脂に相溶するワックスの量が少なくなりやすくなる。
上記アルキル基を有するジオールは、炭素数1乃至3のアルキル基を側鎖に有するアルキルジオールを、全アルキルジオールに対し、40モル%以上含有することが好ましい。トナー溶融時において、ワックスが結着樹脂に相溶しやすくなり、色域性能が更に良好になる。
本発明のカラートナーに含有される酢酸エチル可溶成分は、炭素数4乃至10のアルキル基を有するジカルボン酸を2乃至20モル%含有することが好ましい。炭素数が前記範囲にあるアルキル基を有するジカルボン酸は、トナー製造時に結着樹脂に相溶するワックスの量と、定着工程において結着樹脂に相溶するワックスの量とのバランスが良好になる。アルキルジカルボン酸の含有量が2モル%未満であると、結着樹脂に相溶するワックスの量が少なくなりやすくなる。アルキルジカルボン酸の含有量が20モル%を超える場合には、結着樹脂に相溶するワックスの量が多くなりやすくなる。また、アルキル基を有するジカルボン酸におけるアルキル基の炭素数は、4乃至8であることがより好ましい。
上記ポリエステルの製造方法としては、例えば、酸化反応による合成法、カルボン酸及びその誘導体からの合成、マイケル付可反応に代表されるエステル基導入反応、カルボン酸化合物とアルコール化合物からの脱水縮合反応を利用する方法、酸ハロゲン化物とアル
コール化合物からの反応、エステル交換反応が挙げられる。触媒としては、エステル化反応に使う一般の酸性、アルカリ性触媒、例えば酢酸亜鉛、チタン化合物などでよい。その後、再結晶法、蒸留法などにより高純度化させてもよい。
結着樹脂の好ましい製造方法としては、脱水縮合反応、エステル交換反応が挙げられる。特に好ましい製造方法は、エステル交換反応である。
本発明のカラートナーに含有される結着樹脂のガラス転移温度は40〜70℃が好ましく、より好ましくは45〜65℃である。結着樹脂の酸価は1〜40mgKOH/gであることが好ましい。
尚、本発明において、結着樹脂に含有されるポリエステルの占める割合は、50乃至100質量%の範囲であることが好ましい。
本発明のカラートナーは、1種又は2種以上のワックスを含有している。本発明に用いることのできるワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素ワックス;酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素ワックスのブロック共重合物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックス等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの等が挙げられる。例えば、エステルワックスとしては、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル等が挙げられる。
そして、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物等が挙げられる。
特に好ましく用いられるワックスとしては、分子鎖が短く、且つ、立体障害が少なくモビリティに優れるパラフィンワックス、ポリエチレン、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素ワックスである。
ワックスの分子量分布では、メインピークが分子量350乃至2400の領域にあることが好ましく、分子量400乃至2000の領域にあることがより好ましい。このような分子量分布を持たせることによりカラートナーに好ましい熱特性を付与することができる。
また、上記ワックスの含有量としては、結着樹脂100質量部に対し3乃至30質量部含有することが好ましい。本発明のカラートナーは、トナーに含有されるワックスの一部を、トナー製造時に結着樹脂と相溶させ可塑剤として用いる。さらに、定着工程において、トナーに含有されるワックスの一部を結着樹脂と相溶させ可塑剤として用いる。このため、トナーに含有せしめたワックスの全てが離型剤として作用しないため、通常よりも多くのワックスを含有させることが好ましい。ワックスの含有量が3質量部未満であると、耐オフセット性能が低下しやすくなる。ワックスの含有量が30質量部を超える場合、定着工程におけるワックスの吸熱量が多くなりすぎて、低温定着性能が低下しやすくなる。なお、本発明のカラートナーが有するワックスの含有量としては、5乃至20質量部であることがより好ましく、6乃至14質量部であることが特に好ましい。
上記の如き物性を求めるにあたって、ワックスのトナーからの抽出を必要とする場合には、抽出方法は特に制限されるものではなく、任意の方法が可能である。
一例を挙げると、所定量のトナーをトルエンにてソックスレー抽出し、得られたトルエン可溶分から溶剤を除去した後、クロロホルム不溶分を得る。
その後、IR法などにより同定分析をする。
また、定量に関しては、DSCにより定量分析を行う。
樹脂の酸価は以下のように求められる。基本操作は、JIS−K0070に準ずる。
試料1g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を酸価といい、以下の方法によって測定される。
(1)試薬
(a)溶剤の調製
試料の溶剤としては、エチルエーテル−エチルアルコール混液(1+1または2+1)またはベンゼン−エチルアルコール混液(1+1または2+1)を用いる。これらの溶液は使用直前にフェノールフタレインを指示薬として0.1モル/リットルの水酸化カリウムエチルアルコール溶液で中和しておく。
(b)フェノールフタレイン溶液の調製
フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶かす。(c)0.1モル/リットルの水酸化カリウム−エチルアルコール溶液の調製
水酸化カリウム7.0gをできるだけ少量の水に溶かしエチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2〜3日放置後ろ過する。標定はJISK 8006(試薬の含量試験中滴定に関する基本事項)に準じて行う。
(2)操作
試料1〜20gを正しくはかりとり、これに溶剤100ml及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、試料が完全に溶けるまで十分に振る。固体試料の場合は水浴上で加温して溶かす。冷却後これを0.1モル/リットルの水酸化カリウム−エチルアルコール溶液で滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いたときを中和の終点とする。
(3)計算式
次の式によって酸価を算出する。
A=B×f×5.611/S
A:酸価(mgKOH/g)
B:0.1モル/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:0.1モル/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)
樹脂の水酸基価は以下のように求められる。基本操作は、JIS−K0070に準ずる。
試料1gを規定の方法によってアセチル化するとき水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を水酸基価といい、以下の方法によって測定される。
(1)試薬
(a)アセチル化試薬の調製
無水酢酸25mlをメスフラスコ100mlに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜる。(場合によっては、ピリジンを追加しても良い)。アセチル
化試薬は、湿気、炭酸ガス及び酸の蒸気に触れないようにし、褐色びんに保存する。
(b)フェノールフタレイン溶液の調製
フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶かす。(c)0.2モル/リットルの水酸化カリウム−エチルアルコール溶液の調製
水酸化カリウム35gをできるだけ少量の水に溶かし、エチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2〜3日放置後ろ過する。標定はJISK 8006によって行う。
(2)操作
試料0.5〜20gを丸底フラスコに正しくはかりとり、これにアセチル化試薬5mlを正しく加える。フラスコの口に小さな漏斗をかけ、95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首が浴の熱を受けて温度が上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円盤をフラスコの首の付け根にかぶせる。1時間後フラスコを浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解する。さらに分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後、エチルアルコール5mlで漏斗及びフラスコの壁を洗い、フェノールフタレイン溶液を指示薬として0.2モル/リットルの水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定する。尚、本試験と並行して空試験を行う。場合によっては、指示薬としてKOH−THF溶液にしても構わない。
(3)計算式
次の式によって水酸基価を算出する。
A={(B−C)×f×28.05/S}+D
A:水酸基価(mgKOH/g)
B:空試験の0.5モル/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
C:本試験の0.5モル/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:0.5モル/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)
D:酸価(mgKOH/g)
本発明のトナーは、荷電制御剤を使用しても良い。
トナーを負荷電性に制御する荷電制御剤としては、例えば、有機金属化合物、キレート化合物、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、ノンメタルカルボン酸系化合物及びその誘導体が挙げられる。
また、トナーを正荷電性に制御する荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;が挙げられ、これらを単独或いは2種類以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ニグロシン系、4級アンモニウム
塩の如き荷電制御剤が特に好ましく用いられる。
上記荷電制御剤は、トナー中の結着樹脂100質量部当り、0.01乃至20質量部、より好ましくは0.5乃至10質量部となる様に含有させるのが良い。
本発明のカラートナーは、着色剤を含有している。黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、又は以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー用の着色剤として、例えば、以下に示す着色剤を用いることができる。
イエロー着色剤としては、顔料系としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー3,7,10,12〜15,17,23,24,60,62,74,75,83,93〜95,99,100,101,104,108〜111,117,123,128,129,138,139,147,148,150,166,168〜177,179,180,181,183,185,191:1,191,192,193,199が好適に用いられる。染料系としては、例えば、C.l.ソルベントイエロー33,56,79,82,93,112,162,163、C.I.ディスパースイエロー42,64,201,211が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5〜7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254、C.I.ピグメントバイオレッド19が挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
これらの着色剤は、単独または混合しさらには固溶体の状態で用いることができる。本発明の着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択される。該着色剤の添加量は結着樹脂100質量部に対し0.4乃至20質量部となる様に添加して用いられる。
さらに本発明のトナーは磁性体を含有させ磁性トナーとしても使用しうる。この場合、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。本発明において、該磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルの如き金属、或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムの如き金属との合金及びその混合物が挙げられる。
これらの磁性体は平均粒子径が2μm以下、好ましくは0.1〜0.5μm程度のものが好ましい。トナー中に含有させる量としては結着樹脂100質量部に対し20〜200質量部、特に好ましくは40〜150質量部となる様に含有させるのが良い。
上記磁性体は、796kA/m(10kエルステッド)印加での磁気特性が保磁力(H
c)1.59〜23.9kA/m(20〜300エルステッド)、飽和磁化(σs)50〜200emu/g、残留磁化(σr)2〜20emu/gの磁性体が好ましい。
本発明においては、トナーにおける各種の特性向上を目的とした外添剤が用いられる。外添剤としては、耐久性の点から、トナーの体積平均粒径の1/5以下の粒径であるものが好ましい。添加剤の粒径とは、電子顕微鏡におけるトナーの表面観察により求めたその平均粒径を意味する。これら特性付与を目的とした外添剤としては、たとえば、以下のようなものが用いられる。
流動性付与剤としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ハイドロタルサイトの如き金属酸化物、カーボンブラック、フッ化カーボンが挙げられる。それぞれ、疎水化処理を行ったものが、より好ましい。
研磨剤としては、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化クロムの如き金属酸化物、窒化ケイ素の如き窒化物、炭化ケイ素の如き炭化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムの如き金属塩が挙げられる。
滑剤としては、フッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンの如きフッ素系樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムの如き脂肪酸金属塩が挙げられる。
荷電制御性粒子としては、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウムの如き金属酸化物、カーボンブラックが挙げられる。
これら外添剤は、トナー粒子100質量部に対し、0.1〜10質量部が用いられ、好ましくは、0.1〜5質量部が用いられる。これら外添剤は、単独で用いても良く、また複数を併用しても良い。
本発明のトナーの凝集度は、現像性の点より、好ましくは1〜50%であり、より好ましくは1〜30%であり、さらに好ましくは4〜30%であり、特に好ましくは4〜20%である。トナーの凝集度は、値が小さい場合にはトナーの流動性が高く、値が大きい場合にはトナーの流動性が低いと判断される。トナーの凝集度は、以下の方法で測定される。
パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)の振動篩機を用い、振動台に目開き33μm(400mesh)、77μm(200mesh)、154μm(100mesh)の篩を目開の狭い順に重なる様に、即ち、目開き154μmの篩が最上位となる様に、下から目開き33μmの篩、目開き77μmの篩、目開き154μmの篩の順に重ねてセットする。このセットした目開き154μmの篩上に試料を乗せ、振動台への入力電圧が15Vになる様にし、その際の振動台の振幅が60〜90μmの範囲に入る様に調整し、約25秒間振動を加え、その後、各篩上に残った試料の質量を測定し、下式に基づき凝集度を得る。凝集度の値が小さい程、トナーの流動性は高い。尚、サンプル量は5gとし、常温常湿環境(20℃/60%RH)下に7日間放置させたものを測定する。
凝集度(%)=(目開き154μmの篩上の試料質量(g)/5g)×100
+(目開き77μmの篩上の試料質量(g)/5g)×100×0.6
+(目開き33μmの篩上の試料質量(g)/5g)×100×0.2
本発明のカラートナーは、平均円形度が0.960乃至1.000であることが好ましい。平均円形度が上記範囲にあれば、トナーの転写性能が向上し、また、現像安定性能が向上する。ワックスを含有し、ポリエステルを主成分とし、平均円形度が0.960以上といった実質的に真球状のトナーは、トナー担持部材や帯電部材との接触頻度が大きいた
め、耐久安定性能が低下しやすいが、その一方で、平均円形度から大きく外れた形状のトナーは、他のトナーと大きく物性が異なり場合が多く、耐久安定性能低下の要因となりやすい。なお、平均円形度は、より好ましくは0.975乃至1.000であることが良く、さらに好ましくは平均円形度が0.980乃至1.000である。
本発明において、トナーの平均円形度は、フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(シスメックス社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出する。
Figure 0005016901
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。測定は、512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子像の周囲長を用いる。
本発明における円形度はトナー粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、トナー粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
また、円形度頻度分布の平均値を意味する平均円形度Cは、粒度分布の分割点iでの円形度(中心値)をci、測定粒子数をmとすると、次式から算出される。
Figure 0005016901
また、円形度標準偏差SDは、平均円形度C、各粒子における円形度ci、測定粒子数をmとすると次式から算出される。
Figure 0005016901
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及び円形度標準偏差の算出に当たって、得られた円形度によって、粒子を円形度0.4〜1.0を0.01ごとに等分割したクラスに分け、その分割点の中心値と測定粒子数を用いて平均円形度及び円形度標準偏差の算出を行う。
具体的な測定方法としては、容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを用意し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02g加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機「Tetora150型」(日科機バイオス社製)を用い、2分間
分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃以上とならない様に適宜冷却する。また、円形度のバラツキを抑えるため、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100の機内温度が26〜27℃になるよう装置の設置環境を23℃±0.5℃にコントロールし、一定時間おきに、好ましくは2時間おきに2μmラテックス粒子を用いて自動焦点調整を行う。
トナー粒子の円形度測定には、前記フロー式粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が3000〜1万個/μlとなる様に該分散液濃度を再調整し、トナー粒子を1000個以上計測する。計測後、このデータを用いて、円相当径2μm未満のデータをカットして、トナー粒子の平均円形度を求める。
さらに本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、従来よりトナーの形状を算出するために用いられていた「FPIA−1000」と比較して、処理粒子画像の倍率の向上、さらに取り込んだ画像の処理解像度を向上(256×256→512×512)によりトナーの形状測定の精度が上がっており、それにより微粒子のより確実な補足を達成している装置である。従って、本発明のように、より正確に形状を測定する必要がある場合には、より正確に形状に関する情報が得られるFPIA2100の方が有用である。
本発明のカラートナーは、重量平均粒子径(D4)が3乃至7μmにあることが好ましい。上記D4が3乃至7μmにあることで画像の高解像度化が可能となる。
トナーの重量平均粒子径(D4)の値は、具体的には以下の方法により測定することができる。
測定装置としては、コールターカウンターのマルチサイザーII(コールター社製)を用いる。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、粒径2.00乃至40.30μmのトナー粒子の体積及び個数各チャンネルごとに測定して、トナーの体積分布と個数分布とを算出する。それから、トナー粒子の体積分布から求めた重量基準のトナー粒子の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)、個数平均粒子径(D1)を求める。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32.00〜40.30μmの13チャンネルを用いる。
本発明のカラートナーは、水系媒体中において、少なくとも、架橋性基を有するポリエステルと、結着樹脂と、着色剤と、ワックスとを有する分散系を形成する工程、該分散系において、架橋反応する工程により製造されることが好ましい。水系媒体中といったマイルドな条件で架橋反応を行うことにより、過剰な架橋反応の進行を抑制し、また、分子鎖の機械的破断といった現象を抑制し、本発明のカラートナーが有する酢酸エチル不溶成分の含有量、及び該酢酸エチル不溶成分が有するTHF可溶成分の含有量を好適に形成することができ、本発明の効果がより顕著に発現される。この理由は定かではないが、前記した各成分のトナー1個に含有される量が、トナー間においてバラツキが小さくなるため、
効果が顕著に発現されるものと考えられる。また、架橋性基を有するポリエステルは、その分子鎖の柔軟性から架橋密度の制御に好ましく、本発明のカラートナーが有する酢酸エチル不溶成分の含有量、及び該酢酸エチル不溶成分が有するTHF可溶成分の含有量を制御する上で好ましい。
前記、架橋反応する工程は、前記分散系を昇温速度0.10乃至10.00℃/分で70℃乃至98℃に昇温する工程、該分散系を冷却速度0.01乃至3.00℃/分で35乃至70℃の範囲を冷却する工程を有することが好ましい。さらに、上記工程において、分散系を形成する工程と昇温する工程の間に、該分散系から有機溶媒を除去する工程を設けてもよい。
上記分散系を加熱する工程と冷却する工程とが行われることで、水の極性により、ワックス成分が結着樹脂により良好に内包化される。また、温度制御を均一に行うことが可能となり、トナー間の物性のバラツキが小さくなる。さらに、上記架橋性基を有するポリエステルは、その一部が前記結着樹脂と結合して、架橋構造を形成するものと考えられるが、水系媒体中における加熱冷却といったマイルドな条件のため、本発明のカラートナーの物性が良好に制御される。前記昇温速度が10.00℃/分を越える場合、瞬時に架橋が起こるため、比較的固い架橋成分が形成されやすいと考えられる。このため、トナーに含有される酢酸エチル不溶成分の含有量は33.0質量%を超える値となりやすい。また、該酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分の含有量は10.0%未満の値となりやすい。一方、前記昇温速度が0.10℃/分未満の場合、架橋が増大しにくく、高分子量体が形成されやすい。このため、トナーに含有される酢酸エチル不溶成分の含有量は3.0質量%未満の値となりやすい。また、該酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分の含有量は80.0%を越える値となりやすい。なお、前記昇温速度としては、0.50乃至5.00℃/分であることがより好ましく、0.80乃至4.00℃/分であることがさらに好ましく、1.50乃至3.50℃/分であることが特に好ましい。前記冷却速度が3.00℃/分を越える場合、現像安定性能や色域性能が低下する場合がある。前記冷却速度が0.01℃/分未満の場合、低温定着性能や耐ブリスター性能が低下する場合がある。なお、上記冷却速度は、0.02乃至0.45℃/分であることがより好ましく、0.02乃至0.20℃/分であることが特に好ましい。
前記分散系を形成する工程は、下記(1)〜(4)に示すいずれかの工程を有することが好ましい。
・ 架橋性基を有するポリエステルと、結着樹脂と、着色剤と、ワックスと、有機溶媒とを有するトナー組成物を形成する工程、及び、水系媒体中において、該トナー組成物を有する分散系を形成する工程。
・ 架橋性基を有するポリエステルを含有する樹脂粒子を形成する工程、該樹脂粒子と、結着樹脂と、着色剤と、ワックスと、有機溶媒とを有するトナー組成物を形成する工程、及び、水系媒体中において、前記トナー組成物を有する分散系を形成する工程。
・ 架橋性基を有するポリエステルを含有する樹脂粒子を形成する工程、結着樹脂と、着色剤と、ワックスと、有機溶媒とを有するトナー組成物を形成する工程、及び、水系媒体中において、前記樹脂粒子と前記トナー組成物と有する分散系を形成する工程。
・ 架橋性基を有するポリエステルを含有する樹脂粒子を形成する工程、及び、水系媒体中において、結着樹脂と、着色剤と、ワックスとを有する樹脂粒子と、前記ポリエステルを含有する樹脂粒子とを有する分散系を形成する工程。
上記(4)において、結着樹脂と、着色剤と、ワックスとを有する樹脂粒子を形成する方法としては、公知のトナーを製造する方法を用いることができる。
前記架橋性基を有するポリエステルにおいて、架橋性基は、ウレタン結合、ウレア結合、イミド結合及びアミド結合から選ばれる一つ以上の縮合系結合が可能な架橋性基であることが好ましい。上記ポリエステルがエステル結合以外の縮合系結合を有することにより
、比較的柔らかい架橋構造を結着樹脂等と形成することとなり、前記M1とM2との含有量がより良好に制御され、色域性能と耐ブリスター性能がより良好になる。上記の結合は、反応条件やトナーの帯電性などから好適に選択することができる。上記架橋性基の中でも、緩やかな条件で結合を形成できるため、ウレタン結合、又はウレア結合が好ましい。
前記架橋性基の含有量としては、前記ポリエステルが有するアルコール成分の含有量B1(モル%)と、架橋性基の含有量B2(モル%)との比(B2/B1)が0.60乃至1.50にあることが好ましい。(B2/B1)が上記範囲の場合、本発明で規定する酢酸エチル不溶成分の含有量と、該酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分の含有量とが良好に制御され、耐ブリスター性能と色域性能とがより良好になる。(B2/B1)が0.60未満の場合、色域性能が低下する場合がある。(B2/B1)が1.50を越える場合、耐ブリスター性能が低下する場合がある。なお、上記(B2/B1)は、0.70乃至1.50にあることがより好ましく、0.70乃至1.10にあることが特に好ましい。
前記架橋性基を有するポリエステルは、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)によるスチレン(St)換算の分子量分布において、分子量2000乃至30000に極大値を有することが好ましい。該THF可溶成分が上記範囲に極大値を有することで、トナーのシャープメルト化と溶融時の粘性保持とのバランスが良好となり、低温定着性能、色域性能、及び、耐ブリスター性能が更に良好になる。前記極大値が2000未満の場合、耐オフセット性能と色域性能が低下する場合がある。前記極大値が30000を越える場合、低温定着性能と耐ブリスター性能が低下する場合がある。なお、前記極大値は、分子量3000乃至10000にあることがより好ましい。
また、上記ポリエステルは、分子量300乃至1000の成分の含有量が0.1乃至15.0質量%であることが好ましい。これにより、前記酢酸エチル不溶分に含有されるTHF可溶成分の分子量分布における極大値、及び、前記M1及びM2の値が良好に制御され、現像安定性能と耐ブリスター性能とがさらに良好になる。
一般的な混練粉砕法を用いてトナーを製造する場合、混練工程において、熱によりポリエステルの分子を再結合せしめ、分子量300乃至1000の成分の含有量を少なくしたり、機械的シェアによりポリエステルの分子鎖を切断し、分子量300乃至1000の成分の含有量を多くすることが可能である。しかし、水系媒体中で製造されるトナーの場合、そのような高熱を与えたり、強いシェアを与えることができない。このため、水系媒体中でトナーを製造する場合、該成分の含有量を予め前記範囲に制御することが好ましい。該成分の含有量が0.1質量%未満の場合、低温定着性能と耐ブリスター性能が低下しやすくなる。該成分の含有量が15.0質量%を超える場合、現像安定性能と耐オフセット性能が低下しやすくなる。なお、前記成分の含有量は、5.1乃至15.0質量%であることがより好ましく、5.5乃至12.0質量%であることが特に好ましい。
前記架橋性基を有するポリエステルを含有する樹脂粒子は、体積平均粒子径(D3)が10乃至200nmであることが好ましい。トナー全体に占める該樹脂粒子の添加量を増大しなくても、トナー1個に含有される該樹脂粒子の量が、トナー間において均一となる。また、定着工程において、該樹脂粒子と結着樹脂とが相溶しやすくなり、耐ブリスター性能、及び、色域性能がより良好となる。なお、前記樹脂粒子のD3としては、10乃至100nmにあることがより好ましく、15乃至70nmにあることが特に好ましい。
前記架橋性基を有するポリエステルを含有する樹脂粒子は、体積分布の10%粒子径(D310)とD3との比(D3/D310)が1.00乃至3.00にあることが好ましい。トナー全体に占める該樹脂粒子の添加量を増大しなくても、トナー1個に含有される
該樹脂粒子の量が、トナー間において均一となる。また、定着工程において、該樹脂粒子と結着樹脂とが相溶しやすくなり、耐ブリスター性能、及び、色域性能がより良好となる。また、水系媒体中に該樹脂粒子を分散して用いる場合、(D3/D310)が上記範囲にあることでトナーの円形度が大きくなり、現像安定性能が向上する。なお、(D3/D310)が1.00乃至2.00にあることがより好ましく、1.00乃至1.50にあることが特に好ましい。
また、上記と同様の理由により、前記架橋性基を有するポリエステルを含有する樹脂粒子は、体積分布の90%粒子径(D390)とD3との比(D390/D3)が1.00乃至3.00にあることが好ましい。該樹脂粒子が特に粒子径の大きい粒子を含有する場合、耐ブリスター性能が低下しやすい。なお、(D390/D3)が1.00乃至2.00にあることがより好ましく、1.00乃至1.50にあることが特に好ましい。
上記樹脂粒子の体積平均粒子径(D3)、体積分布の10%粒子径(D310)、90%粒子径(D390)は、例えば、MICROTRAC UPA MODEL:9232(Leeds and Northrup社製)で測定することができる。測定条件としては、下記に示す条件とする。
Particle Material:Latex
Transparent Particles:Yes
Spherical Particles:Yes
Particle Refractive Index:1.59
Fluid:water
前記架橋性基を有するポリエステルに用いることのできる樹脂としては、前述の結着樹脂に用いることのできるポリエステルとして例示したものと同様の樹脂を用いることができる。
それらの中でも、炭素数2乃至6のアルキル基を有するジオールを25乃至55モル%含有するポリエステルが好ましい。炭素数が前記範囲にあるアルキル基を有するジオールを含有するポリエステルは、定着工程において結着樹脂に相溶し、耐ブリスター性能と色域性能がより良好になる。なお、該アルキルジオールの含有量は、35乃至55モル%であることがより好ましく、さらには40乃至55モル%であることが特に好ましい。アルキルジオールの含有量が55モル%を超える場合、該ポリエステルが柔らかいためトナー製造時に架橋が進行しすぎ、耐ブリスター性能が低下する場合がある。一方、アルキルジオールの含有量が25モル%未満であると、該ポリエステルが固いためトナー製造時に架橋が十分に進行せず、色域性能が低下する場合がある。
上記アルキル基を有するジオールは、炭素数1乃至3のアルキル基を側鎖に有するアルキルジオールを、全アルキルジオールに対し、40モル%以上含有することが好ましい。該ポリエステルの柔軟性が良好となり、色域性能と耐ブリスター性能が更に良好になる。
前記架橋性基を有するポリエステルは、炭素数4乃至10のアルキル基を有するジカルボン酸を2乃至20モル%含有することが好ましい。炭素数が前記範囲にあるアルキル基を有するジカルボン酸は、定着工程において結着樹脂に相溶し、耐ブリスター性能と色域性能がより良好になる。アルキルジカルボン酸の含有量が2モル%未満であると、耐ブリスター性能が低下する場合がある。アルキルジカルボン酸の含有量が20モル%を超える場合には、色域性能が低下する場合がある。また、同様の理由により、ジカルボン酸の炭素数は、4乃至8であることがより好ましい。
前記トナー組成物を形成する工程は、少なくとも着色剤と有機溶媒とを有する着色剤組成物を形成する工程、及び、少なくともワックスと有機溶媒とを有するワックス組成物を
形成する工程、を有することが好ましい。着色剤やワックスの分散性を向上させる目的で、結着樹脂や荷電制御剤、着色剤分散剤、その他樹脂を添加することが特に好ましい。
上記着色剤組成物を形成する工程は、5乃至45の酸価を有するポリエステルを含有することが好ましい。トナーの平均円形度が大きくなり、現像安定性能がより良好となる。また、トナー中の着色剤の分散性が向上し、色域性能がより良好になる。
前記着色剤組成物を形成する工程は、炭素数2乃至6のアルキル基を有するポリエステルを含有することが好ましい。色域性能と低温定着性能がさらに良好になる。
上記ワックス組成物を形成する工程は、5乃至45の酸価を有するポリエステルを含有することが好ましい。トナーの平均円形度が大きくなり、現像安定性能がより良好となる。また、炭素数2乃至6のアルキル基を有するポリエステルを含有することが好ましい。色域性能と低温定着性能が良好になる。
前記分散系を形成する工程において、前記水系媒体は、水と分散安定剤とを有することが好ましい。具体的には、例えば、以下の分散安定剤を用いることができる。
本発明に用いられる分散安定剤としては、リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ヒドロキシアパタイド等の無機微粒子、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及び、これらのナトリウム塩、デンプンといった有機分散剤、スチレンアクリルラテックス、ポリエステルラテックス、ポリウレタンラテックス、ポリウレアラテックス、ポリアミドラテックスなど有機微粒子を用いることができる。
これら分散安定剤は、結着樹脂100質量部に対して0.01〜20.00質量部を使用することが好ましい。
さらに、これら分散安定剤の微細化のため、水に対し0.001〜0.1質量%の界面活性剤を併用しても良い。具体的には市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤が利用できる。例えばドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムが好ましく用いられる。
前記分散系を形成する工程は、水系媒体の温度は10乃至45℃に保持されていることが好ましい。温度上昇すると着色剤が熱凝集しやすく、トナーの色域性能が低下しやすい。10乃至45℃に保持されていることで着色剤の分散性が向上し、トナーの色域性能がさらに向上する。なお、前記水系媒体の温度は15乃至35℃であることがより好ましい。
前記有機溶媒を除去する工程は、水系媒体の温度は10乃至45℃に保持されていることが好ましい。温度上昇すると着色剤が熱凝集しやすく、トナーの色域性能が低下しやすい。10乃至45℃に保持されていることで着色剤の分散性が向上し、トナーの色再現性が向上する。なお、前記水系媒体の温度は15乃至35℃であることがより好ましい。
前記分散系を昇温速度0.10乃至10.00℃/分で70℃乃至98℃に昇温する工程、35乃至70℃の範囲を、冷却速度0.01乃至3.00℃/分で冷却する工程は、分散系を形成する工程と同時、又は、それ以降から、トナー粒子を回収する工程の前までの間であれば、いつ行うこともできる。例えば、有機溶媒を除去する工程において、70℃以上に加熱してもよいし、有機溶媒を回収する工程は40℃以下で行い、脱溶媒の工程
後に、70℃以上に加熱する工程、及び、35乃至70℃の範囲を、冷却速度0.01乃至3.00℃/分で冷却する工程を経てもよい。より好ましい方法としては、後者が挙げられる。トナー間の物性のバラツキが抑制され、低温定着性能や現像安定性能、色域性能がより良好になる。
前記有機溶媒を除去する工程としては、装置内を30乃至80kPaに減圧して有機溶媒の揮発を促進する方法、又は空気や窒素、その他の気体を水系媒体中に放出することで溶媒の揮発を促進する方法が好ましい。前記方法を採用することで、着色剤の熱凝集が抑制され、色域性能が更に良好になる。
本発明のカラートナーを製造する方法として特に好ましい方法は、(1)少なくとも結着樹脂、ワックス、着色剤、有機溶媒を有するトナー組成物を形成する工程、(2)少なくとも架橋性基を有するポリエステルを含有する樹脂粒子を形成する工程、(3)水系媒体中において、該樹脂粒子と前記トナー組成物とからなる分散系を形成する工程、(4)該分散系から有機溶媒を除去する工程、(5)該分散系を昇温速度0.10乃至10.00℃/分で70℃乃至98℃に昇温する工程、(6)該分散系を、冷却速度0.01乃至3.00℃/分で35乃至70℃の範囲を冷却する工程、(7)該分散系を固液分離してトナー粒子を回収する工程、を有する製造方法が挙げられる。該製造方法を採用すれば、トナー間の物性のバラツキが抑制され、低温定着性能と現像安定性能がより良好になる。
また、トナー組成物と有機溶媒とが混在している状態で70℃以上に加熱すると、着色剤が熱凝集を起こしやすく、トナーの色再現性が低下する場合がある。従って、有機溶媒を除去する工程の後に、分散系を加熱する工程を有することで、着色剤の熱凝集が抑制され、トナーの色再現性がより良好となりやすい。
本発明に用いる結着樹脂は、トナー組成物を形成する工程以前に、該樹脂に含有される分子量200乃至1000の成分の含有量を、予め5.1乃至20.0%に調整しておくことが好ましく、5.5乃至14.0%に調整しておくことが特に好ましい。該成分の含有量を制御する方法としては、(1)結着樹脂の重合反応後半において、トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらの酸無水物を添加する方法、(2)溶液重合により結着樹脂を製造する方法、(3)該樹脂が溶解しないか、又は膨潤する程度であり(すなわち、該樹脂が実質的に不溶であり)、該樹脂の原料であるモノマーは溶解する有機溶媒を用いて該樹脂を洗浄する方法、などが好ましく挙げられる。
一般的な混練工程と粉砕工程とを経て製造される場合には、原材料の樹脂に含有される分子量200乃至1000の樹脂成分の量にある程度の幅があった場合にも、混練工程において、強いシェアにより結着樹脂の分子鎖の切断し、分子量200乃至1000の樹脂成分の含有量を増大させたり、高温にすることで縮合反応させ、分子量200乃至1000の樹脂成分の含有量を減少させることで制御可能である。しかし、水系媒体中でトナーを直接製造する場合には、分子鎖を切断するような強いシェアを与えることはできず、また、縮合反応が起こるような高温を与えることもできない。また、高温を与えないようにすることで、トナーの色再現性が良好になる。このため、トナーが水系媒体中で製造される場合には、結着樹脂に含有される分子量200乃至1000の成分の含有量を、予め5.1乃至20.0%に調整しておくことが好ましく、5.5乃至14.0%であることが特に好ましい。
上記結着樹脂を洗浄する有機溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ヘキサン、アセトン等の低沸点溶媒が具体的に例示でき、これらは混合して用いてもよい。中でも、沸点60乃至80℃の有機溶媒が好ましい。
本発明に用いるワックスは、トナー組成物を形成する工程以前に、該ワックスに含有される分子量200〜400の成分の含有量を、予め1乃至15%に調整してことが好まし
い。一般的な混練工程と粉砕工程とを経て製造される場合には、原材料のワックスに含有される分子量200〜400の成分の含有量にある程度の幅がある場合でも、高温にすることで分子量200〜400の成分の含有量を減少させることで制御可能である。しかし、水系媒体中でトナーを直接製造する場合には、このような高温を与えることもできない。また、高温を与えないようにすることで、トナーの色再現性が良好になる。このため、トナーが水系媒体中で製造される場合には、ワックスに含有される分子量200〜400の成分の含有量を、予め1乃至15%に調整してことが好ましい。
本発明のカラートナーは、一成分系現像剤用のトナーとして使用することも可能であり、キャリアを有する二成分系現像剤用のトナーとしても使用可能である。
二成分系現像剤として用いる場合には、本発明のカラートナーとキャリアとを混合した現像剤として使用する。該キャリアは、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、及び、クロム元素から選ばれる元素単独または複合のフェライトで構成される。該キャリアの形状としては、球状、扁平または不定形があり、そのいずれのものも用いることができる。また、キャリア表面の微細構造(たとえば表面凹凸性)をコントロールすることが好ましい。
該キャリアの製造方法は、上記フェライトを焼成、造粒することにより、あらかじめ、キャリアコアを生成した後、その表面を樹脂で被覆する方法が挙げられる。キャリアのトナーへの負荷を軽減する意味合いから、フェライトと樹脂を混練後、粉砕、分級して低密度分散キャリアを得る方法や、さらには、直接フェライトとモノマーとの混練物を水系媒体中にて懸濁重合せしめ真球状のキャリアを得る方法も利用することが可能である。
上記キャリアコアの表面を樹脂で被覆した被覆キャリアは、特に好ましく用いられる。その製造方法としては、樹脂を溶剤中に溶解もしくは懸濁せしめて、該溶液または懸濁液をキャリアに塗布し付着せしめる方法、単に樹脂粉体とキャリアコアとを混合して付着させる方法が挙げられる。
上記キャリアコアの表面を被覆する物質としてはトナーの材料によっても異なるが、例えばポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が挙げられる。これらは、単独或は複数で用いることができる。
上記キャリアの磁性特性としては、磁気的に飽和させた後の79.6kA/m(1kエルステッド)における磁化の強さ(σ1000)が30乃至300emu/cm3である
ことが好ましい。さらに高画質化を達成するために、100乃至250emu/cm3
あることがより好ましい。上記磁化の強さが300emu/cm3より大きい場合には、
高画質なトナー画像が得られにくくなる。逆に、30emu/cm3未満であると、磁気
的な拘束力も減少するためにキャリア付着を生じやすい。
キャリアの形状は、丸さの度合いを示すSF−1が180以下、凹凸の度合いを示すSF−2が250以下であることが好ましい。SF−1、SF−2は以下の式にて定義され、ニレコ社製のLuzexIIIにて測定される。
Figure 0005016901
本発明のカラートナーと上記キャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、2〜15質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。
(結着樹脂の製造例1)
冷却管、撹拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、カルボン酸モノマー(テレフタル酸:448質量部、アジピン酸:31質量部)、アルコールモノマー(プロピレングリコール:162質量部)、触媒(テトラステアリルチタネート:2質量部)を入れ、常圧下,220℃で6時間、減圧下,230℃で7時間反応させた。180℃に冷却し、カルボン酸モノマー(無水トリメリット酸:6質量部)を入れ、常圧で3時間反応させた。これをメタノールで洗浄した後、乾燥して結着樹脂1を得た。物性を表1に示す。
(結着樹脂の製造例2)
冷却管、撹拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、カルボン酸モノマー(テレフタル酸:388質量部、アジピン酸:64質量部)、アルコールモノマー(プロピレングリコール:164質量部)、触媒(テトラステアリルチタネート:2質量部)を入れ、常圧下、230℃で6時間、減圧下,230℃で9時間反応させた。180℃に冷却し、カルボン酸モノマー(無水トリメリット酸:18質量部)を入れ、常圧で3時間反応させた。これをメタノールで洗浄した後、乾燥して結着樹脂2を得た。物性を表1に示す。
(結着樹脂の製造例3)
スチレン6.2mol%、2−エチルヘキシルアクリレート1.4mol%、フマル酸0.7mol%、α−メチルスチレンの2量体0.1mol%、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.2mol%を滴下用容器に入れる。冷却管、撹拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン18.0mol%、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン27.5mol%、テレフタル酸13.5mol%、無水トリメリット酸2.0mol%、フマル酸12.0mol%、アジピン酸10.5mol%、及び、触媒(テトラステアリルチタネート)0.1mol%を入れた。反応容器内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、145℃の温度で撹拌しつつ、先の滴下容器内の単量体、架橋剤及び重合開始剤を4時間かけて滴下した。次いで200℃に昇温を行い、8時間反応させた。これをメタノールで洗浄した後、乾燥して結着樹脂3を得た。物性を表1に示す。
(結着樹脂の製造例4)
冷却管、撹拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、カルボン酸モノマー(テレフタル酸180質量部、アジピン酸80質量部)、アルコールモノマー(ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:220質量部、及び、ポリ
オキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:535質量部)、触媒(テトラステアリルチタネート:2質量部)を入れ、常圧下、230℃で6時間、減圧下、230℃で7時間反応させた。180℃に冷却し、カルボン酸モノマー(無水トリメリット酸:12質量部)を入れ、常圧で3時間反応させた。これをメタノールで洗浄した後、乾燥して樹脂4を得た。物性を表1に示す。
(結着樹脂の製造例5)
冷却管、撹拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、カルボン酸モノマー(テレフタル酸190質量部、アジピン酸58質量部、フマル酸8質量部)、アルコールモノマー(ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:310質量部、及び、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:432量部)、触媒(テトラステアリルチタネート:2質量部)を入れ、常圧下、230℃で6時間、減圧下、230℃で8時間反応させた。180℃に冷却し、カルボン酸モノマー(無水トリメリット酸:48質量部)を入れ、常圧で3時間反応させた。これをメタノールで洗浄した後、乾燥して結着樹脂5を得た。物性を表1に示す。
(架橋樹脂分散液の製造例1)
冷却管、撹拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、カルボン酸モノマー(アジピン酸:160質量部)、アルコールモノマー(1,3−プロパンジオール:110質量部、1,4−ブタンジオール:90質量部)、触媒(テトラステアリルチタネート:1.5質量部)を入れ、常圧下,230℃で6時間、減圧下,230℃で5時間反応した。10℃に冷却し、イソホロンジイソシアネート:400質量部、トルエン:200質量部からなる混合物を3時間かけて滴下した。揮発分を留去した後、メタノールで洗浄、乾燥して架橋樹脂1を得た。物性を表2に示す。
TKホモミキサーを備えた反応容器に、イオン交換水:1000質量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル:10質量部を入れた。容器内を30℃に保持し、TKホモミキサーの回転数を毎分15000回転とし、上記架橋樹脂1:150質量部、トルエン:200質量部、ジターシャリーブチルサリチル酸アルミ化合物:5質量部、からなる混合物を投入し、15000回転を保持したまま10分間造粒した。通常のプロペラ撹拌装置に変更し、撹拌装置の回転数を150rpmとして、水系媒体を30℃に保持して30分間撹拌した後、昇温速度2.0℃/分の速度で40℃まで昇温し、2時間撹拌した。容器内を45kPaに減圧してトルエンの残留量が200ppmになるまで留去した後、これを冷却速度2.0℃/分で25℃まで冷却して架橋樹脂分散液1を得た。物性を表3に示す。
(架橋樹脂分散液の製造例2)
架橋樹脂分散液の製造例1において、表2に示す材料を用い、トルエンを400質量部に変更した以外は架橋樹脂分散液の製造例1と同様にして架橋樹脂分散液2を得た。物性を表3に示す。
(架橋樹脂分散液の製造例3)
架橋樹脂分散液の製造例1において、表2に示す材料を用い、トルエンを50質量部に変更した以外は架橋樹脂分散液の製造例1と同様にして架橋樹脂分散液3を得た。物性を表3に示す。
(ワックス分散剤の製造例)
温度計及び撹拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン:300質量部、フィッシャートロプシュワックス(重量平均分子量:560、分子量ピーク:530、融点:75.8℃):100質量部を入れ、窒素雰囲気下、150℃に昇温し、スチレン:100質量部、アクリロニトリル:84質量部、マレイン酸モノブチル:120質量部、ジ−
t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート:5質量部、及び、キシレン:200質量部の混合溶液を3時間かけて滴下し、さらにこの温度で60分間保持して重合を行った。これをメタノール:2000質量部に投入した後、ろ過、乾燥して、ワックス分散剤を得た。
(ワックス分散液の製造例)
平均粒子径15μmに解砕したフィッシャートロプシュワックス(重量平均分子量:560、分子量ピーク:530、融点:75.8℃):100質量部を、メタノール:100質量部に入れ、回転数150回転/分で10分間回転して洗浄した後、濾別した。これを4回繰り返した後、濾別し、乾燥してワックスを回収した。
得られたワックス:90質量部、前記ワックス分散剤10質量部、酢酸エチル:100質量部を、直径20mmのジルコニアビーズを入れたアトライター(三井金属社製)に入れ、回転数150回転/分で2時間回転させた。ジルコニアビーズを分離して、ワックス分散液を得た。
ワックス分散液の一部を乾燥させ、分子量200乃至400の成分の含有量を測定したところ、2.3質量%であった。
(着色剤分散液の製造例1)
直径20mmのジルコニアビーズを入れたアトライター(三井金属社製)に、前記結着樹脂1 30質量部、C.I.ピグメントブルー15:3 30質量部、及び酢酸エチル
50質量部を入れ、回転数300回転/分で10時間回転させた。ジルコニアビーズを分離して着色剤分散液1を得た。
(着色剤分散液の製造例2)
着色剤分散液の製造例1において、C.I.ピグメントブルー15:3の代わりに、C.I.ピグメントレッド57を用いた以外は着色剤分散液の製造例1と同様にして、着色剤分散液2を得た。
(着色剤分散液の製造例3)
着色剤分散液の製造例1において、C.I.ピグメントブルー15:3の代わりに、C.I.ピグメントイエロー17を用いた以外は着色剤分散液の製造例1と同様にして、着色剤分散液3を得た。
(着色剤分散液の製造例4)
着色剤分散液の製造例1において、C.I.ピグメントブルー15:3の代わりに、カーボンブラック(REGAL 250R、CABOT社製)を用いた以外は着色剤分散液の製造例1と同様にして、着色剤分散液4を得た。
<実施例1>
結着樹脂1:85質量部、結着樹脂2:15質量部、ワックス分散液1:25質量部、着色剤分散液1:22質量部、酢酸ブチル:50質量部を均一に混合してトナー組成物を形成した。
TKホモミキサーを備えた反応容器に、イオン交換水:1000質量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル:5質量部、架橋樹脂分散液1:39質量部(固形分:6質量部)を入れた。容器内を30℃に保持し、TKホモミキサーの回転数を毎分15000回転とし、上記トナー組成物を投入し、15000回転を保持したまま10分間造粒した。通常のプロペラ撹拌装置に変更し、撹拌装置の回転数を150rpmとして、水系媒体を30℃に保持して30分間撹拌した後、昇温速度2.0℃/分の速度で70℃まで昇
温し、3時間撹拌した。容器内を45kPaに減圧してトルエンの残留量が200ppmになるまで留去した後、85℃に昇温し、85℃で30分間加熱処理した。これを冷却速度2.0℃/分で25℃まで冷却した。さらに洗浄、乾燥を行ってトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、シリコーンオイルとヘキサメチルジシラザンで処理された一次粒径12nmの乾式シリカ(BET比表面積120m2/g)2.5質量部
を外添して、トナー1を得た。トナー1に含有される酢酸エチル不溶成分の含有量、該酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分の含有量、及び、それらの物性を表5に、トナー1の物性を表6に示す。
このトナー1を後述する試験方法に従って評価を行った。トナー1の物評価結果を表7に示す。
<実施例2〜10、比較例1〜5>
着色剤分散液、結着樹脂、架橋樹脂分散液の種類及び使用量、並びに、加熱処理の温度を表4に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー2〜15を得た。また、該トナー2〜15は実施例1と同様の方法で評価を行った。各トナーの物性及び評価結果を表5、6及び7に示す。
<低温定着性能、及び、色域性能の評価方法>
市販のカラーレーザープリンター(LBP−5500,キヤノン製)を使用し、シアンカートリッジのトナーを取り出して、これにトナー1を充填した。該カートリッジをシアンステーションに装着し、受像紙(キヤノン製オフィスプランナー 64g/m2)上に
未定着のトナー画像(0.6mg/cm2)を形成した。次いで、市販のカラーレーザー
プリンター(LBP−5500,キヤノン製)から取り外した定着ユニットを定着温度とプロセススピードが調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。常温常湿下、プロセススピードを240mm/秒に設定し、140℃〜230℃の範囲で設定温度を10℃おきに変化させながら、各温度で上記トナー画像の定着を行った。下記評価基準に従って、低温定着性能、耐オフセット性能、色域性能を評価した。結果を表7に示す。
低温定着性能の評価基準
A:130℃以上で低温オフセットが発生せず、指でこすってもトナーが剥がれない
B:140℃以上で低温オフセットが発生せず、指でこすってもトナーが剥がれない
C:150℃以上で低温オフセットが発生せず、指でこすってもトナーが剥がれない
D:160℃以上で低温オフセットが発生せず、指でこすってもトナーが剥がれない
E:170℃以上で低温オフセットが発生せず、指でこすってもトナーが剥がれない
<上記評価においてD、Eは実使用上問題が生じる。>
耐オフセット性能の評価基準
A:220℃以上で高温オフセットが発生しない
B:210℃以上で高温オフセットが発生しない
C:200℃以上で高温オフセットが発生しない
D:190℃以上で高温オフセットが発生しない
E:180℃以上で高温オフセットが発生しない
<上記評価においてD、Eは実使用上問題が生じる。>
シアントナーの色域性能
A:c*の最高値が60以上である
B:c*の最高値が55以上である
C:c*の最高値が50以上である
D:c*の最高値が45以上である
E:c*の最高値が40以上である
<上記評価においてD、Eは実使用上問題が生じる。>
マゼンタトナーの色域性能
A:c*の最高値が80以上である
B:c*の最高値が75以上である
C:c*の最高値が70以上である
D:c*の最高値が65以上である
E:c*の最高値が60以上である
<上記評価においてD、Eは実使用上問題が生じる。>
イエロートナーの色域性能
A:c*の最高値が110以上である
B:c*の最高値が105以上である
C:c*の最高値が100以上である
D:c*の最高値が95以上である
E:c*の最高値が90以上である
<上記評価においてD、Eは実使用上問題が生じる。>
ブラックトナーの色域性能
A:L*の最低値が20以下である
B:L*の最低値が20を越え25以下である
C:L*の最低値が25を越え30以下である
D:L*の最低値が30を越え35以下である
E:L*の最低値が35を越える
<上記評価においてD、Eは実使用上問題が生じる。>
<耐ブリスター性能の評価方法>
市販のカラーレーザープリンター(LBP−5500,キヤノン製)を使用し、シアンカートリッジ、及び、マゼンタカートリッジのトナーを取り出して、これらにトナー1を充填した。シアンカートリッジをシアンステーションに、マゼンタカートリッジをマゼンタステーションに装着し、受像紙(キヤノン製CLC用厚口用紙 157g/m2)上に
未定着のトナー画像(1.2mg/cm2)を形成した。次いで、市販のカラーレーザー
プリンター(LBP−5500,キヤノン製)から取り外した定着ユニットを定着温度とプロセススピードが調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。常温常湿下、プロセススピードを140mm/秒に設定し、140℃〜230℃の範囲で設定温度を10℃おきに変化させながら、各温度で上記トナー画像の定着を行った。下記評価基準に従って、耐ブリスター性能を評価した。結果を表4に示す。
耐ブリスター性能の評価基準
A:150℃以上でブリスターが発生しない
B:155℃以上でブリスターが発生しない
C:160℃以上でブリスターが発生しない
D:165℃以上でブリスターが発生しない
E:170℃以上でブリスターが発生しない
<上記評価においてD、Eは実使用上問題が生じる。>
Figure 0005016901
Figure 0005016901
Figure 0005016901
Figure 0005016901
Figure 0005016901
Figure 0005016901
Figure 0005016901
トナー1について、ガラス転移点(Tg)と融点(Tm)とを測定したチャートである。 トナー1について、該トナーが有する酢酸エチル不溶成分に含有されるテトラヒドロフラン(THF)可溶成分の組成を測定したチャートである。 トナー10について、該トナーが有する酢酸エチル不溶成分に含有されるテトラヒドロフラン(THF)可溶成分の組成を測定したチャートである。 トナー1について、貯蔵弾性率(G’)を測定したチャートである。 CIE−L***系表色系の立体概念図である。

Claims (10)

  1. 少なくとも結着樹脂と着色剤とワックスとを含有するカラートナーであって、
    該カラートナーは、ソックスレー抽出法による酢酸エチル不溶成分を5.0乃至16.0質量%含有し、
    該酢酸エチル不溶成分は10.0乃至80.0質量%のテトラヒドロフラン(THF)可溶成分を含有し、該THF可溶成分はポリエステルを含有するカラートナー。
  2. 前記酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)によるスチレン(St)換算の分子量分布において、分子量4000乃至40000に極大値を有する、請求項1に記載のカラートナー。
  3. 前記酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)によるスチレン(St)換算の分子量分布において、分子量3000乃至30000の成分の含有量(M1)と、分子量10万以上の成分の含有量(M2)との比(M2/M1)が0.03乃至0.80にある、請求項1又は2に記載のカラートナー。
  4. 前記酢酸エチル不溶成分に含有されるTHF可溶成分は、ウレタン結合、ウレア結合、イミド結合及びアミド結合から選ばれる一つ以上の結合を有するポリエステルを含有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカラートナー。
  5. 前記カラートナーは、動的粘弾性試験における貯蔵弾性率(G’)のカーブにおいて、110乃至170℃の温度範囲に、ショルダーピークを有し、該ショルダーピークのG’が100乃至10000Paにある、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカラートナー。
  6. 前記カラートナーは、動的粘弾性試験における貯蔵弾性率(G’)のカーブにおいて、
    130℃における貯蔵弾性率(G’130)が400乃至6000Pa、
    150℃における貯蔵弾性率(G’150)が200乃至2000Paにあり、
    G’130とG’150との比(G’130/G’150)が1.05乃至20.00にある、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のカラートナー。
  7. 前記カラートナーは、45.0乃至65.0℃の温度範囲に、ガラス転移点(Tg)を有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカラートナー。
  8. 前記カラートナーは、
    水系媒体中に少なくとも結着樹脂と架橋性基を有するポリエステルとを分散させた分散系の形成工程において、該架橋性基を有するポリエステルの架橋性基を架橋反応させることによって形成されものである請求項1乃至7のいずれか1項に記載のカラートナー。
  9. 前記架橋反応を行う際に、該分散系を昇温速度0.10乃至10.00℃/分で70乃至98℃に昇温させ、昇温後、該分散系を冷却速度0.01乃至3.00℃/分で35乃至70℃に冷却する請求項8に記載のカラートナー。
  10. 該架橋性基を有するポリエステルは、アルコール成分を有し、
    該アルコール成分の含有量B1(モル%)と、該架橋性基の含有量B2(モル%)との比(B1/B2)が0.60乃至1.50である請求項8又は9に記載のカラートナー。
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