JP5016549B2 - 射出成形機の制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポンプ本体を回転駆動する駆動モータの回転数を可変制御して、成形サイクルにおける各動作工程の制御を行う際に用いて好適な射出成形機の制御方法に関する。
従来、油圧ポンプにおけるポンプ本体を回転駆動する駆動モータの回転数を可変制御し、これに基づいて射出シリンダ等の油圧アクチュエータを駆動制御するとともに、成形サイクルにおける各動作工程の制御を行う射出成形機の油圧駆動装置は、特許文献1で知られており、同文献1には、固定吐出型油圧ポンプにおけるサーボモータの回転数を制御して油圧ポンプの吐出流量及び吐出圧力を制御するとともに、圧力制御時における油圧ポンプの回転数が、常に、油圧ポンプにおける回転抵抗の不安定領域を外れる回転数以上となるように、リリーフ回路により油圧ポンプから吐出する作動油をオイルタンクにリリーフするようにした油圧駆動装置が開示されている。
しかし、この油圧駆動装置は、サーボモータの回転数を制御して油圧ポンプの吐出流量及び吐出圧力を制御するため、射出成形機の性能(最大能力)に対応した大型のサーボモータが必要になる。したがって、サーボモータの回転数が小さくなる不安定領域の対策として、油圧ポンプから吐出する作動油をオイルタンクにリリーフさせる場合、エネルギの無駄が大きくなり、省エネルギ性やランニングコストの面において不利になる。また、射出成形機の最大能力に対応した大型のサーボモータを必要とするため、サーボモータ自身が高価となり、イニシャルコストの増加を招く。しかも、射出成形機の全動作に対して、一台のサーボモータにより制御するため、射出成形機の各動作工程に対してサーボモータの動作能力が適合しない領域を発生しやすい問題があった。
一方、この問題を解決するため、既に、本出願人は特許文献2により、油圧ポンプにおける駆動モータの回転数を可変制御し、成形サイクルにおける各動作工程の制御を行う制御手段を備える射出成形機において、油圧ポンプとして少なくとも複数の固定吐出流量を設定可能な油圧ポンプを用いるとともに、油圧ポンプを、所定の条件に基づいて設定した各動作工程に対応する固定吐出流量に切換え、かつ駆動モータの回転数を可変制御して各動作工程の制御を行う制御手段を備える射出成形機を提案した。
特許第3245707号 特開2007−69500号公報
ところで、上述した特許文献2の射出成形機は、駆動モータからみた場合、油圧ポンプを小容量タイプと大容量タイプに使い分けることができるため、駆動モータの回転数が小さくなる不安定領域に対する別途の対策が不要或いは縮減可能になるとともに、大容量タイプの油圧ポンプとしての使用時間を限定することにより、射出成形機の最大能力よりも低い性能を有する駆動モータの選定が可能になる利点を有しているが、次のような解決すべき課題も残されていた。
第一に、吐出流量(吐出圧力)の制御は、駆動モータの回転数の制御により行うため、斜板角により設定する固定吐出流量は、制御時において変動しないように固定する必要があるとともに、他方、固定吐出流量を変更する際は、非制御時における僅かな期間に切換える必要がある。したがって、斜板角を変更する機構は、特許文献2に示すように、斜板に対してコントロールシリンダ及び戻しスプリングを付設するとともに、コントロールシリンダを切換バルブ(電磁バルブ)を介してポンプ部(ポンプ機体)の吐出口に接続し、この切換バルブの開閉制御により斜板角の変更を行っていた。これにより、機構の小型化及び切換の迅速化を図れるとともに、選択できる斜板角は大小二つの角度となるが、通常の生産稼働における実用レベルでの駆動能力は確保される。しかし、樹脂として特に粘性の高い材料を使用するような場合、斜板角を大きく設定する計量工程では、比較的小型のタイプを使用する駆動モータに対して過大な負荷が付加されることになり、駆動モータが停止してしまうなど、正常に回転できなくなる。
第二に、速度の遅い充填工程や時間の長い保圧工程では、斜板角を小さく設定するが、これらの各工程を的確に制御するには、ある程度の吐出流量を確保する必要があり、斜板角を小さく設定するとしても標準レベルの斜板角に設定せざるを得ないとともに、駆動モータの回転数は、制御の安定化及び高精度化を確保する必要性からあまり小さく設定できない。したがって、制御できる小流量側の吐出流量には限界があり、必要な微小流量を得ることが容易でない。結局、充填工程,保圧工程,突出し工程等において、微小流量領域が必要になっても十分な油圧駆動制御を行うことができない。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した射出成形機の制御方法の提供を目的とするものである。
本発明に係る射出成形機Mの制御方法は、上述した課題を解決するため、ポンプ本体3を駆動モータ(第一駆動モータ)4により回転駆動するとともに、第一駆動モータ4の回転数を可変して少なくとも吐出流量を可変可能な油圧ポンプ2における第一駆動モータ4の回転数を可変制御して成形サイクルにおける各動作工程の制御を行うに際し、サーボ回路13scに接続した第二駆動モータ13となる第二サーボモータ13sを利用した斜板角可変機構12における当該第二サーボモータ13sの回転量により、少なくとも吐出流量を可変可能な斜板型ピストンポンプ2sにおける斜板11の角度(斜板角)を可変するとともに、サーボ回路4scに接続した第一駆動モータ4となる第一サーボモータ4sの回転数を可変制御する予め設定した第一制御条件及び第二サーボモータ13sの回転量を複数の斜板角が得られるように所定の回転量に固定する予め設定した第二制御条件を組合わせた標準モードに基づいて、又は第一サーボモータ4sの回転数を所定の回転数に固定する予め設定した第一制御条件及び第二サーボモータ13sの回転量を可変制御する予め設定した第二制御条件を組合わせた個別モードに基づいて、動作工程となる、計量工程S1,充填工程S2,S3及び保圧工程S4,S5を含む射出工程,突出し工程S6,型締工程S7,ノズルタッチ工程S8、の一又は二以上の制御を行うようにしたことを特徴とする。
この場合、発明の好適な態様により、個別モードにおける第一制御条件には、第一サーボモータ4sの回転数を最小回転数に固定する設定を行うことができる。
このような本発明に係る射出成形機Mの制御方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) 第二サーボモータ13sを利用した斜板角可変機構12における当該第二サーボモータ13sの回転量により、少なくとも吐出流量を可変可能な斜板型ピストンポンプ2sにおける斜板11の角度(斜板角)を可変するとともに、第一サーボモータ4sの回転数に対して設定した第一制御条件及び第二サーボモータ13sの回転量に対して設定した第二制御条件の組合わせに基づいて動作工程の制御を行うようにしたため、制御条件の組合わせにより制御能力に対する柔軟性向上や制御範囲の拡大を図ることができ、これにより、様々な成形態様に対しても適切な制御を行うことができる。
(2) 第一駆動モータ4及び第二駆動モータ13には、サーボ回路4sc及び13scに接続したサーボモータ4s及び13sを用いたため、本発明に係る射出成形機Mの制御方法を容易かつ最適な態様で実施することができる。
(3) 動作工程の制御として、サーボ回路4scに接続した第一駆動モータ4となる第一サーボモータ4sの回転数を可変制御する予め設定した第一制御条件及び第二サーボモータ13sの回転量を複数の斜板角が得られるように所定の回転量に固定する予め設定した第二制御条件を組合わせた標準モードを備えるため、樹脂として特に粘性の高い材料を使用したような場合であっても、比較的小型のタイプを使用する第一サーボモータ4sには過大な負荷が付加されず、大流量が必要な計量工程であっても、必要な性能を確保しつつ安定な駆動制御を行うことができる。
(4) 動作工程の制御として、第一サーボモータ4sの回転数を所定の回転数に固定する予め設定した第一制御条件及び第二サーボモータ13sの回転量を可変制御する予め設定した第二制御条件を組合わせた個別モードを備えるため、第一サーボモータ4sの回転数を安定した最小回転数に固定し、かつ第二サーボモータ13sの回転量を可変制御することにより、必要な微小流量を得ることができ、充填工程,保圧工程,突出し工程等において微小流量領域が必要になっても十分な油圧駆動制御を行うことができる。
(5) 動作工程には、計量工程S1,充填工程S2,S3及び保圧工程S4,S5を含む射出工程,突出し工程S6,型締工程S7,ノズルタッチ工程S8、の一又は二以上を含ませたため、射出成形機Mの一成形サイクルにおける各動作工程の制御に対して優劣の差を最小限に抑えて最適な制御を行うことができる。
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る制御方法を実施できる射出成形機Mの構成について、図1〜図4を参照して具体的に説明する。
図1において、Mは射出成形機であり、射出装置Miと型締装置Mcを備える。射出成形機Mは、油圧アクチュエータ(21a…)として、射出装置Miの加熱筒22に内蔵したスクリュ23を進退させる射出シリンダ21a,このスクリュ23を回転させる計量モータ(オイルモータ)21b,型締装置Mcにおける金型24に対する型開閉及び型締を行う型締シリンダ21c,金型24における成形品の突き出し(エジェクタ)を行う突出しシリンダ21d及び射出装置Miを進退移動させて金型24に対するノズルタッチ又はその解除を行う射出装置移動シリンダ21eを備える。
一方、25は油圧駆動部であり、油圧駆動源となる斜板型ピストンポンプ2s(油圧ポンプ2)及びバルブ回路26を備える。斜板型ピストンポンプ2sは、ポンプ本体3とこのポンプ本体3を回転駆動する第一サーボモータ4s(第一駆動モータ4)を備える。この場合、第一サーボモータ4sはサーボ回路4sc(図2)に接続した交流サーボモータを用いるとともに、第一サーボモータ4sには、この第一サーボモータ4sの単位時間当たりの回転数を検出するロータリエンコーダ4seを付設する。
この斜板型ピストンポンプ2sの構造を図3及び図4に示す。図4中、30はポンプユニットであり、ポンプ支持ベース31とこのポンプ支持ベース31により支持される斜板型ピストンポンプ2sを備える。この場合、ポンプ支持ベース31の一側にロータリエンコーダ4seを付設した第一サーボモータ4sを備えるとともに、ポンプ支持ベース31の他側にポンプ本体3を備え、さらに、ポンプ本体3は、図3に示すように、ポンプ機体27と、このポンプ機体27に付設した斜板角可変機構12を備える。
ポンプ機体27は、角度(斜板角)を可変可能に配した斜板11を備えるとともに、斜板角により吐出流量及び吐出圧力が設定されるポンプピストン33を備える。斜板11は、一側が戻しスプリング32により付勢されるとともに、他側が斜板角可変機構12における後述する操作部42により操作される。これにより、ポンプ機体27は、斜板11の斜板角を大きくすれば、ポンプピストン33のピストンストロークが大きくなるため、吐出流量が増加するとともに、斜板11の斜板角を小さくすれば、ポンプピストン33のピストンストロークが小さくなるため、吐出流量が減少する。
斜板角可変機構12は、第二サーボモータ13s(第二駆動モータ13)と、この第二サーボモータ13sの回転出力を変速して出力する変速機構14と、この変速機構14の回転出力を直進運動に変換して出力する運動変換機構15を備える。第二サーボモータ13sはサーボ回路13sc(図2)に接続した交流サーボモータを用いるとともに、第二サーボモータ13sには、この第二サーボモータ13sの単位時間当たりの回転数を検出するロータリエンコーダ13seを付設する。変速機構14は第二サーボモータ13sの回転出力を減速する機能及び回転軸を90゜変換する機能を有する。この第二サーボモータ13s及び変速機構14は、ポンプ機体27の外面に取付ける。また、変速機構14の回転出力軸14oには、外周面に雄ネジを形成したシャフト部41を一体に設け、このシャフト部41をポンプ機体27の内部に突出させる。そして、このシャフト部41に、内周面に雌ネジを形成した筒形の操作部42を螺合するとともに、この操作部42を軸方向にのみガイドするガイド筒部43を付設して運動変換機構15を構成する。この操作部42の先端により上述した斜板11が操作される。
これにより、第一サーボモータ4sの回転数を可変制御し、又は第二サーボモータ13sの回転量を可変制御すれば、斜板型ピストンポンプ2sの吐出流量及び吐出圧力を可変できる。したがって、予め第一サーボモータ4sの回転数に対して第一制御条件を設定するとともに、予め第二サーボモータ13sの回転量に対して第二制御条件を設定すれば、この第一制御条件及び第二制御条件の組合わせに基づいて、上述した各シリンダ21a,21c,21d,21e及び計量モータ21bに対する駆動制御を行うことができるとともに、さらに、成形サイクルにおける各動作工程の制御を行うことができる。このように、第一駆動モータ4としてサーボ回路4scに接続した第一サーボモータ4sを用いるとともに、第二駆動モータ13としてサーボ回路13scに接続したサーボモータ13sを用いれば、本発明に係る射出成形機Mの制御方法を容易かつ最適な状態で実施できる利点がある。
また、ポンプ本体3(ポンプ機体27)の吸入口は、オイルタンク34に接続するとともに、ポンプ本体3の吐出口は、バルブ回路26の一次側に接続し、さらに、バルブ回路26の二次側は、射出成形機Mにおける油圧アクチュエータを構成する射出シリンダ21a,計量モータ21b,型締シリンダ21c,突出しシリンダ21d及び射出装置移動シリンダ21eに接続する。したがって、バルブ回路26には、図2に示すように、少なくとも、射出シリンダ21a,計量モータ21b,型締シリンダ21c,突出しシリンダ21d及び射出装置移動シリンダ23eにそれぞれ接続する切換バルブ26a,26b,26c,26d及び26eを備える。なお、各切換バルブ26a…は、それぞれ一又は二以上のバルブ部品をはじめ、必要な付属油圧部品等により構成され、少なくとも、射出シリンダ21a,計量モータ21b,型締シリンダ21c,突出しシリンダ21d及び射出装置移動シリンダ21eに対する作動油の供給,停止,排出に係わる切換機能を有する。なお、35はポンプ本体3の吐出圧力を検出する圧力センサである。
他方、5は制御手段であり、成形機コントローラ51を備える。この成形機コントローラ51には、サーボ回路4saを介して第一サーボモータ4sを接続するとともに、サーボ回路13saを介して第二サーボモータ13sを接続する。また、第一サーボモータ4sに付設したロータリエンコーダ4seはサーボ回路4saに接続するとともに、第二サーボモータ13sに付設したロータリエンコーダ13seはサーボ回路13saに接続する。一方、成形機コントローラ51には、電磁バルブを用いた各切換バルブ26a,26b,26c,26d及び26e、更には、圧力センサ35を接続する。
次に、このような射出成形機Mを用いた本実施形態に係る制御方法について、図1〜図6を参照して説明する。
まず、成形機コントローラ51には、第一サーボモータ4sの回転数に対する第一制御条件を設定するとともに、第二サーボモータ13sの回転量に対する第二制御条件を設定し、さらに、この第一制御条件と第二制御条件の組合わせを設定する。第一制御条件,第二制御条件,第一制御条件と第二制御条件の組合せ(切換パターン)は、様々な態様が考えられるが、本実施形態では、第一サーボモータ4sの回転数を可変制御する第一制御条件と、第二サーボモータ13sの回転量を所定の回転量に固定する第二制御条件とを組合わせた標準モードを例示する。
図5は、標準モードにおける組合せ(切換パターン)例を示す。制御対象となる各動作工程には、計量工程S1,速度が遅い充填工程S2又は速度が速い充填工程S3,時間が長い保圧工程S4又は時間が短い保圧工程S5,突出し工程S6,型締工程S7及びノズルタッチ工程S8を適用する。また、第二サーボモータ13sの所定の回転量は、予め複数の異なる回転量に対応する複数の斜板角Rd…をそれぞれ設定し、この斜板角Rd…を選択して用いる。例示は、三つの角度(傾斜角)、即ち、角度が小さくなる斜板角Rd,角度が大きくなる斜板角Rh,斜板角RhとRdの中間の角度となる斜板角Rmを設定した。この場合、第二サーボモータ13sの回転量を大きくするに従って斜板11の斜板角は大きくなる。斜板角Rdは、標準となる吐出流量が得られるように設定するとともに、斜板角Rhは、斜板角Rdにより得られる吐出流量に対して2倍程度、即ち、比較的短時間(数秒程度)であれば、第一サーボモータ4sに対してはほとんど悪影響を与えないが、比較的長時間続く場合には、第一サーボモータ4sに対して悪影響を与える虞れのある吐出流量が得られるように設定する。なお、例示は便宜上、三つの斜板角Rd…(三つの回転量)を設定したが、一般的には、図6に示すように、任意数に基づく複数の斜板角Rd,R2…R4,Rm,R6…R8,Rhを設定できる。したがって、第二制御条件として任意の斜板角(回転量)、例えば、斜板角Rmを選択(設定)し、第一制御条件として第一サーボモータ4sの回転数を可変制御すれば、当該斜板角Rmに基づく変化特性に従ってポンプ本体3の吐出流量(吐出圧力)を可変制御することができる。
このような第一制御条件と第二制御条件の組合わせが可能になるため、成形機コントローラ51には、予めシーケンス制御に従って実行する成形サイクルにおける各動作工程に対する斜板角Rd…を標準モードとして設定する。設定した標準モードにおける組合せ(切換パターン)例が図5となる。標準モードの場合、同図に示すように、計量工程S1では斜板角Rm(中)を選択(設定)し、速度が遅い充填工程S2では斜板角Rd(小)を選択し、速度が速い充填工程S3では斜板角Rh(大)を選択し、時間が長い保圧工程S4では斜板角Rd(小)を選択し、時間が短い保圧工程S5では斜板角Rh(大)を選択し、突出し工程S6では斜板角Rd(小)を選択し、型締工程S7では斜板角Rh(大)を選択し、ノズルタッチ工程S8では斜板角Rd(小)を選択する。なお、このような設定は、固定してもよいし、或いはディスプレイに設定画面を表示し、所定の選択キーによりユーザ等が任意に変更できるようにしてもよく、所定のシーケンスプログラムにより設定できる。
したがって、実際の成形稼働時には、次のような制御が行われる。まず、計量工程S1が行われる。計量工程S1では、成形機コントローラ51から第二サーボモータ13sに対応する切換信号が付与される。第二サーボモータ13sはこの切換信号に基づく回転量だけ回転制御され、斜板11の角度が斜板角Rmに設定(固定)される。これにより、ポンプ本体3からの吐出流量は中程度となる。そして、この状態において、第一サーボモータ4sの回転数に対する可変制御により計量モータ21b、即ち、スクリュ23の回転速度が制御される。よって、比較的小型の第一サーボモータ4sを使用し、かつ樹脂に粘性の高い材料を使用した場合であっても、第一サーボモータ4sに過大な負荷が付加されることにより正常に回転できなくなる不具合は解消され、大流量が必要な計量工程であっても、必要な性能を確保しつつ安定な駆動制御を行うことができる。
次いで、充填工程S2又はS3が行われる。今、充填工程S3が設定されているものとすれば、充填工程S3では、成形機コントローラ51から第二サーボモータ13sに対応する切換信号が付与される。第二サーボモータ13sはこの切換信号に基づく回転量だけ回転制御され、斜板11の角度が斜板角Rhに設定(固定)される。これにより、ポンプ本体3からの吐出流量は大流量となる。そして、この状態において、第一サーボモータ4sの回転数の可変制御により射出シリンダ21a、即ち、スクリュ23の射出速度及び射出圧力が制御される。よって、充填工程S3では、大流量によりスクリュ23を高速かつ高トルクで前進させることができる。この場合、第一サーボモータ4sに対する負荷は大きくなるが、短時間の動作となるため、第一サーボモータ4sに対する悪影響は生じない。なお、充填工程S3の代わりに充填工程S2が設定されている場合には、斜板角Rdに設定される。以後、保圧工程S4では斜板角Rd(又は保圧工程S5では斜板角Rh)に設定されるなど、図5に示した切換パターンに従って同様の切換制御が行われる。
以上、標準モードにおける組合せ(切換パターン)例を図5に従って説明したが、その他、様々な組合せ(切換パターン)を個別モードとして設定できる。特に、第一サーボモータ4sの回転数を所定の回転数に固定する第一制御条件及び第二サーボモータ13sの回転量を可変制御する第二制御条件の組合わせに基づく個別モードを設定すれば、第一サーボモータ4sの回転数を安定した最小回転数に設定(固定)し、第二サーボモータ13sの回転量を可変制御することができる。いわば、標準モードにおける第一サーボモータ4sと第二サーボモータ13sの機能を入れ替えた制御となる。
この場合、第二サーボモータ13sの制御は、回転数ではなく、回転量に基づく斜板角の可変制御となるため、第二サーボモータ13sにおける回転数が小さくなる不安定領域は無関係となる。したがって、必要な微小流量を得ることができ、充填工程,保圧工程,突出し工程等において微小流量領域が必要になっても十分な油圧駆動制御を行うことができる。
よって、このような本実施形態に係る射出成形機Mの制御方法によれば、第二サーボモータ13sを利用した斜板角可変機構12における当該第二サーボモータ13sの回転量により、少なくとも吐出流量を可変可能な斜板型ピストンポンプ2sにおける斜板11の角度(斜板角)を可変するとともに、第一サーボモータ4sの回転数に対して設定した第一制御条件及び第二サーボモータ13sの回転量に対して設定した第二制御条件の組合わせに基づいて動作工程の制御を行うようにしたため、制御条件の組合わせにより制御能力に対する柔軟性向上や制御範囲の拡大を図ることができ、これにより、様々な成形態様に対しても適切な制御を行うことができる。しかも、動作工程に、計量工程S1,充填工程S2,S3及び保圧工程S4,S5を含む射出工程,突出し工程S6,型締工程S7,ノズルタッチ工程S8、の一又は二以上を含ませたため、射出成形機Mの一成形サイクルにおける各動作工程の制御に対して優劣の差を最小限に抑えて最適な制御を行うことができる。
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値.手法(手順)等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、変速機構14は必要に応じて用いることができ、駆動モータの特性によっては増速機構を用いてもよい。
本発明の最良の実施形態に係る射出成形機の油圧駆動部を含む構成図、 同射出成形機における油圧駆動部のブロック回路図、 同射出成形機における油圧駆動部に備える斜板型ピストンポンプの一部を示す内部構造図、 同斜板型ピストンポンプの全体外観図、 本発明の最良の実施形態に係る射出成形機の制御方法における動作工程と斜板角の関係を示す切換パターン図、 同制御方法における複数の異なる斜板角におけるポンプ用サーボモータの回転数に対するポンプの吐出流量の関係を示す変化特性図、
2:油圧ポンプ,2s:斜板型ピストンポンプ,3:ポンプ本体,4:第一駆動モータ,4s:第一サーボモータ,4sc:サーボ回路,11:斜板,12:斜板角可変機構,13:第二駆動モータ,13s:第二サーボモータ,13sc:サーボ回路,M:射出成形機,Rd…:斜板角(回転量),S1:計量工程,S2:充填工程,S3:充填工程,S4:保圧工程,S5:保圧工程,S6:型締工程,S7:突出し工程,S8:ノズルタッチ工程

Claims (2)

  1. ポンプ本体を駆動モータ(第一駆動モータ)により回転駆動するとともに、前記第一駆動モータの回転数を可変して少なくとも吐出流量を可変可能な油圧ポンプにおける前記第一駆動モータの回転数を可変制御して成形サイクルにおける各動作工程の制御を行う射出成形機の制御方法において、サーボ回路に接続した第二駆動モータとなる第二サーボモータを利用した斜板角可変機構における当該第二サーボモータの回転量により、少なくとも吐出流量を可変可能な斜板型ピストンポンプにおける斜板の角度(斜板角)を可変するとともに、サーボ回路に接続した第一駆動モータとなる第一サーボモータの回転数を可変制御する予め設定した第一制御条件及び前記第二サーボモータの回転量を複数の斜板角が得られるように所定の回転量に固定する予め設定した第二制御条件を組合わせた標準モードに基づいて、又は前記第一サーボモータの回転数を所定の回転数に固定する予め設定した第一制御条件及び前記第二サーボモータの回転量を可変制御する予め設定した第二制御条件を組合わせた個別モードに基づいて、前記動作工程となる、計量工程,充填工程及び保圧工程を含む射出工程,突出し工程,型締工程,ノズルタッチ工程、の一又は二以上の制御を行うことを特徴とする射出成形機の制御方法。
  2. 前記個別モードにおける第一制御条件は、前記第一サーボモータの回転数を最小回転数に固定することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の制御方法。
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