JP5014625B2 - 帯電防止コーティング組成物及びそれを硬化させた被膜 - Google Patents

帯電防止コーティング組成物及びそれを硬化させた被膜 Download PDF

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Description

本発明は、プラスチック基材にコーティングを施して帯電防止性を付与する組成物、及びそれを硬化させた被膜に関する。
プラスチック基材は、家電製品の部品、自動車部品、光学部材、有機板ガラス等の原材として汎用されている。プラスチック基材は、傷つき易く、帯電し易い。そのため、特許文献1、2に開示されているように、帯電防止剤や導電性フィラーの金属微粒子が含有されたコーティング層で、被覆される。
しかし、コーティング層が、帯電防止剤としてカチオン系、アニオン系、ノニオン系の界面活性剤、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などを多量に含有していると、それのブリードを惹き起こしかえって高湿下での帯電防止性が低下したり、耐擦傷性が低下したりする。また、コーティング層が導電性フィラーを含有していると帯電防止性に優れる反面、透明性が損なわれてしまう。
特開平10−244618号公報 特開2000−281736号公報
本発明は、ハードコートベースとの相溶性が高い帯電防止性コーティング組成物、及び、帯電防止性、透明性、耐擦傷性に優れ、硬くて、プラスチック基材との密着性に優れた帯電防止被膜を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載された帯電防止コーティング組成物は、エチレン基複数含有モノマーとエチレン基複数含有プレポリマーとの少なくとも何れかを含有するハードコートベースの100重量部
イオン対及びベタインの何れかの極性構造をマクロモノマーに由来して有する共重合繰返し単位とフルオロカーボン基をモノマー又はマクロモノマーに由来して有する共重合繰返し単位とを含有する高分子化合物の0.5〜50重量部
含まれていることを特徴とする。
請求項2に記載の帯電防止コーティング組成物は、請求項1に記載されたもので、前記高分子化合物中、前記極性構造が、ハロゲン化4級アンモニウム基、リン酸エステルアンモニウム基、硫酸エステルアンモニウム基、ハロゲン化4級ホスホニウム基、塩基性スルホン酸基及び塩基性カルボン酸基から選ばれる少なくともいずれかの前記イオン対;スルホン酸イオン基又はカルボン酸イオン基と4級アンモニウム基又は4級ホスホニウム基とを有する前記ベタインであることを特徴とする。
請求項3に記載の帯電防止コーティング組成物は、請求項2に記載されたもので、前記高分子化合物が、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、及びハロゲン化アラルキル基のいずれかが含有された繰返し単位を有する不飽和マクロモノマーと、前記フルオロカーボン基を含有する不飽和モノマー又は前記フルオロカーボン基を含有する不飽和マクロモノマーとの共重合物に、3級アミン又は3級ホスフィンを反応させて前記ハロゲン化4級アンモニウム基又は前記ハロゲン化4級ホスホニウム基の前記イオン対を形成したものであることを特徴とする。
請求項4に記載の帯電防止コーティング組成物は、請求項3に記載されたもので、前記ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、及びハロゲン化アラルキル基のいずれかが含有された繰返し単位を有する不飽和マクロモノマーが、クロロメチルスチレンから誘導されたマクロモノマーであることを特徴とする。
請求項5に記載の帯電防止コーティング組成物は、請求項3に記載されたもので、前記共重合物が、(メタ)アクリル酸モノエステルモノマー、不飽和カルボン酸モノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、スチレンモノマー、ビニルエーテルモノマー、及びビニルエステルモノマーから選ばれる少なくとも1種類の別な不飽和モノマーと共重合していることを特徴とする。
請求項6に記載の帯電防止コーティング組成物は、請求項1に記載されたもので、光重合開始剤、又は熱重合開始剤が含まれていることを特徴とする。
請求項7に記載の帯電防止被膜は、請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止コーティング組成物を硬化させたものであることを特徴とする。
請求項8に記載の帯電防止被膜の形成方法は、請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止コーティング組成物をプラスチック基材に塗工し、そこに活性エネルギー線を照射することにより、前記エチレン基複数含有モノマー及び/又は前記エチレン基複数含有プレポリマーを架橋させて硬化させることを特徴とする。
本発明の帯電防止性コーティング組成物は、帯電防止性を発現する高分子化合物と、ハードコートベースであるエチレン基複数含有モノマーやエチレン基複数含有プレポリマーとの相溶性が良好なものである。また、この高分子化合物は表面改質性が高いものであるため、それを少量含ませるだけで優れた帯電防止性を発現させるコーティング組成物を、調製することができる。この組成物は、プラスチック基材に塗工し易い。この組成物を硬化させると、表面抵抗値が低く、帯電防止性、透明性、耐擦傷性、耐久性に優れ、鉛筆硬度が高い被膜を、簡便に得ることができる。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
帯電防止コーティング組成物の好ましい一例は以下のようにして調製される。
末端に2−メルカプトエタノールを導入したハロゲン化アルキルスチレンのブロック重合体を得た後、その水酸基に2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加させることにより末端に不飽和基を導入したハロゲン化アルキル基含有不飽和マクロモノマーを合成する。
この末端に不飽和基を導入したハロゲン化アルキル基含有不飽和マクロモノマーは、2−メルカプトエタノールに代えて、例えば2−メルカプトプロピオン酸のような分子内にカルボン酸を持つ連鎖移動剤を使用して、ハロゲン化アルキルスチレンのブロック重合体を得た後、そのカルボン酸基にグリシジルメタクリレートのような、分子内にグリシジル基を持つビニル化合物を付加することによっても得ることができる。
ハロゲン化アルキル基含有不飽和マクロモノマーと、フルオロカーボン基含有不飽和モノマーと、(メタ)アクリル酸モノエステルモノマーとを、5〜90:5〜90:0〜80の重量比で、共重合させる。その共重合物中のハロゲン化アルキル基に、3級アミン又は3級ホスフィンを反応させ、ハロゲン化4級アンモニウム基又はハロゲン化4級ホスホニウム基の繰返し単位を形成させた高分子化合物を、合成する。
上記のハロゲン化4級アンモニウム基、又はハロゲン化4級ホスホニウム基の繰り返し単位を形成させた高分子化合物を合成する際に用いるハロゲン化アルキル基含有不飽和マクロモノマーの合成において、ハロゲン化アルキルスチレンに代えて、例えばジメチルアミノエチルメタクリレートのような、分子内に3級アミンを持つビニル化合物を用い、後に用いる3級アミンや3級ホスフィンの代わりに、ベンジルクロライドのような、分子内に炭素とハロゲンとの結合を持つハロゲン化アルキルやハロゲン化アリール、又はハロゲン化アラルキルを用いることによっても得ることができる。また、ベンジルクロライドの代わりに、トリメチルホスフェートやジメチル硫酸、p−トルエンスルホン酸メチルのような、リン酸エステルや硫酸エステルを用いることにより、ハロゲンを含まない、イオン対を極性構造の繰り返し単位として持ち、フルオロカーボン基を有する高分子化合物を得ることができる。
この高分子化合物と、ハードコートベースとしてエチレン基複数含有モノマー及び/又はエチレン基複数含有プレポリマーと、重合開始剤とを混練すると、帯電防止コーティング組成物が得られる。
帯電防止コーティング組成物中、エチレン基複数含有モノマー及び/又はエチレン基複数含有プレポリマーを含有するハードコートベース100重量部に対して、高分子化合物が0.5〜10重量部、重合開始剤が1〜10重量部含まれていると、極めて優れた帯電防止性と硬度とを発現するため一層好ましい。
高分子化合物中のフルオロカーボン基は、空気中の酸素と馴染み易い。そのため、この組成物を硬化させた被膜は、その表面にフルオロカーボン基を含有するポリマーが配向し易くなる。その結果、たとえ組成物中の高分子化合物が少量であっても、被膜の表面抵抗値を低く維持することができる。このことは、フルオロカーボン基含有不飽和モノマーの代わりに、それをブロック重合させ末端に不飽和基を導入したフルオロカーボン基含有不飽和マクロモノマーを用いると、一層顕著となる。
帯電防止コーティング組成物の原料物質は、具体的には以下のとおりである。
ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、又はハロゲン化アラルキル含有不飽和化合物は、例えばクロロメチルスチレンが挙げられる。また3級アミンや3級ホスフィンは、特に限定されないが、中でもメチル基、エチル基を持つアミンが好ましい。
フルオロカーボン基含有不飽和モノマーは、フルオロカーボン基含有(メタ)アクリレートでもよく、例えば2,2,2−トリフルオロ(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5Hオクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソプロピルエチル(メタ)アクリレート、p−パーフルオロオクチルオキシベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でも、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルアクリレートなど、末端にパーフルオロアルキル基を有するものが好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。これらのフルオロカーボン基含有不飽和モノマーは1種を単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
前記共重合物を構成する別な不飽和モノマーのひとつである(メタ)アクリル酸モノエステルモノマーは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリレート、単官能ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、単官能ポリエステル(メタ)アクリレート、単官能ポリカプロラクトン(メタ)アクリレートが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、(メタ)アクリル酸モノエステルモノマー以外の共重合可能な不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸のような不飽和カルボン酸モノマー;t−ブチル−n−ブトキシメチルアクリルアミドのような(メタ)アクリル酸アミドモノマー;スチレン、α−メチルスチレンのようなスチレンモノマー;ラウリルビニルエーテルのようなビニルエーテルモノマー;ビニルブチレートのようなビニルエステルモノマーを挙げることができるが、特にこれに限定されるものではない。これらの不飽和モノマーは1種を単独で使用でき、また2種以上を併用できる。
高分子化合物は、前記と同様な重量比で、塩化トリアルキルアンモニオメチルスチレンや塩化トリアルキルホスホニオメチルスチレンで例示されるイオン対含有不飽和モノマー又は、(3−プロピルスルホニックアシッド−1)−2−ビニルピリジウムベタインや、N,N−ジメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタインで例示されるベタイン構造含有不飽和モノマーから誘導された極性構造の繰返し単位を有する不飽和マクロモノマーと、フルオロカーボン基含有不飽和モノマー又はフルオロカーボン基含有不飽和マクロモノマーと、(メタ)アクリル酸モノエステルとを、共重合させたものであってもよい。マクロモノマーは、前記と同様にして調製される。
エチレン基複数含有モノマーは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンモノメタクリレートモノアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エチレン基複数含有プレポリマーは、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物トリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、多価アルコールと多塩基酸を縮合して得られる化合物の(メタ)アクリレート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート及びこれらのビュレット体、ヌレート化物等のポリイソシアネートと、グリセリンモノメタクリレートモノアクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の分子内に水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応物等が挙げられる。
重合開始剤は、光重合開始剤、例えば1−ヒロドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド;熱重合開始剤、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
帯電防止コーティング組成物には、被膜に求められる性能に応じて、シリコン系樹脂、シリカ粒子、金属粒子、金属酸化物粒子、有機塩、無機塩のような添加剤、希釈剤を含んでいてもよい。
希釈剤は、アルキレングリコールのモノアルキルエーテル類例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル;アルキルアルコール類例えばイソプロピルアルコール;アルキレングリコールモノアルキルアルコールのアルキルカルボン酸エステル類例えばブチルグリコールアセテート;ケトン類例えばメチルエチルケトン;アルキルアルコールのアルキルカルボン酸エステル類例えば酢酸エチル;脂肪族炭化水素類例えばヘキサン;脂環式炭化水素類例えばシクロヘキサン;芳香族炭化水素類例えばトルエン;ハロゲン系溶剤例えば塩化メチルが挙げられる。
帯電防止コーティング組成物を、プラスチック基材例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる成形基材に塗工する。それに活性エネルギー線例えば紫外線、放射線、赤外線、X線、電子線、可視光又は熱を照射すると、硬化して帯電防止被膜が形成される。
以下、本発明の帯電防止コーティング組成物と、それを硬化させた帯電防止被膜の試作例を示す。
先ず、原料物質となるマクロモノマーを合成した。
(合成例1)クロロメチルスチレンのマクロモノマーの合成
四ッ口フラスコにクロロメチルスチレン(CMS)の100重量部、2−メルカプトエタノール5重量部、メチルエチルケトン100重量部、及びジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5重量部を加え、窒素雰囲気下で、75〜80℃で13時間反応させた。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート9.93重量部、メトキノン0.04重量部、ジブチル錫ジラウレート0.01重量部を添加して、75〜80℃で6時間反応させた。赤外吸収スペクトルにて2250cm−1のイソシアネート基のピークが消失していることを確認し、クロロメチルスチレンのマクロモノマー(CMSマクロモノマー)を得た。
(合成例2)トリフルオロエチルメタクリレートのマクロモノマーの合成
四ッ口フラスコに2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートであるライトエステルM−3F(共栄社化学(株)社製の商品名;M−3Fモノマー)100重量部、2−メルカプトエタノール5重量部、メチルエチルケトン100重量部、及びジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5重量部を加え、窒素雰囲気下で、75〜80℃で7時間反応させた。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート9.93重量部、メトキノン0.04重量部、ジブチル錫ジラウレート0.01重量部を添加して、75〜80℃で6時間反応させた。赤外吸収スペクトルにて2250cm−1のイソシアネート基のピークが消失していることを確認し、トリフルオロエチルメタクリレートのマクロモノマー(M−3Fマクロモノマー)を得た。
次に、高分子化合物を合成した。
(合成例3)高分子化合物Aの合成
四ッ口フラスコに、合成例1で得られたクロロメチルスチレンのマクロモノマーを樹脂分に換算して100重量部とそれを含むメチルエチルケトン84重量部との混合物、ライトエステルM−3Fの20重量部、メチル メタクリレート80重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)10重量部を添加し、窒素雰囲気下、75〜80℃で9時間反応させた。反応混合物に、トリエチルアミン55.3重量部、及びエタノール55.6重量部を添加して、60℃で6時間反応させた。滴定法によりアミン価を測定し、3級アミンが全て4級化されているのを確認し、高分子化合物A(CMSmacro/MMA/M−3F;50/40/10)を得た。
(合成例4)高分子化合物Bの合成
合成例3で用いたライトエステルM−3Fの代わりに、合成例2で得られたトリフルオロエチルメタクリレートのマクロモノマーの樹脂分に換算して20重量部とそれを含むメチルエチルケトン17重量部との混合物を用いたこと以外は、合成例3と同様にして、高分子化合物B(CMSmacro/MMA/M−3Fmacro;50/40/10)を得た。
(合成例5)高分子化合物Cの合成
合成例3で用いたメチル メタクリレート80重量部を20重量部にしたことと、ライトエステルM−3Fの20重量部に代えて合成例2で得られたトリフルオロエチルメタクリレートのマクロモノマーの樹脂分に換算して80重量部とそれを含むメチルエチルケトン67重量部との混合物を用いたこと以外は、合成例3と同様にして高分子化合物C(CMSmacro/MMA/M−3Fmacro;50/10/40)を得た。
(合成例6)高分子化合物aの合成
四ッ口フラスコに、合成例1で得られたクロロメチルスチレンのマクロモノマーを樹脂分に換算して100重量部とそれを含むメチルエチルケトン84重量部との混合物、メチル メタクリレート100重量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)10重量部を添加し、窒素雰囲気下、75〜80℃で9時間反応させた。反応混合物に、トリエチルアミン55.3重量部、及びエタノール55.6重量部を添加して、60℃で6時間反応させた。滴定法によりアミン価を測定し、3級アミンが全て4級化されているのを確認し、高分子化合物a(CMSmacro/MMA/;50/50)を得た。
Figure 0005014625
以下に、本発明を適用する帯電防止コーティング組成物及びそれを硬化させた帯電防止被膜の試作例を実施例1〜9に示す。また本発明を適用外のコーティング組成物及びそれを硬化させた被膜の試作例を比較例1〜2に示す。
(実施例1〜9、及び比較例1〜2)
合成例3〜5で得た高分子化合物、ハードコートベースとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)社製の商品名:ライトアクリレートDPE−6A)とペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学(株)社製の商品名:ウレタンアクリレートUA−306I)、溶媒としてメチルエチルケトンとエタノール、及び光重合開始剤として1−ヒロドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカル社製の商品名:イルガキュア184)を、表2に記載の通りに配合して均一に混練し、組成物を調製した。得られた組成物を、バーコーター(No.14)にて透明なポリメチルメタクリレート基材に厚さ約10μmで塗工し塗膜とし、90℃で5分間乾燥した。それを5m/分のスピードのコンベアに載せ、そこから上へ10cm離した80W/cm高圧水銀灯で紫外線を照射して塗膜を硬化させ、膜厚3μmの被膜を有する試験片を得た。
得られた試験片の物性について、以下のようにして、外観観察、ヘイズ測定試験、表面抵抗値測定試験、鉛筆硬度測定試験、耐擦傷性評価試験、密着性評価試験を行ない、評価した。
(外観観察)
試験片の被膜を目視で観察した。透明で平滑性があるものを○、平滑性のないものを×とする2段階で評価した。
(ヘイズ測定試験)
試験片の被膜のヘイズについて、ヘイズメーターUltra Scan XE(HUNTER ASSOCIATES LABORATORY社製:商品名)を用い、測定した。ヘイズが0.5未満のものを○、0.5以上のものを×とする2段階で評価した。
(表面抵抗値測定試験)
20℃で相対湿度60%下での試験片の被膜の表面抵抗値について、抵抗率計DSM−8103及びSME−8311(いずれも東亜ディーケーケー社製:商品名)を用い、測定した。
(鉛筆硬度測定試験)
JIS K 5400に従い、鉛筆引っ掻き試験機を用いて、試験片の被膜の鉛筆硬度を測定した。各種硬度の鉛筆を45°の角度に保ちつつ上から1kgの荷重をかけ、試験片の被膜を1cm引っ掻き、傷の有無を目視にて観察した。5回繰返し、5回とも傷が付かなかった鉛筆硬度のうち最も高い硬度を、その被膜の硬度とした。
(耐擦傷性評価試験)
200g/cmの荷重をかけた0000番スチールウールで、試験片の被膜を10往復擦り、傷の有無を目視にて観察した。ほとんど傷が無いものを◎、若干傷が付いたものを○、傷が無数に付いたものを△、白化するほど傷がついたものを×とする4段階で評価した。
(密着性評価試験)
試験片の被膜表面に、カッターナイフにより1mm間隔の縦横各11本の切り傷をつけ、100個の碁盤目状のマスを形成させた。この上からセロハンテープを貼り付け、一気に剥がしたときに剥離せず残ったマス目の個数を数えた。
これらの結果を、まとめて表2に示す。
Figure 0005014625
表2から明らかな通り、実施例1〜9の被膜は、表面抵抗値が10〜1010Ω/cm程度と低く、帯電防止性に優れ、また良好な透明性、耐擦傷性、密着性を示し、高い硬度を有していた。特に、実施例3〜5及び6〜9のように高分子化合物の配合量を増加させるにつれ、表面抵抗値が低下し、一層優れた帯電防止性を示した。それに対し、比較例1〜2の被膜は、帯電防止性が劣っていた。
本発明の帯電防止コーティング組成物は、帯電や埃吸着を忌避すべき液晶画面、家電製品、それらの製造ラインに、帯電防止被膜を形成させるのに用いられる。

Claims (8)

  1. エチレン基複数含有モノマーとエチレン基複数含有プレポリマーとの少なくとも何れかを含有するハードコートベースの100重量部
    イオン対及びベタインの何れかの極性構造をマクロモノマーに由来して有する共重合繰返し単位とフルオロカーボン基をモノマー又はマクロモノマーに由来して有する共重合繰返し単位とを含有する高分子化合物の0.5〜50重量部
    含まれていることを特徴とする帯電防止コーティング組成物。
  2. 前記高分子化合物中、前記極性構造が、ハロゲン化4級アンモニウム基、リン酸エステルアンモニウム基、硫酸エステルアンモニウム基、ハロゲン化4級ホスホニウム基、塩基性スルホン酸基及び塩基性カルボン酸基から選ばれる少なくともいずれかの前記イオン対;スルホン酸イオン基又はカルボン酸イオン基と4級アンモニウム基又は4級ホスホニウム基とを有する前記ベタインであることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止コーティング組成物。
  3. 前記高分子化合物が、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、及びハロゲン化アラルキル基のいずれかが含有された繰返し単位を有する不飽和マクロモノマーと、前記フルオロカーボン基を含有する不飽和モノマー又は前記フルオロカーボン基を含有する不飽和マクロモノマーとの共重合物に、3級アミン又は3級ホスフィンを反応させて前記ハロゲン化4級アンモニウム基又は前記ハロゲン化4級ホスホニウム基の前記イオン対を形成したものであることを特徴とする請求項2に記載の帯電防止コーティング組成物。
  4. 前記ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、及びハロゲン化アラルキル基のいずれかが含有された繰返し単位を有する不飽和マクロモノマーが、クロロメチルスチレンから誘導されたマクロモノマーであることを特徴とする請求項3に記載の帯電防止コーティング組成物。
  5. 前記共重合物が、(メタ)アクリル酸モノエステルモノマー、不飽和カルボン酸モノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、スチレンモノマー、ビニルエーテルモノマー、及びビニルエステルモノマーから選ばれる少なくとも1種類の別な不飽和モノマーと共重合していることを特徴とする請求項3に記載の帯電防止コーティング組成物。
  6. 光重合開始剤、又は熱重合開始剤が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止コーティング組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止コーティング組成物を硬化させたものであることを特徴とする帯電防止被膜。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止コーティング組成物をプラスチック基材に塗工し、そこに活性エネルギー線を照射することにより、前記エチレン基複数含有モノマー及び/又は前記エチレン基複数含有プレポリマーを架橋させて硬化させることを特徴とする帯電防止被膜の形成方法。
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