JP5012866B2 - 生体情報処理装置、および、生体情報処理方法 - Google Patents
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Description
ところで、現代社会においては、交通機関などの発達により、消費カロリーは減少する傾向にある。
一方、食物によるカロリー摂取量は減少どころか、増加する傾向にあり、摂取カロリーと消費カロリーとのバランスが崩れてきている。
このため、積極的に運動を行って、カロリー消費を増やすことが重要であり、運動をする人も増加してきている。
このような観点から、従来においては、運動におけるカロリー消費量を算出する方法として、例えば、次のようなものが提案されている。
特許文献1記載の技術は、心拍数と消費カロリーとの代表的な相関直線を一つだけ決定し、これに基づいて心拍数の測定と同時に消費カロリーを計算するものである。
また、特許文献2に記載の技術は、心拍数と消費カロリーについて複数の相関直線を記憶し、入力された個人データからいずれかの相関直線を選択し、心拍数の測定と同時に消費カロリーを計算するものである。
さらに、特許文献3に記載の技術は、基礎代謝状態、即ち、安静状態か否かを判別し、消費カロリーを計算するものである。
また、特許文献2記載の技術では、複数の相関直線を用いているため、特許文献1記載の技術と比較すれば、多くの被験者に対して適用することが可能であるが、より多くの被験者に適用可能とするために多数の相関直線を記憶するのは、現実的には困難であり、実用的には限度があるという問題点があった。
さらに、特許文献3記載の技術では、基礎代謝状態であるか否かの判定手段を設ける必要があり、装置構成が複雑になってしまうという問題点があった。
そこで、本発明の目的は、消費カロリーの算出に際し、多数の被験者にも適用可能であるとともに、装置構成を簡略化することができる生体情報処理装置、および、生体情報処理方法を提供することにある。
上記構成によれば、脈拍数検出部は、生体の脈拍数を検出する。
相対脈拍数算出部は、前記脈拍数検出部が検出した脈拍数に基づいて、前記生体固有の安静時脈拍数に応じた相対値である相対脈拍数を算出する。
相対酸素摂取量算出部は、相対脈拍数に基づいて相対酸素摂取量を算出する。
酸素摂取量推定部は、相対酸素摂取量を基に酸素摂取量を算出する。
これらの結果、消費カロリー算出部は、前記酸素摂取量に基づいて消費カロリー量を算出する。
また、前記相対酸素摂取量算出部は、前記相対脈拍数をRHRmaxとし、相対酸素摂取量をRVO2maxとし、予め実験により求めた前記相対脈拍数RHRmaxおよび前記相対酸素摂取量RVO2maxの関係を表す近似直線の傾きをaとし、前記近似直線の前記相対脈拍数RHRmaxに対応する軸の切片をbとした場合に、相対酸素摂取量をRVO2maxを(1)式あるいは(2)式により算出するようにしてもよい。
(A)相対脈拍数RHRmax≧20%の場合
RVO2max=(RHRmax−b)/a …(1)
(B)相対脈拍数RHR<20%の場合
RVO2max=0 …(2)
VO2=RVO2max×(VO2max−VO2rest)+VO2rest
さらにまた、当該装置に入力された値、若しくは、年齢、性別あるいは運動能力のうち少なくとも年齢と前記最大酸素摂取量VO2maxとの対応関係を示す予め記憶したテーブルを参照して前記最大酸素摂取量VO2maxが設定されるようにしてもよい。
また、前記消費カロリー量算出部が算出した消費カロリーを消費カロリーデータとして記憶する消費カロリーデータ記憶部を備えるようにしてもよい。
さらに、外部機器と通信ネットワークを介して接続され、前記カロリーデータを前記外部機器に対して送信する通信部を備えるようにしてもよい。
また、前記消費カロリー算出部は、所定の脈拍領域において得られる前記酸素摂取量のデータを前記カロリー計算から除外するようにしてもよい。
また、前記消費カロリー算出部は、前記生体が所定の状態にある時は消費カロリー量をゼロとするようにしてもよい。
また、前記相対脈拍数が所定値以下である場合には(例えば、相対脈拍数RHRmax<20%)、心理的な影響や食事、体調等によって簡単に変動してしまう領域であるため、消費カロリーの計算区間から除外してもよい。
また、前記相対脈拍数算出部は、前記脈拍数をHRとし、前記安静時脈拍数をHRrestとし、前記生体の年齢の関数として定義した最大脈拍数をHRmaxとした場合に、次式により前記相対脈拍数RHRを算出するようにしてもよい。
RHR=(HR−HRrest)/(HRmax−HRrest)×100[%]
さらに、前記最大脈拍数HRmaxは、前記生体の年齢をAGEとした場合に、次式により算出するようにしてもよい。
HRmax=220−AGE
図1は、実施形態の生体計測機器の構成を示す説明図である。
図2は、生体情報処理装置の脈拍センサ30近傍の断面図である。
本実施形態においては、生体情報として脈拍を用い、生体情報値として脈拍数を検出し、さらに検出した脈拍数から消費カロリー量を算出するものとする。
生体情報処理装置1は、大別すると、腕時計型の装置本体10と、この装置本体10に接続されるケーブル20と、このケーブル20の先端側に設けられ、センサ固定用バンド40により小指に密着するように固定された脈拍センサ30と(図2参照)、を備えて構成されている。
装置本体10には、腕時計における12時方向から腕に巻きついてその6時方向で固定されるリストバンド12が設けられている。このリストバンド12によって、装置本体10は、腕に着脱自在に装着される。
図3において、装置本体10は、樹脂製の時計ケース11(本体ケース)を備えている。時計ケース11の表面側には、現在時刻や日付に加えて、走行時や歩行時のピッチ、及び脈拍数などの脈波情報などを表示するELバックライト付きの液晶表示装置13(表示装置)が設けられている。
液晶表示装置13には、表示面の左上側に位置する第1のセグメント表示領域131、右上側に位置する第2のセグメント表示領域132、右下側に位置する第3のセグメント表示領域133、及び左下側に位置するドット表示領域134が構成されており、ドット表示領域134では、各種の情報をグラフィック表示可能である。
時計ケース11の内部には、ピッチを求めるための体動センサ302(図6参照)が内蔵されており、この体動センサ302としては、加速度センサなどを用いることができる。
この制御部5は、体動センサ302による検出結果(体動信号)および脈拍センサ30による検出結果(脈波信号)に基づいて脈拍数、ひいては、消費カロリーを算出し、被験者であるユーザの消費カロリーを液晶表示装置13で表示する。
この場合において、制御部5には、計時回路も構成されているため、通常時刻なども液晶表示装置13に表示可能となっている。
また、時計ケース11の外周部(側面部)には、図3に示すように、時刻合わせや表示モードの切り換えなどの外部操作を行うためのボタンスイッチ111〜115が設けられている。また、時計ケースの正面の表面には、運動中の操作を想定した大きめのボタンスイッチ116、117が構成されている。
生体情報処理装置1では、その機能を増やすに伴って、装置本体10を大型化する必要がある。しかしながら、装置本体10には、腕に装着されるという制約があるため、装置本体10を腕時計における6時及び12時の方向に向けては拡大できない。
そこで、本実施形態では、図3に示すように、装置本体10には、3時及び9時の方向における長さ寸法が6時及び12時の方向における長さ寸法よりも長い横長の時計ケース11を用いてある。
この場合において、リストバンド12は、3時の方向側に偏った位置で接続しているため、リストバンド12からみると、腕時計における9時の方向には、3時の方向とは異なり張出部分101が設けられている。従って、横長の時計ケース11を用いたわりには、手首を自由に曲げることができ、また、転んでも手の甲を時計ケース11にぶつけたりすることもない。
これとともに、図4に示すように、裏面部119に電池蓋118を設けることによって、ユーザは、電池59を簡単に交換できる。
図4において、時計ケース11の12時の方向には、リストバンド12の端部に取り付けられた止め軸121を保持するための連結部105が形成されている。時計ケース11の6時の方向には、腕に巻かれたリストバンド12が長さ方向の途中位置で折り返されるとともに、この途中位置を保持するための留め具122が取り付けられる受け部106が形成されている。
この状態で、装置本体10の裏面部119は、橈骨Rと尺骨Uを跨ぐ感じになる。これとともに、回転止め部108と裏面部119との屈曲部分109から回転止め部108にかけては、橈骨Rに当接する感じになる。このように、回転止め部108と裏面部119とは、約115°という解剖学的に理想的な角度をなしているため、装置本体10を矢印Aまたは矢印Bの方向に回そうとしても、装置本体10は、腕の周りで不必要にずれることがない。
また、裏面部119及び回転止め部108によって腕の回りの片側2ヵ所で装置本体10の回転を規制するだけである。このため、腕が細くても、裏面部119及び回転止め部108は確実に腕に接するので、回転止め効果が確実に得られる。さらに、腕が太くても窮屈な感じがない。
図5において、脈拍センサ30は、そのケース体としてのセンサ枠36の裏側に裏蓋402が被されることによって、内側に部品収納空間400が構成されている。部品収納空間400の内部には、回路基板35が配置されている。回路基板35には、LED31、フォトトランジスタ32、その他の電子部品が実装されている。脈拍センサ30には、ブッシュ493によってケーブル20の端部が固定され、ケーブル20の各配線は、各回路基板35のパターン上にはんだ付けされている。ここで、脈拍センサ30は、ケーブル20が指の根元側から装置本体10の側に引き出されるようにして指に取り付けられる。従って、LED31及びフォトトランジスタ32は、指の長さ方向に沿って配列されることになり、そのうち、LED31は指の先端側に位置し、フォトトランジスタ32は指の根元の方に位置する。このように配置すると、外光がフォトトランジスタ32に届きにくいという効果がある。
このような構成を採っている理由は、外光が指の露出部分にあたっても、外光に含まれる光のうち波長領域が700nm以下の光は、指を導光体としてフォトトランジスタ32(受光部)にまで到達しないからである。これは、外光に含まれる波長領域が700nm以下の光は、指を透過しにくい傾向にあるためである。従って、外光がセンサ固定用バンド40で覆われていない指の部分に照射されても、指を通ってフォトトランジスタ32まで届かず、測定結果に影響を与えることがないのである。
また、約700nm以下の波長領域の光を利用して、脈波情報を得ているので、血量変化に基づく脈波信号のS/N比が高い。この理由としては、血液中のヘモグロビンは、波長が300nmから700nmまでの光に対する吸光係数が従来の検出光である波長が880nmの光に対する吸光係数に比して数倍〜約100倍以上大きいからと考えられる。従って、血量変化に感度よく変化するので、血量変化に基づく脈波の検出率(S/N比)が高くなるのであると考えられる。
制御部5は、大別すると、脈拍センサ30からの入力結果に基づいて脈拍数などを求める脈波データ処理部500と、体動センサ302からの入力結果に基づいてピッチを求めるピッチデータ処理部501と、動作クロック信号を生成するクロック生成部502と、制御部全体を制御するコントロール部503と、が構成されている。
脈波データ処理部500は、大別すると、脈波信号増幅回路303と、脈波波形整形回路306と、を独自に備え、ピッチデータ処理部501と共有してA/D変換回路305を備えている。
脈波信号増幅回路303は、脈拍センサ30の出力である脈波信号を増幅して脈波増幅信号をA/D変換回路305および脈波波形整形回路306に出力する。
脈波波形整形回路306は、脈波増幅信号の波形整形を行ってコントロール部503に出力する。
ピッチデータ処理部501は、大別すると、体動信号増幅回路304と、体動波形整形回路307と、を独自に備え、上述したように脈波データ処理部500と共有してA/D変換回路305を備えている。
体動信号増幅回路304は、体動センサ302の出力である体動信号を増幅して体動増幅信号をA/D変換回路305および体動波形整形回路307に出力する。
体動波形整形回路307は、体動増幅信号の波形整形を行ってコントロール部503に出力する。
A/D変換回路305は、体動増幅信号のA/D変換を行って体動データとしてコントロール部503に出力する。
発振回路312は、水晶発振器などを備え、コントロール部503にクロック信号を基準動作クロックとして供給するとともに、クロック信号から計時用クロック信号を生成させるべく、分周回路313に供給する。
分周回路313は、供給されたクロック信号を分周して、各種の計時用クロック信号を生成してコントロール部503に供給する。
コントロール部503は、大別すると、MPU308と、RAM309と、ROM310と、通信部311と、を備えている。
MPU308は、ROM310内に格納された制御プログラムに基づいて制御部5全体、ひいては、生体情報処理装置1全体を制御する。
RAM309は、脈波データ、体動データを含む各種データを一時的に格納し、作業領域として用いられる。
ROM310は、MPU308、ひいては、生体情報処理装置1全体を制御するための制御プログラムを予め格納している。
通信部311は、MPU308の制御の下、通信用コネクタを介して接続された外部機器と、データの送受信を行う。すなわち、外部機器に測定データを出力したり、外部機器から当該生体情報処理装置1の設定データの入力をしたりすることが可能となっている。
まず、本実施形態の適用にあたり、前提条件として以下の要件を満たしているものとする。
・本実施形態では、消費カロリー量を酸素摂取量から算出しているため、脈拍数が運動強度に比例するものとして取り扱える範囲内にあること。
脈拍数が低い場合、あるいは、高い場合には比例しない場合があるのは、運動量が少なく脈拍数が低い場合には、脈拍数には心理的な影響が大きく現れ、酸素摂取能力の限界を超えて脈拍数が高くなる場合があるからである。
・年齢、性別、運動能力などによる脈拍数の個人差が存在している。
また、以下の説明においては、安静時脈拍数とは、測定開始時の安静座位、かつ、脈拍数安定状態で測定した最低脈拍数のこととしている。
図7は、実施形態の相対脈拍数と相対酸素摂取量の関係説明図である。
本実施形態においては、相対脈拍数RHRmaxは、被験者の脈拍数をHRとし、被験者の安静時の脈拍数である安静時脈拍数をHRrestとし、被験者の年齢の関数として定義した最大脈拍数をHRmaxとして、(1)式により算出している。
RHR=(HR−HRrest)/(HRmax−HRrest)×100[%]
……(1)
(1)式において、最大脈拍数をHRmaxは、次に示す(2)式により定義している。
HRmax=220−AGE ……(2)
ここで、AGEは、被験者の年齢である。
図7に示すように、相対酸素摂取量RVO2maxは、相対脈拍数RHRmaxが20%以上の場合と、20%未満の場合、すなわち、運動負荷が高い場合と、低い場合とで関係式が異なっている。
ここで例示されている閾値は、ATと呼ばれているポイントを想定している。
AT(anaerobic threshold;嫌気性代謝閾値)とは、有酸素的な代謝に加えて嫌気的な代謝が始まる点の酸素摂取量(VO2)であり、比較的安全に長時間持続可能な最大の運動レベルとされる。
RVO2max=(RHRmax−b)/a …(3)
RVO2max=0 …(4)
これは、相対脈拍数RHRmaxが低い状態では、上述したように脈拍数そのものの信頼性が低いため誤差が大きいからである。しかしながら、この領域では、相対脈拍数RHRmaxの誤差がある程度大きくても、相対酸素摂取量RVO2maxの算出への大きな影響がないため、実験的に求め、かつ、取り扱いの容易な算出式として(4)式を定義している。
本実施形態において、酸素摂取量VO2は、最大酸素摂取量をVO2maxとし、基礎代謝量としての安静時酸素摂取量をVO2restとして、(5)式により定義している。ここで、最大酸素摂取量VO2maxは、予めユーザが入力装置110を介して入力し、設定しておくものとする。
VO2=RVO2max×(VO2max−VO2rest)+VO2rest
……(5)
(5)式において、安静時酸素摂取量VO2restについては、ハリス・ベネディクト方程式を利用している。
男性:VO2rest=66.47+(13.75・W)
+(5.0・T)−(6.76×AGE)
女性:VO2rest=66.51+(9.56・W)
+(1.85・T)−(4.68×AGE)
上記式における安静時酸素摂取量VO2restは、1日当たりであるので、実際の消費カロリー量を算出する場合には、1分当たりの安静時酸素摂取量VO2restに変換して処理を行っている。すなわち、得られた値に1/(24×60)を乗じた値を用いている。
具体的には、1リットル酸素を摂取した場合における消費カロリーを5kcalとし、同一の酸素摂取量VO2に相当する脈拍数継続時間をtとした場合に、次に示す(6)式により消費カロリー量Cを算出している。
C=VO2×W×5×t …(6)
次に上記各式を適用した場合の実施形態の動作について説明する。
図8は、実施形態の生体情報処理装置の消費カロリー量算出処理フローチャートである。
まず、生体情報処理装置1のMPU308は、脈拍数HRを計測する(ステップS11)。
まず、MPU308は、脈拍センサ30と体動センサ302の出力信号を取得する。
具体的には、脈拍センサ30は生体から脈波を検出し、検出した脈波信号を脈波信号増幅回路303に出力する。脈波信号増幅回路303は、入力された脈波信号を増幅し、A/D変換回路305及び脈波波形整形回路306に出力する。脈波波形整形回路306は、脈波信号を整形し、MPU308に出力する。
一方、体動センサ302は、ユーザの動きを検出し、検出した体動信号を体動信号増幅回路304に出力する。体動信号増幅回路304は、体動信号を増幅し、A/D変換回路305及び体動波形整形回路307に出力する。体動波形整形回路307は、体動信号を整形し、MPU308に出力される。
これらの結果、A/D変換回路305は脈波信号および体動信号をそれぞれA/D変換し、脈波データおよび体動データとしてMPU308に出力する。
次にMPU308は、体動成分の量が脈拍数算出の可否を判別するための所定のしきい値よりも大きいか否かを判別する。
そして、体動成分の量が脈拍数算出の可否を判別するための所定のしきい値よりも大きい場合には、今回の脈拍数については、体動成分が多すぎて不可能であるので、計測不能とする。
一方、体動成分の量が脈拍数算出の可否を判別するための所定のしきい値以下である場合には、脈拍成分Fmから体動成分Ftを除去したものを本来の脈拍成分Fmとする。
具体的には、
Fm=Fm−Ft
という処理を行う。すなわち、脈波信号だけに存在する周波数成分を取り出す。
次にMPU308は、抽出した脈拍スペクトルの周波数に基づいて、脈拍数HRを算出することとなる。
続いてMPU308は、上述した(1)、(2)式により相対脈拍数RHRmaxを算出する(ステップS12)。すなわち、相対脈拍数RHRmaxは、次式により算出される。
RHRmax=(HR−HRrest)/(HRmax−HRrest)×100
ステップS13の判別において、算出した相対脈拍数RHRmaxが20[%]より大きい場合、すなわち、運動負荷が高い場合には(ステップS13;Yes)、MPU308は、上述した(3)式により相対酸素摂取量RVO2maxを算出し(ステップS14)、処理をステップS16に移行することとなる。
また、ステップS13の判別において、算出した相対脈拍数RHRmaxが20[%]以下である場合、すなわち、運動負荷が低い場合には(ステップS13;No)、MPU308は、上述した(4)式により相対酸素摂取量RVO2maxを算出し(ステップS15)、処理をステップS16に移行することとなる。
続いて、MPU308は、現在の酸素摂取量VO2を(5)式により推定する(ステップS16)。
MPU308は、現在の酸素摂取量VO2を(5)式により推定するに際し、上述したハリス・ベネディクト方程式により安静時酸素摂取量VO2rest(=基礎代謝量)を算出する。
VO2=RVO2max×(VO2max−VO2rest)+VO2rest
続いて、MPU308は、現在の酸素摂取量VO2から消費カロリー量Cを算出する(ステップS17)。
具体的には、上述した(6)式により消費カロリー量Cを算出する。
C=VO2×W×5×t
そして、この運動状態を1時間続けた場合には、総カロリー消費量CTとして、
CT=C×60
を算出し、算出結果である総カロリー消費量CT(kcal/h)が、図3に示すように、液晶表示装置13に表示されることとなる。
また、脈拍数の測定が行えれば、演算処理だけでカロリー消費量を算出することができるので、装置の小型化および製造コストの低減が図れる。
さらに、カロリー消費量の算出には、相対酸素摂取量を用いているので、各ユーザの個人差、すなわち、各ユーザの体力差を考慮した誤差の少ないカロリー消費量を算出することができる。
以上の説明においては、安静時脈拍数HRrestをユーザが設定する場合について説明したが、図9に示すような、年齢−安静時脈拍数HRrest対応テーブルTB1を予め記憶し、この年齢−安静時脈拍数HRrest対応テーブルTB1を参照して、入力された年齢に基づいて安静時脈拍数HRrestを設定するように構成することも可能である。
この構成によれば、ユーザが自己の安静時脈拍数HRrestを知らない場合であっても、より実測値の安静時脈拍数HRrestを用いた場合に近い計測結果を容易に得ることができる。
以上の説明においては、最大酸素摂取量VO2maxをユーザが入力装置110を介して予め入力し、設定しておく場合について述べたが、図10に示すように、年齢/性別−最大酸素摂取量対応テーブルTB2を予め記憶し、この年齢/性別−最大酸素摂取量対応テーブルTB2を参照して、入力された年齢および性別に基づいて最大酸素摂取量VO2maxを設定するように構成することも可能である。
この構成によれば、ユーザが最大酸素摂取量VO2maxを把握していない場合であっても、より正確な計測結果を容易に得ることができる。
また、一定の運動負荷を与えるプログラムをユーザ(被験者)に課して脈拍数を測定し、予め定めた脈拍数と最大酸素摂取量VO2maxとの関係に基づいて、当該ユーザの最大酸素摂取量VO2maxを決定し、設定するように構成することも可能である。
この構成によれば、ユーザが最大酸素摂取量VO2maxを把握していない場合であっても、ユーザが自分で入力する場合や、年齢および性別に基づいて設定する場合と比較して、より当該ユーザに最適な最大酸素摂取量VO2maxを用いて計測を行うことが可能となる。
以上の説明においては、相対脈拍数RHRmaxが20%以上であるか否かに基づいて算出処理を切り換えていたが、相対脈拍数RHRmaxが所定値以下である場合には、(例えば、20%未満)、心理的な影響や食事、体調等によって簡単に変動してしまう領域であるため、消費カロリーの計算にデータを用いないようにすることも可能である。
本実施例においても、上述した実施形態と同様に、消費カロリー量を酸素摂取量から算出しているため、脈拍数が運動強度に比例するものとして取り扱える範囲内にあり、脈拍数が低い場合、あるいは、高い場合には比例しない場合があり、年齢、性別、運動能力などによる脈拍数の個人差が存在しているということを前提としている。
本実施例における実験の測定条件は、以下の通りとなっている。
被験者は、10歳から40歳の男女約10名である。
そして、相対脈拍数および相対酸素摂取量の関係については、予め実施形態で説明した生体情報処理装置で脈拍数の測定を行うとともに、一般的な負荷制御が可能な呼吸代謝測定装置を用いて実験データを取得している。
また、安静時脈拍数については、測定開始前にウォーミングアップ期間を設け、このウォーミングアップ期間に脈が安定状態になった場合(具体的には、ウォーミングアップの開始から10分程度経過後)の脈拍数を自動的に測定している。
図11は、実施例の相対脈拍数と相対酸素摂取量の関係説明図である。
本実施例においては、相対脈拍数RHRmaxは、被験者の脈拍数をHRとし、被験者の安静時の脈拍数である安静時脈拍数をHRrestとし、被験者の年齢の関数として定義した最大脈拍数をHRmaxとして、(7)式により算出している。
RHR=(HR−HRrest)/(HRmax−HRrest)×100[%]
……(7)
(7)式において、最大脈拍数をHRmaxは、(8)式により定義している。
HRmax=220−AGE ……(8)
ここで、AGEは、被験者の年齢である。
図11に示すように、相対酸素摂取量RVO2maxは、相対脈拍数RHRmaxが20%以上の場合と、20%未満の場合、すなわち、運動負荷が高い場合と、低い場合とで関係式が異なっている。
ここで例示されている閾値は、ATと呼ばれているポイントを想定している。
AT(anaerobic threshold;嫌気性代謝閾値)とは、有酸素的な代謝に加えて嫌気的な代謝が始まる点の酸素摂取量(VO2)であり、比較的安全に長時間持続可能な最大の運動レベルとされる。
RVO2max=(RHRmax−6.72)/0.93 …(9)
RVO2max=0 …(10)
これは、相対脈拍数RHRmaxが低い状態では、上述したように脈拍数そのものの信頼性が低いため誤差が大きいからである。しかしながら、この領域では、相対脈拍数RHRmaxの誤差がある程度大きくても、相対酸素摂取量RVO2maxの算出への大きな影響をないため、実験的に求め、かつ、取り扱いの容易な算出式として(10)式を定義している。
本実施形態において、酸素摂取量VO2は、最大酸素摂取量をVO2maxとし、基礎代謝量としての安静時酸素摂取量をVO2restとして、(5)式により定義している。ここで、最大酸素摂取量VO2maxは、予めユーザが入力装置110を介して入力し、設定しておくものとする。
VO2=RVO2max×(VO2max−VO2rest)+VO2rest
……(11)
この(11)式において、安静時酸素摂取量をVO2restについては、ハリス・ベネディクト方程式を利用している。
男性:VO2rest=66.47+(13.75・W)
+(5.0・T)−(6.76×AGE)
女性:VO2rest=66.51+(9.56・W)
+(1.85・T)−(4.68×AGE)
上記式における安静時酸素摂取量VO2restは、1日当たりであるので、実際の消費カロリー量を算出する場合には、1分当たりの安静時酸素摂取量VO2restに変換して処理を行っている。すなわち、得られた値に1/(24×60)を乗じた値を用いている。
具体的には、1リットル酸素を摂取した場合における消費カロリーを5kcalとし、同一の酸素摂取量VO2に相当する脈拍数継続時間をtとした場合に、次に示す(12)式により消費カロリー量Cを算出している。
C=VO2×W×5×t ……(12)
次に上記各式を適用した場合の実施形態の動作について説明する。
図12は、実施例の生体情報処理装置の消費カロリー量算出処理フローチャートである。
まず、生体情報処理装置1のMPU308は、脈拍数HRを計測する(ステップS11)。
まず、MPU308は、脈拍センサ30と体動センサ302の出力信号を取得する。
具体的には、脈拍センサ30は生体から脈波を検出し、検出した脈波信号を脈波信号増幅回路303に出力する。脈波信号増幅回路303は、入力された脈波信号を増幅し、A/D変換回路305及び脈波波形整形回路306に出力する。脈波波形整形回路306は、脈波信号を整形し、MPU308に出力する。
一方、体動センサ302は、ユーザの動きを検出し、検出した体動信号を体動信号増幅回路304に出力する。体動信号増幅回路304は、体動信号を増幅し、A/D変換回路305及び体動波形整形回路307に出力する。体動波形整形回路307は、体動信号を整形し、MPU308に出力される。
これらの結果、A/D変換回路305は脈波信号および体動信号をそれぞれA/D変換し、脈波データおよび体動データとしてMPU308に出力する。
次にMPU308は、体動成分の量が脈拍数算出の可否を判別するための所定のしきい値よりも大きいか否かを判別する。
そして、体動成分の量が脈拍数算出の可否を判別するための所定のしきい値よりも大きい場合には、今回の脈拍数については、体動成分が多すぎて不可能であるので、計測不能とする。
一方、体動成分の量が脈拍数算出の可否を判別するための所定のしきい値以下である場合には、脈拍成分Fmから体動成分Ftを除去する。
具体的には、
Fm=Fm−Ft
という処理を行う。すなわち、脈波信号だけに存在する周波数成分を取り出す。
次にMPU308は、抽出した脈拍スペクトルの周波数に基づいて、脈拍数HRを算出することとなる。
続いてMPU308は、上述した(7)、(8)式により相対脈拍数RHRmaxを算出する(ステップS12)。
具体的に、計測された脈拍数HR=140(拍/min)とし、年齢AGE=40(歳)、ユーザが設定した安静時脈拍数HRrest=60(拍/min)とした場合、相対脈拍数RHRmaxは、以下の通りとなる。
RHRmax=(HR−HRrest)/(HRmax−HRrest)×100
=(140−60)/{(220−40)−60}×100
=66.7[%]
ステップS13の判別において、算出した相対脈拍数RHRmaxが20[%]より大きい場合、すなわち、運動負荷が高い場合には(ステップS13;Yes)、MPU308は、上述した(9)式により相対酸素摂取量RVO2maxを算出し(ステップS14)、処理をステップS16に移行することとなる。
また、ステップS13の判別において、算出した相対脈拍数RHRmaxが20[%]以下である場合、すなわち、運動負荷が低い場合には(ステップS13;No)、MPU308は、上述した(10)式により相対酸素摂取量RVO2maxを算出し(ステップS15)、処理をステップS16に移行することとなる。
RVO2max=(66.7−6.72)/0.93
=64.5[%]
となる。
続いて、MPU308は、現在の酸素摂取量VO2を(11)式により推定する(ステップS16)。
MPU308は、現在の酸素摂取量VO2を(5)式により推定するに際し、上述したハリス・ベネディクト方程式により安静時酸素摂取量VO2rest(=基礎代謝量)を算出する。
被験者が男性であり、身長T=173cm、体重W=65kgであるとすると、
VO2rest=66.47+(13.75×W)
+(5.0×T)−(6.76×AGE)
=66.47+(13.75×65)
+(5.0×173)−(6.76×40)
=1554.8kcal/日
となる。従って、体重1kg当たり、かつ、1分間当たりの安静時酸素摂取量VO2restは、酸素摂取量1リットル当たりの消費カロリーを5kcalとした場合、
VO2rest=1554.8/24/60×1000/5/65
=3.322[ml/kg/min]
となる。
VO2=RVO2max×(VO2max−VO2rest)+VO2rest
=0.645×(40−3.322)+3.322
=27.0[ml/kg/min]
続いて、MPU308は、現在の酸素摂取量VO2から消費カロリー量Cを算出する(ステップS17)。
具体的には、上述した(12)式により消費カロリー量Cを算出する。
C=VO2×W×5×t
=27.0×65×5×1
=8.8[kcal/min]
そして、この運動状態を1時間続けた場合には、総カロリー消費量CTとして、
CT=C×60
=528.0[kcal/h]
を算出し、算出結果である総カロリー消費量CT=424kcal/hが、図3に示すように、液晶表示装置13に表示されることとなる。
また、脈拍数の測定が行えれば、演算処理だけでカロリー消費量を算出することができるので、装置の小型化および製造コストの低減が図れる。
さらに、カロリー消費量の算出には、相対酸素摂取量を用いているので、各ユーザの個人差、すなわち、各ユーザの体力差を考慮した誤差の少ないカロリー消費量を算出することができる。
Claims (11)
- 生体の脈拍数を検出する脈拍数検出部と、
前記脈拍数検出部が検出した脈拍数に基づいて、前記生体の安静時脈拍数に応じた相対値である相対脈拍数を算出する相対脈拍数算出部と、
前記相対脈拍数に基づいて相対酸素摂取量を算出する相対酸素摂取量算出部と、
前記相対酸素摂取量を基に酸素摂取量を算出する酸素摂取量推定部と、
前記酸素摂取量に基づいて前記生体の消費カロリー量を算出する消費カロリー算出部と、
前記生体が運動状態であるか安静状態であるかを判別する運動状態判別部と、
を備え、
前記運動状態判別部が前記運動状態と判別した時と前記安静状態と判別した時とで前記消費カロリー算出部は前記消費カロリー量を算出するための演算式を異ならせていることを特徴とする生体情報処理装置。 - 請求項1記載の生体情報処理装置において、
前記運動状態判別部は、前記相対脈拍数が所定の基準相対脈拍数以上である場合に運動状態であると判別し、前記相対脈拍数が所定の基準相対脈拍数未満である場合に前記安静状態であると判別することを特徴とする生体情報処理装置。 - 請求項1または請求項2記載の生体情報処理装置において、
前記安静時脈拍数は、前記安静状態で測定した安静時脈拍数の値、入力された値、あるいは、年齢と安静時脈拍数との対応関係を示す予め記憶したテーブルを参照して得られる値のうち少なくともいずれか一つが設定されることを特徴とする生体情報処理装置。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の生体情報処理装置において、
前記相対酸素摂取量推定部は、最大酸素摂取量をVO2maxとし、基礎代謝量として
の安静時酸素摂取量をVO2restとした場合に、次式により前記酸素摂取量VO2を算出することを特徴とする生体情報処理装置。
VO2=RVO2max×(VO2max−VO2rest)+VO2rest - 請求項4記載の生体情報処理装置において、
前記安静時酸素摂取量は、当該装置に入力された前記生体の年齢、性別、体重に基づいて算出されることを特徴とする生体情報処理装置。 - 請求項4または請求項5記載の生体情報処理装置において、
当該装置に入力された値、若しくは、年齢、性別あるいは運動能力のうち少なくとも年齢と前記最大酸素摂取量VO2maxとの対応関係を示す予め記憶したテーブルを参照して前記最大酸素摂取量VO2maxが設定されることを特徴とする生体情報処理装置。 - 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の生体情報処理装置において、
前記消費カロリー量算出部が算出した前記消費カロリー量を消費カロリーデータとして記憶する消費カロリーデータ記憶部を備えたことを特徴とする生体情報処理装置。 - 請求項7記載の生体情報処理装置において、
外部機器と通信ネットワークを介して接続され、前記消費カロリーデータを前記外部機器に対して送信する通信部を備えたことを特徴とする生体情報処理装置。 - 請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の生体情報処理装置において、
前記相対脈拍数算出部は、前記脈拍数をHRとし、前記安静時脈拍数をHRrestとし、前記生体の年齢の関数として定義した最大脈拍数をHRmaxとした場合に、次式により前記相対脈拍数RHRを算出することを特徴とする生体情報処理装置。
RHR=(HR−HRrest)/(HRmax−HRrest)×100[%] - 請求項9記載の生体情報処理装置において、
前記最大脈拍数HRmaxは、前記生体の年齢をAGEとした場合に、次式により算出することを特徴とする生体情報処理装置。
HRmax=220−AGE - 生体の脈拍数を検出する脈拍数検出過程と、
脈拍数検出部が検出した脈拍数に基づいて、前記生体の安静時脈拍数に応じた相対値である相対脈拍数を算出する相対脈拍数算出過程と、
前記相対脈拍数に基づいて相対酸素摂取量を算出する相対酸素摂取量算出過程と、
前記相対酸素摂取量を基に酸素摂取量を算出する酸素摂取量推定過程と、
前記酸素摂取量に基づいて前記生体の消費カロリー量を算出する消費カロリー算出過程と、
前記算出した消費カロリーを表示する表示過程と、
前記生体が運動状態であるか安静状態であるかを判別する運動状態判別過程と、
を備え、
前記運動状態判別過程が前記運動状態と判別した時と前記安静状態と判別した時とで前記消費カロリー算出過程は前記消費カロリー量を算出するための演算式を異ならせていることを特徴とする生体情報処理方法。
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