JP5010429B2 - 磁性材料、アンテナデバイスおよび磁性材料の製造方法 - Google Patents

磁性材料、アンテナデバイスおよび磁性材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁性材料、アンテナデバイスおよび磁性材料の製造方法に関する。
近年、通信情報の急増に伴い電子通信機器の小型化、軽量化が図られている。これに伴い、電子部品の小型化、軽量化が望まれている。
現在の携帯通信端末は、情報伝播の多くを電磁波の送受信にて行っている。現在使用される電磁波の周波数帯域は100MHz以上の高周波領域である。また、携帯移動体通信、衛生通信においては、GHz帯の高周波領域の電磁波が使用されている。このため、この高周波領域において有用な電子部品および基板が注目されている。
このような高周波領域の電磁波に対応するためには、電子部品においてエネルギー損失や伝送損失が小さいことが求められる。例えば、携帯通信端末に不可欠なアンテナデバイスでは、アンテナから発生する電磁波は伝送過程において伝送損失が生じる。この伝送損失は、熱エネルギーとして電子部品および基板内で消費されて電子部品における発熱の原因となる。また、伝送損失は外部に送信すべき電磁波が打ち消される。このため、強力な電磁波を送信する必要があり、電力の有効利用を妨げる。さらに、他の電子機器への影響や1回の充電によりできるだけ長時間使用したいというニーズ等から極力出力が弱い電磁波での通信が望まれている。
ここで、高透磁率の絶縁基板を使用する高周波デバイスは、発生する電磁波を基板に巻き込むことができるため、電磁波が通信機器内の電子部品やプリント基板への到達を防止することができる。つまり省電力化が可能である。
高透磁率部材としてFeやCoを成分とする金属もしくは合金、或いはこれらの酸化物が知られている。しかし、金属もしくは合金の高透磁率部材は、電磁波の周波数が高くなると渦電流による伝送損失が顕著になるため、基板としての使用は困難になる。また、フェライトに代表される酸化物の磁性体の場合、高抵抗であるため渦電流による伝送損失は抑えられるが、共鳴周波数が数百MHzであるため、高周波領域では共鳴による伝送損失が顕著になり、やはり基板としての使用は困難になる。
これらのことから、基板の材料として、高周波領域の電磁波に対しても使用できる伝送損失を極力抑えた絶縁性の透磁率の高い部材(高透磁率部材)が求められている。
このような高透磁率部材を作製する試みとして、スパッタ法などの薄膜技術を用いて高透磁率ナノグラニュラー材料が作製されており、高周波領域においても優れた特性を示すことが確認されている。しかしながら、グラニュラー構造では高抵抗を保ったまま磁性微粒子の体積百分率を向上させることは難しいために、現状の構造ではこれ以上の特性向上は困難であると考えられる。
一方、特許文献1にはFe、CoまたはNiの各々の純金属ないしはそれらを少なくとも20重量%含有する合金からなる単磁区の柱状構造体を酸化物、窒化物またはフッ化物ないしはそれらの混合物である無機質の絶縁性母体中に埋め込んだ複合磁性材料が開示されている。
これらの磁性材料に対し、基板と磁性膜の間に主に金属材料もしくは合金組成のバッファ層を設け、磁性膜の特性を向上、特に膜の損失を低減させる研究がなされている。しかし、バッファ層の元素組成が磁性膜の元素組成と異なると、両者の熱膨張率が異なる等の原因により、電磁波吸収などのエネルギー損失が熱に変化する等の熱履歴を受けると、磁性膜が基板から剥離しやすくなるという問題がある。また、軟磁性膜の磁気特性を改善するには不十分な上、膜と異材を設けることで、プロセスが複雑になり、コスト高になるという問題がある。
特開2004−95937公報
このように、従来は基板と複合磁性膜の間の密着性に優れた磁性材料を得ることができなかった。
本発明は、係る問題点に鑑みてなされたものであり、基板と複合磁性膜の間に優れた密着性を有するバッファ層を具備する磁性材料、この磁性材料を用いたアンテナデバイス、およびその磁性材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る第1の磁性材料は、表面を有する基板と、長手方向が前記基板の表面に対して垂直方向を向いた複数のアモルファスである柱状体、およびこの柱状体の間隙に形成された無機絶縁体を有する複合磁性膜と、前記基板と前記複合磁性膜の間に形成され、前記複合磁性膜と同一の構成元素を有するバッファ層と、を具備することを特徴とする。
本発明に係る第2の磁性材料は、表面を有する基板と、この基板の表面上に形成され、バッファ層の形成用部材を堆積した後に前記基板を静置することにより形成される、複合磁性膜と同一の構成元素を有するバッファ層と、このバッファ層上に形成される前記複合磁性膜と、を具備することを特徴とする。
本発明に係るアンテナデバイスは、第1または第2の磁性材料を含むアンテナ基板と、このアンテナ基板の主面近傍に配置されたアンテナと、を有することを特徴とする。
本発明に係る磁性材料の製造方法は、表面を有する基板上にバッファ層の形成用部材を堆積して堆積層を形成させる第1の成膜工程と、前記第1の成膜工程により堆積層が形成された基板を静置させることにより複合磁性膜と同一の構成元素を有するバッファ層を形成するバッファ層形成工程と、前記バッファ層を形成させた後に前記バッファ層上に前記複合磁性膜を形成する第2の成膜工程と、を有することを特徴とする。
本発明により、基板と複合磁性膜の間に優れた密着性を有するバッファ層を具備する磁性材料、この磁性材料を用いたアンテナデバイス、およびその磁性材料の製造方法を提供できる。
以下、本発明の実施の形態に係る磁性材料、アンテナデバイス、磁性材料の製造方法について説明する。
〔磁性材料〕
本発明の実施の形態に係る磁性材料は、表面を有する基板と、長手方向が前記基板の表面に対して垂直方向を向いた複数の柱状体、および前記柱状体の間隙に形成された無機絶縁体を有する複合磁性膜と、前記基板と前記複合磁性膜の間に形成され、前記複合磁性膜と同一の構成元素を具備するバッファ層とを有する。
本発明に係る実施形態に係る磁性材料は、例えば図1に示すように表面を有する基板1を備えている。複合磁性膜2は、バッファ層5を介して基板1上に形成されている。この複合磁性膜2は、バッファ層5上に長手方向が基板1の表面に対して垂直方向に向いた柱状体3を備える。この柱状体3は、Fe、CoおよびNiの少なくとも1つから選ばれる磁性金属または磁性合金を含有する。
図1には、柱状体3の長手方向に対して垂直な断面が円形状を有する円柱体を例示する。複数の柱状体3の間には金属の酸化物、窒化物、炭化物およびフッ化物から選ばれる少なくとも1つの無機絶縁体4が形成されている。複合磁性膜2は、基板1の表面と平行な表面内に磁気異方性を有する。
本発明に係る複合磁性膜は、柱状体の構造を持つ磁性体が、絶縁体のマトリックスに埋め込まれている構造を有する。すなわち、柱状体の構造を持つ磁性体のそれぞれが絶縁体により分離されている構造である。
ここで柱状体の構造を持つ磁性体は一般に導電性を有するため、この柱状体の構造を持つ磁性体を絶縁体で分離して複合磁性膜全体の高抵抗化を図ることはもちろんのこと、柱状体の構造自身の大きさも微細化する必要がある。これは柱状体が大きくなると、その柱状体の中で渦電流が生じ、エネルギー損失を生じるためである。逆に、柱状体が微細であれば柱一本が単磁区となるため、磁壁の移動がしにくくなり、損失が低減されるという効果がある。
この複合磁性膜をデバイスに応用する場合、十分な効果を得るためにはデバイス中の磁性体量を増加させる必要がある。デバイス内の磁性体成分を増加させるためには複合磁性膜の膜厚を厚くする必要がある。つまり、膜厚を薄くする、すなわち柱状体の長手方向の長さを小さくすることは、デバイスとして用いる際には困難であるが、柱状体の直径方向の大きさ(後述する柱状体の平均粒径)は体積百分率Vfが小さくなって特性が低下しない限り、微細化しても実用上問題はない。また、柱状体の直径方向の大きさを小さくすることにより、柱のアスペクト比が向上し、より柱一本が単磁区になりやすくなる。
以下に実施形態に係る磁性材料を構成する各部材について詳述する。
〔基板〕
本発明に係る磁性材料に用いる、表面を有する基板は、例えばSiO、Al、MgOのような無機材料、ポリイミドのような樹脂やプラスチック、ガラスやSiなどを用いることができる。また、導電性の低い基材の表面に絶縁体の層を設けた基板を用いることができるが、特に、これらに限定されるものではない。
〔柱状体〕
高周波領域における磁気特性において重要であるのは、透磁率の実部μ’と虚部μ”である。特にμ”が高周波領域まで小さいことは、アンテナなどへの応用を考える際に重要である。μ”の低減には、共鳴周波数の高周波化、高抵抗化、渦電流損の低減など、いくつかの方法が考えられるが、渦電流損の低減は効果的な方法のひとつである。ここで、「高周波領域」とは100MHz以上の周波数帯域をいう。
渦電流損の低減には、後述する複合磁性膜に含まれる柱状体の磁性体を微細化することが効果的である。この複合磁性膜に含まれる磁性体が柱状体である場合、上述したように当該柱状体の平均粒径を小さくすることが好ましい。
柱状体の形状としては、円柱体、楕円柱体の他に、四角柱体、六角柱体、八角柱体のような角柱体の形態を用いることができる。
柱状体の平均粒径は1nm以上100nm以下、その中でも特に3nm以上50nm以下の範囲であることが好ましい。平均粒径が1nmに満たないと、超常磁性が生じたりして磁束量が不足する。一方、100nmを超えると高周波領域で渦電流損が大きくなり、狙いとする100MHz以上の高周波領域における磁気特性が低下してしまうためである。
柱状体の平均粒径(D)は以下のように求めることができる。
例えば、柱状体の基板表面に対する平行な断面が円形の場合には、当該円の直径を平均粒径Dとして用いることができる。また、柱状体の基板表面に対する平行な断面が楕円形やトラック状の略楕円形、多角形の場合には、楕円形やトラック状の略楕円形、多角形の断面積(S)とその周長(Ltotal)を用いて
D = 4×S/Ltotal
例えば、図2に示す角柱体の場合、
total=L1+L2+L3+L4+L5+L6
であるため、平均粒径は
D = 4×S/(L1+L2+L3+L4+L5+L6)
で求められる。
柱状体の長手方向(前記基板表面に対して垂直方向)の長さ(図2のHに相当)は50nm乃至1μmを有することが好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。
また、アスペクト比が大きくなると、基板に対し、垂直方向の異方性が大きくなり好ましいが、大きすぎると実効的な透磁率の値が小さくなり、好ましくない。柱状体を上記の範囲を満たす形状とすることによって、透磁率が大きい状態で適度な異方性を有する事が可能になる。
なお、ここでいうアスペクト比は以下の式で表される。
アスペクト比 = (柱状体の高さ)/(柱状体の平均粒径)
= H/D
ここで「柱状体の高さ」とは柱状体の長手方向の軸長の平均値、例えば図2においてはHの平均値を意味する。また、「柱状体の平均粒径」とは上述の通り求めた値(D)を採用することができる。
柱状体の平均粒径や厚さは顕微鏡写真により、求めることができる。
柱状体の配置は、隣り合う柱状体間の距離、すなわち柱状体の間隙に形成された無機絶縁体(後述)の厚さが約1nm以上3nm以下であることが好ましい。
柱状体間の無機絶縁体の厚さが3nmを超えると、複合磁性膜の抵抗率が高くなるものの、体積百分率Vfが下がって磁気特性が低下するおそれがある。
無機絶縁体の厚さは電子顕微鏡写真により、一の柱状体の壁面から他の柱状体の壁面までの平均距離を測定することにより、求めることができる。ここで一の柱状体の壁面から他の柱状体の壁面までの平均距離は次のようにして求めることができる。すなわち、顕微鏡写真において複合磁性膜の断面において、一の柱状体の壁面から他の柱状体の壁面の距離を複数(例えば10点)測定し、これの平均値を当該平均距離として採用すればよい。
柱状体は、例えば磁性金属もしくは磁性合金の、単結晶もしくはアモルファス、または磁性金属粒子もしくは磁性合金粒子の集合物から作られる。柱状体は結晶質である場合、単結晶であることが好ましい。
柱状体が、磁性金属粒子もしくは磁性合金粒子の集合物から構成される場合、集合物を構成する磁性金属粒子もしくは磁性合金粒子は、粒径1nm以上、粒径50nm以下が好ましい。粒径が50nmを超えると、高周波領域で渦電流損が大きくなり、磁気特性が低下するおそれがある。また、粒径が50nmを超えると、高周波磁気特性を保持することが困難となる。
つまり、単磁区構造よりも多磁区構造をとった方がエネルギー的に安定であり、多磁区構造の透磁率の高周波特性は、単磁区構造の透磁率の高周波特性よりも低下する。すなわち、高周波用磁性部材として使用する場合は、磁性金属粒子を単磁区粒子として存在させる方が好ましい。また、磁性金属粒子もしくは磁性合金粒子の集合物から構成される柱状体において単磁区構造を保つこれら粒子の粒径限界は50nm程度以下であるため、磁性金属粒子もしくは磁性合金粒子の平均粒径は50nm以下の範囲におさめることが好ましい。
このように、柱状体が磁性金属粒子もしくは磁性合金粒子の集合物から構成される場合には、磁性金属粒子もしくは磁性合金粒子の集合物が粒子群全体として概ね単結晶もしくはアモルファスの時のような柱状体を構成すれば、本発明に係る効果が認められる。
柱状体は、結晶質においても、またアモルファスにおいても、バッファ層による効果が見られるので、限定されないが、アモルファスである場合により効果が高い。ここで「アモルファス」とはX線回折において、柱状体の最大ピークの半値幅が3°以上である場合を示している。
特に、柱状体がアモルファスの場合には、基板上に形成されるバッファ層形成粒子(後述)の平均粒径を、結晶質の場合よりも小さく出来るために、複合磁性膜における柱状体の平均粒径が小さくなり、基板と膜との密着性向上効果および高周波領域における損失の低減効果が高くなる。ここで、バッファ層形成粒子の平均粒径は、以下のようにして求めることができる。すなわち、バッファ層形成粒子が円形の場合には、当該円の直径を平均粒径dとして用いることができる。また、バッファ層形成粒子が楕円形やトラック状の略楕円形、多角形の場合には、楕円形やトラック状の略楕円形、多角形の断面積(s)とその周長(ltotal)を用いて以下の式で求めることができる。
d = 4×s/ltotal
柱状体をアモルファスにするには、例えばBなどの元素を添加すればよい。
柱状体は、その長手方向が基板表面に対し垂直方向に配向していることが好ましい。ただし、柱状体の一部においてその垂直方向の垂線に対する角度が±45°、好ましくは±30°に傾斜することを許容する。柱状体が磁性金属粒子もしくは磁性合金粒子の集合物から構成される場合にも、粒子が連なって形成する粒子群全体の長手方向は基板表面に対し垂直方向の垂線とのなす角度を30°以内、好ましくは15°以内にすることが望ましい。
角度が大きくなると、構造が乱れやすくなるため、損失増大の原因となる。
また、柱状体は各々の長手方向が平行または略平行に揃っていることが好ましい。
柱状体の材料は、Fe,CoおよびNiの群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属または磁性合金から作られ、用途に応じて選択される。中でも柱状体はFeCo合金から作られることが好ましい。例えば、飽和磁化の大きい磁性材料を得る場合には、Fe−30原子%Coの柱状体が用いられる。磁歪ゼロの磁性材料を得る場合には、Fe−80原子%Coの柱状体が用いられる。磁性合金には、B、Nのような添加元素を含むことを許容する。
なお、柱状体には後述する無機絶縁体の成分が微量含まれていても構わない。
〔無機絶縁体〕
無機絶縁体は、室温で1×10Ω・cm以上の絶縁抵抗を有することが好ましい。
このような無機絶縁体は、例えばMg、Al、Si、Ca、Cr、Ti、Zr、Ba、
Sr、Zn、Mn、Hf、および希土類元素(Yを含む)から選ばれる金属の酸化物、窒
化物、炭化物およびフッ化物の群から選ばれる少なくとも1つを含有する。特に、絶縁体はSiO、Al、MgOから選ばれる酸化物から作られることが好ましい。
無機絶縁体は、柱状体に含まれる磁性体成分の金属元素を30原子%以下、さらには20原子%以下含むことを許容する。磁性金属元素の量が30原子%を超えると、無機絶縁体の電気抵抗率が低下し、複合磁性膜全体の磁気特性が低下するおそれがある。一方、無機絶縁体中の磁性体成分の金属元素が20原子%以下の場合、磁気異方性が向上するため好ましい。
なお、無機絶縁体には、磁性体成分が含まれることで、磁気特性が向上する。具体的には20原子%以下含まれることを許容する。無機絶縁体中の磁性体成分が20原子%以下の場合、磁気異方性が向上するため好ましい。一方、20原子%より多くなると絶縁体の導電性が生じるため、好ましくない。
〔複合磁性膜〕
この高周波領域用の複合磁性膜は、基板の表面に平行な面内の最小異方性磁界をHk1、最大異方性磁界をHk2とする場合に、Hk2/Hk1≧3、Hk2≧3.98×10A/mの、面内一軸異方性を有することを特徴とする。
高周波領域まで高いμ’を維持するためには、面内の異方性が大きいことが必要である。特にGHz帯域の使用に耐えうる高周波特性を得るためには、最大異方性磁界がHk2≧3.98×10A/mの特性であり、面内一軸異方性の最大最小差が3以上であることが求められる。
〔バッファ層〕
バッファ層5は、基板1の種類やバッファ層の形成用部材の組成やその構成比率に応じて、磁性体粒子とそれを取り囲む絶縁体(以下、磁性体粒子とそれを取り囲む絶縁体を「バッファ層形成粒子」という)が複数個基板1の上に配列して構成される場合と、このような構成は採らずに層状構造となる場合とがあると考えられる。しかし、いずれにしても、バッファ層5は複合磁性膜と同一の元素で構成される。
例えば、図1はバッファ層5が基板1と複合磁性膜2の間に形成されている様子を模式的に示したものである。このバッファ層5はバッファ層形成粒子(5a乃至5f)が基板1の上に平面的に形成され、これらが全体としてバッファ層5を形成している。
バッファ層形成粒子は、形状はどのような形体でもよく、粒子状でも扁平粒でも、角錐や円錐でもよい。バッファ層形成粒子の平均粒径は、粒径10nm以下であり、より好ましくは5nm以下であるが、大きさには分布があり、1nm以下の微細粒子も存在している。バッファ層形成粒子は、複合磁性膜が成長する際の核となるために、複合磁性膜の柱状体の平均粒径より小さいことが望ましい。バッファ層形成粒子の平均粒径が小さいと、複合磁性膜の柱状体の平均粒径が小さく構造が微細になり、高周波領域における損失も低減できる。
なお、バッファ層形成粒子の平均粒径の求め方は前述の通りである。
バッファ層形成粒子は絶縁体で取り囲まれているために、磁性材料の断面構造を観察した際には、柱状の磁性体粒とバッファ層とは分離した層として観察できる。また、バッファ層形成粒子は絶縁体だけではなく磁性体の酸化膜で被覆されていてもよい。
バッファ層5の厚みは0.1nm以上10nm以下が好ましいが、より好ましくは1nm以上5nm以下である。バッファ層が厚すぎると、バッファ層形成粒子の平均粒径も大きくなり、複合磁性膜が成長する際の微細な核とはならず、表面を荒らす結果となるために、複合磁性膜の構造が乱れる原因となる。また、0.1nmより薄いと、バッファ層による密着性向上および損失低減効果が見られない。
なお、バッファ層は複合磁性膜と構成元素が同一であるが、かつその組成比が同一であることが好ましい。これにより、バッファ層と複合磁性膜の熱膨張率の違いがより少なくなるからである。
後述するように、特に基板上に形成され、長手方向が基板の表面に対して垂直方向に向いたFeおよびCoからなる磁性合金で構成された柱状体と、柱状体の間に形成されたケイ素および酸素の酸化物からなる無機絶縁体とを備えた複合磁性膜において、Fe−Co磁性合金とケイ素との組成モル比が90:10から95:5であることがより好ましいことから、バッファ層においても当該複合磁性膜と構成元素が同一で、かつ当該組成比を有することが好ましい。ここで、ケイ素が酸素と完全に1対2のモル割合で存在している場合には、(モル割合)×[(分子量)/(密度)]により、体積比を算出できる。
〔複合磁性膜〕
複合磁性膜の磁気異方性は、典型的には単位柱状体同士が基板表面に平行な面内において強く磁気的に結合している構造と、単位柱状体構造が基板表面に平行な面内において形状異方性を有する構造とが挙げられる。形状異方性は、例えば結晶配向と柱状体の異方性がある。
複合磁性膜の磁気異方性のより具体的な例を以下の(1)〜(4)に列挙する。
(1)複合磁性膜は、基板表面と平行な表面の異方性磁界Hk1、基板の表面と平行で異方性磁界Hk1に対して直角方向の異方性磁界Hk2を有し、これらの異方性磁界の比(Hk2/Hk1)が1以上である磁気異方性を持つ。これらの異方性磁界Hk1、Hk2を図1に示す。
ここで、Hk1、Hk2は次のようにして求めることができる。
まず、複合磁性膜の表面内に対し、基板の表面に平行な方向に磁場を印加し、磁化が正に飽和するまで磁場を加える。次に、外部磁場を反転させ、負に磁化が飽和するまで磁場を加える。このように磁化を正および負に飽和させるように磁場をスイープさせた時に得られる曲線をヒステリシス曲線という(図7の参照)。このヒステリシス曲線において、正の飽和磁化から負の飽和磁化への曲線をS102、負の飽和磁化から正の飽和磁化への曲線をS103とする。
このS103において、印加した磁場Hに対する磁化Mの変化率(ΔM/ΔH)が最も大きい時(P)の磁場の下での接線(L101)と、最も変化率が小さい磁場の下での接線(L103、L104)との交点(X1、X4)の磁場の値をそれぞれH1、H4とする。
同様に、S102において印加した磁場Hに対する磁化Mの変化率(ΔM/ΔH)が最も大きい時(Q)の磁場の下での接線(L102)と、最も変化率が小さい磁場下での接線(L103、L104)との交点(X2、X3)の磁場の値をそれぞれH2、H3とする。
このようにして求めた各磁場の値(H1乃至H4)の絶対値の相加平均をHkとする。すなわち、Hkは次の式で求められる値である。
Hk = (|H1|+|H2|+|H3|+|H4|)/4
磁場の印加方向を基板の表面に平行な面内で変化させた時に、このようにして求められるHkの中で、最大のものをHk1、最小のものをHk2とする。
Hk2は、40Oe以上、1kOe以下であることがより好ましい。また、Hk2/Hk1は3以上10以下であることがより好ましい。このようなHk2、Hk2/Hk1を規定することによって、実効的な透磁率を大きくしつつ適度な磁気異方性を付与させ、透磁率を高周波化させることが可能となる。
このような磁気異方性は、例えばその膜表面において、複数の柱状体の配列における異方性磁界Hk1に対応する方向の柱状体の間隔を広く、異方性磁界Hk2に対応する方向の柱状体の間隔を狭くすることにより実現することが可能である。
また、磁気異方性は無機絶縁体中の磁性元素量の変化により付与することができる。例えば、複合磁性膜の膜面での異方性磁界Hk1に対応する方向と異方性磁界Hk2に対応する方向の柱状体間で無機絶縁体中の磁性元素量を、前者に比べて後者を多くすることにより実現可能である。
複合磁性膜は、その表面のXRD(X線回折パターン)での回折結晶面(110)、(200)、(211)、(310)、(222)に起因するピーク強度全てを足した強度Itotalと回折結晶面(110)に起因するピーク強度I(110)の比I(110)/Itotalが0.8以上、より好ましくは0.9以上であることが望ましい。すなわち、基板に対して垂直な結晶方位が型方向{110}に配向されていることが好ましい。
ただし、複合磁性膜の柱状体は基板表面と平行な面内において、形状的および結晶学的に等方であることを許容する。
(2)複合磁性膜は、基板表面に対して垂直な表面が、その表面のXRDでの回折結晶面(110)、(200)、(211)、(310)、(222)に起因するピーク強度全てを足した強度Itotalと回折結晶面(110)に起因するピーク強度I(110)の比I(110)/Itotalが0.8以上であり、基板表面と垂直面が型面{110}に配向した柱状体を有する。ピーク強度比I(110)/Itotalが0.9以上であることがより好ましい。
また、複合磁性膜は基板と平行な表面および柱状体の短軸と垂直な結晶面が型面{11
0}に配向した複数の柱状体の配向領域は直径100nm以下の大きさ、これら配向領域
が集合された集合領域は直径1μm以上の大きさで、この結晶面が揃った集合領域内で結
晶方位が等方的に分散した構成を有する。
この様子を図3に具体的に示す。なお、図3の(a)は、磁性材料を示す模式図、図3の(b)は同図(a)の矢印Bで示す配向領域の柱状体の配向性を示す模式図、図3の(c)は同図(a)の矢印Cで示す配向領域の柱状体の配向性を示す模式図である。すなわち、図3の(a)に示すように基板1上に複合磁性膜2が形成されている。この複合磁性膜2は、基板と平行な表面および柱状体の短軸と垂直な結晶面が型面{110}に配向した複数の柱状体3を有する配向領域11を有し、これらの配向領域11が集合されて集合領域体12を構成している。集合領域12は、直径1μm以上の大きさを有し、この集合領域12内の複数の配向領域11は直径100nm以下の大きさを有する。このような結晶面が揃った集合領域12内の任意の配向領域11の配向方向は図2の(b)、(c)に示すように異なる方向に向いて、集合領域12内で結晶方位が等方的に分散している。{110}面の配向は、例えば電子線回折パターンにより測定することができる。
複合磁性膜の形態は、試料膜面から垂直方向に電子線を入射し、直径100nm以下、例えば直径50nmまたは1μmの視野で電子線回折パターンを測定することにより確認可能である。この場合、直径50nmの視野では{110}型面のスポットの輝度を強度とし、その半値幅が±15°の角度、好ましくは±10°以内で配向することを許容する。エッジから100μm以上離れた膜中央部の任意の6〜10点を測定して、測定部位の50%以上で、半値幅が±15°以内に入るパターンが存在すればよい。同試料面内で電子ビーム径1μmの電子線回折パターンはリング状となり、面内は結晶学的に等方である。ここで、リング状の電子線回折パターンはそのリング内で強度分布があってもよく、連続的でありさえすればよい。この試料は基板と平行な面内で磁気的異方性を良好に維持することができる。
(3)複合磁性膜は、基板表面に対して垂直な表面が、その表面のXRDでの回折結晶面(110)、(200)、(211)、(310)、(222)に起因するピーク強度全てを足したものItotalと回折面(110)に起因するピーク強度I(110)の比I(110)/Itotalが0.8以上の複合磁性膜であって、基板表面と垂直な結晶面が型面{110}に配向した柱状体を有する。ピーク強度比I(110)/Itotalが0.9以上であることがより好ましい。
また、複合磁性膜は柱状体がその長手方向と垂直な断面内に長軸と短軸を有し、基板と平行な表面と短軸と垂直な結晶面が型面{110}に配向していることがより好ましい。この様子を図4に示す。{110}面の配向は、例えば電子線回折パターンにより測定することができる。
複合磁性膜の配向は、試料膜面から垂直方向に電子線を入射し、直径1μmの視野で電子線回折パターンを測定することにより確認可能である。この場合、{110}型面のスポットの輝度を強度とし、その半値幅が±15°の角度で、好ましくは±10°以内で配向することを許容する。この際、この様な箇所が膜面内全体に分布していることが好ましいが、直径が1μmの電子ビーム径で、エッジから100μm以上離れた膜中央部の任意の6〜10点を測定して、測定部位の50%以上で、半値幅が±15°以内に入るパターンが存在すればよい。この範囲内では、基板と平行な面内で磁気的異方性を良好に維持することができる。
(4)複合磁性膜は、Fe、CoおよびNiの群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属粒子または磁性合金粒子が集合された柱状体を備え、その柱状体のその長手方向に垂直な面内における断面形状が1.2以上のアスペクト比を有し、このアスペクト比を有する柱状体が全ての柱状体に対して30体積%以上占める。
このようなアスペクト比を有する柱状体は、例えば楕円柱体である。アスペクト比は、楕円柱体の長手方向に垂直な断面において、最も長さが大きくなる軸(長軸)と、長軸と直交し最も長さが短くなる軸(短軸)の比で表わされる。
短軸の長さは、50nm以下,長軸の長さは特に限定されないが60nm以上、1μm以下を有することが好ましい。
柱状体が粒子の集合体である場合には、粒子のアスペクト比は5以上であることが好ましい。このアスペクト比を有する粒子の全粒子に占める割合は、50体積%以上であることがより好ましい。粒子の基板に平行な面内のアスペクト比を大きくすると、磁性粒子の充填率を大きくすることができ、それによって複合磁性部材の体積あたり、重量あたりの飽和磁化を大きくすることができる。また、形状による異方性を付与することができ、透磁率の高周波化が可能となる。
(1)から(4)において、基板表面と平行な表面内の磁気異方性を有する複合磁性膜において、表面内の電気的抵抗率に異方性を有することがより好ましい。具体的には、基板表面と平行な面内において最大抵抗率(R1)と最小抵抗率(R2)との比率(R1/R2)が1.2以上である。より好ましいR1/R2は、2以上、さらに好ましくは5以上である。
(1)から(4)において、複合磁性膜には複数の柱状体が70%以上、より好ましくは80%以上の体積百分率で存在することが磁気特性をより向上する観点から望ましい。ただし、複数の柱状体の体積百分率が高くなり過ぎると、電気抵抗が低下して特性劣化を招くおそれがある。このため、複合磁性膜中に占める柱状体の体積百分率の上限は95%にすることが好ましい。
さらに、基板上に形成され、長手方向が基板の表面に対して垂直方向に向いたFeおよびCoからなる磁性合金で構成された柱状体と、柱状体の間に形成されたケイ素および酸素の酸化物からなる無機絶縁体とを備えた複合磁性膜において、Fe−Co磁性合金とケイ素との組成モル比が90:10から95:5であることがより好ましい。ここで、ケイ素が酸素と完全に1対2のモル割合で存在している場合には、(モル割合)×[(分子量)/(密度)]により、体積比を算出できる。
〔磁性材料の製造方法〕
本発明の実施形態に係る磁性材料は、例えば次の方法により製造することができる。すなわち、図5に示すように、基板上にバッファ層の形成用部材を堆積して堆積層を形成させる第1の成膜工程(S1)と、前記第1の成膜工程により堆積層が形成された基板を静置させることにより複合磁性膜と同一の構成元素を有するバッファ層を形成するバッファ層形成工程(S2)と、前記バッファ層を形成させた後に前記バッファ層上に前記複合磁性膜を形成する第2の成膜工程(S3)と、を有することを特徴とする磁性材料の製造方法である。
〔第1の成膜工程:S1〕
第1の成膜工程は、基板上にバッファ層の形成用部材を堆積し、バッファ層の出発部材となる、堆積層を形成させる工程である。この第1の成膜工程は、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法等で成膜することにより形成することができる。例えば、図6(A)から図6(B)に示すように堆積層6が形成される。堆積層6の厚みは上述の通り、例えば成膜時間を制御して数nmに制御すればよい。
〔バッファ層形成工程:S2〕
第1の成膜工程の後に行うバッファ層形成工程は、第1の成膜工程と第2の成膜工程との間に、例えば当該成膜操作を中断することにより複合磁性膜と同一の構成元素を有するバッファ層を形成することができる。
具体的には、例えばスパッタ装置を用いた場合、バッファ層出発材料が成膜開始後に数nm成長した時点でシャッターを閉じるなどして成膜を中断する方法を適用することができる。このとき、所定の温度、圧力、雰囲気を適用すればよい。例えば、シャッターを閉じること以外の条件(温度、圧力、雰囲気等)はスパッタを行っている時と同一の条件に保持する方法を適用することができる。これにより、バッファ層が基板に安定にアンカーされると共に、前述のバッファ層が自己組織化され、複合磁性膜を成長させる核として適切に分散させることが可能となる。例えば、図6(B)に示す堆積層6が図6(C)に示すバッファ層5のようになる。
このように、基板に成膜原料が飛散してこない状態で自己組織化を促進する数分乃至数時間のインターバルを置いた後、再び成膜を開始することで、最終的に基板と複合磁性膜の間にバッファ層が形成されることが観察される。なお、この成長の中断は所望の複合磁性膜に応じ、成膜レートや成膜雰囲気により適宜調整することが可能である。
〔第2の成膜工程:S3〕
第2の成膜工程は、基板上に形成したバッファ層上に複合磁性膜を形成させる工程である。第2の成膜工程(S3)も、第1の成膜工程(S1)同様、例えば基板上に複合磁性膜をスパッタリング法、電子ビーム蒸着法等で成膜することにより複合磁性膜を形成することができる。例えば、図6(C)に示すバッファ層5の上に図6(D)に示す複合磁性膜2が形成されるような構造になる。
第1の成膜工程において用いる基板上にバッファ層の形成用部材を成膜する材料と、第2の成膜工程において用いる複合磁性膜の成膜用材料は、構成元素が同一であることが好ましい。さらに好ましくはその組成比率が同一であることが好ましい。
また、第1の成膜工程において、基板を回転させる、もしくは成膜時に磁場を付与することも効果がある。これにより基板上に形成された複合磁性膜に基板表面と平行な方向への磁気異方性をより効果的に付与することが可能となるバッファ層を形成することが可能となり、効果的だからである。
これに加え、第2の成膜工程においても、基板を回転させる、もしくは成膜時に磁場を付与することに効果が認められる。これより上記バッファ層を基点とし、複合磁性膜に基板表面と平行な方向への磁気異方性をより効果的に付与することが可能になるからである。
〔アンテナデバイス〕
本発明に係る実施形態にかかるアンテナデバイスは、前述した磁性材料を含むアンテナ基板と、このアンテナ基板の主面近傍に配置されたアンテナとを備える構造を有する。ここで、アンテナ基板の主面近傍に配置されたアンテナとは、アンテナ基板の主面に外装樹脂層またはスペーサのような中間部材を配置し、アンテナをこの中間部材を介してアンテナ基板の主面に配置することを意味する。
アンテナ基板として、基板1上に2層以上(好ましくは5層以上)の複合磁性膜2を形成し、これらの複合磁性膜2の間に絶縁体層6を備える磁性材料を用いることが好ましい。
2層以上の複合磁性膜を形成するには、上記の第2の成膜工程の後に、絶縁体の層(絶縁体層)を介在させることにより製造することができる。この場合、複合磁性膜の厚さ方向の複合磁性膜を絶縁体層で分離して圧膜化することにより、複合磁性膜に絶縁体層を介在させずに一層で圧膜にした場合に生じる反磁界の影響を低減し、複合磁性膜全体の磁気特性の向上を図ることが可能となる点で有効である。
この絶縁体層の形成は、例えばMg、Al、Si、Ca、Cr、Ti、Zr、Ba、Sr、Zn、Mn、Hf、および希土類元素(Yを含む)から選ばれる金属の酸化物、窒化物、炭化物およびフッ化物の群から選ばれる少なくとも1つから形成することができる。
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
基板としてSiOを用いた。基板は前処理としてアルコール洗浄後、乾燥したものを用いた。
バッファ層の形成用部材として((Fe70Co30901090−(SiO10を用いた。
また、複合磁性膜の成膜用材料はバッファ層の形成用部材と同一のものを継続して用いた。
第1の成膜工程および第2の成膜工程に係る成膜には対向型のマグネトロンスパッタ成膜装置を用いた。当該装置のチャンバ内に回転可能なホルダを配置すると共に、前記ターゲットをホルダと対向するように配置した。チャンバ内のホルダ上に基板を設置し、基板を5rpm以上の速度で回転させながら、チャンバ内をAr雰囲気中、2×10−3torr(266.6mPa)の圧力下で、磁性膜を基板表面に堆積して最終的に厚さ0.5μmの複合磁性膜を成膜することにより磁性材料を製造した。
バッファ層形成工程については、基板上に第1の成膜工程に係る成膜を開始し、膜厚が5nmとなったところで成膜操作を中断し、10分間静置することにより自己組織化を促進させ、バッファ層を形成した。このとき、成膜操作の中断のためにマグネトロンスパッタ成膜装置のシャッターを閉じた以外の条件(温度、圧力、雰囲気等)の条件はそのまま維持した。
バッファ層形成後、更に第2の成膜工程に係る成膜を再開し、複合磁性膜を形成した。それぞれの磁性膜の組成、基板、バッファ層に関して表1に示す。
得られた磁性材料について、以下の方法で解析・評価した。
(1)複合磁性膜の組織
複合磁性膜は、透過型電子顕微鏡により膜の断面観察を行った。実施例1に関しては、平均粒径5nmの複数の柱状体が基板上にその長手方向が概ね基板表面に垂直になるように混在され、かつ約1乃至3nmの距離の無機酸化物が各柱状体間に存在する形態を有することを確認した。
また、X線回折により、最大磁性体ピークの半値幅を測定し、柱状磁性体の結晶性を評価した。
実施例1において半値幅が3°以上をアモルファス、3°以下を結晶質としたところ、((Fe70Co30901090−(SiO10組成ではアモルファスであることが分かった。
(2)複合磁性膜の基板表面に平行な面内における透磁率の実部μ’と虚部μ”の比μ”/μ’
μ’とμ”は、超高周波透磁率測定装置(凌和電子製PMM−9G1)を使い、1MHzから9GHzの範囲で、面内困難軸方向に励磁して測定を行った。具体的には、試料容易軸方向に2kOeの直流磁場を印加した時(バックグラウンド測定に相当)と印加しない時とのそれぞれの状態において、面内困難軸方向に励磁して測定を行い、両者の誘起電圧、インピーダンス測定値から透磁率を評価した。評価には、1GHzにおけるμ'/μ”の値を用いた。
実施例1においてμ'/μ”は0.05と良好であった。
(3)密着性評価
更に、密着性を評価するために、膜にテープを貼り付け、1分の後、剥がす試験を行った。
実施例1において基板からの複合磁性膜の剥離は認められなかった。
実施例および比較例に関する評価結果を下記表1に示す。
Figure 0005010429
(実施例2)
バッファ層の形成用部材として((Fe70Co30901090−(SiO10の代わりに(Fe70Co3090−(SiO10を用いた以外は実施例1と同様の方法で磁性材料を得た。
実施例1と同様の手法(上記(1)乃至(3))を用いて磁性材料を評価した。その結果、柱状体の平均粒径や柱状構造の乱れに関して実施例1とは差が見られるものの、柱状体構造が形成されていることが確認された。また、X線回折により柱状磁性体の結晶性を評価したところ、アモルファスではなく、結晶質であることが分かった。
評価結果を表1に示す。
(実施例3)
バッファ層形成工程において、膜厚が5nmとなったところで成膜操作を中断した代わりに、膜厚が0.1nmで中断した以外は実施例1と同様の方法で磁性材料を得た。
実施例1と同様の手法(上記(1)乃至(3))を用いて磁性材料を評価した。評価結果を表1に示す。
(実施例4)
バッファ層形成工程において、膜厚が5nmとなったところで成膜操作を中断した代わりに、膜厚が10nmで中断した以外は実施例1と同様の方法で磁性材料を得た。
実施例1と同様の手法(上記(1)乃至(3))を用いて磁性材料を評価した。評価結果を表1に示す。
(実施例5)
バッファ層の形成用部材として((Fe70Co30901090−(SiO10の代わりに(Fe70Co3090−(Al10を用いた以外は実施例1と同様の方法で磁性材料を得た。
実施例1と同様の手法(上記(1)乃至(3))を用いて磁性材料を評価した。評価結果を表1に示す。
(実施例6)
バッファ層の形成用部材として((Fe70Co30901090−(SiO10の代わりに(Fe70Co3090−(MgO)10を用いた以外は実施例1と同様の方法で磁性材料を得た。
実施例1と同様の手法(上記(1)乃至(3))を用いて磁性材料を評価した。評価結果を表1に示す。
(実施例7)
バッファ層形成工程において、膜厚が5nmとなったところで成膜操作を中断した代わりに、膜厚が0.08nmで中断した以外は実施例1と同様の方法で磁性材料を得た。
実施例1と同様の手法(上記(1)乃至(3))を用いて磁性材料を評価した。評価結果を表1に示す。
(実施例8)
バッファ層形成工程において、膜厚が5nmとなったところで成膜操作を中断した代わりに、膜厚が0.08nmで中断した以外は実施例2と同様の方法で磁性材料を得た。
実施例1と同様の手法(上記(1)乃至(3))を用いて磁性材料を評価した。評価結果を表1に示す。
(実施例9)
バッファ層形成工程において、膜厚が5nmとなったところで成膜操作を中断した代わりに、膜厚が50nmで中断した以外は実施例1と同様の方法で磁性材料を得た。
実施例1と同様の手法(上記(1)乃至(3))を用いて磁性材料を評価した。評価結果を表1に示す。
(実施例10)
バッファ層形成工程において、膜厚が5nmとなったところで成膜操作を中断した代わりに、膜厚が50nmで中断した以外は実施例2と同様の方法で磁性材料を得た。
実施例1と同様の手法(上記(1)乃至(3))を用いて磁性材料を評価した。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
バッファ層を形成しなかった以外は実施例1と同様の方法で磁性材料を得た。
実施例1と同様の手法(上記(1)乃至(3))を用いて磁性材料を評価した。評価結果を表1に示す。
なお、比較例1におけるバッファ層厚は検出限界以下であったので「<0.01nm」と記載した。
(比較例2)
バッファ層を形成しなかった以外は実施例2と同様の方法で磁性材料を得た。
実施例1と同様の手法(上記(1)乃至(3))を用いて磁性材料を評価した。評価結果を表1に示す。
なお、比較例2におけるバッファ層厚は検出限界以下であったので「<0.01nm」と記載した。
表1から明らかなように、実施例1乃至10の複合磁性膜に関しては、基板から複合磁性膜の剥離は観察されなかったが、比較例1及び2に関しては一部に膜の剥離が観察された。このことから、バッファ層の形成により、密着性に優れた磁性材料を提供できることが明らかとなった。
また、表1から明らかなように実施例1乃至6、すなわち、バッファ層の厚みが0.1nm以上10nm以下の複合磁性膜は、μ'/μ”の値が小数点以下第2位を四捨五入すると0.1以下であり、特に損失が低減されていることが認められる。すなわち、高周波領域の電磁波に対応したアンテナ用途等の実用に特に適していることが分かる。
この点において、特に、前記表1から明らかなように磁性体がアモルファスの複合磁性膜(実施例1、実施例7、実施例9)である方が、磁性体が結晶質の複合磁性膜(実施例2、実施例8、実施例10)よりも効果的であることが分かる。
以上のことから、実施例に示した粒状バッファ層を設けた複合磁性膜は、基板と複合磁性膜との間における高い密着性を有することが分かった。その中でも、アモルファスの複合磁性膜は更に磁気特性においても優れた特性を有することがわかった。
実施形態に係る磁性材料の部分切欠斜視図。 実施形態に係る磁性材料の柱状体の概念図。 実施形態に係る磁性材料の柱状体の面方位を示す模式図。 実施形態に係る別の磁性材料を示す断面図。 本発明に係る実施の形態の磁性体膜製造のプロセスフロー図。 本発明に係る実施の形態の磁性体膜製造の模式図。 ヒステリシス曲線の概念図。
符号の説明
1…基板
2…複合磁性膜
3…柱状体(円柱状態)
4…無機絶縁体
5・・・バッファ層
5a、5b、5c、5d、5e、5f・・・バッファ層形成粒子
6・・・バッファ層の形成用部材の堆積層
11・・・配向領域
12・・・集合領域
S・・・柱状体の断面積
L1、L2、L3、L4、L5、L6・・・柱状体の各辺の長さ

Claims (6)

  1. 表面を有する基板と、
    長手方向がこの基板の表面に対して垂直方向を向いた複数のアモルファスである柱状体、およびこの柱状体の間隙に形成された無機絶縁体を有する複合磁性膜と、
    前記基板と前記複合磁性膜の間に形成され、前記複合磁性膜と同一の構成元素を有するバッファ層と、
    を具備することを特徴とする磁性材料。
  2. 前記バッファ層は、その厚みが0.1nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁性材料。
  3. 前記柱状体は、Feを含有し、かつ前記絶縁体相がSiO、Al、MgOの群から選ばれる酸化物を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁性材料。
  4. 表面を有する基板と、
    この基板の表面上に形成され、バッファ層の形成用部材を堆積した後に前記基板を静置することにより形成される、複合磁性膜と同一の構成元素を有するバッファ層と、
    このバッファ層上に形成される前記複合磁性膜と、
    を具備することを特徴とする磁性材料。
  5. 請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の磁性材料を含むアンテナ基板と、
    このアンテナ基板の主面近傍に配置されたアンテナと、
    を有することを特徴とするアンテナデバイス。
  6. 表面を有する基板上にバッファ層の形成用部材を堆積して堆積層を形成させる第1の成膜工程と、
    前記第1の成膜工程により堆積層が形成された基板を静置させることにより複合磁性膜と同一の構成元素を有するバッファ層を形成するバッファ層形成工程と、
    前記バッファ層を形成させた後に前記バッファ層上に前記複合磁性膜を形成する第2の成膜工程と、
    を有することを特徴とする磁性材料の製造方法。
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