JP2010165958A - 高周波用磁性材料、アンテナ、携帯電話および高周波用磁性材料の製造方法 - Google Patents

高周波用磁性材料、アンテナ、携帯電話および高周波用磁性材料の製造方法 Download PDF

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朋子 江口
Maki Yonezu
麻紀 米津
Naoyuki Nakagawa
直之 中川
Seiichi Suenaga
誠一 末永
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Abstract

【課題】高周波域において、透磁率実部μ’と透磁率虚部μ”の比(μ”/μ’)が小さく、かつ厚膜である、優れた高周波用磁性材料、この高周波用磁性材料の製造方法、アンテナ、携帯電話を提供する。
【解決手段】 基板と、基板上の第1の磁性体層と、第1の磁性体層上の第1の磁性体層と異なる材料の中間層と、中間層上の第1の磁性体層と同じ材料の第2の磁性体層とを有し、磁性体層は、長手方向が基板の表面に対して垂直方向を向いた複数の柱状体を形成する非晶質の磁性相と、柱状体の間隙を充填する絶縁体相とから成る複合磁性膜であり、基板の表面に平行な面内の最小異方性磁界をHk1、最大異方性磁界をHk2とする場合に、Hk2/Hk1≧3、Hk2≧3.98×10A/mの面内一軸異方性を有することを特徴とする高周波用磁性材料、この高周波用磁性材料の製造方法、アンテナ装置および携帯電話。
【選択図】図1

Description

本発明は、高周波用磁性材料、アンテナ、携帯電話および高周波用磁性材料の製造方法に関する。
現在の携帯機器で使用される電波の周波数帯域は、GHz帯にまで高周波化している。しかし、例えば、携帯機器のアンテナが電磁波を放射する際、金属がアンテナ近傍に存在すると、金属内に生じる誘導電流により電磁波の放射が妨げられてしまう。そこで、アンテナ近傍に高周波用磁性材料(高周波域において、高い透磁率を示す材料)を配置することで、不要な誘導電流の発生を抑制し、高周波域の電波通信を安定化できると考えられている。
通常の高透磁率部材としては、Fe、Co、Niなどを主成分とする金属、合金、その酸化物が用いられる。金属もしくは合金の高透磁率部材は、電波の周波数が高くなると渦電流により電波の伝送損失が顕著になるため、高周波用磁性材料としては適さない。
一方、フェライトに代表される酸化物の磁性体は、高抵抗であるため渦電流による伝送損失は抑えられるが、共鳴周波数が数百MHzであるため、それ以上の高周波域では共鳴による伝送損失が顕著になり、やはり高周波用磁性材料としては適さない。
このため、GHz帯域までの高周波域で磁気特性の優れた高周波用磁性材料の開発が求められている。優れた高周波用磁性材料とは、高周波域において、高抵抗で、透磁率実部μ’が大きく、透磁率の損失成分を示す透磁率虚部μ”が小さい、すなわちμ”/μ’が小さい材料である。
このような高周波用磁性材料を作製する試みとして、スパッタリング法などの薄膜技術を用いてグラニュラー構造を有する高透磁率ナノグラニュラー材料が作製されている。ここで、グラニュラー構造とは、絶縁体マトリクスの中に、磁性金属微粒子が分散している構造で、高周波域においても優れた特性を示すことが確認されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、グラニュラー構造では、磁性金属微粒子の高周波用磁性材料中の体積百分率を向上させ、さらなる高透磁率化を図ることが困難である。
また、グラニュラー構造からさらに磁性金属の高周波用磁性材料中の体積百分率を向上させた材料として、柱状構造から成る高透磁率材料が作製されている。これは、絶縁体マトリクスの中に、柱状体の磁性金属が分散している構造で、高周波域においてグラニュラー構造よりも高い透磁率を示すことが確認されている(例えば、非特許文献2)。
アンテナ近傍に高周波用磁性材料を配置し、高周波域の電波通信を安定化するためには、高周波用磁性材料をできるだけ厚くすることが求められている。しかし柱状構造を有する材料では、膜厚を厚くすると柱同士が合体してしまうなど柱状構造の乱れが生じやすくなり、透磁率の損失成分μ”が大きくなり、μ”/μ’が増大するという問題点があった。
S.Ohnuma et al., "High−frequency magnetic properties in metal−nonmetal granular films", Journal of Applied Physics 79(8) pp.5130−5135(1996) N.Hayashi et al., "Soft Magnetic Properties and Microstructure of Ni81Fe19/(Fe70Co30)99(Al2O3)1) Films Deposited by Ion Beam Sputtering", Transaction of the Materials Research Society of Japan 29[4] pp.1611−1614(2004)
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、高周波域において、透磁率実部μ’と透磁率虚部μ”の比(μ”/μ’)が小さく、かつ厚膜である、優れた高周波用磁性材料、これを用いたアンテナ、携帯電話および高周波用磁性材料の製造方法を提供することにある。
本発明の一態様の高周波用磁性材料は、基板と、前記基板上の第1の磁性体層と、前記第1の磁性体層上の前記第1の磁性体層と異なる材料の中間層と、前記中間層上の前記第1の磁性体層と同じ材料の第2の磁性体層とを有し、前記磁性体層は、長手方向が前記基板の表面に対して垂直方向を向いた複数の柱状体を形成する非晶質の磁性相と、前記柱状体の間隙を充填する絶縁体相とから成る複合磁性膜であり、前記基板の表面に平行な面内の最小異方性磁界をHk1、最大異方性磁界をHk2とする場合に、Hk2/Hk1≧3、Hk2≧3.98×10A/mの面内一軸異方性を有することが望ましい。
上記高周波用磁性材料において、前記中間層が絶縁体膜と金属膜との積層構造を有することが望ましい。
上記高周波用磁性材料において、前記金属膜の膜厚をb1、前記絶縁体膜の膜厚をb2、前記磁性体層一層の膜厚をaとする場合に、1nm≦b1≦500nm、1nm≦b2≦100nm、0.1≦a/(a+b2+b1)であることが望ましい。
上記高周波用磁性材料において、前記中間層が金属膜であり、前記金属膜の膜厚をb1、前記磁性体層一層の膜厚をaとする場合に、1nm≦b1≦500nm、0.1≦a/(a+b1)であることが望ましい。
上記高周波用磁性材料において、前記金属膜が、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、またはAuであることが望ましい。
上記高周波用磁性材料において、前記中間層が絶縁体膜であり、前記絶縁体膜の膜厚をb2、前記磁性体層一層の膜厚をaとする場合に、1nm≦b2≦100nm、0.7≦a/(a+b2)であることが望ましい。
上記高周波用磁性材料において、前記絶縁体膜が、SiO、Al、MgO、Fe酸化物、またはCo酸化物であることが望ましい。
本発明の一態様のアンテナは、給電端子と、一端に前記給電端子が接続されるアンテナエレメントと、前記アンテナエレメントから放射される電磁波の伝送損失を抑制するための高周波用磁性材料を具備するアンテナであって、前記高周波用磁性材料が、上記態様の高周波用磁性材料であることを特徴とする。
本発明の一態様の携帯電話は、上記態様のアンテナを具備することを特徴とする。
本発明の一態様の高周波用磁性材料の製造方法は、基板上に前記基板を回転させながら第1の磁性体層を堆積し、前記第1の磁性体層上に絶縁体膜を堆積し、前記絶縁体膜上に金属膜を堆積し、前記基板を回転させながら前記金属膜上に前記第1の磁性体層と同じ材料の第2の磁性体層を堆積することを特徴とする。
上記高周波用磁性材料の製造方法において、前記金属膜の膜厚をb1、前記絶縁体膜の膜厚をb2、前記磁性体層一層の膜厚をaとする場合に、1nm≦b1≦500nm、1nm≦b2≦100nm、0.1≦a/(a+b2+b1)であることが望ましい。
本発明によれば、高周波域において、透磁率実部μ’と透磁率虚部μ”の比(μ”/μ’)が小さな、かつ膜厚の厚い、優れた高周波用磁性材料、これを用いたアンテナ、携帯電話および高周波用磁性材料の製造方法を提供することが可能となる。
第1の実施の形態の高周波用磁性材料の断面図。 第1の実施の形態の高周波用磁性材料の斜視図および上面図。 印加磁場に対する磁化曲線。 第2の実施の形態の高周波用磁性材料の断面図。 第3の実施の形態の高周波用磁性材料の断面図。 第4の実施形態のアンテナの斜視図。 第4の実施形態のアンテナの断面図。 第5の実施の形態の携帯電話の斜視図。 実施例1における、高周波用磁性材料表面のX線回折パターン。 実施例1における、高周波用磁性材料表面のTEM観察画像。 実施例1における、VSM測定結果。 実施例1における、高周波特性測定結果。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
発明者らは、柱状構造を有する磁性体層において、磁性体層と異なる材料からなる中間層を介して磁性体層を積層することで、高周波域において、高い透磁率を保ちながら、柱状構造の乱れを抑制し、中間層を介さず磁性体層を厚膜化した場合よりも、透磁率の損失成分を低減できることを見出した。本発明は、発明者らによって見出された上記知見に基づき完成されたものである。
なお、本明細書中、非晶質とは、X線回折におけるFeの最強ピークの半値幅が、3.0°以上の状態をいう。また、本明細書中、中間層が磁性体層と異なる材料を有するとは、それぞれの層を全体として比較した場合に異なる組成・構造を有することを意味する。
(第1の実施の形態)
本実施の形態の高周波用磁性材料は、基板と、基板上の第1の磁性体層と、第1の磁性体層上の第1の磁性体層と異なる材料の中間層と、中間層上の第1の磁性体層と同じ材料の第2の磁性体層とを有する。そして、磁性体層は、長手方向が基板の表面に対して垂直方向を向いた複数の柱状体を形成する非晶質の磁性相と、柱状体の間隙を充填する絶縁体相とから成る複合磁性膜であり、基板の表面に平行な面内の最小異方性磁界をHk1、最大異方性磁界をHk2とする場合に、Hk2/Hk1≧3、Hk2≧3.98×10A/mの面内一軸異方性を有する。
そして、本実施の形態においては、中間層が金属膜で形成されていることを特徴とする。
図1は、本実施の形態の高周波用磁性材料の断面図である。図1に示すように本実施の形態の高周波用磁性材料10は、基板12と、基板12上の第1の磁性体層14と、第1の磁性体層14上に積層され、第1の磁性体層14と異なる材料の金属膜の中間層16と、中間層16上に積層される第1の磁性体層14と同じ材料の第2の磁性体層18とで形成されている。
本実施の形態の基板12は、例えばポリイミドのようなプラスチック、SiO、Al、MgO、Si、ガラスのような無機材料を用いることができるが、これらに限定されるわけではない。
図2は、本実施の形態の高周波用磁性材料10の第1の磁性体層14の構造を示す図である。図2(a)が斜視図、図2(b)が上面図である。
図2に示すように、第1の磁性体層14は、長手方向が基板12の表面に対して垂直方向を向いた複数の柱状体を形成する非晶質の磁性相22と、柱状体の間隙を充填する絶縁体相24とから成る複合磁性膜である。そして、基板12の表面に平行な面内の最小異方性磁界をHk1、最大異方性磁界をHk2とする場合に、Hk2/Hk1≧3、Hk2≧3.98×10A/mの面内一軸異方性を有する。
なお、本明細書中では、Hk(Hk1およびHk2)は、図3に示すように、印加磁場に対する磁化の変化量が最も大きい磁場(≧0)下での接線と、最も変化量が小さい磁場下での接線との、磁化曲線の第一象限(磁化>0、印加磁場>0)における交点の磁場と定義する。
図2に示す磁性体層14は、基板12上に、長手方向が基板12の表面に対して垂直方向に向いた複数の柱状体を形成する磁性相22を備える。図2には、磁性相22の柱状体の長手方向に対して垂直な断面が、楕円形状を有する楕円柱体を例示するが、楕円柱体の他に、円柱体、四角柱体、六角柱体、八角柱体などの形態をとることができる。
本実施の形態の磁性相22は、図2に示すように、長手方向が基板12の表面に対して垂直方向を向いた柱状体の構造を成す。ただし、柱状体の一部においてその垂直方向の垂線に対する角度が±30°、好ましくは±10°に傾斜することを許容する。
磁性相22としては、例えば、Feに、B、P、Cのうち少なくとも一つの元素を含有する材料が適用可能である。
そして、この磁性相22は非晶質である。磁性相22を非晶質とすることにより、高周波域において、高い透磁率を保ちながら、磁気的な異方性分散を抑制し、結晶質の柱状構造を有する複合磁性膜よりも、透磁率の損失成分を低減することが可能となる。
磁性相22の柱状体が非晶質であることは、X線回折パターンや、電子線回折パターンから判断できる。X線回折パターンでは、結晶の場合のようなシャープな強いピークではなく、ブロードな弱いピークが現れる。電子線回折パターンでは、明瞭なスポットではなく、ハローリングが現れる。本明細中における非晶質とは、X線回折におけるFeの最強ピークの半値幅が、3.0°以上の状態とすることは上述したとおりである。
結晶質の柱状体の場合、結晶配向の乱れがある(すなわち多結晶である)と、磁気的な異方性分散が大きく、透磁率の損失成分(透磁率虚部μ”)が増大してしまうが、非晶質の柱状体の場合、結晶配向の乱れが無いため、磁気的な異方性分散が極めて小さく、μ”も小さくすることができる。
また、金属を非晶質化すると、結晶の金属よりも電気抵抗を大きくすることができる。つまり、磁性相を非晶質の柱状体とすることで、高周波域で高透磁率、低損失、高抵抗を示す、優れた高周波用磁性材料を作製することができる。
そして、柱状体から成る磁性相22は、少なくともFeとB(ホウ素)とを含むことが望ましい。FeにBを添加することで、Feの柱状体を、非晶質化することが容易になる。
磁性相22に含まれるBの割合yは、10at%≦y≦25at%であることが好ましい。Bが10at%より少ないと、Feの柱状体の非晶質化が困難になり、25at%より多いと、Feの割合が減り、透磁率が低くなってしまう。
透磁率をより高くするには、FeとCoを混合することが好ましく、FeCo中のCoの割合が20at%以上40at%以下であることが好ましい。
本実施の形態の絶縁体相24は、図2に示すように、磁性相24の柱状体の間隙を充填している。この絶縁体相24の材料は、渦電流による伝送損失を抑える観点から、室温で1×10Ω・cm以上の電気抵抗を有することが望ましい。
このような絶縁体相24として、例えばMg,Al,Si,Ca,Cr,Ti,Zr,Ba,Sr,Zn,Mn,Hf、および希土類元素(Yを含む)から選ばれる金属の酸化物、窒化物、炭化物およびフッ化物などが挙げられる。成膜の容易さ、コストの面などから、特に酸化物、中でもシリコン酸化物またはアルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物であることが好ましい。
絶縁体相24は、磁性金属元素を30mol%以下含むことを許容する。磁性金属元素の量が30mol%を超えると、絶縁体相24の電気抵抗率が低下し、磁性体層14の磁気特性が低下するおそれがある。
磁性相22の柱状体の底面の直径の平均値をD、柱状体同士の間隔の平均値をS(図2(b))とすると、5nm≦D≦20nm、D/S≧4であることが好ましい。ここで、高周波用磁性材料の、基板に平行な表面の任意の2ヶ所を、透過型電子顕微鏡を用いて(倍率40万倍で)観察する。そして、各観察写真の中心部100nm四方に相当する範囲に含まれる、すべての柱状体の底面について、各底面における最長径と最短径を測定し、それらすべての値の平均値をDとする。なお、明らかに複数の柱状体が合体したものが存在する場合は、この合体した柱状体は測定から除外するものとする。また、上述した2ヶ所の観察写真の中心部100nm四方から、それぞれ10個、計20個の柱状体をランダムに選出し、各柱状体と、それと隣接する柱状体との間隔を測定し、それらすべての値の平均値をSとする。
Dが5nmより小さいと、柱状体を形成しにくくなり、磁性相22の高周波用磁性材料中の体積百分率が低下し、透磁率が低下するおそれがある。また、Dが20nmより大きいと、保磁力が大きくなり、透磁率の損失が増大するおそれがある。そして、D/Sが4より小さいと、磁性相22の体積百分率が下がって透磁率が低下するおそれがある。
また、柱状体の高さと直径の比(アスペクト比)は、5以上であることが好ましい。なお、ここで直径とは、柱状体の底面の直径の平均値Dをいう。また、高周波用磁性材料の、基板に垂直な任意の2ヶ所を、透過型電子顕微鏡を用いて(倍率40万倍で)観察する。そして、各観察写真中、高さ(長さ)の長いほうからそれぞれ10個、計20個の柱状体を抽出し、その高さの平均値を柱状体の高さと定義するものとする。
アスペクト比が5より小さいと、柱と柱の底面間にも絶縁体相24が存在することとなり、磁性相22の体積百分率が下がって透磁率が低下するおそれがある。図2(a)では、基板12表面と垂直方向には、ひとつの柱状体しか図示していない。しかし、実際には、基板12表面と垂直方向に複数の柱状体が、柱状体の長手方向に絶縁体相24を挟んで配列している場合もある。
第1および第2の磁性体層14、18において、基板12の表面に平行な面内で、磁性相22の占める面積の割合Pが、75%≦P≦95%であることが好ましい。Pが75%より少ないと、磁性相22の体積百分率が下がって透磁率が低下するおそれがある。また、Pが95%より多いと、柱状体同士が凝集してDが20nmより大きくなり、前記のように透磁率の損失が増大するおそれがある。
磁性相22をM、絶縁体相24をI、磁性体層14、18をM(1−x)とすると、0.80≦x≦0.95であること、すなわち、磁性体層14、18中に占める磁性相22の割合が、80mol%以上95mol%以下が好ましい。磁性相22が80mol%より少ないと、磁性相22の体積百分率が下がってグラニュラー構造となり、透磁率が低下するおそれがある。磁性相22が95mol%より大きいと、柱状体同士が凝集してDが20nmより大きくなり、上述のように透磁率の損失が増大するおそれがある。
また、高周波磁性材料10の第1の磁性体層14は、図2(a)および図2(b)に示すように、基板の表面に平行な面内の最小異方性磁界をHk1、最大異方性磁界をHk2とする場合に、Hk2/Hk1≧3、Hk2≧3.98×10A/m(=50Oe)の面内一軸異方性を有する。磁性体層14は、上記範囲の面内一軸異方性を備えることにより、高周波域における透磁率の損失成分を低減することが可能となる。
面内一軸異方性を有することにより、高周波域において、透磁率の損失成分の低減が可能となるのは、以下のように考えられる。すなわち、最大異方性磁界と、透磁率の共鳴周波数は比例関係にあり、Hk2≧3.98×10A/mとすることで、1GHz以上の共鳴周波数が達成できる。そして、Hk2≧3.98×10A/mを得るには、Hk2/Hk1≧3を満たす面内一軸異方性を付与することが有効である。このように、面内一軸異方性を有することにより、磁気特性が等方的な場合よりも、最大異方性磁界を大きくすることができ、結果的に、高周波域でのμ”/μ’を小さくすることが可能となるのである。
このように、磁性相22を非晶質とし、かつ、基板の表面に平行な面内の最小異方性磁界をHk1、最大異方性磁界をHk2とする場合に、Hk2/Hk1≧3、Hk2≧3.98×10A/mとなる面内一軸異方性を備えることにより、従来の磁性材料と比較して、高周波域における透磁率の損失成分を大幅に低減することが可能となる。
このような磁気的な異方性は、例えば第1および第2の磁性体層14、18の表面において、柱状体の異方性磁界Hk1に対応する方向の径を長く、異方性磁界Hk2に対応する方向の径を短くすることにより実現することが可能である。
また、磁気的な異方性は、絶縁体相24中の磁性元素量の変化により付与することもできる。例えば、磁性体層14、18の表面での異方性磁界Hk2に対応する方向と異方性磁界Hk1に対応する方向の柱状体間で、絶縁体相24中の磁性元素量を、前者に比べて後者を多くすることにより実現可能である。
また、磁性体層14、18の表面での異方性磁界Hk1に対応する方向でのFeの原子間距離を、異方性磁界Hk2に対応する方向でのFeの原子間距離より長くすることで、磁気的な異方性を付与することも可能である。
第1の磁性体層14は、上述のように柱状構造を有している。そのため、第1の磁性体層14の単層膜厚を厚くすると、傾いた柱同士が合体するなど、柱状構造の乱れが生じやすくなり、透磁率の損失成分μ”が増大し、μ”/μ’が増大してしまう。
そこで、本実施の形態においては、図1に示すように、中間層16を介して第1の磁性体層14と第2の磁性体層18を積層する。このことで、磁性体層を一層で厚膜にした場合よりも、柱状構造の乱れによるμ”の増大を抑制できる。したがって、安定した構造を保ちつつ磁性体層の全体の膜厚を厚くすることが可能となる。
特に、本実施の形態では、中間層16が金属膜である。金属は拡散係数が大きいことから、磁性体層表面よりも中間層表面の平滑性は高くなる。したがって、本実施の形態の高周波用磁性材料は、中間層16の上に形成される第2の磁性体層18の柱状構造の乱れをより効果的に抑制することが可能である。
中間層16の金属膜の膜厚をb1、磁性体層一層の膜厚、すなわち第1の磁性体層14または第2の磁性体層18の膜厚をaとする場合に、1nm≦b1≦500nm、0.1≦a/(a+b1)であることが望ましい。
膜厚b1が1nmより小さいと、中間層を形成しづらくなり、500nmより大きいと、電磁波の送受信にともない中間層内に渦電流が発生し、透磁率の損失が増大するおそれがある。さらに、b1が500nmより大きい場合や、a/(a+b1)が0.1より小さい場合、磁性体層の全体の膜厚が小さくなり、高周波用磁性材料全体の透磁率が低下し、磁性体による、電磁波の放射効率の向上効果が得にくくなるおそれがある。
中間層16に用いる金属は、遷移金属が好ましい。その中でも酸化しづらく、金属の持つ磁化の小さいCu、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、またはAuが好ましい。酸化されやすいと、表面の平滑性が劣化するおそれがある。金属の持つ磁化が大きいと、第1の磁性体層と第2の磁性体層が、磁気的に結合し、反磁界の影響が大きくなることにより、透磁率の低下をまねくおそれがあるからである。
図1では、一層の中間層16を介して、第1の磁性体層14、第2の磁性体層18の2層が積層された構造を記載している。しかし、磁性体による、電磁波の放射効率の向上効果を得やすくするには、複数の中間層を介して、磁性体層を3層以上積層し、磁性体層の全体の膜厚をできるだけ厚くすることが好ましい。
本実施の形態の高周波用磁性材料の製造方法は、基板上に基板を回転させながら第1の磁性体層を堆積し、第1の磁性体層上に金属膜を堆積し、基板を回転させながら金属膜上に第1の磁性体層と同じ材料の第2の磁性体層を堆積することを特徴とする。
具体的には、例えば、基板12(図1)上に、基板12を回転させながら第1の磁性体層14である複合磁性膜をスパッタリング法、電子ビーム蒸着法等で堆積し成膜する。成膜時に基板を回転させ、成膜条件を制御することにより、基板12上に形成された複合磁性膜に、基板12の表面と平行な面内における磁気的な面内一軸異方性を効果的に付与することが可能となる。複合磁性膜をスパッタリング法で成膜する際は、チャンバ内をAr雰囲気とし、圧力を0.40Pa〜1.20Paに設定することが、異方性を付与する観点から望ましい。
次に、第1の磁性体層14上に、金属膜の中間層16をスパッタリング法、電子ビーム蒸着法等で堆積し成膜する。
その後、基板12を回転させながら、金属膜の中間層16上に、第1の磁性体層14と同じ材料の第2の磁性体層18である複合磁性膜をスパッタリング法、電子ビーム蒸着法等で堆積し成膜する。
このようにして、本実施の形態の高周波用磁性材料10が製造される。さらに、厚膜化するためには、第2の磁性体層18の上に中間層、磁性体層を繰り返し積層させればよい。
そこで、本実施の形態の製造方法においては、中間層16を介して第1の磁性体層14と第2の磁性体層18を積層する。このことで、磁性体層を一層で厚膜にした場合よりも、柱状構造の乱れによるμ”の増大を抑制できる。したがって、安定した構造を保ちつつ磁性体層の全体の膜厚を厚くすることが可能となる。
特に、本実施の形態の製造方法では、中間層16が金属膜である。金属は拡散係数が大きいことから、磁性体層表面よりも中間層表面の平滑性は高くなる。したがって、本実施の形態の高周波用磁性材料は、中間層16の上に形成される第2の磁性体層18の柱状構造の乱れをより効果的に抑制することが可能である。
この製造方法において、中間層16が金属膜であり、金属膜の膜厚をb1、磁性体層14、18一層の膜厚をaとする場合に、1nm≦b1≦500nm、0.1≦a/(a+b1)であることが望ましい
また、高周波用磁性材料10は、高周波域において、渦電流による伝送損失を抑制するために、高抵抗であることが望ましい。高周波用磁性材料を高抵抗化するには、材料を細分化することが有効であり、最小異方性磁界Hk1方向が、10μm≦c≦1mmの間隔cで細分化され、最大異方性磁界Hk2方向が、1≦d/c≦100となるような間隔dで細分化されていることが好ましい。
cを10μmより小さくすることは技術的に容易ではなく、cが1mmより大きいと、渦電流による伝送損失が増大するおそれがある。また、d/cが1より小さくなるように細分化することは高周波用磁性材料の体積を不必要に減少させ、d/cが100より大きいと、Hk2方向に磁化しやすくなる形状磁気異方性が生じてしまい、Hk2が減少し、大きな一軸異方性が得られないおそれがある。
材料の細分化は、レーザー加工、ダイシング加工、レジスト加工、イオンミリング加工、スタンパ加工などにて実施できる。しかし、これらの方法に限定されるわけではない。
(第2の実施の形態)
本実施の形態の高周波用磁性材料は、第1の実施の形態において中間層が金属膜であるのに対し、中間層が絶縁体膜である点で異なっている。中間層以外の構成については第1の実施の形態と同様であるので、重複する内容の記載を省略する。
図4は、本実施の形態の高周波用磁性材料の断面図である。図1に示すように本実施の形態の高周波用磁性材料20は、基板12と、基板12上の第1の磁性体層14と、第1の磁性体層14上に積層され、第1の磁性体層14と異なる材料であり絶縁体膜で形成される中間層26と、中間層26上に積層される第1の磁性体層14と同じ材料の第2の磁性体層18とで形成されている。
本実施の形態においては、図4に示すように、中間層26を介して第1の磁性体層14と第2の磁性体層18を積層する。このことで、第1の実施の形態同様、磁性体層を一層で厚膜にした場合よりも、柱状構造の乱れによるμ”の増大を抑制できる。したがって、安定した構造を保ちつつ磁性体層の全体の膜厚を厚くすることが可能となる。
さらに、本実施の形態のように中間層26に絶縁体膜を用いると、磁性体層14を一層で厚膜にした場合に生じる反磁界の影響を低減し、高周波用磁性材料全体の磁気特性の向上を図ることが可能になる。
中間層26に絶縁体膜を用いたとき、絶縁体膜の膜厚をb2、磁性体層14一層の膜厚をaとする場合に、1nm≦b2≦100nm、0.7≦a/(a+b2)であることが望ましい。また、1nm≦b2≦5nm、であることがより望ましい。
膜厚b2が1nmより小さいと、中間層を形成しづらくなり、また、b2が100nmより大きい場合、特に5nmより大きい場合や、a/(a+b2)が0.7より小さい場合、磁性体層の全体の膜厚が小さくなり、高周波用磁性材料全体の透磁率が誘電率を下回り、磁性体による、電磁波の放射効率の向上効果が得にくくなるおそれがある。
中間層26に用いる絶縁体膜は、薄膜の形成しやすさ、材料の安定性から、酸化物が好ましく、中でもSiO、Al、MgO、Fe酸化物、Co酸化物から作られることが好ましい。
本実施の形態の高周波用磁性材料の製造方法は、基板上に基板を回転させながら第1の磁性体層を堆積し、第1の磁性体層上に絶縁体膜を堆積し、基板を回転させながら絶縁体膜上に第1の磁性体層と同じ材料の第2の磁性体層を堆積することを特徴とする。
具体的には、第1の実施の形態の製造方法において、第1の磁性体層14上に、金属膜の中間層16を形成するのに変えて、絶縁体膜の中間層26をスパッタリング法、電子ビーム蒸着法等で堆積し成膜する。
(第3の実施の形態)
本実施の形態の高周波用磁性材料は、第1の実施の形態において中間層が金属膜であるのに対し、中間層が絶縁体膜と金属膜の積層構造である点で異なっている。中間層以外の構成については第1の実施の形態と同様であるので、重複する内容の記載を省略する。
図5は、本実施の形態の高周波用磁性材料の断面図である。図5に示すように本実施の形態の高周波用磁性材料30は、基板12と、基板12上の第1の磁性体層14と、第1の磁性体層14上に積層され、第1の磁性体層14と異なる材料で形成される中間層36と、中間層36上に積層される第1の磁性体層14と同じ材料の第2の磁性体層18とで形成されている。そして、中間層36が絶縁体膜32と金属膜34の積層構造である
磁性体層14を、絶縁体膜32からなる中間層を介して積層すると、磁性体層14内に生じる反磁界の影響を低減できる。そして、金属膜34からなる中間層を介して積層すると、中間層の上に形成される磁性体層14の柱状構造の乱れが抑制され透磁率の損失成分を低減できる。
このため、本実施の形態のように、磁性体層14と、絶縁体膜32と、金属膜34とを順に積層した積層構造とすると、特に磁気特性の優れた高周波用磁性材料を製造することができる。
なお、図5では、一層の中間層36を介して、第1の磁性体層14、第2の磁性体層18の2層が積層された構造を記載している。しかし、磁性体による、電磁波の放射効率の向上効果を得やすくするには、複数の中間層を介して、磁性体層を3層以上積層し、磁性体層の全体の膜厚をできるだけ厚くすることが好ましい。
このとき、上述したと同様の理由から、金属膜34の膜厚をb1、絶縁体膜32の膜厚をb2、磁性体層14一層の膜厚をaとする場合に、1nm≦b1≦500nm、1nm≦b2≦100nm、0.1≦a/(a+b2+b1)であることが望ましい。また、1nm≦b2≦5nm、であることがより望ましい。
a/(a+b2+b1)が0.1より小さいと、磁性体層の全体の膜厚が小さくなり、高周波用磁性材料30全体の透磁率が誘電率を下回り、磁性体による、電磁波の放射効率の向上効果が得にくくなるおそれがある。
本実施の形態の高周波用磁性材料の製造方法は、基板上に基板を回転させながら第1の磁性体層を堆積し、第1の磁性体層上に絶縁体膜を堆積し、絶縁体膜上に金属膜を堆積し、基板を回転させながら金属膜上に第1の磁性体層と同じ材料の第2の磁性体層を堆積することを特徴とする。
具体的には、例えば、基板12(図5)上に、基板12を回転させながら第1の磁性体層14である複合磁性膜をスパッタリング法、電子ビーム蒸着法等で堆積し成膜する。成膜時に基板を回転させ、成膜条件を制御することにより、基板12上に形成された複合磁性膜に、基板12の表面と平行な面内における磁気的な面内一軸異方性を効果的に付与することが可能となる。
次に、第1の磁性体層14上に、絶縁体膜32をスパッタリング法、電子ビーム蒸着法等で堆積し成膜する。
次に、絶縁体膜32上に、金属膜34を同様にスパッタリング法、電子ビーム蒸着法等で堆積し成膜する。
その後、基板12を回転させながら、金属膜34の上に、第1の磁性体層14と同じ材料の第2の磁性体層18である複合磁性膜をスパッタリング法、電子ビーム蒸着法等で堆積し成膜する。
このようにして、本実施の形態の高周波用磁性材料30が製造される。さらに、厚膜化するためには、第2の磁性体層18の上に絶縁体膜と金属膜の積層構造の中間層と、磁性体層とを繰り返し積層させればよい。
上述のように、本実施の形態の製造方法のように、磁性体層14と、絶縁体膜32と、金属膜34とを順に積層した積層構造とすると、特に磁気特性の優れた高周波用磁性材料を製造することができる。
この製造方法において、金属膜34の膜厚をb1、絶縁体膜32の膜厚をb2、磁性体層14一層の膜厚をaとする場合に、1nm≦b1≦500nm、1nm≦b2≦100nm、0.1≦a/(a+b2+b1)であることが望ましい
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態のアンテナは、給電端子と、一端に給電端子が接続されるアンテナエレメントと、このアンテナエレメントから放射される電磁波の伝送損失を抑制するための高周波用磁性材料を備えている。そして、この高周波用磁性材料が第1ないし第3の実施の形態に記載した高周波用磁性材料であることを特徴とする。したがって、以下、第1ないし第3の実施の形態で記載した高周波用電極材料に関する内容については重複するため省略する。
図6は本実施の形態のアンテナの斜視図、図7は断面図である。高周波用磁性材料40が、給電端子42が一端に接続されるアンテナエレメント44と、配線基板46との間に設けられている。この配線基板46は、例えば、携帯機器の配線基板であり、例えば、金属の筐体で囲まれている。
携帯機器のアンテナが電磁波を放射する際、アンテナと、携帯機器の筐体などの金属とが、一定以上に近接すると、金属内に生じる誘導電流により電磁波の放射が妨げられてしまう。しかし、本実施の形態のようにアンテナ近傍に高周波特性の優れた高周波用磁性材料40を配置することで、アンテナと、筐体などの金属とを近接させても、誘導電流が発生せず、電波通信を安定化でき、携帯機器を小型化しうる。
アンテナの放射効率を上げるためには、アンテナエレメント44に対して、高周波磁性材料40の上記定義によるHk1、Hk2方向を、図6に示すような配置とすることが望ましい。
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態の携帯電話は、第4の実施の形態のアンテナを具備している。図8は本実施の形態の携帯電話の斜視図である。携帯電話50は、アンテナエレメント44の近傍に高周波用磁性材料40を具備する。
図8において、配線基板の記載は省略したが、配線基板は、高周波磁性材料40を挟んで、アンテナエレメント44と反対側に存在するものとする。このように、携帯電話のアンテナに高周波用磁性材料40を配置することで、上述したように、電磁波の高い放射効率を維持しながら、携帯電話を小型化することができる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、高周波用磁性材料、これを用いたアンテナおよび携帯電話、高周波用磁性材料の製造方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる高周波用磁性材料、高周波用磁性材料の製造方法、アンテナおよび携帯電話等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての高周波用磁性材料、これを用いたアンテナおよび携帯電話、高周波用磁性材料の製造方法が、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
(実施例1)
高周波用磁性材料の作製には、マグネトロンスパッタ成膜装置を用いた。ターゲットには、Fe53.8Co23.0Nb3.220−SiO(磁性相中のBの割合yは20at%、磁性相となるFeCoNbBが93mol%すなわちx=0.93)を用いた。チャンバ内に公転型のホルダを配置し、ホルダ上にSiO基板を固定し、基板を15rpmの速度で公転させながら、チャンバ内をAr雰囲気中、0.67Pa(5×10−3torr)の圧力下でターゲットからのスパッタ粒子を基板表面に堆積して、厚さ500nmの複合磁性膜を成膜し、これを磁性体層とした。
さらに、マグネトロンスパッタ成膜装置を用い、前記磁性体層を15rpmの速度で公転させながら、チャンバ内をAr雰囲気中、0.67Pa(5×10−3torr)の圧力下でSiOターゲットからのスパッタ粒子を磁性体層に堆積して、磁性体層上に、厚さ5nmのSiO層を成膜し、中間層とした。
さらに、SiO層の上に、前記磁性体層と同様の膜を成膜することで、基板上に、500nm磁性体層、5nm中間層(絶縁体)、500nm磁性体層の積層構造を有する、高周波磁性用材料を作製した。
この高周波用磁性材料の表面について、CuKα線X線回折測定(XRD)をおこなった。測定結果を図9に示す。2θ=45°付近の、Feの(110)ピークの半値幅Fは、5.04°であり、非晶質であることがわかる。
この高周波用磁性材料について、透過型電子顕微鏡(TEM)で、基板の表面に平行な面内を2視野(2写真)観察した。1視野を図10に示す。この観察写真について、各観察写真の中心部100nm四方に相当する範囲に含まれる、すべての柱状体の底面の、最長径と最短径を測定し、それらすべての値の平均値を計算したところ、Dは10nmであった。また、各観察写真の中心部100nm四方から、それぞれ10個、計20個の柱状体をランダムに選出し、各柱状体と、それと隣接する柱状体との間隔を測定し、それらすべての値の平均値を計算したところ、Sは1.2nmであった。また、磁性相が占める面積の割合Pは90%であった。
この高周波用磁性材料について、振動試料型磁力計(VSM)を用いて、成膜時の基板回転と平行方向、および、基板回転と垂直方向について磁気特性(印加磁場に対する磁化の大きさ)を測定した。その結果を図11に示す。基板回転と平行方向において最小異方性磁界Hk1が0.561×10A/m、基板回転と垂直方向において最大異方性磁界Hk2が25.0×10A/mであった。
この高周波用磁性材料について、凌和電子製超高周波透磁率測定装置PMM−9G1を用い、1MHzから9GHzの範囲で、最大異方性磁界の方向に励磁して測定を行った。その結果を図12に示す。1GHzにおける透磁率実部μ’は42.6であり、1GHzにおける透磁率の損失成分を示す透磁率虚部μ”は0.767であり、磁気特性を示すμ”/μ’は、1GHzにおいて0.0180であった。以上の測定結果をまとめて表1に示す。
(実施例2)
中間層として、SiOの代わりに、Cuを5nm成膜したこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
(実施例3)
中間層として、SiOの代わりに、Cuを100nm成膜したこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
(実施例4)
中間層として、SiOの代わりに、Ptを5nm成膜したこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
(実施例5)
中間層として、SiOの代わりに、Ptを100nm成膜したこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
(実施例6)
中間層として、SiOの代わりに、Fe酸化物1nmを形成し、その上にCuを5nm成膜したこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
(実施例7)
中間層として、SiOの代わりに、Fe酸化物1nmを形成し、その上にCuを100nm成膜したこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
(実施例8)
中間層として、SiOの代わりに、Fe酸化物1nmを形成し、その上にPtを5nm成膜したこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
(実施例9)
中間層として、SiOの代わりに、Fe酸化物1nmを形成し、その上にPt100nm成膜したこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
(比較例1)
中間層を設けず、磁性体層の膜厚を1000nmにしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。その結果を表1に示す。
(比較例2)
x=0.75にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。磁性体層は柱状構造ではなく、グラニュラー構造となった。測定結果を表1に示す。
(比較例3)
x=0.75にし、中間層を設けず、磁性体層の膜厚を1000nmにしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定を行った。磁性相は柱状構造ではなく、グラニュラー構造となった。測定結果を表1に示す。
(比較例4)
成膜時、チャンバ内をAr雰囲気中、0.27Pa(2×10−3torr)の圧力下にしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定をおこなった。その結果を表1に示す。
(比較例5)
成膜時、チャンバ内をAr雰囲気中、0.27Pa(2×10−3torr)の圧力下にし、中間層を設けず、磁性体層の膜厚を1000nmにしたこと以外は、実施例1と同様にして成膜、測定をおこなった。その結果を表1に示す。
実施例1の高周波用磁性材料は、磁性相が非晶質で面内一軸異方性の柱状構造を有する膜厚500nmの磁性体層と、絶縁体からなる中間層の積層構造を有し、磁性体層の合計膜厚は1000nmであるが、表1から明らかなように、磁性体層の単層膜厚を1000nmにした比較例1に比べ、1GHzにおける透磁率実部と透磁率虚部の比(μ”/μ’)が小さく、高周波域において優れた磁気特性を有することがわかる。
また、実施例2〜5の高周波用磁性材料は、磁性相が非晶質で面内一軸異方性の柱状構造を有する膜厚500nmの磁性体層と、金属からなる中間層の積層構造を有し、磁性体層の合計膜厚は1000nmである。表1から明らかなように、磁性体層の単層膜厚を1000nmにした比較例1に比べ、1GHzにおける透磁率実部と透磁率虚部の比(μ”/μ’)が小さく、高周波域において優れた磁気特性を有することがわかる。
また、実施例6〜9の高周波用磁性材料は、磁性相が非晶質で面内一軸異方性の柱状構造を有する膜厚500nmの磁性体層と、絶縁体と金属の積層構造からなる中間層を有し、磁性体層の合計膜厚は1000nmである。表1から明らかなように、磁性体層の単層膜厚を1000nmにした比較例1に比べ、1GHzにおける透磁率実部と透磁率虚部の比(μ”/μ’)が小さく、高周波域において優れた磁気特性を有することがわかる。また、絶縁体または金属単層の中間層を有する実施例1〜5よりも優れた磁気特性を示す。
また、比較例2、3の高周波用磁性材料は、磁性体層がグラニュラー構造であり、中間層を介して膜厚500nmの磁性体層を積層し、磁性体層の全体の膜厚を1000nmにした比較例2と、中間層を介さず磁性体層の単層膜厚を1000nmにした比較例3とで、1GHzにおける透磁率実部と透磁率虚部の比(μ”/μ’)が同程度である。
比較例4、5の高周波用磁性材料は、磁気特性が、面内等方的である柱状構造を有しており、中間層を介して膜厚500nmの磁性体層を積層し、磁性体層の全体の膜厚を1000nmにした比較例4と、中間層を介さず磁性体層の単層膜厚を1000nmにした比較例5とで、1GHzにおける透磁率実部と透磁率虚部の比(μ”/μ’)が同程度である。
以上から、磁性体層と中間層を積層し磁気特性を向上させる効果は、面内一軸異方性の柱状構造を有する高周波用磁性材料にて顕著であることがわかる。
このように、本実施例により本発明の効果が確認された。
10 高周波用磁性材料
12 基板
14 第1の磁性体層
16 中間層
18 第2の磁性体層
20 高周波用磁性材料
22 磁性相
24 絶縁体相
26 中間層
30 高周波用磁性材料
32 絶縁体膜
34 金属膜
36 中間層
40 アンテナ
42 給電端子
44 アンテナエレメント
46 配線基板
50 携帯電話

Claims (11)

  1. 基板と、
    前記基板上の第1の磁性体層と、
    前記第1の磁性体層上の前記第1の磁性体層と異なる材料の中間層と、
    前記中間層上の前記第1の磁性体層と同じ材料の第2の磁性体層とを有し、
    前記磁性体層は、長手方向が前記基板の表面に対して垂直方向を向いた複数の柱状体を形成する非晶質の磁性相と、前記柱状体の間隙を充填する絶縁体相とから成る複合磁性膜であり、
    前記基板の表面に平行な面内の最小異方性磁界をHk1、最大異方性磁界をHk2とする場合に、Hk2/Hk1≧3、Hk2≧3.98×10A/mの面内一軸異方性を有することを特徴とする高周波用磁性材料。
  2. 前記中間層が絶縁体膜と金属膜との積層構造を有することを特徴とする請求項1記載の高周波用磁性材料。
  3. 前記金属膜の膜厚をb1、前記絶縁体膜の膜厚をb2、前記磁性体層一層の膜厚をaとする場合に、1nm≦b1≦500nm、1nm≦b2≦100nm、0.1≦a/(a+b2+b1)であることを特徴とする請求項2記載の高周波用磁性材料。
  4. 前記中間層が金属膜であり、前記金属膜の膜厚をb1、前記磁性体層一層の膜厚をaとする場合に、1nm≦b1≦500nm、0.1≦a/(a+b1)であることを特徴とする請求項1記載の高周波用磁性材料。
  5. 前記金属膜が、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、またはAuであることを特徴とする請求項2ないし請求項4いずれか一項に記載の高周波用磁性材料。
  6. 前記中間層が絶縁体膜であり、前記絶縁体膜の膜厚をb2、前記磁性体層一層の膜厚をaとする場合に、1nm≦b2≦100nm、0.7≦a/(a+b2)であることを特徴とする請求項1記載の高周波用磁性材料。
  7. 前記絶縁体膜が、SiO、Al、MgO、Fe酸化物、またはCo酸化物であることを特徴とする請求項2、請求項3または請求項6いずれか一項に記載の高周波用磁性材料。
  8. 給電端子と、
    一端に前記給電端子が接続されるアンテナエレメントと、
    前記アンテナエレメントから放射される電磁波の伝送損失を抑制するための高周波用磁性材料を具備するアンテナであって、
    前記高周波用磁性材料が、請求項1ないし請求項7いずれか一項に記載の高周波用磁性材料であることを特徴とするアンテナ。
  9. 請求項8記載のアンテナを具備することを特徴とする携帯電話。
  10. 基板上に前記基板を回転させながら第1の磁性体層を堆積し、
    前記第1の磁性体層上に絶縁体膜を堆積し、
    前記絶縁体膜上に金属膜を堆積し、
    前記基板を回転させながら前記金属膜上に前記第1の磁性体層と同じ材料の第2の磁性体層を堆積することを特徴とする高周波用磁性材料の製造方法。
  11. 前記金属膜の膜厚をb1、前記絶縁体膜の膜厚をb2、前記磁性体層一層の膜厚をaとする場合に、1nm≦b1≦500nm、1nm≦b2≦100nm、0.1≦a/(a+b2+b1)であることを特徴とする請求項10記載の高周波用磁性材料の製造方法。
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