JP2007073551A - 磁性多層膜及びその製造方法 - Google Patents

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Shinichi Furusawa
伸一 古澤
Hiroshi Sakurai
浩 櫻井
Hiromi Oike
弘美 尾池
Katsumasa Takano
勝昌 高野
Fumitake Ito
文武 伊藤
Takayuki Fukunaga
隆之 福長
Masakazu Takahashi
政和 高橋
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Abstract

【課題】 高周波で高い透磁率を実現することが可能であると共に、等方的な透磁率が得られ、複雑な磁場発生設備を使用しなくても作製することが可能である磁性多層膜を提供する。
【解決手段】 磁性金属から成る強磁性材料の薄膜11と、絶縁材料の薄膜12とを、交互に少なくとも2層以上積層した構造を有し、強磁性材料の薄膜11の各層の膜厚が10nm〜100nmの範囲内であり、絶縁材料の薄膜12の各層の膜厚が10nm〜100nmの範囲内であり、強磁性材料の薄膜11の膜面内の透磁率が等方性である磁性多層膜10を構成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高周波において高い透磁率を有する磁性多層膜及びその製造方法に関わり、例えばコイル等に用いて好適なものである。
GHz帯の高周波で高い透磁率を有する磁性膜を実現するためには、強磁性共鳴周波数frをGHz帯に引き上げる必要がある。
強磁性共鳴周波数frは、以下の式(1)で表される。
Figure 2007073551
(ただし、γはジャイロ磁気定数、M(emu/cc)は飽和磁化、H(Oe)は異方性磁界と呼ばれている磁気異方性に相当する磁界である。)
上記式(1)から、飽和磁化M又は異方性磁界Hを大きくすれば、強磁性共鳴周波数frが大きくなることがわかる。
飽和磁化Mは、物質によって決まってしまう。
そこで、強磁性共鳴周波数frを大きくするために、一軸異方性磁界Hに着目して、磁性膜の製膜中に磁場を印加する、又は磁性膜の製膜後に磁場中で熱処理を行うことにより、一軸異方性磁界を付与している(例えば特許文献1参照。)。
特開平5−326262号公報
しかしながら、外部磁場で異方性磁界を付与すると、等方的な透磁率が得られない。
また、上記特許文献1に記載されているような、異方性磁界を付与する製造方法は、磁場中での製膜を行う、又は磁場中で熱処理を行うために、複雑な磁場発生設備が必要となるという欠点がある。
上述した問題の解決のために、本発明においては、高周波で高い透磁率を実現することが可能であると共に、等方的な透磁率が得られ、複雑な磁場発生設備を使用しなくても作製することが可能である磁性多層膜及びその製造方法を提供するものである。
本発明の磁性多層膜は、磁性金属から成る強磁性材料の薄膜と、絶縁材料の薄膜とを、交互に少なくとも2層以上積層した構造を有し、強磁性材料の薄膜の各層の膜厚が10nm〜100nmの範囲内であり、絶縁材料の薄膜の各層の膜厚が10nm〜100nmの範囲内であり、強磁性材料の薄膜の膜面内の透磁率が等方性であるものである。
即ち、この磁性多層膜は、厚さxの強磁性材料Tの薄膜と厚さyの絶縁材料Iの薄膜とを繰り返し数nで交互に積層させたものであり、強磁性材料Tの薄膜の厚さx及び絶縁材料Iの薄膜の厚さyを、いずれも10nm〜100nmの範囲内としたものである。
本発明の磁性多層膜の構成により、強磁性材料Tの薄膜の厚さxが10nm以上100nm以下の範囲内であることにより、複合異方性磁界効果、表皮効果に基いて、膜面内で等方的透磁率を有すると共に、高いQ値(=μ′/μ″;複素透磁率の実数部分と虚数部分との比)がGHz高周波帯で実現される。
即ち、強磁性材料Tの薄膜の厚さxが10nm以上100nm以下の範囲内(メゾナノ領域)であるため、形状磁気異方性の効果により、強磁性材料Tの薄膜の膜面内に磁化容易軸がある。
一方、結晶磁気異方性に起因して、強磁性材料Tの薄膜の膜面内に磁化容易軸が存在している。
これら形状磁気異方性及び結晶磁気異方性の2種類の異方性磁界が存在することにより、いわゆるスヌーク限界を超える、高周波での高透磁率が実現される。
また、強磁性材料Tの薄膜の膜面内の結晶磁気異方性は、膜面内で均一に分布する。
そのため、膜面内で等方的透磁率が実現される。
表皮効果は、強磁性材料Tの薄膜の厚さを磁場侵入長以下にすることによって、渦電流損失の効果を軽減させる効果がある。
強磁性材料Tの薄膜の厚さが薄すぎると、結晶磁気異方性が低下して、強磁性共鳴周波数を低減させてしまう。
一方、強磁性材料Tの薄膜の厚さが厚すぎると、渦電流損失の効果が顕著となり、透磁率が減少してしまう。
従って、強磁性材料Tの薄膜の厚さxを10nm以上100nm以下の範囲内とすることにより、周波数GHz帯で等方的かつ高いQ値の透磁率の実現に寄与する最適な厚さの範囲となる。
さらに、絶縁材料Iの薄膜の厚さyが10nm以上100nm以下(メゾナノ領域)であることにより、以下の作用を有する。
(1)静磁気結合効果に基いて、GHz帯の強磁性共鳴を実現することが可能になる。
静磁気結合効果は、磁性膜を絶縁体で区切ることにより磁性膜に安定な180度磁区構造を実現させ、これにより、磁性膜の渦電流損失を低減させて、GHz帯の強磁性共鳴を実現するものである。
(2)強磁性材料の薄膜を電気的に絶縁することにより、渦電流損失の低減を実現する。
絶縁体の厚さが薄すぎると、磁性膜に安定な180度磁区を実現させにくく、磁性膜間の電気的絶縁ができない、等の要因から強磁性共鳴周波数の低下を招く。
一方、絶縁膜が厚すぎると、静磁気結合が弱くなり、安定な180度磁区が形成できず、やはり強磁性共鳴周波数の低下を招く。
従って、絶縁材料Iの薄膜の厚さyを10nm以上100nm以下の範囲内とすることにより、周波数GHz帯で等方的かつ高いQ値の透磁率の実現に寄与する最適な厚さの範囲となる。
また、好ましくは、強磁性材料の薄膜の各層の薄膜の膜面方向の磁気異方性が100[Oe]以下であり、100[emu/cc]以上の飽和磁化を有する構成とする。
また、好ましくは、2GHz以下の周波数領域で、磁性多層膜の透磁率の実数部μ´の虚数部μ″に対する比Qと、実数部μ´との積μ´Qが25以上である構成とする。
上述の本発明の磁性多層膜によれば、磁性金属から成る強磁性材料の薄膜と、絶縁材料の薄膜とを、交互に少なくとも2層以上積層した構造を有し、強磁性材料の薄膜の各層の膜厚が10nm〜100nmの範囲内であり、絶縁材料の薄膜の各層の膜厚が10nm〜100nmの範囲内であることにより、複合異方性磁界効果及び静磁気結合効果を利用して、強磁性共鳴周波数を1GHz以上と大きくすることができる。
これにより、本発明の磁性多層膜を使用して、例えばGHz帯の高周波のノイズを吸収するインダクターを構成することができる。
また、本発明の磁性多層膜では、強磁性材料の薄膜の膜面内における透磁率が等方的であるため、例えば、インダクター用に磁性膜を用いる場合に、どのような形状のインダクターであっても、その上に磁性膜を製膜することが可能であり、かつ一度のプロセスで製膜が可能である。
上述の本発明の磁性膜の製造方法によれば、GHz帯の高周波に対して高い透磁率を有する磁性膜を製造することができる。
また、磁場発生装置を全く用いないため、容易にかつ簡易な設備により、良好な磁気特性を有する磁性膜を製造することができる。
さらに、磁場を付与しないで製膜を行うことにより、強磁性材料の薄膜の膜面内における透磁率が等方的になる。これにより、例えば磁性膜をインダクターに使用する場合に、どのような形状のインダクターであっても、その上に磁性膜を製膜することが可能であり、かつ一度のプロセスで製膜が可能である。
即ち、本発明により、GHzの高周波帯において、等方的かつ低損失、高いQ値の透磁率を有する磁性膜を実現することが可能になる。
例えば、本発明に係る磁性多層膜を、インダクターの上に成膜した場合には、0.8GHzから2GHzの間の周波数において、空芯コイルと比較して10%以上インダクタンスを増大させることができる。
本発明の磁性多層膜の一実施の形態として、磁性多層膜の概略構成図を図1に示す。
この磁性多層膜は、基板1上に、FeCoから成る強磁性材料膜11と、SiOから成る絶縁材料膜12とが、交互に多層積層されて、磁性多層膜(積層膜)10が構成されている。
磁性多層膜10を構成する各層11,12内においては、原子や分子による層状の格子が間隔dで形成されている。
そして、強磁性材料膜11の膜厚x及び絶縁材料膜12の膜厚yの合計が、人工格子の周期Dとなり、この周期Dで強磁性材料膜11及び絶縁材料膜12が交互に積層されている。
この磁性多層膜10は、強磁性材料T(例えばFeCo)から成る強磁性材料膜11の膜厚をx[nm]とし、絶縁材料I(例えばSiO)から成る絶縁材料膜12の膜厚をy[nm]として、繰り返し数nとから、[T(x)/I(y)]と表すことができる。
繰り返し数nは、2以上とするが、より好ましくは10以上100以下とする。
また、本実施の形態の磁性多層膜10では、強磁性材料Tから成る強磁性材料膜11の膜厚xを10nm以上100nm以下の範囲内(メゾナノ領域)とすると共に、絶縁材料Iから成る絶縁材料膜12の膜厚yを10nm以上100nm以下の範囲内(メゾナノ領域)とする。
強磁性材料膜11のFeCo膜と、絶縁材料膜12のSiO膜との成膜は、それぞれFeCo及びSiOをターゲットとして、蒸着法又はスパッタリング法によって行うことができる。
また、それぞれの膜厚x,yは、投入電力と堆積時間の調整により、容易に制御することができる。
そして、強磁性材料膜11を10nm〜100nmの範囲内で成膜する工程と、絶縁材料膜12を10nm〜100nmの範囲内で成膜する工程とを、交互に(少なくとも2回以上)繰り返すことにより、磁性多層膜10を製造することができる。
また、図1の磁性多層膜10では、強磁性材料膜11としてFeCo膜を用い、絶縁材料膜12としてSiO膜を用いているが、強磁性材料膜及び絶縁材料膜にはその他の強磁性材料及び絶縁材料を使用することも可能である。
本発明の磁性多層膜による、複合異方性磁界効果及び静磁気結合効果は、厚さ10nm〜100nm(メゾナノ領域)の強磁性材料の薄膜と絶縁材料の薄膜との組み合わせによる人工格子に起因するものであり、強磁性材料や絶縁材料の種類によらず得られるものである。
強磁性材料膜11に用いられる強磁性材料としては、磁性金属から成る強磁性材料、即ち例えば、Fe,Co,Ni,Fe、遷移金属を含む強磁性合金、並びに強磁性化合物から選ばれる1種以上を使用することができ、例えば、従来から用いられているMnBi,MnCuBi,MnCo,GdCo,GdFe,TbFeCo,Fe等が挙げられる。
絶縁材料膜12に用いられる絶縁材料としては、例えば、SiO,Al,MgFから選ばれる1種以上を使用することができる。
なお、好ましくは、強磁性材料膜11の各層の膜面方向の磁気異方性が100[Oe]以下であり、100[emu/cc]以上の飽和磁化を有する構成とする。このような構成とすることにより、磁気異方性が100[Oe]と小さいことにより、膜面内で透磁率が等方性を有すると共に、飽和磁化が100[emu/cc]以上と大きいことにより、強磁性材料膜11の各層及び磁性多層膜10全体が充分な磁性を有する。
また、好ましくは、2GHz以下の周波数領域で、磁性多層膜10の透磁率の実数部μ´の虚数部μ″に対する比Qと、実数部μ´との積μ´Qが25以上である構成とする。このような構成とすることにより、2GHz以下の周波数領域で積μ´Qが25以上と大きいので、磁性多層膜10をインダクターとして用いた場合の性能が良好になる。
強磁性材料膜11の膜厚xが10nm以上100nm以下の範囲内(メゾナノ領域)であるため、形状磁気異方性の効果により、強磁性材料膜11の膜面内に磁化容易軸がある。
一方、結晶磁気異方性に起因して、強磁性材料膜11の膜面内に磁化容易軸が存在している。
これら形状磁気異方性及び結晶磁気異方性の2種類の異方性磁界が存在することにより、いわゆるスヌーク限界を超える、高周波での高透磁率が実現される。
また、強磁性材料膜11の膜面内の結晶磁気異方性は、膜面内で均一に分布する。
そのため、膜面内で等方的透磁率が実現される。
表皮効果は、強磁性材料膜11の膜厚xを磁場侵入長以下にすることによって、渦電流損失の効果を軽減させる効果がある。
強磁性材料膜11の膜厚xが薄すぎると、結晶磁気異方性が低下して、強磁性共鳴周波数を低減させてしまう。
一方、強磁性材料膜11の膜厚xが厚すぎると、渦電流損失の効果が顕著となり、透磁率が減少してしまう。
従って、強磁性材料膜11の膜厚xを10nm以上100nm以下の範囲内とすることにより、周波数GHz帯で等方的かつ高いQ値の透磁率の実現に寄与する最適な厚さの範囲となる。
さらに、絶縁材料膜12の膜厚yが10nm以上100nm以下の範囲内(メゾナノ領域)であることにより、静磁気結合効果に基いて、周波数GHz帯の強磁性共鳴を実現することが可能になる。また、絶縁材料膜12により強磁性材料膜11を電気的に絶縁することにより、渦電流損失を低減することができる。
絶縁材料膜12の膜厚yが薄すぎると、強磁性材料膜11に安定な180度磁区を実現させにくく、強磁性材料膜11間の電気的絶縁ができない、等の要因から強磁性共鳴周波数の低下を招く。
一方、絶縁材料膜12の膜厚yが厚すぎると、静磁気結合が弱くなり、安定な180度磁区が形成できず、やはり強磁性共鳴周波数の低下を招く。
従って、絶縁材料膜12の膜厚yを10nm以上100nm以下の範囲内とすることにより、周波数GHz帯で等方的かつ高いQ値の透磁率の実現に寄与する最適な厚さの範囲となる。
本実施の形態の磁性多層膜10では、強磁性材料膜11の膜面内で透磁率が等方的であるため、どのような形状のインダクターであっても、その上に磁性多層膜10を作製することが可能であり、かつ一度のプロセスで製膜が可能である。
ここで、様々な形状のインダクターに対して、本実施の形態の磁性多層膜10を形成した状態の平面図を図6A〜図6Cに示す。
図6Aは、導電線21を渦巻状に形成したスパイラルインダクターである。
図6Bは、導電線21をジグザクに折り返すように形成したミアンダーインダクターである。
図6Cは、直線状の導電線21から成るストリップラインである。
図6A〜図6Cに示すいずれのインダクターにおいても、磁性多層膜10は、インダクターを構成する導電線21に対して、その下又はその上に製膜する。
上述の本実施の形態の磁性多層膜10によれば、強磁性材料膜11と絶縁材料膜12とを交互に多層積層し、強磁性材料膜11の膜厚x及び絶縁材料膜12の膜厚yをいずれも10nm以上100nm以下の範囲内(メゾナノ領域)としていることにより、磁性多層膜10が、GHz帯の高い周波数に対して、高い透磁率を有すると共に、膜面内において等方的な透磁率が得られる。
そして、膜面内において等方的な透磁率を有するので、磁性多層膜10を製造する際に、異方性磁場を付与する必要がなくなるため、容易に磁性多層膜10を製造することが可能になり、製造設備を簡略化することができる。また、例えば、インダクター用に磁性膜を用いる場合に、どのような形状のインダクターであっても、その上に磁性多層膜10を製膜することが可能であり、かつ一度のプロセスで製膜が可能である。
また、本実施の形態の磁性多層膜10の上述した製造方法によれば、強磁性材料膜11を10nm以上100nm以下の範囲内の膜厚で成膜する工程と、絶縁材料膜12を10nm以上100nm以下の範囲内の膜厚で成膜する工程とを交互に繰り返すことにより、磁場中の製膜や磁場中熱処理を行わなくても、GHz帯の高周波に対して高い透磁率を有する磁性多層膜10を製造することが可能になる。
そして、異方性磁場を付与しないため、容易に磁性多層膜10を製造することができると共に、製造設備を簡略化することができる。
次に、実際に本発明に係る磁性多層膜を作製して、その特性を調べた。
(実験1)
FeCoから成る強磁性材料膜11と、SiOから成る絶縁材料膜12とを、交互に繰り返し、全層厚を1μm〜4μmとして積層することにより、図1に示した構成の磁性多層膜10を作製した。
そして、SiOから成る絶縁材料膜12の膜厚yを96nmに固定し、FeCoから成る強磁性材料膜11の膜厚xを変化させて、それぞれ磁性多層膜10の試料を作製した。
磁性多層膜10の各試料に対して、それぞれ周波数を1GHz,2GHz,3GHzとした場合の磁性多層膜10の透磁率を測定した。
測定結果を図2A〜図2Cに示す。図2Aは、強磁性材料膜11の膜厚xとQの値との関係を示し、図2Bは、膜厚xとμ´の値との関係を示し、図2Cは、膜厚xとμ´Qの値との関係を示している。
図2A〜図2Cより、強磁性材料膜11の膜厚xを10nm〜100nmの範囲内とすれば、1GHz及び2GHzの周波数において、比較的大きい透磁率が得られることがわかる。
(実験2)
次に、FeCoから成る強磁性材料膜11の膜厚xを12nmに固定し、SiOから成る絶縁材料膜12の膜厚yを変化させて、その他は上述した実験1と同様にして、図1に示した構成の磁性多層膜10の試料を作製した。
磁性多層膜10の各試料に対して、それぞれ周波数を1GHz,2GHz,3GHzとした場合の磁性多層膜の透磁率を測定した。
測定結果を図3A〜図3Cに示す。図3Aは、絶縁材料膜12の膜厚yとQの値との関係を示し、図3Bは、膜厚yとμ´の値との関係を示し、図3Cは、膜厚yとμ´Qの値との関係を示している。
図3A〜図3Cより、絶縁材料膜12の膜厚yを10nm〜100nmの範囲内とすれば、1GHz及び2GHzの周波数において、比較的大きい透磁率が得られることがわかる。
ところで、磁性多層膜をインダクターとして用いた場合の性能は、透磁率の実数部μ´が大きいほど、またQが大きいほど、良好になる。
従って、総合的指標は、両者の積μ´Qで表される。
本発明に係るメゾナノ構造(膜厚10nm以上100nm以下の強磁性材料の薄膜及び絶縁材料の薄膜を交互に積層した構造)を有する磁性多層膜は、2GHz以下でμ´Qが25以上を有する。
図2C及び図3Cより、これらの試料では、膜厚x,yが10nm〜100nmの範囲内において、2GHz以下で積μ´Qが25以上となっていることがわかる。
また、本発明に対する比較例として、磁性金属であるFeCoPd合金薄膜により、膜厚160nmの磁性膜を作製し、透磁率を測定した。
測定結果を図4に示す。図4は、周波数(MHz)とQ値との関係を示している。
図4より、0.1GHz付近で高いQ値が得られているが、強磁性共鳴周波数が1GHz以下であり、GHz帯の高い周波数では高いQ値が得られないことがわかる。
即ち、磁性金属層のみで構成した磁性膜では、GHz帯の高い周波数において高いQ値を得ることができない。
(実験3)
スパイラル状のコイルの上に、FeCoから成る強磁性材料膜11の膜厚xを96nmとして、SiOから成る絶縁材料膜12の膜厚yを24nmとして、これらの膜を交互に積層することにより、図1に示した構成の磁性多層膜10を作製した。
そして、磁性多層膜10の全層厚を1μmから4μmと変えて、それぞれ磁性多層膜10を用いたインダクターの試料を作製した。
それぞれのインダクターの試料に対して、周波数を10MHz〜100MHz(1GHz)の範囲で変化させてインダクタンスを測定した。
また、空芯コイルの場合も同様にインダクタンスを測定した。
測定結果を図5に示す。曲線Iがn=1の場合を示し、曲線IIがn=4の場合を示し、曲線III が空芯コイルの場合を示している。
スパイラルコイルの等価回路は、一般にインダクタンスL[H]のコイルとR[Ω]の抵抗の直列接続部分とキャパシタンスC[F]のコンデンサー部分の並列接続で表すことができる。このとき、複素インピーダンスZは、角振動数をω[rad/s]とすると、以下の式(2)で表される。
Figure 2007073551
この実験3で使用したようなスパイラル状のコイルは、インダクタンスLが数nH程度であり、固有共振周波数が数GHz程度であり、抵抗Rが数Ω程度であるので、スパイラル状のコイルの固有共振周波数(数GHz)よりも充分に小さい周波数(10MHz)のとき、式(2)は次のような式で近似される。
Figure 2007073551
実験3で作製したインダクターの実装例の構成では、式(3)を仮定してインダクタンスを求めており、周波数10MHzにおけるインダクタンスが実装例のインダクタンスと考えることができる。
スパイラル状のコイルのインダクタンスは、実装された磁性膜の透磁率に比例するので、磁性膜の強磁性共鳴周波数以下で、インダクタンスは一定である。
一方、本発明の磁性多層膜の強磁性共鳴周波数は2GHz以上である。
従って、図5において、10MHzにおけるインダクタンス値は、2GHzにおけるインダクタンス値とほぼ等しいと考えることができる。
図5より、図1に示した磁性多層膜10をコイル上に形成してインダクターを構成することにより、周波数10MHzにおいて、空芯コイルと比較して、10%以上インダクタンスが増大している。
これらのことから、図1に示した磁性多層膜10をコイル上に形成してインダクターを構成することにより、周波数0.8GHz〜2GHzの間においても、空芯コイルと比較して、インダクタンスを10%以上増大させることができることがわかる。
即ち、本発明の磁性多層膜は、強磁性共鳴周波数が1GHz以上であって、コイル等のインダクター上に成膜された場合、0.8GHz〜2GHzの間で、空芯コイルに比べて10%以上インダクタンスが大きくなる。
(実験4)
次に、強磁性材料膜の材料を変えて、磁性多層膜の特性を比較した。
SiOから成る絶縁材料膜12の膜厚yを96nmに固定し、強磁性材料膜11の膜厚xを12nmに固定して、強磁性材料膜11の材料を変えて、それぞれ図1に示した磁性多層膜10の試料を作製した。強磁性材料膜11の材料としては、Co,Co70Fe30,Fe70Co30の3種類を使用した。
作製した磁性多層膜10の各試料に対して、それぞれ周波数を1GHz,2GHz,3GHzとした場合の磁性多層膜10の透磁率を測定した。
測定結果を表1に示す。表1は、強磁性材料膜11のそれぞれの膜構成について、各周波数における、μ´,μ″,Q,μ´Qの各値を示している。
Figure 2007073551
表1より、いずれの材料も、2GHz以下の周波数領域で積μ´Qが25以上と大きくなっており、磁性多層膜10をインダクターとして用いた場合の性能が良好になる。
そして、3つの材料の中で、特に、Fe70Co30は、2GHz及び3GHzの高い周波数における積μ´Qが大きいことから、2GHz以上の高周波帯における性能が優れていることがわかる。
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
本発明に係る磁性膜は、例えば、インダクター、通信機器からの漏れ電波を抑制する電磁波吸収材料として使用することが可能である。
本発明の一実施の形態の磁性多層膜の概略構成図である。 A〜C 強磁性材料膜の膜厚と透磁率との関係を示す図である。 A〜C 絶縁材料膜の膜厚と透磁率との関係を示す図である。 金属磁性膜により形成した磁性膜における周波数と透磁率(Q値)との関係を示す図である。 スパイラル状のコイルの上に磁性膜を形成したインダクターのインダクタンスの測定結果を示す図である。 A〜C インダクターの上に磁性膜を製膜した状態の平面図である。
符号の説明
1 基板、10 磁性多層膜、11 強磁性材料膜、12 絶縁材料膜、21 導電線

Claims (4)

  1. 磁性金属から成る強磁性材料の薄膜と、絶縁材料の薄膜とを、交互に少なくとも2層以上積層した構造を有し、
    前記強磁性材料の薄膜の各層の膜厚が、10nm〜100nmの範囲内であり、
    前記絶縁材料の薄膜の各層の膜厚が、10nm〜100nmの範囲内であり、
    前記強磁性材料の薄膜の膜面内の透磁率が等方性である
    ことを特徴とする磁性多層膜。
  2. 前記強磁性材料の薄膜の各層の薄膜の膜面方向の磁気異方性が100[Oe]以下であり、100[emu/cc]以上の飽和磁化を有することを特徴とする請求項1に記載の磁性多層膜。
  3. 2GHz以下の周波数領域で、透磁率の実数部μ´の虚数部μ″に対する比Qと、実数部μ´との積μ´Qが25以上であることを特徴とする請求項1に記載の磁性多層膜。
  4. 磁性金属から成る強磁性材料の薄膜を、10nm〜100nmの範囲内の膜厚で成膜する工程と、
    絶縁材料の薄膜を、10nm〜100nmの範囲内の膜厚で成膜する工程とを、
    交互に少なくとも2回以上繰り返して磁性多層膜を形成する
    ことを特徴とする磁性多層膜の製造方法。
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JP2020515098A (ja) * 2016-12-22 2020-05-21 ロジャーズ コーポレーション 多層磁気誘電材料

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