JP2019102709A - 軟磁性金属薄膜および薄膜インダクタ - Google Patents

軟磁性金属薄膜および薄膜インダクタ Download PDF

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【課題】 電気抵抗が高く、保磁力が低く、かつ、透磁率が高く透磁率の指向性が小さく面内等方性が良好である軟磁性金属薄膜を得る。【解決手段】 柱状磁性粒子および柱状磁性粒子同士の間にある粒界相からなる軟磁性金属薄膜である。柱状磁性粒子がアモルファス構造を有する。柱状磁性粒子が、Fe,CoまたはNiから選択される少なくとも1種以上、および、Si,B,C,P,Ti,Nb,Ta,Zr,HfおよびYから選択される少なくとも1種以上を含有する。粒界相が酸化物または窒化物を含有する。【選択図】 図2

Description

本発明は、軟磁性金属薄膜および薄膜インダクタに関する。
近年の電子デバイスの低背化要求に対応するため、インダクタ等の磁気デバイスの磁芯材料などに用いられる軟磁性金属薄膜材料の技術が開発されている。軟磁性金属薄膜は、薄膜形状由来の面直方向(薄膜の厚み方向に平行な方向)への大きな異方性磁界および金属磁性体由来の大きな飽和磁化を有するため、高周波帯で使用される磁気デバイスの磁芯として期待されている。
しかし、従来の軟磁性金属薄膜は電気抵抗が低いため渦電流損失が大きくなるとうい欠点があった。また、高周波での磁壁共鳴を避けるために、面内方向(薄膜の厚み方向に垂直な方向)に一軸異方性を誘導し、面内の磁化困難軸方向に高周波磁界を印加して使用するのが一般的であった。この場合には、軟磁性金属薄膜の透磁率が強い面内指向性を持つため、磁気デバイスの設計における制約が大きくなる欠点があった。
上記の問題に対応するため、例えば、特許文献1では、非磁性絶縁層中に柱状磁性粒子が面直配向して分散した構造の薄膜を用いている。この場合には柱状磁性粒子間を絶縁できるため電気抵抗を向上させることができる。さらに、柱状磁性粒子はそれ自体が形状異方性を有するため、柱状粒子を面直方向に配向させることにより面内全方向が困難軸となるため、透磁率の面内指向性を小さくすることができる。
国際公開第2005/086184号パンフレット
現在では、軟磁性金属薄膜材料を実用化させるために、さらなる高透磁率化および低損失化を達成することが求められている。なお、低損失化を実現する方法としては、保磁力を低減することが考えられる。
本発明は、電気抵抗が高く、保磁力が低く、かつ、透磁率が高く透磁率の面内指向性が小さく面内等方性が良好である軟磁性金属薄膜を得ることを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明の軟磁性金属薄膜は、
柱状磁性粒子および前記柱状磁性粒子同士の間にある粒界相からなる軟磁性金属薄膜であって、
前記柱状磁性粒子がアモルファス構造を有し、
前記柱状磁性粒子が、Fe,CoまたはNiから選択される少なくとも1種以上、および、Si,B,C,P,Ti,Nb,Ta,Zr,HfおよびYから選択される少なくとも1種以上を含有し、
前記粒界相が酸化物または窒化物を含有することを特徴とする。
本発明の軟磁性金属薄膜は、上記の特徴を有することにより、電気抵抗が高く、保磁力が低く、かつ、透磁率が高く透磁率の面内指向性が小さい軟磁性金属薄膜を得ることができる。
前記粒界相がLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,TbおよびDyから選択される少なくとも1種以上の元素の酸化物を含有してもよい。
前記柱状磁性粒子の軸芯が互いに略平行であってもよい。
前記柱状磁性粒子の軸芯が薄膜の厚み方向に略平行であってもよい。
前記柱状磁性粒子の軸芯に略垂直な前記柱状磁性粒子の横断面の平均円相当径が10nm以上100nm以下であってもよい。
前記軟磁性金属薄膜は厚さが100nm以上10,000nm以下であってもよい。
本発明の薄膜インダクタは、前記軟磁性金属薄膜と、導体パターンと、を有する。
図1Aは薄膜インダクタの斜視図である。 図1Bは薄膜インダクタの平面透視図である。 図2は軟磁性金属薄膜の概略図である。 図3は軟磁性金属薄膜の厚み方向に垂直な断面のTEM写真である。 図4は図3の測定部(p1)における電子線回折パターンである。
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
本実施形態に係る薄膜インダクタ1は図1Aおよび図1Bに示すようにコイル2を有する。コイル2の引出部の記載は省略している。そして、コイル2が軟磁性金属薄膜11で被覆されている。
図1Aおよび図1Bに記載の軟磁性金属薄膜11の透磁率の面内指向性が大きい場合には、透磁率が高い方向以外の方向の磁界は利用することが困難となる。例えばα方向のみ透磁率が高い場合には、α方向に略平行な方向以外の方向の磁界は利用することが困難となる。
これに対し、本実施形態に係る軟磁性金属薄膜11は透磁率の面内指向性が小さい。すなわち、面内等方性が良好である。このため、α方向、β方向など厚み方向に略垂直な全ての方向の磁界を利用することができる。そして、薄膜インダクタ1のインダクタンスを向上させることができる。
軟磁性金属薄膜11は図2に示すように柱状磁性粒子12および柱状磁性粒子同士の間にある粒界相13からなる。
ここで、柱状磁性粒子12は棒状またはそれに近い円柱または楕円体のような柱状構造を有する。
柱状磁性粒子12の重心を通過する長手方向の仮想線を軸芯とする。図2に示すように柱状磁性粒子12の軸芯が互いに略平行な向きであることが好ましい。軸芯が互いに略平行な向きであるとは、軟磁性薄膜合金11に含まれる軸芯のなす角の角度の範囲が±90°以下であることを指す。
さらに、図2に示すように柱状磁性粒子12の軸芯が軟磁性金属薄膜11の厚み方向に略平行であることが好ましい。柱状磁性粒子12の軸芯が軟磁性金属薄膜11の厚み方向に略平行であるとは、軟磁性薄膜合金の厚み方向と柱状磁性粒子12とのなす角の角度の範囲が±45°以下であることを指す。
柱状磁性粒子12の形状を確認する方法には特に制限はない。たとえば、TEMやSTEM、HAADF−STEM等を用いて軟磁性金属薄膜11の厚み方向に平行な断面の断面写真および垂直な断面の断面写真を観察し、必要に応じてEDX、EELS等により組成分布を測定することで確認することができる。観察倍率は任意であるが、100,000〜2,000,000倍とすることができる。
例えば、軟磁性金属薄膜11が図2に示す構造を有する場合には、軟磁性金属薄膜11の厚み方向に平行な断面の断面写真では、軟磁性金属薄膜11全体において、軟磁性金属薄膜11の厚み方向に沿って多数の筋が入った形状に見える場合がある。TEMやSTEMでは観察している断面より奥に入った部分の情報も拾ってしまうため、柱状磁性粒子12および粒界相13の区別が明確にはつかない場合がある。それでも、軟磁性金属薄膜11の厚み方向に沿って多数の筋が入った形状に見えることで、柱状磁性粒子12の軸芯が軟磁性金属薄膜11の厚み方向に略平行であること、および柱状磁性粒子12の軸芯が互いに略平行な向きであることは十分に確認できる。また、軟磁性金属薄膜11の厚み方向に垂直な断面の断面写真で柱状磁性粒子12の横断面の形状が分かる。例えば、柱状磁性粒子12の横断面の形状が円形であれば柱状磁性粒子12が円柱状であることが分かる。
本実施形態に係る軟磁性金属薄膜11は柱状磁性粒子12の横断面の平均円相当径が10nm以上100nm以下であることが好ましい。なお、柱状磁性粒子12の横断面の円相当径とは、柱状磁性粒子12の横断面の面積と同一面積である円の直径を指す。なお、軟磁性金属薄膜11が図2に示す構造を有する場合には、柱状磁性粒子12の軸芯方向の長さが軟磁性金属薄膜11の厚みと実質的に一致する。なお、軟磁性金属薄膜11の厚みは100nm以上10,000nm(10μm)以下であることが好ましい。
柱状磁性粒子12はアモルファス構造を有する。すなわち、柱状磁性粒子12は結晶構造を有さない。本実施形態では、柱状磁性粒子12がアモルファス構造を有するか否かは、電子線回折(ED)およびX線回折(XRD)で確認することができる。
本実施形態において柱状磁性粒子12がアモルファス構造を有するとするためには、微視的に見た場合に特定の柱状磁性粒子12がアモルファス構造を有することが、電子線回折で確認できる必要がある。さらに、巨視的に見た場合に大多数の柱状磁性粒子12がアモルファスであることが、X線回折パターンで確認できる必要がある。
電子線回折を用いて微視的に見た場合に特定の柱状磁性粒子12がアモルファス構造を有することを確認する方法について図面を用いて説明する。まず、軟磁性金属薄膜11の厚み方向に垂直な断面のTEM断面写真を撮影する。TEM断面写真の例が図3である。図3では、断面が略円形である柱状磁性粒子の存在が確認できる。柱状磁性粒子の前記断面において、略中央部に設定した測定部(p1)におけるビーム径5nmでの電子線回折パターンが図4である。図4では、回折斑点が存在しない。回折斑点が存在しない柱状磁性粒子はアモルファス構造を有するとする。なお、図3および図4は後述する実施例1である。
X線回折パターンを用いて巨視的に見た場合に大多数の柱状磁性粒子12がアモルファスであることを確認する方法について説明する。巨視的に見た場合に膜中の大多数の柱状磁性粒子12がアモルファスであることを確認するには軟磁性金属薄膜11の膜面のX線回折パターンを測定すればよい。X線回折パターンの測定範囲は、例えば数mm四方程度とする。当該X線回折パターンにより磁性元素を含む結晶(磁性元素結晶)に由来する回折ピークが得られず、かつ、磁性元素を含むアモルファスに由来するハローパターンのみが得られれば、軟磁性金属薄膜11に含まれる大多数の柱状磁性粒子12がアモルファスであることを確認することができる。
また、軟磁性金属薄膜11全体における柱状磁性粒子12および粒界相13の存在比率は任意である。たとえば、柱状磁性粒子12:粒界相13が原子数比で1.1:0.9〜1.3:0.7であってもよい。
以下、柱状磁性粒子12および粒界相13の組成について説明する。
柱状磁性粒子12は、Fe,CoおよびNiから選択される少なくとも1種以上を含有する。以下、Fe,CoおよびNiを磁性元素と呼ぶことがある。磁性元素を含むことで、各柱状磁性粒子12が磁性を有する粒子となる。また、磁性元素の含有量は任意である。例えば、軟磁性金属薄膜11全体を100at%として30at%以上60at%以下であってもよい。また、本実施形態に係る軟磁性金属薄膜11は磁性元素として特にCoを含有することが好ましい。具体的には、Fe,CoおよびNiの合計を100at%として、70at%以上がCoであることが好ましい。
柱状磁性粒子12は、さらに、Si,B,C,P,Ti,Nb,Ta,Zr,HfおよびYから選択される少なくとも1種以上を含有する。柱状磁性粒子12が上記の元素を含有する場合には、柱状磁性粒子12がアモルファス構造を有しやすくなる。以下、Si,B,C,P,Ti,Nb,Ta,Zr,HfおよびYをまとめて非晶質化成分元素と呼ぶことがある。磁性元素全体に対してFeを70at%以上含有する場合には、非晶質化成分元素としてBを含むことが好ましい。この場合のBの含有量は任意であるが、Feに対して3at%以上15at%以下、含有することが好ましい。
また、粒界相13は、酸化物または窒化物を含有する。酸化物または窒化物は絶縁性を有するため、粒界相13によって柱状磁性粒子12が絶縁される。
粒界相13に含有される酸化物または窒化物の種類には特に制限はないが、La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,TbおよびDyから選択される少なくとも1種以上の元素の酸化物を含有することが好ましい。La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,TbおよびDyから選択される少なくとも1種以上の元素は、上述した磁性元素と混合しにくく分離しやすい金属元素である。また、磁性元素および非晶質化成分元素と比較して酸化しやすく酸化物が安定である。以下、La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,TbおよびDyを酸化物形成元素と呼ぶことがある。また、酸化物形成元素としてLa,Ce,Pr,SmおよびEuから選択される1種以上を用いることが電気抵抗を向上させる観点から好ましい。なお、酸化物形成元素の窒化物または酸化物形成元素以外の元素の酸化物、窒化物を粒界相13に含有してもよい。酸化物形成元素以外の元素の酸化物、窒化物の例としては、AlやBの窒化物などが挙げられる。なお、Bについては柱状磁性粒子12と粒界相13との両方に含有される場合がある。
軟磁性金属薄膜11が図2に示す構造を有する場合には、特に軟磁性金属薄膜11の面内方向、すなわち軟磁性金属薄膜11の厚み方向に垂直な方向においては、柱状磁性粒子12同士の間に酸化物または窒化物を含む粒界相13が存在する。したがって、面内方向における電気抵抗を上昇させることができ、渦電流損失を低下させることができる。また、磁性粒子が柱状であるため形状異方性により超常磁性転移が抑制される。さらに、柱状磁性粒子12の軸芯が互いに略平行であり、柱状磁性粒子12の軸芯が軟磁性金属薄膜11の厚み方向に略平行であるため、透磁率の面内指向性が小さくなる。すなわち、面内において高周波励磁の方向が異なる場合の透磁率の差が小さくなる。さらに、柱状磁性粒子12の形状、特にアスペクト比を制御することで共鳴周波数を制御することができる。
さらに、柱状磁性粒子12がアモルファス構造を有することで、柱状磁性粒子12の内部において、柱状磁性粒子12が結晶構造を有する場合には存在していた結晶磁気異方性が実質的に消滅する。このため、個々の柱状磁性粒子12における保磁力が低下し、軟磁性金属薄膜11全体の保磁力が低下する。さらに、軟磁性金属薄膜11全体の透磁率が向上する。そして、保磁力の低下に伴い、ヒステリシス損失も低下する。
以下、スパッタリングおよび熱処理による本実施形態に係る軟磁性金属薄膜11の製造方法について説明する。
軟磁性金属薄膜11の原料として、まずターゲット材を用意する。ターゲット材の種類は任意である。軟磁性金属薄膜11に含ませる各元素の単体からなるターゲット材を複数用意してもよく、各元素を含む合金ターゲット材を用意してもよい。また、Al(アルミナ)やBN(窒化ホウ素)などをターゲット材として用いてもよい。
ターゲット材は、保管中に表面から酸化する。特に、Rなどの希土類元素ターゲット材を使用する場合は酸化の速度が速い。そのため、これらのターゲット材の使用前には、スパッタリングを十分に行い、ターゲット材の清浄表面を出しておくこと必要がある。
スパッタリングにて成膜を行う基材は任意であり、各種金属、ガラス、シリコン、セラミックスなどを選択し、使用することができる。ただし、所望の組織を得るために後述する熱処理を行う必要上、熱処理温度よりも高融点な材料を使用することが望ましい。また、生成膜と基材との密着性が不足する場合があるため、CrやTi、Ta、Moなどの下地膜を基材に設けることで密着性を向上させてもよい。
スパッタリングを行う成膜装置は、スパッタリング工程では酸素や窒素等の不純物元素を極力低減することが望ましいため、10−3Pa以下、より好ましくは10−5Pa以下となるまで真空槽が排気されていることが望ましい。ターゲット材として各種酸化物または窒化物を用いる場合があるが、この場合でもターゲット材由来ではない酸素または窒素は極力低減することが望ましい。なお、スパッタリング中の温度には特に制限はない。
高い真空状態を保つため、成膜室とつながった基材導入室を有することが望ましい。また、ターゲット材の使用前には、スパッタリングを十分に行い、ターゲット材の清浄表面を出しておく必要があるため、成膜装置は、基材とターゲット材の間に真空状態で操作可能な遮蔽機構を有することが望ましい。
上述したターゲット材および基材を用いて、スパッタリングにより金属薄膜を成膜することができる。
ここで、スパッタリングによる金属薄膜の成膜時には、上記の磁性元素、非晶質化成分元素および酸化物形成元素が均等に成膜されない。磁性元素および非晶質化成分元素と、酸化物形成元素,Al,OおよびNと、が互いに混合しにくい特徴がある。すなわち、基板上に最初に磁性元素または非晶質化成分元素が付着した部分については、磁性元素または非晶質化成分元素のみが次々に付着しやすい。他方、最初に酸化物形成元素,Al,OおよびNが付着した部分については、酸化物形成元素,Al,OおよびNが次々に付着しやすい。その結果、得られる金属薄膜は主に軟磁性金属元素および非晶質化成分元素からなり軸芯方向が金属薄膜の厚み方向に略平行な柱状の部分が存在しやすい。そして、当該柱状の部分同士の間には主に酸化物形成元素およびその他の元素からなる部分が存在しやすい。なお、前記酸化物形成元素およびその他の元素からなる部分において、酸化物形成元素はその他の元素と化合物を形成している場合もあり、単体として存在している場合もある。また、Bについては金属薄膜全体に存在している。Bは実質的に全量が軟磁性金属元素と合金を形成している場合もあり、Bの一部が軟磁性金属元素と合金を形成しBの残部がN、Oなどと化合物を形成することにより相分離している場合もある。
次に、成膜段階で意図的にNおよびOを含有させていない場合は、成膜により得られた金属薄膜に熱処理を行う。熱処理を行うことで、上記の各元素間の混合しやすさの違いによる相分離がさらに進行し、最終的に得られる軟磁性金属薄膜11は柱状磁性粒子12および粒界相13を含有する。この際に、雰囲気中に酸素を導入することで、スパッタリングの段階では酸化物や窒化物を形成していなかった酸化物形成元素を酸化させ、酸化物とすることができる。一方、磁性元素および非晶質化成分元素は実質的に酸化しない。
成膜段階で意図的にNおよび/またはOを含有させている場合は、成膜により得られた金属薄膜に対して熱処理を行うときに酸素を導入しなくても相分離がさらに進行し、最終的に得られる軟磁性金属薄膜11は柱状磁性粒子12および粒界相13を含む。雰囲気中に導入する酸素については酸化物形成元素のみを酸化させ磁性元素を酸化させない濃度に制御すればよい。また、酸素導入量が少量で良い場合には真空中で熱処理し、その際の真空度を制御することにより酸化の度合いを制御しても良い。
ここで、熱処理温度は250℃以上450℃以下とすることが好ましい。熱処理温度が低すぎる場合には上記の相分離および酸化が十分に進行しない。また、熱処理温度が高すぎる場合には、柱状磁性粒子12が結晶化してしまう。なお、熱処理時間は任意である。例えば15分以上90分以下とすることができる。また、非晶質化成分元素を含有しない場合には、熱処理温度が上記の範囲内であっても、最終的に得られる軟磁性金属薄膜の柱状磁性粒子が結晶化してしまう場合がある。
なお、酸化物形成元素は用いなくてもよい。しかし、酸化物形成元素を用いない場合には、磁性相と粒界相との相分離が不十分で磁性相間絶縁が不完全になるため、酸化物形成元素を用いる場合と比較して電気抵抗が小さくなる。さらに、相分離が不十分となるため、面内での透磁率の指向性が大きくなる傾向にある。
なお、酸化物形成元素,Al,OおよびNを全く含有しない場合には、相分離していない均一な軟磁性金属薄膜が得られる。この場合には電気抵抗が著しく小さくなり面内での透磁率の指向性が著しく大きくなる。
なお、本実施形態に係る軟磁性金属薄膜は図1に示す薄膜インダクタ以外の用途にも用いることが可能である。例えば、電磁波吸収材,磁気センサーなどの用途に用いることができる。
また、図1に示す薄膜インダクタの製造方法は任意である。例えば、本実施形態に係る軟磁性金属薄膜11とコイル2を形成する導体パターンとを適宜積層させて製造することができる。また、導体パターンは必ずしも軟磁性金属薄膜で被覆されていなくてもよい。導体パターンは、導体パターン自身に流れる電流により軟磁性金属薄膜の面内方向に励磁される位置にあればよい。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に制限されない。
(実施例1〜17および比較例2)
実施例1〜17および比較例2では、まずスパッタリングにより、最終的に得られる軟磁性金属薄膜の平均組成が下表1に記載する平均組成となる金属薄膜(厚み500nm)を形成した。
軟磁性金属薄膜の原料として、まずターゲット材を用意した。実施例1〜17および比較例2では、ターゲット材として下表1に示す磁性成分元素と非晶質化成分元素からなるターゲット材と酸化物形成元素からなる厚さ1mmのチップを用意した。また、ターゲット材の使用前には、スパッタリングを十分に行い、ターゲット材の清浄表面を出しておく処理を行った。
本実施例および比較例では、スパッタリングにて成膜を行う基材として熱酸化膜付Siを用いた。
スパッタリングを行う成膜装置は、5×10−4Pa以下となるまで真空槽を排気した。
上述したチップを設置したターゲット材および基材を用いて、スパッタリングにより金属薄膜を成膜した。
次に、成膜後の金属薄膜を熱処理炉にセットし、雰囲気中に酸素を導入し、酸素濃度が体積比で1%〜10%となるように毎分2リットルの速度で流した。そして、350℃に加熱して60分間、熱処理を行うことで、実施例1〜17および比較例2の軟磁性金属薄膜を得た。なお、実施例1〜17および比較例2では、熱処理後の軟磁性金属薄膜の酸素含有量はSTEM−EDXを用いて確認した。
(実施例18および19)
実施例18および19は、平均組成が異なる点、および、スパッタリング後に酸素を導入せずに熱処理を行う点以外は実施例1〜17および比較例2と同条件で金属薄膜を作製した。なお、実施例18ではスパッタリング後の段階でAlが粒界相を形成している。なお、下記の表1ではAl:Oが2:3からずれているが、これは表1では小数点1桁目を四捨五入していることに伴うものである。しかし、実施例19ではスパッタリング後の段階では単相である。熱処理により窒化ホウ素が他の元素と相分離し、粒界相を形成する。残りのBが柱状磁性粒子に含有される。Bについては軟磁性金属薄膜全体を100at%として10at%が柱状磁性粒子に含有され、B12at%が窒素12at%と結合した窒化物として粒界相に含有されると推測できる。
(比較例1)
比較例1は、加熱時の温度を550℃とした点以外は実施例1と同条件で金属薄膜を作製した。
(比較例3)
比較例3では、下表1に記載する平均組成を有する金属薄膜をスパッタリングにより作製した。スパッタリング条件は実施例1〜17および比較例2と同様である。そして、その後の熱処理を行わなかった。
Figure 2019102709
各実施例および比較例について、倍率180,000〜1,300,000倍でTEMおよびHAADF−STEM、STEM−EDXを用いて薄膜の厚み方向に平行な断面の断面写真および薄膜の厚み方向に垂直な断面の断面写真を観察した。
そして、薄膜の厚み方向に平行な断面の断面写真より、各実施例および比較例1,2の金属薄膜が柱状磁性粒子および粒界相からなり、視野200nmの範囲において100%の柱状磁性粒子の軸芯が薄膜の厚み方向に略平行であることを確認した。これに対し、比較例3の金属薄膜は柱状磁性粒子が存在せず、均一な組成の薄膜であることを確認した。
さらに、薄膜の厚み方向に垂直な断面の断面写真より、各実施例では柱状磁性粒子の軸芯に略垂直な横断面の平均円相当径が10nm以上100nm以下であることを確認した。また、薄膜の厚み方向に平行な断面の断面写真より、柱状磁性粒子の高さは軟磁性金属薄膜の厚みとほぼ同等であることを確認した。なお、比較例1では柱状磁性粒子の平均円相当径が9nm、比較例2では柱状磁性粒子の平均円相当径が23nmであった。さらに、実施例1〜19および比較例1,2では柱状磁性粒子がFe,CoまたはNiから選択される少なくとも1種以上、および、Si,C,P,Ti,Nb,Ta,Zr,HfおよびYから選択される少なくとも1種以上を含有することをSTEM−EDXを用いて確認した。Bについては微細構造内での分布を観察するのは難しく、柱状磁性粒子に含まれているか否かをSTEM−EDXを用いて確認することは困難である。BはFeと混合しやすくFeアモルファス合金に含まれることができる元素であることが知られている。さらに、実施例1〜11の柱状磁性粒子は良好なアモルファス構造を有している。以上より、実施例1〜11についてはBの少なくとも一部が柱状磁性粒子に含有されることが推測できる。そして、実施例1〜17および比較例1および2では粒界相がLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,TbおよびDyから選択される少なくとも1種以上の元素の酸化物を含有することをSTEM−EDXを用いて確認した。なお、実施例18では粒界相がアルミナを含有する。実施例19では粒界相が窒化ホウ素を含有する。
また、各実施例および比較例1,2の薄膜に含まれる柱状磁性粒子がアモルファス構造を有するか否かについてXRDを用いて確認した。なお、各実施例、比較例について、6mm四方サンプルのXRDパターンを観測した結果、磁性元素結晶由来の回折ピークが観測されず、磁性元素を含むアモルファス由来のハローパターンのみが確認されたことから実施例1〜19では巨視的に見て大多数の柱状磁性粒子がアモルファス構造を有することが確認できた。一方、比較例1および2ではFeのbcc(1,1,0)由来の回折ピークが観測され、シェラーの式より結晶粒径を求めるとそれぞれ9nmと23nmであったことから、巨視的に見て大多数の柱状磁性粒子が結晶構造を有することが確認できた。
そして、各実施例および比較例の金属薄膜における面内電気抵抗、保磁力、面内透磁率および面直透磁率を測定した。電気抵抗は4探針法を用いて測定した。保磁力はVSMを用いて測定した。面内最大透磁率および面内最小透磁率は周波数100MHzでの透磁率についてシールデッドループコイル法を用いて測定した。結果を下表2に示す。本実施例では、面内電気抵抗は200μΩcm以上を良好とし、400μΩcm以上をさらに良好とし、600μΩcm以上を特に良好とした。保磁力は1.0Oe以下を良好とし、0.3Oe以下をさらに良好とした。面内最小透磁率が140以上である場合を良好とし、300以上である場合を特に良好とした。そして、(面内最大透磁率/面内最小透磁率)が5以下である場合を透磁率の面内等方性が良好であるとし、1.2以下である場合をさらに良好であるとした。
Figure 2019102709
以上の測定より、実施例1〜19は面内電気抵抗、保磁力、および面内透磁率が全て優れていた。そして、透磁率の面内指向性も低下した。これに対し、柱状磁性粒子が結晶構造を有する比較例1および比較例2は保磁力が高くなり、面内透磁率が低くなった。また、均一な金属薄膜である比較例3は面内電気抵抗が低くなった。さらに、(面内最大透磁率/面内最小透磁率)が著しく高くなり透磁率の面内指向性が上昇した。
1・・・薄膜インダクタ
2・・・コイル
11・・・軟磁性金属薄膜
12・・・柱状磁性粒子
13・・・粒界相

Claims (7)

  1. 柱状磁性粒子および前記柱状磁性粒子同士の間にある粒界相からなる軟磁性金属薄膜であって、
    前記柱状磁性粒子がアモルファス構造を有し、
    前記柱状磁性粒子が、Fe,CoまたはNiから選択される少なくとも1種以上、および、Si,B,C,P,Ti,Nb,Ta,Zr,HfおよびYから選択される少なくとも1種以上を含有し、
    前記粒界相が酸化物または窒化物を含有することを特徴とする軟磁性金属薄膜。
  2. 前記粒界相がLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,TbおよびDyから選択される少なくとも1種以上の元素の酸化物を含有する請求項1に記載の軟磁性金属薄膜。
  3. 前記柱状磁性粒子の軸芯が互いに略平行である請求項1または2に記載の軟磁性金属薄膜。
  4. 前記柱状磁性粒子の軸芯が薄膜の厚み方向に略平行である請求項1〜3のいずれかに記載の軟磁性金属薄膜。
  5. 前記柱状磁性粒子の軸芯に略垂直な前記柱状磁性粒子の横断面の平均円相当径が10nm以上100nm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の軟磁性金属薄膜。
  6. 厚さが100nm以上10,000nm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の軟磁性金属薄膜。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の軟磁性金属薄膜と、導体パターンと、を有する薄膜インダクタ。

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