JP5009943B2 - 作業車両の走行駆動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば鉱山等で採掘した砕石物を運搬する大型の運搬車、ダンプトラック等に好適に用いられる作業車両の走行駆動装置に関する。
一般に、ダンプトラックと呼ばれる大型の運搬車は、車体のフレーム上に起伏可能となったベッセル(荷台)を備え、このベッセルに砕石物等の重い荷物を多量に積載した状態で運搬するものである。
このため、ダンプトラックの駆動輪を走行駆動する走行駆動装置は、車体に取付けられる筒状のアクスルハウジングと、該アクスルハウジングに設けられ回転軸を回転駆動する電動モータまたは油圧モータ等の駆動源と、前記アクスルハウジングの先端側外周に軸受を介して回転可能に設けられ走行用の車輪が取付けられる車輪取付筒と、該車輪取付筒内に設けられ前記回転軸の回転を減速して該車輪取付筒に伝える複数段の減速歯車機構とを備えている(例えば、特許文献1,2参照)。
そして、複数段の減速歯車機構は、例えば電動モータからなる駆動源の回転出力を減速して筒状の車輪取付筒(車輪)に伝えることにより、車両の前輪または後輪等の駆動輪に大なる回転トルクを発生させ、ダンプトラック(車両)の運搬性能を高めるものである。また、ダンプトラックの走行駆動装置は、左,右の車輪が夫々の走行用減速機等により互いに独立して回転駆動される構成となっている。
また、走行用の車輪が取付けられる筒状の車輪取付筒内には、減速歯車機構の各歯車部材等を潤滑状態に保つために潤滑油が溜められ、この潤滑油を車輪取付筒(アクスルハウジング)の内,外に潤滑ポンプ等で強制的に循環させると共に、循環路の途中に設けたオイルクーラ等により潤滑油を熱交換して冷却する構成としている。
この場合、潤滑ポンプは、例えばアクスルハウジングの外側に設けられている。そして、この潤滑ポンプの吸込み側には吸込配管が接続して設けられ、該吸込配管の一側(吸込口側)は、前記車輪取付筒内に溜められた潤滑油の液面下に浸漬される位置まで延びている。一方、潤滑ポンプの吐出側には吐出配管または供給配管が接続して設けられ、該供給配管の他側は、前記吸込配管よりも上方となる位置で車輪取付筒内へと延びるように配設されるものである。
特開昭62−221918号公報 特開2006−264394号公報
ところで、上述した従来技術では、車輪を高速回転させることにより車両の走行速度を増大させると、車輪取付筒内に溜められた潤滑油が当該車輪取付筒の回転に伴う遠心力の作用を受ける。このため、潤滑油が車輪取付筒の内壁面に全周にわたって付着するように挙動し、これにより、車輪取付筒内の潤滑油の液面は、吸込配管の吸込口よりも低い位置まで下がることがある。
そして、作業車両の走行速度を速くすることにより、車輪取付筒内に配置した吸込配管の吸込口が潤滑油の液面から離れてしまうと、潤滑ポンプによる潤滑油の吸込みは不可能になる。この結果、潤滑ポンプは空転状態となってドライ運転となり、これによって、潤滑ポンプのシール類、軸受等が早期に摩耗、損傷され易く、ポンプ寿命を低下させる原因になる。
そこで、本発明者等は、潤滑ポンプが空転状態となるのを防止するため、車両の走行速度が予め決められた判定速度よりも速くなったときに、潤滑ポンプの駆動を即座に停止させることを検討した。しかし、作業車両のオペレータが潤滑ポンプを停止させた後にも車両の高速走行を続けると、潤滑油の温度は上昇するため、場合によってはオーバヒートの原因になってしまうという問題がある。
特に、前記車輪取付筒内には減速歯車機構を設け、内部に潤滑油を溜める構成であるため、例えば車輪取付筒内に温度センサを設けて潤滑油の温度を直接的に検出することは、構造上の制約が大きく実際上では難しい。
このため、本発明者等は、車輪取付筒の外部に位置して潤滑ポンプの吐出側に温度センサを設けることを検討している。しかし、この場合には、潤滑ポンプを停止させたときに、車輪取付筒内に溜められた潤滑油の温度を温度センサで検出することができず、潤滑ポンプの停止後にも車両の走行を続けると、潤滑油の温度がさらに上昇してしまうという問題がある。
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、潤滑ポンプの停止前に温度センサで検出した潤滑油の温度と予め決められた警告温度との温度差を求め、この温度差が所定の閾値の範囲内にあると判定したときに警報を発してオーバヒートを防止することができ、装置の信頼性、寿命を高めることができるようにした作業車両の走行駆動装置を提供することにある。
上述した課題を解決するために、本発明は、作業車両に設けられ車輪と一体に回転する筒状の車輪取付筒と、該車輪取付筒内に設けられ駆動源の回転を該車輪取付筒に減速して伝える減速歯車機構と、該減速歯車機構に潤滑油を供給する潤滑油供給手段と、前記潤滑油の温度を検出する温度センサと、前記車輪の回転速度を検出する速度センサとを備えた作業車両の走行駆動装置に適用される。
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記潤滑油供給手段を、電動モータと、該電動モータで駆動されることにより前記車輪取付筒内に溜められた潤滑油を強制的に循環させる潤滑ポンプと、前記車輪の回転速度に従って前記電動モータの駆動,停止を制御する制御手段とにより構成し、該制御手段は、前記速度センサで検出した前記車輪の速度が予め決められた判定速度よりも速くなったときに前記電動モータの駆動を停止するモータ停止手段と、該モータ停止手段により前記電動モータを停止したときに、前記温度センサによって検出された前記潤滑油の温度と予め決められた警告温度とを比較し、両者の温度差が所定の閾値の範囲内にあるか否かを判定する温度差判定手段と、該温度差判定手段により前記温度差が閾値の範囲内にあると判定したときに、前記潤滑油の温度状態または走行状態が正常でないことを警報するための信号を出力する警報信号出力手段とを有する構成としたことにある。
また、請求項2の発明によると、前記制御手段は、前記警報信号出力手段による警報に従って前記車輪の速度が前記判定速度以下まで低下したときに前記電動モータの駆動を再開する構成としている。
また、請求項3の発明によると、前記制御手段は、前記温度差判定手段によって前記温度差が閾値の範囲内にあると判定したときに予め決められた遅延時間を設定する遅延時間設定手段を有し、前記警報信号出力手段は、該遅延時間設定手段により設定された遅延時間の経過後に前記警報を発する構成としている。
また、請求項4の発明によると、前記遅延時間設定手段は、前記閾値の範囲内にある前記温度差が大きいときには前記遅延時間を長く設定し、前記温度差が小さいときには前記遅延時間を短く設定する構成としている。
一方、請求項5の発明によると、前記警報信号出力手段は、前記潤滑油の温度がオーバヒート状態にあることを警報する警報信号を出力する構成としている。
また、請求項6の発明によると、前記警報信号出力手段は、車両の走行速度が速度超過状態にあることを警報する警報信号を出力する構成としている。
さらに、本発明では、前記作業車両を構成する車体の下部に、左,右方向に延びる筒状のアクスルハウジングを設け、該アクスルハウジングの左,右方向の両端側には、その外周側に前記車輪取付筒をそれぞれ回転可能に設け、前記潤滑油は前記車輪取付筒の下側位置に溜める構成としている。そして、前記潤滑油供給手段は、前記車輪取付筒内の潤滑油を前記潤滑ポンプにより吸込む吸込配管と、前記潤滑ポンプで吸込んだ潤滑油を前記車輪取付筒内に循環させて供給する供給配管とを有する構成とし、前記吸込配管は前記アクスルハウジング内から車輪取付筒内へと貫通して延び、その吸込口は前記車輪取付筒の下側位置に溜められた潤滑油中に開口する構成としている。
上述の如く、請求項1の発明によれば、潤滑油供給手段の一部を構成する制御手段は、車輪の回転速度に従って電動モータの駆動、停止を制御する構成としているので、例えば車輪の回転速度(車両の走行速度)が予め決められた判定速度よりも低いときには前記電動モータを駆動して潤滑ポンプを作動させ、車輪取付筒内に溜められた潤滑油を強制的に循環することができる。これにより、例えば車輪取付筒の内,外へと循環路を介して流れる潤滑油の油温を、例えばオイルクーラ等を用いて下げることができ、車輪取付筒内の減速歯車機構に油温の低い潤滑油を供給して、潤滑性能、冷却性能を高めることができる。一方、このような状態で車輪の回転速度(車両の走行速度)が前記判定速度よりも速くなったときには、車輪取付筒内の潤滑油が遠心力の作用により、車輪取付筒の内壁面に全周にわたって付着するように挙動し、潤滑ポンプによる潤滑油の吸込み作用が不可能となる虞れがある。
そこで、このような場合に、前記制御手段は、電動モータによる潤滑ポンプの駆動を停止させることにより、潤滑ポンプが空転状態となってドライ運転が続くのを防ぐことができる。しかも、電動モータで潤滑ポンプを停止したときには、温度センサによって検出された潤滑油の温度と予め決められた警告温度との温度差が、所定の閾値の範囲内にあるか否かを温度差判定手段によって判定することができる。そして、該温度差判定手段により前記温度差が閾値の範囲内にあると判定したときには、警報信号出力手段から警報信号を出力して警報を発することにより、作業車両のオペレータに対して潤滑油の温度状態または走行状態が正常でないという、例えば「オーバヒート」または「速度超過」の警告を発し、例えば車両の走行速度を低下すべきであることを知らせることができる。
また、請求項2の発明は、警報信号出力手段による警報に従って車輪の速度が判定速度以下まで低下したときに、潤滑ポンプ用の電動モータを再び駆動する構成としている。これにより、例えば作業車両のオペレータが「オーバヒート」または「速度超過」の警告に従って車輪の回転速度(車両の走行速度)を判定速度以下まで下げたときには、前記電動モータを駆動して潤滑ポンプを再び作動することができ、車輪取付筒内に溜められた潤滑油を強制的に循環させることができる。これにより、潤滑油の油温をオイルクーラ等を用いて下げることができ、車輪取付筒内の減速歯車機構に油温の低い潤滑油を供給して、潤滑性能、冷却性能を高めることができる。
また、請求項3の発明は、温度差判定手段によって潤滑油の温度と警告温度との温度差が閾値の範囲内にあると判定したときに予め決められた遅延時間を設定する遅延時間設定手段を有している。これにより、例えば潤滑油の温度が警告温度よりも5℃程度低いにも拘らず、前記閾値の範囲内にあると判定したときに、警報信号出力手段によって警報を即座に発するのを防止でき、オペレータに余分な負担を与えるのを防ぐことができる。そして、前記遅延時間の経過後には警報を発することにより、オペレータに対してタイムリーな報知を行うことが可能となる。
また、請求項4の発明によると、遅延時間設定手段は、閾値の範囲内にある前記温度差が大きいときに前記遅延時間を長く設定し、前記温度差が小さいときには前記遅延時間を短く設定する構成としている。これにより、潤滑油の温度と警告温度との温度差に応じた遅延時間をもって、例えばオーバヒート警告を発することができ、潤滑油の実温度に対応したオーバヒート警告をオペレータに報知することができる。
この場合、請求項5の発明では、警報信号出力手段からの警報信号により潤滑油の温度がオーバヒート状態にあることを警報することができ、オペレータに対して前記判定速度以下となる速度まで車両の走行速度を落すように促すことができる。
また、請求項6の発明では、警報信号出力手段からの警報信号により車両の走行速度が速度超過状態にあることを警報することができ、この場合には、車両の走行速度を落すべきことを、より直接的にオペレータに対して報知することができる。
本発明の第1の実施の形態による走行駆動装置が適用されたダンプトラックを示す正面図である。 ダンプトラックの走行駆動装置を示す構成図である。 後輪側の走行駆動装置を図1中の矢示 III−III 方向からみた拡大断面図である。 図3中の筒状スピンドル、車輪取付筒および遊星歯車減速機構等をさらに拡大して示す断面図である。 筒状スピンドル、車輪取付筒および吸込配管等を図4中の矢示V−V方向からみた拡大断面図である。 潤滑油の供給制御、オーバヒート警告等を行うための車体コントローラ等を示す制御ブロック図である。 第1の実施の形態による潤滑油の供給制御、オーバヒートの警告処理等を示す流れ図である。 第2の実施の形態による潤滑油の供給制御、オーバヒートの警告処理等を示す流れ図である。 車輪取付筒内に溜められた潤滑油の温度が上昇するときの特性を示す特性線図である。 第3の実施の形態による潤滑油の供給制御、オーバヒートの警告処理等を示す流れ図である。 第4の実施の形態による潤滑油の供給制御、オーバヒートの警告処理等を示す流れ図である。 第5の実施の形態による潤滑油の供給制御、速度超過の警告処理等を示す流れ図である。
以下、本発明の実施の形態による作業車両の走行駆動装置を、後輪駆動式のダンプトラックに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図7は本発明に係る作業車両の走行駆動装置の第1の実施の形態を示している。
図中、1は作業車両としてのダンプトラックで、このダンプトラック1は、図1に示すように頑丈なフレーム構造をなし、後述する車輪としての前輪6および後輪7によって自走する車体2と、該車体2上に起伏可能に搭載された荷台としてのベッセル3とにより大略構成されている。
そして、ベッセル3は、例えば砕石物等の重い荷物を多量に積載するため全長が10〜13m(メートル)にも及ぶ大型の容器として形成され、その後側底部が、車体2の後端側にピン結合部4等を介して起伏(傾転)可能に連結されている。また、ベッセル3の前側上部には、後述のキャビン5を上側から覆う庇部3Aが一体に設けられている。
5は庇部3Aの下側に位置して車体2の前部に設けられたキャビンを示し、該キャビン5は、ダンプトラック1の運転者(オペレータ)が乗降する運転室を形成し、その内部には運転席、起動スイッチ、アクセルペダル、ブレーキペダル、操舵用のハンドルおよび複数の操作レバー(いずれも図示せず)等が設けられている。
そして、ベッセル3の庇部3Aは、キャビン5を上側からほぼ完全に覆うことにより、例えば岩石等の飛び石からキャビン5を保護すると共に、車両(ダンプトラック1)の転倒時等にもキャビン5内の運転者を保護する機能を有しているものである。
6,6は車体2の前側下部に回転可能に設けられた左,右の前輪で、該各前輪6は、ダンプトラック1の運転者によって操舵(ステアリング操作)される操舵輪を構成するものである。そして、前輪6は後述の後輪7と同様に、例えば2〜4mに及ぶ大きなタイヤ径(外径寸法)をもって形成されている。
7,7は車体2の後部下側に回転可能に設けられた左,右の後輪で、該各後輪7は、ダンプトラック1の駆動輪(車輪)を構成し、図3、図4に示す後述の走行駆動装置11により車輪取付筒19と一体に回転駆動される。そして、各後輪7は、タイヤ7Aと、該タイヤ7Aの内側に配設されるリム7Bとを含んでそれぞれ構成されるものである。
8はキャビン5の下側に位置して車体2内に設けられる原動機としてのエンジンで、該エンジン8は、例えば大型のディーゼルエンジン等により構成されている。そして、エンジン8は、図2に示すように主発電機9を駆動して、3相交流の電力(例えば、1500kW程度)を発生させると共に、後述する直流用の副発電機55等も駆動するものである。また、エンジン8は、油圧源となる油圧ポンプ(図示せず)等を回転駆動し、後述の起伏シリンダ58、パワーステアリング用の操舵シリンダ(図示せず)等に圧油を給排させる機能も有している。
10はダンプトラック1の電力制御を後述の車体コントローラ53と共に行う電力制御装置で、該電力制御装置10は、図1に示す如くキャビン5の側方に位置して車体2上に立設された配電制御盤等により構成されている。そして、電力制御装置10は、図2に示すように後述の車体コントローラ53から出力される制御信号に従って、主発電機9で発生した電力を後述の走行用モータ17、潤滑ポンプ用モータ47(図6参照)等に出力する。なお、図2中に示す左,右の走行用モータ17,17は、その回転数が個別にフィードバック制御されるものである。
次に、ダンプトラック1の後輪7側に設けられた走行駆動装置11の構成について、図3および図4を参照して説明する。
この走行駆動装置11は、後述のアクスルハウジング12、走行用モータ17、車輪取付筒19および2段の遊星歯車減速機構23,31等により構成されている。そして、走行駆動装置11は、走行用モータ17の回転を2段の遊星歯車減速機構23,31によって減速し、車両の駆動輪となる後輪7を車輪取付筒19と一緒に大なる回転トルクで走行駆動するものである。
12は車体2の後部下側に設けられた後輪7用のアクスルハウジングで、該アクスルハウジング12は、図2に示すように左,右の後輪7,7間を軸方向(左,右方向)に延びる筒状体として形成されている。そして、アクスルハウジング12は、ショックアブソーバ等の緩衝器(図示せず)を介して車体2の後部下側に取付けられる中間の懸架筒13と、該懸架筒13の左,右両側にそれぞれ設けられた後述のモータ収容筒14および筒状スピンドル15とにより構成されるものである。
14,14は懸架筒13の両端側にそれぞれ設けられたモータ収容筒で、該各モータ収容筒14は、図3に示す如く円筒形状をなす筒体として形成され、軸方向の内側端(基端側)が図2に示す懸架筒13にボルト等で固着される。また、モータ収容筒14の先端側(軸方向の外側端)には、図3に示すように後述の筒状スピンドル15がボルト16等を介して着脱可能に固着されている。そして、モータ収容筒14内には、後輪7の駆動源となる後述の走行用モータ17が収容されている。
15はアクスルハウジング12の先端側開口部を構成する筒状スピンドルで、該筒状スピンドル15は、図3、図4に示す如くテーパ形状をなす筒体として形成され、その軸方向一側(基端側)は、大径部15Aとなってモータ収容筒14にボルト16等で取付けられている。また、筒状スピンドル15の先端側(軸方向の外側)は小径筒部15Bとなり、該小径筒部15Bの開口端側内周には、後述する最終段のキャリア36が固定して取付けられるものである。
そして、筒状スピンドル15は、小径筒部15Bの外周面に後述の軸受20,21を介して後輪7側の車輪取付筒19が取付けられ、これにより車輪取付筒19を回転可能に支持するものである。即ち、筒状スピンドル15は、頑丈な構造をなすテーパ状の段付筒状体として形成され、小径筒部15Bの外周側で車輪取付筒19(後輪7)を高い剛性(強度)をもって支持するものである。
一方、筒状スピンドル15の大径部15Aの内周側には、径方向内向きに突出する複数の取付座15C(1個のみ図示)が一体に形成され、この取付座15Cには、後述の走行用モータ17がボルト等で固定して取付けられている。また、図3、図4に示すように、筒状スピンドル15の内周側には、大径部15Aと小径筒部15Bとの間に位置して径方向内向きに突出する環状の取付部15Dが設けられ、該取付部15Dには、後述の隔壁37等が取付けられるものである。さらに、筒状スピンドル15の小径筒部15Bの下側位置には、後述の吸込配管42を径方向の外側(即ち、下向き)に導出させる径方向孔15Eが穿設されている。
17,17はアクスルハウジング12の筒状スピンドル15に着脱可能に設けられた駆動源としての左,右の走行用モータである。この走行用モータ17は、電力制御装置10からの電力供給によって回転駆動される大型の電動モータにより構成されている。そして、走行用モータ17は、図2に示す如く左,右の後輪7,7を互いに独立して回転駆動するため、アクスルハウジング12の両側に位置する左,右のモータ収容筒14,14内等にそれぞれ設けられている。
ここで、走行用モータ17は、図3、図4に示すように外周側に複数の取付フランジ17Aを有し、これらの取付フランジ17Aが筒状スピンドル15の取付座15Cにボルト等を用いて着脱可能に取付けられている。また、走行用モータ17は出力軸としての回転軸18を有し、この回転軸18は、走行用モータ17により正方向または逆方向に回転駆動されるものである。
この場合、回転軸18は、筒状スピンドル15の小径筒部15B内を軸方向に延びる長尺なシャフトとして形成され、その先端側は、後述の蓋板29に対向する位置まで軸方向に突出して延びている。そして、回転軸18の突出端側には雄スプラインが形成され、後述の太陽歯車24が一体回転するようにスプライン結合されている。また、走行用モータ17は、図4に示すようにモータ収容筒14内に位置して回転軸18と一体に回転する回転板18Aを有し、該回転板18Aは、後述の速度センサ52に対する検出対象物となるものである。
19は後輪7と一体に回転する筒状の車輪取付筒で、該車輪取付筒19は、所謂ホイールハブを構成し、その外周側には、後輪7のリム7Bが圧入等の手段を用いて着脱可能に取付けられる。そして、車輪取付筒19は、図3、図4に示すように筒状スピンドル15(小径筒部15B)の外周側に軸受20,21を介して回転可能に設けられている。なお、車輪取付筒19内には、筒状スピンドル15の小径筒部15Bよりも低い液面レベルで潤滑油Gが溜められている。
また、車輪取付筒19の軸方向外側部位には、後述するリング状の内歯車33と外側ドラム22とが長尺ボルト(図示せず)等を用いて一体的に固着され、この内歯車33は車輪取付筒19と一体に回転するものである。この場合、車輪取付筒19には、走行用モータ17の回転を後述の遊星歯車減速機構23,31で減速することにより大トルクとなった回転が、リング状の内歯車33を介して伝えられる。そして、車輪取付筒19は、車両の駆動輪となる後輪7と一緒に大なる回転トルクで回転されるものである。
22は車輪取付筒19の一部を内歯車33と共に構成する外側ドラムで、該外側ドラム22は、図4に示すように車輪取付筒19の軸方向外側となる位置にリング状の内歯車33を挟んで取付けられ、複数の長尺ボルト(図示せず)等を用いて車輪取付筒19に着脱可能に固着されている。
23は第1の実施の形態で採用された減速歯車機構を構成する1段目の遊星歯車減速機構である。この遊星歯車減速機構23は、外側ドラム22内に配置されている。そして、1段目の遊星歯車減速機構23は、図3、図4に示すように回転軸18の先端側にスプライン結合された太陽歯車24と、該太陽歯車24とリング状の内歯車25とに噛合し、該太陽歯車24の回転に従って自転する例えば3個の遊星歯車26(1個のみ図示)と、該各遊星歯車26を支持ピン27を介して回転可能に支持したキャリア28とにより構成されている。
そして、1段目のキャリア28は、その外周側が外側ドラム22の開口端(軸方向外側の端面)にボルト等を介して着脱可能に固定され、外側ドラム22(車輪取付筒19)と一体に回転する。また、キャリア28の内周側には、例えば円板状の蓋板29が着脱可能に取付けられ、該蓋板29は、例えば太陽歯車24と遊星歯車26の噛合部を点検するとき等に、キャリア28から取外されるものである。
また、リング状の内歯車25は、太陽歯車24、遊星歯車26、支持ピン27およびキャリア28等を径方向外側から取囲む短尺の筒形歯車として形成され、外側ドラム22の内周側に小さな径方向隙間を介して配置されている。そして、リング状の内歯車25は、その内周側の内歯が各遊星歯車26に噛合し続けるものである。また、内歯車25は、後述のカップリング30によって2段目の太陽歯車32に取付けられている。
ここで、1段目の遊星歯車減速機構23は、走行用モータ17の回転軸18によって太陽歯車24が一体に回転されると、この太陽歯車24の回転を複数の遊星歯車26の自転運動と公転運動とに変換する。そして、各遊星歯車26の自転(回転)は、リング状の内歯車25に減速した回転として伝えられ、この内歯車25の回転がカップリング30を介して2段目の遊星歯車減速機構31に伝えられるものである。
また、各遊星歯車26の公転は、キャリア28の回転となって外側ドラム22に伝えられる。しかし、外側ドラム22は、後述する2段目の内歯車33と一体に回転するため、各遊星歯車26の公転は、内歯車33(車輪取付筒19)に同期した回転に抑えられるものである。
30は1段目の内歯車25と一体に回転する回転伝達部材としてのカップリングで、該カップリング30は、1段目の遊星歯車減速機構23と2段目の遊星歯車減速機構31との間に位置する環状の板体として形成され、その外周側は1段目の内歯車25にスプライン等の手段で結合されている。また、カップリング30の内周側は、後述する2段目の太陽歯車32にスプライン等の手段で結合されている。
そして、カップリング30は、1段目の内歯車25の回転を2段目の太陽歯車32に伝え、この太陽歯車32をリング状の内歯車25と一体的に同一の速度で回転させるものである。なお、カップリング30には、後述の潤滑油Gをカップリング30の前,後で流通させる複数の油穴(図示せず)が形成されている。
31は第1の実施の形態で採用した減速歯車機構を構成する2段目の遊星歯車減速機構である。この遊星歯車減速機構31は、走行用モータ17の回転軸18と車輪取付筒19との間に1段目の遊星歯車減速機構23を介して配設され、1段目の遊星歯車減速機構23と共に回転軸18の回転を減速して車輪取付筒19に伝え、この車輪取付筒19に大なる回転トルクを発生させるものである。
この場合、2段目の遊星歯車減速機構31は、回転軸18と同軸に配置されカップリング30と一体的に回転する筒状の太陽歯車32と、該太陽歯車32とリング状の内歯車33とに噛合し、太陽歯車32の回転に従って自転する例えば3個の遊星歯車34(1個のみ図示)と、該各遊星歯車34を支持ピン35を介して回転可能に支持したキャリア36とを含んで構成されている。
そして、2段目のキャリア36には、その内周側に筒状スピンドル15の小径筒部15B内に嵌合される筒状嵌合部36Aが一体形成されている。そして、この筒状嵌合部36Aは、小径筒部15Bの先端側内周にスプライン結合手段を用いて非回転状態で、かつ着脱可能に固定されている。また、キャリア36の筒状嵌合部36A内には、回転軸18が軸方向に延びて配置され、また、後述する供給配管45の先端側が隙間をもって挿入されている。
一方、2段目の内歯車33は、太陽歯車32、遊星歯車34、支持ピン35およびキャリア36等を径方向外側から取囲む短尺の筒状体として形成され、車輪取付筒19と外側ドラム22との間に一体的に固着されている。そして、リング状の内歯車33の内周側は、各遊星歯車34に噛合する内歯となっている。
ここで、最終段となる2段目の遊星歯車減速機構31は、キャリア36が筒状スピンドル15に固定されることにより、遊星歯車34の公転(キャリア36の回転)が拘束されている。このため、2段目の遊星歯車減速機構31は、太陽歯車32がカップリング30と一体に回転すると、この太陽歯車32の回転を複数の遊星歯車34の自転に変換しつつ、この自転(回転)をリング状の内歯車33から減速した回転として取出す。これにより、後輪7側の車輪取付筒19には、1段目の遊星歯車減速機構23と2段目の遊星歯車減速機構31とで2段階に減速された、低速で大出力の回転トルクが伝えられるものである。
一方、37は走行用モータ17の近傍に位置して筒状スピンドル15内に設けられた隔壁を示している。この隔壁37は、環状の仕切り板として形成され、その外周側が筒状スピンドル15の取付部15Dにボルト等で固定されている。ここで、隔壁37は、筒状スピンドル15内を軸方向一側(内側)のモータ室38と、軸方向他側(外側)の筒状空間部39とに画成している。そして、筒状空間部39は、キャリア36の筒状嵌合部36A、太陽歯車32の内周側を介して車輪取付筒19内と常時連通している。
40は軸受20の近傍に設けられたシール装置である。このシール装置40は、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間を液密にシールするもので、図4に示す如く所謂フローティングシールにより構成されている。そして、シール装置40は、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間等に溜められた潤滑油Gが外部に漏洩するのを抑えると共に、土砂、雨水等が内部に侵入するのを防止するものである。
次に、第1の実施の形態の主要部である潤滑油供給手段41(以下、潤滑油供給装置41という)の構成について説明する。
この潤滑油供給装置41は、車輪取付筒19の内,外に潤滑油Gを循環させるもので、このときに後述のオイルクーラ49で潤滑油Gを冷却する機能を有している。そして、潤滑油供給装置41は、後述の吸込配管42,43、供給配管44,45、潤滑ポンプ46、潤滑ポンプ用モータ47、フィルタ48、オイルクーラ49および制御手段としての車体コントローラ53(図6参照)等を含んで構成されている。
ここで、潤滑油供給装置41は、図2に例示した左,右のモータ収容筒14、筒状スピンドル15に対応して左,右で独立した循環路41A(図4中に左側のみを図示)を有し、これらの循環路41Aは、いずれも後述の吸込配管42,43および供給配管44,45等により構成されている。そして、これらの循環路41Aは、左,右の車輪取付筒19,19に対してそれぞれ独立して設けられ、左,右の車輪取付筒19内に溜められた潤滑油Gは、後述の潤滑ポンプ46により左,右の循環路41Aに沿ってそれぞれ独立的に循環される。
42は循環路41Aの吸込み側を構成する吸込配管で、この吸込配管42は、図4、図5に示すように先端側が筒状スピンドル15の径方向孔15E内を貫通し、筒状スピンドル15の小径筒部15Bを径方向の外側(下側)へと下向きに延びている。そして、吸込配管42の下端(先端)は、車輪取付筒19内の下側位置に溜められている潤滑油G中に開口した吸込口42Aとなり、該吸込口42Aは、後述の潤滑ポンプ46を駆動することにより、吸込配管42内に潤滑油Gを吸込むものである。
43は筒状スピンドル15のモータ室38側に配置された他の吸込配管で、該吸込配管43は、図4に示すように隔壁37の位置で吸込配管42の基端側に接続され、モータ収容筒14内を後述の潤滑ポンプ46側に向けて延びている。そして、これらの吸込配管42,43は、潤滑ポンプ46の吸込み側に接続されるものである。
44,45は循環路41Aの吐出側を構成する供給配管で、該供給配管44,45は、潤滑ポンプ46の吐出側に接続され、車輪取付筒19内の遊星歯車減速機構23,31に向けて潤滑油Gを供給するものである。ここで、供給配管44は、筒状スピンドル15のモータ室38側に配置され、供給配管45の基端側は、隔壁37の位置で供給配管44の先端側に接続されている。そして、供給配管45の先端側は、筒状スピンドル15の筒状空間部39内を軸方向に延び、回転軸18よりも上方となる位置に配設されている。
46は電動モータとしての潤滑ポンプ用モータ47によって回転駆動される潤滑ポンプで、該潤滑ポンプ46は、図4に示すように左,右の循環路41A毎に設置されるものである。そして、潤滑ポンプ46は、潤滑ポンプ用モータ47で駆動されることにより回転し、吸込配管42,43側から吸込んだ潤滑油Gをフィルタ48、後述のオイルクーラ49等を介して供給配管44,45側に吐出するものである。
49は供給配管44の途中に設けられた熱交換器としてのオイルクーラで、該オイルクーラ49も左,右の循環路41A毎に配設されている。そして、オイルクーラ49は、循環路41A内を流れる潤滑油Gを冷却し、例えば常温に近い温度の潤滑油Gを供給配管45側に向けて送り出すものである。
次に、第1の実施の形態に用いられる各種のセンサ、車体コントローラ(制御手段)等について説明する。
まず、50は潤滑ポンプ46の吐出圧力を検出する圧力センサで、該圧力センサ50は、図4に示すように潤滑ポンプ46の吐出側とフィルタ48との間に位置して供給配管44の途中等に配置されている。そして、圧力センサ50は、潤滑ポンプ46の吐出圧力を検出し、その検出信号を後述の車体コントローラ53に出力する。
51は潤滑油Gの温度を検出する温度センサで、該温度センサ51は、図4中に示すように、例えば潤滑ポンプ46の吐出側とフィルタ48との間に位置して供給配管44の途中等に配置されている。そして、温度センサ51は、図4に示すようにオイルクーラ49で冷却される前の潤滑油Gの温度を検出し、その検出信号を後述の車体コントローラ53に出力する。
ここで、本発明者等は、車輪取付筒19内に溜められた潤滑油Gの温度と、潤滑ポンプ46の吐出側で温度センサ51により検出される潤滑油Gの温度とを比較した。そして、潤滑ポンプ46の駆動時には、吸込配管42,43から供給配管44に向けて潤滑油Gは流通し続けるので、両者の温度には実質的な違いはないことを確認した。
しかし、潤滑ポンプ46を停止したときには、吸込配管42,43から供給配管44に向けて潤滑油Gを流がすことができなくなるので、潤滑ポンプ46の吐出側に設けた温度センサ51では潤滑油Gの温度を検出できない。このため、温度センサ51で検出した潤滑油Gの温度T(検出信号)は、潤滑ポンプ46の駆動中にのみ車体コントローラ53(図6参照)に出力され、潤滑ポンプ46の停止時における温度検出信号(潤滑油Gの温度T)は、潤滑ポンプ46の停止直前に温度センサ51で検出した温度(駆動中の最新データ)で代用する構成としている。
52は走行用モータ17の出力回転を検出する速度センサである。この速度センサ52は、図4に示すように回転軸18の回転板18Aに近接して設けられ、回転板18Aの回転を後輪7の回転速度(車両の走行速度)として検出するものである。即ち、後輪7(車輪取付筒19)には、走行用モータ17(回転軸18)の回転速度に対して、複数段の遊星歯車減速機構23,31により予め決められた減速比(例えば、30〜40程度の減速比)の回転が伝えられるので、回転板18Aの回転速度を検出することにより、後輪7の回転速度(車両の走行速度)が求められるものである。
53はマイクロコンピュータ等により構成される制御手段としての車体コントローラである。この車体コントローラ53は、図6に示す如く入力側が圧力センサ50、温度センサ51および速度センサ52等に接続され、出力側は表示器54等に接続されると共に、電力制御装置10を介して左,右の走行用モータ17,17および潤滑ポンプ用モータ47等に接続されている。
この場合、表示器54は、例えば「オーバヒート」、「速度超過」または「センサ異常」等の報知を行う報知手段を構成するものである。そして、表示器54は、図1に示すダンプトラック1のキャビン5内に配置され、オペレータに対して後述の如く「オーバヒート」等の警告、情報を表示するものである。これにより、潤滑油の温度状態または走行状態が正常でないことを表示器54を用いて警報することができる。
また、車体コントローラ53は、ROM,RAM(不揮発性のメモリを含む)等からなる記憶部53Aを有している。この記憶部53Aには、例えば図7に示す警告温度Toh(例えば、Toh=90〜95℃)および判定速度V1 (例えば、V1 =25〜35km/h)等が格納されると共に、潤滑ポンプ用モータ47の駆動、停止等を行う潤滑油の供給制御処理用のプログラム等が格納されている。
55は主発電機9とは別に車体2に搭載される副発電機で、この副発電機55は、図2に示す如くエンジン8によりベルト駆動機構56等を介して駆動され、例えば直流24V(ボルト)の電力を発生するものである。そして、副発電機55で発生した電力は、バッテリ57に充電され、このバッテリ57は、車体コントローラ53等の電源を構成するものである。
なお、58は図1に示すダンプトラック1のベッセル3を起伏させるための起伏シリンダで、該起伏シリンダ58は、図1に示す如く前輪6と後輪7との間に位置して車体2の左,右両側に配設されている。そして、起伏シリンダ58は、外部から圧油が給排されることにより上,下方向に伸縮し、後部側のピン結合部4を中心にしてベッセル3を起伏(傾転)させるものである。
59は作動油タンクで、該作動油タンク59は、図1に示すようにベッセル3の下方に位置して車体2の側面等に取付けられている。そして、作動油タンク59内に収容した作動油は、前記油圧ポンプにより圧油となって起伏シリンダ58およびパワーステアリング用の操舵シリンダ等に給排されるものである。
本実施の形態によるダンプトラック1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、ダンプトラック1のキャビン5に乗り込んだ運転者が、図2に示すエンジン8を起動すると、主油圧源となる主油圧ポンプ(図示せず)が回転駆動されると共に、主発電機9と副発電機55とにより発電が行われる。そして、副発電機55で発生した電力は、バッテリ57に充電される。また、主発電機9で発生した電力は、電力制御装置10等を介して左,右の走行用モータ17と潤滑ポンプ用モータ47等に給電される。
そして、車両を走行駆動するときには、電力制御装置10から後輪7側の各走行用モータ17に駆動電流が供給される。このとき、車体コントローラ53は、電力制御装置10によって左,右の走行用モータ17,17の回転数を個別にフィードバック制御する。これにより、左,右の後輪7,7は、車両の駆動輪として互いに独立して回転駆動され、直進走行時には互いに同一の回転数で駆動される。
即ち、ダンプトラック1の後輪7側に設けられた走行駆動装置11は、走行用モータ17(回転軸18)の回転を複数段の遊星歯車減速機構23,31により例えば30〜40程度の減速比で減速し、車両の駆動輪(後輪7)を車輪取付筒19と一緒に大なる回転トルクで走行駆動するものである。そして、左,右の後輪7は、左,右の走行用モータ17により独立した回転数で駆動される。
また、車輪取付筒19内には、例えば図3〜図5に示すように、筒状スピンドル15の小径筒部15Bよりも低い位置となる液面レベルをもって潤滑油Gが溜められている。即ち、車輪取付筒19内の液面レベルを下げることにより、リング状の内歯車25、遊星歯車26,34およびカップリング30等の回転に伴う潤滑油Gの攪拌抵抗(粘性抵抗)は、可能な限り低く抑えられるものである。
この場合、車輪取付筒19内に収容された潤滑油Gは、走行用モータ17の回転軸18により第1,第2の遊星歯車減速機構23,31が駆動されると、例えば1段目,2段目の内歯車25,33等により順次上方へと掻き上げられ、遊星歯車減速機構23,31に対する掻き上げ潤滑等を行うことができる。
そして、図4に示す潤滑ポンプ用モータ47で潤滑ポンプ46を駆動すると、車輪取付筒19内の潤滑油Gは、吸込配管42の吸込口42Aから潤滑ポンプ46に吸込まれ、供給配管44,45側に向けて吐出される。そして、このときに潤滑油Gは、オイルクーラ49で冷却された状態で、供給配管45の先端側から遊星歯車減速機構23,31の太陽歯車24,32、遊星歯車26,34等に供給され、それぞれの歯車を潤滑状態に保持するものである。
また、このように車輪取付筒19内で第1,第2の遊星歯車減速機構23,31に供給された潤滑油Gは、それぞれの歯面等を潤滑しつつ、重力の作用で徐々に下方へと滴下するようになり、車輪取付筒19の下側位置に再び溜められる。そして、車輪取付筒19の下側位置に溜められた潤滑油Gは、吸込配管42の吸込口42Aから潤滑ポンプ46に吸込まれ、供給配管44,45側に吐出されることになる。
ところで、車両(ダンプトラック1)の走行時には、車輪取付筒19が後輪7と一緒に図5中の矢示A方向に速い速度で回転している。このため、車輪取付筒19の内部に溜められた潤滑油Gは車輪取付筒19の内周面に沿って矢示A1 方向に掻上げられる。そして、ダンプトラック1(車両)の走行速度を上昇させたときには、後輪7と一緒に高速回転する車輪取付筒19内で、潤滑油Gが高速回転に伴う遠心力の作用を受ける。
この結果、車輪取付筒19内の潤滑油Gは、図5中に二点鎖線で示すように車輪取付筒19の内壁面に全周にわたって付着するように挙動し、潤滑油Gの液面が吸込配管42の吸込口42Aよりも低い位置まで下がることがある。このように、車両の走行速度が速くなった場合には、車輪取付筒19内に配置した吸込配管42の吸込口42Aが、潤滑油Gの液面から離れるため、潤滑ポンプ46による潤滑油Gの吸込み作用が中断されてしまう。しかも、このときには、潤滑ポンプ46が空転状態となってドライ運転となるため、潤滑ポンプ46のシール類、軸受等が早期に摩耗、損傷され易く、ポンプ寿命を低下させる原因となる。
そこで、本発明者等は、潤滑ポンプ46が空転状態となるのを防止するため、車両の走行速度Vが予め決められた判定速度V1 (例えば、V1 =25〜35km/h)よりも速くなったときに、潤滑ポンプ46の駆動を即座に停止させることを検討した。しかし、このように潤滑ポンプ46を停止させた後にも、ダンプトラック1のオペレータが車両の高速走行を続けると、潤滑油Gの温度は上昇するため、場合によってはオーバヒートの原因になってしまう。
特に、ダンプトラック1に用いる走行駆動装置11の場合には、車輪取付筒19内には遊星歯車減速機構23,31等を設け、その内部に潤滑油Gを溜める構成であるため、例えば車輪取付筒19内に温度センサを設けて潤滑油の温度を直接的に検出することは、構造上の制約が大きく実際上では難しい問題がある。
このため、本発明者等は、車輪取付筒19の外部に位置して図4中に例示するように、潤滑ポンプ46の吐出側に温度センサ51を設けることを検討した。しかし、この場合には、潤滑ポンプ46の駆動を停止したときに、車輪取付筒19内に溜められた潤滑油Gの温度を温度センサ51により検出することができず、潤滑ポンプ46の停止後にも車両の走行を続けると、潤滑油Gの温度がさらに上昇してしまう虞れがある。
そこで、第1の実施の形態では、車両の走行速度に従って潤滑ポンプ46の駆動、停止を制御する処理と、潤滑ポンプ46の駆動を停止したときに「オーバヒート」の警告処理とを車体コントローラ53により、図7に示す処理プログラムに従って実行する構成としている。なお、図7に示す処理プログラムは、潤滑ポンプ46の駆動により潤滑油Gを強制循環させ、オイルクーラ49で冷却された潤滑油Gを遊星歯車減速機構23,31等に供給している所謂「冷却運転」の途中で行う場合を前提としたものである。
まず、このような「冷却運転」の途中で処理動作がスタートすると、図7中のステップ1では、温度センサ51から車輪取付筒19内の温度を潤滑油Gの温度Tとして読込む。そして、次なるステップ2では、温度センサ51で検出した温度Tが予め決められた警告温度Toh(例えば、Toh=90〜95℃)に達するまで上昇しているか否かを判定する。
ここで、警告温度Tohとは、車輪取付筒19内の潤滑油Gが過剰に高い温度となった状態の温度であり、例えば内部の遊星歯車減速機構23,31等がオーバヒートを起さないように警告すべき温度を意味しているものである。
そして、ステップ2で「YES」と判定したときには、潤滑油Gの温度Tが警告温度Toh以上となっているので、ステップ3に移って「オーバヒート」警報を発する処理を行う。そして、この場合には、例えば潤滑ポンプ46の駆動により潤滑油Gの強制循環を行っているにも拘らず、潤滑油Gの温度Tが警告温度Toh以上となっている。
そこで、このような場合には、例えば図6に示す表示器54によりオペレータに対して車両を早期に停車させてエンジン8を停止すべきことを報知し、次なるステップ5に移る。なお、潤滑ポンプ46により潤滑油Gの強制循環を行っているときに、潤滑油Gの温度Tが警告温度Toh以上となることは、通常ではあり得ない状態であり、万が一、ステップ2で「YES」と判定するような場合には、装置の保守、点検作業を早期に行う必要がある場合である。
また、ステップ2で「NO」と判定するときには、潤滑油Gの温度Tが警告温度Tohよりも低いので、次なるステップ4に移り、「オーバヒート」の警告を行うことなく、または前記警告を解除して次なるステップ5へと移る。そして、ステップ5の処理では、速度センサ52から車両の走行速度Vを読込む。
次に、ステップ6では、走行速度Vが予め決められた判定速度V1 (例えば、V1 =25〜35km/h)以下であるか否かを判定する。ここで、判定速度V1 とは、車両の走行速度Vが速くなって、車輪取付筒19内の潤滑油Gがその内壁面に付着し、吸込配管42の吸込口42Aから潤滑油Gの吸込みが行われず、潤滑ポンプ46が空転しているか否かを判定する基準値である。
そして、ステップ6で「YES」と判定したときには、走行速度Vが判定速度V1 以下となっているので、次なるステップ7に移って潤滑ポンプ用モータ47の回転を続行し、潤滑ポンプ46の駆動を継続することにより前述した潤滑油Gの強制循環を続ける処理を行う。そして、その後はステップ1以降の処理を繰返すようにする。
即ち、この場合には、車輪取付筒19の下側位置に溜められた潤滑油Gを、潤滑ポンプ46により吸込配管42の吸込口42Aから吸込みつつ、供給配管44,45側に吐出させる。そして、潤滑油Gは、供給配管44、45内を流通しているときにオイルクーラ49により冷却され、相対的に低い温度状態で供給配管45の先端側から遊星歯車減速機構23,31の太陽歯車24,32、遊星歯車26,34等に供給され、それぞれの歯車を潤滑状態に保持することができるものである。
一方、ステップ6で「NO」と判定したときには、走行速度Vが速くなって判定速度V1 を越えた場合であり、このような場合には、後輪7が車輪取付筒19と一緒に高速回転し、車輪取付筒19内の潤滑油Gが高速回転に伴う遠心力の作用を受けている。このために、車輪取付筒19内の潤滑油Gは、図5中に二点鎖線で示す如く車輪取付筒19の内壁面に全周にわたって付着するように挙動し、潤滑油Gの液面が吸込配管42の吸込口42Aよりも低い位置まで下がっていると判断することができる。即ち、車両の走行速度Vが速いために、車輪取付筒19内に配置した吸込配管42の吸込口42Aが潤滑油Gの液面から離れ、潤滑ポンプ46が空転状態で駆動される虞れがある。
そこで、このような場合には、ステップ8に移って潤滑ポンプ用モータ47を停止させ、潤滑ポンプ46の駆動を中断させる。これによって、潤滑ポンプ46が空転状態で駆動されるのを防ぐことができ、ドライ運転となって潤滑ポンプ46のシール類、軸受等が早期に摩耗、損傷される等の問題を解消することができる。
次に、ステップ9では、潤滑ポンプ46を停止する前にステップ1の処理で検出した潤滑油Gの温度Tと、前記警告温度Tohとの温度差(Toh−T)を求め、この温度差(Toh−T)が、下記の数1式に示すように予め決められた所定の閾値α(例えば、5℃)の範囲内にあるか否か、即ち閾値α以下の値となっているか否かを判定する。
Figure 0005009943
そして、ステップ9で「NO」と判定する間は、温度差(Toh−T)が所定の閾値αよりも大きく、潤滑油Gの温度Tは、警告温度Tohよりも十分に低い温度であると判断することができる。そこで、この場合にはステップ5に戻って、これ以降の処理を続行する。
一方、ステップ9で「YES」と判定したときには、温度差(Toh−T)が所定の閾値αの範囲内であり、潤滑油Gの温度Tが警告温度Tohに近付くことにより、潤滑油Gの温度状態または走行状態が正常ではないと判断することができる。そこで、この場合には、ステップ10に移って「オーバヒート」警告を行い、例えば図6に示す表示器54によりオペレータに対して、車両の走行速度Vを前記判定速度V1 以下となる速度まで落すべきことを報知する。そして、その後はステップ5に戻って、これ以降の処理を続行するようにする。
また、ステップ5以降の処理を繰返すときに、オペレータが車両の走行速度Vを前記判定速度V1 以下となる速度まで落したときには、ステップ6の処理で「YES」と判定される。このため、次なるステップ7では潤滑ポンプ46の駆動が再開され、これにより、車輪取付筒19内に溜められた潤滑油Gを潤滑ポンプ46により強制的に循環することができる。
かくして、本実施の形態では、潤滑ポンプ46が空転状態となってドライ運転が続くのを防ぐために潤滑ポンプ用モータ47で潤滑ポンプ46の駆動を停止したときには、先に温度センサ51で検出した潤滑油Gの温度Tと警告温度Tohとの温度差(Toh−T)が、所定の閾値α(例えば、5℃程度)以下であるか否かを判定し、この温度差(Toh−T)が閾値αの範囲内となるときには、ダンプトラック1のオペレータに対して「オーバヒート」警告を発する構成としている。
これにより、車輪取付筒19の外部に位置して温度センサ51を、例えば図4中に示すように潤滑ポンプ46の吐出側に設けた場合でも、車輪取付筒19内の遊星歯車減速機構23,31等がオーバヒートするのを、オペレータへの警告により防ぐことができる。
即ち、本実施の形態では、車輪取付筒19内に温度センサを設けて潤滑油の温度を直接的に検出することは、構造上の制約が大きく実際上では難しいため、温度センサ51を潤滑ポンプ46の吐出側に設ける構成としている。そして、潤滑ポンプ46の駆動を停止したときには、車輪取付筒19内に溜められた潤滑油Gの温度を、温度センサ51により検出された最新のデータ(潤滑ポンプ46の駆動時に検出した温度T)で代用するものである。
この結果、潤滑ポンプ46の停止後に車両の走行を続けた場合でも、前述の如く潤滑ポンプ46の駆動時に予め検出した温度T(最新の温度Tのデータ)を用いることにより、ダンプトラック1のオペレータに対して「オーバヒート」の警告を発することができ、これによって潤滑油Gの温度が、警告温度Tohよりもさらに上昇してしまうのを防ぐように促すことができる。
そして、ダンプトラック1のオペレータが、「オーバヒート」警告に従って走行速度Vを判定速度V1 以下まで低下させたときには、潤滑ポンプ用モータ47を再駆動して潤滑ポンプ46を再び作動することができ、車輪取付筒19内に溜められた潤滑油Gを潤滑ポンプ46により強制的に循環することができる。これにより、潤滑油Gの油温をオイルクーラ49等を用いて下げることができ、車輪取付筒19内の遊星歯車減速機構23,31等に油温の低い潤滑油を供給して、潤滑性能、冷却性能を高めることができる。
従って、本実施の形態によれば、潤滑ポンプ46の停止前に温度センサ51で検出した潤滑油Gの温度Tと警告温度Tohとの温度差(Toh−T)を求め、この温度差(Toh−T)が所定の閾値αの範囲内にあると判定したときに、警報を発して車両のオーバヒートを防止することができ、装置の信頼性、寿命を高めることができる。
次に、図8および図9は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
然るに、第2の実施の形態の特徴は、潤滑ポンプ46の停止前に温度センサ51で検出した潤滑油Gの温度Tと警告温度Tohとの温度差(Toh−T)が閾値αの範囲内にあると判定したときに、予め設定された遅延時間の経過後に「オーバヒート」警告の警報を発する構成としたことにある。
即ち、本実施の形態で採用した図8に示す制御処理では、ステップ11〜ステップ17、ステップ19,20にわたる処理を、第1の実施の形態で述べたステップ1〜9(図7参照)の処理と同様に行う。そして、ステップ20の判定処理で温度差(Toh−T)が閾値αの範囲内にあるとして「YES」と判定したときには、次なるステップ21に移ってカウンタCを、「C←C+1」として歩進する。
そして、次なるステップ22では、カウンタCの計数値が予め決められた遅延時間に該当する所定値C0 (例えば、100〜300秒)に達したか否かを判定する。ここで、ステップ22で「NO」と判定する間は、ステップ20で温度差(Toh−T)が閾値αの範囲内にあると判定した後に、例えば100〜300秒の遅延時間(所定値C0 )が未だ経過していないので、ステップ15に戻ってこれ以降の処理を続行するようにする。
そして、ステップ15以降の処理を繰返すときに、ステップ16で「YES」と判定し、次なるステップ17で潤滑ポンプ46の駆動が再開されるときには、次なるステップ18に移ってカウンタCの計数値を「0」にリセットする。そして、その後はステップ11に戻って、これ以降の処理を続行するようにする。
一方、ステップ22で「YES」と判定したときには、カウンタCの計数値が所定値C0 に達し、例えば100〜300秒の遅延時間が経過した場合であるから、次なるステップ23に移って「オーバヒート」警報を行い、例えば図6に例示した表示器54によりオペレータに対して、車両の走行速度Vを判定速度V1 以下となる速度まで落すべきことを報知する。そして、その後はステップ15に戻って、これ以降の処理を続行するようにする。
即ち、本発明者等は、車輪取付筒19内に溜められた潤滑油Gの温度変化を、図9中に特性線61で示す特性データとして得ることができた。この場合、車輪取付筒19内の潤滑油Gは、潤滑ポンプ46の駆動を停止させた状態において比較的早く警告温度Tohに近い温度まで上昇する。しかし、潤滑油Gの温度Tは、警告温度Tohに近付くに従って、その上昇カーブが緩やかとなり、警告温度Tohを越えるまでにはタイムラグ(遅延時間)を有していることが確認された。
そこで、第2の実施の形態では、潤滑油Gの温度Tと警告温度Tohとの温度差(Toh−T)が閾値αの範囲内にあり、警告温度Tohに近付いた状態でも、図8のステップ21,22の処理により、カウンタCの計数値が所定値C0 に達する時間(例えば、100〜300秒の遅延時間)が経過するのを待ち、遅延時間の経過後に「オーバヒート」警告の警報を発する構成としたものである。
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができ、温度差(Toh−T)が所定の閾値αの範囲内にあるときには、警報を発して車両のオーバヒートを防止することができる。しかも、第2の実施の形態では、予め決められた遅延時間の経過後に警報を発するために、下記のような作用効果を得ることができる。
即ち、潤滑油Gの温度Tが警告温度Tohよりも閾値α(例えば、5℃程度)低いにも拘らず、温度差(Toh−T)が閾値αの範囲内にあると判定して即座に警報を発した場合には、オペレータに余分な負担を与える可能性がある。しかし、第2の実施の形態では、カウンタCの計数値が所定値C0 (例えば、100〜300秒に相当する遅延時間)に達するまでは待機し、遅延時間の経過後に警報を発することにより、オペレータに対してタイムリーな「オーバヒート」警告を行うことができ、オペレータの負担を確実に軽減することができる。
次に、図10は本発明による第3の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
然るに、第3の実施の形態の特徴は、閾値αの範囲内にある温度差(Toh−T)が相対的に大きいときに、「オーバヒート」警告を発するまでの遅延時間を長く設定し、前記温度差(Toh−T)が相対的に小さいときには前記遅延時間を短く設定する構成としたことにある。
即ち、本実施の形態で採用した図10に示す制御処理では、ステップ31〜ステップ34にわたる処理を、第1の実施の形態で述べたステップ1〜4(図7参照)の処理と同様に行う。そして、ステップ35では、ステップ31による潤滑油Gの温度Tと警告温度Tohとの温度差ΔTを、下記の数2式により求める。
Figure 0005009943
次に、ステップ36〜38、ステップ40,41にわたる処理を、第1の実施の形態で述べたステップ5〜9(図7参照)の処理と同様に行う。そして、ステップ41の判定処理で温度差ΔT、即ち温度差(Toh−T)が閾値αの範囲内にあるとして「YES」と判定したときには、次なるステップ42に移ってカウンタCを、「C←C+1」として歩進する。
また、次なるステップ43では、温度差ΔTが他の閾値β(β<α)の範囲内にあるか否かを判定する。ここで、閾値βは、前記閾値αよりも小さい値が設定され、例えば閾値αを5℃とした場合には、閾値βは3℃程度に設定されるものである。このため、温度差ΔTが5℃以下となって、かつ3℃よりも大きいときには、ステップ43で「NO」と判定される。
そして、この場合には、次なるステップ44でカウンタCの計数値が予め決められた長い遅延時間に該当する所定値C1 (例えば、300秒程度の遅延時間)に達したか否かを判定する。ここで、ステップ44で「NO」と判定する間は、ステップ41〜43にわたる処理で温度差ΔTが、閾値β〜αの範囲(β<ΔT≦α)内にあると判定した後に、例えば300秒の遅延時間(所定値C1 )が未だ経過していないので、この場合にはステップ36に戻ってこれ以降の処理を続行するようにする。
そして、ステップ36以降の処理を繰返すときに、ステップ37で「YES」と判定し、次なるステップ38で潤滑ポンプ46の駆動が再開されるときには、次なるステップ39に移ってカウンタCの計数値を「0」にリセットする。そして、その後はステップ31に戻って、これ以降の処理を続行するようにする。
一方、ステップ44で「YES」と判定したときには、カウンタCの計数値が所定値C1 (例えば、300秒の遅延時間に該当)に達した場合であるから、次なるステップ45に移って「オーバヒート」警告を行い、例えば図6に例示した表示器54によりオペレータに対して、車両の走行速度Vを判定速度V1 以下となる速度まで落すべきことを報知する。そして、その後はステップ36に戻って、これ以降の処理を続行するようにする。
また、ステップ43で「YES」と判定したときには、温度差ΔTが閾値β(例えば、3℃)以下まで小さくなっているので、この場合には、次なるステップ46でカウンタCの計数値が予め決められた短い遅延時間に該当する所定値C2 (例えば、180秒程度の遅延時間)に達したか否かを判定する。そして、この遅延時間が経過するまでは、ステップ46で「NO」と判定するので、この場合にはステップ36に戻ってこれ以降の処理を繰返すようにする。
一方、ステップ46で「YES」と判定したときには、温度差ΔTが閾値βの範囲(ΔT≦β)内にある状態で、例えば180秒の遅延時間(所定値C2 )が経過した場合である。そこで、この場合にはステップ45に移って「オーバヒート」警告を行い、オペレータに対して車両の走行速度Vを判定速度V1 以下となる速度まで落すべきことを報知する。そして、その後はステップ36に戻って、これ以降の処理を続行するようにする。
かくして、このように構成される第3の実施の形態でも、前記第1,第2の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。しかも、第3の実施の形態では、閾値αの範囲内にある温度差ΔTが、閾値β(例えば、3℃)よりも大きいときに遅延時間を、例えば300秒程度まで長くし、温度差ΔTが閾値β以下まで小さくなったときには、例えば180秒程度まで遅延時間を短く設定する構成としている。
これにより、潤滑油Gの温度Tと警告温度Tohとの温度差ΔTが閾値αの範囲内にあっても、相対的に大きいか、小さいかに応じて遅延時間を可変に設定することができる。そして、夫々の遅延時間が経過したときには、オーバヒート警告を発することができ、潤滑油の実温度に対応したオーバヒート警告をオペレータに報知することができる。
次に、図11は本発明による第4の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
然るに、第4の実施の形態の特徴は、閾値αの範囲内にある温度差ΔT(ΔT=Toh−T)の大,小に従って、「オーバヒート」警告を発するまでの遅延時間を可変に設定する構成としたことにある。
即ち、本実施の形態で採用した図11に示す制御処理では、ステップ51〜ステップ54にわたる処理を、第1の実施の形態で述べたステップ1〜4(図7参照)の処理と同様に行う。そして、ステップ55では、ステップ51による潤滑油Gの温度Tと警告温度Tohとの温度差ΔTを、上記の数2式により求める。
そして、次なるステップ56では、温度差ΔTに応じて増減される計数値Ck を下記の数3式に従って演算する。この数3式を、1次関数としてより具体化した場合には、下記の数4式として演算されるものである。
Figure 0005009943
Figure 0005009943
この場合、数4式中の係数kは、一例としては60秒に相当する値に設定される。このため、温度差ΔTが、例えば3℃の場合に計数値Ck は、180秒の遅延時間に相当する計数値に設定され、例えば5℃の場合には計数値Ck は、300秒の遅延時間に相当する計数値に設定される。
次に、ステップ57〜59、ステップ61,62にわたる処理を、第1の実施の形態で述べたステップ5〜9(図7参照)の処理と同様に行う。そして、ステップ62の判定処理で温度差ΔT、即ち温度差(Toh−T)が閾値αの範囲内にあるとして「YES」と判定したときには、次なるステップ63に移ってカウンタCを、「C←C+1」として歩進する。
そして、次なるステップ64では、カウンタCの計数値が、数4式で演算した遅延時間に該当する計数値Ck に達したか否かを判定する。ここで、ステップ64で「NO」と判定する間は、ステップ62の処理で温度差ΔTが、閾値αの範囲(ΔT≦α)内にあると判定した後に、例えば計数値Ck に相当する遅延時間が未だ経過していないので、この場合にはステップ57に戻ってこれ以降の処理を続行するようにする。
そして、ステップ57以降の処理を繰返すときに、ステップ58で「YES」と判定し、次なるステップ59で潤滑ポンプ46の駆動が再開されるときには、次なるステップ60に移ってカウンタCの計数値を「0」にリセットする。そして、その後はステップ51に戻って、これ以降の処理を続行するようにする。
一方、ステップ64で「YES」と判定したときには、カウンタCの計数値が前記数4式による計数値Ck (遅延時間に相当)に達した場合であるから、次なるステップ65に移って「オーバヒート」警告を行い、例えば図6に例示した表示器54によりオペレータに対して、車両の走行速度Vを判定速度V1 以下となる速度まで落すべきことを報知する。そして、その後はステップ57に戻って、これ以降の処理を続行するようにする。
かくして、このように構成される第4の実施の形態でも、前記第1〜第3の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。しかも、第4の実施の形態では、閾値αの範囲内にある温度差ΔTの大,小に従って、「オーバヒート」警告を発するまでの遅延時間(計数値Ck )を、前記数3式または数4式により可変に設定する構成としている。
これにより、潤滑油Gの温度Tと警告温度Tohとの温度差ΔTが閾値αの範囲内にあっても、相対的に大きいか、小さいかに応じて遅延時間を可変に設定することができる。そして、夫々の遅延時間が経過したときには、オーバヒート警告を発することができ、潤滑油の実温度に対応したオーバヒート警告をオペレータに報知することができる。
次に、図12は本発明による第5の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
然るに、第5の実施の形態の特徴は、温度センサ51で検出した潤滑油Gの温度Tと警告温度Tohとの温度差(Toh−T)が閾値αの範囲内にあると判定したときに、車両の走行状態が正常ではない(即ち、走行速度Vが速すぎる)として「速度超過」の警報を発する構成としたことにある。
即ち、本実施の形態で採用した図12に示す制御処理では、ステップ71〜ステップ79にわたる処理を、第1の実施の形態で述べたステップ1〜9(図7参照)の処理と同様に行う。
しかし、本実施の形態では、ステップ79の判定処理で温度差(Toh−T)が閾値αの範囲内にあるとして「YES」と判定したときには、次なるステップ80に移って「速度超過」の警告を発する点で、第1の実施の形態とは異なるものである。
かくして、このように構成される第5の実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができ、温度差(Toh−T)が所定の閾値αの範囲内にあるときには、警報を発して走行中の車両が「速度超過」状態にあることをオペレータに知らせることができる。
そして、この点は前記第2〜第4の実施の形態についても同様であり、例えば第2の実施の形態の場合には、図8に示すステップ23の処理で「オーバヒート警告」に替えて、例えば「速度超過警告」を発する構成としてもよい。また、第3の実施の形態の場合には、図10に示すステップ45の処理で「オーバヒート警告」に替えて、例えば「速度超過警告」を発する構成としてもよい。さらに、第4の実施の形態の場合には、図11に示すステップ65の処理で「オーバヒート警告」に替えて、例えば「速度超過警告」を発する構成としてもよい。
なお、前記第1の実施の形態では、図7に示す制御処理のうち、ステップ8の処理が本発明の構成要件であるモータ停止手段の具体例を示し、ステップ9の判定処理が本発明の構成要件である温度差判定手段の具体例を示し、ステップ10の処理が本発明の構成要件である警報信号出力手段の具体例を示している。
また、第2の実施の形態では、図8に示す制御処理のうち、ステップ19の処理がモータ停止手段の具体例を示し、ステップ20の判定処理が温度差判定手段の具体例を示し、ステップ21,22の処理が、本発明の構成要件である遅延時間設定手段の具体例を示し、ステップ23の処理が警報信号出力手段の具体例を示している。また、第3の実施の形態では、図10に示す制御処理のうち、ステップ40の処理がモータ停止手段の具体例を示し、ステップ41,43の判定処理が温度差判定手段の具体例を示し、ステップ42,44,46の処理が遅延時間設定手段の具体例を示し、ステップ45の処理が警報信号出力手段の具体例を示している。
一方、第4の実施の形態では、図11に示す制御処理のうち、ステップ61の処理がモータ停止手段の具体例を示し、ステップ62の判定処理が温度差判定手段の具体例を示し、ステップ56,63,64の処理が遅延時間設定手段の具体例を示し、ステップ65の処理が警報信号出力手段の具体例を示している。また、第5の実施の形態では、図12に示す制御処理のうち、ステップ78の処理がモータ停止手段の具体例を示し、ステップ79の判定処理が温度差判定手段の具体例を示し、ステップ80の処理が警報信号出力手段の具体例を示している。
また、前記各実施の形態では、温度センサ51を潤滑ポンプ46の吐出側に設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図4中に二点鎖線で示すように、潤滑ポンプ46の吸込み側に温度センサ51′を設ける構成としてもよいものである。
また、前記第1の実施の形態では、第1の遊星歯車減速機構23と第2の遊星歯車減速機構31とからなる2段の減速歯車機構を用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば1段の減速歯車機構を用いる構成としてもよく、あるいは3段以上の減速歯車機構を用いる構成としてもよいものである。
また、前記第1の実施の形態では、後輪7の回転速度を検出する速度センサ52を走行用モータ17に設け、回転軸18の回転速度として検出する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば後輪7の回転を直接検出してもよく、また、車輪取付筒19の回転を検出する構成としてもよい。即ち、本発明で用いる速度センサは、車輪(後輪7)の回転を直接的、間接的に検出することができればよいものである。
また、前記実施の形態では、潤滑ポンプ用モータ47からなる走行用モータ17を駆動源として用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、走行駆動装置の駆動源として、例えば油圧モータ等を用いてもよいものである。
また、前記実施の形態では、図6に例示した表示器54により「オーバヒート警告」または「速度超過警告」等を発する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば音声合成装置、警報ブザーまたはランプ等を用いてオペレータに対し「オーバヒート警告」または「速度超過警告」の異常報知を行う構成としてもよいものである。
さらに、前記実施の形態にあっては、作業車両として後輪駆動式のダンプトラック1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば前輪駆動式または前,後輪を共に駆動する4輪駆動式のダンプトラックに適用してもよく、走行用の車輪を備えたダンプトラック以外の作業車両に適用してもよいものである。
1 ダンプトラック(作業車両)
2 車体
3 ベッセル
5 キャビン
6 前輪
7 後輪(車輪)
8 エンジン
9 主発電機
10 電力制御装置
11 走行駆動装置
12 アクスルハウジング
13 懸架筒
14 モータ収容筒
15 筒状スピンドル
17 走行用モータ(駆動源)
18 回転軸
19 車輪取付筒
20,21 軸受
22 外側ドラム
23,31 遊星歯車減速機構(減速歯車機構)
41 潤滑油供給装置(潤滑油供給手段)
42,43 吸込配管
42A 吸込口
44,45 供給配管
46 潤滑ポンプ
47 潤滑ポンプ用モータ(電動モータ)
48 フィルタ
49 オイルクーラ(熱交換器)
50 圧力センサ
51 温度センサ
52 速度センサ
53 車体コントローラ(制御手段)
54 表示器(報知手段)
58 起伏シリンダ
59 作動油タンク
C0 ,C1 ,C2 所定値(遅延時間)
Ck 計数値(遅延時間)
T 潤滑油の温度
Toh 警告温度
V 走行速度(車輪の速度)
V1 判定速度
α,β 閾値

Claims (6)

  1. 作業車両に設けられ車輪と一体に回転する筒状の車輪取付筒と、該車輪取付筒内に設けられ駆動源の回転を該車輪取付筒に減速して伝える減速歯車機構と、該減速歯車機構に潤滑油を供給する潤滑油供給手段と、前記潤滑油の温度を検出する温度センサと、前記車輪の回転速度を検出する速度センサとを備えた作業車両の走行駆動装置において、
    前記潤滑油供給手段は、電動モータと、該電動モータで駆動されることにより前記車輪取付筒内に溜められた潤滑油を強制的に循環させる潤滑ポンプと、前記車輪の回転速度に従って前記電動モータの駆動,停止を制御する制御手段とにより構成し、
    該制御手段は、
    前記速度センサで検出した前記車輪の速度が予め決められた判定速度よりも速くなったときに前記電動モータの駆動を停止するモータ停止手段と、
    該モータ停止手段により前記電動モータを停止したときに、前記温度センサによって検出された前記潤滑油の温度と予め決められた警告温度とを比較し、両者の温度差が所定の閾値の範囲内にあるか否かを判定する温度差判定手段と、
    該温度差判定手段により前記温度差が閾値の範囲内にあると判定したときに、前記潤滑油の温度状態または走行状態が正常でないことを警報するための信号を出力する警報信号出力手段とを有する構成としたことを特徴とする作業車両の走行駆動装置。
  2. 前記制御手段は、前記警報信号出力手段による警報に従って前記車輪の速度が前記判定速度以下まで低下したときに前記電動モータの駆動を再開する構成としてなる請求項1に記載の作業車両の走行駆動装置。
  3. 前記制御手段は、前記温度差判定手段によって前記温度差が閾値の範囲内にあると判定したときに予め決められた遅延時間を設定する遅延時間設定手段を有し、前記警報信号出力手段は、該遅延時間設定手段により設定された遅延時間の経過後に前記警報を発する構成としてなる請求項1または2に記載の作業車両の走行駆動装置。
  4. 前記遅延時間設定手段は、前記閾値の範囲内にある前記温度差が大きいときには前記遅延時間を長く設定し、前記温度差が小さいときには前記遅延時間を短く設定する構成としてなる請求項3に記載の作業車両の走行駆動装置。
  5. 前記警報信号出力手段は、前記潤滑油の温度がオーバヒート状態にあることを警報する警報信号を出力してなる請求項1,2,3または4に記載の作業車両の走行駆動装置。
  6. 前記警報信号出力手段は、車両の走行速度が速度超過状態にあることを警報する警報信号を出力してなる請求項1,2,3または4に記載の作業車両の走行駆動装置。
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