農水産容器や機器の緩衝包装材や断熱材として主に使用されるスチレン系発泡樹脂は、主にビーズ法により成形される。ビーズ法とは、直径0.3〜3mm程度の真球状のスチレン系樹脂にブタン等の炭化水素系発泡剤を含浸させた原料の発泡樹脂ビーズRb’を予備発泡しておき、予備発泡後の発泡樹脂ビーズRb’を成形型Mにエアー充填してから成形型全体を蒸気加熱することによって、元の体積の約2倍から80倍に前記ビーズを発泡させる成形方法である。
図1は、成形型Mの断面図、及び付着物が付着して完全に蒸気孔22が閉塞された状態におけるコアベントVの拡大断面図である。まず、成形型Mの構造について説明する。成形型Mは通常熱伝導率の高いアルミニウム製であり、図1に示すような構造である。成形型Mは、凸型1と凹型2とから成る。各型1,2を閉じて形成される空間は、成形空間3となっている。成形型Mの各型1,2の外側(成形面1a,2aと反対の側)には多数本のサポート4,5を介して外枠6,7が一体に取付けられており、各型1,2と各外枠6,7とで形成される空間8は、蒸気室11となっている。外枠6,7は、それぞれ外枠本体6a,7a及び裏板6b,7bから構成される。サポート4,5は、発泡樹脂ビーズRb’が成形空間3内で発泡する際、発泡圧により各型1,2が変形するのを防止するために取付けられている。有底円筒状のコアベントVは、その底部21に多数の蒸気孔22が形成されたものである。前記蒸気孔22が成形型Mの各型1,2の成形面1a,2a(以後、「型成形面1a,2a」と略すこともある。)に臨むように、各型1,2に多数のコアベントVが所定間隔をおいて打ち込んで埋設されている。前記蒸気孔22の形状には、スリット状或いは円形等があるが、本発明の実施例においては、円形の蒸気孔22を有するコアベントVを使用する。
次に、スチレン系発泡樹脂成形体Rbの成形工程について説明する。成形空間3には予備発泡後の発泡樹脂ビーズRb’が充填ガン10を介して充填される。加熱蒸気は、蒸気流入管12より蒸気室11に導入されると同時に、前記蒸気孔22を介して成形型Mの各型1,2全面から成形空間3に一度に噴射される。噴射後直ちに前記成形空間3内の発泡樹脂ビーズRb’は一気に発泡し、熱融着して一体化する。加熱後の前記蒸気は、一部液化した状態でドレン管13を通って成形型Mより排出される。成形された発泡樹脂成形体Rb表面が滑らかになるまで十分に蒸気加熱した後、成形型Mの各型1,2における外面1b,2b(型成形面1a,2aと反対側の面を指す。以後、「型外面1b,2b」と略すこともある。)全体に冷却水を噴霧して冷却し、凸型1と凹型2を離型して、エジェクトピン(図示せず)で押出して発泡樹脂成形体Rbを取り出す。ここで、前記発泡樹脂ビーズRb’が蒸気加熱された際、溶融した樹脂の一部がコアベントVの蒸気孔22内に進入し、冷却と共に硬化して前記蒸気孔22内に付着する。そして、発泡樹脂成形体Rbを取り出す際、付着した樹脂が前記蒸気孔22内に取り残された場合には、成形工程が繰り返されるに従って前記樹脂は堆積していき、前記蒸気孔22を閉塞してしまう。なお、前記蒸気孔22内に付着した樹脂には、ビーズの発泡樹脂に加えて前記ビーズ粒子Rb’表面にコーティングされたブロッキング防止剤、融着促進剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤等の多種類の有機化合物等も含まれており、これらを樹脂混合物Raとする。
発泡樹脂成形体Rbの冷却は、前記型外面1b,2b全体に冷却水を噴霧し、型ごと冷却することによって行われる。前記冷却水は通常工業用水或いは水道水が用いられるため、前記冷却水の含有物質がスケールSとして前記型外面1b,2b上に付着する。また、コアベントVの蒸気孔22内では、成形工程が繰り返されるに従って、発泡樹脂成形体Rbと接触する型成形面1a,2a側には樹脂混合物Raが、冷却水と接触する型外面1b,2b側にはスケールSが堆積し始め、蒸気孔22内を閉塞するまでに至る。
前記型外面1b,2bのスケールSの付着量が増加すれば、スケールSは熱伝導率が低いために、成形型Mが昇温されにくく、発泡樹脂ビーズRb’粒子の発泡及び熱融着が不完全となって、発泡樹脂成形体Rbの品質が低下する。また、前記蒸気孔22内がスケールSと樹脂混合物Raの堆積によって閉塞が進むと、発泡樹脂ビーズRb’を加熱発泡させるための成形空間3内への蒸気供給量が減少する。従って、閉塞した蒸気孔22或いは閉塞状態の異なる蒸気孔22が混在すれば、発泡樹脂ビーズRb’粒子の発泡及び熱融着が不均一となって、品質不良の発泡樹脂成形体Rbが発生する。なお、図1におけるコアベントVの拡大断面図は、スケールS及び樹脂混合物Raによって蒸気孔22内が完全に閉塞してしまった最悪の閉塞状態を図示したものである。
発泡樹脂成形型及びその蒸気孔に付着した発泡樹脂の除去方法として、リモネンを主成分とした薬剤で発泡樹脂付着物を膨潤させ、高圧水や圧縮空気等の物理的手段で前記付着物を吹き飛ばす方法がある(特許文献1)。しかし、前記薬剤では、成形型及び蒸気孔に付着したスケールを除去できない。
また、特許文献2では、pH1〜5のスケール洗浄剤に成形型を浸漬してスケールを除去して水洗後、スチレン溶解剤とスチレン非溶解剤(溶剤)とからなるスチレン系樹脂洗浄剤に成形型を浸漬して発泡樹脂付着物を剥離させてから水洗する方法が開示されている。しかし、スケール除去と発泡樹脂付着物除去の二工程の除去作業を順に行うため、洗浄時間、作業面積、設備費が増加する。また、同一洗浄槽を用いる場合では洗浄液の交換作業が必要で作業が煩雑となる。
特開2003−170436号公報
特開2005−254786号公報
本発明は、容易に入手可能な洗浄液を用いて、大掛かりな設備を必要とせず、安全且つ安価に、スチレン系発泡樹脂の成形加工に使用される成形型に付着したスケール及び樹脂混合物の両方を、同一工程で除去することを課題としている。
上記の課題を解決するために請求項1の発明は、洗浄槽に収容された有機酸水溶液から成る洗浄液内にスチレン系発泡樹脂成形型を所定時間浸漬させて、前記成形型の外面に付着したスケール、及び当該成形型の成形空間に水蒸気を流入させる蒸気孔に付着した樹脂混合物の双方を除去するための洗浄装置であって、所定間隔をおいて配置された流入ヘッダーと流出ヘッダーとが複数本の蒸気管で連結され、前記洗浄槽に収容された洗浄液を加熱保持させるために、当該洗浄槽の底部に配置される蒸気管ユニットと、前記成形型を前記蒸気管ユニットの直上に配置させた状態で前記洗浄液内に浸漬させるための成形型配置具とを備えていることを特徴としている。
請求項1の発明によれば、成形型配置具を用いて、洗浄槽の底部に設置された蒸気管ユニットの直上に配置させて洗浄液内に浸漬させて、蒸気管ユニットを構成する各連結蒸気管を流れる水蒸気により加熱保持された有機酸水溶液を洗浄液として用いることによって、酸としての化学作用により成形型の外面及び外面側の蒸気孔内に付着した多種スケールが溶解又は剥落して、前記スケール除去が可能となる。
また、成形型の蒸気孔内には、冷却水に晒された外面側にはスケールが、成形面側にはスチレン系発泡樹脂及びコーティング剤の有機化合物等の混合物(樹脂混合物)が、層状に存在している。前記有機酸水溶液により、前記外面に付着したスケールが除去される際、蒸気孔内の外面側のスケールも共に除去される。前記蒸気孔内のスケールが除去されることにより、前記蒸気孔内に付着した前記樹脂混合物において、所定温度に加熱保持された有機酸水溶液との接触面積が増加する。
洗浄槽の底部に設置された蒸気管ユニットを構成する複数本の蒸気管を流れる水蒸気により加熱保持された有機酸水溶液が、前記樹脂混合物に十分に触れると、前記有機酸水溶液の熱作用により、コーティング剤の有機化合物等のうち融点の低いものから融解していき、前記発泡樹脂自身も軟化点に近づくにつれて軟化していく。前記発泡樹脂の軟化に伴い、前記発泡樹脂内部に含浸されていた発泡剤が逸散する(抜け出る)ために、前記樹脂混合物は収縮して前記蒸気孔から剥落し、前記樹脂混合物の除去が可能となる。
従って、所定温度に加熱保持された有機酸水溶液内に前記成形型を所定時間浸漬させるという一工程のみにて、無機化合物主体のスケール及び発泡樹脂と有機化合物等の混合物という組成、化学的性質、及び付着状態の全く異なる二種類の付着物を同時に除去できる。
また、洗浄液の加熱手段として、スチレン系発泡樹脂成形型により成形に不可欠な水蒸気を用いた蒸気管ユニットを使用しているため、当該成形型に使用している既設の蒸気配管の使用が可能となって、洗浄装置のみのための水蒸気の配管を新設する必要がなくなる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記成形型配置具は、前記蒸気管ユニットの隣接する連結蒸気管の間に配置される複数の型載せ台単体から成る型載せ台であることを特徴としている。このため、当該複数の型載せ台単体上に成形型を載せることにより、当該成形型の設置状態が安定化する。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記洗浄液内に垂直に挿入配置されて、洗浄液をバブリングさせながら対流させるための高圧空気を噴出させる攪拌用エアー配管を備えていることを特徴としている。
請求項3の発明によれば、洗浄液がバブリングしながら対流するために、成形型の外面に付着したスケールや、当該成形型の蒸気孔に付着した樹脂混合物の双方が、洗浄液の水流に接するために、溶解或い剥離し易くなって、洗浄効果が高められる。
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記洗浄槽の平面形状は方形状であって、前記攪拌用エアー配管は、当該洗浄槽の四隅に配置されていることを特徴としており、殆どの洗浄槽が成形型の平面形状に対応して方形状をなしているのに対応した複数の攪拌用エアー配管の配置となって、洗浄液を効果的に攪拌させられる。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの洗浄装置を用いて、有機酸水溶液によりスチレン系発泡樹脂成形型を洗浄することを特徴とするスチレン系発泡樹脂成形型の洗浄方法であり、洗浄槽の底部に設置した蒸気管ユニットにより有機酸水溶液が加熱保持されているために、成形型の外面に付着しているスケールと、蒸気孔の内周面に付着している樹脂混合物との双方を一回の洗浄により除去できる。
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記有機酸水溶液は、沸点から5°Cを減じた温度から沸点までの範囲で加熱保持することを特徴としている。
請求項6の発明によれば、有機酸水溶液を沸点に近い温度まで加熱しているために、成形型の蒸気孔に付着した樹脂混合物において、コーティング剤等の有機化合物等のうち融点の低いものから融解していき、スチレン系発泡樹脂の軟化点に至ると前記発泡樹脂が軟化するので、発泡樹脂中に含浸させた発泡剤のガスが逸散する(抜け出る)。これにより前記樹脂混合物全体の体積が収縮するので、前記樹脂混合物は前記蒸気孔から剥離し易くなる。
請求項7の発明は、請求項5又は6の発明において、前記洗浄液が、キレート作用を有するカルボン酸水溶液であることを特徴としている。
請求項7の発明によれば、前記カルボン酸がキレート作用を有することによって、前記カルボン酸がキレート配位子となって金属系スケール中の様々な金属イオンとキレートを形成するため、金属系スケールがより溶解し易くなる。従って、前記カルボン酸自身の持つ酸の作用とキレート作用の双方により前記成形型に付着したスケール(特に金属系スケール)をより一層効果的に除去できる。
本発明によれば、成形型配置具を用いて、洗浄槽の底部に設置された蒸気管ユニットの直上に配置させて洗浄液内に浸漬させて、蒸気管ユニットを構成する各連結蒸気管を流れる水蒸気により加熱保持された有機酸水溶液内に成形型を所定時間浸漬保持させるという一工程のみにて、無機化合物主体のスケール及び発泡樹脂と有機化合物等の混合物という全く性質の異なる二種類の付着物を同時に除去することが可能となる。また、前記有機酸としてキレート作用を有するカルボン酸を用いることによって、前記付着物の高い除去効果が奏される。
本発明は、スチレン系発泡樹脂の成形加工に使用される成形型を有機酸水溶液に浸漬させて、前記成形型に付着した性質の異なる二種類の付着物を同一工程で除去する成形型の洗浄装置、及び洗浄方法である。以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
まず、成形型Mにおいて、型外面1b,2b及びコアベントVの蒸気孔22に付着したスケールS及び樹脂混合物Raを除去するための洗浄装置Pについて説明する。図2は、成形型Mの洗浄装置Pを構成する洗浄槽Bの正面断面図、及び洗浄槽Bに一部収容された蒸気管ユニットUを示した図である。図2に示す通り、前記洗浄装置Pは、洗浄液Wである有機酸水溶液を収容する洗浄槽B、及び該洗浄槽B内の洗浄液Wを加熱保持させるための加熱手段とを備えている。洗浄槽B底部に水蒸気の蒸気管ユニットUが浸漬配管されている。前記蒸気管ユニットUは、蒸気流入管40と、一対の蒸気管ヘッダー(蒸気流入ヘッダー41及び蒸気排出ヘッダー42)と、各蒸気管ヘッダー41,42を連結する多数の連結蒸気管43と、蒸気排出管44とで構成される。洗浄槽B底部には、隣接する各連結蒸気管43の間に配置される複数の型載せ台単体50aから成る型載せ台50が配置されている。前記洗浄槽Bは蓋31と共に全体が断熱層(図示せず)で覆われている。前記蒸気管ユニットUは前記洗浄槽Bから出るとドレン管37より排水溝34に至る。また、洗浄液Wの蒸発等によって足し水をする際は、給水管30より給水される。洗浄槽B底部に溜まった沈殿物等は、回収配管35より沈殿物回収槽33に収容される。洗浄液Wの沸騰時等に洗浄液Wがあふれた場合には、オーバーフロー管32より前記沈殿物回収槽33に収容される。洗浄槽Bの底部に沈殿した固形物は、回収配管35より沈殿物回収槽に回収される。前記沈殿物回収槽33中に回収された洗浄液Wはろ過されて固形物のみ回収され、ろ液は洗浄液Wとして再び洗浄槽B内に戻される。廃水配管36は、洗浄が繰り返された後、洗浄槽B内の洗浄液Wを新しい洗浄液に交換するときにのみ使用される。交換の際は、洗浄液Wを水酸化ナトリウム等の塩基性化合物で中和した後、前記廃水配管36のバルブ36aを開き、排水溝34に洗浄液Wを廃棄する。なお、30a,35a,36a,37a,40aは、それぞれ各管30,35,36,37,40に組み込まれた開閉バルブを示す。
次に、洗浄槽B内の洗浄液Wを加熱保持させるための加熱手段について説明する。図3は、成形型Mの洗浄装置Pにおける洗浄槽Bの平面図である。洗浄槽B内の洗浄液Wを加熱保持するために、洗浄槽B底部に蒸気管ユニットUが浸漬配管されている。高温の水蒸気が蒸気管ユニットU内を流れることにより、洗浄液Wが間接的に加熱される。前記水蒸気はスチレン系発泡樹脂成形工程における加熱手段として元々使用されているため、洗浄装置Pのみのために水蒸気の配管を新設する必要はなく、蒸気管ユニットUは、発泡樹脂成形機の蒸気配管を前記洗浄装置Pに延設すれば足りる。図3において、洗浄槽Bの形状は如何なる形状でも可能であるが、本実施例においては、洗浄槽Bが方形状である場合を例にして説明する。方形状の洗浄槽B内底部において、一対の短辺側の側壁に沿って蒸気流入ヘッダー41及び蒸気排出ヘッダー42が対向配置され、前記蒸気流入ヘッダー41の長手方向の一端には蒸気流入管40が、蒸気排出ヘッダー42の長手方向の一端には蒸気排出管44が連結しており、蒸気流入管40と蒸気排出管44は対角に配置される。前記蒸気流入ヘッダー41及び蒸気排出ヘッダー42は、所定の間隔をおいて、洗浄槽Bの長辺側の側壁に平行な複数の連結蒸気管43で連結されている。従って、蒸気管ユニットU内の水蒸気の経路は、蒸気流入管40より蒸気流入ヘッダー41に流入し、各連結蒸気管43を通って、蒸気排出ヘッダー42に集まり、蒸気排出管44を通って洗浄槽B外に流出し、ドレン管37より排出溝34に廃棄される。なお、蒸気管ユニットUにおける洗浄液Wと接する部分の表面積は、洗浄液Wを沸点まで加熱することが十分に可能な伝熱面積以上になるよう設定されている。
成形型Mの洗浄槽B内への設置方法について説明する。図3の洗浄槽Bの平面図に示した通り、各型載せ台単体50aは、前記連結蒸気管43と並列して設置される。前記型載せ台単体50aの高さは、連結蒸気管43の洗浄槽B底面からの位置よりもやや高い。このため、成形型Mを複数の前記型載せ台単体50a上に設置しても、連結蒸気管43とは干渉しない。成形型Mを前記洗浄槽B内に浸漬する際は、成形型Mの凸型1と凹型2が離型した状態でも、各型1,2が閉じた状態でも可能であり、複数の前記型載せ台単体50aの上に安定性良く成形型Mを設置する。成形型Mに取付けられたサポート4,5にはスケールSが付着していることが多いため、サポート4,5を成形型Mに取付けたままの状態で洗浄槽B内に浸漬させても良い。その場合には、洗浄中に成形型Mが安定性を損なうことがないように、複数の型載せ台単体50aの上に補助板60を介して、サポート4,5を取付けた成形型Mを設置すれば良い。前記補助板60は、金網状の一枚板、或いは多数の孔が並んだ一枚板であり、蒸気管ユニットU(連結蒸気管43)からの熱伝導を妨げたり、攪拌用のエアーや洗浄液W沸騰時の蒸気泡によるバブリング効果を軽減させることがないように補助板60の材質や大きさを考慮する。また、補助板60として小片の板を複数枚用いてもよい。洗浄槽B内に複数の成形型Mを浸漬させる場合には、各成形型Mの安定性を確保するために前記補助板60の大きさを変えて対応するか、複数枚の補助板60を準備する。また、型載せ台50上に設置する代わりに、洗浄槽B及び成形型Mに対応する枠に成形型Mを嵌め込んで、前記枠ごと洗浄槽B内に浸漬させたり、成形型専用ホルダーに成形型Mを固定し、ホルダーごと吊り下げて洗浄槽B内に浸漬させることも可能である。
洗浄槽B内の洗浄液Wを攪拌する手段について説明する。図4(イ),(ロ)は、それぞれ洗浄槽Bに収容された洗浄液Wを攪拌するための攪拌用エアー配管70の配置を示した洗浄槽Bの平面図及び正面断面図である。洗浄槽B内で加熱保持された洗浄液Wを攪拌することにより、洗浄槽B内の液温が一様になるだけでなく、型外面1b,2b及びコアベントVの蒸気孔22に付着したスケールSや樹脂混合物Raが高温洗浄液Wの水流に曝されて十分に高温洗浄液Wと接触するので、溶解或いは剥離し易くなる。攪拌手段として可能な一例を図4に例示する。成形型Mの浸漬の妨げにならないような位置、例えば、洗浄槽B内の四隅に、攪拌用のエアー配管70を配置し、洗浄液W内に高圧空気を導入してバブリングさせながら洗浄槽B内の洗浄液Wを所定方向に対流させる。エアー配管70のエアー噴出口を、洗浄槽B内の深さ方向に沿ってエアー配管70上に等間隔に開口して、エアーを水平方向に噴射させる。また、エアー配管70を洗浄槽B底部まで伸ばし、その先端を開口してエアーを上方に向けて噴射させても良い。また、洗浄液Wが沸点まで昇温されれば、洗浄液W内部から蒸気泡が激しく発生するため、蒸気泡によるバブリングによっても洗浄液Wは十分に攪拌される。更に、前記加熱手段として用いた蒸気管ユニットUにおいて、例えば洗浄液W内に浸漬している連結蒸気管43の一部或いは一端を開口しておくことにより、高温蒸気が直接洗浄液W内に導入され、前記エアーと同様の攪拌効果が得られる。なお、この場合には、洗浄液Wの濃度が変化しないよう適宜濃度を調整する。
洗浄液Wの利用方法及び交換方法について説明する。洗浄液Wは成形型Mの一回の洗浄ごとに交換する必要はなく、繰り返し利用が可能である。洗浄ごとに生じる沈殿物等は、洗浄ごとに回収配管35のバルブ35aを開けて沈殿物回収槽33に回収させても良いし、数回の洗浄後に溜まった沈殿物をまとめて回収させても良い。前記沈殿物は、洗浄液Wと共に沈殿物回収槽33に回収されるが、前記沈殿物と洗浄液Wを確実に固液分離するためにろ過を行い、ろ液の洗浄液Wは再び洗浄槽Bに戻され、残った固形物は廃棄される。洗浄液Wの繰り返し利用により、蒸発等で洗浄液Wの濃度が増した場合には、給水管30のバルブ30aを開き、足し水を行って所定濃度に戻す。洗浄液Wを十分に繰り返し利用した後、新しい洗浄液に交換する場合には、まず、洗浄液Wを水酸化ナトリウム等の塩基性化合物で中和した後、中性になった洗浄液Wを放置し、洗浄液W中の固形物を完全に沈殿させ、洗浄槽B内の洗浄液Wを沈殿物と上澄とに分離する。回収配管35のバルブ35aを開けて洗浄液Wを洗浄槽B底部に開口した排出口38より流出させながら洗浄槽B底部の沈殿物を沈殿物回収槽33に回収する。沈殿物回収後、回収配管35のバルブ35aを閉じて、廃水配管36のバルブ36aを開け、固形物が混入していない上澄に相当する洗浄液Wを排水溝34に廃棄する。洗浄槽B内から洗浄液Wが流出後、前記バルブ36aを閉じ、回収配管35のバルブ35aを再び開けてから、洗浄槽B内の汚れや残存物を洗い流して沈殿物回収槽33に回収する。前記バルブ35aを閉じ、洗浄槽B内に給水管30のバルブ30aを開いて所定量を給水し、洗浄液Wの溶質であるカルボン酸を加えて新しい洗浄液Wを所定濃度に調整する。
次に、前記成形型Mに付着したスケールS及び樹脂混合物Raの除去工程について説明する。洗浄液Wを、前記成形型Mが十分浸漬する程度の量まで洗浄槽Bに収容しておく。前記成形型Mをサポート4,5ごと成形機より取り外す。前記成形型Mを、凸型1及び凹型2とを別々に、或いは各型を閉じたままで前記洗浄液Wに浸漬し、洗浄槽B内に設置された前記型載せ台50の上に補助板60を介して設置し、蓋31を閉める。洗浄槽B内の洗浄液Wを加熱するために蒸気管ユニットUの蒸気流入管バルブ40aを開け、高温の水蒸気を洗浄槽Bの底部に流し、前記洗浄槽B内の洗浄液Wを設定温度まで加熱していく。前記スケールS及び前記樹脂混合物Raが十分に成形型Mから除去されるまでの所定時間に亘って設定液温を保持し、除去が完了した時点で蒸気供給を止める。加熱開始から終了まで断続的にエアーを供給して洗浄液Wを攪拌する。加熱終了後、前記洗浄液Wから前記成形型Mを取り出し、流水洗浄する。なお、前記流水洗浄の際、前記成形型Mに埋設されたコアベントVの蒸気孔22に前記樹脂混合物Raが残存していた場合は、70kgf/cm2 程度の高圧水を噴射すれば十分剥落する。
型外面1b,2bに付着しているスケールSについて説明する。前記スケールSの種類として、カルシウム塩、マグネシウム塩等の硬度成分系のスケール、鉄、アルミニウム、亜鉛等の金属酸化物・硫化物系スケール、アモルファスシリカ、或いは硬度成分や金属イオンとシリカが結合してスケール化したシリカ系スケール等がある。しかし、地域によって水の成分が異なるのと、冷却水が流れる配管内部の劣化状態も工場によって様々なため、型外面1b,2bに付着するスケールSの種類も付着状態も多様である。
コアベントVの蒸気孔22内に付着している樹脂混合物Raにおいて、その構成成分は、発泡樹脂成形体Rbの出発原料である発泡樹脂ビーズRb’のスチレン系発泡樹脂に加えて、前記発泡樹脂ビーズRb’表面にコーティングされた多種類の有機化合物等である。発泡状態が均一でムラのない発泡樹脂成形体Rbを成形するためには、個々の発泡樹脂ビーズRb’粒子が単独で存在し、粒子一つ一つが十分に発泡して周囲の粒子と満遍なく熱融着することが必要である。このため、前記発泡樹脂ビーズRb’粒子表面にはブロッキング防止剤、帯電防止剤等がコーティングされて粒子間の不必要な結合を防止するのと同時に、個々の発泡樹脂ビーズRb’粒子が熱融着し易いように融着促進剤も塗布されている。更に、前記発泡樹脂ビーズRb’粒子表面には、発泡樹脂成形体Rbの用途によっては着色剤や難燃剤もコーティングされる。前記樹脂混合物Raの構成成分であるスチレン系発泡樹脂及び多種類の有機化合物等は、その軟化点或いは融点が多様であり、例えば、発泡樹脂の軟化点は80〜100℃、その融点は110〜115℃付近に対して、融着促進剤の融点は60〜80℃、ブロッキング防止剤は120℃と様々であり、前記樹脂混合物Ra全体としての軟化点或いは融点の温度範囲は約60〜120℃となっている。
本発明で用いられる洗浄液Wは単一或いは複数種混合した有機酸水溶液である。前記有機酸として、以下に示すような有機化合物が挙げられる。即ち、カルボン酸RCOOH、スルホン酸RSO3 H、スルフィン酸RSO2 H、フェノールArOH、エノールRCH=CR’(OH)、チオールRSH、酸イミドRCONHCOR’、オキシムRCH=NOH、スルホンアミドArSO2 NH2 等、酸性の官能基を持つ有機化合物である。なお、ここで列挙した有機化合物の化学式中のR及びR’は炭化水素残基を指す。洗浄液Wが有機酸水溶液であることによって、無機酸に比べて成形型Mに対する腐食性が低い。前記有機酸は、水への溶解度が高く、前記カルボン酸水溶液を高温に加熱してもそれ自身が化学反応や分解を起こすことがなく、成形型Mに対する腐食性が十分に低く、生体分子であるか或いは食品添加物や医薬剤としても利用されるような安全性の高い酸であることが望ましい。また、前記有機酸水溶液は、硬度成分系スケールの主であるカルシウムやマグネシウム等の炭酸塩を除去する効果が高いことが望ましい。更に、金属系スケールを除去する際、酸としての作用に加え、キレート配位子として前記金属系スケール中の金属イオンと結合してキレート(キレート化合物)を形成することによって、金属系スケールの除去を促進する作用や前記金属イオンの成形型Mへの再付着を防止する作用を有する有機酸であることが望ましい。そのような条件を満たす有機酸として、カルボン酸が有効である。また、前記カルボン酸としては、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸等が挙げられる。更に、クエン酸及びリンゴ酸の水溶液はシリカ系スケールを除去する効果も高く、特にクエン酸は通常の薬局等で安価に且つ容易に入手可能であることから、本発明における洗浄液Wとしてクエン酸が最適である。前記カルボン酸として、市販の前記カルボン酸の結晶を用いてもよいし、アルカリ金属塩として市販のものを水に溶解させて前記洗浄液として使用してもよい。クエン酸等のように水和物と無水物がある場合には、どちらを使用してもよい。なお、本発明の実施例において、洗浄液Wとしてクエン酸水溶液、リンゴ酸水溶液、及び両者の混合液を採用する。
本発明における洗浄液Wとして用いる有機酸水溶液において、洗浄液としての高い効果が奏される濃度は、前記有機酸(或いはそのアルカリ金属塩)の水への溶解度、成形型Mに付着した付着物量、後述の前記洗浄液Wの加熱温度及び成形型Mの浸漬時間等に依存する。しかし、5×10-3mol/L以上の有機酸濃度であれば、付着物除去の効果は奏され、特に2.5×10-2mol/Lであれば、付着物量に依らず、後述の加熱温度及び浸漬時間内で付着物は完全に除去される。また、前記有機酸水溶液の濃度の上限が常温下における飽和濃度以下であることにより、前記有機酸水溶液を放冷してその液温が常温になっても、前記有機酸は洗浄槽B内に析出することがないので、前記有機酸水溶液を洗浄液Wとして扱い易い。
成形型Mに付着した付着物には、上記した通り、冷却水と接触する側の型外面1b,2b全体及び前記型外面1b,2b側の蒸気孔22内に付着したスケールSと、前記蒸気孔22内の型成形面1a,2a側に付着した発泡樹脂とコーティング剤の有機化合物等からなる樹脂混合物Raの二種類がある。前記成形型Mを、所定温度に加熱保持された有機酸であるカルボン酸の水溶液に所定時間浸漬させるという一工程によって、前記有機酸水溶液による化学的手段及び、加熱による物理手段を同時に講じることができるため、組成、化学的性質、及び付着状態の全く異なる前記二種類の付着物を同時に除去することが可能となる。
まず、前記有機酸水溶液の酸の作用について説明する。洗浄液W中に前記二種類の付着物が付着している成形型Mを浸漬させると、前記洗浄液Wである有機酸水溶液における酸の作用によって、成形型Mの型外面1b,2b及び蒸気孔22内に付着したスケールSが溶解する。前記有機酸がカルボン酸であれば、例えば、カルシウムやマグネシウムの炭酸塩から成る硬度成分系スケールは、炭酸がカルボン酸よりも弱酸であるため、分解して炭酸が遊離する。また、鉄系スケールである鉄酸化物は、カルボン酸によって不均一化して溶解してくる。更に、シリカ系スケールの場合には、前記カルボン酸がクエン酸やリンゴ酸である場合には特に、シリカ系スケールが膨潤し、成形型から剥離し易くなる。
前記有機酸(カルボン酸)水溶液のキレート作用について説明する。前記カルボン酸がキレート作用を有することによって、前記カルボン酸イオンがキレート配位子となって、金属系スケール中の金属イオンとキレートを形成する。このため、たとえ上記した酸の作用により金属系スケールが僅かしか溶解しなかったとしても、その僅かに溶解した金属が過剰に存在するカルボン酸イオンとキレートを作ることによって、金属系スケールのカルボン酸水溶液への溶解反応の平衡が「溶解する」方向へ進む。従って、前記成形型Mに付着していた金属系スケールは前記カルボン酸水溶液中に溶解していくこととなる。従って、前記カルボン酸自身の持つ酸の作用とキレート作用の双方の化学作用により前記成形型Mに付着したスケールSをより一層効果的に除去できる。なお、洗浄液Wが高温であることは、上記したスケールSの除去過程における複数の化学反応が促進されるため、前記スケールSの除去効果を高める一因でもある。
次に、樹脂混合物Ra除去のメカニズムについて説明する。上記した通り、前記成形型Mに埋設されたコアベントVにおいて、その蒸気孔22内には、冷却水と接する型外面1b,2b側にはスケールSが、そして型成形面1a,2a側には発泡樹脂とコーティング剤の有機化合物等からなる樹脂混合物Raが付着している。付着状態が劣悪な場合には、スケールSと樹脂混合物Raが層状に存在し、蒸気孔22を完全に閉塞している。前記洗浄液Wの化学作用によってスケールSが除去されるため、前記蒸気孔22内に付着している前記樹脂混合物Raは、型外面1b,2b側からも型成形面1a,2a側からも前記洗浄液Wと接触するようになって、接触面積が増加する。
この結果、前記樹脂混合物Raには、所定温度に加熱保持された洗浄液Wの有機酸水溶液の熱が十分に伝導するようになる。前記樹脂混合物Raは、軟化点或いは融点の異なる発泡樹脂及び有機化合物等から構成されている。従って、前記有機酸水溶液の液温が沸点近傍から沸点まで加熱されていくと、前記樹脂混合物Raは、融点の低いものから徐々に溶け出していくため、前記樹脂混合物Raの大きさは徐々に減少していく。更に、前記発泡樹脂の軟化点に至れば、前記発泡樹脂が軟化することによって、まだ発泡樹脂内部に残存している発泡剤のガスが樹脂外へ抜け出てくる。このため、前記発泡樹脂は発泡剤が抜けた分だけ収縮するので、前記樹脂混合物Raは更に小さくなって、前記樹脂混合物Raで閉塞されていた前記蒸気孔22は開通し始め、前記樹脂混合物Raは塊状で剥離しやすくなる。このとき、洗浄液Wが沸点に達して沸騰していれば、洗浄液W内部から激しく発生する蒸気泡のバブリング効果、或いは、洗浄槽B内への攪拌用エアーのバブリング効果によって、蒸気孔22から剥離し易くなった状態の前記樹脂混合物Raは容易に剥落する。従って、蒸気孔22に付着していた前記樹脂混合物Raは除去される。
蒸気孔22内の樹脂混合物Raの除去に適した洗浄液Wの加熱保持温度は、前記樹脂混合物Raの構成成分のうち最も高い融点を有するものの融点である必要はない。低融点の有機化合物等の融点、或いは発泡樹脂の軟化点のうち、高い方の温度に達するまで洗浄液Wを加熱保持させればよい。特に、発泡樹脂の発泡剤脱気後の収縮率は大きいので、前記発泡樹脂の軟化点まで加熱保持させた洗浄液Wを用いるのが望ましい。本発明では、洗浄液Wである有機酸(カルボン酸)水溶液の沸点(溶媒の水の沸点とほぼ等しい)まで加熱すれば、スチレン系発泡樹脂の軟化点に至るため、大気圧下での洗浄液Wの加熱によって、容易に樹脂混合物Ra除去が可能となる。従って、例えば大気圧以上に加圧する等、洗浄装置Pの加熱手段を改善して洗浄液温度を120℃或いは150℃付近まで昇温できれば、ポリエチレン系発泡樹脂及びポリプロピレン系発泡樹脂の成形型にも洗浄装置Pは適用可能である。
成形型Mを洗浄液Wに浸漬する最適時間は、付着物の付着状態、洗浄液Wの有機酸の種類、前記有機酸水溶液の濃度、洗浄液Wの加熱保持温度によって変化する。しかし、有機酸水溶液濃度が5×10-3mol/L以上であれば1時間以上10時間以下の浸漬時間で、前記付着物の除去効果が奏され、前記成形型Mへの腐食性も低い。また、前記濃度が2.5×10-2mol/L以上である場合には、前記付着物の付着物量に依らず、浸漬時間3〜5時間で完全に付着物は除去される。従って、成形型Mの洗浄時間を半日未満に短縮することができるので、発泡樹脂成形体Rbの生産性が向上する。
加熱保持された前記洗浄液Wに所定時間浸漬させて成形型Mを洗浄した後に、前記洗浄液Wが収容された洗浄槽Bから前記成形型Mを取り出した際、蒸気孔22に前記樹脂混合物Raがまだ残存している場合がある。しかし、この場合においても、前記樹脂混合物Raは、実質的には前記蒸気孔22から剥離しているのであって、単にその部分に軽く付着しているか、引っ掛かっているのみの状態であるため、水洗により前記樹脂混合物Raを剥落させる。このとき、70kgf/cm2 程度の高圧水を成形型Mに噴射するだけで、容易に前記樹脂混合物Raは吹き飛び、前記樹脂混合物Raの除去が確実となる。
実施例では、クエン酸水溶液、リンゴ酸水溶液、及びクエン酸とリンゴ酸の混合水溶液を洗浄液として使用し、付着物の付着した成形型或いはコアベントの洗浄試験を行った。以下、各実施例について説明する。
実施例1〜9及び比較例1〜3において、クエン酸水溶液は、東海製薬株式会社製クエン酸一水和物(結晶)を用いて所定濃度に調整した。また、リンゴ酸水溶液については、株式会社八宝商会製DL−リンゴ酸を用いて所定濃度に調整した。混合水溶液については、前記クエン酸及び前記リンゴ酸を等重量ずつ混合して所定濃度に調整した。前記各水溶液を所定温度に加熱した。所定温度に加熱保持された各濃度のクエン酸水溶液、リンゴ酸水溶液及び混合水溶液にコアベント或いは成形型を所定時間浸漬させ、付着しているスケール及び樹脂混合物の除去効果及びコアベント或いは成形型に対する腐食性を評価した。なお、本実施例では、クエン酸水溶液及びリンゴ酸水溶液の上限濃度は、各水溶液の飽和濃度ではなく、本実施例に用いたコアベントの付着物の除去が2〜3時間のうちに確実となるのに足りる濃度を上限としている。
図5は、各実施例1〜9及び比較例1〜3における実験条件及び評価結果の一覧表である。図5における前記混合水溶液の濃度表記は、前記混合水溶液中のクエン酸或いはリンゴ酸濃度として表記した。以上の結果より、クエン酸或いはリンゴ酸水溶液において、濃度2.5×10-2mol/L以上の範囲で、95〜100℃に加熱保持された各水溶液に数時間浸漬させることにより、コアベント及び成形型に付着したスケール及び樹脂混合物のどちらも完全に除去できた。また、クエン酸及びリンゴ酸の混合水溶液の場合には、それぞれ単独の水溶液よりも低濃度で、且つ浸漬時間を短縮して付着物を除去でき、高い付着物除去効果が奏された。なお、いずれの水溶液を使用しても、コアベント及び成形型に対する腐食はないことが確認された。