JP5009078B2 - シリンダ錠及びこれを備えた解錠装置 - Google Patents

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Description

本発明は、シリンダ錠及びこれを備えた解錠装置に関し、特に車両用ドアパネルにおけるドアロック機構の解錠を行うためのシリンダ錠及びこれを備えた解錠装置に関する。
従来の施錠・解錠装置として、例えば正規キー(マッチキー)の回動操作によって断続するクラッチ(アクチュエータ用リンク機構)を備えたものがある(特許文献1)。
この施錠・解錠装置は、ハンドルの引き出し操作によって回転運動を生じるハンドル用リンク機構と、ハンドル用リンク機構の回転運動によって下向きの直線運動を生じるハンドル用ロッドと、ハンドル用ロッドの直線運動を上記したアクチュエータ用リンク機構に伝達する連結レバー機構とを有している。
また、この施錠・解錠装置は、マッチキーの差し込み回動操作によって回動するロータを有してハンドル内に収容されたシリンダ錠と、シリンダ錠のロータの回動運動によって回動するシリンダ錠用ロッドと、シリンダ錠用ロッドの回動運動を上記したアクチュエータ用リンク機構に伝達するキーレバー機構とを有している。
このような施錠・解錠装置においては、マッチキーのシリンダ錠への差し込み回動操作によってロータが中立位置から一方向に回動すると、この回動がシリンダ錠用ロッドを介してキーレバー機構に伝達され、キーレバー機構の作動によってドアロックアクチュエータ内のアクチュエータ用リンク機構の断続が切り替えられ、ドアロック機構が施錠状態から解錠状態にされる。
この後、ドアパネルを開放する方向にハンドルを操作すると、このハンドルの引き出し操作がハンドル用リンク機構を介してハンドル用ロッドに伝達される。ハンドル用ロッドがハンドルの引き出し操作によって下方へ直線運動すると、その直線運動が連結レバー機構を介してアクチュエータ用リンク機構に伝達される。アクチュエータ用リンク機構が作動すると、ドアロック機構が解錠状態にされているので、ドアパネルが開放される。
一方、マッチキーのシリンダ錠への差し込み回動操作によってロータが中立位置から他方向に回動すると、この回動がシリンダ錠用ロッドを介してキーレバー機構に伝達され、キーレバー機構の作動によってアクチュエータ用リンク機構が作動してドアロック機構が解錠状態から施錠状態にされる。
特開2002−129805号公報
しかしながら、特許文献1の施錠・解錠装置によると、クラッチ及びシリンダ錠・ハンドルの他に、シリンダ錠用ロッド及びキーレバー機構を備えたものであるため、部品点数が嵩み、構造全体が複雑になるばかりか、コスト高になるという問題があった。
また、特許文献1の施錠・解錠装置によると、シリンダ錠とクラッチとの間にシリンダ錠用ロッド及びキーレバー機構を介在させる構造であるため、外形寸法が大きくなり、構造全体が大型化するという問題もあった。
従って、本発明の目的は、部品点数を削減することができ、もってコストの低廉化及び構造全体の小型化・簡素化を図ることができるシリンダ錠及びこれを備えた解錠装置を提供することにある。
(1)本発明は、上記目的を達成するために、複数の係止孔を有するスリーブと、前記スリーブ内に収容され、マッチキーの挿抜によってその挿抜方向に進退することにより、操作ハンドルによるドアロック機構の解錠運動を前記ドアロック機構に伝達するクラッチ装置の断続運動としてシリンダ錠の作動を前記クラッチ装置に出力する出力用クラッチエレメントを有するキープラグと、前記キープラグに移動可能に保持され、かつ前記複数の係止孔に挿脱可能にそれぞれ配置され、前記キープラグに対するマッチキーの挿入によって前記複数の係止孔からそれぞれ離脱される複数のキー照合部材とを備え、前記複数のキー照合部材のうち一部のキー照合部材は、キー挿入方向に突出するフック部を有し、前記スリーブは、前記複数のキー照合部材が前記複数の係止孔内に挿入された状態において、前記キープラグのキー挿入方向への移動によって前記フック部に係合する係合部を前記複数の係止孔のうち前記一部のキー照合部材に対応する係止孔内に有することを特徴とするシリンダ錠を提供する。
(2)本発明は、上記目的を達成するために、マッチキーの挿入によって作動するシリンダ錠と、ドアロック機構を解錠する解錠運動を発生する操作ハンドルと、前記シリンダ錠の作動によって前記操作ハンドルの前記解錠運動を前記ドアロック機構に伝達するクラッチ装置とを備え、前記シリンダ錠は、複数の係止孔を有するスリーブと、前記スリーブ内に収容され、マッチキーの挿抜によってその挿抜方向に進退することにより前記クラッチ装置の断続運動として出力する出力部を有するキープラグと、前記キープラグに移動可能に保持され、かつ前記複数の係止孔に挿脱可能にそれぞれ配置され、前記キープラグに対するマッチキーの挿入によって前記複数の係止孔からそれぞれ離脱される複数のキー照合部材とを備え、前記複数のキー照合部材のうち一部のキー照合部材は、キー挿入方向に突出するフック部を有し、前記スリーブは、前記複数のキー照合部材が前記複数の係止孔内に挿入された状態において、前記キープラグのキー挿入方向への移動によって前記フック部に係合する係合部を前記複数の係止孔のうち前記一部のキー照合部材に対応する係止孔内に有することを特徴とする解錠装置を提供する。
本発明によると、部品点数を削減することができ、コストの低廉化及び構造全体の小型化・簡素化を図ることができる。
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る解錠装置の全体を説明するために示す分解斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係る解錠装置の全体を説明するために示す断面図である。図3は、本発明の実施の形態に係る解錠装置の全体を説明するために示す背面図である。図4は、本発明の実施の形態に係る解錠装置の全体を説明するために示す側面図である。図5は、本発明の実施の形態に係る解錠装置(シリンダ錠)の要部を説明するために簡略化して示す断面図である。図5(a)はフック部付きキー照合部材の係止孔への挿入状態を、図5(b)はフック部付きキー照合部材以外のキー照合部材の係止孔への挿入状態をそれぞれ示す。図6は、本発明の実施の形態に係る解錠装置(シリンダ錠)におけるピッキング時のフック部付きキー照合部材の動作を説明するために簡略化して示す断面図である。図6(a)はフック部と係合部との係合状態を、図6(b)その係合を解錠した状態をそれぞれ示す。図7は、本発明の実施の形態に係る解錠装置(シリンダ錠)の第1キープラグロック機構を説明するために示す断面図である。図7(a)は待機(初期)状態を、図7(b)はキー挿入状態をそれぞれ示す。図8は、本発明の実施の形態に係る解錠装置(シリンダ錠)の第2キープラグロック機構を説明するために示す断面図である。
(解錠装置の全体構成)
図1において、符号1で示す解錠装置は、マッチキーの挿入によって作動するシリンダ錠2と、ドアロック機構(図示せず)を解錠する解錠運動を発生する操作ハンドル3と、シリンダ錠2の作動によって解錠運動をドアロック機構(ドアラッチ機構)に伝達するクラッチ装置4と、クラッチ装置4に操作ハンドル3の操作力(回動力)を伝達するハンドル操作力伝達機構5とから大略構成されている。
(シリンダ錠2の構成)
シリンダ錠2は、図1〜図4に示すように、外装部材としてのボディ6と、ボディ6内に収容されたスリーブ7と、スリーブ7内をマッチキーの挿抜によってその挿抜方向に進退することによりクラッチ装置4の断続運動として出力する出力部80を有するキープラグ8と、キープラグ8に移動可能に保持されたキー照合部材としてのタンブラ(ロックプレート)9,9,…と、タンブラ9,9,…がスリーブ7のタンブラ係止孔73,73,…(後述)内に挿入(係止)された状態においてスリーブ7にキープラグ8を係止する第1キープラグロック機構10と、キープラグ8に対するマッチキーの挿入による出力部80の出力状態においてスリーブ7にキープラグ8を係止する第2キープラグロック機構11とを含み、車両用のフレーム(ドアパネル)200に配設されている。
フレーム200上には、操作ハンドル3の回動平面内でマッチキーの挿抜方向と直角な方向に所定の間隔をもって並列する立ち上がり部200A,200Bが設けられている。立ち上がり部200A,200B間には、ハンドル操作力伝達機構5の伝達レバー5Aを回動可能に支持するレバー回動支軸用のピン201が固定されている。
ボディ6は、図1に示すように、スリーブ7を収容する収容空間60及びキー挿入(引き抜き)側端面に開口するキー挿通孔(キープラグ挿入口)61を有する角形箱からなり、フレーム200内に固定されている。ボディ6には、図2に示すように、ボディ片側側方に開口する貫通窓62が設けられている。ボディ6の背面側には、クラッチ装置4を内部に収容するケース12が配置されている。
ケース12は、図1及び図2に示すように、キー挿入側に開口する収容空間120及びこの収容空間120に連通するワイヤ挿通孔(図示せず)を有する有底略円筒状のケース本体12Aと、このケース本体12Aのキー挿入側開口部を閉塞する円環状の蓋体12Bとによって形成されている。
ケース本体12Aには、その開口一部にレバー回動用の切り欠き121を形成することにより、クラッチ装置4における入力用クラッチエレメント(後述)をケース12の円周方向2位置に回動規制するストッパ面121A,121Bが設けられている。ケース本体12Aの底面には、収容空間120に連通する断面略D形状の収容空間122Aを有する立ち上がり壁122が、またその外周面には断面略L字状の取付片13がそれぞれ一体に設けられている。
取付片13には、ワイヤ昇降用の切り欠き130を形成することにより、ドアロック機構(図示せず)に接続するワイヤ14を揺動規制するワイヤ揺動規制面130Aが設けられている。
スリーブ7は、図1及び図2に示すように、キープラグ8の第1胴部及び第2胴部(後述)を収容可能な第1収容空間70及びキー挿通孔61に連通する開口部71を有する角形箱状のスリーブ本体7Aと、このスリーブ本体7Aの第1収容空間70に連通する第2収容空間72を有する略円筒状のスリーブ胴部7Bとからなり、ボディ6内に収容空間60のキー挿入側とキー反挿入側との間を進退可能に配置されている。そして、スリーブ復帰用のスプリング(圧縮スプリング)15によってキー挿入側に移動復帰するように構成されている。
スリーブ本体7Aには、図5(a)及び(b)に示すように、スリーブ7の内面に開口するタンブラ係止孔73,73,…が設けられている。タンブラ係止孔73,73,…のうち一部の係止孔73内には、図5(a)に示すように、タンブラ9が挿入された状態において、キープラグ8のキー挿入方向への移動によってタンブラ9のフック部9A(後述)が係合する係合部73Bが設けられている。
スリーブ本体7Aのキー反挿入側端部には、スリーブ7の一方側で貫通する第1貫通孔74が設けられている。第1貫通孔74のボディ側開口部はカバー75によって閉塞されている。また、スリーブ本体7Aのキー反挿入側端部には、スリーブ7の他方側で貫通し、かつボディ6の貫通窓62に連通する第2貫通孔76が設けられている。第2貫通孔76の内面には、第1受面77A及び第2受面77B(図8に示す)を有するスプリング受部77が突設されている。スプリング受部77の第1受面77Aはタンブラ9,9,…がタンブラ係止孔73,73,…内に挿入された状態において、また第2受面77Bはタンブラ9,9,…がタンブラ係止孔73,73,…から離脱された(第2キープラグロック機構11によってキープラグ8がスリーブ7に係止された)状態においてそれぞれ第2キープラグロック機構11のロック片の弾撥力を受けるように構成されている。
スリーブ胴部7Bは、スリーブ7の円周方向に等間隔をもって並列する胴部エレメント78,79からなり、スリーブ本体7Aのキー挿入側端面と反対側の端面(第1収容空間70のキー反挿入側開口周縁)に一体に設けられている。
キープラグ8は、図1及び図2に示すように、第1胴部8A〜第3胴部8Cを有し、スリーブ7内(第1収容空間70及び第2収容空間72)のキー挿入側とキー反挿入側との間を進退可能に配置されている。そして、キープラグ復帰用のスプリング(圧縮スプリング)16によってキー挿入側に移動復帰するように構成されている。
第1胴部8Aは、キー挿入側端面に開口してマッチキーを挿抜可能なキー挿入孔81を有し、全体が断面略正方形状の角形箱によって形成されている。第1胴部8Aには、キー挿抜方向に並列し、かつ径方向に開口するタンブラ保持孔82,82,…が設けられている。第1胴部8Aのキー反挿入側端部には、その一方側側面に開口して第2貫通孔76に連通する凹溝83、及びこの凹溝83のキー挿入側で溝底から突出するスプリング取付部84が設けられている。第1胴部8Aの凹溝83内には、第2キープラグロック機構11のロック片11Bがスプリング取付部84に取り付けられた状態で収容されている。また、第1胴部8Aのキー反挿入側端部には、その他方側側面に開口してキー挿入孔81(キープラグ8の内部)に連通し、かつタンブラ9,9,…がタンブラ係止孔73,73,…に挿入された状態においてスリーブ本体7Aの第1貫通孔74に連通する段状の凹孔85が設けられている。
第2胴部8Bは、第1胴部8A及び第3胴部8Cに連設され、かつキー挿入孔81の軸線上に配置されている。そして、全体が第1胴部8Aの断面縦横寸法(正方形の一辺)より小さい外径をもつ円柱体によって形成されている。
第3胴部8Cは、キー反挿入側に出力部80(前述)を有し、第2胴部8Bの軸線上に配置されている。そして、キー挿入孔81内に対するマッチキーの挿入による出力状態において出力部80がクラッチ装置4の入力用クラッチエレメント40及び出力用クラッチエレメント41を回動可能に支持する回動支軸として機能するように構成されている。第3胴部8Cの外径は、第2胴部8Bの外径より小さい寸法に設定されている。第3胴部8Cの外周面と第2胴部8Bの外周面との間には、キー反挿入側(クラッチ装置側)を指向し、かつスプリングストッパ17のキープラグ挿通孔(後述)のキー挿入側開口周縁に対向するキープラグ段状面86が円周方向に沿って設けられている。
スプリングストッパ17は、第3胴部8Cを挿通させるキープラグ挿通孔170、及びこのキープラグ挿通孔170の周囲でスリーブ胴部7Bの胴部エレメント78,79を挿通するエレメント挿通孔171,172を有し、スリーブ7の軸線上に配置され、かつボディ6内に位置決めプレート18とスプリング15,16との間に介在した状態で収容されている。そして、キープラグ挿通孔170のキー挿入側開口周縁にキープラグ段状面86(キープラグ8)を当接させてキープラグ8のキー挿入方向への移動を規制するキープラグ移動規制部材として機能し、スリーブ7のキー挿入方向への移動が規制される位置より先行する位置でキープラグ8を移動規制するように構成されている。このため、スプリングストッパ17とキープラグ段状面86との間のキー挿抜方向寸法は、第1キープラグロック機構10によるキープラグ8の係止状態においてスリーブ7のキー反挿入側端面とスプリングストッパ17との間のキー挿抜方向寸法より小さい寸法に設定されている。これにより、キー挿入孔81への不正キーの挿入によってキープラグ8がスリーブ7と共にキー挿入方向に移動した場合、そのキープラグ段状面86をスリーブ7より先にスプリングストッパ17のキー挿入側端面(キープラグ挿通孔170のキー挿入側開口周縁)に当接させてキープラグ8のキー挿入方向への移動を規制し、タンブラ係止孔73,73,…の内面に対するタンブラ9,9,…の当接による負荷の発生を防止することができる。
位置決めプレート18は、スプリングストッパ17と同様にキープラグ8の第3胴部8Cを挿通させるキープラグ挿通孔180、及びこのキープラグ挿通孔180の周囲でスリーブ胴部7Bの胴部エレメント78,79を挿通するエレメント挿通孔(図示せず)を有し、スリーブ7の軸線上に配置され、かつボディ6に固定されている。
タンブラ9,9,…は、図5(a)及び(b)に示すように、それぞれがタンブラ係止孔73,73,…に挿脱可能に配置され、かつタンブラ保持孔82,82,…(図2に示す)に移動可能に保持されている。また、タンブラ9,9,…のうち一部のタンブラ9は、図5(a)に示すように、その先端部にキー挿入方向に突出するフック部9Aを有し、第1キープラグロック機構10のロックピン(後述)によってキープラグ8がスリーブ7に係止された状態においてタンブラ係止孔73の内面73Aとキー挿抜方向に空隙G1,G2をもって配置されている。タンブラ9,9,…のうち図5(a)に示すタンブラ9以外のタンブラ9,9,…は、図5(b)に示すように、第1キープラグロック機構10のロックピン(後述)によってキープラグ8がスリーブ7に係止された状態においてタンブラ係止孔73,73,…の内面73A,73A,…とキー挿抜方向に空隙G3,G4をもって配置されている。そして、キープラグ8(キー挿入孔81)に対するマッチキーの挿入操作によってタンブラ係止孔73,73,…から離脱され、キープラグ8からのマッチキーの引き抜き操作によってタンブラ係止孔73,73,…に挿入されるように構成されている。さらに、タンブラ9,9,…は、タンブラ係止孔73,73,…に対して挿入される方向にタンブラ復帰用スプリング(図示せず)の弾撥力が付与されている。
なお、フック部付きのタンブラ9は、例えばタンブラ素材(図示せず)に折り曲げ・打ち出し加工を施すことにより形成されている。
空隙G4のキー挿抜方向寸法(タンブラのキー反挿入側面とタンブラ係止孔のキー反挿入側内面との間の寸法)は、空隙G2のキー挿抜方向寸法(タンブラのキー反挿入側端面とタンブラ係止孔のキー反挿入側内面との間の寸法)より小さい寸法(G2>G4)に設定されている。これにより、タンブラ9,9,…がタンブラ係止孔73,73,…内に挿入された状態において、キープラグ8をキー挿入方向に移動させながらシリンダ錠2のピッキング(マッチキーを使用せず、タンブラ9,9,…のタンブラ係止孔73,73,…に対する係止状態を解除する不正行為)が図5(b)に2点鎖線で示すように実施されても、図5(a)に示すタンブラ(一部のタンブラ)9のフック部9Aが図6(a)に示すようにタンブラ係止孔73の係合部73Bに係合されているため、この係合状態を解除する(フック部付きのタンブラ9をタンブラ係止孔73から離脱する)には図6(b)に示すようにキープラグ8をキー挿入方向と反対方向に移動復帰させる必要が生じる。このため、フック部9Aの係合部73Bに対する係合状態からキープラグ8をキー挿入方向と反対方向に移動させてその係合状態を解除すると、図5(b)に2点鎖線で示す係合解除済みのタンブラ(フック部の無いタンブラ)9,9,…がキープラグ8と共にキー反挿入方向に移動復帰して図5(b)に実線で示すようにタンブラ係止孔73,73,…内に挿入され、シリンダ錠2のピッキングが困難なものとなる。
第1キープラグロック機構10は、図2及び図7に示すように、キー挿入孔81に対するマッチキーの挿抜によってキープラグ8内を進退するカムピン10Aと、このカムピン10Aの進退によってキープラグ8を係脱するロックピン10Bと、このロックピン10B(第1キープラグロック機構10によるキープラグ8の係止状態においてはロックピン10B及びカムピン10A)に対してキープラグ8をスリーブ7に係止する方向の弾撥力を付与するピン押圧用のスプリング10Cとを有し、スリーブ7とキープラグ8との間に配置されている。そして、前述したように、タンブラ9,9,…がタンブラ係止孔73,73,…内に挿入された状態においてキープラグ8をスリーブ7に係止するように構成されている。
カムピン10Aは、凹孔85の段状面85Aに対向する端面101Aを有する略角形状の基部101と、この基部101に連接してカム面102Aを有するカム部102とからなり、凹孔85及びキー挿入孔81内に進退可能に収容されている。そして、キー挿入孔81へのマッチキーの挿入操作によってキー挿入孔81の軸線から離間する方向に退避してロックピン10Bを押圧し、またキー挿入孔81からのマッチキーの引き抜き操作によってキー挿入孔81の軸線に接近する方向に進行するように構成されている。
ロックピン10Bは、カムピン10A(基部101)の端面101Bに対向する押圧面103を有する略円柱体からなり、スリーブ7とキープラグ8との間に進退可能に配置されている。そして、タンブラ9,9,…がタンブラ係止孔73,73,…から離脱された状態においてスリーブ7の第1貫通孔74内に埋没し、またタンブラ9,9,…がタンブラ係止孔73,73,…内に挿入された状態においてキープラグ8の凹孔85内にその一部を露出させて押圧面103をカムピン10Aの端面101Bに押圧するように構成されている。
ピン押圧用のスプリング10Cは、スリーブ7の第1貫通孔74内に配置され、かつロックピン10Bとカバー75との間に弾装されている。そして、キープラグ8がスリーブ7から離脱された状態(タンブラ9,9,…がタンブラ係止孔73,73,…から離脱された状態)においてロックピン10Bをキープラグ8の外周面に、また第1キープラグロック機構10によってキープラグ8がスリーブ7に係止された状態(タンブラ9,9,…がタンブラ係止孔73,73,…内に挿入された状態)においてロックピン10Bを介してカムピン10Aを凹孔85の段状面85Aにそれぞれ圧接するように構成されている。
第2キープラグロック機構11は、図2及び図8に示すように、操作ハンドル3のハンドル操作(回動操作)力及びキープラグ8の進行によるスプリング11C(後述)の弾性復帰力によって回動するロック片押圧用のレバー11Aと、このレバー11Aの押圧による弾性変形によってキープラグ8をスリーブ7に係止するロック片11Bと、このロック片11Bによるキープラグ8の係止状態を維持する方向の弾撥力をレバー11Aに付与する係止力伝達用のスプリング11Cとを有し、操作ハンドル3とキープラグ8との間に配置されている。そして、前述したように、キープラグ8(キー挿入孔81)に対するマッチキーの挿入による出力部80の出力状態においてスリーブ7にキープラグ8を係止するように構成されている。また、第2キープラグロック機構11は、出力部80の出力状態からレバー11Aがドアパネルを開放する方向に操作ハンドル3のハンドル操作力を受けると、スリーブ7に対するキープラグ8の係止状態を解除するように構成されている。
ロック片押圧用のレバー11Aは、操作ハンドル3のハンドル操作力を受ける操作力受部110、及びロック片11B(スプリング変形部113)を押圧して弾性変形させる押圧部111を有し、ボディ6にピン112を介して保持され、かつその一部をボディ外に露出させてボディ6の貫通窓62内及びスリーブ7の第2貫通孔76内・第1収容空間70にスプリング受部77の片側側方で回動可能に配置されている。
ロック片11Bは、レバー11Aの押圧による弾性変形によってロック部となるスプリング変形部113を一方側端部に有する板ばねからなり、キープラグ8の凹溝83内にその他方側端部がスプリング取付部84にスプリング押さえ19によって取り付けられた状態で収容されている。そして、キー挿入孔81に対するマッチキーの挿入によるキープラグ8(出力部80)の出力状態(図8に2点鎖線で示す状態)においてスプリング変形部113がロック部に弾性変形してスプリング受部77の第2受面77Bを圧接し、スリーブ7にキープラグ8を係止するように構成されている。また、タンブラ9,9,…がタンブラ係止孔73,73,…内に挿入された状態(図8に実線で示す状態)においてスプリング変形部113が非ロック部としてスプリング受部77の第1受面77Aに圧接し、スリーブ7に対するキープラグ8の係止状態を解除するように構成されている。
係止力伝達用のスプリング11Cは、ピン112の周囲に配置され、かつ両スプリング端部がそれぞれボディ6とレバー11Aに係止され、全体がダブルトーションスプリングによって形成されている。
(操作ハンドル3の構成)
操作ハンドル3は、図1〜図4に示すように、ドアロック機構を解錠する方向(ドアパネルを開放する方向)の回動力(ハンドル操作力)をハンドル操作力伝達機構5の伝達レバー5Aに付与するための第1押圧部30、及びそのハンドル操作力を第2キープラグロック機構11のレバー11Aに付与するための第2押圧部31を有し、フレーム200に回動可能に支持され、伝達レバー復帰用のスプリング(トーションスプリング)20によって復帰習性が付与されている。そして、ピン32を回動中心として所定の回動範囲内で回動し、ドアロック機構を解錠する解錠運動(ドアパネルを開放する開放運動)を発生するように構成されている。これにより、マッチキーのキー挿入孔81内への挿入によるキープラグ8(出力部80)の出力状態において操作ハンドル3をドアパネル開方向に回動操作すると、この操作力がハンドル操作力伝達機構5を介してクラッチ装置4(入力用クラッチエレメント4A及び出力用クラッチエレメント4B)に伝達され、さらにこのクラッチ装置4からワイヤ14を介してドアロック機構(ドアラッチ機構)に伝達され、このドアロック機構が解錠される。また、操作ハンドル3の操作状態を解除すると、操作ハンドル3が伝達レバー復帰用のスプリング20によってハンドル操作力伝達機構5を介して回動復帰し、その復帰位置(操作ハンドル3を操作する前の位置)に配置される。
なお、操作ハンドル3をドアロック機構の解錠状態においてドアパネルの開方向に回動操作すると、ドアロック機構が解錠されているため、ドアパネルが回動支点を中心にしてその開方向に回動して開放される。また、ドアパネルを開状態においてその閉方向に回動操作して閉塞すると、ドアロック機構が施錠される。
(クラッチ装置4の構成)
クラッチ装置4は、図1〜図4に示すように、操作ハンドル3(ハンドル操作力伝達機構5)とドアロック機構(図示せず)との断続を切り替えるクラッチ4A、及びこのクラッチ4Aの入力用クラッチエレメント(入力用レバー)40と出力用クラッチエレメント(出力用レバー)41とを回動可能に連結する連結ピン4Bを有し、ケース12の収容空間120に収容されている。そして、シリンダ錠2の作動によって操作ハンドル3の解錠運動をハンドル操作力伝達機構5から受けてドアロック機構に伝達するように構成されている。
クラッチ4Aは、操作ハンドル3のハンドル操作力をハンドル操作力伝達機構5から受けて作動する入力用クラッチエレメント40、及びマッチキーの挿入操作によるシリンダ錠2の出力状態において入力用クラッチエレメント40からの作動力を受けて操作ハンドル3の解錠運動として出力する出力用クラッチエレメント41を有し、キープラグ8の軸線上に配置されている。
入力用クラッチエレメント40は、キープラグ8の第3胴部8Cを挿通させる切り欠き42A及び連結ピン4Bに嵌合するクラッチ連結用の貫通孔42Bを有する平面D字形状の本体部42と、ハンドル操作力伝達機構5の伝達リンク5B(ピン50)に嵌合するリンク連結用の貫通孔43Aを有する腕部43とからなり、伝達リンク5Bにピン50を介して回動可能に連結され、かつキープラグ8の軸線上に配置されている。そして、マッチキーの挿入によるシリンダ錠2の出力状態(キープラグ8の出力部80上に入力用クラッチエレメント40及び出力用クラッチエレメント41が回動可能に支持され、ハンドル操作力伝達機構5とドアロック機構とが連結された状態)において操作ハンドル3の解錠運動を受けると、図3に破線で示す位置aから図3に2点鎖線で示す位置b(位置aからキープラグ8の回りに105°変位した位置)に出力用クラッチエレメント41と共に回動してその回動力(ハンドル操作力)をドアロック機構に伝達するように構成されている。また、シリンダ錠2の非出力状態(キープラグ8の出力部80上に入力用クラッチエレメント40及び出力用クラッチエレメント41が支持されず、ハンドル操作力伝達機構5とドアロック機構との連結が遮断された状態)において操作ハンドル3の操作力を受けると、図3に破線で示す位置aから図3に2点鎖線で示す位置cに揺動してその揺動力(ハンドル操作力)をドアロック機構に伝達しないように構成されている。
出力用クラッチエレメント41は、キープラグ8の進退方向に開口するストッパ・キープラグ挿入用の貫通孔41Bを有する円板からなり、入力用クラッチエレメント40に連結ピン4Bを介して回動可能に、またドアロック機構(ラッチ機構)にワイヤ14を介してそれぞれ連結されている。そして、マッチキーの挿入によるシリンダ錠2の出力状態において入力用クラッチエレメント40からの作動力(回動力)を受けて操作ハンドル3の解錠運動としてワイヤ14に出力し、この出力をワイヤ14からドアロック機構に伝達してドアロック機構を解錠するように構成されている。また、出力用クラッチエレメント41は、キープラグ8の軸線上に配置され、かつクラッチストッパ44(支持部440)の周囲に回動可能に支持されている。そして、ドアロック機構側にワイヤ14を介して復帰習性が付与されている。
出力用クラッチエレメント41の貫通孔41Bは、キー挿入側に開口してキープラグ8の第3胴部8Cを挿入可能な丸孔410、及びこの丸孔410に連通してキー反挿入側に開口するD形孔(切り欠き面付きの丸孔)411からなる段状孔によって形成されている。
クラッチストッパ44は、丸孔410内に挿入して出力用クラッチエレメント41を回転可能に支持する円柱状の支持部440、及びD形孔411内に挿入可能な断面D形状の基部441からなり、立ち上がり壁122の収容空間122Aに進退可能(出力用クラッチエレメント41の軸線回りに回転不能)に支持され、かつ出力用クラッチエレメント41の軸線上に配置されている。そして、マッチキーの挿入によるシリンダ錠2(出力部80)の出力状態において基部441がD形孔411からキー反挿入側に退避して支持部440でキープラグ8の出力部80と共に出力用クラッチエレメント41を回動可能に支持し、シリンダ錠2の非出力状態において基部441がD形孔411内に進行して基部441で出力用クラッチエレメント41を回転方向に固定するように構成されている。また、クラッチストッパ44は、ストッパ押圧用のスプリング(圧縮スプリング)45の弾撥力がキー挿入側に付与されている。
連結ピン4Bは、出力用クラッチエレメント41におけるキー挿入側外周縁に一体に突設されている。そして、キー挿入孔81に対するマッチキーの挿入によるキープラグ8(出力部80)の出力状態において入力用クラッチエレメント40から操作ハンドル3のハンドル操作力を出力用クラッチエレメント41に伝達するクラッチエレメント伝達用のピンとして機能するように構成されている。
(ハンドル操作力伝達機構5の構成)
ハンドル操作力伝達機構5は、図1〜図4に示すように、操作ハンドル3のハンドル操作力(回動操作力)を受けて回動する伝達レバー5A、及びこの伝達レバー5Aからの回動力を受けて昇降する伝達リンク5Bを有し、操作ハンドル3とクラッチ装置4との間に介在し、フレーム200上に保持されている。そして、前述したようにクラッチ装置4に操作ハンドル3のハンドル操作力(回動力)を伝達するように構成されている。
伝達レバー5Aは、伝達リンク5Bのピン51に嵌合するリンク連結用のピン孔52を有する略L字状の回動レバーからなり、立ち上がり部200A,200B間に配置され、かつピン201の周囲に回動可能に支持されている。そして、伝達レバー復帰用のスプリング20によって復帰習性が付与されている。伝達レバー5Aには、ピン201を挿通させるピン孔53が設けられている。
伝達リンク5Bは、操作ハンドル3の回動平面内で互いに直角な方向に突出するピン連結部54A,54Bを有するリンク本体54と、このリンク本体54のピン連結部54A,54Bに連結するボールジョイント付きのピン50,51(ピン51については前述)とからなり、伝達レバー5A(ピン孔52)と入力用クラッチエレメント40A(貫通孔43A)との間に配置されている。そして、伝達レバー5Aと同様に伝達レバー復帰用のスプリング20によって復帰習性が付与され、3次元動作用のリンクとして機能するように構成されている。
(解錠装置1の動作)
図9は、本発明の実施の形態に係る解錠装置の待機状態を示す図である。図10は、本発明の実施の形態に係る解錠装置のシリンダ錠にマッチキーが挿入された場合の動作を説明するために示す図である。図11は、本発明の実施の形態に係る解錠装置の操作ハンドルを操作した場合の動作を説明するために示す図である。図12は、本発明の実施の形態に係る解錠装置のシリンダ錠に不正キーが挿入された場合の動作を説明するために示す図である。図13は、本発明の実施の形態に係る解錠装置の待機状態からハンドル操作をした場合の動作を説明するために示す図である。図9(a)〜図13(a)は断面図を、図9(b)〜図13(b)は背面図をそれぞれ示す。
ドアロック機構の施錠状態においては、図9(a)及び(b)に示すようにキープラグ8がスリーブ7と共にボディ6内(収容空間60)のキー挿入側に配置されているため、ドアロック機構を施錠状態から解錠状態に切り替えるにはキープラグ8のキー挿入孔81内にマッチキーを挿入する。この場合、キープラグ8のキー挿入孔81内にマッチキーが挿入されると、タンブラ9,9,…のキー嵌合孔(図示せず)がそれぞれ対応するマッチキーの凹凸に係合し、タンブラ9,9,…がキープラグ8のタンブラ保持孔82,82,…内を移動してスリーブ7のタンブラ係止孔73,73,…から離脱される。この際、タンブラ9,9,…がタンブラ係止孔73,73,…の内面73Aとキー挿抜方向に空隙G1,G2をもって配置されているため、タンブラ離脱時にタンブラ係止孔73,73,…の内面に干渉せず、タンブラ9,9,…の離脱動作を円滑に行うことができる。
また、キー挿入孔81に対するマッチキーの挿入によってその先端部が第1キープラグロック機構10のカムピン10A(カム面102A)をキー挿入方向に押圧するため、カムピン10Aがキー挿入孔81の軸線から離間する方向に退避してロックピン10Bを押圧する。これにより、ロックピン10Bがスリーブ7の第1貫通孔74内に埋没し、ロックピン10Bによるスリーブ7に対するキープラグ8の係止状態が解除される。
この状態から、図10(a)及び(b)に示すようにマッチキーをキー挿入方向にさらに挿入すると、キープラグ8がスリーブ7に対してキー挿入側からキー反挿入側に進行する。このため、キープラグ8の出力部80が入力用クラッチエレメント40の切り欠き42Aを挿通するとともに、出力用クラッチエレメント41(本体部42)の丸孔410内に挿入し、入力用クラッチエレメント40及び出力用クラッチエレメント41を回動可能に支持する。この際、キープラグ8の進行力がクラッチストッパ43に伝達され、クラッチストッパ43がスプリング44の弾撥力に抗してキー反挿入側に移動し、その基部441が出力用クラッチエレメント41のD形孔411から離脱される。このため、入力用クラッチエレメント40及び出力用クラッチエレメント41がキープラグ8の出力部80上で回動可能な状態となる。
また、キープラグ8のキー挿入方向への進行によって第2キープラグロック機構11のロック片11B(スプリング変形部113)がスプリング受部77の第1受面77Aに対する圧接状態を解除してキープラグ8の凹溝83及びスリーブ7の第2貫通孔76・第1収容空間70,ボディ6の貫通窓62内で弾性復帰した後、第2キープラグロック機構11のレバー11A(押圧部111)から押圧力(スプリング11Cの弾撥力)を受けてロック部に弾性変形するため、この弾性変形したスプリング変形部113(ロック部)がスプリング受部77の第2受面77Bを圧接し、スリーブ7にキープラグ8が係止される。これにより、キープラグ8(出力部80)の出力状態(操作ハンドル3とドアロック機構との連結状態)を検知することができ、キープラグ8をスリーブ7に係止した状態を維持してキー挿入操作を停止することができる。
次に、ドアロック機構を解錠する方向(ドアパネルを開放する方向)に操作ハンドル3を回動(ハンドル)操作する。この場合、操作ハンドル3が図11(a)に示すように回動操作されると、この回動操作力が第1押圧部30からハンドル操作力伝達機構5(伝達レバー5A及び伝達リンク5B)を介して入力用クラッチエレメント40に伝達され、入力用クラッチエレメント40が図8(b)に破線で示す位置aから図11(b)に破線で示す位置b(位置aからキープラグ8の回りに105°変位した位置)に出力用クラッチエレメント41と共に回動し、その回動力(ハンドル操作力)がワイヤ14を介してドアロック機構に解錠力として伝達される。これにより、ドアロック機構がワイヤ14から解錠力を受けて解錠される。
この後、操作ハンドル3をドアロック機構の解錠状態においてドアパネルの開方向に回動操作すると、ドアロック機構が解錠されているため、ドアパネルが回動支点(ピン32)を中心にしてその開方向に回動して開放される。また、ドアロック機構の解錠状態において第2キープラグロック機構11のレバー11Aが第2押圧部31から操作力受部110を介して操作ハンドル3の操作力を受けると、ロック片11Bのスプリング変形部113に対する押圧力を解除する(ロック部から非ロック部とする)方向に回動してスリーブ7に対するキープラグ8の係止状態を解除するため、キープラグ8がスプリング16の弾撥力によってマッチキーと共に移動復帰(退避)し、スリーブ7内のキー挿入側(初期位置)に配置される。
ここで、ドアロック機構の施錠状態において、キープラグ8のキー挿入孔81内に例えば不正キーが挿入されると、図12(a)に示すようにキープラグ8がスリーブ7と共にキー挿入側からキー反挿入側にボディ6に対して移動する。この場合、スリーブ7が入力用クラッチエレメント40及び出力用クラッチエレメント41をキー挿入方向に押圧して移動させるため、キープラグ8の出力部80に入力用クラッチエレメント40及び出力用クラッチエレメント41が支持されることはない。この状態で、入力用クラッチエレメント40がドアロック機構を解錠する方向に操作ハンドル3の操作力を受けると、図12(b)に破線で示す位置aから図12(b)に2点鎖線で示す位置cに揺動してその揺動力(ハンドル操作力)をドアロック機構に伝達せず、このためドアロック機構が解錠されることはない。
また、キー挿入孔81への不正キーの挿入によってキープラグ8がスリーブ7と共にキー挿入方向に移動すると、キープラグ段状面86をスリーブ7より先にスプリングストッパ17のキー挿入側端面に当接させてキープラグ8のキー挿入方向への移動が規制され、タンブラ係止孔73,73,…の内面が受けるタンブラ9,9,…の当接による負荷を回避してタンブラ9,9,…及びスリーブ7の破壊発生を防止することができる。
なお、ドアロック機構の施錠状態において、ドアパネルを開放する方向に操作ハンドル3を回動(ハンドル)操作する場合には、図13(a)に示すようにキープラグ8の出力部80上に入力用クラッチエレメント40及び出力用クラッチエレメント41が支持されていないため、この状態で入力用クラッチエレメント40が操作ハンドル3の操作力をハンドル操作力伝達機構5(伝達リンク5B)から受けると、図13(b)に示すように揺動してその揺動力(ハンドル操作力)をドアロック機構(出力用クラッチエレメント41)に伝達せず、このためドアロック機構が解錠されることはない。
[実施の形態の効果]
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
(1)従来必要したシリンダ錠用ロッド及びキーレバー機構が不要になるため、部品点数を削減することができ、構造全体の簡素化及びコストの低廉化を図ることができる。
(2)シリンダ錠2とクラッチ装置4との間にシリンダ錠用ロッド及びキーレバー機構を介在させないため、外形寸法を小さくすることができ、構造全体の小型化を図ることができる。
(3)第1キープラグロック機構10によってキープラグ8がスリーブ7に係止された状態において、タンブラ9,9,…がタンブラ係止孔73,73,…の内面73Aとキー挿抜方向に空隙G1,G2をもって配置されているため、タンブラ離脱時にタンブラ係止孔73,73,…の内面73Aに干渉せず、タンブラ9,9,…の離脱動作(マッチキーの挿入操作)を円滑に行うことができる。
(4)キー挿入孔81に対する不正キーの挿入時にキープラグ段状面86をスリーブ7より先にスプリングストッパ17のキー挿入側端面に当接させてキープラグ8のキー挿入方向への移動が規制されるため、タンブラ係止孔73,73,…の内面が受けるタンブラ9,9,…の当接による負荷を回避することができ、タンブラ9,9,…及びスリーブ7の破壊発生を防止することができる。
(5)キープラグ8のキー挿入方向への進行によって第2キープラグロック機構11のロック片11Bがレバー11Aから押圧力を受けてロック部に弾性変形するため、この弾性変形したロック片11B(スプリング変形部113)がスプリング受部77の第2受面77Bを圧接し、スリーブ7にキープラグ8が係止される。これにより、キープラグ8の出力状態(操作ハンドル3とドアロック機構との連結状態)を検知することができ、キープラグ8をスリーブ7に係止した状態を維持してキー挿入操作を停止することができる。
(6)キープラグ8をキー挿入方向に移動させながら先にタンブラ(フック部の無いタンブラ)9,9,…のピッキングが実施されても、タンブラ9(一部のタンブラ)のフック部9Aがタンブラ係止孔73の係合部73Bに係合されているため、この係合状態を解除するにはキープラグ8をキー挿入方向と反対方向に移動復帰させる必要が生じる。このため、フック部9Aの係合部73Bに対する係合状態からキープラグ8をキー挿入方向と反対方向に移動させてその係合状態を解除すると、係合解除済みのタンブラ(フック部の無いタンブラ)9,9,…がキープラグ8と共にキー反挿入方向に移動復帰してタンブラ係止孔73,73,…内に挿入され、シリンダ錠2のピッキングが困難なものとなる。
以上、本発明の解錠装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
(1)本実施の形態では、キープラグ軸線上のキー挿入側に入力用クラッチエレメント40を、キー反挿入側に出力用クラッチエレメント41をそれぞれ配置する構造である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、キープラグ軸線上のキー挿入側に出力用クラッチエレメントを、キー反挿入側に入力用クラッチエレメントをそれぞれ配置する構造としてもよい。
(2)本実施の形態では、タンブラ素材に折り曲げ・打ち出し加工を施すことによりフック部付きのタンブラ9を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば図14(a)及び(b)に示すように打ち抜き加工など他の方法によってタンブラ9を形成してもよい。この場合、一部のタンブラ9の先端部に断面逆L字状のフック部9Aが設けられ、タンブラ9,9,…がタンブラ係止孔73,73,…内に挿入された状態においてフック部9Aに係合する断面矩形状の係合部73Bがタンブラ係止孔73の内面73Aに設けられている。これにより、タンブラ9,9,…がタンブラ係止孔73,73,…内に挿入された状態において、キープラグ8をキー挿入方向に移動させながらシリンダ錠2のピッキングが実施されても、図14(a)に示すタンブラ(一部のタンブラ)9のフック部9Aが図14(a)に示すようにタンブラ係止孔73の係合部73Bに強固に係合されるため、シリンダ錠2のピッキングが一層困難なものとなる。
(3)本実施の形態では、シリンダ錠2とクラッチ装置4との接続部を被覆しない構造としたが、本発明はこれに限定されず、外装部材によって被覆してもよい。この場合、不正行為による外部からのクラッチ装置4の断続を阻止することができ、車両の盗難発生を未然に防止することができる。
(4)本実施の形態では、車両用ドアパネルにおけるドアロック機構の解錠を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、他のドアパネルにおけるドアロック機構の解錠を行う場合であってもよい。
本発明の実施の形態に係る解錠装置の全体を説明するために示す分解斜視図。 本発明の実施の形態に係る解錠装置の全体を説明するために示す断面図。 本発明の実施の形態に係る解錠装置の全体を説明するために示す背面図。 本発明の実施の形態に係る解錠装置の全体を説明するために示す側面図。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る解錠装置(シリンダ錠)の要部を説明するために簡略化して示す断面図。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る解錠装置(シリンダ錠)におけるピッキング時のフック部付きキー照合部材の動作を説明するために簡略化して示す断面図。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る解錠装置(シリンダ錠)の第1キープラグロック機構を説明するために示す断面図。 本発明の実施の形態に係る解錠装置(シリンダ錠)の第2キープラグロック機構を説明するために示す断面図。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る解錠装置の待機状態を示す断面図と背面図。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る解錠装置のシリンダ錠にマッチキーが挿入された場合の動作を説明するために示す断面図と背面図。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る解錠装置の操作ハンドルを操作した場合の動作を説明するために示す断面図と背面図。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る解錠装置のシリンダ錠に不正キーが挿入された場合の動作を説明するために示す断面図と背面図。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る解錠装置の待機状態からハンドル操作をした場合の動作を説明するために示す断面図と背面図。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る解錠装置(シリンダ錠)におけるタンブラの変形例を説明するために示す断面図。
符号の説明
1…解錠装置
2…シリンダ錠
3…操作ハンドル、30…第1押圧部、31…第2押圧部、32…ピン
4…クラッチ装置、4A…クラッチ、40…入力用クラッチエレメント、41…出力用クラッチエレメント、41B…貫通孔、410…丸孔、411…D形孔、42…本体部、42A…切り欠き、42B…貫通孔、43…腕部、43A…貫通孔、44…クラッチストッパ、440…支持部、441…基部、4B…連結ピン、45…ストッパ押圧用のスプリング
5…ハンドル操作力伝達機構、5A…伝達レバー、5B…伝達リンク、50,51…ピン、52,53…ピン孔、54…リンク本体、54A,54B…ピン連結部
6…ボディ、60…収容空間、61…キー挿通孔、62…貫通窓
7…スリーブ、7A…スリーブ本体、7B…胴部、70…第1収容空間、71…開口部、72…第2収容空間、73…タンブラ係止孔、73A…内面、73B…係合部、74…第1貫通孔、75…カバー、76…第2貫通孔、77…スプリング受部、77A…第1受面、77B…第2受面、78,79…胴部エレメント
8…キープラグ、8A…第1胴部、8B…第2胴部、8C…第3胴部、80…出力部、81…キー挿入孔、82…タンブラ保持孔、83…凹溝、84…スプリング取付部、85…凹孔、85A…段状面、86…キープラグ段状面
9…タンブラ、9A…フック部
10…第1キープラグロック機構、10A…カムピン、10B…ロックピン、10C…ピン押圧用のスプリング、101…基部、101A,101B…端面、102…カム部、102A…カム面、103…押圧面
11…第2キープラグロック機構、11A…ロック片押圧用のレバー、11B…ロック片、11C…係止力伝達用のスプリング、110…操作力受部、111…押圧部、112…ピン、113…スプリング変形部
12…ケース、12A…ケース本体、12B…蓋体、120…収容空間、121…レバー回動用の切り欠き、121A,121B…ストッパ面、122…立ち上がり壁、122A…収容空間
13…取付片、130…ワイヤ昇降用の切り欠き、130A…ワイヤ揺動規制面
14…ワイヤ
15…スプリング復帰用のスプリング
16…キープラグ復帰用のスプリング
17…スプリングストッパ、170…キープラグ挿通孔、171,172…エレメント挿通孔
18…位置決めプレート、180…キープラグ挿通孔
19…スプリング押さえ
20…伝達レバー復帰用のスプリング
200…フレーム、200A,200B…立ち上がり部、201…ピン
G1,G2,G3,G4…空隙

Claims (3)

  1. 複数の係止孔を有するスリーブと、
    前記スリーブ内に収容され、マッチキーの挿抜によってその挿抜方向に進退することにより、操作ハンドルによるドアロック機構の解錠運動を前記ドアロック機構に伝達するクラッチ装置の断続運動としてシリンダ錠の作動を前記クラッチ装置に出力する出力用クラッチエレメントを有するキープラグと、
    前記キープラグに移動可能に保持され、かつ前記複数の係止孔に挿脱可能にそれぞれ配置され、前記キープラグに対するマッチキーの挿入によって前記複数の係止孔からそれぞれ離脱される複数のキー照合部材とを備え、
    前記複数のキー照合部材のうち一部のキー照合部材は、キー挿入方向に突出するフック部を有し、
    前記スリーブは、前記複数のキー照合部材が前記複数の係止孔内に挿入された状態において、前記キープラグのキー挿入方向への移動によって前記フック部に係合する係合部を前記複数の係止孔のうち前記一部のキー照合部材に対応する係止孔内に有する
    ことを特徴とするシリンダ錠。
  2. 前記複数のキー照合部材は、前記複数の係止孔内に挿入された状態において、前記一部のキー照合部材と前記複数の係止孔のうち前記係合部に対応する係止孔のキー反挿入側内面との間のキー挿抜方向寸法が、前記一部のキー照合部材以外のキー照合部材と前記係合部に対応する係止孔以外の係止孔のキー反挿入側内面との間のキー挿抜方向寸法より大きい寸法に設定されている請求項1に記載のシリンダ錠。
  3. マッチキーの挿入によって作動するシリンダ錠と、
    ドアロック機構を解錠する解錠運動を発生する操作ハンドルと、
    前記シリンダ錠の作動によって前記操作ハンドルの前記解錠運動を前記ドアロック機構に伝達するクラッチ装置とを備え、
    前記シリンダ錠は、
    複数の係止孔を有するスリーブと、
    前記スリーブ内に収容され、マッチキーの挿抜によってその挿抜方向に進退することにより前記クラッチ装置の断続運動として出力する出力部を有するキープラグと、
    前記キープラグに移動可能に保持され、かつ前記複数の係止孔に挿脱可能にそれぞれ配置され、前記キープラグに対するマッチキーの挿入によって前記複数の係止孔からそれぞれ離脱される複数のキー照合部材とを備え、
    前記複数のキー照合部材のうち一部のキー照合部材は、キー挿入方向に突出するフック部を有し、
    前記スリーブは、前記複数のキー照合部材が前記複数の係止孔内に挿入された状態において、前記キープラグのキー挿入方向への移動によって前記フック部に係合する係合部を前記複数の係止孔のうち前記一部のキー照合部材に対応する係止孔内に有する
    ことを特徴とする解錠装置。
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