JP5007565B2 - 燃料電池 - Google Patents

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Description

この発明は燃料電池に関する。更に詳しくは、燃料電池反応層の改良に関する。
燃料電池の反応層は電解質膜と拡散層との間に形成され、電気化学反応を促進するための触媒が担持されている。例えば空気極側の反応層においては、電解質膜を通過してきたプロトンと空気極に伝達される電子とが触媒にまで伝導され、当該触媒上に拡散してきた酸素とプロトンとを結合させる。即ち、酸素とプロトンと電子の伝達ロスを改善するために、当該反応層はプロトン伝導性と電子伝導性とを併せ持つ必要がある。そのため、表面に触媒を担持したカーボン粒子(電子伝導性)とイオン伝導性を有するナフィオン(商標名;ディユポン社、以下同じ)等の有機高分子材料とを混合して使用していた(図1B参照)。
しかしながら、イオン伝導性を有する物質と電子伝導性を有する物質を併用する場合には、両者を完全に均一に混合することが困難であるので、全触媒粒子へプロトンと電子を均等に伝達することが出来ない。
そこで、一つの材料においてイオン伝導性と電子伝導性を併せ持った混合伝導体としての触媒担持用担体が提案されている。
例えば、JP2001−202971A、JP2001−110428A、JP2003−68321A、JP2002−536787Aに有機系の触媒担持用担体が開示されている。
また、JP1998−255832A、JP1999−335165A、JP2000−251533A、JP2000−18811Aには、電子と酸素イオンを伝達する無機系の触媒担持用担体が開示されている。
上記有機系の触媒担持用担体においては、有機材料であるがゆえに耐久性や耐熱性の点で実用化までに解決すべき課題が多い。
他方、電子と酸素イオンを伝達する無機系の触媒担持用担体においてその稼動温度が高温であるので(800℃程度)、例えば車両や携帯に適した小型の燃料電池には不適な場合が想定される。
常温から中温(室温〜200℃)で動作する燃料電池に適応可能な触媒担持用担体であってプロトン伝導と電子伝導を併せ持つ混合伝導性をもつものは今だに提案されていない。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきた結果、新規な無機系の触媒担持用担体を見出した。そしてこれに触媒を担持させてなる金属担持触媒を得た。更に、当該金属担持触媒を用いて燃料電池の反応層を形成し、当該反応層を備える燃料電池を提供する。
即ち、実質的に、無機材料の電子伝導体に無機材料のプロトン伝導体から構成された化合物からなる触媒担持用担体に触媒を担持させた反応層を備える燃料電池、である。
かかる触媒担持用担体は、化合物であるため物質全体として電子伝導とプロトン伝導を行なうことが可能であるとともに電子伝導体とプロトン伝導体とが強固に結合されて、水に溶けることがない。
電子伝導体は有機材料を炭素化してなるものとすることが好ましい。
かかる触媒担持担体に白金若しくはその合金その他の燃料電池反応に適した触媒を担持させて金属担持触媒が形成される。この明細書において金属担持触媒とは上記触媒担持用担体に任意に選択された触媒を担持させたものをいう。その中でも、燃料電池反応に適した白金等の触媒を担持させた金属担持触媒を用いると、図1Aに示すように、担体表面に担持された全ての触媒に電子、プロトン及び酸素が供給される。よって、全ての触媒の利用が可能になる。かかる金属担持触媒を用いて燃料電池用反応層を形成すれば、触媒の利用率が向上し、もって燃料電池の反応効率が向上する。
これに対し、電子伝導用担体(カーボン粒子等)に触媒を担持した金属担持触媒及びイオン交換樹脂(ナフィオン等)を用いる従来の実用タイプの燃料電池反応層においては、図1Bに示すとおり、電子伝導用担体の凹部に担持された触媒へイオン交換樹脂が接触できなくなる場合がある。このような触媒にはプロトンが供給されないので燃料電池反応に寄与できなくなる。イオン交換樹脂中のガスの移動速度は気相中と比較して著しく遅い。従って、必要以上にイオン交換樹脂被覆をするとガスの供給を阻害することとなり電池性能の低下につながる。また、イオン交換樹脂は乾燥/湿潤サイクルで寸法変化を伴う。この寸法変化により担持された触媒が担体から脱落するおそれもあった。
ここに、無機材料からなる電子伝導体としては、図2及び図3に示すように、主鎖に炭素の二重結合、三重結合及び両者を有し、当該主鎖が電子伝導機能に寄与するタイプのほか、側鎖を介して電子を伝導させるタイプであってもよい。
さらにこのような電子伝導体はπ結合を有する有機化合物を炭化して無機材料にして使用すると好適である。π結合を有する有機化合物は脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくはこれらの誘導体であり、これらのうち少なくとも1種が用いられる。これらの有機化合物の代表的なものとして、ポリアセチレン、レソルシノール、フェノール、2−フェニルフェノール、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチォフェン、フェニルホスホン酸、フェニルシランアルコキシド類、ピロガロール、ジヒドロキシビフェニルを用いることができる。
また、電子伝導体は無機材料としてグラファイトやカーボンナノチューブ等の炭素質材料や金、パラジウム、白金、マグネシウム、リチウム、チタニウム等の金属やその合金を含む金属材料でも可能である。
無機材料からなるプロトン伝導体としては、リン元素を含む化合物、イオウ元素を含む化合物、カルボン酸、ホウ酸、無機固体酸を用いることができ、特にリン元素を含む化合物、リン酸、リン酸エステル、硫酸、硫酸エステル、スルフォン酸、水素化酸化タングステン、水素化酸化レニウム、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化ジルコニア、タングストリン酸、タングスト珪酸、酸化ケイ素のうち少なくとも一つを用いることができる。
この発明では、これら無機系の電子伝導体とプロトン伝導体とにより化合物が構成されている。これにより、無機伝導体とプロトン伝導体とが強固に結合される。もって、この発明の触媒担持用担体が水に浸漬された場合においてもプロトン伝導体の脱離が殆ど生じなくなるとともに物質全体として電子伝導とプロトン伝導を行なうことが可能になる。
当該実質的な化合物を構成する態様として、即ち電子伝導体とプロトン伝導体との固定の態様として共有結合、インターカレーション及び包接が考えられるが、製造過程の条件によりこれらの各態様が混在する可能性もある。
また、電子伝導体及びプロトン伝導体の材料の種類に応じて、固定化の状態が共有結合、包接、インターカレーションをとるのか否かが変化する。例えば、電子伝導体に有機材料を炭化して無機材料とした場合には共有結合が主になると考えられる。他の例として電子伝導体に金属材料を選んだ場合、プロトン伝導体材料として無機材料、特に酸化物を選択すれば共有結合若しくは包接で固定化が可能となる。
電子伝導体とプロトン伝導体とが共有結合により固定された状態が図2及び図3に例示されている。共有結合された電子伝導体1、3とプロトン伝導体2とはその距離が非常に近接するので、図示のとおり、ナノオーダの触媒粒子(例えば白金等)に対してともに接触することができる。従って、触媒反応に必要な電子とプロトンを過不足なく供給することが可能となる。
このような触媒担持用担体は次のようにして形成される。
まず、π結合を備えた有機化合物とプロトン伝導性材料とを重合させた高分子前駆体を形成する。この高分子前駆体において、有機化合物の骨格をなす炭素はそれ同士が重合してπ結合を有する電子伝導性の主鎖を形成するとともに、プロトン伝導体との間にも共有結合を形成し、このプロトン伝導体が電子伝導体の炭素主鎖を架橋する構成となると考えられる。充分な量のプロトン伝導体を配合することにより、炭素主鎖に共有結合したプロトン伝導体同士の距離が小さくなり、その間においてプロトン伝導性が生じることとなる。
また、π結合を備えた有機化合物の重合体中にプロトン伝導体を分散させた前駆体を準備してもよい。
有機化合物とプロトン伝導体との重合度が小さい場合、結果として、有機化合物の重合体中にプロトン伝導体が分散された前駆体となる。また、当該重合度が不十分な場合、電子伝導体を構成する有機化合物に共有結合したプロトン伝導体とこれから分離して実施的に分散状態にあるプロトン伝導体が並存する前駆体となる。
このような前駆体を不活性雰囲気下で焼成する。これにより、有機化合物が炭化して無機物となって、電子伝導性が確保される。
そして、当該電子伝導性の炭素骨格にプロトン伝導体が安定して固定化されている。これにより、プロトン伝導性が確保される。プロトン伝導性は、プロトン伝導体付与材が近接することにより得られると考えられる。図1及び図2に示すように、プロトン伝導体が炭素骨格を架橋する場合は、プロトン伝導体の位置が固定されるので当該プロトン伝導体同士の相互作用によりプロトン伝導性が確保される。
プロトン伝導体が炭素骨格より脱離した場合、および前駆体の状態から炭素骨格に結合していない場合は、炭素主鎖の間にインターカレートされるか若しくは炭素主鎖が形成する網目構造の中に包接されると考えられる。これらの場合においても、プロトン伝導体同士が近接していれば、プロトン伝導性を得られると考えられる。
このようにプロトン伝導体が化合物として構成されるとともに、炭素骨格間に結合、インターカレーション若しくは包接されているので、プロトン伝導体が浮遊することがないので、水が存在する場所で触媒担持用担体を使用したとしても、水によってプロトン伝導体が流れ出てしまうことがない。また物質全体として電子伝導とプロトン伝導を行うことが可能となる。即ち、水によってプロトン伝導度が低下する割合は非常に低い。
また、前駆体を焼成する前にこれを加温若しくは加圧加温することが好ましい。
前駆体を加温若しくは加圧加温することにより、焼成後のリン含有量が増大する。前駆体を加温若しくは加圧加温する方法は特に限定されるものではなく、一般的な手法を用いることができる。
還流法を用いるのは、沸騰状態で加温する場合、発生する蒸気を冷却液化して反応容器に戻すため、反応容器に冷却器を設置するのが望ましいからである。この還流法によれば、前駆体の雰囲気を何ら加圧することなくその温度を上げることができる。加温の温度及び時間は前駆体の特性に応じて適宜選択される。
前駆体を加圧加温する方法も特に限定されるものではないが、オートクレーブを用いることが作業性等の見地から好ましい。前駆体の雰囲気圧力及び温度は前駆体の特性に応じて適宜選択される。
ここに、π結合を備えた有機化合物として不飽和脂肪族炭化水素若しくは芳香族炭化水素を挙げることができる。より具体的には、ポリアセチレン、レソルシノール、フェノール、2−フェニルフェノール、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチォフェン、フェニルホスホン酸、フェニルシランアルコキシド類、ピロガロール、及びジヒドロキシビフェニルのうち少なくとも1つを選択することができる。
また、プロトン伝導性材料としてリン元素を含む化合物、イオウ元素を含む化合物、カルボン酸、ホウ酸、無機固体酸を用いることができる。リン元素を含む化合物としてはリン酸が挙げられ、イオウ元素を含む化合物としては主に硫酸、スルフォン酸が挙げられる。さらにはこれらの化合物の誘導体を出発原料として無機のプロトン伝導性材料を作成することも可能である。特に、リン元素を含む化合物、リン酸、リン酸エステル、硫酸、硫酸エステル、スルフォン酸、水素化酸化タングステン、水素化酸化レニウム、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化ジルコニア、タングストリン酸、タングスト珪酸、酸化ケイ素のうち少なくとも一つを用いることができる。
前駆体の有機化合物を無機化するためには、前駆体を不活性雰囲気下において焼成することが好ましい。
不活性雰囲気は、前駆体をアルゴンガス、窒素ガスやヘリウムガス流通下におくこと、若しくは真空化におくことにより達成できる。
かかる不活性雰囲気下で前駆体を加熱すると有機成分が炭化して無機物となる。有機成分の主鎖がπ結合を有するものであるとき、高い電子伝導性が得られる。
加熱温度及び加熱時間は前駆体の特性に応じて適宜選択される。
当該加熱と同時に若しくは加熱後に、熱以外の高エネルギーを付加することもできる。高エネルギーとしてプラズマ照射、マイクロ波照射、超音波照射等を挙げることができる。
以上説明したように、この発明の触媒担持用担体は無機材料系において電子伝導機能とプロトン伝導機能を併せ持つ。また、室温程度の低温度域においても触媒担持用担体として機能する。また、水存在下でも安定して電子伝導とプロトン伝導が機能する。
かかる触媒担持用担体には触媒機能を有する任意の金属(特に貴金属)を担持することができる。担持の方法は特に限定されず、周知の方法が採用される。
このようにして混合伝導体を担体として、該担体に金属を担持した金属担持触媒を用いて次のようにして反応層、更には燃料電池の単位ユニットを形成する。例えば、金属担持触媒を水あるいはアルコール等に分散させ、これらが混合したペーストを作製し、このペーストを拡散層の片面へ塗布する。このようにして反応層を形成する。さらに、反応層と塗布した拡散層を電解質膜(この例ではナフィオン膜)の両面に接合することで、燃料電池を構成する単位燃料電池、即ち、単位セルを製造することができる。拡散層側にペーストを塗布して反応層を形成することもできる。ペーストにはバインダーとして、PTFEやナフィオン等を添加することもできる。
また、金属担持触媒の粉末をホットプレスすることにより、目的とする電極形状に対応するように成型して反応層を製作する。この反応層と電解質膜とを積層してホットプレスを行うことにより、電解質膜を反応層で狭持するような一体成形品を作る。さらに、反応層の外側に拡散層及を接合することで、燃料電池の単位セルを作製することができる。
以下の事項を開示する。
(1)
無機材料の電子伝導体と無機材料のプロトン伝導体から構成された化合物からなる担持体上に貴金属触媒を担持したことを特徴とする金属担持触媒。
(2)
前記電子伝導体は、脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくはそれらの誘導体の内、少なくとも1種を炭素化したものであることを特徴とする(1)に記載の金属担持触媒。
(3)
前記脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくはそれらの誘導体は、ポリアセチレン、レソルシノール、フェノール、2−フェニルフェノール、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチォフェン、フェニルホスホン酸、フェニルシランアルコキシド類、ピロガロール、ジヒドロキシビフェニルの少なくとも1種であることを特徴とする請求の(2)に記載の金属担持触媒。
(4)
前記電子伝導体は、炭素材料であることを特徴とする(1)に記載の金属担持触媒。
(5)
前記プロトン伝導体は、リン元素を含む化合物、イオウ元素を含む化合物、カルボン酸、ホウ酸、無機固体酸の内、少なくとも1種を含有することを特徴とする(1)に記載の金属担持触媒。
(6)
前記電子伝導体は、二重結合を含む炭素の連続的な結合をもつことを特徴とする(1)に記載の金属担持触媒。
(7)
有機材料を炭素化した無機材料からなる電子伝導体に無機材料からなるプロトン伝導体を固定化した担体上に貴金属触媒を担持したことを特徴とする金属担持触媒。
(8)
前記固定化は、共有結合により行われることを特徴とする(7)に記載の金属担持触媒。
(9)
前記固定化は、インターカレーションにより行われることを特徴とする(7)に記載の金属担持触媒。
(10)
前記固定化は、包接により行われることを特徴とする(7)に記載の金属担持触媒。
(11)
脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくはそれらの誘導体の内、少なくとも1種とプロトン伝導材料を混合して重合させた高分子前駆体を得る第一工程と、
該第一工程により得た高分子前駆体を焼成する第ニ工程と、前記第ニ工程で焼成されて得た焼成物に貴金属触媒を担持させる第三工程を備えたことを特徴とする金属担持触媒の製造方法。
(12)
脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくはそれらの誘導体の内、少なくとも1種が重合体された後にプロトン伝導材料を混合して高分子前駆体を得る第一工程と、
該第一工程により得た前駆体を焼成する第二工程と、
前記第ニ工程で焼成されて得た焼成物に貴金属触媒を担持させる第三工程を備えたこと特徴とする金属担持触媒の製造方法。
(13)
脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくはそれらの誘導体の内、少なくとも1種はポリアセチレン、レソルシノール、フェノール、2−フェニルフェノール、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチォフェン、フェニルホスホン酸、フェニルシランアルコキシド類、ピロガロール、ジヒドロキシビフェニルであることを特徴とする(11)又は(12)に記載の金属担持触媒の製造方法。
(14)
前記プロトン伝導体は、リン元素を含む化合物、イオウ元素を含む化合物、カルボン酸、ホウ酸、無機固体酸の内、少なくとも1種を含有することを特徴とする(11)又は(12)に記載の金属担持触媒の製造方法。
(15)
前記第一工程において、前記高分子前駆体を加温若しくは加圧加温する工程を含むことを特徴とする(11)又は(12)に記載の金属担持触媒の製造方法。
図1は触媒担持用担体の触媒担持の様子を示す模式図であり、図1はこの発明の触媒担持用担体を示し、図1Bは従来例を示す。 図2はこの発明の触媒担持用担体の構造を示す模式図である。 図3もこの発明の触媒担持用担体の構造を示す模式図である。 図4は前駆体の構造を示す模式図である。 図5は実施例の触媒担持用担体の構造を示す模式図である。 図6は実施例の触媒担持用担体のプロトン伝導機能を確認するためのホルダの模式図である。 図7は図6のホルダの電流電圧特性を示すチャートである。 図8は実施例の触媒担持用担体の純粋中におけるリン残存率の時間変化を示すチャートである。 図9はこの発明の実施例の金属担持触媒で形成された反応層(空気極側)を備える燃料電池セルの断面図である。 図10は図9の燃料電池セルの特性を測定する装置を示す断面図である。 図11は実施例の金属担持触媒からなる反応層を有する燃料電池セルと比較例の金属担持触媒からなる反応層を有する燃料電池セルの特性を比較するグラフ図である。 図12は他の実施例で用いる還流装置の構造を示す。 図13は他の実施例で用いるオートクレーブの構造を示す。 図14は各実施例の触媒担持用担体におけるリン量とプロトン伝導率との関係を示す。 図15は他の実施例の燃料電池の構成を示す。
以下、本発明の燃料電池に採用される金属担持触媒の上記効果を確認する。
まず、触媒担持用担体の製造方法を下記化学式1及び図3、図4を参照しながら説明する。
Figure 0005007565
レソルシノール(10g)とホルムアルデヒド(13ml)を水(40ml)に溶かし、当該溶液にリン酸トリメチルを加水分解した溶液を加える。かかる溶液をNaCOを触媒として脱水縮合させゲル化する。このゲルを120℃の条件で乾燥することにより、前駆体を得る(図4参照)。
この前駆体を窒素雰囲気下で熱処理し(500℃〜1000℃)、実施例1〜3の触媒担持用担体を得る。この触媒担持用担体は、図5に示すように、グラファイト類似骨格を有する電子伝導体相7、7とリン酸基のプロトン伝導体相9が交互に並ぶ構成となる。
得られた上記の触媒担持用担体は一旦粉砕され、その後、プレスで加工成形して板状とし、これを集電板で挟み込んで直流電流を印加し、そのときの電圧から各実施例の比抵抗を得た。測定温度は室温である。
実施例1 実施例2 実施例3
熱処理温度 500℃ 800℃ 1000℃
比抵抗(Ω・cm) 138 0.35 0.13
上記において、加熱温度が500℃の場合に比抵抗が大きいのは、有機物の炭素化が不十分であったためと考えられる。
加熱温度や加熱時間は、有機化合物の骨格等に応じて適宜選択可能なパラメータである。
なお、比抵抗は次のようにして求めた。
1/比抵抗 = 伝導度 =1/(抵抗 × (試料の幾何表面積/厚さ))
ここに、抵抗=印加電圧/応答電流である。
後述のプロトン伝導度及び電子伝導度も同様にして算出される。プロトン伝導度を算出する場合にはナフィオン膜のようなプロトンは通すが電子は通さない材料で試料を挟み、電子伝導度を算出する場合には銅のようなプロトンを通さずに電子を通す材料で試料を挟むこととなる。
次に、プロトン伝導性の試験について図6及び図7を用いて説明する。
図6に示すように、実施例1〜3の試料11の両サイドに触媒層15、カーボンクロスからなる拡散層17をとりつけた。ここに、触媒層15はカーボン粒子に白金触媒を担持させたものであり、従来技術において燃料電池の反応層の構成に等しい。ナフィオン膜13はプロトンは透過するが電子はブロックするものである。
図6のホルダーを容器中に入れて、当該容器へ60℃、湿度100%の窒素ガス若しくは水素ガスを導入する。そのときの電圧電流特性を図7に示す。
図7から、窒素ガス導入中においては拡散層17、17間に電圧を印加しても電流が流れず、その一方、水素ガスを導入すると電流が流れるのを確認できた。これにより、試料11にプロトン伝導性のあることが確認できる。
また試料中のプロトン伝導度は下記のように算出された。

実施例1 実施例2 実施例3
熱処理温度 500℃ 800℃ 1000℃
プロトン伝導度 2.6×10-3 1.3×10-3 7.3×10-4
(S/cm)

さらに比較例として既述の実施例の作成法にてリン酸トリメチルを添加せずに、同様に熱処理した試料のプロトン伝導度の算出方法は既述の通りである。

比較例1 比較例2 比較例3
熱処理温度 500℃ 800℃ 1000℃
プロトン伝導度 1.0×10-6以下 1.0×10-6以下 1.0×10-6以下
(S/cm)

リン酸トリメチルを添加した場合と添加していない場合の試料を比較することで、リンによるプロトン伝導度の出現が証明された。
各実施例の試料(0.1g)を室温の純水中100cc中に浸漬し、浸漬時間とリンの残存率の関係を図8に示す。
図8において、リンの残存率はEDX分析装置(HORIBA製:型番EMAX240)を用いて測定した。
図8の結果から、実施例1の試料では約60%、実施例2の試料では約80%、実施例3の試料では約90%のリン(即ちプロトン伝導体)が残存していることが確認できる。
これにより、実施例の触媒担持用担体においては、湿潤環境においても長期間にわたりプロトン伝導作用が維持されることがわかる。
上記の触媒担持用担体は燃料電池に用いることができ、特に燃料電池を構成する反応層に用いると好適である。この反応層は、(ガス)拡散層を経て外部から供給される酸素又は水素がイオン化する場所で、通常、電解質膜とガス拡散層の間に配置されている。
次に、金属担持触媒の製造方法の例を説明する。
上記製造された触媒担持用担体をボールミル等で粉砕して粉末化し、この粉末化された触媒担持用担体に白金等の触媒を担持する。この担持は、例えば、通常の白金担持カーボンを作成する場合の工程におけるカーボン担体上に白金触媒を担持させるのと同様の手法により行うことが出来る。例えば、コロイド法や含漬法を挙げることができる。
コロイド法は次のようにして行われる。塩化白金酸を用い、Ptコロイド溶液を作成する。このコロイド溶液へ粉末化した触媒担持用担体を投入し、白金を担持させ、さらに還元処理を施し実施例4の白金担持触媒を得た。また、白金濃度を変えて実施例5の白金担持触媒を得た。
また、含漬法は次のようにして行われる。ジアミノ亜硝酸白金のメタノール溶液に粉砕した触媒担持用担体を投入し、混合後乾燥させ、更に還元処理を施し実施例6の白金担持触媒を得た。
各実施例の白金担持触媒の特性を下記に示す。

実施例4 実施例5 実施例6
白金担持密度(wt%) 30 50 30
白金粒径(nm) 5.1 5.1 3〜6

上記において白金担持密度はEDX(HORIBA社製、型番:EMAX240)で測定した。
白金粒径はXRD(ブルカーエイエックスエス社製、型番:XPM3)で測定した。
次に、実施例4の白金担持触媒を用いて図9に示す構造の燃料電池セル20を構成した。具体的には実施例4の白金担持触媒を純水、PTFE分散液及びアルコールの混合液に分散させ、炭素製のガス拡散層26に塗布し実施例の反応層(空気極)23とする。塗布量に変化をもたせて3つの反応層(実施例7、8及び9)を作成した。他方、対極となる反応層(水素極)は40wt%で白金担持したカーボン粉末を純水とナフィオン溶液との混合液へ分散させ、炭素製のガス拡散層27へ塗布することにより得た。その後、ガス拡散層26(反応層23が塗布されている)、ナフィオン膜21及びガス拡散層27(反応層24が塗布されている)を積層し、ホットプレスにて接合し図9の燃料電池セル20を得た。
他方、図9に示した実施例の燃料電池セル20において空気極側の反応層からプロトン導電能を有する物質を排除して比較例4の燃料電池セルとした。即ち、40wt%で白金担持したカーボン粉末をPTFE分散液及びアルコールの混合液に分散させ、炭素製のガス拡散層26に塗布し比較例4の反応層(空気極)を得た。
このようにして得られた実施例7−9の燃料電池セル及び比較例4の燃料電池セルを図10に示した測定装置30へ組付けて電気化学的な白金表面積を測定した。測定方法は次のとおりである。
予め、空気極側反応層23及び水素極側反応層24に加湿した窒素ガスを導入し、試験体を充分に加湿する。
引き続き、水素極側反応層に導入するガスを水素ガスに切り替え、水素極側反応層の電位を基準に0.1〜1.0V、50mV/secの条件で電気化学的に白金表面を安定化させる。
次に、水素側反応層の電位を基準に0.3Vの電位を維持した状態で、COガスを空気極側反応層へ導入し、白金表面にCOを吸着させる。次に電位を保持したまま、空気極側反応層に窒素ガスを導入し、反応層内のCOを窒素ガスで充分に置換する。
白金表面に吸着したCOを、電気化学的に酸化除去する。酸化除去に要した電気量から、電気化学的な白金表面積を求めた。電気化学的表面積は下式を用いた。試験は50℃下にて行った。

電気化学的白金表面積(cm2-Pt) = CO酸化電気量(mC)/0.42mC/cm2-Pt
表1に結果を示す。
Figure 0005007565
表1において、白金表面積はXRDで測定した触媒粒径から求めた白金表面積と、電極上の白金量から算出した値である。電気化学的表面積はCO酸化電気量から求めた値である。利用率は電気化学的白金表面積を白金表面積で割った値である。
表1の結果から明らかなように、実施例の白金担持触媒は、ナフィオン等のイオン交換樹脂を使用しなくても、電気化学的な白金表面積を有することがわかる。
図10の装置を用い、条件として水素極側反応層へ水素ガスを、空気極側反応層へ空気とを大気圧にて導入し50℃における燃料電池としての特性を測定した。
結果を図11に示す。実施例7〜9の白金担持触媒を反応層として用いた燃料電池セルは所望の電流−電圧特性を奏し、燃料電池として動作することが確認できた。
以上の各試験において、実施例の触媒担持用触媒は室温乃至60℃という低温でそれぞれプロトン伝導性と電子伝導性の機能を発揮した。水の有無の状況にもよるが無加湿雰囲気で200℃までは同等の機能を奏するものと考えられる。
従来の無機系の触媒担持用担体は800℃程度の高温においてその機能を発揮したことと比べると、実施例の触媒担持用担体へ白金を担持した金属担持触媒が常温領域において燃料電池として機能することがわかる。
また、図5の構造から明らかなように、電子伝導体相7とプロトン伝導体相9とは共有結合で連結されているため、両者は極めて近接している。そのため、触媒粒子が微小であっても電子伝導体7とプロトン伝導体9は常に同時に触媒粒子に接触することができる。これにより、触媒反応に必要な電子とプロトンを過不足なく触媒へ供給することが可能となり、触媒の利用効率、ひいては燃料電池の効率を向上させることができる。
次に燃料電池の反応層に利用できる触媒担持用担体の他の実施例について説明する。
Figure 0005007565
上記化学式2に示すとおり、レソルシノール(5g)を純水(20ml)に溶解し、ホルムアルデヒド(6.7ml)を添加する。リン酸トリメチル(5.2ml)を純水(3.2ml)、エタノール(10.5ml)、塩酸(124μl)混合溶液中で1時間攪拌し加水分解する。リン酸トリメチルの加水分解溶液をレソルシノール、ホルムアルデヒドの水溶液に加えた後、NaCO(0.47g)を添加し室温で24時間放置してゲル化する。
得られたゲルを粉砕し、リン酸トリメチル(5.2ml)、純水(3.2ml)、エタノール(10.5ml)、塩酸(124μl)混合溶液中でオイルバス温度200℃、4時間還流する。図12は還流装置を示す。得られた試料をろ過、乾燥し、不活性ガス雰囲気下で熱処理(1000℃、4時間)することにより、実施例の触媒担持用担体を得た。
更に、得られた触媒担持用担体をボールミルで粉砕し、直径:15mm、厚さ:約3mmのデスク状の試料をSPS焼結装置により作成した。作成した試料をナフィオン膜及び触媒層で挟み込み図6に示すホルダを形成した。このホルダを容器へ入れて、当該容器へ60℃、湿度100%の窒素ガス及び水素ガスを導入し、ホルダへ電圧を印加してその応答電流から実施例10の触媒担持用担体の電圧電流特性を得た(図7と同様なもの)。当該特性に基づきプロトン伝導度を算出したところ、5.6×10−3S/cmであった。また、試料中のリン元素の量(Pmol/Cmol)は4.8%であった。このリン元素の量はEDX分析装置により測定した。
次に燃料電池の反応層に利用できる他の触媒担持用担体の実施例について説明する。
Figure 0005007565
上記化学式3に示すとおり、レソルシノール(2g)とホルムアルデヒド(2.7ml)を純水(8ml)に溶かした溶解に、リン酸トリメチル(4.2ml)を純水(2.6ml)、エタノール(5.0ml)、塩酸(99μl)混合溶液中で1時間攪拌し加水分解した溶液を添加する。更に、NaCO(0.19g)を添加し室温で3時間攪拌後、60℃で24時間、更に80℃で24時間放置する。
その後、試料をオートクレーブ(内容積120cc、図13参照)中で150℃、6時間加熱する。溶媒等の自己発生圧でオートクレーブ内は3〜4MPa程度まで加圧されることとなる。
得られた資料をろ過、乾燥し、不活性ガス雰囲気下で熱処理(800℃、4時間)することにより、この実施例の触媒担持用担体を得た。
更に、得られた触媒担持用担体をボールミルで粉砕し、直径:15mm、厚さ:約3mmのデスク状の試料をSPS(Spark Plasma Sintering)焼結装置を用いて加圧形成して作成した。作成した試料をナフィオン膜及び触媒層で挟み込み図6に示すホルダを形成した。このホルダを容器へ入れて、当該容器へ60℃、湿度100%の窒素ガス及び水素ガスを導入し、ホルダへ電圧を印加してその応答電流から実施例11の触媒担持用担体の電圧電流特性を得た(図7に示すようなもの)。当該特性に基づきプロトン伝導度を算出したところ、1.5×10−2S/cmであった。また、試料中のリン元素の量(Pmol/Cmol)は5.8%であった。このリン元素の測定方法は実施例4の場合と同様である。
上記各実施例の触媒担持用担体におけるリン元素含有量とプロトン伝導度の関係を下記表2及び図14に示す。
Figure 0005007565
これらの比較結果より、前駆体を加熱若しくは加圧加熱することにより、加熱処理後の触媒担持用担体におけるリン量が増加し、もってそのプロトン伝導度が向上することがわかる。
(実施例12)
30ccの純水と5ccのエタノールの混合溶液にフェノール2gを溶解しホルムアルデヒド溶液3.15ccを添加する。更に、リン酸トリメチル溶液を4.89cc添加し1時間攪拌後炭酸ナトリウム0.089g添加し室温で終夜攪拌する。密封下、70℃で24時間放置後、溶媒を除去する。得られた試料を窒素ガス雰囲気下で500℃、4時間熱処理を施し、実施例の触媒担持用担体を得た。
(実施例13)
8ccの純水にピロガロール2gを溶解しホルムアルデヒド溶液2.36ccを添加する。更に、リン酸トリメチル溶液を3.65cc添加し1時間攪拌後炭酸ナトリウム0.0167g添加し室温で3時間攪拌する。密封下、50℃で24時間静置後、更に80℃で72時間静置する。得られたゲルを窒素ガス雰囲気下で800℃、4時間熱処理を施し、実施例の触媒担持用担体を得た。
(実施例14)
体積比1/1のエタノール/水混合溶液12ccにジヒドロキシビフェニルを3g溶解しホルムアルデヒド溶液4.84ccを添加する。更に、リン酸トリメチル溶液を7.49cc添加し1時間攪拌後炭酸ナトリウム0.0683g添加し室温で3時間攪拌する。密封下、50℃で24時間静置後、更に80℃で72時間静置する。溶媒を蒸発させ、得られた試料を窒素ガス雰囲気下で500℃、4時間熱処理を施し、実施例の触媒担持用担体を得た。
(実施例15)
12ccの純水にレソルシノール3gを溶解しホルムアルデヒド溶液4.05ccを添加する。攪拌しながらリン酸水溶液0.736ccを徐々に添加する。密封下、70℃で24時間放置後、溶媒を除去する。得られた試料を窒素ガス雰囲気下で1000℃、4時間熱処理を施し、実施例の触媒担持用担体を得た。
(実施例16)
12ccの純水にレソルシノール3gを溶解しホルムアルデヒド溶液4.05ccを添加する。更に炭酸ナトリウム0.028gを添加する。密封下、50℃で24時間80℃で72時間放置後、ゲルを粉砕する。粉砕したゲルを0.1N塩酸水溶液、純水、エタノールの順で洗浄した。
50ccのエタノールに1.5gのタングストリン酸を溶かした溶液に洗浄したゲルを浸漬させる。50℃で48時間浸漬させたゲルを窒素ガス雰囲気下で700℃、4時間熱処理を施し、実施例の触媒担持用担体を得た。
(実施例17)
12ccの純水にレソルシノール3gを溶解しホルムアルデヒド溶液4.05ccを添加する。フェニルホスホン酸2.18gを体積比1/1のエタノール/純水に溶かした溶液を添加し、更に炭酸ナトリウムを0.114g添加する。室温で12時間攪拌後、密封下にて60℃24時間、80℃48時間の順で放置する。得られた試料ゲルを窒素ガス雰囲気下で800℃、4時間熱処理を施し、実施例の触媒担持用担体を得た。
かかる実施例12〜17の試料をボールミルで粉砕し、直径15mm、厚さ約3mmの試料を加圧成型により作製した。電子比抵抗は作製した試料を金の集電板で挟み込み直流電流を印加し、そのときの電圧から求めた。イオン伝導度は、作製した試料をナフィオン膜及び触媒層で挟み込み、図5に示すホルダを形成した。このホルダを容器へ入れて、当該容器へ60℃、湿度100%の窒素ガス若しくは水素ガスを導入し、ホルダへ電圧を印加してその応答電流から求めた。
結果を表3に示す。
Figure 0005007565
水に対する安定性は実施例1〜3と同様に、試料0.1gを室温の純水に浸漬し、浸漬時間と試料中のリン濃度(実施例12はタングステン濃度)を測定することにより確認した。試料中のリン濃度(実施例12はタングステン濃度)は、浸漬後50時間以降はほぼ安定しており、200時間以上浸漬しても、初期のリン濃度(実施例12ではタングステン濃度)を基準として実施例12では45%、実施例13で81%、実施例14で86%、実施例15で90%、実施例16で95%、実施例17で75%、残存することが確認できた。
本発明者は、図9に示した燃料電池の構成において、電解質としてナフィオン(固体高分子電解質膜)とは別の電解質を用いることが可能であることを見出した。当該別の電解質を用いれば燃料電池、特に反応層の動作温度を約100℃以上とすることが可能になり、その場合、燃料電池からの排熱を有効に利用できる。そこで、以下に100℃以上で動作させる場合の燃料電池の構成を示す。
かかる燃料電池の電解質膜として、末端にケイ素アルコキシドを有する有機−無機ハイブリッド化合物とリン酸化合物と用いて作製したリン酸基含有無機―有機ハイブリッド材料、P−Mo等のガラス系固体電解質、炭化ケイ素多孔質体や塩基性高分子膜にリン酸を含浸させた電解質膜等を用いることができる。
また、反応層は図9の例と同様にして形成される。この場合、水素極、空気極の両反応層ともイオン交換樹脂を用いずに作成することができる。
前記リン酸基含有無機−有機ハイブリッド膜は次のようにして形成される。
無機―有機ハイブリッド化合物としてポリエチレングリコールと3−イソシアラートプロピルトリエトキシシランとの結合体を使用し、リン酸成分源としてリン酸化合物を存在させ、もってリン酸基含有無機−有機ハイブリッド材料を得る。
反応層及びガス拡散層は、図9の例と同様にして形成される。
かかる燃料電池は100℃以上200℃以下の動作温度で動作可能である。
電解質膜としてガラス系固体電解質膜を用いた例を示す。かかるガラス系固体電解質膜としてゾルーゲル法で形成した金属酸化物系固体電解質(P2O5−MOx(M=Si,Ti,Zr,Al等)がある。このガラス系固体電解質膜は、その成形材料がゾル状態のとき型成形、若しくはキャスティングし、その後乾燥して所望の形状とする。
反応層及びガス拡散層は、図9の例と同様にして形成される。
かかる燃料電池は100℃以上200℃以下の動作温度で動作可能である。
リン酸型燃料電池に金属担持触媒からなる反応層を適用した例を図15に示す。
このリン酸型燃料電池110は電解質・反応層・拡散層からなる燃料電池セル112と、当該燃料電池セル112の両側に配置されるバイポーラ板であるセパレータ114a、114bと、当該セパレータ114a、114bの外側に配置される集電用電極116a、116bとを備える。集電用電極116a、116bの外側にはエンドプレート118a、118bが配置され、当該エンドプレート118a、118bが図示しないボルトにより締め付けられている。燃料電池セル112は炭化ケイ素多孔質体にリン酸を含有させた電解質マトリックス層120と、当該電解質マトリックス層120の両側に額縁状のスペーサ122を介して配置される反応層・拡散層124,126とから構成される。反応層は実施例4の白金担持触媒を純水、PTFE分散液及びアルコールの混合液に分散させ、炭素製のガス拡散層に塗布し、反応層塗布拡散層124,126とする。セパレータ114aにおける反応層・拡散層124に対向する面には、水素ガスを流通させる第1のガス流路128が形成されており、一方、セパレータ114bにおける反応層・拡散層126に対向する面には、空気を流通させるための第2のガス流路130が形成されている。符号132は温度センサである。
かかる構成のリン酸型燃料電池はその反応層の温度を100℃以上200℃以下として動作することができる。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。

Claims (13)

  1. 無機材料の電子伝導体と無機材料のプロトン伝導体から構成された化合物からなる触媒担持用担体に触媒を担持させた反応層を備える燃料電池であって、
    前記電子伝導体は、脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくはそれらの誘導体の内、少なくとも1種を炭素化したものであることを特徴とする燃料電池。
  2. 前記脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくはそれらの誘導体は、ポリアセチレン、レソルシノール、フェノール、2−フェニルフェノール、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチォフェン、フェニルホスホン酸、フェニルシランアルコキシド類、ピロガロール、ジヒドロキシビフェニルの少なくとも1種であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の燃料電池。
  3. 無機材料の電子伝導体と無機材料のプロトン伝導体から構成された化合物からなる触媒担持用担体に触媒を担持させた反応層を備える燃料電池であって、
    前記電子伝導体は、二重結合を含む炭素の連続的な結合をもつことを特徴とする燃料電池。
  4. 無機材料の電子伝導体と無機材料のプロトン伝導体から構成された化合物からなる触媒担持用担体に触媒を担持させた反応層を備える燃料電池であって、
    前記電子伝導体は有機材料を炭素化した無機材料からなり、該電子伝導体に前記無機材料からなるプロトン伝導体が固定化されていることを特徴とする燃料電池。
  5. 前記固定化は、共有結合により行われることを特徴とする請求の範囲第4項に記載の燃料電池。
  6. 前記固定化は、インターカレーションにより行われることを特徴とする請求の範囲第4項に記載の燃料電池。
  7. 前記固定化は、包接により行われることを特徴とする請求の範囲第4項に記載の燃料電池。
  8. 脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくはそれらの誘導体の内、少なくとも1種とプロトン伝導材料を混合して重合させた高分子前駆体を得る第一工程と、
    該第一工程により得た高分子前駆体を焼成する第二工程と、
    触媒を担持させた後、電解質層と接合する第三工程と、
    を有することを特徴とする燃料電池反応層の製造方法。
  9. 脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくはそれらの誘導体の内、少なくとも1種が重合された後にプロトン伝導材料を混合して高分子前駆体を得る第一工程と、
    該第一工程により得た前駆体を焼成する第二工程と、
    触媒を担持させた後、電解質層と接合する第三工程と、
    を有することを特徴とする燃料電池反応層の製造方法。
  10. 有機化合物とプロトンが移動可能な基を有する化合物とを結合若しくは混合した高分子前駆体とし、該高分子前駆体を炭素化することにより電子伝導性を持たせた触媒担持用担体を得、該触媒担持用担体へ触媒を担持させた後、電解質層と接合させたことを特徴とする燃料電池反応層の製造方法。
  11. 脂肪族系炭化水素、芳香族系炭化水素若しくはそれらの誘導体の内、少なくとも1種はポリアセチレン、レソルシノール、フェノール、2−フェニルフェノール、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチォフェン、フェニルホスホン酸、フェニルシランアルコキシド類、ピロガロール、ジヒドロキシビフェニルであることを特徴とする請求の範囲第9項に記載の燃料電池反応層の製造方法。
  12. 前記プロトン伝導体は、リン元素を含む化合物、イオウ元素を含む化合物、カルボン酸、ホウ酸、無機固体酸の内、少なくとも1種を含有することを特徴とする請求の範囲第8項または第9項に記載の燃料電池反応層の製造方法。
  13. 前記第一工程において、前記高分子前駆体を加温若しくは加圧加温する工程を含むことを特徴とする請求の範囲第8項または第9項に記載の燃料電池反応層の製造方法。
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