JP5007470B2 - 透明体検査装置 - Google Patents

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Description

本発明は、プラスチック、ガラス、透光性セラミックス、結晶など、種々の透明体の内部状態を検査するための透明体検査装置に関する。
従来、プラスチック、ガラス、透光性セラミックス、結晶など、種々の透明体の内部状態、品質を検査する装置が提案されている。
例えば、特許文献1には、検査対象となる透明体(ガラス塊)を液体内に浸漬させた状態で、この透明体に検査光を入射させ、この透明体内を透過してくる検査光を観察することにより、透明体の内部状態を光学的に検査する検査装置が記載されている。
この検査装置においては、透明体を液体内に浸漬させていることにより、曲面を含む透明体の表面における反射損失を低減しつつ、また、透明体の向きを変えることにより、透明体の内部状態をくまなく検査するようにしている。
特許第3698424号公報
前述した従来の検査装置においては、一方向からの検査光の入射によって検査することができる範囲を広げるために、透明体の屈折率に近い屈折率を有する液体に透明体を浸漬させることが重要である。
ところで、近年、ガラスや透光性セラミックスとしては、従来よりも屈折率の高い材料が開発され、様々な光学機器に使用されるようになっている。このような屈折率の高い透明体について、前述した検査装置による検査を行うには、この透明体を浸漬させる液体の屈折率も高くしなければならない。
しかし、近年の透明材料の高屈折率化に伴い、これら透明体の屈折率に液体の屈折率を近づけることが困難となっている。液体の屈折率は、マッチングオイルと呼ばれる溶媒に臭化ヒ素を溶かし込むことにより、増加させることができる。しかし、臭化ヒ素は毒性を有するため、浸漬させた透明体を検査後に十分に洗浄しなければならず、そのたびに毒性を有する廃液が多量に生じたり、液体そのものも毒性を有する廃液として処理しなければならないという問題がある。また、臭化ヒ素を溶かし込んだ液体は黒色を呈するため、屈折率を増加させるために臭化ヒ素の濃度を増加させると、液体が検査光を通し難くなり、良好な検査が行えなくなるという問題もある。
そこで、本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、屈折率の高い材料からなる透明体を検査する場合においても、毒性を有する液体を使用することなく、あるいは、毒性を有する物質の使用量を低減しつつ、透明体の少なくとも内部を光学的に良好に検査することができる透明体検査装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、透明体に検査光を透過させて透明体の内部の状態を光学的に検査する透明体検査装置において、検査対象となる透明体の曲面を含む表面に、近接もしくは接触させる表面を有する少なくとも一の導光部材を用いることによって、屈折率の高い材料からなる透明体を検査する場合においても、毒性を有する液体を使用することなく、あるいは、毒性を有する物質の使用量を低減できるとの知見を得るに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
〔構成1〕
本発明は、曲面を含む表面を有し波長587.56nmにおける屈折率が1.85以上のプラスチック、ガラス、透光性セラミック、結晶のいずれかである透明体に検査光を透過させ透明体を透過した後の検査光の状態を観察することによって透明体の少なくとも内部の状態を光学的に検査する透明体検査装置において、透明体の曲面を含む表面に表面、近接もしくは接触させる表面を有し、波長587.56nmにおける屈折率が1.85以上の固体である少なくとも一の導光部材透明体及び導光部材を収容する容器とを備え、容器内において透明体の曲面を含む表面と導光部材の表面との間に検査光を透過する液体を介在させ、導光部材内を経てこの導光部材の表面及び透明体の曲面を含む表面を介して透明体内部へ検査光を導き、及び/又は、透明体内部を透過した検査光を、透明体と導光部材とで屈折率が接近していることにより透明体の表面から出射する検査光の全反射が抑えられた状態で、この透明体の曲面を含む表面及び導光部材の表面を介して導光部材内に導くことを特徴とするものである。
〔構成
本発明は、構成1を有する透明体検査装置において、検査光は、点光源より発せられたものであることを特徴とするものである。
〔構成
本発明は、構成1、または、構成2を有する透明体検査装置において、透明体の内部の状態の光学的な検査は、シュリーレン方式により行われることを特徴とするものである。
構成1を有する本発明に係る透明体検査装置においては、曲面を含む表面を有し波長587.56nmにおける屈折率が1.85以上のプラスチック、ガラス、透光性セラミック、結晶のいずれかである透明体の表面に、近接もしくは接触させる表面を有する波長587.56nmにおける屈折率が1.85以上の固体である少なくとも一の導光部材を備えており、また、透明体の表面と導光部材の表面との間に検査光を透過する液体を介在させ、導光部材内から透明体内部へ、及び/又は、透明体内部から、透明体と導光部材とで屈折率が接近していることにより透明体の表面から出射する検査光の全反射が抑えられた状態で、導光部材内に検査光を導くので、透明体の表面及び導光部材の表面における検査光の屈折による偏向角を少なくすることができ、一方向からの検査光の入射により、透明体の内部の広い範囲に亘って検査することができる。また、透明体の表面及び導光部材の表面における検査光の屈折による偏向角をより少なくすることができ、また、透明体の表面及び導光部材の表面は近接、もしくは、接触しているので、必要な液体の量は極めて少なくて済む。
構成を有する本発明に係る透明体検査装置においては、検査光として点光源より発せられた光を用いるので、透明体の内部状態を高感度に検査することができ、また、検査光を平行光束とすることも容易である。
構成を有する本発明に係る透明体検査装置においては、シュリーレン方式により透明体の内部、表面の状態の光学的な検査を行うので、透明体に屈折率が僅かでも異なる部分がある場合には、その部分を明瞭に認識することができる。
すなわち、本発明は、屈折率の高い材料からなる透明体を検査する場合においても、毒性を有する液体を使用することなく、あるいは、毒性を有する物質の使用量を低減しつつ、透明体の内部や表面を光学的に良好に検査することができる透明体検査装置を提供することができるものである。
以下、本発明に係る透明体検査装置の最良の実施の形態について、図面を参照して説明する。
本発明に係る透明体検査装置は、曲面を含む表面を有する検査対象となる透明体に検査光を透過させ、この透明体を透過した後の検査光の状態を観察することによって、透明体の内部や表面の状態を光学的に検査する透明体検査装置である。この透明体検査装置における検査対象となる透明体としては、プラスチック、ガラス、透光性セラミック、結晶など、種々の透明体が挙げられる。また、この透明体検査装置は、透明体の表面の一部、または、全部が曲面となっている場合に、特に好適である。
〔導光部材について〕
図1は、本発明に係る透明体検査装置の原理を示す側方から見た断面図である。
この透明体検査装置は、図1に示すように、少なくとも一の導光部材1を備えている。この導光部材1の一方側の表面は、透明体101の曲面を含む表面101aに対向される対向面1aとなされ、他方側の表面1bは、平面となされている。この導光部材1は、透明体101の表面101aに対し、対向面1aを近接させ、もしくは、対向面1aを接触させて配置される。
この透明体検査装置において、導光部材1は、検査光を透過させる材料、例えば、ガラス、プラスチック、透光性セラミック、結晶などから作られたものである。この導光部材1は、内部において検査光の屈折や散乱が生じないように、脈理、光散乱源を含まないように作製されたものを用いる。そして、導光部材1の対向面1aは、透明体101の表面101aが凸面の場合には凹面に形成され、透明体101の表面101aが凹面の場合には凸面に形成される。
この透明体検査装置においては、光源2からの検査光を、導光部材1内を経て対向面1a及び透明体101の表面101aを介して透明体101内部へ導き、及び/又は、透明体101内部を透過した検査光をこの透明体101の表面101a及び導光部材1の対向面1aを介して導光部材1内に導く。図1に示す実施の形態においては、透明体101の両面側にそれぞれ導光部材1,1を配置し、これら導光部材1,1によって透明体101を挟むようにしている。
この透明体検査装置は、このような光路を形成することにより、透明体101の表面101aにおける全反射による検査光不透過領域を低減し、もしくは、解消する。
まず、導光部材1から透明体101へ検査光を導く場合について説明する。導光部材1の対向面1aと透明体101の曲面を含む表面101aとを接触させて使用する場合、スネルの法則にしたがって、導光部材1と透明体101との接触面において検査光が屈折する。接触面における検査光の進行方向の変化は、屈折が生ずる面における入射角が一定であれば、導光部材1と透明体101の屈折率差が小さいほど少ない。導光部材1は固体によって形成されるため、検査光に対する透過性を維持しつつ、屈折率を高くすることができるので、透明体101の屈折率が高い場合であっても、接触面における検査光の進行方向の変化を少なくすることができる。その結果、透明体101の内部を通過した検査光が透明体101の外部へ出射する際の表面101aに対する入射角を減少させることができ、この検査光は、透明体101の表面101aにおいて全反射することなく、透明体101を透過する。
そして、導光部材1の対向面1aが透明体101の表面101aに近接した状態で対向している場合には、導光部材1と透明体101の間に空間(空気層)ができる。この場合には、検査光は、導光部材1の対向面1a及び透明体101の表面101aにおいてそれぞれスネルの法則にしたがって屈折するが、対向面1aと表面101aとが近接しているので、導光部材1と透明体101の屈折率差が小さければ、屈折による検査光の進行方向の変化は少ない。その結果、前述の場合と同様に、検査光は、透明体101の表面101aにおいて全反射することなく、透明体101を透過する。
このようにして、この透明体検査装置においては、透明体101の内部を広範囲に亘って、あるいは、透明体101の内部の全域に亘って検査光を透過させることができ、透明体101の内部の欠陥の有無を検査することができる。
そして、透明体101を透過した検査光を導光部材1に導く場合については、前述の説明における導光部材1と透明体101とを逆にして考えればよい。
後述するように、透明体101内部や表面の欠陥は、透明体101を透過した後の検査光を集束させたり、結像させることにより検出される。しかし、検査光が透明体101によって著しく集束されたり、著しく発散されてしまうと、検査光の集束や結像が実現できなくなってしまう。導光部材1から表面101aを通して透明体101内部へ検査光を導く場合にも、透明体101内部を通過した検査光を表面101aを通して導光部材1内に導く場合にも、導光部材1は、検査光が透明体101によって著しく集束されたり、著しく発散されることを防ぐ働きもする。したがって、導光部材1を透明体101に対向させた状態(検査時の状態)において、導光部材1及び透明体101が組合わせられた構成に検査光として平行光束を入射させ、透過する光束も平行光束になるように、公知の光学設計技術を用いて、導光部材1の形状を設定することが望ましい。
この態様において、前述したように、対向面1aを透明体101の表面101a(曲率部分)を反転した形状(凹凸を反転した形状)とし、対向面1aと反対の面を平面とした導光部材1を2個用いることが好ましい。対向面1aと反対の面1bは、導光部材1内部を透過した検査光が対向面1aから出射する場合は入射面であり、検査光が対向面1aから導光部材1内部に入射する場合は出射面である。そして、これら2個の導光部材1により、透明体101を挟む構成とすることが好ましい。
導光部材1を、透明体101の屈折率と同じか、もしくは、近い屈折率の材料で作っておけば、検査光を平行光束として一方の導光部材1の平面部1bから入射させたときに、他方の導光部材1の平面部1bから検査光を平行光束、または、平行光束に近い状態で出射させることができる。ここで、導光部材1の光学的均質性が低いと、検出される光学的不均質性が、透明体101に由来するものなのか、導光部材1に由来するものなのかが判らなくなる。そのため、導光部材1は、光学的に均質な材料を用いて作っておく必要がある。導光部材は、光学ガラス製とすることが望ましい。
このようにして、透明体101の屈折率が透明体101の屈折率と同じか、あるいは、近い場合には、透明体101の表面101aにおける曲面部分の曲率が大きい場合であっても、透明体101の表面101aにおける全反射による検査光不透過領域を低減、もしくは、解消することができる。その結果、透明体101の内部や表面の品質、例えば、透明体101の内部や表面における脈理、光散乱源の有無の検査を、透明体101の全域に亘って、効率よく行うことができる。
〔液体、または、緩衝材について〕
導光部材1から透明体101に検査光を導入する場合も、透明体101から導光部材1に検査光を導入する場合も、対向面1aに対向する表面101aにおいて、検査光の全反射が起きる場合には、検査光を導くことができない。この場合には、導光部材1の対向面1aと透明体101の表面101aとを接触させるか、あるいは、対向面1aと表面101aとの間に検査光を透過する液体、または、緩衝材を導入し、透明体101の表面101aにおける検査光の臨界角を増加させ、検査光が全反射することなく透明体101を透過するようにする。
このような液体、または、緩衝材を導入することにより、透明体101の表面101aにおける屈折による検査光の進行方向の変化を小さくし、透明体101の内部や表面を広範囲に亘って、あるいは、全域に亘って検査することができる。
導光部材1の対向面1a及び透明体101の表面101aの間への液体や緩衝材の導入は、対向面1aの形状を表面101aの凹凸を反転した形状に精密に一致させることが困難な場合に有効である。また、一種類の導光部材1を使用して、複数個の同一仕様の透明体101を検査するに際しては、透明体101の表面101aの形状精度が十分に高くなければ、導光部材1の対向面1aを各透明体101の表面101aに全域にわたり接触させることは困難である。このような場合にも、導光部材1の対向面1a及び透明体101の表面101aの間へ液体や緩衝材を導入することが有効である。
なお、この透明体検査装置においては、導光部材1を備えているため、これら液体や緩衝材の屈折率が透明体101の屈折率に一致していなくとも、透明体101内部を広い範囲に亘って検査することが可能である。
導光部材1の対向面1a及び透明体101の表面101aの間に導入する液体は、検査光を透過するものを選択する。この液体としては、透明体101の表面101aを変質させることがなく、また、侵蝕しない液体を用い、例えば、マッチングオイルやグリースなどを用いる。マッチングオイルとしては、砒素化合物など環境上好ましくない物質を含まないものが望ましい。
導光部材1の対向面1a及び透明体101の表面101aの間に液体を導入する場合における好適な態様としては、図1に示すように、透明体101、導光部材1及び液体3aを容器4内に収容し、導光部材1の対向面1aと透明体101の表面101aとの間に液体3aを介在させるようにする。すなわち、容器4内に透明体101及び導光部材1を入れ、透明体101の表面101aと導光部材1の対向面1aとを近接して対向させ、容器4内に液体3aを入れることにより、容易に、表面101aと導光部材1との間に液体3aを介在させることができる。
なお、液体3aとしてグリースを用いる場合には、この液体3aを収容するための容器を用いることなく、前述した効果を得ることができる。
容器4を用いる場合においては、この容器4は、検査光を透過させるとともに、光学的に均質性のよい材料により作ることが望ましい。このような容器であれば、容器4の外部から容器4を通して容器4内の透明体101に検査光を導入することができ、透明体101を透過した検査光を容器4を通して外部に出射させることもできる。例えば、容器4の側壁から検査光を導入し、透明体101を透過した検査光を容器の他方の側壁から出射させたり、また、容器4の底部から検査光を導入し、透明体101を透過した検査光を容器4内の液体3aの液面から出射させたり、あるいは、容器4内の液体3aの液面から検査光を導入し、透明体101を透過した検査光を容器4の底部から出射させたりすることができる。
また、容器4内の液体3aの液面に検査光を透過させる場合には、液面の波立ちによる影響を排除するため、液面の一部、もしくは、全部に、窓部5を設けるようにしてもよい。この窓部5は、検査光を透過するとともに、光学的に均質な材料により、平板状に形成されたものである。この窓部5を通して検査光の入射または出射を行うことにより、液面の波立ちの影響を排除することができる。
図2は、本発明に係る透明体検査装置の原理を説明する他の例を示す側方から見た断面図である。
あるいは、図2に示すように、導光部材1の検査光入射面、または、検査光出射面となる平面部1bを液体3aの外(液面よりも上方)に出せば、液面の波立ちの影響を受けることなく、導光部材1への検査光の入射、あるいは、導光部材1からの検査光の出射を行うことができる。
図3は、導光部材の対向面及び透明体の表面の間に緩衝材3bを導入した例を示す側方から見た断面図である。
また、導光部材1の対向面1a及び透明体101の表面101aの間に導入する緩衝材3bは、図3に示すように、検査光を透過し、光学的に均質な材料であるとともに、対向面1a及び表面101aの間の空隙を埋めるように、これら各面に沿って形状が変わり、これら各面との光学的な密着を可能にする材料、例えば、シリコンゴムなどからなることが望ましい。
この場合には、容器4は必要ではなく、導光部材1、緩衝材3b、透明体101、緩衝材3b及び導光部材1を順次重ねたものを、例えば、移動ステージ上や、移動ステージ上に配置されたガラス平板上などに設置して、検査光を透過させることができる。
〔光源について〕
そして、透明体101を透過した後の検査光に基づいて、透明体101内部や表面の脈理など光学的な均質性を損なう欠陥の有無を検査するには、検査光の光源2を点光源とすることが望ましい。点光源と見なせる光源としては、ランプ及びスリット、または、ランプ及びピンホールを組合せた光源ユニットや、レーザ光源などを挙げることができる。このような光源ユニットの構成例としては、ランプ(例えば、ハロゲンランプなど)及びスリット(あるいはピンホール)の間にランプ光を集束するためのレンズ(複数枚のレンズを組合せたレンズ系でもよい。)を配置し、スリット開口部に集束したランプ光を導く構造のものが挙げられる。また、レーザ光源を用いる場合にも、必要に応じて、レーザ光を集束したり、コリメートする光学系を組合せてもよい。
なお、この透明体検査装置において、検査光は、検査対象物の用途上、使用される光の波長又は波長域の光とすることが好ましい。可視域の光を通して使用する透明体であれば、検査光を可視光とするのが望ましい。検査光が可視光であれば、各光学系を構成するレンズやミラー、撮像素子などの各部品として、汎用の素子や装置を使用することができる。
〔検査光の検出について〕
透明体101を透過した後の検査光の検出には、この検査光を結像させる結像光学系6を用いる。この結像光学系6により、透明体101の像を撮像素子(イメージセンサ)7の受光面に結像させ、この像を画像情報として取り込んだり、また、この像を目視により観察するようにしてもよい。
透明体101内部や表面の欠陥は、検査光の光束断面内における二次元的な強度分布、すなわち、検査光の濃淡として検出される。
透明体101内部や表面の欠陥のサイズが小さい場合は、透明体101を透過した検査光を顕微鏡などの拡大光学系に導入して、欠陥の有無を検査することが望ましい。この場合、透明体101を検査光の進行方向(光軸)に対して直交する面内で移動するステージなどの機能を有することが好ましい。この機能を使用して、透明体101を移動することにより、透明体101の内部や表面の異なる領域を詳細に観察することができる。液体3aを入れた容器4内に透明体101及び導光部材1を収容して検査を行う場合には、容器4ごと載せることができるステージを設けることが望ましい。
透明体101内部や表面の欠陥を顕著に視覚化する構成としては、シュリーレン方式により透明体101内部や表面を検査する構成が挙げられる。シュリーレン方式は、透明体101中において屈折率が僅かでも異なる部分がある場合において、検査光の進行方向の変化を利用して、その部分を明瞭に認識可能なものとして捉える検査方式である。具体的には、点光源からの検査光をコリメートして平行光束とし、透明体101に入射させ、この透明体101を透過した検査光を集束させる。そして、検査光の焦点位置8にナイフエッジを配置し、検出側から見た視野を絞る。すると、ナイフエッジに近づく方向に屈折した検査光は遮られて暗くなり、遠ざかる方向に屈折した検査光は遮られないので、明るい画像となって観察される。
シュリーレン方式では、透明体101内部の欠陥が検査光の明暗のコントラストとして明瞭に認識できるので、欠陥の有無を明瞭に可視化することができ、作業者の負担を軽減することができる。
また、ナイフエッジに代えて、ロンキーと呼ばれる微小ピッチの格子を検査光の焦点位置8に配置することでも、欠陥の存在を可視化することができる。ロンキーは、光軸に直交する平面内に小さなナイフエッジが多数配置されたものであると考えることができる。ロンキーをなす各ナイフエッジ間の間隔(格子間隔)を焦点上のスポット直径に合わせておけば、光軸に直交する方向については、ロンキーを配置する位置について調整の必要がない。ロンキーと焦点位置とが光軸方向にずれている場合には、ロンキーを経た検査光は、ロンキーの形状に応じた縞模様を形成する。この場合には、縞模様が現れないように、ロンキーを光軸方向に移動調整することにより、ロンキーと検査光の焦点位置8とを一致させることができる。
なお、ロンキーとしては、このロンキーをなす各ナイフエッジ間の間隔(格子間隔)の異なるものを複数種類、例えば、2種類程度用意しておくことが好ましい。
透明体101内に線状の脈理がある場合において、この脈理が、ナイフエッジの縁部、または、ロンキーの格子方向に対して、直交する方向となっている場合には、この脈理は検出できない虞れがある。このような場合には、ナイフエッジ、または、ロンキーを光軸周りに回転させればよい。この場合において、ナイフエッジは、検査光の焦点位置8を中心として回転させる必要があるが、ロンキーを用いている場合には、回転中心が検査光の焦点位置8からずれていても問題がない。
以下、本発明に係る透明体検査装置の実施例について、図面を参照して説明する。
図4は、本発明に係る透明体検査装置の実施例における構成を示す側方から見た断面図である。
この透明体検査装置は、図4に示すように、検査光の光源となる半導体レーザ2を内蔵している。この半導体レーザ2は、検査光となる赤色光のレーザ光を水平方向に出力する。なお、半導体レーザ2は、点光源と見なすことができる。
レーザ光は、レンズ系によって構成される集光性能調整機構8を通過する。この集光性能調整機構8は、図4中矢印Aで示すように、この集光性能調整機構8を構成するレンズの配置を変化させることにより、入射されたレーザ光を、集束光束、発散光束、または、平行光束のいずれにも調整できるようになっている。
集光性能調整機構8を通過したレーザ光は、ミラー9に反射されて上方に90°の角度で偏向され、ステージ10に設けられた開口部を通って、装置筐体11の外部へ出射される。なお、ステージ10の開口部には、検査光を透過する平板状の部材を設けてもよい。ステージ10上には、レーザ光を透過するガラスからなる容器4が載置されている。この容器4内には、前記図1、または、図2に示したように、下側の導光部材1、被検査対象となる透明体101及び上側の導光部材1が、液体3aとともに収容されている。
容器4の位置は、ステージ10によって、レーザ光の進行方向に直交する方向に移動調整可能となっている。容器4の位置は、下側の導光部材1、透明体101及び上側の導光部材1がレーザ光の光路上に並ぶように調整される。
容器4内の下側の導光部材1、透明体101及び上側の導光部材1を透過して液体3aの液面から出射したレーザ光は、上部のミラー12によって反射されて、水平方向に90°の角度で偏向され、結像レンズ13、焦点検出器14、撮像素子(CCDカメラ)15へと導かれる。焦点検出器14は、前述したナイフエッジやロンキーからなる。
この透明体検査装置においては、ステージ10から所定距離だけ上方に、透明体101を配置するサンプル位置基準面Pが定められている。また、レーザ光の光路に沿ってサンプル位置基準面Pから焦点検出器14までの距離を可変とするため、図4中矢印Bで示すように、結像レンズ13、焦点検出器14及び撮像素子15を一体的に水平方向(光軸方向)に移動調整するための移動調整機構が設けられている。さらに、結像レンズ13、焦点検出器14及び撮像素子15は、図4中矢印C及び矢印Dで示すように、移動調整機構により、相互の距離も可変調整可能となっている。
この透明体検査装置においては、集光性能調整機構2及び移動調整機構により、様々なサイズ、形状の透明体101の内部を検査することができるようになっている。
このように構成された透明体検査装置を用いて、前記図1及び図2に示したように、容器4内に下側の導光部材1、透明体101及び上側の導光部材1を液体3aとともに収容して、透明体101の内部及び表面の検査を行った。
検査対象(透明体101)としては、屈折率1.85のガラスからなるものを対象とした。導光部材1は、上下ともに、屈折率1.85のガラスで作製した。液体3aとしては、屈折率1.78のオイルを用いた。これら屈折率は、いずれも波長587.56nmにおける値である。容器4は、白板ガラスで作製した。撮像素子により検出された画像の明暗から、透明体101の内部及び表面における脈理の有無を観察、検査した。このようにして透明体101の内部及び表面の全体を観察することができた。
次に、前述の透明体101と同じ形状で、屈折率1.90のガラスからなる透明体101の内部及び表面検査を行った。導光部材1として、上下ともに、屈折率2.00のガラスからなるものを用いた。液体3aとしては、屈折率1.78のオイルを用いた。ここでも、これら屈折率は、いずれも波長587.56nmにおける値である。撮像素子により検出された画像の明暗から、透明体101の内部及び表面における脈理の有無を観察、検査した。このようにして透明体101の内部及び表面の全体を観察することができた。
〔比較例1〕
屈折率1.90のガラスからなる透明体101の内部を検査するにあたり、この透明体101を屈折率1.78のオイルに浸漬させ、導光部材1を用いずに、前述の光学系を用いて検査した。
この場合、透明体101の周辺部に幅の広い真っ黒な輪郭が生じてしまい、観察、検査が可能な視野が極めて狭かった。この輪郭は、検査光が透過しない領域である。このため、透明体101の傾きを変え、また、回転させることによって、検査光が透過する領域を変えつつ、観察をする必要があり、観察、検査に長時間を要した。
〔比較例2〕
屈折率1.90のガラスからなる透明体101の内部を検査するにあたり、この透明体101を屈折率1.90のオイルに浸漬させ、導光部材1を用いずに、前述の光学系を用いて検査した。
この場合、オイル自身の着色が極端に濃く、真っ黒であり透明体101の所在が特定できないほどであった。また、検査光がオイルにほとんど吸収されてしまい、透過した後の検査光から像を得ることが困難であった。透過後の検査光から像を得るためには、強力な光源と、微弱な検査光を検出する高感度の検出器が必要であった。
さらに、屈折率1.90のオイルは有毒な臭化砒素を含有するため、その取り扱いには充分な注意を要し、オイルとの接触を防止するため、手袋やエプロンを装着し、また、その蒸気を吸引しないように防毒マスクを装着するなどして、作業性を犠牲にしても安全を重視した状態で検査する必要があった。また、臭化砒素は、空気中の水分によって腐食性の臭化水素を生じ、顕微鏡などの観察装置を腐食するため、グローブボックス内で作業した。
このように、砒素化合物を含む高屈折率のオイルを使っての透明体101の観察、検査においては、その毒性や腐食性に配慮した保護具の装着や装備が必要であり、これらによって検査の作業性が大きく損なわれ、作業能率が低下してしまった。また、オイル自身も高価であり、検査中の揮発や検査した透明体にオイルが付着し効率的に回収することができないため、その分が損失となり、検査に要するコストが高騰した。
本発明に係る透明体検査装置の原理を示す側方から見た断面図である。 本発明に係る透明体検査装置の原理を説明する他の例を示す側方から見た断面図である。 導光部材の対向面及び透明体の表面の間に緩衝材3bを導入した例を示す側方から見た断面図である。 本発明に係る透明体検査装置の実施例における構成を示す側方から見た断面図である。
符号の説明
1 導光部材
1a 対向面
2 光源
3a 液体
3b 緩衝材
4 容器
5 窓部
6 結像光学系
7 撮像素子
8 検査光の焦点位置
101 透明体
101a 表面

Claims (3)

  1. 曲面を含む表面を有し、波長587.56nmにおける屈折率が1.85以上のプラスチック、ガラス、透光性セラミック、結晶のいずれかである透明体に検査光を透過させ、前記透明体を透過した後の検査光の状態を観察することによって、前記透明体の少なくとも内部の状態を光学的に検査する透明体検査装置において、
    前記透明体の曲面を含む表面に、近接もしくは接触させる表面を有し、波長587.56nmにおける屈折率が1.85以上の固体である少なくとも一の導光部材
    前記透明体及び前記導光部材を収容する容器と
    を備え、
    前記容器内において、前記透明体の曲面を含む表面と前記導光部材の表面との間に検査光を透過する液体を介在させ、
    前記導光部材内を経て、この導光部材の表面及び前記透明体の曲面を含む表面を介して、前記透明体内部へ前記検査光を導き、及び/又は、前記透明体内部を透過した検査光を、前記透明体と導光部材とで屈折率が接近していることにより前記透明体の表面から出射する前記検査光の全反射が抑えられた状態で、この透明体の曲面を含む表面及び前記導光部材の表面を介して、前記導光部材内に導く
    ことを特徴とする透明体検査装置。
  2. 前記検査光は、点光源より発せられたものである
    ことを特徴とする請求項1記載の透明体検査装置。
  3. 前記透明体の内部の状態の光学的な検査は、シュリーレン方式により行われる
    ことを特徴とする請求項1、または、請求項2記載の透明体検査装置。
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