JP5006506B2 - 燃料電池及びその運転方法 - Google Patents
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Description
以上のように、フラッディング現象の防止、システム効率の向上、およびシステムの簡素化などの観点から、供給ガスは、電池温度より少し低めの露点となるように加湿して供給するのが普通であった。
しかしながら、電池の高性能化のためには、高分子電解質膜のイオン伝導度を向上させる必要があり、そのためには供給ガスは、相対湿度が100%に近い湿度、またはそれ以上の湿度を有するように加湿することが好ましい。また、本発明者らは、高分子電解質膜の耐久性の観点からも、供給ガスを高度に加湿することが好ましいことを見いだした。ガスを相対湿度100%に近い湿度を有するように加湿して供給しようとすると、以下のような様々な問題がある。
第2は、ガス拡散層や触媒層の担体カーボンの水に対する濡れ性(接触角)が経時的に変化することにより、結露水の排出効率が経時的に悪くなり、電池の耐久特性に影響を及ぼすことである。
ところが、ガス拡散層の濡れ性が経時的に増大し、ガス拡散層中への結露水の停滞量が増大することで、ガス拡散層を介したガスの伏流が滞る現象が発生する。この現象は、当然隣り合うガス流路間の圧力損失が小さい場所ほど頻発する。従って、サーペンタイン型流路の場合には、ガス流路のターン部近辺でガス拡散層を介した伏流量が経時的に減少し、その結果、ガス供給が滞ったガス拡散層部分では電流密度が低下する。このため、セル内での電流密度分布が増大し、その結果、電池全体の特性が低下する。
本発明の燃料電池は、水素イオン伝導性高分子電解質膜、前記高分子電解質膜を挟む一対の電極、前記電極の一方に燃料ガスを供給・排出する燃料ガス流路を有するアノード側導電性セパレータ板、および他方の電極に酸化剤ガスを供給・排出する酸化剤ガス流路を有するカソード側導電性セパレータ板からなる単位セルを積層した燃料電池であって、
前記アノード側導電性セパレータ板は、前記燃料ガス流路として、その面内に複数の独立した第1ガス流路を有し、
前記カソード側導電性セパレータ板は、前記酸化剤ガス流路として、その面内に複数の独立した第2ガス流路を有し、
前記複数の第1ガス流路および前記複数の第2ガス流路は、電極反応が起こる電極の部位がアノード側とカソード側で実質的に同部位で同面積となるように複数の組をなしており、
前記複数の組のなかの1つまたは複数を選択し、前記選択された組に対応する前記第1ガス流路および第2ガス流路にそれぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスを供給するか供給しないかの切り替え制御を行うガス供給の切替制御装置を具備し、
前記切り替え制御装置は、低負荷運転時には、前記少なくとも一つの組に対応する第1ガス流路および第2ガス流路に燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給しないように制御することを特徴とする。
独立した第1ガス流路および第2ガス流路に合わせて電極の触媒層および/またはガス拡散層を複数に分割することが好ましい。
アノード側導電性セパレータ板の背面とカソード側導電性セパレータ板の背面との間に冷却水の流路を有する組み合わせセパレータ板を具備する燃料電池においては、前記冷却水の流路を、前記第1ガス流路および第2ガス流路の分割に応じて複数に分割することが好ましい。
前記の低負荷運転においては、燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給する特定の組に対応する第1ガス流路および第2ガス流路を経時的に変更する工程を有することが好ましい。
従来の燃料電池のセパレータ板は、燃料ガス及び酸化剤ガスの各々のガスは、一つの入り口側マニホールド孔からセパレータ板のガス流路に供給され、一つの出口側マニホールド孔から排出される構成であった。
燃料電池発電システムの商品性を高めるためには、電力需要に応じた燃料電池の負荷を、発電効率を低下させることなく変動できることが望ましい。そのためには、定格出力に対して負荷を増大させる場合には、それに見合うように燃料ガス及び酸化剤ガスの流量を増大させ、定格出力に対して負荷を減少させる場合には、それに見合うように燃料ガス及び酸化剤ガスの流量を減少させて運転できることが望まれる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
本実施の形態のセパレータ板を図1、図2および図3に示す。図1はセパレータ板のアノード側の正面図、図2はその背面図であり、カソード側の正面図である。図3は冷却部を構成するアノード側セパレータ板の背面図である。
このセパレータ板10は、燃料ガスの入り口側マニホールド孔11a、11bおよび出口側マニホールド孔13a、13b、酸化剤ガスの入り口側マニホールド孔12a、12bおよび出口側マニホールド孔14a、14b、並びに冷却水の入り口側マニホールド孔17a、17bおよび出口側マニホールド孔18a、18bを有する。セパレータ板10は、アノードと対向する面にそれぞれ入り口側マニホールド孔11aおよび11bと出口側マニホールド孔13aおよび13bを連絡する独立の燃料ガス流路15aおよび15bを有する。セパレータ板10は、カソードと対向する面にそれぞれ入り口側マニホールド孔12aおよび12bと出口側マニホールド孔14aおよび14bを連絡する独立の酸化剤ガス流路16aおよび16bを有する。図の点線1Eで囲まれた部分に膜電極接合体(MEA)の電極が接する。
上記のセパレータ板10は、アノード側導電性セパレータ板とカソード側導電性セパレータ板を兼ねている。
冷却部を構成するセパレータ板は、アノード側セパレータ板とカソード側セパレータ板との組み合わせからなる。アノード側セパレータ板10’は、アノード側が上記のセパレータ板10と同じ構成で、背面には、図3に示すように、入り口側マニホールド孔17aおよび17bと出口側マニホールド孔18aおよび18bを連絡する2つの独立の冷却水流路19aおよび19bを有する。カソード側セパレータ板は、カソード側が上記のセパレータ板10と同じ構成で、背面に前記と同様に入り口側マニホールド孔と出口側マニホールド孔を連絡する2つの独立の冷却水流路を有する。これらアノード側セパレータ板10’とカソード側セパレータ板とは、冷却水の流路を有する部分が向き合うように組み合わされる。
上記のセルスタックを用いた燃料電池の各マニホールド孔に連結されるガス供給及び排出パイプは、電池への出入り口直近で2つに分岐し、分岐したパイプは相互に同じ径を有することで、各セルの2つのガス流路に均等にガスを分配できるようにする。また、出入り口共に分割したパイプの途中に電磁弁を設け、一方を閉じることで、独立したガス流路の一方だけにガスを供給・排出できる構造とする。そのため、2つに分岐したガスパイプの長さを等しくして2本のガスパイプの圧力損失を等しくすることが重要である。また、セパレータ板の2分割されたガス流路の長を等しくして、独立した2つのガス流路の圧力損失を等しくすることが、ガスの均等分配を行う上で重要である。
図4には、燃料ガスの流れのみを示したが、酸化剤ガスおよび冷却水の流れも上記燃料ガスの場合と同様に制御される。
本実施の形態では、燃料ガスおよび酸化剤ガスの各流路をガス流路の流路領域の面積比が2:1の割合となるように分割した例を示す。独立した各ガス流路が位置する流路領域の面積(大きさ)は、必要に応じて同じであっても異なっていても良い。本明細書において使用している「流路領域」という用語は、各流路が位置するセパレータ板の領域を意味する。面積比は、セパレータ板の同一面上に投影された流路の面積に基づく。異なる流路の断面積は同じであっても異なっていても良い。断面積が同じであれば、面積比が2:1であることは長さの比も約2:1であることを意味する。いずれの場合においても、各流路の総容積は同じであっても異なっていても良く、流路の断面積または長さを変えることにより、総容積を同じにしたり異ならせたりすることができる。
ガス流路15bおよび16bは、それぞれガス流路15aおよび16aの2倍のガス流量となるように設計されている。従って、各マニホールド孔に連結されたガス供給及び排出パイプは、電池への出入り口直近で2つに分岐し、分岐したパイプは、ガス流路の流路領域の面積の比に応じて断面積が2:1となるようにする。また、出入り口共に分岐したパイプの途中に電磁弁を設け、一方を閉じることで、独立したガス流路の一方だけにガスを供給・排出できる構造とする。なお、冷却水の流路は、2つに分割しない例を図示しているが、当業者には、必要に応じて、ガス流路と同様に分割することができることは容易に理解できよう。
本実施の形態のセパレータ板を図7および図8に示す。
図7および8は、本実施の形態のセパレータ板を示す。これは、2つに分割されたガス流路にあわせてMEAの電極を物理的に異なる2つの部分に分割した例である。電極を2つの部分に物理的に分離することにより、水および反応ガスが一方の電極部分から他方の電極部分へ移動することが防止または削減される。電極部分の間に、空気の間隙を設けたり、水および反応ガスを透過しない物質を介在させたりすることにより、物理的な分離を行うことができる。
燃料ガスの流路15aおよび酸化剤ガスの流路16aに対応してMEAの電極部1Eaが、また燃料ガスの流路15bおよび酸化剤ガスの流路16bに対応してMEAの電極部1Ebがそれぞれ設けられる。この他の構成は実施の形態1と同様である。
本実施の形態のセパレータ板10Bを図9および図10に示す。燃料ガスおよび酸化剤ガスの流路は、実施の形態1と同様にそれぞれ2つに分割されている。ただし、燃料ガスの出口側マニホールド孔13は、ガス流路15aと15bに共通である。
本実施の形態のセパレータ板10Cを図11および図12に示す。燃料ガスおよび酸化剤ガスの流路は、実施の形態1と同様にそれぞれ2つに分割されている。ただし、燃料ガスの入り口側マニホールド孔11は、ガス流路15aと15bに共通である。
本実施の形態のセパレータ板10Dを図13および図14に示す。燃料ガスおよび酸化剤ガスの流路は、実施の形態1と同様にそれぞれ2つに分割されている。ただし、燃料ガスの流路15a、15bと酸化剤ガスの流路16a、16bがそれぞれ直交するように構成されている。
以上の実施の形態では、サーペンタイン型のガス流路を有するセパレータ板を示したが、本実施の形態ではストレートのガス流路を有するセパレータ板を示す。本実施の形態のセパレータ板を図15および図16に示す。
セパレータ板30は、アノードと対向する面に、燃料ガスの入り口側マニホールド孔31aおよび31bと出口側マニホールド孔33aおよび33bをそれぞれ連絡する7本の並行するガス流路35aおよび35bを有する。セパレータ板30は、カソードと対向する面に、酸化剤ガスの入り口側マニホールド孔32aおよび32bと出口側マニホールド孔34aおよび34bをそれぞれ連絡するガス流路36aおよび36bを有する。ガス流路36aおよび36bは、マニホールド孔から直線状に伸びる凹部42、および、リブ48によって区画され、凹部42間を連絡する直線状の溝部46からなる。凹部42にはリブ44が設けられている。37は冷却水の入口側マニホールド孔、38は出口側マニホールド孔を表す。点線3Eで囲まれた部分に電極が接する。
いずれのガス流路も実質的に直線状であるため、ガス流路の総長が短くなる。そのため、定格運転時のガス供給圧損、およびガス流速が小さくなる。ガス流速を上げるには、サーペンタイ型流路に比べてガス流路の溝幅を狭くする必要がある。
本実施の形態では、セパレータ板のガス流路を均等面積となるように3分割した例を示す。このセパレータ板10Eは、図17および図18に示すように、燃料ガスのマニホールド孔11a、11b、11cおよび13a、13b、13c、並びに酸化剤ガスのマニホールド孔12a、12b、12cおよび14a、14b、14cの3組を有する。従って、各マニホールド孔に連結されたガス供給及び排出パイプは、電池への出入り口直近で3つに分岐し、分岐したパイプは同じ径を有することで、分割したパイプに均等にガスが分配できる構造とする。また、出入り口共に分岐したパイプの途中に電磁弁を設け、一カ所または二カ所を閉じることで、3分割したガス流路の二分割分または一分割分にだけガスを供給・排出できる構造とする。そのため、3つに分岐したガスパイプの長さを等しくして3本のガスパイプの圧力損失を等しくすることが重要である。また、3分割されたガス流路15a、15b、15cの長さを等しくするとともに、ガス流路16a、16b、16cの長さを等しくして、各々独立した3つのガス流路の圧力損失を等しくすることが、ガスの均等分配を行う上で重要である。
本実施の形態では、セパレータ板のガス流路を均等面積となるように4分割した例を示す。このセパレータ板10Fは、図19および図20に示すように、燃料ガスのマニホールド孔11a、11b、11c、11dおよび13a、13b、13c、13d並びに酸化剤ガスのマニホールド孔12a、12b、12c、12dおよび14a、14b、14c、14dの各4組を有する。実施の形態8と同様にして各マニホールド孔に連結されたガス供給及び排出パイプは、電池への出入り口直近で4つに分岐し、分岐したパイプは同じ径を有することで、分割したパイプに均等にガスが分配できる構造とする。また、出入り口共に分岐したパイプの途中に電磁弁を設け、一カ所、二カ所または三カ所を閉じることで、4分割したガス流路の三分割分、二分割分または一分割分にだけガスを供給・排出できる構造とする。また、独立した4つのガス流路に、ガスが均等に分配されるようにするのは実施の形態8と同様である。
本実施の形態のセパレータ板を図21および図22に示す。このセパレータ板50は、アノードに対向する面に、燃料ガスの入り口側マニホールド孔51aと出口側マニホールド孔53aを連絡するガス流路55a、および入り口側マニホールド孔51bと出口側マニホールド孔53bを連絡するガス流路55bを有する。セパレータ板50は、カソードに対向する面に、酸化剤ガスの入り口側マニホールド孔52aと出口側マニホールド孔54aを連絡するガス流路56a、および入り口側マニホールド孔52bと出口側マニホールド孔54bを連絡するガス流路56bを有する。ガス流路55aおよび55bは、凹部61に多数のリブ63を設けた構成を有する。同様に、ガス流路56aおよび56bは、凹部62に多数のリブ64を設けた構成を有する。57は冷却水の入り口側マニホールド孔、58は出口側マニホールド孔を表す。点線5Eで囲まれた部分に電極が接する。
燃料ガスおよび酸化剤ガスの流路は、凹部内にリブを多数有する構成であるため、ガス流路の総長が短くなる。従って、定格運転時のガス供給圧損、およびガス流速が小さくなる。そこで、セパレータ板のガス流路部にリブ63および64を設けて、ガス流速が実施の形態1と同様となるようにするのがよい。
本実施の形態のセパレータ板を図23および図24に示す。このセパレータ板70は、アノードに対向する面に、燃料ガスの入り口側マニホールド孔71aと出口側マニホールド孔73aを連絡するガス流路75a、および入り口側マニホールド孔71bと出口側マニホールド孔73bを連絡するガス流路75bを有する。セパレータ板70は、カソードに対向する面に、酸化剤ガスの入り口側マニホールド孔72aと出口側マニホールド孔74aを連絡するガス流路76a、および入り口側マニホールド孔72bと出口側マニホールド孔74bを連絡するガス流路76bを有する。ガス流路75aと75b、並びにガス流路76aと76bは、それぞれ並行するサーペンタイン型である。すなわち、セパレータ板の電極と接する部位の面積を2分割するという構成ではなく、隣り合う流路同士を独立させる構成である。77は冷却水の入り口側マニホールド孔、78は出口側マニホールド孔を表す。点線7Eで囲まれた部分に電極が接する。
《実施例1》
アセチレンブラック系カ−ボン粉末に、平均粒径約30Åの白金粒子を25重量%担持した。これをカソード側触媒とした。また、アセチレンブラック系カ−ボン粉末に、平均粒径約30Åの白金−ルテニウム合金粒子を25重量%担持した。これをアノード側触媒とした。これらの触媒粉末のイソプロパノ−ル分散液に、パーフルオロカーボンスルホン酸粉末のエチルアルコール分散液を混合し、ペースト状のインクを得た。これらのインクをスクリ−ン印刷法により、それぞれ厚み250μmのカ−ボン不織布の一方の面に塗工してカソード側触媒層およびアノード側触媒層を形成した。触媒層に含まれる触媒金属量は0.3mg/c2、パーフルオロカーボンスルホン酸の量は1.2mg/cm2となるようにした。
上記のMEAとセパレータ板とを交互に積層して50セル積層されたセルスタックを組み立てた。実施の形態1で説明したように、2セル毎に冷却部を有する組み合わせセパレータ板が挿入されている。セルスタックは、金メッキした銅板からなる集電板とポリフェニレンサルファイド(PPS)製の絶縁板を介して、ステンレス鋼製の端板で挟み、端板同士を締結ロッドで締結した。締結圧は電極の面積当たり10kgf/cm2とした。このように構成した燃料電池を、セパレータ板が垂直方向となるように設置した。
この電池を定格の50%の低負荷となる電流密度0.15A/cm2で耐久試験を行った。ただし、利用率は定格条件と同等とした。また、本実施例では、ガスの入り口側および出口側の2つに分岐したパイプに設置された電磁弁を操作することにより、2分割されたガス流路の片方のみに所定の流量でガスを供給し、燃料ガス及び酸化剤ガス共に分割された同じ側の流路にガスを供給した。そして、1時間毎に供給するガス流路を切替え、長期間同一のガス流路にガスを供給しない状態を回避した。本実施例の電池の平均セル電圧の経時変化を図27に示す。セル電圧は初期の値を100%として表している。
この結果から、定期的にガス供給領域を交互に切り替え、ガス流路に停滞する結露水の排出を交互に行うことで、ガス流路の切替え時の負荷変動をスムーズに行うことが可能となることがわかる。
比較例の電池の導電性セパレータ板を図25および図26に示す。このセパレータ板20は、アノードと対向する面に、燃料ガスの入り口側マニホールド孔21と出口側マニホールド孔23を連絡する2本の並行するガス流路25を有し、カソードと対向する面に、酸化剤ガスの入り口側マニホールド孔22と出口側マニホールド孔24を連絡する2本の並行するガス流路26を有する。27は冷却水の入り口側マニホールド孔、28は出口側マニホールド孔を表す。点線2Eで囲まれた部分に電極が接する。ガス流路の溝幅は2mm、深さは1mm、ガス流路間のリブ幅は1mmとした。また、冷却部を構成するセパレータ板の冷却水の流路は、ガス流路同様に分割されていない。上記以外は実施例1と同じ燃料電池を組み立てた。
実施例1では、3000時間経過しても初期と変わらず安定した電池性能を維持していたが、比較例の電池は500時間を経過した時点で突然、電池電圧が低下して出力の取れない状態に陥ってしまった。
次に、上記の耐久試験後の電池を定格条件で運転したところ、比較例の電池は電池電圧が初期値の80%以下まで低下してしまっていた。一方、実施例1の電池は、初期と同等の電池性能を3000時間後でも維持していた。
実施の形態2に示すセパレータ板を用いた他は実施例1と同様の燃料電池を作製した。
この電池を、実施例1と同じ条件での定格運転と、定格に対して33%および66%の低負荷運転とを行った。定格運転を行う際には、セパレータ板の分割された両方のガス流路にガスが供給されるようにし、定格流量のガスを供給して、1万時間の耐久試験を行った。33%の低負荷運転を行う際には、分割比の小さい側のガス流路15aおよび16aにのみガスが供給されるようにし、定格時の33%相当の流量のガスを供給して、1万時間の耐久試験を行った。また、66%の低負荷運転を行う際には、分割比の大きい側のガス流路15bおよび16bにのみガスが供給されるようにし、定格時の66%相当の流量のガスを供給して、1万時間の耐久試験を行った。その結果、各条件ともに初期電圧に対する1万時間後の電圧劣化割合が約2%であり、安定した電池性能を維持できることが確認された。したがって、ガス流路の面積比を任意に変えて、運転の負荷割合に応じてガス供給領域を組み合わせることによって、様々な運転条件に対応することが可能であることがわかる。
本実施例では、実施の形態3のように、分割されたガス流路領域に合わせて、触媒層およびガス拡散層も分割したMEAを用いた電池を作製した。その他の構成は実施例1と同様である。
この電池を実施例1と同じ運転条件で運転し、同様にガス供給領域を限定して、50%の低負荷運転による耐久試験を行った。その結果、実施例1と全く同一の結果が得られた。実施例1の電池では、ガスを供給していないガス流路にガス拡散層を経由して反応ガスが分配され、それに含まれている水分が凝縮してガス流路の閉塞が発生していた。しかし、本実施例のMEAを使用した電池では、ガス拡散層が分離されているため、そのようなガス拡散層内の伏流が起こらず、耐久試験を行った後も、ガス供給を行っていないガス流路の閉塞は確認できず、負荷変更時においてもスムーズな変更が可能であった。したがって、ガス閉塞を解消するためにガス供給領域を交互に切り替えて運転を行う必要がなく、電池を載せたシステムでの運転アルゴリズムの簡素化に有効である。
本実施例では、セパレータ板のアノード側のみにおいて実施の形態1に示すような2つの独立したガス流路を有する電池を作製した。セパレータ板のカソード側は、図26に示すように、分割されないガス流路を有するものとした。そして、低負荷運転時に、凝縮水や生成水によってガス流路の閉塞が起こすのを防止するに十分なガス流速を保持できるように、カソード側のガス流路の溝幅を1mmに変更し、比較例で用いたカソード側セパレータ板と比較すると、定格運転時のガス流速が2倍となるよう設計した。その他の構成は実施例1と同様にして燃料電池を作製した。カソード側セパレータ板のガス流路は分割していないため、カソードに供給するガスパイプは1本で構成した。
次に、同様にカソード側のガス流路のみを分割し、アノード側のガス流路を分割しない電池について、低負荷運転特性を調べた。その結果、特性、耐久性共に同様の結果が得られたが、今度は逆にアノード側の定格負荷運転時の圧力損失が大きくなった。
実施の形態4のセパレータ板を用いて電池を構成した。燃料ガスの出口側マニホールド孔は1つであるため、出口の燃料ガスパイプは1本で構成した。
この電池を実施例1と同じ運転条件で運転し、アノード側及びカソード側共に同様にガス供給領域を限定して定格時の1/2の流量でガスを供給し、50%の低負荷運転による耐久試験を行った。その結果、実施例1と同様の結果が得られた。次に、同様に酸化剤ガスの出口側マニホールド孔を共通としたセパレータ板を用いて同様に電池を構成した。その結果についても、同様の結果が得られた。
実施の形態5のセパレータ板を用いて電池を構成した。燃料ガスの入り口側マニホールド孔は1つであるため、入り口側の燃料ガスパイプは1本で構成した。
この電池を実施例1と同じ運転条件で運転し、アノード側及びカソード側共に同様にガス供給領域を限定して定格時の1/2の流量でガスを供給し、50%の低負荷運転による耐久試験を行った。その結果、実施例1と同様の結果が得られた。同様に酸化剤ガスの入り口側マニホールド孔を共通としたセパレータ板を用いた電池についても同様の結果が得られた。
実施の形態6のセパレータ板を用いて電池を構成した。その他の構成は実施例1と同じである。
本実施例の燃料電池を70℃に保持し、アノード側に65℃の露点となるよう加湿・加温した燃料ガス(80%水素ガス/20%二酸化炭素/10ppm一酸化炭素)を、カソード側に65℃の露点となるように加湿・加温した空気をそれぞれ供給した。電池の定格運転条件は、燃料利用率80%、酸素利用率50%、電流密度0.3A/cm2とした。この電池を定格の50%の低負荷となる電流密度0.15A/cm2で耐久試験を行った。ただし、利用率は定格条件と同等とした。
次に、同様にして、燃料利用率75%、酸素利用率40%、電流密度0.075A/cm2において耐久試験を行った。このときの負荷は定格に対して約25%である。定格運転条件のガス利用率をやや高めに設定したため、定格の25%の負荷の場合にも、それほどガス利用率を低下させることなく安定運転が可能であった。その結果、電池は、1万時間後に初期の97%と高い電圧を示した。
本実施例では、実施の形態7に示すセパレータ板を用いた電池を作製した。ガス流速が実施例1のセパレータ板と同一となるよう、ガス流路の溝幅を0.5mm、深さを0.5mmとした。その他の構成は実施例1と同じとした。
この電池を実施例1と同じ運転条件で運転し、アノード側及びカソード側共に同様にガス供給領域を限定して定格時の1/2の流量でガスを供給し、50%の低負荷運転による耐久試験を行った。その結果、実施例1と同様の結果が得られた。
本実施例では、実施の形態8のセパレータ板を用いて電池を作製した。
この電池を実施例1と同じ運転条件で運転し、アノード側及びカソード側共に同様にガス供給領域を限定して、3分割したガス流路の二分割分にだけガスを供給し、定格時の2/3の流量でガスを供給し、定格の66%の低負荷運転による耐久試験を行った。その結果、実施例1と同様に優れた耐久性を示した。
次に、この電池を実施例1と同じ運転条件で運転し、アノード側及びカソード側共に同様にガス供給領域を限定して、3分割したガス流路の一分割分にだけガスを供給し、定格時の1/3の流量でガスを供給し、定格の33%の低負荷運転による耐久試験を行った。その結果、電池の耐久性は、実施例1同様優れた結果が得られた。
本実施例では、実施の形態9のセパレータ板を用いて電池を作製した。
この電池を実施例1と同じ運転条件で運転し、アノード側及びカソード側共に同様にガス供給領域を限定して、4分割したガス流路の3分割分にだけガスを供給し、定格時の3/4の流量でガスを供給し、定格の75%の低負荷運転による耐久試験を行った。その結果、電池の耐久性は、実施例1と同様優れた結果が得られた。
次に、この電池を実施例1と同じ運転条件で運転し、アノード側及びカソード側共に同様にガス供給領域を限定して、4分割したガス流路の2分割分にだけガスを供給し、定格時の1/2の流量でガスを供給し、定格の50%の低負荷運転による耐久試験を行った。その結果、実施例1と同様優れた耐久性を示した。
次に、この電池を実施例1と同じ運転条件で運転し、アノード側及びカソード側共に同様にガス供給領域を限定して、4分割したガス流路の1分割分にだけガスを供給し、定格時の1/4の流量でガスを供給し、定格の25%の低負荷運転による耐久試験を行った。その結果、上と同様に優れた耐久性を示した。
本実施例では、実施の形態10のセパレータ板を用いて電池を作製した。
この電池を実施例1と同じ運転条件で運転し、アノード側及びカソード側共に同様にガス供給領域を限定して定格時の1/2の流量でガスを供給し、定格の50%の低負荷運転による耐久試験を行った。その結果、実施例1と同様に優れた耐久性を示した。
本実施例では、実施の形態11のセパレータ板を用いて電池を作製した。
この電池を実施例1と同じ運転条件で運転し、アノード側及びカソード側共に同様にガス供給領域を限定して定格時の1/2の流量でガスを供給し、定格の50%の低負荷運転による耐久試験を行った。その結果、実施例1と同様に優れた耐久性を示した。
本実施例の電池においては、低負荷運転時に、ガス拡散層の内部をガスが伏流することによって、ガス供給がなされていない領域にもガスが微量ではあるが供給され、発電が若干行われることが確認された。そこで、3000時間経過後から、独立したガス流路の片方のみに所定の流量でガスを供給し続け、さらに1000時間の発電試験を行った。その間、電池性能は変わらず維持していた。その後、負荷を定格条件(0.3A/cm2)に戻し、分割されたガス流路の両方にガスを供給した。
このとき、実施例1では電池性能は一旦低下し、徐々に回復して、初期の定格発電性能を発揮するまでに約1日間を要した。つまり、長期間一方のガス流路にガスを供給しない状態を続けたため、ガスを流していないガス流路が結露水によって閉塞してしまっており、再度ガスを供給しても、完全に元の状態に復帰するのに約1日を費やした。
しかしながら、本実施例では、独立したガス流路が近接しているため、実施例1の場合よりもガス拡散層内部の伏流ガス量が多く、従ってガス供給を行っていない領域にもガスが供給され、ガスを流していないガス流路が結露水によって充満しても、伏流したガスによって結露水が除去される結果となった。
実施例1で使用した電池を実施例1と同じ運転条件で定格の50%の低負荷運転を行った。本実施例では、ガス供給の切り替えを供給側の電磁弁の開閉のみで制御した。つまり、排出側は両方共に開状態である。この制御方法によっても、ガス供給の切り替えが良好に行えることが確認された。そして、実施例1と同様に優れた耐久性を示した。
また、ガス供給側は開状態にし、ガス排出側の電磁弁によってガスの切り替えを制御する方法によってもガス切り替えが良好に行えることが確認された。
11a、11b 燃料ガスの入り口側マニホールド孔
12a、12b 酸化剤ガスの入り口側マニホールド孔
13a、13b 燃料ガスの出口側マニホールド孔
14a、14b 酸化剤ガスの出口側マニホールド孔
15a、15b 燃料ガスの流路
16a、16b 酸化剤ガスの流路
17 冷却水の入り口側マニホールド孔
18 冷却水の出口側マニホールド孔
1E MEAの電極の接する領域
Claims (6)
- 水素イオン伝導性高分子電解質膜、前記高分子電解質膜を挟む一対の電極、前記電極の一方に燃料ガスを供給・排出する燃料ガス流路を有するアノード側導電性セパレータ板、および他方の電極に酸化剤ガスを供給・排出する酸化剤ガス流路を有するカソード側導電性セパレータ板からなる単位セルを積層した燃料電池であって、
前記アノード側導電性セパレータ板は、前記燃料ガス流路として、その面内に複数の独立した第1ガス流路を有し、
前記カソード側導電性セパレータ板は、前記酸化剤ガス流路として、その面内に複数の独立した第2ガス流路を有し、
前記複数の第1ガス流路および前記複数の第2ガス流路は、電極反応が起こる電極の部位がアノード側とカソード側で実質的に同部位で同面積となるように、複数の組をなしており、
前記複数の組のなかの1つまたは複数を選択し、前記選択された組に対応する前記第1ガス流路および第2ガス流路にそれぞれ燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給するか供給しないかの切り替え制御を行うガス供給の切替制御装置を具備し、
前記切り替え制御装置は、低負荷運転時には、前記少なくとも一つの組に対応する第1ガス流路および第2ガス流路に燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給しないように制御することを特徴とする燃料電池。 - 前記独立した第1ガス流路の流路領域の面積が相互に異なり、前記独立した第2ガス流路の流路領域の面積が相互に異なる請求項1記載の燃料電池。
- 前記第1ガス流路および第2ガス流路に合わせて電極の触媒層またはガス拡散層が複数に分割されている請求項1または2に記載の燃料電池。
- 前記アノード側導電性セパレータ板の背面と前記カソード側導電性セパレータ板の背面との間に冷却水の流路を有する組み合わせセパレータ板を具備し、前記冷却水の流路が、前記第1ガス流路および第2ガス流路の分割に応じて複数に分割されている請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池の運転方法であって、前記ガス供給の切替制御装置により、分割された前記第1ガス流路および第2ガス流路のなかの特定の組に対応する第1ガス流路および第2ガス流路にそれぞれ燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給して低負荷運転を行うことを特徴とする燃料電池の運転方法。
- 前記の低負荷運転において、燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給する特定の組に対応する第1ガス流路および第2ガス流路を経時的に変更する工程を有する請求項5に記載の燃料電池の運転方法。
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