JP5005931B2 - 自動車電装・補機用転がり軸受 - Google Patents
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Description
以下に、自動車電装・補機用転がり軸受の例として、ファンカップリング装置用転がり軸受、自動車用オルタネータ用転がり軸受およびアイドラプーリ用転がり軸受について概要を説明する。
このためファンカップリング装置用転がり軸受は、エンジン温度の変動に伴い回転数が 1000 rpm から 10000 rpm まで変動する回転ムラの他に、夏場の高速運転時には 180℃以上の高温下で、回転数 10000 rpm 以上の高速回転という極めて過酷な環境に耐えられる耐熱性、グリースシール性、および耐久性等が要求される。
このためアイドラプーリ用転がり軸受は、180℃以上の高温下で、回転数 10000 rpm 以上の高速回転という極めて過酷な環境に耐えられる耐熱性、グリースシール性、および耐久性等が要求される。
ところが、使用条件が過酷になることで、転がり軸受の転走面に白色組織変化を伴った特異的な剥離が早期に生じることが問題となっている。この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と異なり、転走面表面の比較的浅いところから生じる破壊現象で、水素が原因の水素脆性と考えられている。
このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離現象を防ぐ方法として、例えばグリース組成物に不動態化剤を添加する方法(特許文献2参照)が知られている。しかしながら、近年の自動車電装・補機に用いられる転がり軸受の使用条件の過酷化に伴い、不動態化剤を添加する方法では充分な対策ができなくなってきている。
また、上記に挙げた各種機械部材の小型化や高性能化に伴なって使用条件がより厳しくなる傾向にあり、それに伴なってグリース組成物にもさらなる潤滑性能と潤滑寿命が要求されている。高温における長寿命化の要求に対し、耐熱性のある高粘度の合成炭化水素油を基油とし、ウレア化合物を増ちょう剤としたグリース組成物に酸化防止剤や防錆剤等を添加する処方で対応しているが、それに伴なって寒冷時における冷時異音が発生しやすくなるという問題がある。
上記グリース組成物は、基油に増ちょう剤を配合してなるベースグリースに、潤滑油とモリブデン酸塩とを含有するモリブデン酸塩分散油を添加してなり、上記モリブデン酸塩分散油は、界面活性剤を添加した上記潤滑油中で、上記モリブデン酸塩を湿式粉砕して得られることを特微とする。
なお最大粒子径は、得られたモリブデン酸塩分散潤滑油を脱脂して、粉砕されたモリブデン酸塩粒子の長辺を電子顕微鏡で倍率 1000 倍にて、5 視野観察し最も大きいものを最大粒子径とした。
また、上記陰イオン性界面活性剤が、ポリカルボン酸型高分子化合物であることを特徴とする。また、上記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテルであることを特徴とする。
深溝玉軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この複数個の転動体4を保持する保持器5および外輪3等に固定されるシール部材6が内輪2および外輪3の軸方向両端開口部8a、8bにそれぞれ設けられている。少なくとも転動体4の周囲にグリース組成物7が封入される。
また、ケース10の前面にバイメタル16を取付け、そのバイメタル16にスプリング15のピストン17を設けている。バイメタル16はラジエータを通過した空気の温度が設定温度、例えば 60℃以下の場合、扁平の状態となり、ピストン17はスプリング15を押圧し、スプリング15はポート14を閉じる。また、上記空気の温度が設定温度をこえると、バイメタル16は図2(b)に示すように、外方向にわん曲し、ピストン17はスプリング15の押圧を解除し、スプリング15は弾性変形してポート14を開放する。
ラジエータを通過した空気の温度がバイメタル16の設定温度をこえると、図2(b)に示すように、バイメタル16は外方向にわん曲し、ピストン17はスプリング15の押圧を解除する。このとき、スプリング15は仕切板13から離れる方向に弾性変形するため、ポート14は開放し、オイル室11内の粘性流体はポート14から撹拌室12内に流れる。このため、ドライブディスク18の回転による粘性流体の剪断抵抗が大きくなり、ケース10への回転トルクが増大し、転がり軸受に支持されているファン9が高速回転する。
以上のように、ファンカップリング装置は温度の変化に応じてファン9の回転速度が変化するため、ウォーミングアップを早めると共に、冷却水の過冷却を防止し、エンジンを効果的に冷却することができる。ファン9はエンジン温度が低いとドライブ軸20から切り離されているに等しく、高温の場合はドライブ軸20に連結されているに等しい。このように、転がり軸受1は低温から高温まで広い温度範囲および広い回転範囲で使用される。
ロータ回転軸23は、その先端に取り付けられたプーリ27にベルト(図示省略)で伝達される回転トルクで回転駆動されている。プーリ27は片持ち状態でロータ回転軸23に取り付けられており、ロータ回転軸23の高速回転に伴って振動も発生するため、特にプーリ27側を支持する玉軸受1は、苛酷な負荷を受ける。
このプーリは、鋼板プレス製のプーリ本体28と、プーリ本体28の内径に嵌合された単列の深溝玉軸受1とで構成される。プーリ本体28は、内径円筒部28aと、内径円筒部28aの一端から外径側に延びたフランジ部28bと、フランジ部28bから軸方向に延びた外径円筒部28cと、内径円筒部28aの他端から内径側に延びた鍔部28dとからなる環体である。内径円筒部28aの内径には、玉軸受1の外輪3が嵌合され、外径円筒部28cの外径にはエンジンによって駆動されるベルトと接触するプーリ周面28eが設けられている。このプーリ周面28eをベルトに接触させることにより、プーリがアイドラとしての役割を果たす。
本発明はこのような知見に基づくものである。以下に本発明の自動車電装・補機用転がり軸受に用いるグリース組成物について説明する。
本発明において使用する界面活性剤としては、モリブデン酸塩と親和性のよい陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の中から選ばれた少なくとも一つの界面活性剤であることが好ましい。
これらの中でモリブデン酸塩の分散状態を良好にし、かつモリブデン酸塩が二次粒子として大きくなることを防ぐ効果が高い理由からポリカルボン酸塩型高分子化合物を用いることが好ましい。
これらの中でモリブデン酸塩の分散状態を良好にし、かつモリブデン酸塩が二次粒子として大きくなることを防ぐ効果が高い理由からポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いることが好ましい。
界面活性剤の併用には微粉化されたモリブデン酸塩が潤滑剤中で凝集することを防ぐことによって、モリブデン酸塩の分散状態を良好にし、かつモリブデン酸塩が二次粒子として大きくなることを防ぐ効果がある。
なお、グリース組成物 100 重量部に対する界面活性剤の配合割合としては、0.001 重量部〜0.5 重量部であることが好ましい。
湿式粉砕では液相(ここでは潤滑油)中で、液相に対して親和性のない粉体(ここではモリブデン酸塩)を界面活性剤の存在下で粉砕するため、粉砕された粉体は界面活性剤に包み込まれて液相に対する親和性が向上し、結果としてモリブデン酸塩の分散性が向上し凝集や沈澱が生じにくくなる。
モリブデン酸塩の最大粒子径が大きいと潤滑部に入っていきにくく、小さ過ぎると摺動部の粗さの中にモリブデン酸塩が埋没してしまい、反応が起きないため、その効果が発揮されない。よってグリース中に添加されるモリブデン酸塩のモリブデン酸塩分散油中における最大粒子径は 0.1μm 〜40μm であることが望ましい。下限の 0.1μm は軸受の転走面粗さを考慮した値である。上限の 40μm は種々の実験から確認された値であり、40μm をこえると耐摩耗性等に劣る。
これらの中でアルカリ金属塩であることがさらに望ましい。モリブデン酸のアルカリ金属塩は、油に不溶の固体であるので、グリース中においては固体潤滑剤と同様に分散した状態で存在し、転がり軸受内の摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において反応して、酸化鉄とともにモリブデン化合物を含有する被膜を形成しやすいためである。好適なアルカリ金属のモリブデン酸塩はモリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウムまたはモリブデン酸カリウムが挙げられ、これらは単独でも混合物としても使用できる。
いずれも乳鉢による湿式法(基油中でモリブデン酸塩を粉砕)で作製した。
表1に示す配合で、7 種類のモリブデン酸塩分散油を作製し、後で説明するベースグリースに添加し、評価した。得られたモリブデン酸塩分散油を脱脂して、粉砕されたモリブデン酸塩のみを電子顕微鏡にて観察した。最大粒子径を直接測定し、表1に併記した。
表2に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート(日本ポリウレタン工業社製商品名のミリオネートMT、以下、MDIと記す)を表2に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表2のとおりである。
MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させたベースグリースを得た。
得られたベースグリースに、先に調整したモリブデン酸塩分散油を表2に示す割合で添加した。これを 100℃〜120℃で 10 分間撹拌し、冷却した後、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。なお、比較例2ではモリブデン酸塩分散油を添加しなかった。
電装補機の一例であるオルタネータの回転べルトを巻きかけたプーリを支持する回転軸を内輪で支持する転がり軸受に上記グリース組成物を封入し試験軸受とした。この試験軸受について急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けた試験軸受に対する負荷荷重を 3234 N 、回転速度は 0 rpm〜18000 rpm で運転条件を設定し、さらに、試験軸受内に 0.1 A の電流が流れる状態で試験を実施した。そして、試験軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間(剥離発生寿命時間、h )を計測した。なお、試験は、300 時間で打ち切った。
<冷時異音測定>
試験プーリに組み込んだときのラジアルスキマが 0μm〜8μm の転がり軸受(6203)に各試験グリースを 0.9 g 封入し、−60℃の低温槽に一定時間入れ取り出し、室温に設置された軸受回転装置に取り付け、軸受温度が−20℃になった時点で、ラジアル荷重 127 N の下で 2700 rpm の回転速度で回転させ、冷時異音の発生有無を聴覚にて確認した。全試験個数( n=10 )に対する冷時異音発生個数の割合(冷時異音発生確率)で冷時異音を評価した。
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース組成物
8a、8b 開口部
9 冷却用ファン
10 ケース
11 オイル室
12 撹拌室
13 仕切板
14 ポート
15 スプリング
16 バイメタル
17 ピストン
18 ドライブディスク
19 流通穴
20 ドライブ軸
21a、21b フレーム
22 ロータ
23 ロータ回転軸
24 ロータコイル
25 ステータ
26 ステータコイル
27 プーリ
28 プーリ本体
Claims (2)
- エンジン出力で回転駆動される回転軸を静止部材に回転自在に支持する自動車電装・補機用転がり軸受であって、
前記転がり軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、この転動体の周囲にグリース組成物を封止するため前記内輪および外輪の軸方向両端開口部に設けられたシール部材とを備えてなり、
前記グリース組成物は、基油に増ちょう剤を配合してなるベースグリースに、潤滑油とモリブデン酸塩とを含有するモリブデン酸塩分散油を添加してなり、
前記モリブデン酸塩分散油は、界面活性剤を添加した前記潤滑油中で、前記モリブデン酸塩を湿式粉砕して得られ、該モリブデン酸塩分散油中の前記モリブデン酸塩の最大粒子径が 0.1μm 〜40μm であり、
前記界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤であるポリカルボン酸型高分子化合物、および、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルから選ばれた少なくとも一つの界面活性剤であることを特徴とする自動車電装・補機用転がり軸受。 - 前記モリブデン酸塩が、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムおよびモリブデン酸リチウムから選ばれた少なくとも一つのモリブデン酸塩であることを特徴とする請求項1記載の自動車電装・補機用転がり軸受。
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