JP5005710B2 - 粘度指数向上剤及び潤滑油組成物 - Google Patents

粘度指数向上剤及び潤滑油組成物 Download PDF

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Description

本発明は、粘度指数向上剤、粘度指数向上剤組成物及びこれらを含む潤滑油組成物に関する。詳しくは、粘度指数向上効果を高く保ちつつ、金属への吸着性に優れた粘度指数向上剤、粘度指数向上剤組成物及びこれらを含む潤滑油組成物に関する。
自動車等に使用される潤滑油や作動油等は一般に温度が高いほど粘度が低くなるが、実用上は低温
から高温まで広い範囲にわたって粘度ができるだけ変化しないことが望ましい。そこで潤滑油に粘度指数向上剤と呼ばれる高分子化合物を添加して粘度の温度依存性を改善する方法が広く行われている。そのような高分子化合物としては、例えばメタクリル酸エステル共重合体(特許文献−1〜3参照)及びオレフィン共重合体(特許文献−4参照)が知られている。
近年、地球環境保護の気運が高まり、自動車の省燃費性がより一層要求されている。潤滑油の低粘
度化は粘性抵抗低減による省燃費化の有効な手段の一つであり、低粘度化を実現するための方法として低粘度基油に粘度指数向上剤を添加する方法があるが、従来の粘度指数向上剤を用いた場合、粘度指数は高い水準で確保することはできても、低粘度化による潤滑性の低下、特に金属疲労性が悪化するという問題があった。
特許第2732187号公報 特開平8−53683号公報 特開2004−307551号公報 特開2005−200454号公報
潤滑油の粘度を低く保ちつつ、金属疲労性を改善させるためには、金属のしゅう動部の近傍のみを局部的に増粘させる方法が考えられ、金属への吸着性に優れたポリマーを用いて金属のしゅう動部の近傍におけるポリマー濃度を上げることが有効である。
即ち、本発明の課題は、粘度指数向上効果を高く保ちつつ、金属への吸着性に優れた粘度指数向上剤を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の単量体から構成される重合体が、粘度指数向上能を高く保ちつつ、金属への吸着性に優れていることを見出し本発明に至った。
すなわち本発明は、一般式(1)で示される単量体(a)の単位を、油溶性共重合体(A)の全重量に基づいて20〜94.5重量%、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b)の単位を5〜50重量%並びに水酸基含有単量体、アミド基含有単量体及びカルボキシル基含有単量体からなる群から選ばれる1種以上の単量体(c)の単位を0.5〜4.9重量%含有し、3,000〜1,000,000の重量平均分子量を有する油溶性共重合体(A)からなる潤滑油用粘度指数向上剤。
CH2=C(R1)−COO(A−O)n−R (1)
式中、R1は水素原子又はメチル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、Rは炭素数16〜36の分岐アルキル基であり、該分岐アルキル基中の連続するメチレン基の数は16個以下であり、nは0〜20の整数である。;20〜90重量%の該粘度指数向上剤及び10〜80重量%の希釈剤からなる粘度指数向上剤組成物;及び基油と該粘度指数向上剤又は該粘度指数向上剤組成物とからなり、粘度指数向上剤を潤滑油組成物の重量に基づいて0.01〜45重量%含有する潤滑油組成物;である。
本発明の粘度指数向上剤は、金属への吸着性に優れており、金属表面近傍を局部的に増粘させる効果を有していることから、金属疲労を起こしにくいという優れた効果を奏し、且つ、粘度指数向上効果も高い。
本発明における一般式(1)において、粘度指数及び低温粘度の観点から、nは好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは0である。
一般式(1)におけるAはC2−4(炭素数2〜4を表す場合C2−4と表し、以下同様の表現を用いる。)
のアルキレン基であり、具体的にはエチレン基、1,2−又は1,3−プロピレン基、1,2−、1,3−又は1,4−ブチレン基が挙げられる。これらの内好ましいのはエチレン基、1,2−プロピレン基及びこれらの併用である。
R1は好ましくはメチル基である。
分岐アルキル基Rの炭素数は、粘度指数と低温粘度の観点から、好ましくは20〜32、更に好ましくは20〜28、特に好ましくは20〜24、最も好ましくは24である。
Rは通常16以下、粘度指数及び低温粘度の観点から、好ましくは2〜14、更に好ましくは4〜14、特に好ましくは6〜14、最も好ましくは10〜12のポリメチレン基を有する。尚、ポリメチレン基における炭素数には末端のメチル基の炭素原子も含まれる。
Rは通常1〜17個、好ましくは1〜12個、更に好ましくは1〜6個、特に好ましくは1個の分岐を有する。
好ましいRは一般式(2)で示される基である。
Figure 0005005710
一般式(2)において、pは0〜15の整数、R’及びR''は、同じ又は異なるC1−16の直鎖アルキル基又はC3−34の分岐アルキル基である。
Rの具体例としては、以下の基が挙げられる。
1)C15−16のポリメチレン基を有する基:
例えば、1−C1−18アルキル−ヘキサデシル基(例えば、1−オクチルヘキサデシル基)及び2−C1−16アルキル−オクタデシル基(例えば、2−エチルオクタデシル、2−テトラデシルオクタデシル及び2−ヘキサデシルオクタデシル基);
2)C13−14のポリメチレン基を有する基:
例えば、1−C1−20アルキル−テトラデシル基(例えば、1−ヘキシルテトラデシル、1−デシルテトラデシル及び1−ウンデシルトリデシル基)及び2−C1−18アルキル−ヘキサデシル基(例えば、2−エチルヘキサデシル及び2−ドデシルヘキサデシル基);
3)C10−12のポリメチレン基を有する基:
例えば、1−C1−22アルキル−ドデシル基(例えば、1−オクチルドデシル基)、2−C1−22アルキル−ドデシル基(例えば、2−ヘキシルドデシル及び2−オクチルドデシル基)及び2−C1−20アルキル−テトラデシル基(例えば、2−ヘキシルテトラデシル及び2−デシルテトラデシル基);
4)C6−9のポリメチレン基を有する基:
例えば、2−C1−24アルキル−デシル基(例えば、2−オクチルデシル基)及び2,4−ジC1−23アルキル−デシル基(例えば、2−エチル−4−ブチル−デシル基);
5)C1−5のポリメチレン基を有する基:
例えば、2−(3−メチルヘキシル)−7−メチル−デシル及び2−(1,4,4−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチル−オクチル基;
6)分岐アルキル基の2個又はそれ以上の混合物:
例えば、プロピレンオリゴマー(6〜11量体)、エチレン/プロピレンオリゴマー(モル比16/1〜1/11)、イソブテンオリゴマー(5〜8量体)及びC5−17のα−オレフィンオリゴマー(2〜6量体)等に対応するオキソアルコールのアルキル残基、2−イソオクチルイソドデシル基(『日産化学工業製:ファインオキソコール2000』の水酸基を除いた残基)並びに2−イソウンデシルイソペンタデシル基(『日産化学工業製:ファインオキソコール2600』の水酸基を除いた残基)。
これらの内、低温粘度と粘度指数の観点から好ましいのは一般式(2)で示される基であり、特にpが0又は1(とりわけ1)、R’及びR''が直鎖C6−16(特にC8−14)アルキル基及び分岐C6−18(特にC8−14)アルキル基が好ましい。とりわけ好ましいのは、pが1でR’とR''が直鎖C8−14アルキル基であり、最も好ましいのは、pが1でR’とR''が直鎖C8−10アルキルと直鎖C10−12アルキル基の組み合わせであり、Rとしては、2−直鎖C8−10アルキル−直鎖C12−14アルキル基である。
好ましい(a)の具体例としては、2−オクチルドデシルメタクリレート(以下O−DMと略記)、2−デシルテトラデシルメタクリレート(以下D−TMと略記);1−オクチルドデシル、2−ヘキシルドデシル、2−ヘキシルテトラデシル、1−ヘキシルテトラデシル、1−デシルテトラデシル、1−ウンデシルトリデシル、2−エチルヘキサデシル、2−ドデシルヘキサデシル、2−オクチルドデシルオキシエチル及び2−デシルテトラデシルオキシエチルメタクリレート;及びこれらに対応するアクリレート(例えば、2−オクチルドデシルアクリレート、2−デシルテトラデシルアクリレート等)が挙げられる。
これらの内で好ましくは2−オクチルドデシル及び2−デシルテトラデシルアクリレート、更に好ましくは、O−DM及びD−TM、特に好ましくはD−TMである。
炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b)には、メチル、エチル、n−又はイソ−プロピル及びn−、イソ−、sec−若しくはtert−ブチル(メタ)アクリレートが含まれる。粘度指数向上の観点からメチルメタクリレート(以下、MMAと略記)が好ましい。
単量体(c)には、水酸基含有単量体(c1)、アミド基含有単量体(c2)及びカルボキシル基含有単量体(c3)が含まれる。
水酸基含有単量体(c1)としては、以下の(c11)〜(c16)が挙げられる。
(c11)水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル:
(c111)一般式(3)で示される(メタ)アクリレート;
CH2=C(R1)−COO−(A−O)m−H (3)
式中、R1及びAは一般式(1)におけるものと同じであり、mは1〜20(好ましくは1)の整数である。(c111)としては、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと略記)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(以下、HEAと略記)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(以下、HPMAと略記)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のC2−4ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(c112)3〜8個の水酸基を含有する多価アルコールの(メタ)アクリレート;
例えばC3−12のアルカンポリオール、その分子内又は分子間脱水物及び糖類等(例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、蔗糖及びメチルグルコシド)の(メタ)アクリレート[グリセリンモノ又はジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ又はジ(メタ)アクリレート及び蔗糖(メタ)アクリレート等]が挙げられる。
(c12)C2−12のアルケノール:
例えば、ビニルアルコール(酢酸ビニル単位の加水分解により形成されるもの)、及びC3−12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、(イソ)プロペニルアルコール、クロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、1−ブテン−4−オール、1−オクテノール、1−ウンデセノール及び1−ドデセノール等]が挙げられる。
(c13)C4−12のアルケンジオール:
例えば、2−ブテン−1,4−ジオール等が挙げられる。
(c14)C3−12のアルケニル基を有する水酸基含有アルケニルエーテル:
例えば、C1−6ヒドロキシアルキルC3−12アルケニルエーテル[例えば、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル及び(c112)で挙げた多価アルコールのC3−12アルケニルエーテル{トリメチロールプロパンモノ又はジ(メタ)アリルエーテル及び蔗糖(メタ)アリルエーテル等}]が挙げられる。
(c15)水酸基含有芳香族単量体:
例えば、o−、m−又はp−ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
(c16)単量体(c11)〜(c15)の(ポリ)オキシアルキレン(C2−4)エーテル:
例えば、(c11)〜(c15)の水酸基の内の少なくとも1個が−O−(A−O)n−A−OHで置換された単量体[但し、A及びnは一般式(1)と同じ]が挙げられる。
(c1)の内で好ましくは、(c11)、(c12)、(c14)、(c15)及び(c16)であり、更に好ましくは(c111)、特に好ましくはHEMA及びHEA、とりわけ好ましくはHEMAである。
単量体(c2)としては以下の(c21)及び(c22)が挙げられる。
(c21)下記一般式(4)で示される(メタ)アクリルアミド類:
Figure 0005005710
式中、R1は水素原子又はメチル基、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、C1−4のアルキル基及びC1−4のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。具体例としては以下の(c211)〜(212)が挙げられる。
(c211)非置換及びアルキル置換(メタ)アクリルアミド;
例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド(以下、AAmと略記)、N−モノ−C1−4アルキル又はN,N−ジC1−4アルキル−置換(メタ)アクリルアミド[(ジ)メチル、(ジ)エチル、(ジ)イソ−プロピル、(ジ)n−ブチル及び(ジ)イソ−ブチル(メタ)アクリルアミド等]が挙げられる。
(c212)ヒドロキシアルキル置換アクリルアミド:
例えば、N−モノC1−4ヒドロキシアルキル又はN,N−ビス(C1−4ヒドロキシアルキル)置換(メタ)アクリルアミド[N−ヒドロキシメチル、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)又はN,N−ビス(4−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等]が挙げられる。
(c22)N−ビニルカルボン酸アミド:
例えば、アシル系N−ビニルカルボン酸アミド[N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルn−又はイソ−プロピオンアミド及びN−ビニルヒドロキシアセトアミド等]及びN−ビニルラクタム[N−ビニルピロリドン等]が挙げられる。。
(c2)の内で好ましいのは(c211)、更に好ましくは(メタ)アクリルアミド、特にAAmである。
単量体(c3)としては以下の(c31)〜(c33)が挙げられる。
(c31)不飽和モノカルボン酸[メタクリル酸(以下、MAAと略記)、アクリル酸、(イソ)クロトン酸及びシンナミック酸等]。
(c32)不飽和ジカルボン酸[マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸等]。
(c33)不飽和ジカルボン酸のモノC1−8アルキルエステル[モノアルキルマレアート、モノアルキルフマレート及びモノアルキルイタコネート等]。
単量体(c)の内で、粘度指数及び金属への吸着性の観点から好ましいのは(c1)である。
油溶性共重合体(A)中の単量体(c)の割合は、通常0.5〜4.9%であり、好ましくは1〜4.9%、更に好ましくは1.5〜4.9%、特に好ましくは2〜4.9%である。単量体(c)が0.5%未満では金属への吸着性が劣り、4.9%を超えると基油に対する溶解性が悪くなる。
上記及び以下において、特別に規定しない限り%は重量%を示す。
油溶性共重合体(A)は、更に1種又は2種以上の他の単量体の単位を含有してもよい。これらの任意の単量体としては、(a)以外のアルキル(メタ)アクリレート単量体(d)が挙げられる。
単量体(d)には、C8−17のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(d1)及びC18−24の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(d2)が含まれる。
(d1)には、直鎖C8−17アルキル(メタ)アクリレート(d11)及び分岐C8−17アルキル(メタ)アクリレート(d12)が含まれる。
(d11)としては、例えば、n−ドデシル、n−テトラデシル又はn−ヘキサデシルメタクリレート(以下、それぞれDDM、TDM、及びHDMと略記する)、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−トリデシル又はn−ペンタデシルメタクリレート、更にこれらに対応するアクリレート(n−ドデシルアクリレート等)並びにチーグラーアルコールの(メタ)アクリレートが挙げられる。
(d12)としては、例えばイソオクチル、2−エチルヘキシル、イソノニル、イソデシル、イソドデシル、2−メチルウンデシル、イソトリデシル、2−メチルドデシル、イソテトラデシル、2−メチルトリデシル、イソペンタデシル又は2−メチルテトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(d1)としては、更に、直鎖C8−17アルコール及び分岐C8−17アルコールの混合物の(メタ)アクリレートが挙げられる。直鎖C8−17アルコール及び分岐C8−17アルコールの混合物としては、例えば、オキソアルコール[「ネオドール23」及び「ネオドール45」(シェル化学株式会社製)、「ドバノール23」及び「ドバノール45」(三菱化学株式会社製)並びに「オキソコール1213」及び「オキソコール1415」(日産化学株式会社製)]が挙げられる。
(d1)の内で好ましいのは、粘度指数及び低温粘度の観点から、C12−17(更にC12−15)アルキル(メタ)アクリレート、特に直鎖C12−17(とりわけC12−15)アルキル(メタ)アクリレートである。
(d2)には直鎖C18−24アルキル(メタ)アクリレート、例えばn−オクタデシル(メタ)アクリレート、n−ノナデシル(メタ)アクリレート、n−エイコシルメタクリレート、n−エイコシルアクリレート、n−ドコシル(メタ)アクリレート及びn−テトラコシル(メタ)アクリレートが含まれる。(d2)の内、粘度指数及び低温粘度の観点から好ましいのはn−オクタデシルメタクリレートである。
油溶性共重合体(A)は、粘度指数及び金属への吸着性の観点から、単量体の全重量に基づいて、下記表1に示した%の単量体の単位を含有する。
Figure 0005005710
油溶性共重合体(A)の金属への吸着性は、(A)の酸化鉄への吸着試験における吸着INDEX及び単量体単位のモル分率に基づいて計算される平均側鎖長によって評価できる。
下記数式(1)で定義される吸着INDEXは、油溶性共重合体(A)の酸化鉄への吸着性を表すものである。(A)が高分子であることから、吸着前後の(A)の溶液の粘度変化によって金属表面に吸着された(A)の量の尺度とすることができ、吸着INDEXが大きいほど金属表面近傍でのポリマー濃度が高くなり、局部的に粘度が上がるため、金属疲労性が向上すると考えられる。
(A)の吸着INDEXは、好ましくは2以上、更に好ましくは2.5以上である。吸着INDEXが2以上であると、金属への吸着性が良好である。
Figure 0005005710
吸着試験前後の40℃での動粘度は、次の方法で測定したものである。
(1)基油(「ダイアナフレシアW−8」出光興産(株)製、100℃での動粘度:2.3mm2/s。40℃での動粘度:8.06mm2/s)180部に、油溶性共重合体(A)20部を添加し、80℃で1時間撹拌して溶解させて評価油を調製する。
(2)評価油の40℃での動粘度(吸着試験前の40℃での動粘度)をJIS−K−2283の方法で測定する。
(3)評価油100部に酸化鉄(2価及び3価の混合物)(アルドリッチ社製の試薬、粒径:5ミクロン以下)10部を加え、25℃で、2時間撹拌後、濾紙でろ過し、ろ液の40℃での動粘度(吸着試験後の40℃での動粘度)を測定する。
(4)上記計算式にて吸着INDEXを小数点以下1桁まで求める。
<計算例>
吸着前の40℃での動粘度=10.68mm2/s
吸着後の40℃での動粘度=10.61mm2/s
基油[「ダイアナフレシアW−8」出光興産(株)製]の40℃での動粘度=8.06mm2/s;
Figure 0005005710
尚、吸着INDEXは、(A)を構成する単量体(b)及び/又は(c)の比率を増やすことにより上げることができ、比率を減らすことにより下げることができる。
油溶性共重合体(A)の単量体単位のモル分率に基づいて計算される平均側鎖長は通常16以下、好ましくは13以下である。平均側鎖長が16より大きいと、立体的に嵩高くなり、吸着効率が悪くなる。単量体単位の側鎖長は、単量体単位の水素原子と主鎖原子を除いて、主鎖から側鎖方向に数えて最も長い鎖の水素原子以外の原子の数の和である。
各単量体単位についての側鎖長を各単量体単位のモル分率に基づいて算術平均して平均側鎖長が計算できる。
例)2−デシルテトラデシルメタクリレート/メチルメタクリレート=40/60モル比の共重合体
2−デシルテトラデシルメタクリレート単位の側鎖長:16(原子の下の数字参照)
Figure 0005005710
メチルメタクリレート単位の側鎖長:3(原子の下の数字参照)
Figure 0005005710
2−デシルテトラデシルメタクリレート単位の側鎖長:16
メチルメタクリレート単位の側鎖長:3
2−デシルテトラデシルメタクリレート単位とメチルメタクリレート単位のモル比=40:60
2−デシルテトラデシルメタクリレート単位のモル分率=0.4
メチルメタクリレート単位のモル分率=0.6
平均側鎖長=16×0.4+3×0.6=8.2
油溶性共重合体(A)は、通常、25℃の鉱物油100部に、少なくとも0.5部、好ましくは少なくとも2部、更に好ましくは少なくとも30部、特に好ましくは少なくとも70部溶解する。
ポリスチレンを標準としたゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される(A)の重量平均分子量(以下Mwと略記)は、通常3,000〜1,000,000である。Mwが3,000未満では粘度指数が低く、1,000,000を超えるとせん断安定性が悪い。
(A)のMwの好ましい範囲は、(A)を含有する潤滑油組成物の用途によって異なるが、せん断安定性の観点から、好ましくは下記表2に記載の範囲である。(A)のMwは、重合時の温度、単量体濃度(溶媒濃度)、触媒量又は連鎖移動剤量等により調整できる。
Figure 0005005710
*:オートマチックトランスミッション油
**:ベルト−コンティニュアスリーバリュアブルトランスミッション油
***:マニュアルトランスミッション油
(A)は、公知の製造方法によって得ることができる。例えば、前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下にラジカル重合することにより得られる。
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン又はC9−10のアルキルベンゼン等の芳香族溶剤、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン及びオクタン等の脂肪族C6−18炭化水素、2−プロパノール、1−ブタノール及び2−ブタノール等のC3−8のアルコール系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤並びに鉱物油が使用できる。これら溶剤の内で好ましくは、溶解性の観点からアルコール系溶剤であり、更に好ましくは2−プロパノールである。
重合触媒としては、アゾ系触媒[例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、ADVNと略記)及びジメチル2,2−アゾビスイソブチレート]、過酸化物系触媒[例えば、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキシド及びラウリルパーオキシド]が使用できる。
更に、必要により連鎖移動剤(例えば、C2−20のアルキルメルカプタン)を使用することもできる。反応温度は、通常50〜140℃、好ましくは60〜120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により得ることもできる。更に、共重合体の重合様式としては、ランダム付加重合又は交互共重合のいずれでもよく、また、グラフト共重合又はブロック共重合のいずれでもよい。
本発明の粘度指数向上剤は、通常は上記油溶性共重合体(A)のみからなる。
本発明の粘度指数向上剤組成物は、20〜90%の粘度指数向上剤及び10〜80%の希釈剤を含有する。
粘度指数向上剤をそのまま基油に添加するよりも、粘度指数向上剤組成物を添加する方が基油に溶解し易いという点で好ましい。
粘度指数向上剤組成物としては、油溶性共重合体(A)を溶液重合で製造して得られた溶液状のもの、及び希釈剤中に油溶性共重合体(A)を溶解して得られるものが挙げられる。
希釈剤としては、脂肪族溶剤[C6−18の脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、デカリン及び灯油等)]、芳香族溶剤[C7−15の芳香族溶剤{トルエン、キシレン、エチルベンゼン、C9の芳香族混合溶剤(トリメチルベンゼン及びエチルトルエン等の混合物)及びC10−11の芳香族混合溶剤等}]、鉱物油[例えば、溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、水素化分解による高粘度指数油及び、ナフテン油]及び合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリα−オレフィン系合成潤滑油)及びエステル系合成潤滑油等]等が挙げられる。これらの内好ましくは鉱物油及び合成潤滑油であり、更に好ましくは鉱物油である。
粘度指数向上剤組成物において、油溶性共重合体(A)の割合は、粘度指数向上剤組成物の重量に基づき、ハンドリング性の観点から、好ましくは20〜90%、更に好ましくは30〜85%、特に40〜80%であり、希釈剤の割合は、粘度指数向上剤組成物の重量に基づき、好ましくは10〜80%、更に好ましくは15〜70%、特に20〜60%である。
本発明の潤滑油組成物は、基油と、前記粘度指数向上剤若しくは前記粘度指数向上剤組成物を含有してなり、粘度指数向上剤を潤滑油組成物の重量に基づいて通常0.01〜45重量%含有する。
基油としては、鉱物油[例えば、溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油]並びに合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリα−オレフィン系合成潤滑油等)及びエステル系合成潤滑油等]及びこれらの混合物が挙げられる。
潤滑油組成物の用途に基づく潤滑油組成物中の粘度指数向上剤の好ましい含有量は、下記表3に記載の範囲である。
Figure 0005005710
基油の100℃での動粘度は、低粘度化の観点から、好ましくは1〜6mm2/s、更に好ましくは1〜5mm2/sである。
基油の粘度指数は、好ましくは60以上、更に好ましくは100以上、特に好ましくは105以上であり、好ましくは180以下、更に好ましくは175以下、特に170以下である。
このような基油に本発明の粘度指数向上剤又は粘度指数向上剤組成物を配合した潤滑油組成物は、粘度指数が更に高くなり省燃費性が良好となる。
また、基油の流動点(JIS−K−2269−1993年)は、好ましくは−5℃以下、更に好ましくは−10℃〜−70℃である。基油の流動点がこの範囲であるとワックスの析出量が少なく低温粘度が良好となる。
潤滑油組成物の100での動粘度は、低粘度化の観点から、1〜12mm2/sであることが好ましく、更に好ましい範囲は、潤滑油組成物の用途に基づいて下記表4に記載の範囲である。
Figure 0005005710
本発明の潤滑油組成物は、デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等のギヤ油、マニュアルトランスミッション油(以下、MTFと略記)、オートマチックトランスミッション油(以下、ATFと略記)及びベルト−CVTF等の変速機油、トロイダル−CVT油等のトラクション油、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、建設機械用作動油及び工業用作動油等の作動油並びにエンジン油等に好適に用いられる。これらの内で好ましいのはデファレンシャル油、ATF、ベルト−CVT油、エンジン油及びMTFである。更に好ましくはデファレンシャル油、ATF、ベルト−CVT油及びMTFである。
本発明における油溶性共重合体(A)を含む潤滑油組成物は、更に任意の1種以上の添加剤を含むことができる。
添加剤としては、以下のものが使用できる。
(1)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
(2)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス−又はモノ−ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物及びボレート類等;
(3)抗酸化剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(4)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
(5)摩擦摩耗調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(6)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ−及びジ−スルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(7)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
(8)抗乳化剤:
第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油、フォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)等;
(9)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4−チオジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート等)等。
これらの添加剤は、潤滑油組成物の重量に基づいて、下記表5記載の量を使用することができる。
Figure 0005005710
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、以下において部は重量部を表す。
(GPCによる重量平均分子量の測定法)
装置 : 東洋曹達製 HLC−802A
カラム : TSK gel GMH6 2本
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.5%のTHF溶液
溶液注入量 : 200μl
検出装置 : 屈折率検出器
標準 : ポリスチレン
(低温粘度の試験方法)
JPI−5S−26−85の方法で−40℃の粘度を測定した。
(密度の測定方法)
JIS−K−2249の振動式の方法で行った。
(動粘度及び粘度指数の試験方法)
JIS−K−2283の方法で行った。
(せん断安定性の試験方法)
CEC L45−45−A−99の方法に従い試験時間を20時間とした。
実施例1〜9及び比較例1〜4(粘度指数向上剤の製造)
撹拌装置、加熱冷却装置、減圧装置、温度計、滴下ロート及び窒素吹き込み管を備えた反応容器に、2−プロパノール25部を仕込み、別のガラス製ビーカーに、表6に記載の単量体を合計100部、連鎖移動剤としてのドデシルメルカプタンを1.5部、ラジカル重合開始剤としてのADVN0.5部及び2−プロパノール6部を仕込み、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに仕込んだ。反応容器の気相部の窒素置換を行った後に70〜85℃に保ちながら、2時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から2時間、85℃で熟成した後、85〜120℃で3時間かけて減圧下(10mmHg)に2−プロパノールを留去し、本発明の粘度指数向上剤(A1)〜(A9)及び比較の粘度指数向上剤(B1)〜(B4)を得た。得られた粘度指数向上剤のMw及び平均側鎖長を表6に示す。
表6の(a)〜(d)の各構成単位は以下の通りである。
(a1):2−デシルテトラデシルメタクリレート
(a2):2−オクチルドデシルメタクリレート
(a3):2−オクチルドデシルオキシエチルアクリレート
(b1):メチルメタクリレート
(b2):n−ブチルメタクリレート
(c1−1):ヒドロキシエチルメタクリレート
(c1−2):ヒドロキプロピルメタクリレート
(c2):メタクリルアミド
(c3):メタクリル酸
(d1):n−ドデシルメタクリレート
Figure 0005005710
実施例10〜18、比較例5〜8(潤滑油組成物の製造及び評価)
撹拌混合装置の付いたステンレス製容器に、得られる潤滑油組成物の100℃での動粘度が5.2±0.2(mm2/s)になり、かつ潤滑油組成物の合計が100部になるように基油(高粘度指数油;100℃での動粘度=4.6mm2/s、粘度指数=118、流動点=−17.5℃)と(A1)〜(A9)又は(B1)〜(B4)をそれぞれ仕込み、80℃で1時間混合し、本発明の潤滑油組成物(C1)〜(C9)及び比較の潤滑油組成物(D1)〜(D4)を作製した。
得られた潤滑油組成物の100℃での動粘度、粘度指数、−40℃での低温粘度、せん断安定性及び粘度指数向上剤の吸着INDEXの測定結果を表7に示す。
Figure 0005005710
本発明の粘度指数向上剤を使用した潤滑油組成物は、従来の粘度指数向上剤を使用した潤滑油組成物に比べて、粘度指数向上効果及び金属への吸着性が優れていることから、輸送用機器用及び各種工
作機器用等の駆動系潤滑油[ギア油(マニュアルトランスミッション油及びデファレンシャル油等)及び自動変速機油(オートマチックトランスミッション油、ベルトCVT油及びトロイダルCVT油等)等]、作動油(機械の作動油、パワーステアリング油及びショックアブソーバー油等)及びエンジン油(ガソリン用及びディーゼル用等)に好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. 一般式(1)で示される単量体(a)の単位を、油溶性共重合体(A)の全重量に基づいて20〜94.5重量%、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b)の単位を5〜50重量%並びに水酸基含有単量体、アミド基含有単量体及びカルボキシル基含有単量体からなる群から選ばれる1種以上の単量体(c)の単位を0.5〜4.9重量%含有し、3,000〜1,000,000の重量平均分子量を有する油溶性共重合体(A)からなる潤滑油用粘度指数向上剤。
    CH2=C(R1)−COO(A−O)n−R (1)
    [式中、R1は水素原子又はメチル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、Rは炭素数16〜36の分岐アルキル基であり、該分岐アルキル基中の連続するメチレン基の数は16個以下であり、nは0〜20の整数である。]
  2. 一般式(1)におけるRが一般式(2)で示される基である請求項1記載の潤滑油用粘度指数向上剤。
    Figure 0005005710
    [式中、R’及びR''は、炭素数1〜16の直鎖アルキル基及び炭素数3〜34の分岐アルキル基からそれぞれ独立に選ばれる基であり、pは0〜15である。]
  3. 一般式(2)におけるpが0又は1である請求項2記載の潤滑油用粘度指数向上剤。
  4. 前記水酸基含有単量体が、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル(c11)、炭素数2〜12のアルケノール(c12)、炭素数4〜12のアルケンジオール(c13)、炭素数3〜12のアルケニル基を有する水酸基含有アルケニルエーテル(c14)、水酸基含有芳香族単量体(c15)及び(c11)〜(c15)の(ポリ)オキシアルキレンエーテル(c16)からなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれか記載の潤滑油用粘度指数向上剤。
  5. 20〜90重量%の請求項1〜4のいずれか記載の潤滑油用粘度指数向上剤及び10〜80重量%の希釈剤からなる粘度指数向上剤組成物。
  6. 基油と、請求項1〜4のいずれか記載の潤滑油用粘度指数向上剤又は請求項5記載の粘度指数向上剤組成物とからなり、潤滑油用粘度指数向上剤を潤滑油組成物の重量に基づいて0.01〜45重量%含有する潤滑油組成物。
  7. 100℃での動粘度が1〜12mm2/sである請求項6記載の潤滑油組成物。
  8. 前記潤滑油組成物の用途が、ギヤー油、変速機油、トラクション油、作動油又はエンジン油である請求項6又は7記載の潤滑油組成物。
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