以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
図1〜図7を参照して、本発明の一実施の形態における加湿装置の構成を説明する。図1は、本発明の一実施の形態における加湿装置を前面側から見た斜視図であり、図2は、背面側から見た分解斜視図であり、図3は、制御を示す模式図である。図4は、給水タンクを示す斜視図である。図5は、トレイを示す斜視図である。図6は、図5におけるVI−VIでの断面図である。図7は、電気分解部を示す模式図である。
図1〜図3に示すように、本実施の形態における加湿装置1は、本体部2と、給水タンク3と、貯水部としてのトレイ4(トレイ4の貯水部42)と、加湿部としてのフィルタ5およびファン10と、電気分解部400(図6および図7参照)と、制御部104とを主に備えている。制御部104は、運転開始時の貯水部42に貯水させた水の不純物濃度よりも低くなった時に電気分解部400を動作させるように構成されている。
図1に示すように、本体部2の一方側面には、円弧状に開口した形状のタンク装着壁2aが本体部2の高さ方向に延びて形成されている。タンク装着壁2aは、本体部2の一方側面側に給水タンク3を装着するための空間を形成している。図2に示すように、本体部2の下方には、本体部2の背面側からトレイ4が着脱される空間(トレイ装着部2c)が設けられている。本体部2の他方側面には、縦にスリットの入った吸込口7が設けられている。本体部2の内部には、吸込口7と対向する位置にエアフィルタ(図示せず)が設けられている。本体部2の前面側上部には、各種ボタンが形成された操作部8が設けられている。本体部2の背面側上部には、一方側面から他方側面に向けて複数のスリットが入った吹出口9が設けられている。
図2および図3に示すように、フィルタ5は、トレイ4に貯水させた水を気化させるための加湿部を構成している。フィルタ5は、トレイ4の貯水部42の内部に収納された状態で、本体部2のトレイ装着部2cに装着されている。フィルタ5には、直方体形状の枠体であるフィルタケース51の枠内に凹凸が繰り返し形成された形状の給水フィルタ52が収容されている。
図3および図4に示すように、給水タンク3は、トレイ4に水を給水するためのものであり、本体部2に対して着脱可能である。給水タンク3の容器30は、内部に水を保持し、一方が開口した有底円筒体であり、水位が外から見えるように構成されている。取手部31は、容器30に取り付けられており、手先を挿入すると給水タンク3を持ち運びできる。蓋部32は、容器30の開口部に対して着脱可能である。蓋部32には溝(図示せず)が設けられている。蓋部32が容器30に取り付けられた状態の給水タンク3をトレイ4に装着すると、溝を介して容器30からトレイに水が給水される。
図5に示すように、トレイ4は、水を貯水させるための貯水部であり、本体部2に対して着脱可能である。トレイ4は、有底筒型のタンク挿入部41と、皿形状の貯水部42とを含んだ樹脂製の一体成型品である。また、トレイ4が本体部2のトレイ装着部2c(図2参照)に装着される。トレイ4が本体部2に取り付けられると、トレイ4は本体部2の背面および側面の一部を構成している。
トレイ4の一方側面側(図5において左側)には、筒状のタンク挿入部41が形成されている。トレイ4がトレイ装着部2cに装着されると、本体部2の一方側面ではタンク挿入部41が本体部2の外部に露出し、本体部2の内部では貯水部42が収容される。また、本体部2の一方側面におけるトレイ装着部2cの上方に形成されたタンク装着壁2aと、トレイ4のタンク挿入部41の円弧状壁41bとが連なり、タンク挿入部41の内部とその上方空間に、給水タンク3を装着するための円柱型のタンク装着部が形成される。
タンク挿入部41には、周囲に半円形の壁41aと、壁41aと連なり、壁41aの高さよりも高い円弧状壁41bとが設けられている。タンク挿入部41の底面において、最も高さの低い領域に水路41cが形成され、水路41cよりも高い領域には円台41eが形成されている。円弧状壁41bの底部において、タンク挿入部41と貯水部42との境界に開口41dが設けられ、水路41cは開口41dを介して貯水部42内に通じている。円台41eには、円柱43が設けられている。給水タンク3がトレイ4に装着されたときに円柱43が蓋部32を押圧し、蓋部32の溝を介して給水タンク3の内部の水がタンク挿入部41に流れ込み、流れ込んだ水が水路41cおよび開口41dを流れて貯水部42内に水が貯水される。
図5および図6に示すように、貯水部42の底面には、前面側から背面側への略中央において、タンク挿入部41から他方側面へかけて平面形状が矩形の凹部42bが設けられている。凹部42b上には、水が下方に浸透するように空洞を有する網状の樹脂製の蓋部42dが配置されている。蓋部42dと、底面部42aとは同一平面上に位置付けられている。底面部42aと蓋部42dとからなる平面は、凸部42cに対して凹部となり、フィルタ5を装着するためのフィルタ装着部を形成する。すなわち、フィルタ5は、底面部42aおよび蓋部42dで構成される平面と、凸部42cとの間にはめ込まれる。
図6に示すように、網状の蓋部42dの下に形成された凹部42bには、電気分解部400が設けられている。電気分解部400は、貯水部としてのトレイ4に貯水させた水に金属イオンを添加する動作をするためのものである。電気分解部400は、電気配線(図示せず)により、電気分解部400を動作させるための制御部104(図3参照)および加湿装置1の運転制御を行っている制御部101(図3参照)に繋がっている。
なお、本実施の形態における加湿装置1において、トレイ4は本体部2から着脱可能に構成されている。電気分解部400に接続される電気配線(図示せず)に供給される電気は、コイルを介した無接点電力伝送やコネクタ等を使用することにより、本体部2から供給される。
図7に示すように、電気分解部400は、電気分解により貯水部42に貯水させた水に除菌効果がある金属イオンを添加する動作をするためのものである。電気分解部400の配置は、生成する金属イオンを貯水部42に貯水させた水に添加できれば特に限定されないが、本実施の形態では、電気分解部400は貯水させた水と接触するように配置されている。
本実施の形態では、図7に示すように、電気分解部400の内部には、2枚の板状の金属を含む電極401a,401bが間隔をおいて配置されている。電極401a,401bは電極端子収納部402を介して電気配線(図示せず)に接続されており、印加される電圧に応じた電気的制御を受ける。電極401a,401bが短絡しないように、電極401a,401b間を一定間隔に保つためスペーサー403が設けられている。貯水部42に水が供給されているときに、電極401a,401b間に電圧を印加することにより、電気分解部400の内部に金属イオンが溶出し、貯水部42に貯水されている水に除菌および抗菌効果が付与される。
また、電気分解部400は、電極401a,401bを構成する材料を分解するための電気分解部である。また、電気分解部400は、金属イオンを生成するように構成されていることが好ましく、銀イオンを生成するように構成されていることがより好ましい。すなわち、電極401a,401bは、銀を含む材料であることが好ましい。電極401a,401bを構成する材料が銀で、電極401a,401b間を流れる電流が直流である場合には、陽極側の電極において下記の(式1)の反応が生じ、貯水部42に貯水させた水に銀イオン(Ag+)が溶出する。
Ag→Ag++e- ・・・・・(式1)
電極401a,401bを構成する金属は銀に限定されず、たとえば銅、亜鉛、および、銀と銅と亜鉛との合金などであってもよい。銀を含む電極から溶出する銀イオンと、亜鉛を含む電極から溶出する亜鉛イオンとは、殺菌効果に優れている。銅を含む電極から溶出する銅イオンは、防カビ性に優れている。また、これらの合金を含む電極は、これらの金属のイオンを同時に溶出させることができるので、優れた殺菌効果および防カビ効果を得ることができる。
電気分解部400は、貯水部42に貯水させた水に添加する除菌イオンを生成できるものであれば特に限定されないが、上述したように、電極401a,401b材料を電気分解することにより金属イオンを貯水部42に貯水させた水内へ溶出させるための金属イオン溶出部であることが好ましい。言い換えると、電気分解部400は、金属電極を含み、かつ金属電極に電圧を印加することで金属電極から金属イオンを溶出させるように構成されていることが好ましい。
なお、電気分解部400は、電極401a,401b材料を電気分解することにより金属イオンを溶出させるためのものに特に限定されず、たとえば水に含まれる塩化物イオンを利用した電気分解による次亜塩素酸を生成させるためのものであってもよい。この場合には、少なくとも一方の電極401a,401bを不溶性の電極で形成し、電気分解により水中の塩化物イオンから次亜塩素酸を発生させる。不溶性の電極としては、たとえばPt(白金)やIr(イリジウム)で被覆されたTi(チタン)電極などを用いることができる。
制御部104は、運転開始時の貯水部42に貯水させた水の不純物濃度よりも低くなった時に電気分解部400を動作させるように構成されている。本実施の形態では、制御部104は、加湿部を動作させた後に電気分解部400を動作させるように構成されている。
次に、図1〜図9を参照して、本実施の形態における加湿装置1の動作について説明する。図8は、本発明の実施の形態における加湿装置の除菌効果を付与する工程を示すフローチャートである。図9は、本発明の実施の形態における加湿装置の動作と加湿部の動作との関係を示す模式図である。
まず、図8および図9に示すように、加湿装置1の動作(運転)を開始する(ステップS101)。次に、加湿部の動作(運転)を開始する(ステップS102)。
具体的には、図1〜図5に示すように、内部に水が保持されている給水タンク3を本体部2のタンク装着壁2aおよびトレイ4のタンク挿入部41に装着する。給水タンク3の蓋部32の溝およびトレイ4のタンク挿入部41の開口41d(図4参照)を介して、給水タンク3の内部の水が貯水部42に供給される。供給された水を貯水部42に貯水させ、貯水させた水をフィルタ5に吸い込ませる。図9に示すように、この状態で本体部2の操作部8により、またはタイマー運転により、加湿装置1の電源をOnにすると、加湿部の動作が開始される。本実施の形態では、図7に示すように、制御部102によりファン10を起動し、ファン10により本体部2の吸込口7から吸込んだ空気をフィルタ5に送り込み、フィルタ5に吸水された水が急速に気化されて、気化された水を含んだ空気が吹出口9から排出される。この気化により、加湿フィルタ5から水分が失われるが、フィルタ5は随時貯水部42から水を吸水する。また、貯水部42は一定水位となるように、随時給水タンク3から給水される。このようにして、加湿装置1および加湿部の動作が開始する。
制御部102は、図9に示すように、加湿装置1の動作がOnになっていても、所定の湿度より湿度が高くなれば加湿部の動作を停止し、所定の湿度より湿度が低くなれば加湿部の動作を開始する(つまり、加湿部の自動運転)制御をすることが好ましい。すなわち、制御部102は、加湿装置1の動作がOnの間に、湿度に応じて加湿部の動作をOnとOffとを繰り返すように制御することが好ましい。なお、制御部102は、たとえば湿度に関わらず、加湿装置1の動作がOnの信号を検知して加湿部の動作をOnにする制御、つまり加湿部の連続運転をするための制御であってもよい。
次に、図8に示すように、運転開始(ステップS101)時の貯水部42に貯水させた水の不純物濃度よりも、貯水部42に貯水された水の不純物濃度が低いかを判断する(ステップS103)。検知する方法は特に限定されないが、たとえば以下の方法により不純物濃度が低い時を判断する。
具体的には、加湿装置1の運転中において予め不純物濃度が低いことがわかっている所定の条件を満たしているときを、不純物濃度が低いと判断する。所定の条件とは、たとえば、加湿部を動作させた後であり、好ましくは加湿部の動作を所定時間(たとえば1時間以上)継続した後である(図9および図11参照)。また、貯水部42に貯水されている水(電極401a,401bに接触する水)の導電率(電気伝導度)を検知して、所定の導電率(たとえば700μS/cm以下)よりも低い時を、不純物濃度が低いと判断する。この場合には、加湿装置1は、貯水部42に貯水された水の不純物濃度を測定するための検知部(図示せず)を備えている。また、貯水部42に貯水されている水(電極401a,401bに接触する水)の導電率と、供給される水(給水タンク3の水)の導電率との差が所定の値(たとえば200μS/cm以下)よりも小さい時を、不純物濃度が低いと判断する。本実施の形態では、装置の構成の制限をより小さくするために、貯水部42に貯水させた水の不純物濃度を測定するための別個の検出部を備えなくてもよいので、加湿部を動作させた後が不純物濃度の低い時と判断している。
なお、上記「不純物」とは、貯水された水に含まれる水素元素および酸素元素以外の元素であり、たとえばカルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオン、および炭酸イオンなどの電解質が挙げられる。上記「不純物濃度」は、たとえば導電率や硬度などの指標を用いることができる。導電率は全電解質の指標であり、硬度はカルシウムイオン、マグネシウムイオンの指標となる値である。
不純物濃度が低いと判断された場合には、ステップS103においてYesと判断される。この場合には、電気分解部400の動作を開始させる(ステップS104)。一方、不純物濃度が高いと判断された場合には、たとえば後述する加湿装置1の動作が継続しているかを判断する(ステップS107)。
ステップS103においてYESと判断された場合には、電気分解部400を動作させる(ステップS104)。ステップS104では、たとえば以下のように行なわれる。
具体的には、まず、貯水部42に電気分解部400を動作させるために要する量の水が貯水されているかを判断する。水の貯水量は、水位センサ(図示せず)で検出される。水位センサで検出された水の量が電気分解部400を動作させる量に満たない場合には、電気分解部400を動作させずに、たとえば後述する加湿装置の動作が継続しているかを判断する(ステップS107)。
水位センサで検出された水の量が電気分解部400を動作させることができる量を満たしている場合には、制御部104にその信号が送られ、制御部104により電気分解部400を動作させる。制御部104は、運転開始時(ステップS101)の貯水部42に貯水させた水の不純物濃度よりも低くなった時に電気分解部400を動作させる。
本実施の形態の電気分解部400は金属イオン溶出部であるので、制御部104により、電極401a,401b間に電圧を印加することで電極401a,401bから金属イオンを溶出させる。溶出させた金属イオンは、貯水部42に貯水させた水に添加される。貯水部42に貯水させた水に銀イオンなどの金属イオンを溶出させると、除菌および抗菌効果を付与することができる。また、貯水部42に貯水された除菌および抗菌効果を付与された水はフィルタ5に吸い上げられることにより、フィルタ5にも除菌および抗菌効果が付与される。
制御部104は、印加する電圧を制御して、電気分解部400に高濃度の金属イオンを生成することが好ましい。高濃度の金属イオンを貯水部42に貯水させた水に添加することによって、フィルタ5に金属イオンを蓄積させやすい。そのため、金属イオンを含む水が接触するタンク挿入部41や貯水部42のみでなく、細菌の繁殖が起こりやすい加湿フィルタ5にも除菌および抗菌効果を付与できる。このような高濃度の金属イオンとしては、たとえば貯水部42に貯水された水250mLに対して900(μg/L)以上の濃度の銀イオンが例示される。このような濃度の銀イオンを溶出させる条件としては、電極401a,401bが銀電極である場合には、たとえば8秒間、29mAの一定電流が流れるよう電圧を印加する。ただし、銀イオンの濃度等は特にこれに限定されず、細菌の除去に効果がある濃度であればよい。
次に、図8に示すように、加湿部の動作を終了する(ステップS105)。ステップS105では、所定の湿度に達していることにより、使用者による操作部8の操作により、またはタイマーにより、加湿部の運転が停止される。
次に、図8に示すように、電気分解部400の動作を終了する(ステップS106)。本実施の形態では、加湿部の運転が停止された信号が制御部104に送られ、その信号を受信した制御部104により、時間をあけて(たとえば加湿部が停止した信号を受信してから1時間以内)または時間をあけずに、電極401a,401bに電圧を印加することを停止する。電気分解部400の動作の停止は、制御部104で制御される。
なお、ステップS106は、省略されてもよい。この場合には、電気分解部400は、たとえば加湿部の動作終了時まで連続して動作している。
次に、図8に示すように、加湿装置1の動作が継続している場合には(ステップS107においてYesと判断された場合には)、運転開始時の貯水部42に貯水させた水の不純物濃度よりも貯水部42に貯水された水の濃度が低いかを判断する(ステップS103)。その後は、上述したステップと同様のステップが行なわれる。
加湿装置1の動作が継続していない場合は(ステップS107においてNOと判断された場合には)、加湿装置1の動作を終了させる(ステップS108)ことを意味する。本実施の形態では、加湿部の動作終了の信号および電気分解部400の動作終了の信号を受信して、制御部101により加湿装置1の動作を終了する。
なお、上述した加湿装置1の動作は一例であり、上述の動作に特に限定されない。図10〜図12は、本実施の形態における加湿装置の動作と加湿部の動作との別の関係を示す模式図である。加湿装置1において加湿部が所定の湿度に応じて動作する場合(自動運転)には、図10および図11に示すように電気分解部400を動作させてもよい。また、加湿装置1において加湿部が湿度に関わらず連続して動作する場合(連続運転)には、図12に示すように電気分解部400を動作させてもよい。また、加湿装置1の動作は、運転開始時の貯水部42に貯水させた水の不純物濃度よりも低くなった時に電気分解部400を動作させることができれば、その他の動作であってもよい。
具体的には、図8および図10に示すように、制御部104は、加湿部の動作が開始したことを検知して、電気分解部400の動作を開始し、その後の加湿部の動作のOnおよびOffに関わらず、加湿装置の動作を終了させる信号を検知して電気分解部400の動作を終了するような制御を行なってもよい。すなわち、電気分解部400を断続的に動作させずに、連続で動作させる。この場合には、加湿装置1の動作開始(ステップS101)、加湿部の動作開始(ステップS102)、運転開始時の貯水部42に貯水させた水の不純物濃度より低いかの判断(ステップS103)、電気分解部400の動作開始(ステップS104)、加湿部の動作終了(ステップS105)、加湿部の動作開始および終了(ステップS104およびステップS105)の繰り返し、電気分解部400の動作終了(ステップS106)、および加湿装置1の動作終了(ステップS108)が行なわれる。
また、図8および図11に示すように、制御部104は、自動運転の加湿部の動作開始から所定時間経過後から、終了から所定時間経過までの間に、電気分解部400を動作させてもよい。このとき、制御部104は、電気分解部400の動作が再び動作した信号を受信してから所定時間経過後に電気分解部400を動作させてもよく、再び動作した信号を受信して時間を空けずに電気分解部400を動作させてもよい。
また、図8および図12に示すように、制御部104は、連続運転の加湿部の動作開始後所定時間経過後から終了後所定時間経過までの間に電気分解部400を動作させてもよい。
また、制御部104は、運転開始所定時間経過後に所定時間のみ電気分解を実施してもよい。
さらに、制御部104は、加湿部の動作を検知してから所定時間経過後に動作させる仕様ではなく(加湿部の動作状況に関わらずに)、貯水部42に貯水された水の導電率を検知して電気分解を実施するように制御してもよい。導電率の検知は、電気分解を短時間実施し、その電気分解の条件から検知してもよい。すなわち、制御部104は、電極401a,401b間に一定の電圧を印加した時の電流値や、一定の電流を流した時の電圧値などを利用して制御を行なってもよい。このように検出される導電率は、水温の影響や、電極401a,401bの劣化の影響があるが、導電率が相対的に低い時を検出する目的においては、有効に利用できる。
また、制御部104は、導電率の変化から、現在の貯水部42に貯水された水の水質が給水タンク3内の水と比べてどの程度なのかを推定するような構成にしてもよい。この場合には、導電率の低い時をより正確に判断できる。制御部104は、たとえば、加湿部の動作に伴い導電率が急激に低下する時は、貯水部42内の水と給水タンク内の水との不純物濃度の差が大きいこと、すなわち、貯水部42内の水が給水タンク3内の水に比べて不純物濃度が高いことを示しているので電気分解を実施しない。かつ制御部104は、加湿部が動作中であり導電率の変化が小さい時には、貯水部内の水質が給水タンク内の水に近く、不純物の濃度が低いことを示しているため、電気分解を実施する。すなわち、加湿部の動作時において所定時間の導電率の減少が所定値以下の時に電気分解を実施し、導電率の減少が所定値を越える時には電気分解を実施しないように制御部104で制御する。この場合、不純物濃度が低い時を、導電率の絶対値ではなく、複数の測定値の差という相対的な値で評価するので、水温や電極401a,401bの劣化の影響が小さいため、導電率が相対的に小さい時をより正確に検出できる。
なお、本実施の形態では、気化式の加湿装置1を例に挙げて説明したが、本発明は気化式の加湿装置に特に限定されず、加熱式の加湿装置も含まれる。加熱式の加湿装置では、加湿部は、たとえばフィルタおよびファンの代わりまたは併用して、水を加熱するヒータなどの加熱部材を含んでいる。加熱式の加湿装置は、供給された水を加熱部材で加熱して水の蒸発を促進させることにより、加湿部を動作させる方式である。
以上説明したように、本実施の形態における加湿装置1によれば、水を貯水させるための貯水部42と、貯水部42に貯水させた水を気化させるための加湿部と、貯水部42に貯水させた水と接触するように配置された電気分解部400と、運転開始時の貯水部42に貯水させた水の不純物濃度よりも低くなった時に電気分解部400を動作させるための制御部104とを備えている。
加湿装置1を繰り返し使用することにより、貯水部42に貯水された水の導電率や硬度などの不純物濃度は高くなっていく。これは、加湿装置1に使用される水は、水道水、井戸水または工業用水などであり、不純物を含有していない純水ではないため、水そのものが蒸発しても、給水される水に含まれる不揮発性の不純物が残留するためである。水道水、井戸水および工業用水などに含まれる不純物として、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオンといった電解質が挙げられる。これらの電解質は揮発性でないため、加湿装置1の動作に伴って貯水部42に残留することになる。このような不純物が貯水部42に貯水された水に含有されることにより、貯水部42およびフィルタ5などに細菌が発生する等の問題が生じる。
また、硬度が高い水で、長期間にわたって電気分解部400を動作させると、電気分解部を構成する陰極に炭酸カルシウムなどのスケールが付着および堆積する。これは、陰極付近に陽イオンであるカルシウムイオンが集まること、および陰極で水素イオンから水素ガスが発生することに伴い、陰極近傍のpHが上昇し、炭酸カルシウムの溶解度が低下し、析出しやすい状態になるためである。スケールが電極に付着および堆積すると、その表面が覆われるため、金属イオンなどの除菌するために発生させるイオンの溶出量が低下するという問題が生じる。また、スケールによって、電気分解部400に電流が流れにくくなるという問題や、短絡してしまうといった問題が発生する。
本発明者は、給水タンク3から貯水部42へ供給される水の水質が一定であっても加湿装置1の運転中に不純物濃度が変化することに着目して、加湿装置1の運転および停止の動作中において、運転開始時の貯水部42に貯水させた水の不純物濃度が相対的に低い時は、加湿装置1の運転開始時であることを見出した。そのため、本実施の形態における加湿装置1は、運転開始時の貯水部42に貯水させた水の不純物濃度よりも低くなった時に電気分解部400を動作させるので、電気分解部400を効率良く動作させることができる。特に、電気分解部400が電極401a,401b材料を電気分解することにより金属イオンを貯水部42に貯水させた水内へ溶出させるための金属イオン溶出部である場合、導電率が低い時に電気分解を実施することになるので、金属イオンの溶出効率の低下を抑制できる。また、金属イオンの溶出効率の低下を抑制できるので、所定の濃度に金属イオンを容易に生成することができる。
また、導電率は電解質濃度(硬度成分)の指標となるので、導電率が低い時には硬度も低下していると考えられるので、電解質濃度が低い時に電気分解部400を動作させることによって、スケールの生成を抑制することができ、電極401a,401bにスケールが付着することを防止できる。その結果、電極401a,401bに電気が流れにくくなることおよび短絡を抑制できる。そのため、加湿装置1は除菌する効果を効果的に発揮させることができる。
したがって、加湿装置1は高い除菌効果を付与できるので、電流密度を上げるために、電極401a,401bの大きさや電流値などの変更をせずに所定の濃度の金属イオンを電気分解により発生させることができる。特に、制御部104が加湿部を動作させた後に電気分解部400を動作させるように構成されている場合には、導電率や硬度などの不純物濃度の測定をしなくても制御部104により不純物濃度の低い時に電気分解部400を動作させることもできるので、測定部などを別個に設ける必要がない。そのため、加湿装置1の構成の制限が小さい加湿装置が得られる。
上記加湿装置1において好ましくは、制御部104は、加湿部を動作させた後1時間後から、加湿部の停止1時間以内の間に、電気分解部400を動作させるように構成されている。これにより、導電率および硬度が非常に低いときに電気分解部を動作させることができる。
[実施例1]
本実施例では、不純物濃度が低い時に電気分解部を動作させることの効果を調べた。
具体的には、図1〜図8において制御部104を備えていない加湿装置を用いて、電気分解部として銀電極の電極401a,401bを準備した。また、電極401a,401bは、対向する面の面積を230mm2とした。そして、種々の導電率の水を準備し、同じ条件で電気分解した時の銀溶出量を測定した。その後、大阪府八尾市の水道水(測定日の水道水の導電率は200(μS/cm)で、硬度は60(mg−CaCO3/L)であった)中で電気分解した時の銀溶出効率を1としたときの溶出効率を計算した。その結果を、図13に示す。図13は、本実施例における導電率と溶出効率との関係を示す図である。図13において、縦軸は溶出効率(単位:%)を示し、横軸は導電率(単位:μS/cm)を示す。
図14に示すように、導電率が700(μS/cm)以下では、銀イオンの溶出量はファラデーの法則に従い、単位時間当たりの溶出量が電流に比例し、溶出効率は一定となった。したがって、この場合に、一定の水量に対し銀イオンを溶出するとき、一定の電流値で一定の時間電解することにより、所定の銀イオン濃度にすることができる。
一方、図14に示すように、700(μS/cm)を超える導電率が高い水では銀イオンの溶出効率が急激に低下した。これは、導電率が高い水に含まれる高濃度の塩化物イオンによって、銀電極の表面が不溶性の塩化銀で被覆されてしまったためであった。銀イオンの溶出効率が低下すると、所定の濃度以上に銀イオンを溶出させることが難しくなり、除菌などの効果を十分に発揮でないという問題が生じた。
以上より、本実施例によれば、制御部104が不純物濃度としての導電率が低いときに電気分解部を動作させることによって、電気分解部を効率良く動作させることができることが確認できた。
[実施例2]
本実施例では、制御部が加湿部を動作させた後に電気分解部を動作させるように構成されていることについての効果を調べた。
具体的には、図1〜図8において制御部104を備えていない加湿装置を用いて、導電率が2000(μS/cm)、硬度が1000(mg−CaCO3/L)の水を給水タンク3に供給して、加湿部を112時間動作させた。次に、加湿部の運転停止から24時間静置した後に、電気分解部400近傍の水質を測定した。その結果、導電率が13500(μS/cm)、硬度が2020(mg−CaCO3/L)であった。これは、試験に用いた水に含まれる不純物が、加湿装置1内に残留するためであると考えられる。また、この試験条件での不純物量は、導電率が200(μS/cm)、硬度が100(mg−CaCO3/L)の標準的な水道水を使用して、1120時間加湿部を動作させた場合に相当する。
この状態から、加湿装置の加湿部を動作させ、加湿部の動作中において電気分解部400近傍の水の導電率および硬度を測定した。その結果を、図14に示す。図14は、加湿運転開始から所定時間経過後に、導電率および硬度を測定した結果を示す。図14中、左縦軸は導電率(単位:μS/cm)を示し、右縦軸は硬度(単位:mg−CaCO3/L)を示し、横軸は加湿部の運転停止からの経過時間(単位:時間)を示す。なお、給水タンクに給水する水は、大阪府八尾市の水道水を用いた。この水の導電率は200(μS/cm)で、硬度は60(mg−CaCO3/L)であった。
図14に示すように、加湿部の動作を開始すると徐々に導電率および硬度が低下した。このことから、導電率および硬度は、加湿装置の運転開始時に相対的に高く、加湿部の運転後に相対的に低くなることがわかった。また、加湿部の動作を継続することによって、導電率および硬度が低下し、特に、加湿部の運転から1時間経過した後に、導電率および硬度が大きく低下した。これは、貯水部に貯水させた不純物濃度が高くなった水が加湿フィルタ5に吸水され、それと同時に給水タンク3から導電率および硬度がそれよりも低い水道水が供給される、加湿フィルタ5に給水された不純物濃度が高い水からの不純物の濃度拡散よりも、気化にともなって給水タンクから新しく流入してくる水の影響が大きいためである。
以上より、本実施例によれば、加湿装置1が運転開始時の貯水部に貯水させた水の不純物濃度よりも低くなった時に電気分解部を動作させるための制御部104を備えていれば、不純物濃度が低い時に電気分解部を動作させることができることが確認できた。
また、加湿装置が加湿部を動作させた後に電気分解部400を動作させるように構成されている制御部104を備えていれば、貯水部に貯水された水の導電率および硬度が低いときに電気分解部を動作させることができることが確認できた。また、導電率および硬度が低い時が加湿部の動作後であるという知見が得られたので、導電率および硬度を測定するための検出部を加湿装置1が備えていない場合であっても、制御部により電気分解部を動作させることができることが確認できた。
特に、制御部104は、加湿部を動作させてから30分経過後、より好ましくは1時間経過後に、電気分解部を動作させることにより、導電率および硬度が非常に低いときに電気分解部を動作させることができることが確認できた。
[実施例3]
本実施例では、制御部が加湿部を終了させてから所定時間までの間に電気分解部を動作させるように構成されていることについての効果を調べた。
具体的には、実施例2で説明した加湿装置を8時間運転した後に、さらに加湿部の動作を終了させて加湿装置の電源をOffにした。その後、静置した加湿装置について、所定時間経過ごとに貯水部に貯水させた水の導電率および硬度を測定した。その結果を図15に示す。図15は、加湿部の動作終了から所定時間経過後に、導電率および硬度を測定した結果を示す。図15中、左縦軸は導電率(単位:μS/cm)を示し、右縦軸は硬度(単位:mg−CaCO3/L)を示し、横軸は加湿部の運転停止からの経過時間(単位:時間)を示す。
図15に示すように、加湿部の動作終了後1時間以内は導電率および硬度の上昇がほとんどなかった。
また、図13に示すように、導電率が700μS/cm以下であれば銀イオンの溶出効率の低下を抑制できることから、図14および図15において導電率が700μS/cm以下である加湿部の運転開始から0.5時間経過後、加湿部の運転停止1時間までの間に、電気分解部を動作させると、溶出効率が高い状態で銀イオンを溶出できることがわかった。
以上より、本実施例によれば、加湿装置が加湿部を終了させてから所定時間までの間に電気分解部400を動作させるように構成されている制御部104を備えていれば、導電率および硬度が低いときに電気分解部を動作させることができることが確認できた。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 加湿装置、2 本体部、2a タンク装着壁、2c トレイ装着部、3 給水タンク、4 トレイ、5 フィルタ、7 吸込口、8 操作部、9 吹出口、10 ファン、30 容器、31 取手部、32 蓋部、41 タンク挿入部、41a 壁、41b 円弧状壁、41c 水路、41d 開口、41e 円台、42 貯水部、42a 底面部、42b 凹部、42c 凸部、42d 蓋部、43 円柱、51 フィルタケース、52 給水フィルタ、101,102,104 制御部、400 電気分解部、401a,401b 電極、402 電極端子収納部、403 スペーサー。