JP5004165B2 - タンパク質の配向制御固定化に適したタンパク質 - Google Patents

タンパク質の配向制御固定化に適したタンパク質 Download PDF

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Description

本発明は、固定化タンパク質に関する。本発明は、さらに配向制御した固定化タンパク質に関する。
従来、可溶性のタンパク質を、例えばアガロースゲル等の不溶性の固定化担体と結合させ、固定化タンパク質として利用することが試みられていた。例えば、酵素タンパク質を固定化担体に結合した固定化酵素を開発し、それを利用して酵素反応器を作製すること等が行われていた。このような固定化タンパク質の品質としては、タンパク質の性質・機能が均一であること、固定化されていない可溶性タンパク質と同等の性質・機能を保持していること、さらに、担体あたりの固定化タンパク質の量が多ければ多いほど良いことが望まれるが、それはタンパク質の固定化方法に依存している。
タンパク質固定化の方法としては、タンパク質を構成するアミノ酸の側鎖の反応性を利用して、固定化担体と化学的に結合させることが主に行われていた。しかし、このような側鎖の官能基を利用する固定化反応を用いる限りにおいては、固定化反応に使用される側鎖を複数有するタンパク質においては、固定化部位を制御すること、複数の箇所での固定化を防ぐこと、さらに固定化されたタンパク質の均一性を保つことが困難である。また、これらの困難さの要因は、固定化されたタンパク質の機能低下にもつながるものであり、改善が望まれていた。
複数の側鎖の官能基を介した固定化による固定化されたタンパク質の不均一性を避けるために、タンパク質のアミノ酸置換等により、官能基を唯一有するタンパク質配列を設計・作製することが試みられており、例えば、タンパク質中にシステイン残基を1個しか持たない配列に改変し、S-S結合等を介して部位特異的に固定化することが行われている(特許文献1及び非特許文献1〜3を参照)。
一方、タンパク質のカルボキシル末端は一箇所しかないことから、末端カルボキシル基を介した固定化を行うことにより、部位特異的且つ配向を制御した固定化を行うことができる。本発明者らは既に、シアノシステイン残基を介したアミド結合形成反応を利用した、タンパク質のカルボキシ末端のカルボキシル基を、1級アミンを有する担体とペプチド(アミド)結合を介して固定化する方法を開発している(特許文献2〜5を参照)。このことにより、固定化されたタンパク質がカルボキシ末端の一箇所で主鎖を介して結合するため、得られる固定化されたタンパク質は配向制御された形で固定化されており、且つ、完全に均一となる。されに、配向制御均一性が保たれることで、固定化されたタンパク質の変性の可逆性を高めることができ、固定化タンパク質の熱殺菌を可能にするなどの利用面で優れた特性を付加することができる(非特許文献4を参照)。
このように、本発明者らが開発したシアノシステインを介した結合反応を利用した固定化技術は優れた特性を有するが、用いるタンパク質によっては固定化に供するタンパク質を製造することが困難な場合や、タンパク質の特性に応じて個別の対応を取る必要があること、また、固定化に供される不溶性の固定化担体において1級アミンを官能基として多量に含むことが必要であり、固定化反応後に固定化担体上に残存する未反応の1級アミンの反応性等に起因するイオン相互作用等を取り除く技術を開発することなどが、解消すべき問題として残されていた。
特許第2517861号公報 特許第3788828号公報 特許第2990271号公報 特許第3047020号公報 特開2003-344396号公報 M. Iwakura et al.(1993) J. Biochem. 114, 339-343 S. J. Vigmond et al.(1994) Langumur, 10, 2860-2862 M. Iwakura et al. (1995) J. Biochem. 117, 480-488 M. Iwakura et al. (2001) Protein engineer., 14, 583-589
本発明は、固定化しようとする特定のタンパク質のアミノ酸配列を含むタンパク質のアミノ酸配列を、シアノシステインを介した配向制御固定化に供するために最適化するための条件を明らかにし、規定することを目的とする。
本発明者らは、タンパク質の固定化における上記の解消すべき問題点を解決すべく鋭意検討を行なった。本発明者らは、固定化しようとする固定化対象タンパク質のアミノ酸配列を含む固定化用タンパク質のアミノ酸配列を、シアノシステインを介した配向制御固定化に適した配列とするために鋭意研究を行い、配列を固定化対象タンパク質のアミノ酸配列からなる部分を含む5つの部分からなる配列、すなわちR1-R2-R3-R4-R5で表わされる配列として設計し、それぞれの部分に特徴を持たせることにより、上記の問題を解決できることを見出した。また、本発明者らは、固定化用タンパク質に対応する遺伝子を作製し、宿主細胞で発現させた後の分離精製操作をも共通化できること、及び固定化反応条件も共通化できることを明らかにした。さらに、本発明者らは上記R1-R2-R3-R4-R5で表わされる配列中、R1をP-Qで表わされる2つの部分からなる配列とし、P部分の配列を、(Ser又はAla)-(Gly)nよりなる配列(nは1から10までの任意の整数)とし、Q部分の配列を、繰り返し単位を有するタンパク質の配列であり、リジン残基及びシステイン残基を含まない配列単位が繰り返された配列とすることにより、繰り返し配列部分がそれぞれ発揮する結合能などの機能を一つのポリペプチド鎖に複数持たせることができ、その結果、当該機能の増強につながることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の態様は以下のとおりである。
[1] 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列
[式中、配列は、アミノ末端側からカルボキシ末端側に向かう配列を示し、
R1部分の配列は、固定化対象タンパク質の配列であり、リジン残基及びシステイン残基を含まないことを特徴とする配列であり;
R2部分の配列は存在しなくてもよく、存在する場合はリジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成されるスペーサー配列であり;
R3部分の配列はシステイン−X(Xは、リジン及びシステイン以外のアミノ酸残基)で表される2残基のアミノ酸で構成される配列であり;
R4部分の配列は存在しなくてもよく、存在する場合はリジン残基及びシステイン残基を含まない配列であり、一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質全体の等電点を酸性側にし得る酸性アミノ酸残基を含むことを特徴とする配列であり;そしてR5部分の配列はタンパク質を精製するためのアフィニティータグ配列である]
からなるタンパク質であって、R1-R2で表される部分を固定化担体に固定化するために用いるタンパク質。
[2] 一般式 R1-R2-R3-R4-R5のアミノ酸配列において、R1部分の配列が、天然由来のタンパク質のアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列中のすべてのリジン残基及びシステイン残基を、リジン残基及びシステイン残基以外のアミノ酸残基に置換することにより得られる、リジン残基及びシステイン残基を含まないアミノ酸配列に改変されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、前記天然由来のタンパク質と同等の機能を有するタンパク質のアミノ酸配列であることを特徴とする、[1]の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
[3] 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R2部分の配列が、0〜10個のグリシンからなる配列であることを特徴とする、[1]の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
[4] 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R4部分の配列が、アスパラギン酸とグルタミン酸の2種類のアミノ酸残基からなるアミノ酸残基数0〜10個の配列であることを特徴とする、[1]の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
[5] 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R5部分の配列が、4個以上のヒスチジン残基からなるアミノ酸配列であることを特徴とする、[1]の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
[6] 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R1部分の配列が抗体分子と特異的に相互作用する機能を有することを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかのタンパク質。
[7] 下記のアミノ酸配列(配列番号1)からなる[1]のタンパク質。
Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln
Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe
Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly-Gly-Gly
Gly-Gly-Cys-Ala-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp
His-His-His-His-His-His
[8] 下記の配列(配列番号2)からなる[1]のタンパク質。
Ala-Tyr-Arg-Leu-Ile-Leu-Asn-Gly-Arg-Thr
Leu-Arg-Gly-Glu-Thr-Thr-Thr-Glu-Ala-Val
Asp-Ala-Ala-Thr-Ala-Glu-Arg-Val-Phe-Arg
Gln-Tyr-Ala-Asn-Asp-Asn-Gly-Val-Asp-Gly
Glu-Trp-Thr-Tyr-Asp-Asp-Ala-Thr-Arg-Thr
Phe-Thr-Val-Thr-Glu-Arg-Pro-Glu-Val-Ile
Asp-Ala-Ser-Glu-Leu-Thr-Pro-Ala-Val-Thr
Gly-Gly-Gly-Gly-Cys-Ala-Asp-Asp-Asp-Asp
Asp-Asp-His-His-His-His-His-His
[9] 下記の配列(配列番号3)からなる[1]のタンパク質。
Ala-Thr-Ile-Arg-Ala-Asn-Leu-Ile-Tyr-Ala
Asp-Gly-Arg-Thr-Gln-Thr-Ala-Glu-Phe-Arg
Gly-Thr-Phe-Glu-Glu-Ala-Thr-Ala-Glu-Ala
Tyr-Arg-Tyr-Ala-Asp-Leu-Leu-Ala-Arg-Glu
Asn-Gly-Arg-Tyr-Thr-Val-Asp-Val-Ala-Asp
Arg-Gly-Tyr-Thr-Leu-Asn-Ile-Arg-Phe-Ala
Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Cys-Ala-Asp-Asp-Asp
Asp-Asp-Asp-His-His-His-His-His-His
[10] [1]〜[9]のいずれかの一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質が静電相互作用により吸着している固定化担体。
[11] [1]〜[9]のいずれかのタンパク質中に存在する唯一のシステイン残基のスルフフィドリル基をチオシアノ基に変換し、1級アミンを官能基として有する固定化担体に作用させることにより、前記タンパク質中のシステイン残基よりアミノ末端側に存在するアミノ酸配列部分をアミド結合により前記固定化担体に結合させることを特徴とする固定化タンパク質の作製方法。
[12] [1]〜[9]のいずれかのタンパク質中に存在する唯一のシステイン残基のスルフフィドリル基をチオシアノ基に変換し、1級アミンを官能基として有する任意の固定化担体に作用させることにより、前記タンパク質中のシステイン残基よりアミノ末端側に存在するアミノ酸配列部分をアミド結合により結合したことを特徴とするタンパク質固定化担体。
[13] 下記の配列(配列番号4)からなるタンパク質のカルボキシ末端が、1級アミンを官能基として有する固定化担体にアミド結合で結合していることを特徴とする、[12]のタンパク質を固定化した固定化担体。
Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln-
Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro-
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe-
Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln-
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg-
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly-Gly-Gly-
Gly-Gly
[14] 下記の配列(配列番号5)からなるタンパク質のカルボキシ末端が、1級アミンを官能基として有する固定化担体にアミド結合で結合していることを特徴とする、[12]のタンパク質を固定化した固定化担体。
Ala-Tyr-Arg-Leu-Ile-Leu-Asn-Gly-Arg-Thr-
Leu-Arg-Gly-Glu-Thr-Thr-Thr-Glu-Ala-Val-
Asp-Ala-Ala-Thr-Ala-Glu-Arg-Val-Phe-Arg-
Gln-Tyr-Ala-Asn-Asp-Asn-Gly-Val-Asp-Gly-
Glu-Trp-Thr-Tyr-Asp-Asp-Ala-Thr-Arg-Thr-
Phe-Thr-Val-Thr-Glu-Arg-Pro-Glu-Val-Ile-
Asp-Ala-Ser-Glu-Leu-Thr-Pro-Ala-Val-Thr-
Gly-Gly-Gly-Gly
[15] 下記の配列(配列番号6)で示されるタンパク質のカルボキシ末端が、1級アミンを官能基として有する固定化担体にアミド結合で結合していることを特徴とする、[12]のタンパク質を固定化した固定化担体。
Ala-Thr-Ile-Arg-Ala-Asn-Leu-Ile-Tyr-Ala-
Asp-Gly-Arg-Thr-Gln-Thr-Ala-Glu-Phe-Arg-
Gly-Thr-Phe-Glu-Glu-Ala-Thr-Ala-Glu-Ala-
Tyr-Arg-Tyr-Ala-Asp-Leu-Leu-Ala-Arg-Glu-
Asn-Gly-Arg-Tyr-Thr-Val-Asp-Val-Ala-Asp-
Arg-Gly-Tyr-Thr-Leu-Asn-Ile-Arg-Phe-Ala-
Gly-Gly-Gly-Gly-Gly
[16] 固定化担体にR1-R2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を固定化するために用いる一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を設計する方法であって、R1、R2、R3、R4及びR5部分のアミノ酸配列を以下の条件に適合するように選択することを含む方法:
(a) R1部分の配列として、固定化対象タンパク質の配列であり、リジン残基及びシステイン残基を含まないことを特徴とする配列を選択し;
(b) R2部分の配列を存在させないか、または存在させ場合はリジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成されるスペーサー配列を選択し;
(c) R3部分の配列として、システイン−X(Xは、リジンもしくはシステイン以外のアミノ酸残基)で表される2残基のアミノ酸で構成される配列を選択し;
(d) R4部分の配列を存在させないか、または存在させる場合はリジン残基及びシステイン残基を含まない配列であり、一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質全体の等電点を酸性側にし得る酸性アミノ酸残基を含むことを特徴とする配列を選択し;そして
(e) R5部分の配列としてタンパク質を精製するためのアフィニティータグ配列を選択する。
[17] R1部分の配列がP-Qで表わされ、
P部分の配列は、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は(Ser又はAla)-(Gly)nよりなる配列(nは1から10までの任意の整数)であり、Q部分の配列は、繰り返し単位を有するタンパク質の配列であり、リジン残基及びシステイン残基を含まない配列単位が繰り返された配列であることを特徴とする配列である、[1]の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、R1-R2で表される部分を固定化担体に固定化するために用いるタンパク質。
[18] P-Qで表わされるアミノ酸配列において、Q部分の繰り返し単位の配列が天然由来のタンパク質のアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列中のすべてのリジン残基及びシステイン残基を、リジン残基及びシステイン残基以外のアミノ酸残基に置換することにより得られる、リジン残基及びシステイン残基を含まないアミノ酸配列に改変されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、前記天然由来のタンパク質と同等の機能を有するタンパク質のアミノ酸配列であることを特徴とする、[17]の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
[19] 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R2部分の配列が、0〜10個のグリシンからなる配列であることを特徴とする、[17]の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
[20] 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R4部分の配列が、アスパラギン酸とグルタミン酸の2種類のアミノ酸残基からなるアミノ酸残基数0〜10個の配列であることを特徴とする、[17]の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
[21] 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R5部分の配列が、4個以上のヒスチジン残基からなるアミノ酸配列であることを特徴とする、[17]の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
[22] P-Qで表わされるアミノ酸配列において、Q部分の繰り返し単位の配列が抗体分子と特異的に相互作用する機能を有することを特徴とする、[17]〜[21]のいずれかのタンパク質。
[23] 一般式R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R1部分の配列がP-Qで表わされ、
P = Ser-Gly-Gly-Gly-Gly
Q =(Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln-
Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro-
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe-
Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln-
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg-
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly)n (nは、2から5までの任意の整数)
R2 = Gly-Gly-Gly-Gly
R3 = Cys-Ala
R4 = Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp
R5 = His-His-His-His-His-His
であることを特徴とする、[17]〜[22]のいずれかのタンパク質。
[24] 一般式R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R1部分の配列がP-Qで表わされ、
P = 存在しない
Q =(Ala-Tyr-Arg-Leu-Ile-Leu-Asn-Gly-Arg-Thr-
Leu-Arg-Gly-Glu-Thr-Thr-Thr-Glu-Ala-Val-
Asp-Ala-Ala-Thr-Ala-Glu-Arg-Val-Phe-Arg-
Gln-Tyr-Ala-Asn-Asp-Asn-Gly-Val-Asp-Gly-
Glu-Trp-Thr-Tyr-Asp-Asp-Ala-Thr-Arg-Thr-
Phe-Thr-Val-Thr-Glu-Arg-Pro-Glu-Val-Ile-
Asp-Ala-Ser-Glu-Leu-Thr-Pro-Ala-Val-Thr-Pro-Gly)n (nは、2から5までの任意の整数)
R2 = Gly-Gly-Gly-Gly
R3 = Cys-Ala
R4 = Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp
R5 = His-His-His-His-His-His
であることを特徴とする、[17]〜[22]のいずれかのタンパク質。
[25] 一般式R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R1部分の配列がP-Qで表わされ、
P = 存在しない
Q =(Ala-Thr-Ile-Arg-Ala-Asn-Leu-Ile-Tyr-Ala
Asp-Gly-Arg-Thr-Gln-Thr-Ala-Glu-Phe-Arg
Gly-Thr-Phe-Glu-Glu-Ala-Thr-Ala-Glu-Ala
Tyr-Arg-Tyr-Ala-Asp-Leu-Leu-Ala-Arg-Glu
Asn-Gly-Arg-Tyr-Thr-Val-Asp-Val-Ala-Asp
Arg-Gly-Tyr-Thr-Leu-Asn-Ile-Arg-Phe-Ala
Pro-Gly-)n (nは、2から5までの任意の整数)
R2 = Gly-Gly-Gly-Gly
R3 = Cys-Ala
R4 = Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp
R5 = His-His-His-His-His-His
であることを特徴とする、[17]〜[22]のいずれかのタンパク質。
[26] [17]〜[22]のいずれかの一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質が静電相互作用により吸着している固定化担体。
[27] [17]〜[22]のいずれかのタンパク質中に存在する唯一のシステイン残基のスルフフィドリル基をチオシアノ基に変換し、1級アミンを官能基として有する固定化担体に作用させることにより、前記タンパク質中のシステイン残基よりアミノ末端側に存在するアミノ酸配列部分をアミド結合により前記固定化担体に結合させることを特徴とする固定化タンパク質の作製方法。
[28] [17]〜[22]のいずれかのタンパク質中に存在する唯一のシステイン残基のスルフフィドリル基をチオシアノ基に変換し、1級アミンを官能基として有する任意の固定化担体に作用させることにより、前記タンパク質中のシステイン残基よりアミノ末端側に存在するアミノ酸配列部分をアミド結合により結合したことを特徴とするタンパク質を固定化した固定化担体。
なお、天然由来のタンパク質はシステイン及びリジンを含む20種のアミノ酸残基より構成されているため、構成するアミノ酸残基として、システイン及びリジンを全く含まない配列が生物学的機能、例えば、タンパク質-タンパク質間特異的認識・結合機能、タンパク質―核酸特異的認識・結合機能、触媒機能等、を保持するか否かに関しては不明であった。本発明は、システイン及びリジンを含まないように改変したタンパク質が基の天然のタンパク質が有する機能と同等の機能を有しえることを明らかにした。
本発明に従い一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列を設計し、該アミノ酸配列からなるタンパク質を作製し、固定化に用いることにより、配向制御された固定化タンパク質を効率的且つ迅速に作製できる。R1、R2、R3、R4及びR5を各部分の条件を満たすように選択することにより、あらゆるタンパク質を配向制御させて固定化することが可能である。また、設計・作製したタンパク質の精製に利用するR5として共通の配列を利用することにより、固定化対象タンパク質であるR1の配列にかかわらず、共通の手法で固定化用タンパク質を精製することができ、また固定化の際の反応条件をも共通化することができる。
さらに、上記R1-R2-R3-R4-R5で表わされる配列中、R1をP-Qで表わされる2つの部分からなる配列とし、P部分は存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、その配列を、(Ser又はAla)-(Gly)nよりなる配列(nは1から10までの任意の整数)とし、Q部分の配列を、繰り返し単位を有するタンパク質の配列である。リジン残基及びシステイン残基を含まない配列単位が繰り返された配列とすることにより、一本のポリペプチド鎖に当該配列が発揮する機能が複数発揮できることになり、当該機能の増強効果が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のタンパク質の配向制御固定化に適した、固定化しようとする固定化対象タンパク質のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなる固定化用タンパク質とは、一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質で表現されるタンパク質のことである。該式中、配列は、アミノ末端側からカルボキシ末端側に向かうアミノ酸配列を示し、R1部分の配列は、固定化対象となる任意のタンパク質のアミノ酸配列であり、且つ、この配列中には、リジン残基及びシステイン残基を全く含まないことを特徴とする配列である。R2部分の配列は、リジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成される任意のスペーサー配列である。R2部分は存在しなくてもよい。R3部分の配列は、システイン−X(Xは、リジン及びシステイン以外のアミノ酸残基)で表される2残基のアミノ酸で構成される配列である。R4部分の配列は、リジン残基及びシステイン残基を全く含まない任意の配列で且つR1-R2-R3-R4-R5の配列全体の等電点を酸性側にし得る酸性アミノ酸残基を含むことを特徴とする配列である。R4部分は存在しなくてもよい。R5部分の配列は、特定の化合物と結合し得る任意のアフィニティータグ配列であり、例えばヒスチジン残基を4個以上含むことを特徴とする配列である。
本発明の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質において、R1部分の配列は、固定化しようとする固定化対象タンパク質のアミノ酸配列であり、且つ、この配列中には、リジン残基及びシステイン残基を全く含まないことを特徴とする配列である。R1部分のアミノ酸の数は限定されず、目的に応じていかなる数のアミノ酸からなるアミノ酸配列をも選択することができる。R1部分の配列は、前記固定化対象タンパク質のアミノ酸配列の部分アミノ酸配列であって、該アミノ酸配列からなるタンパク質断片が前記タンパク質と同等の機能・活性を有する部分アミノ酸配列であってもよい。この場合、R1は例えば、固定化対象タンパク質の機能を有する機能性ドメインのアミノ酸配列である。
本発明の場合、R1部分が目的とする機能を担っている。また、固定化反応のためにR3部分のみにシステイン残基を必要とすること、また、担体に官能基として一級アミンを用いることから、システイン残基及び一級アミン基を側鎖に有するリジン残基はR1部分を構成するアミノ酸残基としては不適切である。
さらに、上記R1-R2-R3-R4-R5で表わされる配列中、R1をP-Qで表わされる2つの部分からなる配列とすることができる。この場合、P部分の配列は、(Ser又はAla)-(Gly)nで表わされる配列(nは1から10までの任意の整数)であり、Q部分の配列は、繰り返し単位を有するタンパク質の配列であり、リジン残基及びシステイン残基を含まない配列単位が繰り返された配列である。繰り返し数は限定されないが、好ましくは2〜5である。
天然由来のタンパク質は、通常リジン残基及びシステイン残基を含む20種のアミノ酸残基から構成されている。目的とする機能を担うR1部分が、リジン残基又はシステイン残基を含む場合、元の天然タンパク質の有する機能を保有したまま、リジン残基及びシステイン残基をリジン及びシステイン以外の18種のアミノ酸のいずれかに、置換する必要がある。
既に、本発明者らは、システイン及びメチオニンを全く含まないタンパク質を作製する方法を確立している(特許再公表01/000797号公報、M.Iwakura et al. J.Biol.Chem. 281, 13234-13246(2006)、特開2005-058059号公報)。これらの方法と同様の方法により、天然由来のタンパク質のアミノ酸配列を基に、アミノ酸配列を転換し、システイン及びリジン残基を含まない18種のアミノ酸より構成されるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、天然タンパク質と同等の機能を発揮するタンパク質を作製することができる。この方法の概要は以下のとおりである。
1.天然配列中におけるすべてのシステイン残基部分及びリジン残基部分について、それぞれ、網羅的に1アミノ酸置換を行い、その機能を調べる。
2.各々の残基部分における1アミノ酸置換変異体の機能をよいものから並べ上位3個の変異、ただし、システイン又はリジンに置換した変異は除く、を用い、その組み合わせ変異を行い、その中から上位3個の組み合わせ変異体を選び、他の部位の1アミノ酸置換変異における上位3個の変異、ただし、システイン又はリジンに置換した変異は除く、との組み合わせ変異を行う。
3.この操作を、すべてのシステイン残基部分及びリジン残基部分が他のアミノ酸に置換されるまで繰り返す。
さらに具体的には以下のようにして行なう。
全長m個のアミノ酸よりなる天然のタンパク質においてリジン及びシステイン残基がn個あるとする。その各々のアミノ酸配列上の位置を、Ai(i=1〜n)とする。
得られる変異を、A1/MA1と表す。
その他の部位のAi(i=2〜n)のリジン及びシステイン残基に関して、リジン及びシステイン残基をコードするコドンを前記「リジン及びシステイン以外の他のアミノ酸」(最大18種類)をコードするコドンで置換した変異遺伝子を作成し、これを発現して得られた2重変異体酵素タンパク質の酵素活性を調べる。
2重変異体の活性を調べると、天然のタンパク質と同等又はそれ以上の活性を示す変異体が見いだされる。2重変異のうち活性の高いものから最大3個の2重変異体を選ぶ。
次に、得られた2重変異体のそれぞれのA3のリジン及びシステイン残基をリジン及びシステイン残基以外の他のアミノ酸(最大18種)に置換した3重変異体をそれぞれ作製し(最大、3×18=54種)、その酵素活性を調べる。
3重変異体の活性を調べると、天然のタンパク質と同等又はそれ以上の活性を示す変異体が見出される。
以下同様に、4重、・・、n重変異体を作製する。最後のn重変異体が、目的のリジン及びシステイン残基を含まないタンパク質である。
この操作により、少なくとも元の天然のタンパク質が有する機能と同等の機能を有するタンパク質が得られる。「元の天然のタンパク質が有する機能と同等の機能」とは、配列を改変したタンパク質の活性が元の天然のタンパク質と質的に変わらず、さらに量的にも大きく低下していないことをいう。例えば、元の天然のタンパク質が特定の反応を触媒する酵素ならば、配列を改変したタンパク質も同じ反応を触媒する酵素活性を有しており、あるいは元の天然のタンパク質が特定の抗原に結合する抗体ならば、配列を改変したタンパク質も同じ抗原に結合し得る抗体としての活性を有していることをいう。アミノ酸配列を改変したタンパク質の活性は、元の天然タンパク質の活性の10%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは100%以上である。活性は、例えば酵素の場合は、比活性で表され、また抗体等の他の物質への結合能を有するタンパク質の場合は、結合能で表される。これらの、活性の測定方法は、タンパク質に応じて適宜選択することができる。
後記の実施例に示すように、抗体分子に対して結合機能を有する別々の天然タンパク質の部分配列を基に、システイン及びリジン残基を全く含まない配列に転換したところ、該転換部分配列は、天然タンパク質由来の前記部分配列が有する機能と同等の機能を有することが示された。このことは、特定の機能を有する天然タンパク質のアミノ酸配列を基にシステイン及びリジン残基を含まない18種のアミノ酸より構成されるように改変したアミノ酸配列からなるタンパク質であって、天然に存在するタンパク質が示す機能と同等の機能を有するタンパク質が存在することを示すものであり、本発明があらゆるタンパク質に応用できるという本発明の一般性を示している。また、タンパク質をアミノ酸配列から人工的にデザインし、合成していく手法であるデノボデザイン等により、目的機能を有するタンパク質を作製できることが予測される。デノボデザイン手法をシステイン及びリジン残基を含まない18種のアミノ酸だけを利用するように限定することなどにより、機能性タンパク質を作製し得ることを示している。さらに、天然由来のタンパク質のアミノ酸配列の改変だけでなく、本発明のR1部分として利用し得る特定の機能を有する機能性タンパク質を新たに設計・作製できる可能性をも示唆している。
R1部分のタンパク質の一例として、酵素活性を有するタンパク質や抗体分子に結合能を有するタンパク質が挙げられる。抗体分子に結合能を有するタンパク質としては、Staphylococcus aureus由来のプロテインA(A. Forsgren and J. Sjoquist, J. Immunol. (1966) 97, 822-827.に記載)、Streptococus sp. Group C/G由来のプロテインG (欧州特許出願公開第1173239774906_0号明細書(1983)に記載)、Peptostreptococcus magnus由来のプロテインL(米国特許第5965390号明細書(1992)に記載)、group A Streptococcus由来のプロテインH(米国特許第5180810号明細書(1993)に記載)、Haemophilus influenzae由来のプロテインD(米国特許第6025484号明細書(1990)に記載)、Streptococcus AP4由来のプロテインArp (Protein Arp 4)(米国特許第5210183号明細書(1987)に記載)、group C Streptococcus 由来のStreptococcal FcRc(米国特許第4900660号明細書(1985)に記載)、group A streptococcus, Type II strain 由来のタンパク質(米国特許第5556944号明細書(1991)に記載)、Human Colonic Mucosal Epithelial Cell由来のタンパク質(米国特許第6271362号明細書(1994)に記載)、Staphylococcus aureu , strain 8325-4由来のタンパク質(米国特許第6548639号明細書(1997)に記載)、Pseudomonas maltophilia由来のタンパク質(米国特許第5245016号明細書(1991)に記載)等が知られている。
後記の実施例1に示す配列は、以下に示す、スタフィロコッカス由来のプロテインAのAドメイン由来の配列 (配列番号7)、
Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Lys-Glu-Gln-Gln-
Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro-
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe-
Ile-Gln-Ser-Leu-Lys-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln-
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-lys-lys-
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Lys
である(もともとシステイン残基を含まない)。これを改変することにより、システイン残基及びリジン残基を含まず、且つ、天然由来の上記アミノ酸配列からなるタンパク質が有するイムノグロブリンG(IgG)結合活性と同等のIgG結合活性を有するタンパク質が得られることが示された。
後記の実施例2に示す配列は、以下に示す、ストレプトコッカス由来のプロテインGのG1ドメイン由来の配列 (配列番号8)、
Thr-Tyr-Lys-Leu-Ile-Leu-Asn-Gly-Lys-Thr-
Leu-Lys-Gly-Glu-Thr-Thr-Thr-Glu-Ala-Val-
Asp-Ala-Ala-Thr-Ala-Glu-Lys-Val-Phe-Lys-
Gln-Tyr-Ala-Asn-Asp-Asn-Gly-Val-Asp-Gly-
Glu-Trp-Thr-Tyr-Asp-Asp-Ala-Thr-Lys-Thr-
Phe-Thr-Val-Thr-Glu-Arg-Pro-Glu-Val-Ile-
Asp-Ala-Ser-Glu-Leu-Thr-Pro-Ala-Val-Thr
である(もともとシステイン残基を含まない)。これを改変することにより、システイン残基及びリジン残基を含まず、且つ、天然由来の上記アミノ酸配列からなるタンパク質が有するIgG結合活性と同等のIgG結合活性を有するタンパク質が得られることが示された。
後記の実施例3に示す配列は、以下に示す、Peptostreptococcus由来のプロテインLのB1ドメイン由来の配列 (配列番号9)、
Val-Thr-Ile-Lys-Ala-Asn-Leu-Ile-Tyr-Ala-
Asp-Gly-Lys-Thr-Gln-Thr-Ala-Glu-Phe-Lys-
Gly-Thr-Phe-Glu-Glu-Ala-Thr-Ala-Glu-Ala-
Tyr-Arg-Tyr-Ala-Asp-Leu-Leu-Ala-Lys-Glu-
Asn-Gly-Lys-Tyr-Thr-Val-Asp-Val-Ala-Asp-
Lys-Gly-Tyr-Thr-Leu-Asn-Ile-Lys-Phe-Ala-
である(もともとシステイン残基を含まない)。これを改変することにより、システイン残基及びリジン残基を含まず、且つ、天然由来の上記アミノ酸配列からなるタンパク質が有するIgG結合活性と同等のIgG結合活性を有するタンパク質が得られることが示された。
なお、天然タンパク質のアミノ酸配列を変異させる方法として、通常は、ランダム突然変異法が多くの場合使用され、また、機能の選択としてファージディスプレイ法が多く使用される。しかしながら、そのような方法を用いる限り、システイン及びリジン残基を含まないアミノ酸配列からなるタンパク質であって、天然タンパク質の有する機能を有している改変タンパク質を得る可能性は著しく低く、本発明のR1部分に相当する配列を得ることはできない。本発明のR1部分に相当する配列は、本発明者らが開発した上記の方法により可能になる。
さらに、R1部分の配列をP-Qで表わされる2つの部分からなる配列とした場合、P部分の配列は、(Ser又はAla)-(Gly)nで表わされる配列(nは1から10までの任意の整数)で示され、例えばSer-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号23)が挙げられる。また、Q部分の配列は、繰り返し単位を有するタンパク質の配列であり、リジン残基及びシステイン残基を含まない配列単位が繰り返された配列であり、例えば以下に記載する配列が挙げられる。
後記の実施例5は、以下に示す、スタフィロコッカス由来のプロテインAのAドメイン由来の配列を改変し、リジン残基及びシステイン残基を含まないようにした配列を配列単位として繰り返し配列をQ部分の配列として有するタンパク質である。
(Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln-
Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro-
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe-
Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln-
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg-
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly)n (nは、2から5までの任意の整数、かっこ内の配列は配列番号24)
繰り返し配列とすることで、繰り返しを持たないタンパク質が発揮するIgG結合活性よりはるかに優れたIgG結合活性が示された。
後記の実施例6は、以下に示す、ストレプトコッカス由来のプロテインGのG1ドメイン由来の配列を改変し、リジン残基及びシステイン残基を含まないようにした配列を配列単位として繰り返し配列をQ部分の配列として有するタンパク質である。
(Ala-Tyr-Arg-Leu-Ile-Leu-Asn-Gly-Arg-Thr-
Leu-Arg-Gly-Glu-Thr-Thr-Thr-Glu-Ala-Val-
Asp-Ala-Ala-Thr-Ala-Glu-Arg-Val-Phe-Arg-
Gln-Tyr-Ala-Asn-Asp-Asn-Gly-Val-Asp-Gly-
Glu-Trp-Thr-Tyr-Asp-Asp-Ala-Thr-Arg-Thr-
Phe-Thr-Val-Thr-Glu-Arg-Pro-Glu-Val-Ile-
Asp-Ala-Ser-Glu-Leu-Thr-Pro-Ala-Val-Thr-Pro-Gly)n (nは、2から5までの任意の整数、かっこ内の配列は配列番号25)
繰り返し配列とすることで、繰り返しを持たないタンパク質が発揮するIgG結合活性よりはるかに優れたIgG結合活性が示された。
後記の実施例7は、以下に示す、Peptostreptococcus由来のプロテインLのB1ドメイン由来の配列を改変し、リジン残基及びシステイン残基を含まないようにした配列を配列単位として繰り返し配列をQ部分の配列として有するタンパク質である。
(Ala-Thr-Ile-Arg-Ala-Asn-Leu-Ile-Tyr-Ala
Asp-Gly-Arg-Thr-Gln-Thr-Ala-Glu-Phe-Arg
Gly-Thr-Phe-Glu-Glu-Ala-Thr-Ala-Glu-Ala
Tyr-Arg-Tyr-Ala-Asp-Leu-Leu-Ala-Arg-Glu
Asn-Gly-Arg-Tyr-Thr-Val-Asp-Val-Ala-Asp
Arg-Gly-Tyr-Thr-Leu-Asn-Ile-Arg-Phe-Ala
Pro-Gly-)n (nは、2から5までの任意の整数、かっこ内の配列は配列番号26)
繰り返し配列とすることで、繰り返しを持たないタンパク質が発揮するIgG結合活性よりはるかに優れたIgG結合活性が示された。
R2部分は、リジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成される任意のスペーサー配列であり、該配列は、固定化担体にR1部分と共に固定化される。R2部分は、リジン残基及びシステイン残基を全く含まないことを特徴とする。一般に、タンパク質を固定化する場合は、固有の機能を有する固定化対象であるタンパク質を固定化する。タンパク質のみを固定化した場合、固定化担体との立体的障害等により固定化タンパク質の機能が阻害される場合がある。本発明の場合、R2部分は固定化に際して固定化担体との結合によりR1部分が有する機能が阻害されないようにする適切なリンカーとしての役割を担っている。リンカーとしての役割は、R1部分の特定の機能を有するタンパク質と固定化担体との間に適切な距離を保つことである。従って、R2部分は一定の長さを有する任意のアミノ酸配列で且つイナートなことが求められる。本発明においては、固定化反応のためにR3部分のみに唯一のシステイン残基を必要とする。また、固定化担体と固定化タンパク質を結合させる官能基として1級アミンを用いる。従って、1級アミン基を側鎖に有するリジン残基はリンカーを構成するアミノ酸残基としては不適切である。従って、R2部分を構成するアミノ酸残基としては、システイン及びリジン残基以外の18種のアミノ酸残基から構成されることが必要である。
なお、R1部分を固定化担体に直接結合しても、R1部分のタンパク質が有する機能が阻害されない場合は、R2部分は存在しなくてもよく、この場合上記一般式はR1-R3-R4-R5で表すこともできる。R2部分のアミノ酸の数は限定されないが、0、すなわち存在しないか、1〜10アミノ酸、好ましくは2〜5アミノ酸である。R2部分の配列として、例えば、0〜10個、又は2〜5個のグリシンからなるポリグリシン等が挙げられる。後記の実施例においては、最も単純なアミノ酸としてのグリシンの連鎖、R2=Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号16)、を用いた例を示すが、本発明はこれには限定されない。
上記の一般式R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、R3配列部分にのみ、唯一のシステイン残基を有するという特徴を有する。従って、この唯一のシステイン残基の側鎖の官能基であるSH基をシアノ化することによりシアノシステイン残基に変化させ、該シアノシステイン残基と固定化担体上の1級アミンとの反応により、上記の一般式R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列のR1-R2で表される部分のみを固定化担体上に配向制御して固定化させることができる。シアノシステインを介した固定化反応において、R4部分の配列、すなわち、配列全体からなるタンパク質の等電点が酸性となる酸性アミノ酸に富む配列、を含ませることにより、一般式R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質全体を負に帯電させることができる。この結果、前記タンパク質は、まず正に帯電している1級アミンを有する固定化担体と静電相互作用により速やかに吸着結合し得る。そして、その後の緩やかな反応であるシアノシステインを介した結合反応を効率よく行わせることができる。タンパク質の固定化担体への結合がこのように進行する結果、高密度固定化も可能になる。なお、R4部分を除いたR1-R2-R3-R5又はR1-R3-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質の等電点が酸性である場合は、R4は存在しなくてもよい。
R3部分の配列としては、システイン-X(Xはリジン及びシステイン以外のアミノ酸)で表される2個のアミノ酸からなるアミノ酸配列が挙げられる。Xは限定されない。ただし、本発明の一般式R1-R2-R3-R4-R5のアミノ酸配列からなるポリペプチドを用いてR1-R2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を固定化する場合、R3部分のシステインがシアノシステイン化される。この際、シアノシステインの次のアミノ酸をアラニンにすることにより、シアノシステイン残基を介したアミド結合形成反応が生じやすいので、Xはアラニンが好ましい。シアノシステイン化を介した結合反応の発見及びその反応の解析に関しては、例えばT. Takenawa, et al. (1998) J. Biochem. 123, 1137-1144やY. Ishihama et al. (1999) Tetrahedron Lett. 40,3415-3418に記載されている。
R4部分としては、一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質全体の等電点を酸性側にし得る酸性アミノ酸残基を含む配列が好適である。ここで、「タンパク質全体の等電点を酸性側にし得る酸性アミノ酸残基を含む配列」とは、酸性アミノ酸の種類及び数がタンパク質全体の等電点を酸性にするだけ含まれている配列をいう。R4部分としては、アスパラギン酸やグルタミン酸を多く含む配列が好適である。タンパク質の等電点は、構成するアミノ酸の種類と数に依存する。例えば、リジンやアルギニンなどの塩基性アミノ酸を多く含む場合は、塩基性アミノ酸の総数を超える数のアスパラギン酸やグルタミン酸が必要である。タンパク質の等電点の計算は、当業者であれば容易に計算により推定できる。好ましくは、上記一般式 R1-R2-R3-R4-R5のアミノ酸配列からなるタンパク質の等電点を4〜5の間の値になるように、アスパラギン酸やグルタミン酸を多く含む配列を設計すればよい。R4部分の配列のアミノ酸の数は限定されないが、0すなわち存在しないか、又は1〜20個、好ましくは1〜10個、あるいは0〜20個、好ましくは0〜10個である。例えば、アスパラギン酸2〜10個からなるポリアスパラギン酸を挙げることができる。
R5部分は、合成した一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を精製するために利用される配列部分である。R5部分の配列として、特定の化合物と結合し得る配列、すなわちアフィニティータグ配列が挙げられる。該タグに特異的な抗体を用いて該タグを含むタンパク質の精製を行なう場合、エピトープタグという場合もある。アフィニティータグ配列として例えば、2〜12個、好ましくは4個以上、さらに好ましくは4〜7個、さらに好ましくは5個若しくは6個のヒスチジンからなるポリヒスチジン配列が挙げられる。この場合、ニッケルをリガンドとしたニッケルキレートカラムクロマトグラフィーを利用することにより上記ポリペプチドを精製することができる。また、ポリヒスチジンに対する抗体をリガンドとして固定化したカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーによっても精製することができる。その他、ヒスチジンを含む配列からなるHATタグ、HNタグ等も用いることができる。以下R5部分のタグとアフィニティークロマトグラフィーに用いるリガンドの例を示すが、これらには限定されず、公知のアフィニティータグ(エピトープタグ)ならばいずれも利用することができる。他のアフィニティータグとして、V5タグ、Xpressタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV-Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09、CruzTag22、CruzTag41、Glu-Gluタグ、Ha.11タグ、KT3タグ等がある。
R5部分のタグ リガンド
グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST) グルタチオン
マルトース結合タンパク質(MBP) アミロース
HQタグ(HQHQHQ;配列番号17) ニッケル
Mycタグ(EQKLISEEDL;配列番号18) 抗Myc抗体
HAタグ(YPYDVPDYA;配列番号19) 抗HA抗体
FLAGタグ(DYKDDDDK;配列番号20) 抗FLAG抗体
一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を用いた固定化反応により、R3-R4-R5の配列部分は切り取られて反応用溶液中に残ることから、固定化反応後に適切な洗浄作業により取り除くことができる。この際、R5部分のアフィニティータグを利用して除去することもできる。従って、R3-R4-R5の配列部分の特性は、固定化されたタンパク質の機能等には全く影響しないものであり、上記条件を満たせはどのような配列でも可能である。
例えば、R3、R4及びR5の組合せの例として、
R3=Cys-Ala,
R4=Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp(配列番号21),
R5=His-His-His-His-His-His(配列番号22)
が挙げられるが、本発明はこれには限定されない。
本発明は、上記のR1、R2、R3、R4及びR5の各部分が満たすべき条件に従って、任意の固定化対象タンパク質を固定化担体に固定化するための、一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を設計、作製する方法をも包含する。
例えば、該設計又は作成方法は、以下の(a)〜(e)の工程を含む。
(a) R1部分の配列として、固定化対象タンパク質の配列であり、リジン残基及びシステイン残基を含まないことを特徴とする配列を選択し;
(b) R2部分の配列を存在させないか、または存在させ場合はリジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成されるスペーサー配列を選択し;
(c) R3部分の配列として、システイン−X(Xは、リジンもしくはシステイン以外のアミノ酸残基)で表される2残基のアミノ酸で構成される配列を選択し;
(d) R4部分の配列を存在させないか、または存在させる場合はリジン残基及びシステイン残基を含まない配列であり、一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質全体の等電点を酸性側にし得る酸性アミノ酸残基を含むことを特徴とする配列を選択し;そして
(e) R5部分の配列としてタンパク質を精製するためのアフィニティータグ配列を選択する。
さらに、R1部分がP-Qで表わされる場合は、P部分の配列を、存在させないか、または存在させる場合は(Ser又はAla)-(Gly)nよりなる配列(nは1から10までの任意の整数)を選択し、Q部分の配列として、繰り返し単位を有するタンパク質の配列であり、リジン残基及びシステイン残基を含まない配列単位が繰り返された配列とすればよい。
一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、そのアミノ酸配列に基づいて、化学合成することができる。また、一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA配列を化学合成などにより作製することができる。また、その一部は天然由来の遺伝子からPCR法を用いて増幅分離し、組み換えることなどにより作製することができる。このようにして作製される一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列をコードするDNA配列の上流に転写開始に必要な配列及び翻訳開始に必要な配列を連結し、さらに下流にストップコドンを連結したDNA配列を作製し、これを適切なベクターDNAに組み込み、宿主に形質導入し、宿主内で発現させることにより、一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなる目的のタンパク質を作製することができる。
このようにして作製された上記一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、上記のようにR5部分の配列を利用することにより、発現宿主の無細胞抽出液から分離精製することができる。この際、R5部分の配列として、R1部分の配列に関らず同じ配列、例えばポリヒスチジン配列を利用することにより、上記、一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなる任意のタンパク質に対して共通した精製分離方法を適用できる。
本発明は、一般式 R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、R2部分のN末端側に固定化しようとする固定化対象タンパク質のアミノ酸配列R1を連結させることにより、一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を作製することができるタンパク質をも含む。さらに、本発明は、一般式 R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列をコードするDNAであって、該DNAの5'末端側に固定化しようとする固定化対象タンパク質(アミノ酸配列R1)をコードするDNAの塩基配列を連結させることにより、一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列をコードするDNAを作製することができる塩基配列からなるDNAをも含む。これらの一般式 R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、及び一般式 R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列をコードするDNAは、固定化しようとする任意の固定化対象タンパク質を連結した一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を作製するための汎用の固定化用タンパク質作製のためのアミノ酸配列又は塩基配列として利用することができる。この場合、R5部分は共通なので、R1部分の配列にかかわらず、固定化用タンパク質を同じ手法で精製することができる。
本発明の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなる固定化用タンパク質を用いた、固定化対象タンパク質の担体への固定化は特許第3788828号公報、特許第2990271号公報、特許第3047020号公報及び特開2003-344396号公報等に記載の方法に従って行なうことができる。具体的には、本発明の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質のR3部分のシステイン残基をシアノ化によりシアノシステインとし、シアノシステインを有するタンパク質を一般式「NH2-Y」(Yは任意の固定化担体を表す)で示される1級アミノ基を官能基として有する固定化担体と弱アルカリ条件下(pH8〜10)で反応させることにより、R1-R2部分が固定化担体に固定化される。固定化担体にR1-R2部分が結合したものは、R1-R2-CO-NH-Y(式中、Yは上記の意味を有する。)で表され、R2部分のカルボキシ末端一箇所で固定化担体に結合している。なお、前記の固定化用タンパク質がR2部分を含まない場合は、R1-CO-NH-Y(式中、Yは上記の意味を有する。)で表される。シアノ化反応は、シアノ化試薬を用いて行うことができる。シアノ化試薬としては、2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸(2-nitro-5-thiocyanobennzoic acid (NTCB)) (Y.Degani, A.Ptchornik, Biochemistry, 13,1-11 (1974)参照)又は、1−シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロ硼酸(1-cyano-4dimethylaminopyridinium tetrafluoroborate(CDAP))等を用いることができる。
また、特開2003-344396号公報に記載の方法においては、一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を固定化担体に吸着させた後に、システイン残基をシアノ化し、上記の反応を行なわせ、固定化担体にR1-R2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を固定化担体に固定化する。タンパク質を固定化担体に吸着させるには、中性から弱アルカリ条件下(pH7〜10)で、タンパク質と固定化担体を反応させればよい。弱アルカリ反応条件化において、タンパク質は負に帯電し、一方、固定化担体は正に帯電し、静電相互作用により互いに吸着結合する。本発明は、一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を吸着させた固定化担体をも包含する。本発明の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を用いて、シアノシステインを介した固定化反応により作製される、R1-R2部分を固定化したタンパク質固定化担体においては、固定化担体部分に未反応の一級アミンが多数存在する。固定化されたタンパク質にリジン残基又はシステイン残基が存在する場合、残存の活性アミンが本発明の固定化タンパク質の利用を制限することがあり得る。しかしながら、本発明の方法により固定化されたタンパク質部分は、全くリジン残基及びシステイン残基を含まないことから、タンパク質部分が残存した活性アミンの影響を受けることなく、タンパク質を固定化した担体表面を1級アミンのマスク剤で処理することができる。マスク剤としては、無水酢酸、無水マレイン酸等が好適であるが、どのようなマスク剤であれ利用できる。従って、マスク剤の種類によって本発明は限定されない。
本発明は、さらに、上記方法で得られた、システイン残基及びリジン残基を含まないアミノ酸配列よりなるタンパク質を適当なリンカー配列を介して、1級アミノ基を有する固定化担体とアミド(ペプチド)結合で強固に結合した固定化タンパク質及び固定化タンパク質が固定化された担体を提供する。
本発明に用いられる、1級アミノ基を有する固定化担体としては、1級アミノ基を有する固定化担体であれば何でも用いることができる。本発明で「担体」とは、粒子状の担体、板状やシート状の基板等タンパク質を固定化し得る不溶性のものならば、いずれも含まれる。「固定化担体」は、「固定化基板」を含む。また、「固定化担体」を「不溶化担体」ということもある。1級アミノ基を有する市販の担体としては、アミノ−セルロファイン(生化学工業で販売)、AF-アミノトヨパール(TOSOHで販売)、EAH-セファロース4B及びリジン-セファロース4B(アマシャムバイオサイエンスで販売)、ポラス20NH(ベーリンガーマンハイムで販売)などがある。また、1級アミノ基を有するシラン化合物(例えば、3−アミノプロピルメトキシシランなど)を用いてガラスビーズもしくはガラス平板などに1級アミノ基を導入し、利用することも可能である。
さらに、1級アミノ基を繰り返し単位に有するポリマー化合物を固定化担体に導入することにより、担体単位体積当たりの1級アミノ基の含量を増大させることが可能である(特開2004-345956号公報参照)。
例えば、1級アミノ基を繰り返し単位に有するポリマー化合物を固定化担体に導入した担体としては、ポリアリルアミンをグラフトしたセルロファインが知られている(参考論文:Ung-Jin Kim, Shigenori Kuga, Journal of Chromatography A, 946, 283-289 (2002)参照)。また、CNBr活性化セファロースFF、NHS活性化セファロースFF、化学的に1級アミノ基と反応性を有する担体が知られており、これにポリアリルアミンなどの1級アミノ基を繰り返し単位に有するポリマー化合物を作用させることにより、ポリマー化合物が担体に共有結合により結合した担体を作製できる。その際、1級アミノ基を繰り返し単位に有するポリマー化合物と活性化担体との混合比と適度に調製することにより、作製される担体における、固定化反応に利用できる1級アミノ基の含量を変化させることができる。
一方、ポリマー化合物としては、1級アミノ基を有し、それ以外の部分が、固定化されるタンパク質に実質的に不活性なものであれば用いることができる。市販のポリマー化合物としては、ポリアリルアミン、ポリL−リジン等が利用可能である。従って、固定化担体の種類により、本発明は限定されない。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
以下の実施例においては、下記の実験方法が共通的に用いられている。
[遺伝子合成]
実施例に記載されている遺伝子の合成は、特に記述している場合を除き、合成遺伝子受託製造業者にて合成を行った。示した塩基配列にもとづき、dsDNAを合成しpUC18vectorのBamHI-EcoRI siteへの挿入、取得されたクローンについて片鎖解析による配列を確認、塩基配列情報の照合、ミスマッチが確認された部位についてはSite directed mutagenesis等の手法により変異修正を実施、得られた取得したプラスミドDNA(約1マイクログラム)が納入された。納入されたプラスミド中の目的部分に関しては、再度シーケンシングにより配列確認を行った。
[1アミノ酸置換変異体作製]
アミノ酸置換は、置換部位のアミノ酸をコードするDNA配列を目的のコドン配列に転換して両方に24塩基ずつ元の配列を持つDNAプライマーとその相補DNAプライマーを用いて、クイックチャンジ法(Stratagene社のQuickChang Site-directed Mutagenesis kitに記載されている方法)に従って行った。
[タンパク質精製]
組換えプラスミドを形質転換した大腸菌JM109株を、2リッターの培地(20gの塩化ナトリウム、20gの酵母エキス、32gのトリプトン、100mgのアンピシリンナトリウムを含んでいる)で、35℃で一晩培養した。その後、培養液を20分間低速遠心(毎分5,000回転)することにより、湿重量3〜5gの菌体を得た。これを、20mlの10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、フレンチプレス装置により菌体を破砕した後、20分間高速遠心(毎分20,000回転)することにより、上清を分離した。得られた上清にストレプトマイシン硫酸を最終濃度が2%になるように加え20分間撹拌後、20分間高速遠心(毎分20,000回転)することにより、上清を分離した。この後、硫酸アンモニウム処理を行い、得られた上清をニッケルキレートカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社より購入)にアプライし、洗浄用緩衝液(5mMイミダゾール、20mMリン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.4)を200ml以上用いて、カラムを十分洗浄し、洗浄後、溶出用緩衝液(0.5Mイミダゾール、20mMリン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH7.4)を20mlアプライすることにより、目的のタンパク質を溶出した。その後、このタンパク質溶液からイミダゾールを除去するため、5リッターの10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に対して透析を行った。透析膜にはMWCO3500(Spectrum Laboratories社より購入)を用いた。透析後、遠心真空乾燥機を用いて目的のタンパク質を乾燥させた。
[ヒト抗体IgG分子との結合特性解析]
目的タンパク質の結合特性解析には、表面プラズモン共鳴バイオセンサーであるBiacore(ビアコア社)を用い、ビアコア社の提供するプロトコールに従って解析を行った。
ランニング緩衝液は、10mM HEPES(pH7.4)、150mM塩化ナトリウム、5μM EDTA、0.005%Surfactant P20(ビアコア社)の組成のものを用い、あらかじめ脱気したものを用いた。
センサーチップとしては、SensorChip NTA(ビアコア社)を用いた。センサーチップをランニング緩衝液にて十分平衡化した後、5mM塩化ニッケル溶液を注入することにより、ニッケルイオンの配位を完成させた。その後、センサーチップを、組み換えタンパク質溶液(ランニング緩衝液中、濃度100μg/mL)を注入することにより、組み換えタンパク質の固定化を行った。
固定化組換えタンパク質とヒトIgGとの結合反応は、ランニング緩衝液を用いて0.25〜20μg/mLの範囲で7種類の濃度になるように希釈・調製したヒトIgG(シグマ−アルドリッチ社)溶液を逐次注入し、引き続きランニング緩衝液に切り替えて送液を保持することにより、抗体の結合・解離現象を定量的に観測した。なお、送液流量は20μL/min、結合観測時間(抗体溶液注入時間)は4分間、解離観測時間は4分間とした。各濃度の抗体溶液を注入し、結合・解離現象を観測した後には、引き続き6M塩酸グアニジン溶液を3分間注入し、固定化されている組換えタンパク質に結合しているヒトIgGをすべて解離させ、ランニング緩衝液で再生し、その後の測定に使用した。
観測された表面プラズモン共鳴によるセンサー表面の質量変化の経時変化は、Biacoreにより定義される単位RUにより測定し、結合速度定数(kass)、解離速度定数(kdis)及び解離定数(Kd=kass/kdis)を求めた。
[組換えタンパク質の固定化]
それぞれのタンパク質を、あらかじめ1000倍量の5mMのエチレンジアミン4酢酸(EDTA)を含むpH8.0の10mMリン酸緩衝液に対して3回以上透析を行い、透析済みのタンパク質サンプルを透析に用いたのと同じ緩衝液で希釈することにより、各種濃度のタンパク質サンプルを調製した。
このようにして調製した固定化用タンパク質をアミノセルロファイン(アミン含有量20μmoles NH2/ml)と混合し、2時間以上室温で穏やかに攪拌させた。
吸着したタンパク質のシステインのSH基のシアノ化は、吸着固定化した担体を、5mMのEDTAを含むpH7.0の10mMリン酸緩衝液に懸濁し、最終濃度が5mMになるように2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸(NTCB)を加え、室温で4時間反応させることにより行った。その後、1000回転で数秒間遠心して担体を沈め上澄み液を取り除き、pH7.0の10mMリン酸緩衝液に懸濁する、という操作を5回繰り返すことによりNTCB等を除去した。
シアノ化処理した吸着固定化タンパク質を、1000回転で数秒間遠心して担体を沈め上澄み液を取り除いた後、5mMのEDTAを含むpH9.5の10mM硼酸緩衝液に懸濁し、24時間以上室温で穏やかに攪拌させることにより、固定化反応を行った。その後、1000回転で数秒間遠心して担体を沈め上澄み液を取り除き、1M KClを含むpH8.0の10mMリン酸緩衝液に懸濁する、という操作を5回繰り返すことで、固定化反応の副反応生成物を除去した。
固定化担体上の未反応の1級アミンは、無水酢酸によるアセチル化の処理を行った。固定化されたタンパク質中には、リジン残基が含まれないため、アセチル化の処理により、アミノ末端のアセチル化以外の修飾は起こらない。また、一般にアミノ末端は結合活性にほとんど寄与しないことから、この操作による固定化されたリガンドタンパク質の機能低下は無視できるものと考えられる。
[固定化担体のIgG結合容量の測定]
固定化担体10μlと990μlのヒトIgG(2mg)とをpH7.0の10mMリン酸緩衝液中で混合し、12時間室温で穏やかに攪拌した後、2mlの1M KClを含むpH7.0の10mMリン酸緩衝液で5回洗浄した。280nmの吸光度を測定することにより、最後の洗浄液にタンパク質が含まれないことを確認した。
担体からの、イムノグロブリンGの遊離は、洗浄後遠心分離により集めた固定化担体に、0.1M酢酸溶液1mlを加えることにより行った。溶液中に遊離されたヒトIgGの量を、280nmの吸光度を測定し、その吸光度係数(E280 1%=14.0)を用いて、遊離されたヒトIgG量を測定し、これを用いた担体の量で割ることによりIgG結合容量(mg/ml担体)を求めた。
〔実施例1〕スタフィロコッカス由来のプロテインAのドメインA由来の配列を基にしたシステイン及びリジン残基を含まない配列への転換と固定化用配列への転換
スタフィロコッカス由来のプロテインAのドメインA由来の配列は、配列番号7に示される配列である。
この配列番号7に示されるアミノ酸配列を基に、
Met-Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Lys-Glu-Gln-Gln-
Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro-
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe-
Ile-Gln-Ser-Leu-Lys-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln-
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-lys-lys-
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly-Gly-Gly-
Gly-Gly−Cys-Ala-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-His-
His-His-His-His-His
で示されるアミノ酸配列(配列番号10)をコードする配列に適切な転写開始機能及び翻訳開始機能及びベクターに組み込むための制限酵素配列を含む形で下記のDNA配列(配列番号11)を設計し、合成した。
GGATCCTTGA CAATATCTTA ACTATCTGTT ATAATATATT GACCAGGTTA ACTAACTAAG CAGCAAAAGG AGGAACGACT ATGGCTGATA ACAATTTCAA CAAAGAACAA CAAAATGCTT TCTATGAAAT CTTGAATATG CCTAACTTAA ACGAAGAACA ACGCAATGGT TTCATCCAAA GCTTAAAAGA TGACCCAAGC CAAAGTGCTA ACCTATTGTC AGAAGCTAAA AAGTTAAATG AATCTCAAGC ACCGAAAGGT GGCGGTGGCT GCGCTGATGA CGATGACGAT GACCATCATC ACCACCATCA TTAAGAATTC C
pPAAは、配列番号11に示す配列がpUC18vectorのBamHI-EcoRI siteへ挿入されたものである。
pPAAを形質転換した大腸菌JM109株から、上記記載した方法に従って、タンパク質を分離精製した。その結果、約150mg/2L培養の収量で目的のタンパク質が得られた。得られたタンパク質のアミノ末端配列及び質量数分析を行った結果、アミノ末端がアラニンであり、また得られた精製タンパク質の質量分析器を用いて測定した質量数が8,540ダルトンであったことから、アミノ末端配列として、メチオニン-アラニンなる配列を有する配列の組換えタンパク質を大腸菌で発現した場合に、通常見られる開始コドンに対応するアミノ末端のメチオニン残基のプロセッシングを受けていることが確かめられた。
次に、配列番号7中の各々リジン残基、アミノ末端から7番目、35番目、49番目、50番目、及び58番目に関して、まず、58番目をグリシンに置換した変異体を作製した。アミノ酸置換は、58番目のリジンをコードするDNA配列であるAAAをGTTに転換して両方に24塩基ずつ元の配列を持つDNAプライマーとその相補DNAプライマーを用いて、クイックチャンジ法(Stratagene社のQuickChang Site-directed Mutagenesis kitに記載に記載されている方法)にしたがって、pPAAを鋳型として、変異操作を行い、目的の変異を有するプラスミドを分離した(pPAA-K58Gと名づけた)。
さらに、pPAA-K58Gを鋳型として7番目に対応するアミノ酸置換については、リジン残基をコードするDNAをそれぞれCGTコドンに転換したDNAプライマーとその相補DNAを合成し、それをプライマーとして用いて、それぞれクイックチャンジ法により変異体を作製し、目的の変異を有するプラスミドを作製した(pPAA-RKKKGと名づけた)。これを鋳型として、35番目(pPAA-RRKKGと名付けた)、次いでは49番目(pPAA-RRRKGと名づけた)、さらに50番目(pPAA-RRRRGと名付けた)というようにして、リジン残基をアルギニン残基に転換した変異体を発現するプラスミドを作製した。最終的に得られた組換えプラスミドpPAA-RRRRGは、野生型由来のプロテイン断片配列中のすべてのリジン残基がアルギニンもしくはグリシンに転換された配列(即ち、配列番号1で示される配列)からなる、プロテインA断片変異体の発現プラスミドである。
組換えプラスミドpPAA-RRRRGで形質転換された大腸菌は、配列番号1で示される配列からなるタンパク質を発現する。その組換えタンパク質は、上記の方法と同様にして、大腸菌の培養、菌体破砕、前処理、ニッケルキレートカラムクロマトグラフィーの操作により、均一に精製された。
さらに、組換えプラスミドpPAA-RRRRGを鋳型として、7番目、35番目、49番目、及び58番目に1アミノ酸置換をそれぞれ行い、各種変異体を作製し、そのタンパク質を作製した。
得られた各種タンパク質について、ビアコアを用いて、ヒトIgGとの結合活性を調べた。
結果を、表1に示す。
野生型以外は、すべて、プロテインAのAドメイン由来の配列にシステイン及びリジンを含まない配列である。このように、使用するアミノ酸残基の種類に制限を加えても、ヒトIgGとの結合活性を保有していることが明らかになった。
また、リジン残基の多くをアルギニンに変えた場合、結合特性に大きな変化が認められないことが明らかとなった。
Figure 0005004165
Figure 0005004165
得られたタンパク質を、アミノセルロファイン(生化学工業より購入)を1級アミン担体として用いて固定化した。得られた固定化担体が示すヒトIgG結合容量の測定は、実施例4に示している。
〔実施例2〕ストレプトコッカス由来のプロテインGのG1ドメイン由来の配列を基にしたシステイン及びリジン残基を含まない配列への転換と固定化用配列への転換
ストレプトコッカス由来のプロテインGのG1ドメイン由来の配列は、配列番号8に示される配列である。
上記実施例において、すべてのリジン残基をアルギニン残基に置換しても元の機能を保持されることが示された。従って、この配列番号8に示されるアミノ酸配列を基に、リジン残基をアルギニン残基に置換すると共に、開始コドン、スペーサー配列、固定化反応のためのシステイン-アラニン配列、さらに、ポリアスパラギン酸配列とポリヒスチジン配列を付加した下記の配列
Met-Ala-Tyr-Arg-Leu-Ile-Leu-Asn-Gly-Arg-Thr
Leu-Arg-Gly-Glu-Thr-Thr-Thr-Glu-Ala-Val
Asp-Ala-Ala-Thr-Ala-Glu-Arg-Val-Phe-Arg
Gln-Tyr-Ala-Asn-Asp-Asn-Gly-Val-Asp-Gly
Glu-Trp-Thr-Tyr-Asp-Asp-Ala-Thr-Arg-Thr
Phe-Thr-Val-Thr-Glu-Arg-Pro-Glu-Val-Ile
Asp-Ala-Ser-Glu-Leu-Thr-Pro-Ala-Val-Thr
Gly-Gly-Gly-Gly-Cys-Ala-Asp-Asp-Asp-Asp
Asp-Asp-His-His-His-His-His-His
で示されるアミノ酸配列(配列番号12)を設計した。配列番号12のアミノ酸配列をコードする配列に適切な転写開始機能及び翻訳開始機能及びベクターに組み込むための制限酵素配列を含む形で下記のDNA配列(配列番号13)を設計し、合成した。
GGATCCTTGACAATATCTTAACTATCTGTTATAATATATTGACCAGGTTAACTACTAAGCAGCAAAAGGAGGAACGACTATGGCTTACCGTTTAATCCTTAATGGTCGTACATTGCGTGGCGAAACAACTACTGAAGCTGTTGATGCTGCTACTGCAGAACGTGTCTTCCGTCAATACGCTAACGACAACGGTGTTGACGGTGAATGGACTTACGACGATGCGACTCGTACCTTTACGGTAACTGAACGTCCTGAGGTTATTGATGCTTCGGAGCTGACTCCTGCTGTTACTGGTGGCGGTGGCTGCGCTGATGACGATGACGATGACCATCATCACCACCATCATTAAGAATTC
pPGは、配列番号13に示す配列がpUC18vectorのBamHI-EcoRI siteへ挿入されたものである。
pPGを形質転換した大腸菌JM109株から、上記の方法に従って、タンパク質を分離精製した。その結果、約120mg/2L培養の収量で目的のタンパク質が得られた。得られたタンパク質のアミノ末端配列及び質量数分析を行った結果、アミノ末端がアラニンであり、また得られた精製タンパク質の質量分析器を用いて測定した質量数が9,698ダルトンであったことから、アミノ末端配列として、メチオニン-アラニンなる配列を有する配列の組換えタンパク質を大腸菌で発現した場合に、通常見られる開始コドンに対応するアミノ末端のメチオニン残基のプロセッシングを受けていることが確かめられた。
得られたタンパク質について、ビアコアを用いて、ヒトIgGとの結合活性を調べた。
結果を、表2に示す。この表には、参考のために、プロテインA変異体タンパク質の値を比較のために示している。
表2に示されるように、強いヒトIgG結合活性を示した。
Figure 0005004165
得られたタンパク質を、アミノセルロファイン(生化学工業より購入)を1級アミン担体として用いて固定化した。得られた固定化担体が示すヒトIgG結合容量の測定は、実施例4に示している。
〔実施例3〕Peptostreptococcus由来のプロテインLのB1ドメイン由来の配列を基にしたシステイン及びリジン残基を含まない配列への転換と固定化用配列への転換
Peptostreptococcus由来のプロテインLのB1ドメイン由来の配列は、配列番号9に示される配列である。
上記実施例において、すべてのリジン残基をアルギニン残基に置換しても元の機能を保持されることが示された。従って、この配列番号9に示されるアミノ酸配列を基に、リジン残基をアルギニン残基に置換すると共に、開始コドン、スペーサー配列、固定化反応のためのシステイン-アラニン配列、さらに、ポリアスパラギン酸配列とポリヒスチジン配列を付加した下記の配列
Met-Ala-Thr-Ile-Arg-Ala-Asn-Leu-Ile-Tyr-Ala
Asp-Gly-Arg-Thr-Gln-Thr-Ala-Glu-Phe-Arg
Gly-Thr-Phe-Glu-Glu-Ala-Thr-Ala-Glu-Ala
Tyr-Arg-Tyr-Ala-Asp-Leu-Leu-Ala-Arg-Glu
Asn-Gly-Arg-Tyr-Thr-Val-Asp-Val-Ala-Asp
Arg-Gly-Tyr-Thr-Leu-Asn-Ile-Arg-Phe-Ala
Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Cys-Ala-Asp-Asp-Asp
Asp-Asp-Asp-His-His-His-His-His-His
で示されるアミノ酸配列(配列番号14)を設計した。配列番号12のアミノ酸配列をコードする配列に適切な転写開始機能及び翻訳開始機能及びベクターに組み込むための制限酵素配列を含む形で下記のDNA配列(配列番号15)を設計し、合成した。
GGATCCTTGACAATATCTTAACTATCTGTTATAATATATTGACCAGGTTAACTAACTAAGCAGCAAAAGGAGGAACGACTATGGCTACTATTCGTGCTAATCTGATTTATGCTGATGGTCGTACTCAGACTGCTGAGTTTCGTGGTACTTTTGAGGAGGCTACTGCTGAGGCTTATCGTTATGCTGATCTGCTGGCTCGTGAGAATGGTCGTTATACTGTTGATGTTGCTGATCGTGGTTATACTCTGAATATTCGTTTTGCTGGTGGTGGCGGTGGCTGCGCTGATGACGATGACGATGACCATCATCACCACCATCATTAAGAATTC
pPLは、配列番号15に示す配列がpUC18vectorのBamHI-EcoRI siteへ挿入されたものである。
pPLを形質転換した大腸菌JM109株から、上記の方法に従って、タンパク質を分離精製した。その結果、約100mg/2L培養の収量で目的のタンパク質が得られた。得られたタンパク質のアミノ末端配列及び質量数分析を行った結果、アミノ末端がアラニンであり、また得られた精製タンパク質の質量分析器を用いて測定した質量数が8,782ダルトンであったことから、アミノ末端配列として、メチオニン-アラニンなる配列を有する配列の組換えタンパク質を大腸菌で発現した場合に、通常見られる開始コドンに対応するアミノ末端のメチオニン残基のプロセッシングを受けていることが確かめられた。
得られたタンパク質について、ビアコアを用いて、ヒトIgGとの結合活性を調べた。
結果を、表3に示す。この表には、参考のために、プロテインA変異体タンパク質の値を比較のために示している。
表3に示されるように、強いヒトIgG結合活性を示した。
Figure 0005004165
得られたタンパク質を、アミノセルロファイン(生化学工業より購入)を1級アミン担体として用いて固定化した。得られた固定化担体が示すヒトIgG結合容量の測定は、実施例4に示している。
〔実施例4〕
上記実施例で得られた、配列番号1、2及び3で示されるアミノ酸配列のタンパク質(それぞれ、約6mg)を用いて、シアノシステインを介した結合反応により、1mlのアミノセルロファインに固定化した。この反応により、各々配列番号4、5及び6で示される配列がカルボキシ末端でアミノセルロファイン上の1級アミノ基とアミド結合で配向制御固定化された固定化担体が作製された。作製した固定化担体(10μl)を用いて、ヒトIgGに対する結合容量を測定したところ、表4に示す結果が得られた。このように、配向制御固定化してもヒトIgGに対する結合能を示すことが確かめられた。
Figure 0005004165
〔実施例5〕スタフィロコッカス由来のプロテインAのドメインA由来の配列を基にしたシステイン及びリジン残基を含まない配列を繰り返し有するタンパク質の作製及びそのIgG 結合活性の測定
繰り返し配列を導入するために、プロテインAのドメインA由来の配列を基にしたシステイン及びリジン残基を含まない配列部分をコードする遺伝子を重複させ、新たに制限酵素切断配列としてCfr9I切断配列(CCCGGG)を一箇所含み、全体をBamHIとEcoRI切断によりベクターに挿入できる以下に示すDNA配列(配列番号27)を設計合成した。
GGATCCTTGACAATATCTTAACTATCTGTTATAATATATTGACCAGGTTAACTAACTAAGCAGCAAAAGGAGGAACGACTATGTCGGGCGGTGGTGGTGCTGATAACAATTTCAACCGTGAACAACAAAATGCTTTCTATGAAATCTTGAATATGCCTAACTTAAACGAAGAACAACGCAATGGTTTCATCCAAAGCTTACGTGATGACCCAAGCCAAAGTGCTAACCTATTGTCAGAAGCTCGTCGTTTAAATGAATCTCAAGCCCCGGGTGCTGATAACAATTTCAACCGTGAACAACAAAATGCTTTCTATGAAATCTTGAATATGCCTAACTTAAACGAAGAACAACGCAATGGTTTCATCCAAAGCTTACGTGATGACCCAAGCCAAAGTGCTAACCTATTGTCAGAAGCTCGTCGTTTAAATGAATCTCAAGCACCGGGTGGTGGCGGTGGCTGCGCTGATGACGATGACGATGACCATCATCACCACCATCATTAAGAATTC (配列番号27)
pAADは、配列番号27に示す配列がpUC18vectorのBamHI-EcoRI siteへ挿入されたものである。pAADを大腸菌で発現させることにより、配列番号24に示す配列が2回繰り返した配列を有する一般式R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R1部分の配列がP-Qで表わされ、
P = Ser-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号23)
Q =(Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln-
Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro-
Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe-
Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln-
Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg-
Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly)n (nは、2から5までの任意の整数、かっこ内の配列は配列番号24)
R2 = Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号16)
R3 = Cys-Ala
R4 = Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp(配列番号21)
R5 = His-His-His-His-His-His(配列番号22)
であって、n=2であらわされるタンパク質が発現された。次いで、上記の方法に従って、タンパク質を分離精製した。得られたタンパク質のアミノ末端配列及び質量数分析を行った結果、アミノ末端がセリンであり、また得られた精製タンパク質の質量分析器を用いて測定した質量数が15,545ダルトンであることから、アミノ末端配列として、メチオニン-セリンなる配列を有する配列の組換えタンパク質を大腸菌で発現した場合に、通常見られる開始コドンに対応するアミノ末端のメチオニン残基のプロセッシングを受けていることが確かめられた。
更に、nが3以上である繰り返し配列を導入するために、両端にCfr9I切断配列(CCCGGG)を有する以下のDNA配列を合成した(配列番号28)
CCCGGGTGCTGATAACAATTTCAACCGTGAACAACAAAATGCTTTCTATGAAATCTTGAATATGCCTAACTTAAACGAAGAACAACGCAATGGTTTCATCCAAAGCTTACGTGATGACCCAAGCCAAAGTGCTAACCTATTGTCAGAAGCTCGTCGTTTAAATGAATCTCAAGCCCCGGG (配列番号28)
これを、Cfr9Iで切断した後、Cfr9Iで切断したpAADと混ぜ合わせ、T4DNAリガーゼで結合することにより、Cfr9Iで切断した配列番号28のDNA配列が、1個または複数個結合した組換えプラスミドを作製し、これを、BamHIとEcoRIで切断し、アガロース電気泳動で分離することにより、約0.68キロ塩基対、約0.86キロ塩基対、約1.05キロ塩基対及びそれ以上の大きさのいくつか大きさのDNA断片を得ることができた、その各々のDNA断片を、ゲルから分離し、これをpUC18ベクターのBamHI-EcoRI部位に導入し、組換えプラスミドを分離した。約0.68キロ塩基対、約0.86キロ塩基対、及び約1.05キロ塩基対のDNA断片を導入したプラスミド(各々、pAA3T,pAA4Q,pAA5Pと称した)は、配列番号28に相当する部分が、それぞれ、1個、2個、及び3個結合されており、その結果、上記Qの配列において、n=3、4及び5に相当するアミノ酸配列をコードすることが明らかとなった。また、組換えプラスミドpAA3T,pAA4Q,pAA5Pを形質転換した大腸菌JM109株は、それぞれ、約22キロダルトン、約29キロダルトン、約36キロダルトンのタンパク質を大量に発現蓄積していることが示された。
pAA3TのBamHI-EcoRI部位の部分の塩基配列を調べたところ、以下のDNA配列であることが明らかとなった。
GGATCCTTGACAATATCTTAACTATCTGTTATAATATATTGACCAGGTTAACTAACTAAGCAGCAAAAGGAGGAACGACT
ATGTCGGGCGGTGGTGGTGCTGATAACAATTTCAACCGTGAACAACAAAATGCTTTCTATGAAATCTTGAATATGCCTAACTTAAACGAAGAACAACGCAATGGTTTCATCCAAAGCTTACGTGATGACCCAAGCCAAAGTGCTAACCTATTGTCAGAAGCTCGTCGTTTAAATGAATCTCAAGCCCCGGGTGCTGATAACAATTTCAACCGTGAACAACAAAATGCTTTCTATGAAATCTTGAATATGCCTAACTTAAACGAAGAACAACGCAATGGTTTCATCCAAAGCTTACGTGATGACCCAAGCCAAAGTGCTAACCTATTGTCAGAAGCTCGTCGTTTAAATGAATCTCAAGCCCCGGGTGCTGATAACAATTTCAACCGTGAACAACAAAATGCTTTCTATGAAATCTTGAATATGCCTAACTTAAACGAAGAACAACGCAATGGTTTCATCCAAAGCTTACGTGATGACCCAAGCCAAAGTGCTAACCTATTGTCAGAAGCTCGTCGTTTAAATGAATCTCAAGCACCGGGTGGTGGCGGTGGCTGCGCTGATGACGATGACGATGACCATCATCACCACCATCATTAAGAATTC(配列番号29)
pAA3Tを形質転換した大腸菌JM109株を用いて、上記の方法に従って、タンパク質を分離精製した。得られたタンパク質のアミノ末端配列及び質量数分析を行った結果、アミノ末端がセリンであり、また得られた精製タンパク質の質量分析器を用いて測定した質量数が22,193ダルトンであることから、アミノ末端配列として、メチオニン-セリンなる配列を有する配列の組換えタンパク質を大腸菌で発現した場合に、通常見られる開始コドンに対応するアミノ末端のメチオニン残基のプロセッシングを受けていることが確かめられた。
得られたタンパク質について、ビアコアを用いて、ヒトIgGとの結合活性を調べた。
結果を、表5に示す。この表には、参考のために、n=1で示される変異体タンパク質の値を比較のために示している。繰り返し配列を取ることにより、IgGとの結合力Kdの値がより小さくなり、結合力が増すことが明らかになった(表5)。
Figure 0005004165
〔実施例6〕ストレプトコッカス由来のプロテインGのG1ドメイン由来の配列を基にしたシステイン及びリジン残基を含まない配列を繰り返し有するタンパク質の作製及びそのIgG 結合活性の測定
繰り返し配列を導入するために、プロテインGのG1ドメイン由来の配列を基にしたシステイン及びリジン残基を含まない配列部分をコードする遺伝子を重複させ、新たに制限酵素切断配列としてCfr9I切断配列(CCCGGG)を一箇所含み、全体をBamHIとEcoRI切断によりベクターに挿入できる以下に示すDNA配列(配列番号30)を設計合成した。
GGATCCTTGACAATATCTTAACTATCTGTTATAATATATTGACCAGGTTAACTAACTAAGCAGCAAAAGGAGGAACGACTATGGCTTACCGTTTAATCCTTAATGGTCGTACATTGCGTGGCGAAACAACTACTGAAGCTGTTGATGCTGCTACTGCAGAACGTGTCTTCCGTCAATACGCTAACGACAACGGTGTTGACGGTGAATGGACTTACGACGATGCGACTCGTACCTTTACGGTAACTGAACGTCCTGAGGTTATTGATGCTTCGGAGCTGACTCCTGCTGTTACTCCCGGGGCTTACCGTTTAATCCTTAATGGTCGTACATTGCGTGGCGAAACAACTACTGAAGCTGTTGATGCTGCTACTGCAGAACGTGTCTTCCGTCAATACGCTAACGACAACGGTGTTGACGGTGAATGGACTTACGACGATGCGACTCGTACCTTTACGGTAACTGAACGTCCTGAGGTTATTGATGCTTCGGAGCTGACTCCTGCTGTTACTGGTGGCGGTGGCTGCGCTGATGACGATGACGATGACCATCATCACCACCATCATTAAGAATTC (配列番号30)
pGGDは、配列番号30に示す配列がpUC18vectorのBamHI-EcoRI siteへ挿入されたものである。pGGDを大腸菌で発現させることにより、配列番号25に示す配列が2回繰り返した配列を有する一般式R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R1部分の配列がP-Qで表わされ、
P = 存在しない
Q =(Ala-Tyr-Arg-Leu-Ile-Leu-Asn-Gly-Arg-Thr-
Leu-Arg-Gly-Glu-Thr-Thr-Thr-Glu-Ala-Val-
Asp-Ala-Ala-Thr-Ala-Glu-Arg-Val-Phe-Arg-
Gln-Tyr-Ala-Asn-Asp-Asn-Gly-Val-Asp-Gly-
Glu-Trp-Thr-Tyr-Asp-Asp-Ala-Thr-Arg-Thr-
Phe-Thr-Val-Thr-Glu-Arg-Pro-Glu-Val-Ile-
Asp-Ala-Ser-Glu-Leu-Thr-Pro-Ala-Val-Thr-Pro-Gly)n (nは、2から5までの任意の整数、かっこ内の配列は配列番号25)
R2 = Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号16)
R3 = Cys-Ala
R4 = Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp(配列番号21)
R5 = His-His-His-His-His-His(配列番号22)
であって、n=2であらわされるタンパク質が発現された。次いで、上記の方法に従って、タンパク質を分離精製した。得られたタンパク質のアミノ末端配列及び質量数分析を行った結果、アミノ末端がアラニンであり、また得られた精製タンパク質の質量分析器を用いて測定した質量数が17,616ダルトンであることから、アミノ末端配列として、メチオニン-アラニンなる配列を有する配列の組換えタンパク質を大腸菌で発現した場合に、通常見られる開始コドンに対応するアミノ末端のメチオニン残基のプロセッシングを受けていることが確かめられた。
更に、nが3以上の繰り返し配列を導入するために、両端にCfr9I切断配列(CCCGGG)を有する以下のDNA配列を合成した(配列番号31)
CCCGGGGCTTACCGTTTAATCCTTAATGGTCGTACATTGCGTGGCGAAACAACTACTGAAGCTGTTGATGCTGCTACTGCAGAACGTGTCTTCCGTCAATACGCTAACGACAACGGTGTTGACGGTGAATGGACTTACGACGATGCGACTCGTACCTTTACGGTAACTGAACGTCCTGAGGTTATTGATGCTTCGGAGCTGACTCCTGCTGTTACTCCCGGG (配列番号31)
これを、Cfr9Iで切断した後、Cfr9Iで切断したpAADと混ぜ合わせ、T4DNAリガーゼで結合することにより、Cfr9Iで切断した配列番号28のDNA配列が、1個または複数個結合した組換えプラスミドを作製し、これを、BamHIとEcoRIで切断し、アガロース電気泳動で分離することにより、約0.79キロ塩基対、約1.0キロ塩基対、約1.2キロ塩基対及びそれ以上の大きさのいくつか大きさのDNA断片を得ることができた、その各々のDNA断片を、ゲルから分離し、これをpUC18ベクターのBamHI-EcoRI部位に導入し、組換えプラスミドを分離した。約0.79キロ塩基対、約1.0キロ塩基対、及び約1.2キロ塩基対のDNA断片を導入したプラスミド(各々、pGG3T,pGG4Q,pGG5Pと称した)は、配列番号31に相当する部分が、それぞれ、1個、2個及び3個結合されており、その結果、上記Qの配列において、n=3、4及び5に相当するアミノ酸配列をコードすることが明らかとなった。また、組換えプラスミドpGG3T,pGG4Q,pGG5Pを形質転換した大腸菌JM109株は、それぞれ、約25キロダルトン、約33キロダルトン、約41キロダルトンのタンパク質を大量に発現蓄積していることが示された。
pGG3TのBamHI-EcoRI部位の部分の塩基配列を調べたところ、以下のDNA配列であることが明らかとなった。
GGATCCTTGACAATATCTTAACTATCTGTTATAATATATTGACCAGGTTAACTAACTAAGCAGCAAAAGGAGGAACGACT
ATGGCTTACCGTTTAATCCTTAATGGTCGTACATTGCGTGGCGAAACAACTACTGAAGCTGTTGATGCTGCTACTGCAGAACGTGTCTTCCGTCAATACGCTAACGACAACGGTGTTGACGGTGAATGGACTTACGACGATGCGACTCGTACCTTTACGGTAACTGAACGTCCTGAGGTTATTGATGCTTCGGAGCTGACTCCTGCTGTTACTCCCGGGGCTTACCGTTTAATCCTTAATGGTCGTACATTGCGTGGCGAAACAACTACTGAAGCTGTTGATGCTGCTACTGCAGAACGTGTCTTCCGTCAATACGCTAACGACAACGGTGTTGACGGTGAATGGACTTACGACGATGCGACTCGTACCTTTACGGTAACTGAACGTCCTGAGGTTATTGATGCTTCGGAGCTGACTCCTGCTGTTACTCCCGGGGCTTACCGTTTAATCCTTAATGGTCGTACATTGCGTGGCGAAACAACTACTGAAGCTGTTGATGCTGCTACTGCAGAACGTGTCTTCCGTCAATACGCTAACGACAACGGTGTTGACGGTGAATGGACTTACGACGATGCGACTCGTACCTTTACGGTAACTGAACGTCCTGAGGTTATTGATGCTTCGGAGCTGACTCCTGCTGTTACTGGTGGCGGTGGCTGCGCTGATGACGATGACGATGACCATCATCACCACCATCATTAAGAATTC(配列番号32)
pGG3Tを形質転換した大腸菌JM109株を用いて、上記の方法に従って、タンパク質を分離精製した。得られたタンパク質のアミノ末端配列及び質量数分析を行った結果、アミノ末端がアラニンであり、また得られた精製タンパク質の質量分析器を用いて測定した質量数が25,534ダルトンであることから、アミノ末端配列として、メチオニン-アラニンなる配列を有する配列の組換えタンパク質を大腸菌で発現した場合に、通常見られる開始コドンに対応するアミノ末端のメチオニン残基のプロセッシングを受けていることが確かめられた。
得られたタンパク質について、ビアコアを用いて、ヒトIgGとの結合活性を調べた。
結果を、表6に示す。この表には、参考のために、n=1で示される変異体タンパク質の値を比較のために示している。繰り返し配列を取ることにより、IgGとの結合力Kdの値がより小さくなり、結合力が増すことが明らかになった(表6)。
Figure 0005004165
〔実施例7〕Peptostreptococcus由来のプロテインLのB1ドメイン由来の配列を基にしたシステイン及びリジン残基を含まない配列を繰り返し有するタンパク質の作製及びそのIgG結合活性の測定
繰り返し配列を導入するために、プロテインLのドメインB1由来の配列を基にしたシステイン及びリジン残基を含まない配列部分をコードする遺伝子を重複させ、新たに制限酵素切断配列としてCfr9I切断配列(CCCGGG)を一箇所含み、全体をBamHIとEcoRI切断によりベクターに挿入できる以下に示すDNA配列(配列番号33)を設計合成した。
GGATCCTTGACAATATCTTAACTATCTGTTATAATATATTGACCAGGTTAACTAACTAAGCAGCAAAAGGAGGAACGACTATGGCTACTATTCGTGCTAATCTGATTTATGCTGATGGTCGTACTCAGACTGCTGAGTTTCGTGGTACTTTTGAGGAGGCTACTGCTGAGGCTTATCGTTATGCTGATCTGCTGCCTCGTGAGAATGGTCGTTATACTGTTGATGTTGCTGATCGTGGTTATACTCTGAATATTCGTTTTGCTCCCGGGGCTACTATTCGTGCTAATCTGATTTATGCTGATGGTCGTACTCAGACTGCTGAGTTTCGTGGTACTTTTGAGGAGGCTACTGCTGAGGCTTATCGTTATGCTGATCTGCTGCCTCGTGAGAATGGTCGTTATACTGTTGATGTTGCTGATCGTGGTTATACTCTGAATATTCGTTTTGCTGGTGGTGGCGGTGGCTGCGCTGATGACGATGACGATGACCATCATCACCACCATCATTAAGAATTC (配列番号33)
pLLDは、配列番号33に示す配列がpUC18vectorのBamHI-EcoRI siteへ挿入されたものである。pLLDを大腸菌で発現させることにより、配列番号26に示す配列が2回繰り返した配列を有する一般式R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R1部分の配列がP-Qで表わされ、
P = 存在しない
Q =(Ala-Thr-Ile-Arg-Ala-Asn-Leu-Ile-Tyr-Ala
Asp-Gly-Arg-Thr-Gln-Thr-Ala-Glu-Phe-Arg
Gly-Thr-Phe-Glu-Glu-Ala-Thr-Ala-Glu-Ala
Tyr-Arg-Tyr-Ala-Asp-Leu-Leu-Ala-Arg-Glu
Asn-Gly-Arg-Tyr-Thr-Val-Asp-Val-Ala-Asp
Arg-Gly-Tyr-Thr-Leu-Asn-Ile-Arg-Phe-Ala
Pro-Gly-)n (nは、2から5までの任意の整数、かっこ内の配列は配列番号26)
R2 = Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号16)
R3 = Cys-Ala
R4 = Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp(配列番号21)
R5 = His-His-His-His-His-His(配列番号22)
であって、n=2であらわされるタンパク質が発現された。次いで、上記の方法に従って、タンパク質を分離精製した。得られたタンパク質のアミノ末端配列及び質量数分析を行った結果、アミノ末端がアラニンであり、また得られた精製タンパク質の質量分析器を用いて測定した質量数が15,779ダルトンであることから、アミノ末端配列として、メチオニン-アラニンなる配列を有する配列の組換えタンパク質を大腸菌で発現した場合に、通常見られる開始コドンに対応するアミノ末端のメチオニン残基のプロセッシングを受けていることが確かめられた。
更に、nが3以上の繰り返し配列を導入するために、両端にCfr9I切断配列(CCCGGG)を有する以下のDNA配列(配列番号34)を合成した。
CCCGGGGCTACTATTCGTGCTAATCTGATTTATGCTGATGGTCGTACTCAGACTGCTGAGTTTCGTGGTACTTTTGAGGAGGCTACTGCTGAGGCTTATCGTTATGCTGATCTGCTGCCTCGTGAGAATGGTCGTTATACTGTTGATGTTGCTGATCGTGGTTATACTCTGAATATTCGTTTTGCTCCCGGGG (配列番号34)
これを、Cfr9Iで切断した後、Cfr9Iで切断したpAADと混ぜ合わせ、T4DNAリガーゼで結合することにより、Cfr9Iで切断した配列番号34のDNA配列が、1個または複数個結合した組換えプラスミドを作製し、これを、BamHIとEcoRIで切断し、アガロース電気泳動で分離することにより、約0.70キロ塩基対、約0.89キロ塩基対、約1.1キロ塩基対及びそれ以上の大きさのいくつか大きさのDNA断片を得ることができた、その各々のDNA断片を、ゲルから分離し、これをpUC18ベクターのBamHI-EcoRI部位に導入し、組換えプラスミドを分離した。約0.70キロ塩基対、約0.89キロ塩基対、及び約1.1キロ塩基対のDNA断片を導入したプラスミド(各々、pLL3T,pLL4Q,pLL5Pと称した)は、配列番号34に相当する部分が、それぞれ、1個、2個及び3個結合されており、その結果、上記Qの配列において、n=3、4及び5に相当するアミノ酸配列をコードすることが明らかとなった。また、組換えプラスミドpLL3T,pLL4Q,pLL5Pを形質転換した大腸菌JM109株は、それぞれ、約23キロダルトン、約30キロダルトン、約37キロダルトンのタンパク質を大量に発現蓄積していることが示された。
pLL3TのBamHI-EcoRI部位の部分の塩基配列を調べたところ、以下のDNA配列であることが明らかとなった。
GGATCCTTGACAATATCTTAACTATCTGTTATAATATATTGACCAGGTTAACTAACTAAGCAGCAAAAGGAGGAACGACT
ATGGCTACTATTCGTGCTAATCTGATTTATGCTGATGGTCGTACTCAGACTGCTGAGTTTCGTGGTACTTTTGAGGAGGCTACTGCTGAGGCTTATCGTTATGCTGATCTGCTGCCTCGTGAGAATGGTCGTTATACTGTTGATGTTGCTGATCGTGGTTATACTCTGAATATTCGTTTTGCTCCCGGGGCTACTATTCGTGCTAATCTGATTTATGCTGATGGTCGTACTCAGACTGCTGAGTTTCGTGGTACTTTTGAGGAGGCTACTGCTGAGGCTTATCGTTATGCTGATCTGCTGCCTCGTGAGAATGGTCGTTATACTGTTGATGTTGCTGATCGTGGTTATACTCTGAATATTCGTTTTGCTCCCGGGGCTACTATTCGTGCTAATCTGATTTATGCTGATGGTCGTACTCAGACTGCTGAGTTTCGTGGTACTTTTGAGGAGGCTACTGCTGAGGCTTATCGTTATGCTGATCTGCTGCCTCGTGAGAATGGTCGTTATACTGTTGATGTTGCTGATCGTGGTTATACTCTGAATATTCGTTTTGCTGGTGGTGGCGGTGGCTGCGCTGATGACGATGACGATGACCATCATCACCACCATCATTAAGAATTC(配列番号35)
pLL3Tを形質転換した大腸菌JM109株を用いて、上記の方法に従って、タンパク質を分離精製した。得られたタンパク質のアミノ末端配列及び質量数分析を行った結果、アミノ末端がアラニンであり、また得られた精製タンパク質の質量分析器を用いて測定した質量数が22,751ダルトンであることから、アミノ末端配列として、メチオニン-アラニンなる配列を有する配列の組換えタンパク質を大腸菌で発現した場合に、通常見られる開始コドンに対応するアミノ末端のメチオニン残基のプロセッシングを受けていることが確かめられた。
得られたタンパク質について、ビアコアを用いて、ヒトIgGとの結合活性を調べた。
結果を、表7に示す。この表には、参考のために、n=1で示される変異体タンパク質の値を比較のために示している。繰り返し配列を取ることにより、IgGとの結合力Kdの値がより小さくなり、結合力が増すことが明らかになった。繰り返し配列を取ることにより、IgGとの結合力Kdの値がより小さくなり、結合力が増すことが明らかになった(表7)。
Figure 0005004165
本発明の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表される配列を利用して、固定化対象のタンパク質を固定化担体に配向を制御した状態で効率的に固定化することができ、疾患の診断等の医学の分野で用いる診断用タンパク質固定化担体、固定化酵素等として用いることができる。
配列番号1〜6、10〜23、27〜35 合成

Claims (18)

  1. 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列
    [式中、配列は、アミノ末端側からカルボキシ末端側に向かう配列を示し、
    R1部分の配列は、固定化対象タンパク質の配列であり、リジン残基及びシステイン残基を含まないことを特徴とする配列であり;
    R2部分の配列は存在しなくてもよく、存在する場合はリジン及びシステイン残基以外のアミノ酸残基により構成されるスペーサー配列であり;
    R3部分の配列はシステイン−アラニンで表される2残基のアミノ酸で構成される配列であり;
    R4部分の配列はリジン残基及びシステイン残基を含まない配列であり、一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質全体の等電点を酸性側にし得る酸性アミノ酸残基を含むことを特徴とする配列であり;そして
    R5部分の配列はタンパク質を精製するためのアフィニティータグ配列である]
    からなるタンパク質であって、R3部分に含まれるシステインのSH基をシアノ化し1級アミンを有する固定化担体に作用させることによりR1-R2で表される部分を固定化担体に固定化するために用い、固定化後に担体表面の1級アミンをマスクするのに用いるマスク剤によるアセチル化処理によりアミノ末端のアセチル化以外のアセチル化が起こらないタンパク質。
  2. 一般式 R1-R2-R3-R4-R5のアミノ酸配列において、R1部分の配列が、天然由来のタンパク質のアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列中のすべてのリジン残基及びシステイン残基を、リジン残基及びシステイン残基以外のアミノ酸残基に置換することにより得られる、リジン残基及びシステイン残基を含まないアミノ酸配列に改変されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、前記天然由来のタンパク質と同等の機能を有するタンパク質のアミノ酸配列であることを特徴とする、請求項1に記載の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
  3. 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R2部分の配列が、0〜10個のグリシンからなる配列であることを特徴とする、請求項1に記載の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
  4. 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R4部分の配列が、アスパラギン酸とグルタミン酸の2種類のアミノ酸残基からなるアミノ酸残基数〜10個の配列であることを特徴とする、請求項1に記載の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
  5. 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R5部分の配列が、4個以上のヒスチジン残基からなるアミノ酸配列であることを特徴とする、請求項1に記載の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
  6. 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R1部分の配列が抗体分子と特異的に相互作用する機能を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質。
  7. 下記のアミノ酸配列(配列番号1)からなる請求項1記載のタンパク質。
    Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln
    Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro
    Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe
    Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln
    Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg
    Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly-Gly-Gly
    Gly-Gly-Cys-Ala-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp
    His-His-His-His-His-His
  8. 下記の配列(配列番号2)からなる請求項1記載のタンパク質。
    Ala-Tyr-Arg-Leu-Ile-Leu-Asn-Gly-Arg-Thr
    Leu-Arg-Gly-Glu-Thr-Thr-Thr-Glu-Ala-Val
    Asp-Ala-Ala-Thr-Ala-Glu-Arg-Val-Phe-Arg
    Gln-Tyr-Ala-Asn-Asp-Asn-Gly-Val-Asp-Gly
    Glu-Trp-Thr-Tyr-Asp-Asp-Ala-Thr-Arg-Thr
    Phe-Thr-Val-Thr-Glu-Arg-Pro-Glu-Val-Ile
    Asp-Ala-Ser-Glu-Leu-Thr-Pro-Ala-Val-Thr
    Gly-Gly-Gly-Gly-Cys-Ala-Asp-Asp-Asp-Asp
    Asp-Asp-His-His-His-His-His-His
  9. 下記の配列(配列番号3)からなる請求項1記載のタンパク質。
    Ala-Thr-Ile-Arg-Ala-Asn-Leu-Ile-Tyr-Ala
    Asp-Gly-Arg-Thr-Gln-Thr-Ala-Glu-Phe-Arg
    Gly-Thr-Phe-Glu-Glu-Ala-Thr-Ala-Glu-Ala
    Tyr-Arg-Tyr-Ala-Asp-Leu-Leu-Ala-Arg-Glu
    Asn-Gly-Arg-Tyr-Thr-Val-Asp-Val-Ala-Asp
    Arg-Gly-Tyr-Thr-Leu-Asn-Ile-Arg-Phe-Ala
    Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Cys-Ala-Asp-Asp-Asp
    Asp-Asp-Asp-His-His-His-His-His-His
  10. R1部分の配列がP-Qで表わされ、
    P部分の配列は、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は(Ser又はAla)-(Gly)nよりなる配列(nは1から10までの任意の整数)であり、Q部分の配列は、繰り返し単位を有するタンパク質の配列であり、リジン残基及びシステイン残基を含まない配列単位が繰り返された配列であることを特徴とする配列である、請求項1記載の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、R1-R2で表される部分を固定化担体に固定化するために用いるタンパク質。
  11. P-Qで表わされるアミノ酸配列において、Q部分の繰り返し単位の配列が天然由来のタンパク質のアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列中のすべてのリジン残基及びシステイン残基を、リジン残基及びシステイン残基以外のアミノ酸残基に置換することにより得られる、リジン残基及びシステイン残基を含まないアミノ酸配列に改変されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、前記天然由来のタンパク質と同等の機能を有するタンパク質のアミノ酸配列であることを特徴とする、請求項10に記載の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
  12. 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R2部分の配列が、0〜10個のグリシンからなる配列であることを特徴とする、請求項10に記載の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
  13. 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R4部分の配列が、アスパラギン酸とグルタミン酸の2種類のアミノ酸残基からなるアミノ酸残基数〜10個の配列であることを特徴とする、請求項10に記載の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
  14. 一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R5部分の配列が、4個以上のヒスチジン残基からなるアミノ酸配列であることを特徴とする、請求項10に記載の一般式 R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
  15. P-Qで表わされるアミノ酸配列において、Q部分の繰り返し単位の配列が抗体分子と特異的に相互作用する機能を有することを特徴とする、請求項10〜14のいずれか1項に記載のタンパク質。
  16. 一般式R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R1部分の配列がP-Qで表わされ、
    P = Ser-Gly-Gly-Gly-Gly
    Q =(Ala-Asp-Asn-Asn-Phe-Asn-Arg-Glu-Gln-Gln-
    Asn-Ala-Phe-Tyr-Glu-Ile-Leu-Asn-Met-Pro-
    Asn-Leu-Asn-Glu-Glu-Gln-Arg-Asn-Gly-Phe-
    Ile-Gln-Ser-Leu-Arg-Asp-Asp-Pro-Ser-Gln-
    Ser-Ala-Asn-Leu-Leu-Ser-Glu-Ala-Arg-Arg-
    Leu-Asn-Glu-Ser-Gln-Ala-Pro-Gly)n (nは、2から5までの任意の整数)
    R2 = Gly-Gly-Gly-Gly
    R3 = Cys-Ala
    R4 = Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp
    R5 = His-His-His-His-His-His
    であることを特徴とする、請求項10〜15のいずれか1項に記載のタンパク質。
  17. 一般式R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R1部分の配列がP-Qで表わされ、
    P = 存在しない
    Q =(Ala-Tyr-Arg-Leu-Ile-Leu-Asn-Gly-Arg-Thr-
    Leu-Arg-Gly-Glu-Thr-Thr-Thr-Glu-Ala-Val-
    Asp-Ala-Ala-Thr-Ala-Glu-Arg-Val-Phe-Arg-
    Gln-Tyr-Ala-Asn-Asp-Asn-Gly-Val-Asp-Gly-
    Glu-Trp-Thr-Tyr-Asp-Asp-Ala-Thr-Arg-Thr-
    Phe-Thr-Val-Thr-Glu-Arg-Pro-Glu-Val-Ile-
    Asp-Ala-Ser-Glu-Leu-Thr-Pro-Ala-Val-Thr-Pro-Gly)n
    (nは、2から5までの任意の整数)
    R2 = Gly-Gly-Gly-Gly
    R3 = Cys-Ala
    R4 = Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp
    R5 = His-His-His-His-His-His
    であることを特徴とする、請求項10〜15のいずれか1項に記載のタンパク質。
  18. 一般式R1-R2-R3-R4-R5で表されるアミノ酸配列において、R1部分の配列がP-Qで表わされ、
    P = 存在しない
    Q =(Ala-Thr-Ile-Arg-Ala-Asn-Leu-Ile-Tyr-Ala
    Asp-Gly-Arg-Thr-Gln-Thr-Ala-Glu-Phe-Arg
    Gly-Thr-Phe-Glu-Glu-Ala-Thr-Ala-Glu-Ala
    Tyr-Arg-Tyr-Ala-Asp-Leu-Leu-Ala-Arg-Glu
    Asn-Gly-Arg-Tyr-Thr-Val-Asp-Val-Ala-Asp
    Arg-Gly-Tyr-Thr-Leu-Asn-Ile-Arg-Phe-Ala
    Pro-Gly-)n (nは、2から5までの任意の整数)
    R2 = Gly-Gly-Gly-Gly
    R3 = Cys-Ala
    R4 = Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp
    R5 = His-His-His-His-His-His
    であることを特徴とする、請求項10〜15のいずれか1項に記載のタンパク質。
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