JP5004100B2 - X線分解能評価用ファントム - Google Patents

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Description

本発明は、X線撮像装置の撮像特性を評価または校正するための基準を構成するX線分解能評価用ファントムに関する。
物質の透過力が高いX線を使ったイメージングは、医療診断のほか、工業材料、電子部品等の非破壊検査の分野で幅広く使われている。特に、非破壊検査の分野では、焦点サイズがミクロンオーダーのマイクロフォーカスX線発生器の開発が進み、空間分解能が大幅に向上してきた。
さらに、測定対象が従来の金属部品から錠剤、生体、高分子、繊維、ファインセラミックスなどに遷移し、特にバイオ医薬、化粧品、食品関連での応用まで広がっている。これらバイオ医薬、化粧品、食品関連等の柔らかい物質は原子番号の低い元素、すなわちX線吸収の少ない材質で構成されることが多い。
X線画像での空間分解能はX線吸収差にも依存するため、空間分解能の評価に加え、X線吸収のわずかな差異を識別するための、濃度またはコントラスト分解能の同時評価が重要となる。
しかし、現在利用できるX線チャートは、2次元パターンをX線照射方向に垂直に立てて投影するもので、空間分解能のみの評価に用いられている(非特許文献2、3参照)。
図8に従来のX線空間分解能チャートの例を示す。図8では、縦横の寸法がWとL1の短冊6をWの間隔で連続して並列配置してX線チャートを形成し、このチャートの短冊面に垂直にX線5を照射し、短冊6を透過するX線量を測定する。
また、非特許文献5には面積型正弦波マスクによる1次元MTFの測定方法が示されている。しかしX線用の分解能ファントム作成に関するものではない。
医療用X線CTでは、高コントラスト用および低コントラスト用のファントム(3次元モデル)が学会等から提案され(非特許文献6、非特許文献7参照)、JIS等でも規格化されている(非特許文献8参照)。
非特許文献4には銅2mm、アルミ6.1mm〜25mm、PMMA 等がΦ10〜Φ11の円盤/穴等による一次元配列で、コントラスト比1%〜20% で減弱させる試験器具が示されている。医療用X線CT用でサイズが大きく、マイクロフォーカスX線検査用ではない。
非特許文献7には低コントラスト、高コントラスト分解能測定用具の具体的な形状、材質が示されているが、これらのサイズは医療用X線CTを目的としたもので、直径も100mmを超えるものが多い。
非特許文献8には医療診断用X線CT装置の性能評価を行うためのファントムについての規格が示されている。しかしマイクロフォーカスX線検査用ではない。
これらは、医療用X線CT装置による診断を目的とした用途であるため、識別すべき空間分解能は数ミリから数百ミクロンのオーダーであり、マイクロフォーカスX線発生器を用いた検査システムの空間分解能より遙かに大きい。
一方、従来の非破壊検査用の高分解能マイクロフォーカスX線検査システムは、空間分解能を個別に評価する方法を備えていたが、この方法は空間分解能にとって重要な影響を与えるコントラストを適切に且つ同時に評価するものではなかった。
例えば、空間分解能とコントラスト分解能を同時に評価する従来の方法としては、濃淡のパターンを持つ可視光の2次元チャートが提案されている(特許文献1、非特許文献1参照)。特許文献1は、画像処理装置、階調変換特性設定方法及びプログラムに関し、画像処理装置上で「コントラスト(階調特性)と空間周波数のテストチャート」(2次元パターン)を、視覚特性に応じて変更する表示法とテストチャートの作成方法を開示している。しかし、可視光用でX線用ではない。また、非特許文献1は、空間周波数とコントラストを測定するクサビ型図形のあるテストチャートで、開発された装置の画面上で表示するものとなっている。しかしこれも可視光用でX線用ではない。このように、これらは可視光のみに適用可能で、波長が可視光の1/1000以下で透過性の高いX線による撮影には使用できない。
近年、測定対象として関心が高まっている生体、高分子、樹脂、繊維、食品、医薬品類を対象とした場合、X線画像の空間分解能とコントラスト分解能を同時に評価できる適正なテストファントムを作ることにより、各装置のパラメータ調整を効率良く行うことが可能となるとともに、高効率のX線画像解析システムを開発することにもつながる。
そこで、マイクロフォーカスX線投影およびトモグラフィ撮像システムの空間分解能およびコントラスト分解能を同時に評価することが可能となるよう、ミクロンオーダーの空間分解能とコントラスト分解能を同時に評価できる3次元パターンモデル(ファントム)を作成することが必要となる。
特開2004−180142号公報 ISO12233 解像度チャート JIS Z 4917 X線変調度伝達関数測定用テストチャート JIS Z 4916 X線用解像力テストチャート JIS Z 4752−3−1:2004 ガイド、医用画像部門における品質維持の評価及び日常試験方法 第3−1部:受入試験−診断用X線装置(部分f) 低コントラスト解像度試験器具 藤村郁夫、画像情報と画質評価、光学技術コンタクト、Vol.8, No.5, p.17−20, 1970 「X線コンピュータ断層撮影装置の性能評価に関する基準(第二次勧告)」、医学放射線学会 CT性能評価委員会、日本医師会雑誌, 88(8), 759‐771(1989) 「X線CT装置性能評価に関する基準(案)」、日本放射線技術学会 X線CT装置性能評価検討班、日放技学誌,47(1),56−63 (1991) JIS Z 4923 X線コンピュータ断層撮影装置用ファントム (改正 1997/07/20)
本発明の目的は、高分解能マイクロフォーカスX線検査システムのための、空間分解能とコントラスト分解能を同時に評価できるX線分解能評価用ファントムを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明のX線分解能評価用ファントムは以下の解決手段を採用する。
(1) X線透過方向の距離または材質を変えることでコントラスト(濃度)分解能を任意に変えると同時に空間分解能を評価できるようにするX線分解能評価用ファントム:
従来のX線分解能チャートとしては、金やタングステン、タンタルなどX線の透過しにくい金属薄膜から一定幅のスリットを切除したり、シリコンまたはシリコンチッ化物の薄膜に厚みが同じで一定幅の矩形パターンを蒸着して、X線が透過する領域と遮断される領域を交互に設けた2次元パターンのものが殆どである。
この場合、X線は2次元パターンに対して垂直方向から照射され、その2次元透過像が検出器に投影される。X線がほぼ完全に透過する部分、例えば矩形部分とほぼ完全に遮蔽される部分、例えば矩形部分が交互に投影されるので、グレースケール画像では、線幅の異なる白と黒のパターンが交互に表れる。この画像から空間分解能の指標と成るMTF(Modular Transfer Function)を求め、空間分可能を評価するのが一般的な方法である(非特許文献2、5参照)。MTFは、検出面に記録された透過像の輝度の最大値をLmax、最小値をLminとして、下記数1の式
と求められる。ここで、MTFとは被写体の持つコントラストを像面上でどのくらい再現できるかを表わすものである。MTF曲線は、濃淡画像の輝度値の差から得られるコントラストと、空間周波数の関係を表わす。
コントラストが低い場合は、分子の(Lmax―Lmin)が小さくなるので、MTFが低下し、空間分解能が低下する。ここで述べたように、X線画像のMTF値は、白黒の濃淡(コントラスト)の影響を受ける。つまり、白と黒のパターンでは高コントラストとなり、高い空間分解能まで識別可能となるが、灰色と黒のパターンではコントラストが低下し、同じ線幅のパターンでも、高コントラストの場合ほどMTF値が高くならない。
従来のマイクロフォーカスX線検査では、測定対象が半導体基板や鉱物、骨など、材料のコントラストが高い組成のものが多かったために、高コントラスト領域の空間分解能を評価すれば実用上十分であったが、近年、マイクロフォーカスX線検査では、生体材料や高分子ポリマー、食物、医薬品など、低コントラストの材料で構成される測定対象が増えてきた。これらの微細構造を評価する場合、従来の高コントラスト空間分解能の評価法を適用することはできないため、低コントラストで空間分解能を評価する分解能ファントムが必要となる。
そこで、本願発明ではX線透過方向の距離または材質を変えることでコントラスト(濃度)分解能を任意に変えるとともに、空間分解能を同時に評価できる3次元パターンモデルを作成し、生体材料や高分子材料等の低コントラストの測定対象に適用できる分解能評価方法を提案する。
なお、医療用では低コントラスト、高コントラストファントムがあるが、サイズがミクロンオーダーのマイクロフォーカスX線検査用ではない(非特許文献6〜8)。
(2) ファントムを構成するパターン要素の材質は同じで、面積および体積を調整することにより、X線減衰量を可変にする体積型直方体X線分解能評価用ファントム:
微細加工パターンの製造上、モデルを構成する要素の材質が同一のものであれば製造工程を簡素化できるので、パターンをすべて同一の素材で作成する。
この場合、パターン基板面と平行の方向からX線を照射し、X線透過方向の厚みを任意に変えることで、検出面上の投影コントラストを調節する。
また、同時に、パターン基板面内のパターン幅を調節することによって、空間分解能を変える。このような3次元パターンモデルによって、空間分解能とコントラスト分解能を同時に評価できるようになる。
(3) ファントムを構成するパターン要素の面積および体積は同じで、材質を変えることにより、X線エネルギー吸収を可変にする材質型直方体X線分解能評価用ファントム:
パターン構成要素の材質として異なるものをもちいる場合、X線透過方向の厚みが同じであっても、材料の選択により、検出面上の投影コントラストを任意に調節できる。
X線吸収係数の異なる材質の組み合わせとして、X線エネルギーに応じて、エポキシ等の高分子材料、ポリマー、プラスチック、金属、金属化合物、合金、セラミック、液体、気体等の中から、所望のコントラスト比を与える材料を選択する。この場合も、同時に、パターン基板面内のパターン幅を調節することによって、空間分解能を変える。このような3次元パターンモデルによって、空間分解能とコントラスト分解能を同時に評価できるようにする。
(4) 感光性樹脂のエッチングで微細パターンを加工する3次元パターンX線分解能評価用ファントム:
高さ100ミクロンオーダー、縦幅10ミクロンオーダー、横幅50ミクロンオーダーの直方体を、主ブロックと副ブロックの組み合わせが3個以上となるように配置する微細加工方法として、エポキシ樹脂ベースの感光性樹脂をエッチングする方法を使用する。
例えば、シリコン基板表面に感光性樹脂をスピンコートし、固化させた後に、紫外線(I線:365nm)で露光し、現像、リンス、乾燥の工程を経て、上記3次元パターンを複数個、基板上に作成する(図1)。その後、各パターンをX線計測に適する形状に切り出し、コントラスト分解能および空間分解能の同時評価に供する。
(5) 同一素材で構成され、X線透過方向の厚みがステップ状、または、連続的に変化する、高さが100ミクロンオーダーの3次元パターンモデル:
コントラスト分解能の微小な変化を、段階的または連続的に評価するために、同一素材で構成され、X線透過方向の厚みがステップ状または連続的に変化する3次元パターンモデルを作成する(図5)。例えば、上記(4)に述べた感光性樹脂のエッチング加工により、厚みをステップ状または連続的に任意に変えることで、X線透過率を調節し、コントラスト分解能を評価できるようにする。
具体的には、課題解決手段は以下のようになる。
(1)ファントムは、基板と該基板上に設けた複数のブロックからなるX線分解能評価用ファントムであって、前記ブロックは、前記基板に垂直な方向の高さが一定の感光性樹脂からな主ブロックと副ブロックを、前記基板上の一方向に交互に並列に連続して配置、前記一方向と直交する方向の両端に前記基板に垂直なX線入射端面とX線出射端面を有し、かつ、前記X線入射端面から入射し前記X線出射端面から出射するX線の減衰量を、前記主ブロックおよび副ブロック間で異なるように構成する。
(2)前記X線入射端面から入射し前記X線出射端面から出射するX線の減衰量を、交互に配置された主ブロックと副ブロックの長さを変化させることにより両ブロック間で異なるように構成する。
(3)前記主ブロックおよび前記副ブロック、それらの配置方向の幅と前記X線入射端面から前記X線出射端面までのX線透過方向の長さが任意に設定された矩形状に形成することにより、前記X線入射端面から入射し前記X線出射端面から出射するX線の放射方向の投影面積と減衰量を、両ブロック間で異なるように構成されている。
(4)主ブロックおよび副ブロックは、前記X線入射端面からX線出射端面にわたって断面E字形又はπ字形に形成されている。
(5)主ブロックおよび副ブロックは、それぞれ、すべて同じ材質で、X線入射端面からX線出射端面までのX線透過方向の長さをX線減衰量が同じにならないようにステップ状に異ならせる。
(6)主ブロックおよび副ブロックは、それぞれ、すべて同じ材質で、X線入射端面からX線出射端面までのX線透過方向の長さをX線減衰量が同じにならないように連続的に異ならせる。
(7)主ブロックは、それぞれ、すべて同じ材質で、X線入射端面からX線出射端面までの長さをX線減衰量が同じにならないように異ならせる。
(8)主ブロックおよび副ブロックは、すべて同じ形状で、それぞれの材質をX線減衰量が同じにならないように異ならせる。
(9)主ブロックおよび副ブロックをエッチング処理された感光性樹脂とする。
従来のX線解像度チャートは、ラインアンドスペース型やスター型(化成オプトロニクス社製、X線テストチャート各種、日本検査機器工業会、JIMA RT RC−02チャート等)と呼ばれるような矩形および放射状の2次元平面パターンを、基板に対して垂直方向からX線照射して検出面上に濃淡のパターンを投影するものであるため、パターンの形状が、材質と厚みに応じた輝度として記録される。
図9は従来のX線空間分解能チャート撮影図である。図9(a)は、ラインアンドスペース型で、互いにパターン7が異なり、線幅と線の間隔(スペース)で空間分解能を表示する例で、X線を透過するか否かで表示が変化する。図9(b)のパターン8は図9(a)に示されるような一般的なパターンの拡大図である。(但し図9(b)は図9(a)の要部拡大図ではない)。図9(c)は、放射状スター型のパターン9である。
このようなチャートは、厚みおよび材質が均一であるため、パターンごとの濃淡の調節はできない。厚みを変えたパターンを複数種類作成し、繰り返し撮影して比較することも可能であるが、同一画面内での比較はできない。
特に、コントラスト差が小さくなってくると、撮影回数が異なるたびに統計的なX線フォトンの変動や検出系のドリフトのために、コントラストの比較が難しくなってくる。そのために、同じ条件の同一撮影回数で、同一画像内で複数のコントラストおよび空間分解能を比較できる方法にすると正確に評価できるようになる。
また、これまで、X線減衰をステップ的または連続的に増加させて、X線撮像系のコントラストを評価するファントムはなかった。
さらには、通常これらの2次元パターンはパターン保護材となるプラスチックやポリカーボネイト膜等に挟まれており、X線エネルギーが低い場合は、保護材の厚みによる減衰を含めた投影像が得られることになり、コントラストの正確な調節が困難となる。
これに対して、本願発明の3次元パターンモデルは、シリコン基板上に約100ミクロンの高さの直方体として整形され、それを基板平面と平行な方向からX線を照射して検出面に拡大投影することにより、プラスチック等のパターン保護材の減衰の影響を受けずに、整形したパターンの厚みまたは材質によるX線減衰だけを反映した投影像が得られる。
さらに、感光性樹脂のエッチングを使う際に、マスクパターンの設計・製作において、コントラストや空間分解能を調節した様々なパターンを加工することで、一回のエッチング処理で複数のコントラストおよび空間分解能評価パターンを作成できるので、X線による画像計測時において各種パラメータの設定変更の時間や回数がはるかに軽減できる利点がある。
本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
(製造方法)
3次元パターンモデルの制作方法の例として、MEMS(Micro−Electro−Mechanical Systems、微小電気機械素子およびその創製技術)等の製作に用いられているエポキシ樹脂ベースの感光性樹脂のエッチング手法を採用する例を説明する。
この製造方法では、まず所望の製図パターンを転写した厚さ0.06インチ、大きさ5x5インチ角のクロム製フォトマスクを作成する。
図1は石英ガラス基板上のクロム製フォトマスクパターンの説明図である。
マスクパターン10は、クロム製フォトマスク11が石英基板12上に貼り付けられて構成されている。クロム製フォトマスク11には、下記に示す矩形ブロック等の3次元パターンに対応した開孔13が10×20個設けられている。それぞれの開孔13は後記するようにX線透過量が所望の漸次減少する特性又は漸次増加する特性となるように矩形ブロック等の3次元パターンに対応した形状に形成されている。
なお、このマスクパターンに基づいて露光・エッチング処理される感光性樹脂パターンは、例えば、1列または1個ずつに切り分けられてX線透過量の測定又は評価に用いられる。このクロム製フォトマスク11をステッパー等の周知な露光装置(図示省略)を用いて感光性樹脂(図示省略)上に裁置し、紫外線(図示省略)のI線によって感光性樹脂(図示省略)にパターンを露光する。
感光性樹脂としては、X線撮像を容易にできるように、幅の狭いパターンに対しても高さを高くできるよう、高アスペクト比のパターン作製の要件に適したエポキシ樹脂を用いる。この要件を満たす樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂等を主成分とするものを用いる。これらのうち、主成分がビスフェノールA型ノボラックであるSU−8 3000 (Permanent Epoxy Negative Photoresist:Microchem Corp.製) を改良したSU−8 3050(日本化薬(株)製)を用いた。
エッチングパターンは、以下の処理手順で作製した。
エッチング処理手順:
1.基板前処理:
基板となるSilicon(シリコン)円板表面を洗浄剤で処理する。
2.塗布処理:
(1)適量の塗布量(例えば、5mリットル)のレジストをほぼ円盤中心に塗布、
(2)プレスピン(例えば、約5秒間の回転(トップスピン以下の回転数))の遠心力でレジスト全面に塗布、
(3)トップスピン(例えば、膜厚が約100μmになるよう、30秒間、1250rpm)の回転速度を保持する。
3.ソフトベーク:
塗布されたレジストの円板が加熱むらにならないようにしてホットプレートに設置し適切な時間加熱する(例えば、約30分間)。
4.膜厚測定:
必要に応じて、ベークの完了した感光性樹脂膜の膜厚を測定する。
5.露光:
感光性樹脂膜を露光装置内に配置し、紫外線I線(365nm)によって約1分間、フォトマスクを介して感光性樹脂膜を露光する。
6.露光後ベーク(PEB、post exposure bakery):
感光性樹脂膜の露光部の膜を約5分間加熱(ベーク)する。
7.現像:
加熱後の感光性樹脂膜を、有機溶剤中に約10分間ディッピングを行う。
8.リンスおよび乾燥:
現像後の感光性樹脂膜を、フレッシュな現像液で表面の洗い流しを行い、IPA溶液で現像液の除去をし、清浄な窒素ガスや空気等でIPAを除去し、乾燥させる。
(X線分解能評価用ファントムモデル)
本発明のX線分解能評価用ファントムモデルについては、種々の条件に応じたモデルがあるが、ここでは同じ材質でX線透過距離を変えた3次元パターンモデル1について、パターンを一般化した場合の状況を図2に示す。
3次元パターンモデル(X線分解能評価用ファントム)は、そのパターン形状に応じて、矩形ブロックモデル、断面E形ブロックモデル等種々の形状のものを含む。
図2は複数の矩形ブロック3を基板4上にY軸方向に並置した3次元パターンモデル(X線分解能評価用ファントム)1のうちの矩形ブロックモデル2である。
この例の場合、矩形ブロック3は、主矩形ブロック3a、副矩形ブロック3b、主矩形ブロック・・・、主矩形ブロック3n(nは任意の正数)を基板2上にY軸方向に並置する。但し、図2では、紙面の制約から主ブロック3までの表示となっている。
矩形ブロック3のそれぞれは、この例の場合Y軸方向の幅が同じ幅Wで、Z軸方向の高さが同じ高さHで、X軸方向の長さを変えることで必要な透過X線量を得ることができるが長さ、例えば、長さL1、L2等、に変えた直方体の感光性樹脂パターンからなる。但し、主矩形ブロックと副矩形ブロックの配列順番、数等は必要とするX線透過量特性に応じて適宜設定できる。
それぞれの矩形ブロック3a、3b、・・・、3nのX軸方向端面は、同じX線入射面3Aおよび同じX線出射面3Bとなるようにすべて同じ形状に形成されている。X線は基板面と平行に入射するので、入射面3Aと出射面3Bは透過X線の効果が判断しやすいように基板2に垂直になるように形成される。
一般にX線発生器からのX線は平行ビームではないが、X線焦点から十分離れた位置に測定物を配置することで、近似的に平行ビームとみなすことができる。
ここで、X線透過効果の説明のため、X軸方向の長さをL1とL2とした矩形ブロック3a、3bの場合について説明する。
これらの矩形ブロック3a、3bでは、X線透過距離はそれぞれL1、L2となる。材質は同じSU−8 3050なので、X線が直方体の入射面3Aから照射されるとき、これらのX軸方向の長さに応じてX線減衰がきまる。
L1とL2の長さの比を任意に変えることによって、コントラスト差を任意に設定することができる。代表的なケースとして、1)L1>L2(E型)、2)L1<L2(π型)、3)L2=0(||型)などが考えられる。
また、幅Wを変えることにより、X線照射方向の空間分解能を評価できる。
図2の例を多数配列した図1では、長さL1、L2、幅Wを10ミクロンから1mmまで変えることで、多様なコントラスト比と空間分解能パターンを、1回の感光性樹脂のエッチング処理で作製している。
図2の矩形ブロックの高さHと幅Wの積H×Wは、X線照射方向の投影面積となる。高い空間分解能を評価するために、幅Wを小さく設定しても、高さHを十分大きくとることによって、輝度変化を統計的に評価するに足る投影面積を確保することができる。通常のマイクロフォーカスX線撮影では、測定対象をX線源の近くに設置することで、幾何学的に検出器に投影されるX線透過像が数十倍〜数百倍に拡大されるので、投影面積H×Wは検出器の分解能よりも十分大きく、統計的な輝度値の変動を均質化できる大きさで撮影することができる。
図3は、感光性樹脂で作成した本発明の3次元パターンモデルの顕微鏡写真である。3次元パターンモデルの形状は、X線入射面3AとX線出射面3Bの形状および長さLを変数として、透過X線量を評価できるように構成される。例えば、図3(a)〜図3(f)に示すように構成できる。
図3(a)は図2のX線入射面3Aおよび同じX線出射面3BがE字状になっているブロック3daからなる3次元パターンモデルの顕微鏡像である。X線透過方向の主ブロック長さL1が500μm、副ブロック長さL2が100μmであり、L1>L2の例である。
図3(b)は図2のX線入射面3Aおよび同じX線出射面3Bが図3(a)とは異なるE字状になっているブロック3dbからなる3次元パターンモデルの投影像である。X線透過方向の主ブロック長さL1が300μm、副ブロック長さL2が100μmであり、L1>L2の例である。
図3(c)は図2のX線入射面3Aおよび同じX線出射面3Bが図3(a)とは異なるE字状になっているブロック3dcからなる3次元パターンモデルの顕微鏡像である。X線透過方向の主ブロック長さL1が500μm、副ブロック長さL2が400μmであり、L1>L2ではあるが、コントラストの低い例である。
図3(d)は図2のX線入射面3Aおよび同じX線出射面3Bに対応するブロック3ddからなる3次元パターンモデルの投影像である。X線透過方向の副ブロック長さL2=0となり、主ブロックのみと周囲の空気とのコントラストを計測する場合の例である。
図3(e)は図2のX線入射面3Aおよび同じX線出射面3Bがπ字状になっているブロック3deからなる3次元パターンモデルの顕微鏡像である。X線透過方向の主ブロック長さL1が200μm、副ブロック長さL2が500μmであり、L1<L2の例である。このため、図3(a)〜(c)の場合と異なり、π字状のパターンとなる。
図3(f)は図2のX線入射面3Aおよび同じX線出射面3Bが図3(e)とは異なるπ字状になっている3次元パターンモデルの顕微鏡像である。X線透過方向の主ブロック長さL1が200μm、副ブロック長さL2が1000μmであり、L1に比べてL2がかなり長い例である。
図3(a)〜(f)は、X線入射面3AとX線出射面3Bの形状および長さLを変数として調節することにより、様々なパターンを形成できることを示す。
特に、図3(d)のL2=0の場合は、通常のラインアンドスペース型のチャートと類似したパターンになっているが、高さHをもつ3次元形状であり、X線照射方向が従来のX線分解能チャートと異なるため、評価される投影像は、空間分解能とコントラスト分解能の両方を同時に評価できる構造となっている。
図4に感光性樹脂エッチングで作製した本発明の矩形ブロックのX線投影像を示す。
図4は、シリコン基板上に矩形3次元パターンにした感光性樹脂膜を設けた図3(a)のパターンに対して、シリコン基板と平行な方向からX線を照射して検出面に投影した例である。図4左側の縦軸は画像の縦方向画素数で基板面に沿った長さを表し、図4下側の横軸は画像の横方向画素数で基板面に沿った厚み(長さ)を表す。また、図4の右端のスケールは濃度を表している。前記スケールは、下側に向かうにつれて濃い状態になり、上側に向かうにつれて薄い状態を表す。
図4は、図2のシリコン基板4のX軸方向に平行な方向からX線を投影することで、長さの異なる主ブロックおよび副ブロックが交互に配置された矩形ブロック3eの幅W×高さHの投影断面当たりの透過X線量が画像の輝度値に対応して表されている。図4では、矩形ブロック3eはエポキシ樹脂3次元パターンと表示され、シリコン基板4断面及び矩形ブロック3の高さHはそのとおりに表示されている。
図4では、3次元パターンの投影断面H×Wが明瞭に検知されており、異なる幅Wのパターン群から空間分解能が、また、主ブロックおよび副ブロックによって交互に変化する投影断面H×Wの輝度値の比からコントラスト分解能が同時に評価できる。この輝度値の比はそれぞれ主ブロックおよび副ブロックの長さ、すなわち、X線透過距離に対応しているので、これらの比(主ブロックと副ブロックの長さの比)を変えることで、任意のコントラストを設定し、空間分解能を評価することができる。
X線撮像系のコントラスト分解能のみを評価する場合、エポキシ樹脂の厚さ(例えば、図3の場合、長さL1、L2)を漸次増加又は漸次減少、具体的には、ステップ状あるいは連続的に変化(増減)させて、矩形ブロック3を透過するX線透過距離を変えることで、任意のコントラストを実現できる。
図5は感光性樹脂エッチングで製作したステップ状の3次元パターンの上面図(図2の例で例示すると、基板2に垂直の方向から見た図)である。図5には、上下方向に、4本の形状の異なる3次元パターン3ca、3cb、3cc、3cdが示されている。
図5の平面図におけるそれぞれの3次元パターン3ca、3cb、3cc、3cdは、略4辺形の形状を呈し、その略4辺形の下辺(図2の例で例示すると、基板2に垂直の方向から見た矩形ブロック3の上面3CのX線出射面3B側の辺)3Ba、3Bb、3Bc、3Bdがステップ状に変化して、略4辺形の上下幅(図2の例で例示すると、基板2に垂直の方向から見た矩形ブロック3の上面3Cの長さL1、L2)が各3次元パターン3ca、3cb、3cc、3cdの長さ方向における左側から右側に向けて所定のステップ幅で漸次ステップ状(段差を持った形状)に減少している。あるいは、図2の主ブロックのみを、W=500μm、H=100μmとし、L1を10μmから順次10μm刻みで増加させたブロックを、Y方向に複数連ねたものと考えることもできる。
4本の3次元パターンの内、最も上下幅の細い3次元パターン3cdの上下幅の最も細い端部の厚みは10ミクロンである。各ステップはその上下幅方向の高さが100ミクロンで、厚みが10ミクロンである。3次元パターンの各ステップは、その長さ方向に100ミクロンごとに変化し、最大端部(上下幅が最も大きい3次元パターン3caの最も上下幅が大きい端部(図5における左端部))の厚みが1ミリまで変化する。この3次元パターンをシリコン基板(図示省略)に搭載し、その基板のX軸方向(図2の例で示すと、X軸方向)に平行な方向からX線を照射すると、X線透過距離が10ミクロンずつ増加又は減少するように変化するので、X線の透過量もこれに応じて増加又は減少する。
このX線撮影像を図6に示す。
図6は、ステップ状に厚みが変わる本発明の3次元パターンのX線透過像の説明図である。図6の横軸は図2の例で示すとZ軸方向長さ、図6の縦軸は図2の例で示すとY軸方向長さ、図6の右側のスケールは、濃度を表す。図6はシリコン基板4上にステップ状の3次元パターン3を搭載した3次元パターンモデルのX線撮影像を示す。
シリコン基板4上に作製されたステップ状3次元パターン3の厚みがステップ状に漸次増加する下端方向(図6で下方)に向かって、輝度値が減少していく様子が示されている。このような3次元パターン3を用いることで、このX線撮像系のコントラスト分解能を高精度に評価することができる。
本発明の3次元パターンモデルでは、透過X線の減衰は、3次元パターンモデルの材質の密度、質量減衰係数、透過距離に依存する。上で説明したエポキシ樹脂の感光性樹脂エッチングによる3次元パターンモデルは、材質の密度および質量減衰係数は一定で、透過距離のみを変えることでX線の減衰を変化させる。しかし、材質を変えることによっても、同様のX線減衰効果を実現することができる。材質を変えることで、密度および質量減衰係数の積が変化するので、透過距離が同じであっても、適切な材質の組み合わせを選択することで、所望のコントラスト比を得ることが可能である。このような3次元パターンを、図7に示す。
図7は異なる材質で構成された本発明の3次元パターンモデルの説明図である。
図7の3次元パターンモデルは、図2の例のように、矩形ブロックとする。主および副それぞれの矩形ブロック3f、3gは、幅W、高さH、長さL1およびL2を、各隣接ブロック間で同じとし、それぞれの材質を求める透過量に応じて変更する。
この例の場合、矩形ブロック3gは材質1で形成し,矩形ブロック3fは材質2で形成する。ここで、密度をρ,質量減衰係数をμとすると,材質は密度と質量減衰係数の積で表わされ,材質1はρ1μ1、材質2はρ2μ2となる。ρ1とρ2およびμ1とμ2はそれぞれ異なる。そのため,材質1と材質2は異なる。
高い空間分解能が求められるマイクロフォーカスX線検査装置では、感光性樹脂エッチングによる3次元パターン作製が有利であるが、数百kVを超える高エネルギーX線に対しては、透過距離を変えるよりも、材質を変えることで所望のコントラスト比を実現する方が簡便な場合もある。例えば、高エネルギーX線システムのコントラスト評価には、アルミニウムと銅、アルミニウムと鉄、アルミニウムとタングステン、アルミニウムと金等の組み合わせが考えられる。これらの材質が異なる材料を適宜組み合わせることにより求めるX線透過特性を得る。上記金属材料の他に樹脂材料を用いることもできる。
以上、代表的な実施例を説明したが、他の実施の形態についても、基本的には、X線分解能評価用ファントムの3次元パターンは、X線透過量特性が所望のものになるようにその形状、材料等を調整・制御することができる。
本発明は,マイクロフォーカスX線発生器を用いるX線撮像系の性能評価に有効である。しかし、マイクロフォーカスX線発生器に限らず、3次元パターンモデルの形状や材質を変えることにより、高エネルギーX線発生器を用いる非破壊検査装置の評価一般に適用可能である。
また、現状では、医療診断用X線装置(透視およびCT撮影)の画像評価用X線分解能評価用ファントムは整備されているが、空間分解能がミクロンオーダーのマイクロフォーカスX線装置の空間分解能とコントラスト分解能を同時評価する3次元パターンモデルは製造されていない。本発明の3次元パターンモデルを適用することにより、マイクロフォーカスX線検査の評価基準を与え、JIS、ISO等の標準化モデルとして使うことも可能である。
石英ガラス基板上のクロム製フォトマスクパターンの説明図である。 本発明の同じ材質でX線透過距離を変えた3次元パターンモデルの説明図である。 感光性樹脂で作成した本発明の3次元パターンの顕微鏡写真である。 感光性樹脂エッチングで作成した本発明の3次元パターンのX線透過像の写真である。 感光性樹脂エッチングで作成した本発明のステップ状3次元パターンの上面図である。 ステップ状に厚みが変わる本発明の3次元パターンのX線透過像の説明図である。 異なる材質で構成された本発明の3次元パターンの説明図である。 従来のX線空間分解能チャートの説明図である。 従来のX線空間分解能チャート撮影図である。
符号の説明
1 3次元パターンモデル
2 矩形ブロックモデル
3 矩形ブロック
3a 主矩形ブロック
3b 副矩形ブロック
3A 入射面
3B 出射面
3c 上面
3D ステップ状3次元パターン
4 基板
5 照射X線

Claims (9)

  1. 基板と該基板上に設けた複数のブロックからなるX線分解能評価用ファントムであって、
    前記ブロックは、前記基板に垂直な方向の高さが一定の感光性樹脂からな主ブロックと副ブロックを、前記基板上の一方向に交互に並列に連続して配置、前記一方向と直交する方向の両端に前記基板に垂直なX線入射端面とX線出射端面を有し、かつ、前記X線入射端面から入射し前記X線出射端面から出射するX線の減衰量を、前記主ブロックおよび副ブロック間で異なるように構成したことを特徴とするX線分解能評価用ファントム。
  2. 前記X線入射端面から入射し前記X線出射端面から出射するX線の減衰量を、交互に配置された主ブロックと副ブロックの長さを変化させることにより両ブロック間で異なるように構成したことを特徴とする請求項1記載のX線分解能評価用ファントム。
  3. 前記主ブロックおよび前記副ブロック、それらの配置方向の幅と前記X線入射端面から前記X線出射端面までのX線透過方向の長さが任意に設定された矩形状に形成することにより、前記X線入射端面から入射し前記X線出射端面から出射するX線の放射方向の投影面積と減衰量を、両ブロック間で異なるように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載のX線分解能評価用ファントム。
  4. 前記主ブロックおよび前記副ブロックは、前記X線入射端面から前記X線出射端面にわたって断面E字形又はπ字形に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のX線分解能評価用ファントム。
  5. 前記主ブロックおよび前記副ブロックは、それぞれ、すべて同じ材質で、前記X線入射端面から前記X線出射端面までのX線透過方向の長さをX線減衰量が同じにならないようにステップ状に異ならせたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のX線分解能評価用ファントム。
  6. 前記主ブロックおよび前記副ブロックは、それぞれ、すべて同じ材質で、前記X線入射端面から前記X線出射端面までのX線透過方向の長さをX線減衰量が同じにならないように連続的に異ならせたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のX線分解能評価用ファントム。
  7. 前記主ブロックは、それぞれ、すべて同じ材質で、前記X線入射端面から前記X線出射端面までの長さをX線減衰量が同じにならないように異ならせたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のX線分解能評価用ファントム。
  8. 前記主ブロックおよび前記副ブロックは、すべて同じ形状で、それぞれの材質をX線減衰量が同じにならないように異ならせたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のX線分解能評価用ファントム。
  9. 前記主ブロックおよび前記副ブロックをエッチング処理された感光性樹脂としたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載のX線分解能評価用ファントム。
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