JP5003914B2 - 燃料電池用セパレータ - Google Patents
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Description
ところで、燃料電池の発電時においてガス同士の反応により生じる水は、電池特性に大きな影響を与えることが知られており、発電時に発生した水を速やかに排出できることが、セパレータに求められる特性の中で最も重要となる。この排水性能は、セパレータの親水性に依存するものであるため、これを向上させる必要がある。
例えば、特許文献1(特開2002−025570号公報)には、燃料電池用セパレータ処理面の少なくとも一方と対向した面が概略同形状である電極を用いて放電プラズマを発生させ、該プラズマにより親水化する方法が開示されている。
また、特許文献2(特開2006−331673号公報)には、燃料電池用セパレータのガス流路を平均粗さRa1.0〜5.0μm、凹凸の平均間隔RSm100〜200μmに粗面化し、さらにその表面を大気圧プラズマ処理する方法が開示されている。
また、汎用のプラズマ電極では、ガス流路となる溝を構成する凹凸の凸部表面は親水化され易い一方、側面や溝の底部表面にはプラズマが行き届きにくいため、これらの部分が親水化処理されにくいという問題がある。これを解決するため、特許文献1のように、プラズマ電極をセパレータの溝形状に合わせて加工する必要が生じ、製品のコスト高につながる。
さらに、特許文献2の方法では、ショットブラストにより粗面化を施しているので、燃料電池用セパレータのガス流路となる溝の底部および側面に樹脂が残存し易く、プラズマ処理をしても十分な親水性が得られない場合がある。
1. 黒鉛粉末、熱硬化性樹脂、および内部離型剤を含む組成物を成形して得られ、少なくともその一方の面にガス流路となる溝が複数条形成された成形体における前記溝が形成された表面全体を、エアブラストまたはウェットブラスト処理した後、さらにリモート方式常圧グロー放電プラズマ処理して得られ、電極と積層して使用される燃料電池用セパレータであって、前記ガス流路となる溝の底部表面の静的接触角およびこの溝が形成された面と同一面側の前記電極との接触部の静的接触角がそれぞれ10〜70°で、これら各静的接触角の差の絶対値が10°以内であることを特徴とする燃料電池用セパレータ、
2. 前記セパレータ表面の算術平均粗さRaが0.43〜1.20μm、凹凸平均間隔RSmが50〜160μm、局部山頂の平均間隔Sが20〜70μmである1の燃料電池用セパレータ、
3. 前記ガス流路となる溝の底部表面の静的接触角およびこの溝が形成された面と同一面側で前記電極との接触部の静的接触角がそれぞれ10〜60°で、これら各静的接触角の差の絶対値が9°以内である1または2の燃料電池用セパレータ、
4. 前記成形体が、黒鉛粉末100質量部、熱硬化性樹脂10〜30質量部、および内部離型剤0.1〜1.0質量部を含む組成物を成形して得られたものである1〜3のいずれかの燃料電池用セパレータ、
5. 前記エアブラストまたはウェットブラスト処理が、平均粒径(d=50)6〜30μmの砥粒を用いて行われる1〜4のいずれかの燃料電池用セパレータ、
6. 少なくともその一方の面にガス流路となる溝が複数条形成された成形体における前記溝が形成された表面全体を、エアブラストまたはウェットブラスト処理した後、さらにリモート方式常圧グロー放電プラズマ処理することを特徴とする1の燃料電池用セパレータの製造方法、
7. 前記エアブラストまたはウェットブラスト処理によって、前記成形体表面全体を、算術平均粗さRa0.43〜1.20μm、凹凸平均間隔RSm50〜160μm、局部山頂の平均間隔S20〜70μmに粗面化する6の燃料電池用セパレータの製造方法、
8. 前記プラズマ処理が、前記電極との接触部から1〜10mm離れた位置からプラズマを照射して行われる6または7の燃料電池用セパレータの製造方法、
9. 前記プラズマが、周波数0.5〜100kHz、かつ、パルス幅1〜5μ秒のパルス電界である8の燃料電池用セパレータの製造方法、
10. 前記プラズマ処理に用いられるガスが、窒素ガスを80体積%以上含む6〜9のいずれかの燃料電池用セパレータの製造方法
を提供する。
また、電極接触部の親水性も良好であるため、セパレータと電解質膜(あるいは電極)との接触界面においても生成水とのなじみがよく、接触界面の水をスムーズに排出することができる。
したがって、本発明の燃料電池用セパレータを備えた燃料電池は、長期に亘って安定した発電効率を維持することができる。
本発明に係る燃料電池用セパレータは、電極と積層されて使用されるものであって、少なくともその一方の面にガス流路となる溝が複数条形成された成形体における溝が形成された表面全体を、エアブラストまたはウェットブラスト処理した後、さらにリモート方式常圧グロー放電プラズマ処理して得られ、ガス流路となる溝の底部表面の静的接触角およびこの溝が形成された面と同一面側で前記電極との接触部の静的接触角がそれぞれ10〜70°で、これら各静的接触角の差の絶対値が10°以内であることを特徴とする。
本発明で用いられる黒鉛粉末としては、例えば、天然黒鉛、針状コークスを焼成した人造黒鉛、塊状コークスを焼成した人造黒鉛などの黒鉛粉末が挙げられる。これら黒鉛粉末は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、これら黒鉛粉末には、電極を粉砕したもの、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、コークス、活性炭、ガラス状カーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの炭素材料粉末を混合してもよい。
平均粒径が20μm未満であると、熱硬化性樹脂が黒鉛の表面を覆い易くなり、黒鉛粒子同士の接触面積が小さくなる。このため、セパレータ自体の導電性が悪化する可能性が高い。一方、平均粒径が80μmを超えると、黒鉛粒子間の空隙に熱硬化性樹脂が侵入し易くなり、黒鉛粒子同士の接触面積が小さくなる。その結果、この場合もセパレータ自体の導電性が悪化する可能性が高い。
すなわち、黒鉛材料の平均粒径が20〜80μmの範囲外にあるものは、黒鉛粒子表面または粒子同士の間隙に熱硬化性樹脂層が発生し易くなり、いずれにしてもセパレータ自体の導電性の悪化を招来する可能性が高い。
なお、平均粒径(d=50)は、粒度分布測定装置(日機装(株)製)による測定値である。
また、セパレータ用組成物中における内部離型剤の含有量としては、特に限定されるものではないが、黒鉛粉末100質量部に対して0.1〜1.5質量部、特に0.3〜1.0質量部であることが好ましい。内部離型剤の含有量が0.1質量部未満では離型不良を招く虞があり、1.5質量部を超えると、熱硬化性樹脂の硬化を妨げるなどの問題が生じる虞がある。
なお、本発明において、成形体の性能を損なわない程度であれば、セパレータ用組成物中に、その他の添加剤(炭素繊維や金属繊維などの短繊維)を配合してもよい。
ここで組成物の調製方法およびセパレータの成形方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の方法を用いることができる。
組成物の調製は、例えば、上述の熱硬化性樹脂、黒鉛粉末および内部離型剤のそれぞれを任意の順序で所定割合混合して行えばよい。混合に用いられる混合機としては、例えば、プラネタリーミキサ、リボンブレンダ、レディゲミキサ、ヘンシェルミキサ、ロッキングミキサ、ナウターミキサ等が挙げられる。
セパレータの成形方法としても、特に限定されるものではなく、射出成形、トランスファ成形、圧縮成形、押出成形等を採用することができる。これらの中でも、成形されたセパレータの精度および機械的強度に優れていることから、圧縮成形が好ましい。
ガスの流路となる溝部の形成は、成形体の成形後に掘削等により行っても、溝部に対応する凸部を有する金型を用いて成形体の成形と同時に行ってもよい。
この際、粗面化の程度は、特に限定されるものではないが、最終的なセパレータの親水性や接触抵抗を考慮すると、成形体表面全体を、算術平均粗さRa0.43〜1.20μm、凹凸平均間隔RSm50〜160μm、局部山頂の平均間隔S20〜70μmに粗面化することが好ましく、特に、算術平均粗さRa0.45〜1.15μm、凹凸平均間隔RSm65〜160μm、局部平均間隔S22〜70μmに粗面化することが好ましく、さらに、算術平均粗さRa0.60〜1.00μm、凹凸平均間隔RSm80〜110μm、局部平均間隔S30〜50μmに粗面化することがより好ましい。
ここで、砥粒の平均粒径が6μm未満では、算術平均粗さRaを0.3μm以上に処理し難いため、表層に樹脂が残り易く、30μm超では、粒度が粗すぎるため、セパレータ表面に砥粒が突き刺さり易くなり、その結果、セパレータの表層に砥粒が残存し易くなる。
また、本発明では、ガス流路となる溝が形成されている成形体表面全体を(マスキングすることなく)ブラスト処理するものであるが、上記範囲の平均粒径を有する砥粒を用いることで、シール溝部をマスキングせずにガス流路部とシール溝部とを同時にブラスト処理してもシール溝部のシール性を損なうことなく、親水性を発揮させることができる。
ブラスト処理で使用する砥粒の材質としては、アルミナ、炭化珪素、ジルコニア、ガラス、ナイロン、ステンレス等を用いることができ、これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
プラズマ処理としては、被処理物を印加した一対の対向電極で形成される放電空間の内部に配置し、プラズマ生成ガスを導入して、処理を行うダイレクト方式と、被処理物を放電空間外に配置し、放電空間で発生したプラズマを放電空間に隣接する吹出し口から被処理物に吹き付けて処理するリモート方式(あるいはプラズマジェット方式と称することもある)とがある。
上述したように、従来用いられていたダイレクト方式では、成形体が直接放電空間内に配置されるため、アーク放電により成形体が直接的なダメージを被る場合があるほか、放電の影響で発熱して反ったり、膨張したりすることがあった。また、ガス流路の溝を構成する凹凸の凸部表面(電極との接触部)は親水化処理されるが、溝の側面や底部表面にプラズマ中の活性種が行き届きにくく、これらの部分の親水化処理が不十分となることが多かった。
また、その理由は定かではないが、リモート方式常圧グロー放電プラズマ処理を採用すると、溝の底部表面まで均一に親水化できる。
なお、プラズマ処理にあたって、成形体の外寸以上のライン形状でプラズマを照射することで、均一に、かつ、連続的にプラズマ処理を施すことができる。
リモート方式であっても、10mmよりも離れた位置からプラズマを照射すると、ガス流路となる溝の側面や底部に活性種が届きにくくなるため、親水化処理が不十分となったり、親水化処理時間が長くなったりする場合がある。一方、1mm以内の位置からプラズマを照射すると、リモート方式であっても電界印加電極と成形体との間でアーク放電が発生し、上述した発熱の影響が無視できなくなる場合がある。
0.5kHz未満であるとプラズマ密度が低いため、所望の親水性が得られなくなる虞があり、100kHzを超えるとアーク放電が発生しやすくなる。
また、パルス電圧のパルス幅を5μ秒以下とすることによって、処理ガス中のラジカル発生量を増やし、処理効率を向上させることができる。
発電により生じた水の排水性という観点から、上記各静的接触角は10〜60°で、各接触角の差の絶対値が9°以内、特に7°以内であることがより好ましいが、本発明の手法によれば、このようなセパレータを得ることも可能である。
なお、プラズマ処理後のセパレータの表面特性は、上述したプラズマ処理条件で処理した場合は、ブラスト処理後のそれと変わらない。
一般的に固体高分子型燃料電池は、固体高分子膜を挟む一対の電極と、これらの電極を挟んでガス供給排出用流路を形成する一対のセパレータとから構成される単位セルが多数並設されてなるものであるが、これら複数個のセパレータの一部または全部として本発明の燃料電池用セパレータを用いることができる。
天然黒鉛粉末(平均粒径30μm)100質量部、熱硬化性樹脂である液状レゾール型フェノール樹脂28質量部、および内部離型剤であるカルナバワックス0.3質量部を、ヘンシェルミキサ内に投入し、1500rpmで3分間混合してセパレータ用組成物を調製した。
得られた組成物を、ガス流路の溝に対応するリブを有する300mm×300mmの金型に投入し、金型温度180℃、成形圧力29.4MPa、成形時間2分間にて圧縮成形し、ガス流路の溝を有する板状成形体を得た。
次いで、得られた板状成形体の全表面に対し、粒径20μm(d=50)のアルミナ研創材(砥粒)を圧力0.25MPaでエアブラストして粗面化処理を施し、その後、リモート方式常圧グロー放電プラズマ処理装置を用いて、周波数30kHz、パルス幅5μs、プラズマ電極幅450mm、セパレータの電極接触部とプラズマ電極との距離1mm、セパレータ搬送速度500mm/min、窒素ガス100体積%、ガス流量200L/minの条件でプラズマ処理を施し、燃料電池用セパレータを得た。
窒素ガス80体積%、酸素ガス20体積%の処理ガスを用いた以外は、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを得た。
窒素ガス99.9体積%、酸素ガス0.1体積%の処理ガスを用い、上記電極接触部とプラズマ電極との距離を10mmとした以外は、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを得た。
ダイレクトプラズマ方式のプラズマ処理装置(AP−T02−S、積水化学工業(株)製)(プラズマ電極幅450mm、セパレータ搬送速度500mm/min、窒素ガス100体積%、ガス流量100L/min)を用いてプラズマ表面処理を施した以外は、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを得た。
粗面化処理に、砥粒粒径6μm(d=50)のアルミナ研創材を用い、圧力0.25MPaでウェットブラストした以外は、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを得た。
電極との接触部をマスキングした以外は、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを得た。
プラズマ表面処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを得た。
さらに、得られたセパレータそれぞれを用いて固体高分子型燃料電池を組み立て、発電性能試験を行った。その結果を表1に示す。
各評価項目は以下の方法により、測定・評価した。
[1]Ra、RSm、S値
表面粗さ計(東京精密(株)製、サーフコム1800D、プローブ先端径5μm)を用い、JIS B0601 1994の方法に準じて測定した。
[2]静的接触角
接触角計(協和界面化学(株)製、CA−DT・A型)を用い、セパレータのガス流路となる溝の底部と、電極との接触部とのそれぞれについて測定した。
[3]発電特性
セパレータに固体高分子電解質膜(商品名;ナフィオン112、デュポン株式会社)、ガス拡散電極(TGP−H−090)を積層し、単セルの固体高分子型燃料電池を組み立てた。セル温度80℃、加湿ガスの露点温度80℃、水素ガス利用率40%、空気利用率70%、電流密度0.2A/cm2の条件で燃料電池の発電を行った。発電3時間経過後および168時間経過後に、それぞれ1時間電圧測定を行い、平均電圧と電圧のばらつきを求めた。
Claims (10)
- 黒鉛粉末、熱硬化性樹脂、および内部離型剤を含む組成物を成形して得られ、
少なくともその一方の面にガス流路となる溝が複数条形成された成形体における前記溝が形成された表面全体を、エアブラストまたはウェットブラスト処理した後、さらにリモート方式常圧グロー放電プラズマ処理して得られ、電極と積層して使用される燃料電池用セパレータであって、
前記ガス流路となる溝の底部表面の静的接触角およびこの溝が形成された面と同一面側の前記電極との接触部の静的接触角がそれぞれ10〜70°で、これら各静的接触角の差の絶対値が10°以内であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。 - 前記セパレータ表面の算術平均粗さRaが0.43〜1.20μm、凹凸平均間隔RSmが50〜160μm、局部山頂の平均間隔Sが20〜70μmである請求項1記載の燃料電池用セパレータ。
- 前記ガス流路となる溝の底部表面の静的接触角およびこの溝が形成された面と同一面側で前記電極との接触部の静的接触角がそれぞれ10〜60°で、これら各静的接触角の差の絶対値が9°以内である請求項1または2記載の燃料電池用セパレータ。
- 前記成形体が、黒鉛粉末100質量部、熱硬化性樹脂10〜30質量部、および内部離型剤0.1〜1.0質量部を含む組成物を成形して得られたものである請求項1〜3のいずれか1項記載の燃料電池用セパレータ。
- 前記エアブラストまたはウェットブラスト処理が、平均粒径(d=50)6〜30μmの砥粒を用いて行われる請求項1〜4のいずれか1項記載の燃料電池用セパレータ。
- 少なくともその一方の面にガス流路となる溝が複数条形成された成形体における前記溝が形成された表面全体を、エアブラストまたはウェットブラスト処理した後、さらにリモート方式常圧グロー放電プラズマ処理することを特徴とする請求項1記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
- 前記エアブラストまたはウェットブラスト処理によって、前記成形体表面全体を、算術平均粗さRa0.43〜1.20μm、凹凸平均間隔RSm50〜160μm、局部山頂の平均間隔S20〜70μmに粗面化する請求項6記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
- 前記プラズマ処理が、前記電極との接触部から1〜10mm離れた位置からプラズマを照射して行われる請求項6または7記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
- 前記プラズマが、周波数0.5〜100kHz、かつ、パルス幅1〜5μ秒のパルス電界である請求項8記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
- 前記プラズマ処理に用いられるガスが、窒素ガスを80体積%以上含む請求項6〜9のいずれか1項記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
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