JP5001759B2 - 脱塩重縮合系重合体の製造方法 - Google Patents

脱塩重縮合系重合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、脱塩重縮合系重合体の製造方法に関する。より詳しくは、工業的な製造設備によって生産されるフッ素系重合体等の製造に好適に用いられる脱塩重縮合系重合体の製造方法に関する。
重合体の製造方法の一つとして、単量体中の反応性官能基どうしが縮合反応して重合していく重縮合が知られており、その一つとして脱塩触媒を用いて脱塩しながら重縮合を行う脱塩重縮合が工業的に行われている。
脱塩重縮合反応として、例えば、2つ以上のハロゲン元素を置換基として有する化合物と、2つ以上の水酸基やチオール基を有する化合物とからハロゲン化水素が脱離してエーテル重合体やスルフィド重合体を生成する反応等が挙げられる。これらの反応から、ポリエーテルケトンやポリエーテルスルホンなどのエンジニアプラスチックが得られることはよく知られている。更に、芳香族基にフッ素を含有するフッ素含有アリールエーテル系重合体は、耐熱性や電気的特性、及び、光学特性に優れた化合物であることから、高周波用配線基板や多層配線基板などの電子材料用途、液晶表示素子等の表示基板用途、表示装置用の光学フィルム材料として知られている。
脱塩重縮合反応を用いて重合を行う場合、フェノラートを作製する際に生じる水を取り除くことが重要である。高温反応による脱水や共沸溶剤を用いる脱水により重合することが一般的であるが、モレキュラーシーブ等の脱水剤を用いることも知られている。例えば、末端に塩素原子及びフェノール性水酸基を有する芳香族ケトン化合物とアルカリ化合物とからフェノラートを調製したのち、加熱重合して芳香族ポリエーテルケトンを製造するに当たり、フェノラートの調製及び/又は加熱重合を硫酸ナトリウムの存在下に行う芳香族ポリエーテルケトンの製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献には、縮合反応においても水が存在すると反応が進まず重合溶媒の脱水が必須であることから、予めモレキュラーシーブで乾燥した溶媒を用いることが示されている。しかしながら、この技術はフェノキシ塩を作製する際に生じる水を事前に共沸脱水で取り除くことが重要であり、作業が二段階になっていることから工夫の余地があった。
また、脱塩重縮合系重合体を製造する従来の技術としては、脱塩重縮合反応によりポリエーテルケトンを製造するに際し、ポリマーが析出した状態で重合反応を行う工程を有するポリエーテルケトンの製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この文献には、ポリマーが析出した状態で重合反応を行う工程を有するポリアリールケトンの製造方法が開示されており、この中の実施例8において、留出した溶媒を凝縮させ、モレキュラーシーブを通して脱水した後、系内に戻す方法が開示されてている。しかしながら、この反応では共沸点以上で反応することが必須で、且つ重合系において自然還流が大きい場合に脱水効率はあまり良くないというところに課題があった。
また、透明性をもつ成形物を形成する重合体を含有する透明樹脂材料であって、フッ素原子を有する重合体及び/又は化合物を必須成分とし、フッ素原子の含有割合が成形物100質量%中に0.3〜35質量%となるものである透明樹脂材料が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この文献では、透明樹脂材料について開示されており、この中にモレキュラーシーブを系内に入れて重合を行うことが開示されている。しかしながら、更に効率的に脱塩重縮合を進めることや、重合後に行う濾過工程を効率的に行うこと等、工業的な生産に適するものにする工夫の余地があった。
特開平5−178983号公報(第1−2頁) 国際公開第2003/050163号パンフレット(第22頁) 特開2006−77230号公報(第1−2頁)
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、脱塩重縮合反応を安定的にかつ効率よく行うことができ、所望の分子量を有する重合体を容易に得ることができ、また、重合後の濾過工程を簡略化して行うことができる脱塩重縮合系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、脱塩重縮合系重合体を製造する方法について種々検討したところ、脱塩重縮合反応を行う際は、水が存在すると重合のぶれの原因となることから、系内に生じた水を速やかに取り除くことが重要であることを見いだした。そして、短径に対する長径の比が特定の範囲内である形状を有する成形モレキュラーシーブを脱水剤として用いると、優れた脱水効果が発揮され、脱塩重縮合反応を効率よくかつ安定的に行うことのみならず、更に、重合後に重合体溶液からモレキュラーシーブ及び塩(触媒及び副生塩)を取り除くことが容易になり、重合後に行う濾過工程に要する負担が軽減され、目詰まり等の問題を解決できることを見出し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、脱塩重縮合反応を行なう工程を含む脱塩重縮合系重合体の製造方法であって、上記脱塩重縮合反応工程は、成形したモレキュラーシーブを使用し、上記成形モレキュラーシーブの形状が1≦長径/短径≦3を満たす脱塩重縮合系重合体の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の製造方法で用いられる成形モレキュラーシーブは、1≦長径/短径≦3を満たす形状を有することによって、系中の水を素早く吸水し、かつ、擦れ等によって破砕されにくく濾過における目詰まりが生じにくいものとなる。また、成形モレキュラーシーブ自体が非常に粗い濾過助剤のような働きを行い、副生した塩等が締まった状態になることを防ぐ。上記製造方法によれば、重合後に重合体溶液からモレキュラーシーブ及び塩(触媒及び副生塩)を取り除くことが容易になり、重合後に行う濾過工程の負担が軽減され、目詰まり等の問題を解決できる。これに対して、一般的な有機反応では、脱水に主眼が置かれるので、ペレット状及び球状の成形モレキュラーシーブよりも吸着速度が優れる粉末状のモレキュラーシーブがより好適に使用されている。
好ましくは、上記比(長径/短径)は、1≦長径/短径≦2である。より好ましくは1≦長径/短径≦1.6であり、最も好ましくは1≦長径/短径≦1.2である。
成形モレキュラーシーブの場合、成形体の表面からの溶媒の浸透により、その中での水の吸着も起こる。上記比が3より大きい場合、長径側と短径側からの水の浸透速度が異なる為、モレキュラーシーブを効率的に用いることができない。上記比が1に近づくに連れて、モレキュラーシーブ全体を効率よく使用できる。
なお、上記長径とは、モレキュラーシーブの長手方向の長さである。また、上記短径とは、モレキュラーシーブの長手方向に対して垂直方向の断面において、断面の重心を通って断面を二分する線分の最短距離である。また、本発明において、短径及び長径は、無作為に選択した20個のモレキュラーシーブの平均値を意味するものであり、例えば、ノギス等の装置によって測定することができる。上記実施形態においては、無作為に選択した20個の平均値が上記比を満たしていればよく、上記比を満たさないモレキュラーシーブが含まれていてもよいが、無作為に選択した20個のモレキュラーシーブのすべてが上記比を満たすことが好ましい。
上記成形モレキュラーシーブの使用量は、脱塩重縮合反応で発生する水(単量体と同モル当量)の5〜50倍重量用いることが好ましい。より好ましくは8〜30倍重量であり、更に好ましくは10〜20倍重量である。
特に下限使用量が重要であるが、これにより、系内の含水量を低い状態に維持することができ、脱塩重縮合反応を安定して行い、重合後の濾過も円滑に進めることができる。
上記重縮合反応工程は、単量体成分が有する反応性官能基に対して0.8〜3当量のアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒を用いることが好ましい。
上記単量体成分が有する反応性官能基とは、脱塩重縮合反応の原料として用いられる単量体が有する官能基であって、アルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒によって架橋反応を生じる求核種を意味するものである。反応性官能基は、水酸基、チオール基の何れかであることが好ましい。更に好ましくは、水酸基である。
上記反応性官能基に対して0.8〜3当量のアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒を用いて行うことによって、脱塩重縮合反応が急激に進行することを防ぐことができ、所望の分子量を有する重合体を容易に得ることができる等の効果に優れることになる。
上記脱塩重縮合反応工程に用いるアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒の量としてより好ましくは、0.9〜2.0当量である。更に好ましくは1.0〜1.8当量であり、最も好ましくは1.0〜1.6当量である。
上記アルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒を含んでなる化合物は、脱塩重縮合反応により生成する酸を補集することにより脱塩重縮合反応を促進させる作用を有するものであることが好ましい。そのような作用を有するアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸リチウム、水酸化カリウム、フッ化カリウムが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、炭酸カリウムを用いることがより好ましい。
なお、単量体成分が有する反応性官能基に対して0.8〜3当量の触媒を用いるとは、例えば炭酸カリウムを触媒に用いる場合、炭酸カリウムは2個のカリウムイオンを有するので、2官能の単量体(例えば、ビスフェノール)1モルに対して、0.8〜3モルの炭酸カリウムを用いることである。
上記成形モレキュラーシーブは、短径が0.3〜1.2mmのものであることが好ましい。成形モレキュラーシーブの短径が0.3〜1.2mmのものであると、系中で速やかに拡散し、より優れた吸水速度が発揮されることになり、反応効率の向上等の効果が更に顕著に発揮されることになる。また、モレキュラーシーブを除去するために重合後に行う濾過工程の負担が軽減され、目詰まり等の問題が更に起こりにくくなる。
成形モレキュラーシーブの短径の上限値は、好ましくは1.2mm以下、より好ましくは1.0mm以下、更に好ましくは0.9mm以下である。短径の上限値が1.2mm以下のものであると、モレキュラーシーブ中に溶媒が速やかに浸透し吸水するため、優れた吸水速度を発現する。その結果、重合が速やかに進行しやすくなり、反応効率の向上が確認できる。
また、成形モレキュラーシーブの短径の下限値は、好ましくは0.3mm以上であり、更に好ましくは0.4mm以上である。短径の下限値が0.3mm以下の場合、重合後に行う副生塩やモレキュラーシーブを取り除く濾過工程においてモレキュラーシーブによる濾過負荷も加わるために、目詰まり等の問題を生じることがある。
なお、本発明における成形モレキュラーシーブの短径は、無作為に選択した20個のモレキュラーシーブの平均値によって算出される値である。短径は、例えば、ノギス等の装置によって測定することができる。上記実施形態においては、無作為に選択した20個の平均値が上記短径を満たしていればよく、上記短径の範囲を外れるモレキュラーシーブが含まれていてもよいが、無作為に選択した20個のモレキュラーシーブのすべてが上記短径の範囲内であることが好ましい。
上記成形モレキュラーシーブの形状が球状であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
重合反応時の攪拌により成型モレキュラーシーブの擦れ等により破砕が起こると、モレキュラーシーブから剥落した微細なモレキュラーシーブが生じる。これらが、重合の触媒や副生塩と合わさって、濾過の際に目詰まりの問題を生じる。成形モレキュラーシーブの形状を球状にすることにより、濾過時に目詰まりしにくく、効率のよい濾過作業が発揮できる。
成形モレキュラーシーブの形状が球状であることを数値をもって表せば、成形モレキュラーシーブの真球度が1.0〜3.0であることを意味する。
上記真球度は、1.0〜2.0であることが好ましい。より好ましくは1.0〜1.6であり、最も好ましくは1.0〜1.2である。
なお、上記真球度とは、1つの球体の最大径を最小径で除した値をいう。本発明における成形モレキュラーシーブの真球度は、無作為に選択した20個のモレキュラーシーブの平均値によって算出される値である。最大径及び最小径は、例えば、ノギス等の装置によって測定することができる。
上記実施形態においては、無作為に選択した20個の平均値が上記真球度を満たしていればよく、上記真球度を満たさないモレキュラーシーブが含まれていてもよいが、無作為に選択した20個のモレキュラーシーブのすべてが上記真球度を満たすことが好ましい。
本発明の重合体の製造方法で製造される重合体は、フッ素含有芳香族系重合体であることが好ましい。フッ素含有芳香族系重合体とは、芳香環を有する重合体であって、フッ素原子を必須とする重合体である。
即ち、フッ素含有芳香族系重合体の重合に関して、上述した形状のモレキュラーシーブを用いることが最も好ましい。
上記フッ素含有芳香族系重合体は、好ましくはフッ素含有アリールエーテル系重合体、フッ素含有アリールスルフィド系重合体である。
上記フッ素含有アリールエーテル系重合体とは、フッ素原子を必須とし、芳香環及びエーテル結合を有する重合体である。
上記フッ素含有アリールスルフィド系重合体とは、フッ素原子を必須とし、芳香環及びチオール結合を有する重合体である。
これらの中で更に好ましくは、繰り返し単位の中に芳香環の少なくとも1つにフッ素原子を有するフッ素含有アリールエーテル系重合体及び/又はフッ素含有アリールスルフィド系重合体である。
フッ素含有芳香族系重合体を製造する場合、ゲル化を抑制するために100℃以下で重合することが好ましく、系内に生じる水を脱水する方法が限定される。重合を安定的に行う為には速やかに系内の脱水を行う必要がある為に、上述したようなモレキュラーシーブを用いて重合を行う。
本発明の重合体の製造方法で製造される重合体として特に好ましくは、下記式(1);
Figure 0005001759
(式中のZは、2価の有機基又は直接結合を示す。mは、同一又は異なって、芳香環に付加しているフッ素原子の数を表し、1〜4の整数である。式中のRは、同一又は異なって、2価の有機基である。Yは、同一又は異なって、酸素原子又は硫黄原子を表す。)で表される構造の繰り返し単位を有する重合体である。
これらの繰り返し単位は、同一であっても異なっていてもよく、異なる繰り返し単位により構成される場合には、ブロック状、ランダム状等のいずれの形態であってもよい。フッ素含有ポリアリールエーテル系重合体がフッ素含有ポリアリールエーテルケトン構造を含む繰り返し単位、フッ素含有ポリアリールスルフィド構造を含む繰り返し単位の両方を有するものである場合、両者の構成比率は特に制限されない。
上記一般式(1)中、Zは、2価の有機基又はベンゼン環が直接結合していることを表す。2価の有機基として、C、S、N及び/又はO原子を含むことが好ましい。より好ましくはカルボニル基、スルフィド基、スルホン基、複素環を含有する2価の有機基であり、更に好ましくは下記式(2−1)〜(2−10)である。これらの中で(2−5)〜(2〜7)が特に好ましい。
Figure 0005001759
Xは、2価の有機基であるが、例えば下記式(3−1)〜(3−19)であることが好ましい。
Figure 0005001759
上記式(3−1)〜(3−19)中、Y、Y、Y及びYにおける置換基として、例えば、水素、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシル基が好適である。より好適なものとしては、炭素原子数1〜30であって、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシル基である。
上記Xとしてより好ましくは、下記(4−1)〜(4−20)であり、更に好ましくは下記(4−6)、(4−7)、(4−15)、(4−20)である。
Figure 0005001759
上記式(1)中、Rは、上記Xと同様である。なお、Rが上記Xと同様であるとは、Rと上記Xとが同じ基であることが好ましいことを意味するのではない。Rと上記Xとは、同一又は異なっていてもよい。
上記製造方法によって得られる重合体は、重量平均分子量が5000〜300000であることが好ましい。重量平均分子量が5000未満であると、膜が形成し難くポリマーの強度なども発現できない。また、300000を超えると、ポリマー溶液の粘度が高くなり取り扱いが難しくなる。重量平均分子量のより好ましい範囲は10000〜200000である。重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC装置、展開溶媒テトラヒドロフラン)によって測定することができる。使用カラム等のその他の測定条件は、本明細書の実施例及び比較例に用いられているものを用いることが好適である。
上記製造方法によって得られる重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、5以下であることが好ましい。より好ましくは4以下である。
上記製造方法によって、例えば4,4′−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(以下、BPDE)を用いる場合には、水を速やかに除くことでベンゾイル基の4位のフッ素との反応が起こり、重合体の分子量分布が広がることを抑制できる。
本発明の製造方法においては、上記重合体が製造されることとなるように、下記のように単量体を選択して脱塩重縮合反応が行われることが好ましい。原料として用いられる単量体としては、脱塩重縮合反応の原料となるものであり、ハロゲン原子や水酸基、チオール基等の置換基を2つ以上有する化合物の中から、脱塩重縮合反応が起こる単量体を適宜選択して1種類、又は、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
上記1種類の単量体のみで脱塩重縮合反応が起こる単量体としては、例えば、1つの分子中にハロゲン元素と水酸基との両方を置換基として有する化合物、1つの分子中にハロゲン元素とメルカプト基との両方を置換基として有する化合物が挙げられる。これらの化合物は1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また、1分子中に同一の置換基を2つ以上有する単量体同士の2種類以上の組み合わせとしては、例えば、臭素、塩素、フッ素等ハロゲン元素を2つ以上有する化合物と2つ以上の水酸基を有する化合物の組み合わせ、ハロゲン元素を2つ以上有する化合物とチオール基を2つ以上有する化合物との組み合わせ等が挙げられる。なお、本発明の重合体の製造によって得られる重合体は、得られる重合体の重合鎖の少なくとも一部が脱塩重縮合反応により形成されるものである限り、重合鎖の他の部分が脱塩重縮合反応以外の反応により形成されるものであってもよい。すなわち、本発明の重合体の製造方法に原料として用いられる単量体は、脱塩重縮合反応により重合鎖を形成する単量体を含むものである限り、その他の単量体を含んでいてもよい。
上記1種類の単量体のみで脱塩重縮合反応が起こる単量体としては、4−ヒドロキシ−4’−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(HPDE)等の1つの分子中にハロゲン元素と水酸基との両方を置換基として有する化合物等が挙げられる。1分子に同一の置換基を2つ以上有する単量体同士を組み合わせて脱塩重縮合反応を行う場合に用いられる単量体としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPF)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(Bis−AF)、2,2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BisA)等のビスフェノール類等の2つ以上の水酸基を有する化合物;4,4′−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(BPDE)、4−フェノキシ−2,3,5,6−テトラフルオロベンゾニトリル(PTFBN)、4,4′−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルオキシ)ジフェニルエーテル(BPDEs)、2,2−ビス(ペンタフルオロベンゾイルオキシフェニル)−1,1,3,3−ヘキサフルオロプロパン(BP6FBA)等の2つ以上のハロゲン原子を有する化合物等が挙げられる。
例えば、1分子に同一の置換基を2つ以上有する単量体同士を組み合わせて脱塩重縮合反応を行う場合、単量体の有効利用の観点から、1つの単量体1モルに対して、他の単量体0.8〜1.2モルの比率で用いることが好ましい。より好ましくは、1つの単量体1モルに対して他の単量体0.9〜1.1モルの比率で用いることである。
脱塩重縮合反応とは、1つの単量体官能基と別の単量体官能基との間の反応において、塩として脱離し官能基間に新たな結合が形成される反応が連続しておこることにより、重合体が形成される反応のことである。脱塩重縮合反応として、例えば2つ以上のハロゲン元素を置換基として有する化合物と、2つ以上の水酸基やチオール基を有する化合物からハロゲン化水素が脱離してエーテル重合体やスルフィド重合体を生成する反応等が挙げられる。脱塩重縮合反応に用いられる単量体は、1種であっても2種以上であってもよい。なお、本発明の重合体の製造方法は、脱塩重縮合反応を行う工程を含むものである限り、その他の工程を含んでいてもよい。
上記脱塩重縮合工程における反応温度は、任意である。通常、脱塩重縮合を用いて作製するフッ素を含有しない重合体の場合、通常系中の反応温度を100℃以上の高温で行うか、又は、共沸溶媒を用いて脱水を行う。これに対して、本発明における脱塩重縮合工程は100℃以下で行う場合に特に効果を発現する。特に、フッ素含有芳香族系重合体を作製する場合には、0〜100℃であることが好ましい。反応温度が0℃より低い場合、反応が進みにくく分子量が上がりにくい。また、100℃より大きい場合、重合体がゲル化するおそれがある。反応温度は、好ましくは40〜95℃であり、より好ましくは60〜90℃である。100℃以下で行う場合、水が系中に存在しやすく、反応を円滑に進める為にモレキュラーシーブのような脱水剤が必須となる。
上記脱塩重縮合工程における反応時間は、2〜10時間とすることが好ましい。
反応時間が10時間より長い場合、例えば4,4′−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテルのように5個のフッ素原子を有する芳香環において、ベンゾイル基の4位のフッ素だけでなくベンゾイル基の2位のフッ素も反応可能な状態に置かれていることから、重合体がゲルするおそれがある。反応時間としてより好ましくは4〜8時間である。
上記製造方法においては、重合濃度が10質量%以上であることが好ましい。なお、上記重合濃度は、触媒及びモレキュラーシーブを除いた固形分濃度である。これより低い場合、重合効率が悪く、また最終的に得られる生産性も低くなる。より好ましくは15質量%以上である。上記製造方法は、攪拌しながら脱塩重縮合反応を行うことにより、このような重合濃度であっても、各単量体成分の残存量が少なくすることができ、また、所望の分子量を有する重合体を得ることができる。
上記脱塩重縮合反応工程が非プロトン性極性溶媒を用いて行われることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
非プロトン性極性溶媒は、一般に非プロトン性極性溶媒に分類される溶媒であれば特に限定されないが、水への溶解度が10質量%以上のものであるほうが好ましい。水への溶解度が10質量%以上の非プロトン性極性溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン(以下、MEKと表記することがある。)シクロヘキサノン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが好ましい。
また、後工程で抽出する場合もあり、その場合は10質量%以上溶解する一方で水と任意には混合しない溶媒、例えば、MEKなどがより好ましい。これらの溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
上記非プロトン性極性溶媒がMEKであることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記非プロトン性極性溶媒がメチルエチルケトンであると、ポリマー溶液精製、及び、製品提供の観点等において好ましい。反応を速やかに行う為には、適切なモレキュラーシーブを選択し、反応溶媒にMEKを用いることが最も好ましい。
本発明の製造方法において、パドル翼を備えた重合槽中で単量体成分を含む反応溶液を攪拌しながら脱塩重縮合を行う工程を含むものであることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
本発明の製造方法が上記実施形態を有すると、脱塩触媒として用いるアルカリ(土類)金属塩触媒が重合槽内で分散した状態が維持され、有効触媒量が高く維持されることになり、脱塩重縮合反応を更に効率よく行うことができる。
上記パドル翼を備えた重合槽は、槽径(D)に対する重合槽底部とパドル翼最下端とのクリアランス(α)の比(α/D)が5%以下であることが好ましい。
上記比(α/D)は、4%以下であることが好ましい。より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは2%以下であり、最も好ましくは1%以下である。
なお、パドル翼とは、平板部分の形状を有する攪拌翼である。クリアランスとは、パドル翼の最下端部から垂直方向に重合槽の釜底部までの距離を意味するものである。また、槽径とは、重合槽の内側の直径である。
上記クリアランス比を満たすパドル翼を用いて脱塩重縮合を工業的に行うと、例えば、釜底に触媒の滞留が起こりにくくなり、触媒の反応溶液中における分散状態が均一となり、また、局所的ポリマー化反応等によって触媒が釜底に固着してしまう現象がより生じにくくなる。その結果、釜に満たされた反応溶液中において、分散状態が維持され、触媒の舞い上がりが促進されること等によって有効触媒量がより充分になる。これによって、重合がより遅延しにくくなる、設計通りのポリマーを調製することがより容易になる、釜への固着物を除去する必要が低くなる、製造作業に負担がかかる等の問題が生じにくくなる等の有利な効果が発揮されることになる。
本発明の重合体の製造方法は、上述の構成よりなり、脱塩重縮合反応を安定的にかつ効率よく行うことができ、所望の分子量を有する重合体を得ることができる。また、脱塩重縮合反応により副生する塩や原料の触媒塩を取り除くために行う濾過において、成形したモレキュラーシーブは濾過の負担を軽減し工程時間や作業を軽減することができる製造方法である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」意味するものとする。
下記実施例及び比較例では、下記の装置を用いて測定を行った。
<測定装置>
(1)水分量測定
自動水分計測定装置AQV−2000(平沼産業(株)製)を用いて測定した。
(2)透過率及びヘイズ
濁度計ND1001DP(日本電色工業(株)社製)を用いて、溶液の透過率及びヘイズを測定した。
ヘイズ値は、下記の式で求められる値である。
ヘイズ値(%)=(拡散透過率(%)/全光線透過率(%))×100
(3)分子量測定
高速GPC装置:HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用いて測定した。
測定条件:展開溶媒 THF
カラム TSK−gel GMHXL ×2本
溶離液流量 1ml/min
カラム温度 40℃
実施例1
モレキュラーシーブ3A 20×30(ユニオン昭和(株)社製)を用いた場合
BPDE 150.7g、BisAF 90.8g、モレキュラーシーブ3A 20×30 70g、MEK650gを混合した。BPDE及びBisAFの溶解を確認した後、炭酸カリウム52.2gを投入して79℃で重合を7時間行った。得られた重合体の重量平均分子量は、62000であった。その後、酢酸エチル702g投入した。
冷却後、この溶液を300メッシュの金網を用いて圧力0.03MPaで加圧濾過(φ142mm)を行った。量の関係上、液を混合しながら2回に分けて濾過器にスラリー溶液を投入した。その際の濾過時間(2回の合計)を示した。
濾過後の溶液を、酢酸エチルと水とを用いて抽出洗浄し、酢酸エチル溶液を濃縮することにより、ポリマー溶液を得た。
実施例2
モレキュラーシーブ3A 8×12(ユニオン昭和製)を用いた場合
上記実施例1のモレキュラーシーブをモレキュラーシーブ3A 8×12(ユニオン昭和製)に変更した以外は同じ条件で行った。
結果は、重合時間は8時間15分で、重量平均分子量は60000であった。
以下は同様にして行った。
実施例3
モレキュラーシーブ3A 1/16(関東化学製)を用いた場合
上記実施例1のモレキュラーシーブをモレキュラーシーブ3A 1/16(関東化学製)に変更した以外は同じ条件で行った。
結果は、重合時間は8時間で、重量平均分子量は61000であった。
実施例4
ポリマー構造変更
BPDE 111.7g、ビスフェノールフルオレン(以下、BPFと表記することがある。)70.1g、モレキュラーシーブ3A 20×30 60g、MEK800gを混合した。BPDE及びBPFの溶解を確認した後、炭酸カリウム69.1gを投入して79℃で重合を7時間30分行った。得られた重合体の重量平均分子量は、64000であった。その後、酢酸エチル648g投入した。
以下は同様にして行った。
実施例5
ポリマー構造変更
BPDEs(4,4′−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルオキシ)ジフェニルエーテル)118.0g、BisAF 67.3g、モレキュラーシーブ3A 20×30 70g、MEK720gを混合した。BPDEs及びBisAFの溶解を確認した後、炭酸カリウム33.2gを投入して79℃で重合を6時間30分行った。得られた重合体の重量平均分子量は、68000であった。その後、酢酸エチル702g投入した。
以下は同様にして行った。
比較例1
上記実施例1のモレキュラーシーブをモレキュラーシーブ3A 粉末品(ユニオン昭和製)に変更した以外は同じ条件で行った。
結果は、重合時間は6時間40分で、重量平均分子量は61000であった。
以下は同様にして試験した。
比較例2
上記実施例1のモレキュラーシーブを除いた以外は同じ条件で行った。
結果は、重合時間は9時間10分で、重量平均分子量は60000であった。
以下は同様にして試験した。
比較例3
上記実施例4のモレキュラーシーブを除いた以外は同じ条件で行った。
結果は、重合時間は9時間で、重量平均分子量は59000であった。
以下は同様にして試験した。
比較例4
上記実施例4のモレキュラーシーブを除いた以外は同じ条件で行った。
結果は、重合時間は7時間45分で、重量平均分子量は60000であった。
以下は同様にして試験した。これらの結果を下記表1に示す。
Figure 0005001759
次に、実施例1〜3のモデル実験として、モレキュラーシーブの形状の違いによる吸着速度や破砕状況について試験を行った。
実施例6
2Lのセパラブルフラスコに2000ppm含水するMEK500gを準備した。この溶液の中に、モレキュラーシーブ3A 20×30(ユニオン昭和製)を25g添加して、所定時間毎にサンプリングを行い、水分計を用いて水分量を測定した。
更に、開始30分後に水を0.7g添加して所定時間毎にサンプリングを行い、水分計を用いて溶媒中の含水量の測定を行い、水の吸着速度を評価した。
この水の吸着速度試験後のMEK溶液を取り出した。濁度計を用いて、この溶液の透過率とヘイズの測定を行った。10分後の含水量、全光線透過率及びヘイズを下記表2に示す。
実施例7
上記実施例6のモレキュラーシーブをモレキュラーシーブ3A 8×12(ユニオン昭和製)に変更した以外は同じ条件で行った。この結果を下記表2に示す。
実施例8
上記実施例6のモレキュラーシーブをモレキュラーシーブ3A 1/16(関東化学製)に変更した以外は同じ条件で行った。この結果を下記表2に示す。
Figure 0005001759
なお、液の濁り具合を評価する指標として透過率とヘイズを用いるものである。ヘイズは、溶液中に微細な粒子が存在することによっても起こるものであり、ヘイズが高いほど、微細な粒子が多く存在することが示唆されている。しかし、成形したモレキュラーシーブを加えただけではヘイズはほとんど生じない。したがって、下記実施例及び比較例では、攪拌によりモレキュラーシーブが破砕し、微細なモレキュラーシーブ片が生じることで起こっていると考えられる。すなわち、ヘイズ値が破砕のし易さの指標となる数字となる。
なお、本発明の製造方法におけるモレキュラーシーブの形状の影響について、上記実施例及び比較例から明らかになったことを概念的に表せば、例えば、下記表3のようになる。
Figure 0005001759
短径の小さいものは、素早く吸水する為、含水量の低い重合系内を実現できる。これにより、重合速度の安定性を確保できた。また、モレキュラーシーブの形状により破砕のし易さが異なり、球状のモレキュラーシーブは破砕し難い結果が得られた。目詰まりは副生塩そのものの粒径等に依存するとともに、ポリマーが副生塩や破砕した微細なモレキュラーシーブに絡むことにより副生塩の凝集体のようなものを形成することにも影響を受けている。破砕しにくい成形モレキュラーシーブは、濾過時に濾過助剤的な働きもするため、濾過製の向上が確認できた。
実施例6−8におけるメチルエチルケトンの含水量を経時的に示した図である。

Claims (7)

  1. 脱塩重縮合反応を行なう工程を含む脱塩重縮合系重合体の製造方法であって、
    該脱塩重縮合反応工程は、成形したモレキュラーシーブを使用し、
    該成形モレキュラーシーブの形状が1≦長径/短径≦3を満たす
    ことを特徴とする脱塩重縮合系重合体の製造方法。
  2. 前記脱塩重縮合反応工程は、単量体成分が有する反応性官能基に対して0.8〜3.0当量のアルカリ金属塩触媒及び/又はアルカリ土類金属塩触媒を用いて行われる
    ことを特徴とする請求項1に記載の脱塩重縮合系重合体の製造方法。
  3. 前記成形モレキュラーシーブは、短径が0.3〜1.2mmのものである
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の脱塩重縮合系重合体の製造方法。
  4. 前記成形モレキュラーシーブの形状は、球状である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脱塩重縮合系重合体の製造方法。
  5. 前記重合体は、フッ素含有芳香族系重合体である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脱塩重縮合系重合体の製造方法。
  6. 前記脱塩重縮合反応工程は、非プロトン性極性溶媒を用いて行われる
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の脱塩重縮合系重合体の製造方法。
  7. 前記非プロトン性極性溶媒は、メチルエチルケトンである
    ことを特徴とする請求項6に記載の脱塩重縮合系重合体の製造方法。
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