JP5000567B2 - 炭化珪素焼結体の接合方法 - Google Patents

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本発明は、炭化珪素焼結体の接合方法に関する。特に、接合部の気密性、高い密着性を要する部材に適した接合体に関する。例えば、液侵露光装置における液体回収部や、CVD装置等のガス供給部であるシャワープレートに適用可能である。
SiCは耐熱性、耐食性に優れており、半導体製造装置用の部材に多く用いられているが、SiCは焼結温度が高く、雰囲気も不活性ガス下で行うことから製法上、一体で形成するには大きさに制限がある。また、特に液侵露光装置やCVD装置等では、液体や気体を供給したり回収したりする微細な溝や穴が形成され、中空部を有するような一体形成が困難な形状の部材がある。このような問題を解決するために、接合技術が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、受け入れ用の雌の接合部材を提供する第一の部品と挿入用の雄の接合部材を提供する第二の部品はおのおの、雄部材を雌部材に挿入する方向に対し実質的に平行な向き合う側壁を有し、これらの側壁の間に最大で約0.003インチ(0.076mm)までの平均の間隙をもたらすように形作られ、雌部材は更に、それに雄部材を挿入したときにケイ素を収容するためのリザーバ手段を有し、該リザーバ手段に固体状態のケイ素を詰め、雄部材を雌部材に挿入し、第一及び第二の部品をケイ素の融点より高く加熱して、融解したケイ素を上記間隙に毛細管作用により引き入れ、その後冷却して凝固したケイ素により両部材を接合する方法が開示されている。
また、特許文献2には、第1の炭化珪素焼結体の遊嵌凹部に第2の炭化珪素焼結体を遊嵌して形成される空隙に介在する溶融Siを凝固させて、両炭化珪素焼結体を接合するとともに、空隙に水平方向空隙と垂直方向空隙を形成し、この垂直方向空隙を0.1mm以上0.2mm以下にし、第1及び第2の炭化珪素焼結体1、2を水平方向と垂直方向を同時に接合する方法が開示されている。
特開平10−87376号公報 特開2007−302500号公報
しかしながら、これらの文献に開示されたように、金属珪素粉末を充填して接合する方法では、金属珪素粉末の充填率を一定にすることが難しく、接合後で高さ方向の位置ズレを制御することは困難であった。また、溶融して染み出る金属珪素の量を制御できないことから、微細で複雑な形状を有した部材の接合では、染み出しにより形状精度が得られなかったり、溝や穴が埋まったりといった問題が生じていた。
また、金属珪素粉末の溶融時に金属珪素内部に気泡等により空隙が生じやすく、これにより接合強度や気密性が低下する問題があった。
さらに、特許文献2では、板材の金属珪素を接合材として用いた例もあげられているが、板材を挟み込む場合は、板材の厚さや平行度等の形状精度が厳しく要求される。さらに、板材の形状を接合部の形状と完全に一致させることはできないので、溶融前の状態では、必然的に部材間に隙間が生じるため、これを溶融時に確実に埋められる方法はなく、粉末を充填する方法と同様に接合強度や、気密性が得られないおそれがあった。
特に、複数箇所を同時に接合する場合には、少しでも位置ズレが起きるといずれかの箇所に隙間が生じるため、全ての接合箇所について気密性を確保することは極めて困難であった。また、隙間を防止するため、接合材を大量に用いると接合部からの染み出しが多くなり、例えば中空部を有する接合体の場合には、中空部の形状精度が得られず、閉塞してしまう問題があった。
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、接合後の位置ズレが小さく、また、接合強度及び気密性が高く、中空部を有する場合でも中空部の形状精度に優れた接合体が得られる炭化珪素焼結体の接合方法を提供する。
これらの問題を解決するため、ザグリ部を有する炭化珪素焼結体からなる第一部材と、前記ザグリ部に挿入される炭化珪素焼結体からなる第二部材とを金属珪素により接合する方法であって、前記ザグリ部に金属珪素を充填した後に加熱して前記ザグリ部において金属珪素を溶融させる溶融工程と、溶融した金属珪素を冷却固化させた後、前記ザグリ部に形成された金属珪素層を研削して厚さを調整する加工工程と、第二部材を前記ザグリ部に挿入し加熱する接合工程と、を含む炭化珪素焼結体の接合方法を提供する。
本発明では、接合材として、金属珪素を用いているが、接合部においていったん溶融させている。特許文献1や2に記載されたように金属珪素粉末の溶融と同時に炭化珪素焼結体同士の接合を行おうとすると、金属珪素粉末が溶融したときの位置ズレが著しく、接合後の形状に狂いが生じやすい。一方、本発明のように、いったん溶融させることにより、再溶融させても位置ズレを少なく抑えられるので接合後の形状が狂い難い。
また、本発明では、溶融工程で形成した金属珪素層に研削加工を施して、その厚さを調整する。研削加工により、金属珪素層の表面を研削して、酸化膜や炭化膜等の溶融を阻害するような層を除去することにより溶融がスムーズに起こり、第二部材との密着が高めることができる。
溶融した金属珪素を冷却固化させた後、研削前の金属珪素層は少なくとも前記ザグリ部の底面全部及び、側面の一部を濡らして密着して形成されていることが好ましく、より好ましくは、金属珪素層がザグリ部を満たすことが望ましい。このように、接合前に予め溶融させて、ザグリ部の形状に沿った形で空隙のない金属珪素層を形成しているので、接合工程において空隙が入ることがなく密着を高めることができる。
加工工程においては、金属珪素層の厚さを0.1〜0.3mmとすることが望ましい。これは、接合材の染み出しを抑えるためである。このような範囲であれば、容易に厚さ調整が可能であり、しかも染み出しにより精度不良や微細穴の閉塞等の不具合が起きることを防ぐことができる。さらに、複数の接合部を有する場合であっても、位置ズレにより一部の箇所に空隙が生じることなく確実に接合することが可能となる。
また、本発明では、ザグリ部に第二部材を挿入したときに形成される隙間が0.1mmよりも小さいことが望ましい。0.1mm以上では、横方向の位置ズレだけでなく、高さ方向の位置ズレも大きくなるので好ましくない。なお、隙間は0.02mm以上とすることが望ましい。これよりも小さくすると染み出しが多くなるためである。なお、ここでいう隙間とは、第二部材の挿入部分の両側にできる隙間の平均を意味する。したがって、ザグリ部の幅と第二部材の挿入する部分の幅との差が0.2mmより小さく、0.04mm以上とすることが望ましい。
本発明によれば、第一部材と第二部材に密着した接合層が形成される。ここで言う接合層は、第一部材のザグリ部の底面と、それと略平行な第二部材の面との間に形成された層である。この接合層と第一、第二部材との間には、隙間が無く、接合層内部に空隙も無いことから気密性は極めて高い。
このように、空隙が無く緻密で密着した接合層が得られるのは、上述のように接合前に予め溶融させて空隙の無い緻密な金属珪素層をザグリ部に形成し、さらに研削加工を施して部材との密着を高めているためである。
上述のように、本発明では、金属珪素層を所定厚さに加工するので、第一部材と第二部材との接合部が2箇所以上ある場合であっても、位置ズレにより一部の箇所に隙間が生じることなく接合することが可能となる。
したがって、本発明の接合方法は、第一部材と第二部材を接合させて中空部が形成されるような接合に好適に用いることができる。
接合後の位置ズレが小さく、また、接合強度及び気密性が高く、中空部を有する場合でも中空部の形状精度に優れた接合体が得られる炭化珪素焼結体の接合方法を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の炭化珪素焼結体の接合方法について、より詳細に説明する。図1は、本発明の接合方法を示した概略図である。
図1(A)はザグリ部11aを有する炭化珪素焼結体からなる第一部材11を示している。
炭化珪素焼結体は、プレス成形、CIP成形、鋳込み成形等の成形方法、及び常圧焼結、加圧焼結、反応焼結等の焼結方法により作製できる。ザグリ部の加工は、焼結前の成形体について生加工を行っても良いし、焼結体についてマシニングセンタ等により研削を行っても良い。ただし、形状精度の観点から焼結体に対して研削加工を行うことが望ましい。
ザグリ部の深さについては、ザグリ部11aの幅に対して10〜30%の深さとすることが好ましい。深さが浅すぎると染み出しが起こり、深すぎると空隙が生じやすくなるためである。
図1(B)は、第一部材11のザグリ部11aに金属珪素を充填した後、加熱して、ザグリ部において金属珪素を溶融させて金属珪素層13(加工前の金属珪素層を13aとする)を形成する溶融工程を示した図である。
充填する金属珪素は、粉末状、粒子状、塊状、板状等、形状は問わないが、図1(B)に示したように、金属珪素層13aは、ザグリ部を満たすように十分な量を充填することが望ましい。このようにザグリ部を満たすように金属珪素層を形成することにより、その後の金属珪素層の厚さ調整を確実に行うことができる。金属珪素の純度としては、97%以上、より好ましくは99%%以上、さらに望ましくは、99.9%以上の高純度のものを使用することが望ましい。不純物が多いと溶融温度が低下し、染み出し等の不具合が生じるためである。
溶融工程の加熱は、真空中が好ましく、熱処理温度は金属珪素が溶融する1410〜1500℃とし、熱処理時間は10〜60分とすることが好ましい。
溶融後、冷却させて得られる金属珪素層13aのザグリ部における形状としては、図1(B)に示したように、ザグリ部を満たすことが望ましく、少なくとも底面111の全面および、底面から所定高さの一部の側面112と金属珪素とが濡れて密着した形に形成されることが好ましい。このように金属珪素層を形成するには、ザグリ部の体積よりも十分な量の金属珪素を溶融させたり、ザグリ部の底面および側面に濡れ性を向上させるような処理を施したりすると良い。このような処理としては、カーボンを塗布することが挙げられる。
図1(C)は、金属珪素層を加工して所定厚さの金属珪素層13bを形成した加工工程後の様子を示した図である。このように加工を施すことにより、第二部材との十分な強度で気密な接合が可能となる。金属珪素層13bの形成は、マシニングセンタ等の公知の加工方法を適用できる。加工工程において金属珪素層の厚さを0.1〜0.3mmとすることにより、複数の接合部を有する場合であっても、位置ズレにより一部の箇所に隙間が生じることなく確実に接合することが可能となる。また、接合材の染み出しを抑えられるので、精度不良や微細穴の閉塞等の不具合が起きることを防ぐことができ中空部を有する場合でも中空部の形状精度に優れた接合体を得ることができる。
なお、図1では、接合部のザグリ部11aが同一高さの例を示しているが、本発明は、これに限定されるものでは無く、高さの異なる複数の接合部を構成するような接合にも適用することができる。
次に、第二部材12を金属珪素層13bが形成されたザグリ部に挿入し、加熱して接合する。金属珪素層13bは、厚さが整えられているので、図1(D)に示したように、第二部材12を挿入したときに、金属珪素層13bと確実に接触する。そして金属珪素層を再溶融させると、金属珪素が染み出したり、接合層の厚さがバラついて隙間が生じたりすることなく確実に接合することができる。図1(D)の工程において、ザグリ部に第二部材に挿入したときに形成される隙間Gが0.1mmよりも小さいことが望ましい。0.1mm以上では、横方向の位置ズレだけでなく、高さ方向の位置ズレも大きくなるので好ましくない。なお、隙間Gは0.02mm以上とすることが望ましい。これよりも小さくすると染み出しが多くなるためである。
接合工程の加熱も溶融工程と同様に、真空中が好ましく、熱処理温度は金属珪素が溶融する1410〜1500℃とし、熱処理時間は30〜60分とすることが好ましい。また、接合時には、4〜20g/cmの荷重をかけることが望ましい。これよりも大きな荷重をかけると接合部に炭化珪素が生じて接合強度が低下しやすいので好ましくない。
接合後の接合層Lの厚さは、0.05〜0.2mmに調整することが好ましい。金属珪素層の厚さを加工により調整し、さらに、熱処理温度、時間、荷重を調整することにより上記範囲に調整することが可能である。
図1(E)では、接合体10に中空部14が形成されている。このように、本発明の接合方法は、中空部を有するような接合に適している。中空部としては、閉空間を形成するような箱型であっても良く、貫通穴を形成するような溝型であっても良い。接合材の金属珪素が染み出して中空部を閉塞することが無いので、微細な中空部を有するような接合体の製造に好適である。
以下、実施例と比較例を示して、本発明を説明する。
被接合材の炭化珪素焼結体は、市販の炭化珪素粉末(シュタルク社製UF−10)を用い、CIP法により成形、アルゴン中2100℃で焼成し、作製した。
炭化珪素焼結体の形状は、一方を図1の第一部材11に示したようにザグリ部(幅2.5mm、深さ0.5mm、長さ80mm)を2箇所形成した幅20mm、奥行80mm、厚さ25mmの板状の第一部材とし、もう一方を図1の第二部材12に示したように略中央に幅5.1mm、深さ5mm、長さ80mmの接合後に中空部を形成する溝部を有する幅9.9mm、奥行80mm、厚さ7.5mmの第二部材とした。これらの形状加工は、平面研削、マシニングセンタ等の公知の方法により行った。
次に、ザグリ部への金属珪素層を形成するために、金属珪素粉末(純度99.9%、レーザー回折式粒度分布計によるD50:2.23μm)に蒸留水を加えてスラリー化したものをザグリ部へ充填した。このとき、ザグリ部の周囲に壁を設けて十分な量の金属珪素が充填できるようにした。乾燥して水分を除去した後、真空中、1450℃で10min保持して溶融後、冷却させた。金属珪素は、ザグリ部内を満たすように形成されていた。
しかる後に、図1(D)に示したように金属珪素層をマシニングセンタにより、厚さを0.15mmに加工した。接合工程は、溶融と同様に、真空中、1450℃で60min保持して行った。これにより図1(E)のように内部に中空部(貫通穴:幅5.1mm、高さ4.6mm、長さ80mm)を有する接合体を得た。
比較のため、同形状の第一部材、第二部材を用いて、本発明における溶融工程および加工工程を経ずに接合体の作製を行った。接合材として、上記した金属珪素粉末と、金属珪素基板(厚さ0.2mm)を用いた。金属珪素粉末の場合は、単に粉末をザグリ部に充填したものと、バインダーを加えてペースト化してザグリ部に塗布したものとを作製した。いずれの例でも接合材を充填した後、溶融工程は行わずに、第二部材を挿入し接合のための加熱処理を上記作製例と同条件で行った。
結果を表1に示す。気密試験では、貫通穴の両端に試験のための冶具を取り付けて、0.5MPaの高圧空気を導入し、接合部から漏れがないか調べた。接合層については、切断面を光学顕微鏡観察し、その厚さ及び空隙の有無を調べた。接合強度は、別途接合強度試験用の接合体を同条件で作製し、接合体から試験片(3mm×4mm×40mm)を切り出して、下部スパン30mm、上部スパン10mmの4点曲げ試験(JISR1624準拠)を行い、接合強度を求めた。
Figure 0005000567
本発明の実施例である作製No.1では、部材と接合層の密着が良く、接合層に気泡等の空隙が無いため、十分な接合強度を有し、また気密性も良好であった。接合材の染み出しによる閉塞もなく、貫通穴の内面の形状精度も良好であった。一方、比較例の作製No.2では、粉末の充填率が悪いため、空隙が発生し、接合強度も不十分であった。ペーストを用いた作製No.3では、添加したバインダーと金属珪素が反応して炭化珪素が生じていた。この反応焼結炭化珪素は、脆いため接合強度が不十分であった。また、バインダーの揮発も起こるので、その分が空隙となり気密性も得られなかった。金属珪素基板を用いた作製No.4では、ザグリ部と濡れが悪く、接合層と部材との間に空隙が生じていた。また、これらの比較例では、2箇所のザグリ部のうち、一方に空隙が集中し、他方は、貫通穴に接合材が染み出している箇所が多く見られた。染み出しが生じた箇所では、貫通穴内面の形状精度が得られなかった。
本発明の接合方法を示した概略図。
符号の説明
10;接合体
11;第一部材
11a;ザグリ部
111;ザグリ部の底面
112;ザグリ部の側面
12;第二部材
13a;加工前の金属珪素層
13b;加工後の金属珪素層
14;中空部
G;隙間
L;接合層

Claims (4)

  1. ザグリ部を有する炭化珪素焼結体からなる第一部材と、前記ザグリ部に挿入される炭化珪素焼結体からなる第二部材とを金属珪素により接合する方法であって、
    前記ザグリ部に金属珪素を充填した後に加熱して前記ザグリ部において金属珪素を溶融させる溶融工程と、
    溶融した金属珪素を冷却固化させた後、前記ザグリ部に形成された金属珪素層を研削して厚さを調整する加工工程と、
    第二部材を前記ザグリ部に挿入し加熱する接合工程と、
    を含む炭化珪素焼結体の接合方法。
  2. 前記加工工程において、冷却固化させた後、研削前の金属珪素層は、少なくとも前記ザグリ部の底面全部及び、側面の一部に密着して形成されたことを特徴とする請求項1記載の炭化珪素焼結体の接合方法。
  3. 前記第一部材と前記第二部材との接合部が2箇所以上ある請求項1または2記載の接合方法。
  4. 前記第一部材と前記第二部材を接合することにより中空部が形成される請求項1〜3記載の接合方法。
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