JP5000103B2 - 塩害環境での耐久性に優れた自動車用燃料タンクあるいは燃料パイプ - Google Patents

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本発明は、塩害環境における耐久性に優れた自動車用の燃料タンクあるいは燃料パイプに関する。
昨今の環境保護ニーズやライフサイクルコスト低減ニーズなどから、燃料タンクや燃料パイプなどの燃料系部品でも燃料透過防止性、長寿命化といった特性が要求される。
自動車用の燃料タンクあるいは燃料パイプには、米国の法規制で15年間もしくは15万マイル走行の間の長期寿命保証が義務付けられ、これを満たすための燃料系部品が、めっき鋼材、樹脂、ステンレス鋼の3素材について開発されてきている。
めっき鋼材、樹脂、ステンレス鋼の3素材のうち、樹脂についてはリサイクル性が問題であり、めっき鋼材については将来普及される可能性が高いバイオ燃料に対する耐久性が懸念される嫌いがある。一方、ステンレス鋼に関しては、鉄系素材としてのリサイクル容易性やバイオ燃料に対する十分な耐食性を有する利点があり、既に燃料パイプ用の素材として実用化されてきている。
しかしながら、ステンレス鋼の短所は、現時点では、塩害環境における耐食性が必ずしも十分とは言えないと評価されている点にある。すなわち、融雪塩に曝される場合を模擬した実験室促進試験において、SUS436Lなどのフェライト系ステンレス鋼では隙間構造部あるいは溶接構造部において隙間腐食が生じ、SUS304Lなどのオーステナイト系ステンレス鋼では溶接部などで応力腐食割れが生じるとの問題がある。
この問題を克服するため、いくつかの防食技術が開発されてきた。
例えば、特許文献1では、SUS436を素材としてプロジェクション溶接を用いて組み立てた給油管にカチオン電着塗装を施す製造方法が開示されている。
また、特許文献2では、フェライト系ステンレス鋼板を素材として成形された燃料タンクあるいは給油管の表面にカチオン電着塗膜を形成したり、溶接部にジンクリッチ塗膜を形成した後に表面全体にカチオン電着塗膜を形成するなどの防食方法が開示されている。
あるいは、特許文献3では、フェライト系ステンレス鋼を素材として成形した燃料タンクや給油管に特定組成のZn含有塗料を塗布する方法が開示されている。
しかしながら、カチオン電着塗装は被塗物を塗料溶液に浸漬して電着させる方法であり、燃料パイプのような小物は別にしても燃料タンクのように大きな浮力が生じるものに対しては適用困難であるとの問題がある。また、隙間開口量が小さく奥行きが大きい形状の隙間に対しては隙間必ずしも十分な防食効果が得られないとの問題もある。
一方、ジンクリッチペイントあるいはZn含有塗料に関してはカソード防食効果によって隙間内部の腐食を抑制することができるが、塗布したZnが消耗され尽くしてしまえば、防食効果が消失して隙間腐食が成長することになるので、このような事態に至らしめないためには予想される消耗量を十分に上回る大過剰のZnを塗布しておく必要があり、コスト高の一因となる。
また、この種のZn含有塗料はZnを多量に含有し樹脂成分が相対的に少ないため、一般塗料に比べて塗膜密着性に劣る嫌いがある。特に、塩害腐食試験において塗膜にブリスターが生成されたり、極端な場合には塗膜が剥離するという密着不良の問題が生起したりする。このような密着性問題に対して、文献3では塗料中のZn含有量を通常のジンクリッチペイントに含まれる量より少なくして樹脂成分の量を相対的に増加させる方法が示されている。しかしながら、Zn量を減少させれば、それに応じて防食電流が低減され、加えてZn消耗に至る寿命も短縮されることになり、結果として目的とする隙間腐食の十分なる防止効果が得られないことになる。
特開2002−242779号公報 特開2003−277992号公報 特開2004−115911号公報
本発明は、塩害環境下で15年防錆を達成し得る耐久性に優れたステンレス鋼製の燃料タンクあるいは燃料パイプを提供することを課題とするものである。
本発明者らは、種々のステンレス鋼について塩害腐食試験を行った結果、燃料タンクや燃料パイプに存在する付属部品の締結や溶接によって導入される隙間構造部あるいは溶接やロウ付けによる熱影響部における局部腐食問題を克服するには何がしかの防食技術の併用が不可欠であると判断した。その最も実用的な手段として塗装に着目し種々の検討を行ってきたが、塗装方法としてはスプレー塗装を選択するべきであるとの結論に至った。カチオン電着塗装のように燃料タンクなどの大型容器に塗装する場合の浮力対策を講じる必要もなく、刷毛塗りのような膜厚が不均一になるという問題もなく、工業的にも確立されており、適切な塗料を選定するだけで済むからである。
しかしながら、スプレー塗装では溶接やロウ付けなどの熱影響部は被覆できても隙間構造の内部にまで塗膜を形成させることができない。このため、通常使用される塗料ではスプレー塗装を施しても隙間内部の腐食を抑制することができない。この問題を克服し得るのがカソード防食である。すなわち、ステンレス鋼素材より卑な金属を隙間の近傍に電気的導通を確保して配接することにより、卑な金属が犠牲溶解して発生する防食電流によって隙間内部が保護されるという原理である。この原理と塗装を組み合わせたのが亜鉛粉末含有塗料であり、これをスプレー塗装によって隙間の直上あるいは周辺に塗布して亜鉛粉末含有塗膜を形成させることによって、隙間内部に直接的に塗膜が形成されずとも、隙間外部に存在する亜鉛の防食電流によって隙間内部ではカソード反応が起きるため腐食が防止できるのである。
しかしながら、単に隙間部近傍に亜鉛粉末含有塗料を塗布しておけば、隙間内部の腐食問題を克服できるというものではない。亜鉛粉末含有塗膜の形成は、隙間内部に十分な防食電流を供給できて始めて意義があり、このための必要十分条件を解明して、それらを最適化する必要がある。本発明者らが種々の試験研究を行った結果、亜鉛粉末含有塗膜で隙間内部の局部腐食を有効に防止するために考慮すべき最重要の因子は亜鉛量と塗布領域であることが明らかになった。
塗布領域としては、隙間の開口部から最も離れた隙間内最奥部を起点にして少なくとも30mmまでの領域を塗装する必要がある。これは、十分な防食電流が到達し得る距離が30mmであることを意味している。すなわち、防食すべき隙間最奥部から30mmまでの領域に塗布しなければ、この領域の外にいかなる量の亜鉛を塗布しても、それによって発生する電流は隙間最奥部にまでは届かないため、隙間内部の腐食を十分には防止し得ないのである。このように防食電流が到達し得る距離が極端に短いのは、塩害環境の特徴であり、燃料タンクや燃料パイプの表面に形成される塩水膜の厚みが極めて薄いためである。このように、塩害環境下の燃料タンクや燃料パイプに施される亜鉛を用いた防食設計は、海洋構造物や橋脚などのカソード防食に用いられてきた設計概念からは大きく乖離している点を考慮しておかねばならない。
しかしながら、いかに適正な領域に亜鉛を配しても、その絶対量が少なければ防食電流は短期で減衰してしまい、防食効果が消失されることになる。すなわち、適正な防食電流を可及的長期にわたって供給し続けられる量の亜鉛を接配しておくことが必要である。亜鉛粉末含有塗膜としての亜鉛量は、塗膜中の亜鉛粉末含有量と塗膜厚みによって決まる。
まず、亜鉛粉末含有量は少なくとも70%以上が必要であり、望ましくは75%以上とする。なぜならば、塗膜中の亜鉛の溶解は塗膜表面から生じ、時間経過に伴って塗膜内部の亜鉛粒が消費され、最終的に地鉄直上の亜鉛粒が溶解するようになるが、このうちの初期の過程あるいは中期の過程において亜鉛の溶解で発生する防食電流が30mm離れた隙間内部に到達するためには、塗膜表面あるいは塗膜内部で発生した電子が塗膜を通過して地鉄に到達し、地鉄中を通って隙間内部に到達する必要があるからであり、換言すれば塗膜自体に電気導電性がなければならないのであり、亜鉛粉末含有量が70%を下回ると塗膜の導電性が不足するからである。塗膜の導電性が不足すると、腐食の初期あるいは中期の段階で、防食電流は発生されず、その間に隙間内部の腐食が進行してしまうことになる。よって、塗膜中の亜鉛含有量は70%以上であることを必要条件としておかねばならない。また、膜厚を規定すれば亜鉛含有量が多いほど塗膜中亜鉛量は多いことになり、長寿命化に寄与することになる。
次に、膜厚については、厚みの増加に比例して亜鉛量を増大させ得るため、長寿命を得ようとすれば可及的に厚く塗装すればよいことになる。このため、本発明では必要最小限度の膜厚を20μmとして規定し上限は特に設けない。1パス塗装で厚膜塗装できない場合は複数パスに分けて重ね塗りすればよい。ただし、塗膜の硬化に時間がかかるようでは生産性が阻害されるため、硬化条件を制御して硬化時間を大幅短縮できるなどの自由度を持つ塗料系の選定が重要であり、たとえば加湿条件下で硬化が促進されるイソシアネートを樹脂成分とした亜鉛粉末含有塗料が望ましい。
しかしながら、前記した適正組成の亜鉛粉末含有塗膜を適正範囲、適正膜厚で形成させてもなお、過酷な腐食条件で長期間にわたって腐食試験を行えば、亜鉛の防食効果は無限ではないため自ず隙間内部の局部腐食に至る寿命が到来することになる。これをいかにして可及的に延長せしめるかについて検討した結果、少なくとも亜鉛粉末含有塗膜に隣接する非隙間構造を呈する地鉄一般部をスプレー塗装して塗膜で被覆しておくことが有効であることを知見した。
亜鉛粉末含有塗膜中の亜鉛の防食電流は距離30mm以下の隙間内部に到達すると共に、亜鉛含有塗膜に隣接する一般部位に対しても同じく30mm距離の範囲で到達するのであり、この分だけ亜鉛の消耗が早められることになり防食寿命は短くなる。本来、一般部は局部腐食感受性が低いため防食電流が到達する必要のない部分である。よって、この部分を電気的に絶縁してカソード反応が生じないようにしておけば、亜鉛の防食電流の浪費は防止できるのである。亜鉛含有塗膜に隣接する一般部の被覆によってもたらされる寿命延長効果は、被覆しない場合に比べて数倍にも及ぶため、亜鉛含有塗膜の厚膜化による寿命延長効果に比べて遥かに有効な手段と言える。この手段としては、スプレー塗装法によって樹脂塗料を塗装するのが最も簡便かつ有効である。また、形成される塗膜の性能としては、後述の耐温塩水密着性評価試験に合格するのが望ましい。
このように亜鉛粉末含有塗膜で隙間内部の局部腐食を有効に抑制し得る条件が明らかになったが、一方では、前記したように、亜鉛粉末含有塗膜は密着性が不十分との問題がある。特に塗膜に電気伝導性を付与すると共に長寿命化を図って亜鉛含有量を高めたものについては、塩害腐食環境を模擬した複合サイクル腐食試験において塗膜にブリスターが生じたり、剥離に至ったりする。この問題について種々検討した結果、亜鉛粉末のサイズや含有量、樹脂の種類や添加物など塗料の組成に関する因子を変更しても密着性改善効果は小幅なものに留まり、大幅に改善するためには、亜鉛粉末含有塗膜の上にさらに塗膜を形成させるのが有効であるとの結論に至った。そして、亜鉛粉末含有塗膜の上層塗膜が亜鉛粉末含有塗膜の密着性確保に寄与するための必要条件を解明したのである。
すなわち、本発明者らは、塩害環境を模擬する複合サイクル腐食試験で用いられる塩水濃度で、該試験の最高温度に相当する60℃、5%NaCl溶液に塗装サンプルを10日間にわたって浸漬し、回収後1時間以内にJIS K5400に準じて1mmピッチの碁盤目を100マス導入してテープ剥離試験を行う耐温塩水密着性試験を種々の塗装サンプルに対して実施した結果、この試験によって塗膜剥離が全く生じない場合に限って、その下層の亜鉛含有塗膜の密着性も十分に確保され、複合サイクル腐食試験に耐えられるとの知見を得た。
本発明は前記知見に基づいて構成したものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、Cr:9.0〜25.0%を含有する鋼板または鋼管を素材として成型した燃料タンクもしくは燃料パイプであって、塩害環境に曝される表面に隙間構造部を有し、当該隙間構造部の隙間内最奥部を起点として少なくとも30mm距離までの領域に対して、不可避的不純物を除く実質的成分がZnから成る平均粒径1〜10μmの金属粉末とバインダー成分から成り、質量%で金属含有量が70%以上となる膜をスプレー塗装法によって20μm以上の厚さで形成させ、さらに5%NaCl、60℃の温塩水に10日間浸漬後1Hr以内に実施する碁盤目テープ剥離試験で剥離が生じない樹脂塗膜を前記隙間構造部の隙間内最奥部を起点として30mm距離から少なくとも60mm距離までの領域に対してスプレー塗装法によって形成させたことを特徴とする塩害環境での耐久性に優れた自動車用燃料タンクあるいは燃料パイプ。
(2)質量%で、Cr:9.0〜25.0%を含有する鋼板または鋼管を素材として成型した燃料タンクもしくは燃料パイプであって、塩害環境に曝される表面に隙間構造部を有し、当該隙間構造部の隙間内最奥部を起点として少なくとも30mm距離までの領域に対して、不可避的不純物を除く実質的成分がZnから成る平均粒径1〜10μmの金属粉末とバインダー成分から成り、質量%で金属含有量が70%以上となる膜をスプレー塗装法によって20μm以上の厚さで形成させ、さらに5%NaCl、60℃の温塩水に10日間浸漬後1Hr以内に実施する碁盤目テープ剥離試験で剥離が生じない樹脂塗膜を前記隙間構造部の隙間内最奥部を起点として少なくとも10mm距離から60mm距離までの領域に対してスプレー塗装法によって形成させたことを特徴とする塩害環境での耐久性に優れた自動車用燃料タンクあるいは燃料パイプ。
)前記樹脂塗膜がエポキシ系樹脂からなり、膜厚が5μm以上であることを特徴とする(1)または(2)のいずれか一項に記載の塩害環境での耐久性に優れた自動車用燃料タンクあるいは燃料パイプ。
(4)前記樹脂塗膜の色調が黒色であることを特徴とする(1)から()のい ずれか一項に記載の塩害環境での耐久性に優れた自動車用燃料タンクあ るいは燃料パイプ。
以上述べたように、本発明によって、塩害環境下での耐食性に優れた燃料タンクあるいは燃料パイプが得られるので、産業上の効果は大きい。
なお、本発明は燃料タンクと燃料パイプといった個別部品のみに限定されるものではなく、塩害環境に曝される自動車用の部品において規定の必要条件を満たすステンレス鋼が適用される全ての部材および部品に適用可能であり、たとえば足周り部品などにも適用できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における燃料系部品用の素材としては、Cr:9〜25%を含有する鋼板あるいは鋼管とする。Crは素材の耐食性を支配する主要元素であり、9%を下回ると耐食性が不十分となる。一方、Crは固溶強化元素であり25%を越えて含有させると素材の延性が劣化して十分な冷間加工性が得られなくなる。このため、素材のCr含有量は9~25%に限定する。Cr以外の合金元素、例えばNi,Mo,Cuなどについては、公知の技術に従って適宜含有させて良い。ただし、これらの元素を含有させる場合でも、Cr量としては前記範囲を満たすことを必要条件とする。
前記のCrを含有する鋼板あるいは鋼管は、プレス加工、曲げ加工、拡管、絞り加工といった冷間での塑性加工やシーム溶接、スポット溶接、プロジェクション溶接といった溶接やロウ付け、あるいは金具の取り付けなどの通常の成型、組立工程を経て燃料タンクや燃料パイプに成型されるが、この成型が完了した後の燃料タンクあるいは燃料パイプにおいて、塩害環境に曝される隙間構造部位に対して亜鉛粉末含有塗料をスプレー塗装するものとする。
ここで言う隙間構造部位とは、溶接やろう付けによって形成される隙間構造部、金具などの金属製あるいはゴムホースなどの非金属製の部品との接触、締結によって構成される隙間構造部である。これら隙間構造部に対して亜鉛粉末含有塗膜をスプレー塗装で形成させる。
亜鉛含有塗膜の厚みとしては、十分な防食電流を長期にわたって確保する必要性から、20μm以上として規定する。膜厚は、塗膜形成領域における任意の10点について電磁膜厚計にて測定された値の平均値として定義する。そして、これら部位に対する塗装領域としては、防食電流の到達距離が30mmであることを踏まえて、隙間の最奥部を起点として少なくとも30mm距離までの領域を必須要件とする。30mm範囲より広い領域を塗装してもカソード防食効果が害されることはないが、防食効果が増長されることもないため、広範囲の塗装は必ずしも必要とはならない。
なお、前記の隙間構造部の他に、溶接やロウ付けの熱によって不働態皮膜が破壊され変色した部位も一般部に比べれば局部腐食感受性が高いため、亜鉛粉末含有塗料を塗装しておくのが望ましい。また、溶接金属やロウ材自体にも亜鉛粉末含有塗料を塗装しておくのが望ましい。これら部位に対しても、塗装領域は防食対象部位を基点として少なくとも30mmまでの領域を対象とする。
さらに、亜鉛粉末含有塗膜が形成された後、該塗膜中の亜鉛消耗寿命を延長するために、隙間の最奥部を起点として30mm距離から少なくとも60mm距離までの領域を樹脂塗膜で被覆する。この樹脂塗膜の被覆領域は、亜鉛粉末含有塗膜の形成領域が隙間最奥部から30mmであった場合に、亜鉛粉末含有塗膜が形成されていない地鉄一般部に相当するため、この部分を被覆、絶縁することによって、亜鉛粉末含有塗膜の防食電流が一般部のカソード反応によって浪費されることを防止でき、亜鉛消耗寿命が延長されることになる。
そして、この樹脂塗膜の被覆対象は、亜鉛消耗寿命延長の目的から、隙間の最奥部を起点として30mm距離から少なくとも60mm距離までの領域を必要最小限度の範囲とするが、亜鉛粉末含有塗膜の形成領域そのものを含むのがより望ましい。すなわち、前記したように、亜鉛粉末含有塗膜は密着性の問題があり、これを改善するには、その上層に透水遮断機能を奏する樹脂塗膜を形成させるのが有効であるからである。
しかしながら、樹脂塗膜にも種々あり、有用なものも無効なものもある。密着性改善効果を得るための樹脂塗膜としては、前記した耐温塩水密着性評価試験で剥離が生じないとの必要十分条件を満たさねばならない。この必要十分条件を満たすための塗料種は特に規定するものではないが、エポキシ系の樹脂塗料などが候補となり得る。また膜厚は、薄膜であっても前記の耐塩温水密着性評価試験にさえ合格できれば十分であり、通常は5μm以上が好ましい。上限は特に規定しないが、必要以上に厚くしても効果は飽和し、また乾燥時間が長くなり、生産性が低下する。好ましい範囲は15〜40μmである。
また、前記樹脂塗膜の形成領域は、燃料タンクあるいは燃料パイプの塩害環境に曝される表面全体に及んでも良い。この場合、意匠性も考慮して、該塗膜の色調は黒色とするのが望ましく、樹脂に顔料などを適宜配合するのが望ましい。
なお、前記の隙間の最奥部からの距離は、隙間構造が溶接によって形成される場合は、溶接ナゲット幅が5mm以下のときにはナゲット幅の中心を隙間最奥部として近似できるものとし、ナゲット中心から塗膜端部までの距離を任意の10ケ所についてノギスで計測し、平均値をmm単位に四捨五入して求めるものとする。ナゲット幅が5mmを超える溶接隙間構造については、任意の1ケ所について断面観察を行い、ナゲット中心と隙間最奥部の寸法差異を求めて、これを補正して求める。一方、金具などの金属製あるいはゴムホースなどの非金属製の部品との接触、締結によって構成される隙間構造部については、接触面の中央を最奥部として定義するものとする。また、ロウ付けによるロウ材止端部の隙間に対しては、ロウ材止端部を最奥部と近似してよい。
本発明における亜鉛粉末含有塗料は、Znを主成分とした平均粒径1〜10μm程度の金属粉末とバインダー成分から成り、金属粉末含有量は乾燥塗膜中の質量%として75%以上であることを必要条件とする。金属粉末含有量が70%未満では十分な防食効果が得られないためである。また、金属粉末の平均粒径は、細かすぎると比表面積が増大して防食電流が大きくなる一方で亜鉛の消耗速度が大きくなる難点があり、粗すぎると電気伝導性確保に有利な反面、塗装時にムラができるなどの塗装性の問題が生じることから、1〜10μmを粒径の適正範囲とする。
バインダーとしては、エポキシ系樹脂などの有機系素材とエチルシリケートなどの無機系素材があり、いずれにおいても防食効果に直接作用するわけではないため、特に規定するものではないが、密着性の観点からすれば無機系よりも有機系が優れるため、エポキシやイソシアネートなどの樹脂を選択するのが望ましい。
なお、塗装手段としては、前記したようにスプレー塗装を前提とする。
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
表1に示す組成の板厚0.8mmの鋼板から、200×200サイズ板と20×20サイズ板を採取し、2枚を重ねて中央部の1点をスポット溶接した図1に示す寸法形状の溶接隙間構造試験片を作製し、亜鉛粉末含有塗料をスプレー法で塗布した。亜鉛粉末含有塗料のバインダー成分としてはイソシアネート系樹脂、亜鉛粉末含有量は乾燥塗膜中の質量%で65から83%の間で変化させた。亜鉛粉末の平均粒径は4μmとした。
Figure 0005000103
亜鉛粉末含有塗膜の膜厚は50μmを標準として、適宜変更した。亜鉛粉末含有塗膜を形成させた後、樹脂塗膜を形成して、腐食試験用サンプルとした。樹脂塗膜はデュポン神東(株)製 オーバスAW No.550のエポキシ樹脂を用いた。
図1において、1は2枚の鋼板、2は亜鉛粉末含有塗膜で、3が樹脂塗膜で、4は隙間最奥部で、5が溶接ナゲットである。亜鉛粉末含有塗膜および樹脂塗膜の形成領域の寸法は、隙間最奥部を起点とした距離X、Y、Zを変化させることによって種々変えた。Zは任意の部位10ケ所についてノギスを用いて計測された値の平均値をmm単位に四捨五入して求めた。XとYについては、溶接ナゲットが3mm程度であることからナゲット中心部を隙間最奥部と仮定しても誤差は高々1.5mm程度と小さいため、ナゲット中心を起点として亜鉛粉末含有塗膜端部までの距離をX,樹脂塗膜端部までの距離をYとして、Zと同様に求めた。
亜鉛粉末含有塗膜が形成されるべき領域は、隙間最奥部から亜鉛粉末含有塗膜の端部までの距離Xの値で表され、これが30mm以上であれば本発明の条件が満たされる。樹脂塗膜の形成領域の寸法はZであるが、本発明の条件が満足されるのは、Yが60mm以上で且つY−Zが30mm以下の場合である。ただし、YはXより大きい値をとるものとする。
腐食試験用サンプルは端面部をシールした後、塩害環境を模擬した複合サイクル腐食試験に供した。複合サイクル腐食試験の条件としては、JASOモード(5%NaCl溶液噴霧,35℃,2時間→強制乾燥,60℃,4時間→湿潤95%RH,50℃,2時間)とし、500サイクルにわたって実施した。
試験終了後、塗膜のブリスターあるいは剥離の有無、隙間内部の局部腐食の程度あるいは応力腐食割れの有無を評価した。亜鉛粉末含有塗膜あるいは樹脂塗膜のいずれにもブリスターや剥離が無ければ合格と評価し、両塗膜のいずれかにでもブリスターや剥離が生じたものは不合格と評価した。局部腐食深さの元板厚に対する割合が50%以下であれば、良好と評価し、50%を超える場合は不合格と評価した。また、染色液浸透探傷法で応力腐食割れが見られなかったものを良好と評価し、割れが検出されたものについてはその程度を問わず不合格と評価した。
試験条件および結果を表2に示す。
No.1、2,5〜7の本発明では、塗膜の異常も見られず隙間部の防食も達成できている。一方、比較例No.21、24、25は樹脂塗膜の要件が本発明の範囲を外れており、比較例No.22,23,26、27、28は亜鉛粉末含有塗膜の要件が本発明の条件を外れており、比較例No.29は素材が本発明の要件を満たしていないため、それぞれ満足すべき特性が得られていない。また、比較例No.51,52は、無塗装の場合に生じる局部腐食や応力腐食割れの問題を確認したものである。
Figure 0005000103
燃料タンクのスポット溶接部を模擬した試験片の形状寸法を示す。

Claims (4)

  1. 質量%で、Cr:9.0〜25.0%を含有する鋼板または鋼管を素材として成型した燃料タンクもしくは燃料パイプであって、塩害環境に曝される表面に隙間構造部を有し、当該隙間構造部の隙間内最奥部を起点として少なくとも30mm距離までの領域に対して、不可避的不純物を除く実質的成分がZnから成る平均粒径1〜10μmの金属粉末とバインダー成分から成り、質量%で金属含有量が70%以上となる膜をスプレー塗装法によって20μm以上の厚さで形成させ、さらに5%NaCl、60℃の温塩水に10日間浸漬後1Hr以内に実施する碁盤目テープ剥離試験で剥離が生じない樹脂塗膜を前記隙間構造部の隙間内最奥部を起点として30mm距離から少なくとも60mm距離までの領域に対してスプレー塗装法によって形成させたことを特徴とする塩害環境での耐久性に優れた自動車用燃料タンクあるいは燃料パイプ。
  2. 質量%で、Cr:9.0〜25.0%を含有する鋼板または鋼管を素材として成型した燃料タンクもしくは燃料パイプであって、塩害環境に曝される表面に隙間構造部を有し、当該隙間構造部の隙間内最奥部を起点として少なくとも30mm距離までの領域に対して、不可避的不純物を除く実質的成分がZnから成る平均粒径1〜10μmの金属粉末とバインダー成分から成り、質量%で金属含有量が70%以上となる膜をスプレー塗装法によって20μm以上の厚さで形成させ、さらに5%NaCl、60℃の温塩水に10日間浸漬後1Hr以内に実施する碁盤目テープ剥離試験で剥離が生じない樹脂塗膜を前記隙間構造部の隙間内最奥部を起点として少なくとも10mm距離から60mm距離までの領域に対してスプレー塗装法によって形成させたことを特徴とする塩害環境での耐久性に優れた自動車用燃料タンクあるいは燃料パイプ。
  3. 前記樹脂塗膜がエポキシ系樹脂からなり、膜厚が5μm以上であることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の塩害環境での耐久性に優れた自動車用燃料タンクあるいは燃料パイプ。
  4. 前記樹脂塗膜の色調が黒色であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の塩害環境での耐久性に優れた自動車用燃料タンクあるいは燃料パイプ。
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