JP4997469B2 - 加工方法及び加工装置 - Google Patents

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Description

本発明は、測定手段を用いてワークの外径寸法を測定しながら加工する加工方法及び加工装置に関する。
砥石等の加工手段を用いてワークの外周を研削加工する加工装置(研削盤)による円筒研削では、1[μm]程度の仕上げ寸法精度を達成するために、ワークの外径寸法を測定可能な定寸装置(測定手段)を用いて、外径を測定しながら加工手段をワークに切込み、研削加工を行う。加工手段の切込み量が研削量と一致するのであれば定寸装置は不要であるが、実際には加工手段で切込むと(加工手段をワークに押しつけると)、ワークが僅かに湾曲する(たわむ)ため、切込み量と研削量とは一致しない。そのため、定寸装置を用いて研削部の外径寸法を測定しながら加工している。
例えば、定寸装置は、測定しているワークの外径が指定された径に到達すると、加工装置が備えている数値制御装置に到達信号を出力し、数値制御装置は到達信号が入力されると、加工手段の切込みを終了させる。
例えば、定寸装置は、ワークの外径を測定するための一対の接触子を有しており、この一対の接触子にてワークを挟み、ワークの外径を測定する。
従って、定寸装置の接触子とワークとの間に異物(研削屑等)が挟まると、実際のワークの径よりも大きな径と認識してしまう。この場合、目標とする径よりも小さな径のワークができあがることになる。
例えば、特許文献1に記載された従来技術では、異物の噛み込みを検出した際は、所定時間、ワークから定寸装置の接触子を離間させることで異物を除去し、その後、定寸装置の接触子を再度ワークに接触させて研削を再開する加工装置が提案されている。
特開2002−239876号公報
特許文献1に記載された従来技術では、異物の噛み込みを検出した際、異物の量によらず、一定時間、定寸装置の接触子をワークから離間させ、その間、加工を停止しているため、加工時間が長くなる。
また、異物の噛み込みを検出した際、加工手段も接触子も一旦離間させているため、接触子を再度ワークに接触させて加工を再開すると、離間前と同じ個所に接触させたとしても、離間の前後で定寸装置の測定値に差が生じ、測定誤差が大きくなる場合がある。
また、仕上げ研削時に接触子を一旦ワークから離間し、再度接触させると、ワークに傷が付く可能性がある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、定寸装置(測定手段)の接触子をワークから離間させることなく噛み込んだ異物を除去することができる加工方法及び加工装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段として、本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの加工方法である。
請求項1に記載の加工方法は、回転手段と、加工手段と、測定手段と、異常検出手段とを用いてワークを加工する加工方法であって、前記測定手段は、前記ワークの外周部に接触させる検出部と、前記検出部を前記外周部に押圧する押圧手段を有しており、前記回転手段にて、前記ワークの回転軸回りに前記ワークを回転させるステップと、前記加工手段にて、回転している前記ワークの外周部を徐々に加工していくステップと、前記測定手段にて、加工している外周部に前記検出部を押圧した状態を保持して当該外周部の外径を測定するステップと、前記異常検出手段にて、前記検出部における前記外周部との接触部が異物を噛み込んだことを示す異常を検出するステップと、前記異常を検出した場合に、前記測定手段を前記ワークから離間することなく前記測定手段を前記ワークの外周部に接触させた状態を保持し、前記押圧手段の押圧力を一時的に低下させることで前記接触部に噛み込んだ異物を除去するステップとを有する。
また、本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの加工装置である。
請求項2に記載の加工装置は、支持したワークを前記ワークの回転軸回りに回転させる回転手段と、前記ワークの外周部を加工可能な加工手段と、前記ワークの回転軸に直交する方向から前記ワークに対して相対的に前記加工手段を進退移動させる切込み手段と、前記加工手段にて加工された前記ワークの外周部の外径を測定可能な測定手段と、前記ワーク回転手段と前記切込み手段を制御する制御手段と、を備えた加工装置であって、前記測定手段は、前記ワークの外周部に接触させる検出部と、前記検出部を前記外周部に押圧する押圧手段を有している。
そして、前記制御手段は、前記回転手段を制御して前記ワークを前記ワークの回転軸回りに回転させながら、前記切込み手段を制御して前記ワークに対して前記加工手段が相対的に徐々に切込む方向に移動させて前記ワークの外周部を徐々に加工していくとともに、前記押圧手段にて前記検出部を前記外周部に押圧している前記測定手段からの検出信号に基づいて前記加工手段にて加工している外周部の外径を測定し、測定した前記外周部の外径が大きくなる方向に所定量以上変化した場合、前記検出部が異物を噛み込んだと判定し、前記切込み手段による相対的な移動を停止し、前記測定手段を前記ワークから離間することなく前記測定手段を前記ワークの外周部に接触させた状態を保持し、前記押圧手段の押圧力を一時的に低下させることによって検出部が異物を噛み込む力を弱め(異物に対して押圧力の変化という刺激を与えて)、噛み込んだ異物を除去する。
また、本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりの加工装置である。
請求項3に記載の加工装置は、請求項2に記載の加工装置であって、前記制御手段は、前記押圧手段の押圧力を一時的に低下させる際、前記外周部の外径の測定値の増減状態に応じて低下させる押圧力を変更する。
また、本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりの加工装置である。
請求項4に記載の加工装置は、請求項3に記載の加工装置であって、前記制御手段は、前記検出部が異物を噛み込んだと判定して前記切込み手段による相対的な移動を停止した後、所定時間経過毎に、または前記回転手段の所定回転毎に、前記増減状態を判定する。
請求項1に記載の加工方法を用いれば、異物の噛み込みが発生しても、測定手段をワークの外周部に接触させた状態を保持し、測定手段をワークから離間させることなく噛み込んだ異物を除去することができる。
また、請求項2に記載の加工装置によれば、検出部が異物を噛み込んだ場合であっても、測定手段をワークから離間させることなく噛み込んだ異物を適切に除去することができる。
また、請求項3に記載の加工装置によれば、検出部が異物を噛み込んだ場合であっても、増減状態(異物の増加傾向や異物の量等)に応じて検出部の押圧力を低下させることで、測定手段をワークから離間させることなく噛み込んだ異物を更に適切に除去することができる。
また、請求項4に記載の加工装置によれば、増減状態に応じて低下させた押圧力の効果を適切なタイミングで確認しながら異物を除去することができる。
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の加工装置1(研削盤)の一実施の形態における構成の例の平面図を示している。また、図2は、図1におけるA方向から見た加工装置1の側面図(数値制御装置40は省略している)の例を示している。
●[加工装置1の構成(図1、図2)]
加工装置1は、ベース2と主軸テーブルTB1と、砥石テーブルTB2と、数値制御装置40(制御手段に相当)とを備えている。
砥石テーブルTB2には、略円柱状の砥石30(加工手段に相当)を備えている。砥石30は、砥石テーブルTB2に載置された砥石回転駆動モータ24により、Z軸に平行な回転軸を中心に回転する。なお、Z軸は、ワークWの回転軸であるC軸に平行な軸であり、後述する送りネジ23BがZ軸である。
また、クーラントノズル70は、ワークWの被加工部と砥石30の冷却と潤滑を行うためのクーラント(冷却油等の流体)を吐出するノズルである。クーラントは、数値制御装置40から制御されるクーラント供給ポンプ74によりクーラントノズル70に供給されて吐出される。なお、クーラントの吐出量は、数値制御装置40から制御される流量調節バルブ72にて調節される。
また、主軸モータ21(C軸駆動装置であり、回転手段に相当)は、ワークWを支持してワークWをC軸回りに回転させる。
また、砥石テーブルTB2は、ベース2に設けられた砥石テーブル駆動モータ22(X軸駆動装置であり、切込み手段に相当)と送りネジ22B、及び砥石テーブルTB2に設けられたナット(図示省略)により、ベース2に対してX軸方向に移動可能である。なお、X軸は、前記C軸に直交する方向の軸であり、送りネジ22BがX軸である。
主軸テーブルTB1は、ベース2に設けられた主軸テーブル駆動モータ23(Z軸駆動装置に相当)と送りネジ23B、及び主軸テーブルTB1に設けられたナット(図示省略)により、ベース2に対してZ軸方向に移動可能である。
主軸テーブルTB1の上には、心押し台21Tが固定され、主軸台21Dが、種々の長さのワークに対応可能とするように、心押し台21Tに近接または離間可能となるように、心押し台21Tに対向する位置に載置されている。主軸台21D及び心押し台21Tには、それぞれ支持部21C、21S(チャック等)が設けられており、これら支持部21C、21Sの間にワークWが保持(支持)される。この支持部21C、21Sを結ぶ軸がC軸である。
なお、ワークWの被加工部の外径を測定可能な定寸装置60(測定手段に相当)についての説明は後述する。
ワークWは、主軸台21Dに設けられた主軸モータ21により、支持部21C、21Sを結ぶC軸を中心として回転する。
また、砥石テーブル駆動モータ22には砥石テーブルTB2のX軸方向の位置を検出する位置検出器22Eが設けられており、主軸テーブル駆動モータ23には主軸テーブルTB1のZ軸方向の位置を検出する位置検出器23Eが設けられており、主軸モータ21には、ワークWの回転角度または回転速度を検出する位置検出器21Eが設けられている。これらの位置検出器としては種々のものを用いることができるが、本実施の形態ではエンコーダを用いている。
数値制御装置40は、CPU41と、記憶装置42と、入出力装置43(キーボード、モニタ等)とインターフェース44と、ドライブユニット51〜55等にて構成されている。そして、数値制御装置40は、記憶装置42に記憶された加工データ及び加工プログラム等に基づいて、主軸モータ21、砥石テーブル駆動モータ22、主軸テーブル駆動モータ23、砥石回転駆動モータ24を制御する。
CPU41は、入出力装置43から入力されるデータと、記憶装置42に記憶されているプログラムやデータと、インターフェース44を介して入力される外部入力信号に基づいて出力指令値を計算し、インターフェース44を介して出力指令値を出力する。
外部入力信号としては、ワークWの回転角度(あるいは回転速度)を検出する位置検出器21Eからの信号、砥石テーブルTB2のX軸方向の位置を検出する位置検出器22Eからの信号、主軸テーブルTB1のZ軸方向の位置を検出する位置検出器23Eからの信号、ワークWの外径を測定する定寸装置60からの検出信号等が用いられる。
出力指令値は、ワークWを加工(研削)するための、ワークWの回転角度(または回転速度)、砥石テーブルTB2のX軸方向の位置、主軸テーブルTB1のZ軸方向の位置、砥石回転駆動モータ24の回転数を制御する制御量であり、インターフェース44を介してドライブユニット51〜55に出力される。
ドライブユニット51は主軸モータ21を制御し、C軸を回転中心としたワークWの回転速度を制御する。ドライブユニット52は砥石テーブル駆動モータ22を制御し、砥石テーブルTB2のX軸方向の位置を制御する。ドライブユニット53は主軸テーブル駆動モータ23を制御し、主軸テーブルTB1のZ軸方向の位置を制御する。また、ドライブユニット54は砥石回転駆動モータ24を制御し、砥石30の回転速度を制御する。また、ドライブユニット55は定寸装置60のX軸方向の位置や一対の揺動アーム61a、61bの開閉等を制御する。
ドライブユニット51、52、53は、位置検出器21E、22E、23Eからの検出信号を取り込み、取り込んだ位置検出器からの検出信号と、CPU41からの出力指令値との差を補正するようにフィードバック制御を行い、主軸モータ21、砥石テーブル駆動モータ22、主軸テーブル駆動モータ23、を各々制御する。
なお、図1の例では、砥石回転駆動モータ24には検出器を設けていないが、砥石回転駆動モータ24にも速度検出器等を設け、砥石回転駆動モータ24の回転速度をフィードバック制御することも可能である。
●[定寸装置60の構成(図2、図3)]
次に、図2(加工装置1の側面図)と図3(図2における定寸装置60の一部の拡大図(一部断面図))を用いて、定寸装置60の構成について説明する。
定寸装置60(測定手段に相当)は、ワークWを挟んで砥石30と対向する位置のベース2上に設けられ、ワークWの外径を測定可能である。定寸装置60は、C軸回りに回転する被加工部の外径の寸法をリアルタイムに検出して検出信号を出力する。そして数値制御装置40は、増幅器56(図1を参照)を介して定寸装置60からの検出信号を取り込み、被加工部の外径がどれだけであるか、リアルタイムに連続的に認識することができる。
定寸装置60は、駆動装置69と定寸装置本体66等にて構成され、駆動装置69は、パイロットバー68を介して定寸装置本体66をX軸方向に進退移動させることが可能である。
定寸装置本体66には、先端にワークWの被加工部の外周部の上下2個所に接触する接触子である一対のフィーラ62a、62b(検出部に相当)を設けた一対の揺動アーム61a、61bが、ピン63a、63bを支点として揺動可能に設けられている。また、揺動アーム61a、61bは、スプリング65a、65bの弾性力により、互いに閉止する方向(フィーラ62a、62bの間隔が狭くなる方向)に付勢されている。
また、揺動アーム61a、61bの後端(フィーラ62a、62bと反対側の端部)には、変位検出器を構成する差動トランスの鉄心67a、67bが連結されており、鉄心67a、67bは定寸装置本体66の内部に設けられたコイル68a、68b内で摺動可能に嵌挿されている。これにより、一対のフィーラ62a、62bの相対変位量は、一対の揺動アーム61a、61bの揺動変位量となり、鉄心67a、67bがコイル68a、68b内で変位し、変位量に応じた検出信号がコイル68a、68bから出力される。
なお、リトラクト装置64a、64bは、スプリング65a、65bの弾性力に抗して、揺動アーム61a、61b(フィーラ62a、62b)を開放する方向に駆動可能である。また、リトラクト装置64a、64bは、一対の揺動アーム61a、61bをワークWから離間するのみでなく、スプリング65a、65bの弾性力に抗する力を調節可能であり、一対の揺動アーム61a、61bをワークWの方向に押圧する押圧力を調節することが可能である(スプリング65a、65bとリトラクト装置64a、64bが押圧手段に相当する)。数値制御装置40は、ドライブユニット55(図1を参照)を介してリトラクト装置64a、64bに制御信号を出力し、一対の揺動アーム61a、61bの押圧力を調節可能である。
ワークWの被加工部の外径の測定を行わない場合、定寸装置60は後退端(ワークWから最も離れる位置)に保持され、一対の揺動アーム61a、61bはリトラクト装置64a、64bにより開放状態に保持されている。
ワークWの被加工部の外径の測定を行う場合、例えば、ワークWの粗研削中に定寸装置60の前進が数値制御装置40からドライブユニット55(図1を参照)を介して指令され、駆動装置69が定寸装置本体66をX軸方向に沿ってワークWに近接する方向に移動させる。そして、一対のフィーラ62a、62bがワークWの外径を測定可能な位置に到達すると、定寸装置本体66の移動が停止される。そして、数値制御装置40からドライブユニット55(図1を参照)を介してリトラクト装置64a、64bに解除指令を出力すると、一対のフィーラ62a、62bはワークWの外周部の上下2個所に接触する。
加工装置1は、一対のフィーラ62a、62bをワークWの外周部に接触した状態を保持しながら、砥石30をワークWに対して切込む方向に移動させて研削することが可能である。従って、ワークWの被加工部を砥石30で研削しながら、研削している被加工部の外径を定寸装置60にて測定可能である。
しかし、被加工部を砥石30で研削しながら外径を測定しているため、フィーラ62a、62bとワークWとの間に、ワークWや砥石30の屑等の異物が噛み込まれる場合がある。この場合、定寸装置60はワークWの正しい外径よりも大きな寸法を示す検出信号を出力してしまい、出来上がったワークWの外径が許容範囲よりも小さくなることがある。
以下にて、この噛み込んだ異物を除去する処理手順について説明する。
●[噛み込んだ異物を除去する処理手順(図4、図5)]
次に、図4に示すフローチャートを用いて、噛み込んだ異物の除去方法の手順について説明する。
なお、図5(A)に示すグラフは、粗研削(区間N)、精研削(区間S)、仕上げ研削(区間SS)の工程における研削中の砥石30のX軸方向の位置、定寸装置60にて測定されたワークWの外径の測定値(このグラフでは、直径でなく、半径を示す)、一対の揺動アーム61a、61bに設けられた一対のフィーラ62a、62b(検出部に相当)をワークWに押圧する押圧力、と時間の関係を示すグラフであり、図5(A)中の(α)部にて異物の噛み込みが発生し、(β)部にて異物が除去された様子を示している。
また、図5(B)は、(α)部及び(β)部近傍の拡大図の例を示している。
例えば、図4に示すフローチャートに示す処理は、所定時間毎(10ms毎等)に数値制御装置40にて実行される。
なお、前述したように、砥石30をワークWに押し付けて研削すると、ワークWが僅かに反対方向に湾曲するため、図5(A)及び(B)に示すグラフでは、砥石30のX軸方向の位置に対して、ワークWの外径の測定値のほうが大きい値を示している。
ステップS10では、数値制御装置40は、砥石テーブル駆動モータ22に制御指令を出力し、ワークWに対して砥石30が徐々に切込むように、砥石30を移動させ、ステップS12に進む。
なお、主軸モータ21、砥石回転駆動モータ24、リトラクト装置64a及び64b、クーラント供給ポンプ74、流量調節バルブ72は、既に数値制御装置40からの制御指令にて、所定の動作状態に達している(図4に示すフローチャートでは省略している)。
ステップS12では、数値制御装置40は、定寸装置60からの検出信号に基づいて研削している被加工部の外径の測定値を求めて記憶し、ステップS16に進む。
ステップS16では、ステップS12にて求めた測定値を用いて、ワークWの測定値の最小値の更新処理を行う。当該最小値は、研削処理の開始時に初期化されており、ステップS12にて求めた測定値が、現在記憶している最小値よりも小さい場合、ステップS12にて求めた測定値を最小値として記憶し、ステップS20に進む。
ステップS20では、ステップS12にて求めた今回の測定値と、記憶されている最小値との差分が閾値Rth(図5(A)及び(B)を参照)以上であるか否かを判定する。閾値Rth以上である場合(Yes、図5(B)中の時間[T+2]の(α)参照)は、異物の噛み込みが発生したと判定してステップS22に進む(この場合、外径が大きくなる方向に所定量以上変化したと判定)。なお、閾値Rth未満である場合(No)は、異物の噛み込みは発生していないと判定して処理を終了する。
ステップS22では、ワークWに対して切込む側に移動させていた砥石30の移動を停止し、現在の位置に砥石30を保持し、ステップS24に進む。
ここで砥石30をワークWから離間する方向に移動させると、砥石30でワークWを押し付ける負荷が変化することで、測定している外径の測定値が変化する可能性があるため、好ましくない。
前述したように、砥石30をワークWに押し付けてワークWの外周部を研削すると、ワークWが僅かに反対方向に湾曲するため、砥石30を移動させた寸法と実際に研削された寸法とは完全には一致しない。そこで、目標とする研削寸法を正確に把握するために定寸装置60を用いてワークWの外径を測定している。
ステップS24では、所定時間(例えば、10ms等)または所定回転(例えば、ワークWを1回転等)の間、その状態で待機した後、ステップS26に進む。後述するステップS36BまたはステップS36C等にて一対のフィーラ62a、62bの押圧力を低下させた場合、噛み込んだ異物は、この待機時間の間に除去あるいは減少されることになる。この待機時間が適切なタイミングとなるように、所定時間または所定回転が設定される。
ステップS26では、定寸装置60からの検出信号に基づいて被加工部の外径の測定値を求め、ステップS30に進む。
ステップS30では、ステップS26にて求めた測定値が、記憶されている最小値未満であるか否かを判定する。最小値未満である(Yes、図5(B)中の時間[T+9]の(β)参照)場合、噛み込んだ異物が全て除去されたと判断して、ステップS40に進む。最小値未満でない(No)場合、噛み込んだ異物がまだ残っていると判断して、ステップS32に進む。
ステップS32では、今回の測定値(ステップS26による測定値)と、前回の測定値(ステップS24による待機前の測定値)との差分の絶対値が所定値Rw以下であるか否かを判定する。所定値Rw以下である(Yes)場合、噛み込んだ異物の増減量が小さいと判断し、ステップS36Bに進む。所定値Rwより大きい(No)場合、ステップS34に進む。なお、前回の測定値とは、ステップS24〜S36A(またはS36B、S36C)のループ1週目の場合はステップS12にて求めた測定値であり、当該ループ2週目以降の場合は前回のループのステップS26にて求めた測定値である。
ステップS34に進んだ場合、今回の測定値が前回の測定値より大きいか否かを判定する。大きい(Yes)場合はステップS36Cに進み、そうでない(No)場合はステップS36Aに進む。
ステップS36Aに進んだ場合は、今回の測定値が前回の測定値に対して減少傾向を示している場合である(異物が除去されつつある)ため、例えば、一対のフィーラ62a、62bの押圧力を本来の研削で用いる押圧力に相当する設定1の押圧力とし、ステップS24に戻る。
ステップS36Bに進んだ場合は、今回の測定値が前回の測定値に対して増加傾向も減少傾向も示していない(±所定値Rwの範囲内)場合である(異物が除去されずに残留している)ため、例えば、一対のフィーラ62a、62bの押圧力を本来の研削で用いる押圧力の80%に相当する設定2の押圧力となるようにして、押圧力を低下させ、ステップS24に戻る。
ステップS36Cに進んだ場合は、今回の測定値が前回の測定値に対して増加傾向を示している場合である(異物の堆積が増加している)ため、例えば、一対のフィーラ62a、62bの押圧力を本来の研削で用いる押圧力の50%に相当する設定3の押圧力(設定2よりも更に低い押圧力)となるようにして、押圧力を低下させ、ステップS24に戻る。
上記のように、噛み込んだ異物の増減状態に応じて一対のフィーラ62a、62bの押圧力を低下させる。
また、ステップS40に進んだ場合は、異物が全て除去されたことにより、今回の測定値が、記憶している最小値以下となった場合であるため、一対のフィーラ62a、62bの押圧力を本来の研削で用いる押圧力となるように復帰させ、ステップS42に進む。
そして、ステップS42では、ステップS22にて停止させた砥石30の切込み方向への移動を再開させる。
このように、異物を噛み込んだ異常を検出した場合、一対のフィーラ62a、62bの押圧力を一時的に低下させることで、接触子であるフィーラ62a、62bをワークWから離間することなく、噛み込んだ異物を除去することができる。
以上の説明では、粗研削(区間N)、精研削(区間S)、仕上げ研削(区間SS)にて本来の研削で用いる押圧力を一定(押圧力A)として、ステップS36Cにおける設定3では、押圧力A*0.5(50%)とする例を説明した。
他の実施例として、例えば、粗研削(区間N)、精研削(区間S)、仕上げ研削(区間SS)のそれぞれにて、本来の研削で用いる押圧力をそれぞれ、押圧力A、押圧力B、押圧力C(押圧力A>押圧力B>押圧力C)として、粗研削の場合におけるステップS36Cの設定3では押圧力A*0.5(50%)に設定し、精研削の場合におけるステップS36Cの設定3では押圧力B*0.5(50%)に設定し、仕上げ研削の場合におけるステップS36Cの設定3では押圧力C*0.5(50%)に設定するようにしてもよい。
また、更に他の実施例として、例えば、粗研削(区間N)、精研削(区間S)、仕上げ研削(区間SS)のそれぞれにて、本来の研削で用いる押圧力をそれぞれ、押圧力A、押圧力B、押圧力C(押圧力A>押圧力B>押圧力C)として、粗研削の場合におけるステップS36Cの設定3では押圧力C*0.5(50%)に設定し、精研削の場合におけるステップS36Cの設定3では押圧力C*0.5(50%)に設定し、仕上げ研削の場合におけるステップS36Cの設定3では押圧力C*0.5(50%)に設定するようにしてもよい。
以上では、ステップS36Cの設定3について説明したが、ステップS36Bの設定2も同様であり、一時的に低下させる押圧力(ステップS36B、ステップS36Cにおける設定2、設定3による押圧力)は、種々の値に設定することができる。
以上の説明では、略円柱状の砥石30(回転砥石)を加工手段とし、ワークWの形状が略円筒状または円柱状の例にて説明したが、加工手段、ワークWは、これらに限定されるものではなく、種々の加工手段及びワークに適用できる。また、ワークWの形状は、C軸に直交する被加工部の断面形状が円であれば、どのような形状のワークであってもよい。
また、以上の説明では、図1の例に示した加工装置1により、ワークに対して砥石30をX軸方向に移動させたが、砥石30に対してワークをX軸方向に移動させる構成にすることもできる。従って、X軸駆動装置は、ワークに対して砥石30を相対的にX軸方向に移動させることができるものである。
同様に、Z軸方向については、砥石30に対してワークをZ軸方向に移動させたが、ワークに対して砥石30をZ軸方向に移動させる構成にすることもできる。従って、Z軸駆動装置は、ワークに対して砥石30を相対的にZ軸方向に移動させることができるものである。
以上、本実施の形態にて説明した加工装置及び加工方法では、異物を噛み込み時の異常の状態(異物の量等)をリアルタイムに判断しているので、異物が除去されたか否かを容易に判断することができる。
また、異常の状態(異物の量等)に応じて押圧力を変更することで、適切に異物を除去することができる。
また、ワークWに接触させるフィーラ62a、62bをワークWから離間させることなく異物を除去することで、誤差の発生を抑制し、繰り返し精度が良くなる。
また、異常の状態(異物の量等)をリアルタイムに判断しているので、異物が除去された場合に迅速に加工の再開に移ることが可能であり、ムダ時間がない。
また、噛み込んだ異物はフィーラに巻きつくように絡んでおり、フィーラをワークから離間して洗い流す等すれば確実に異物を除去できるが、除去後、再度フィーラをワークに押圧する場合の衝撃により、ワークに傷がつく可能性がある。特に、取りしろが少ない場合には致命的な傷となる。しかし、本実施の形態の説明のように、フィーラをワークから離間させることなく、フィーラの押圧力の調整であれば、ワークの傷つきを発生させずに異物を除去することができる。
本発明の加工装置1は、本実施の形態で説明した外観、構成、処理等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
また、本実施の形態の説明では、加工装置1の例として研削盤を用いて説明したが、研削盤に限定されるものではなく、例えば旋盤に適用することも可能である。
数値制御装置40、及び加工装置1の一実施の形態を説明する図である。 図1におけるA方向から見た加工装置1の側面図(数値制御装置40は省略)の例を示す図である。 定寸装置60の構造の例を説明する図である。 噛み込んだ異物を除去する処理手順の例を説明するフローチャートである。 研削中の砥石30のX軸方向の位置、定寸装置60にて測定されたワークWの外径の測定値(このグラフでは半径)、一対のフィーラ62a、62bの押圧力、と時間の関係を示すグラフである。
1 加工装置
2 ベース
W ワーク
21 主軸モータ(回転手段)
22 砥石テーブル駆動モータ(切込み手段)
23 主軸テーブル駆動モータ
24 砥石回転駆動モータ
21E、22E、23E 位置検出器
TB1 主軸テーブル
TB2 砥石テーブル
22B、23B 送りネジ
30 砥石(加工手段)
40 数値制御装置(制御手段)
41 CPU
42 記憶装置
43 入出力装置
44 インターフェース
51〜55 ドライブユニット
60 定寸装置(測定手段)
61a、61b 揺動アーム
62a、62b フィーラ(検出部)
64a、64b リトラクト装置(押圧手段)
65a、65b スプリング(押圧手段)
70 クーラントノズル
72 流量調節バルブ
74 クーラント供給ポンプ

Claims (4)

  1. 回転手段と、加工手段と、測定手段と、異常検出手段とを用いてワークを加工する加工方法であって、
    前記測定手段は、前記ワークの外周部に接触させる検出部と、前記検出部を前記外周部に押圧する押圧手段を有しており、
    前記回転手段にて、前記ワークの回転軸回りに前記ワークを回転させるステップと、
    前記加工手段にて、回転している前記ワークの外周部を徐々に加工していくステップと、
    前記測定手段にて、加工している外周部に前記検出部を押圧した状態を保持して当該外周部の外径を測定するステップと、
    前記異常検出手段にて、前記検出部における前記外周部との接触部が異物を噛み込んだことを示す異常を検出するステップと、
    前記異常を検出した場合に、前記測定手段を前記ワークから離間することなく前記測定手段を前記ワークの外周部に接触させた状態を保持し、前記押圧手段の押圧力を一時的に低下させることで前記接触部に噛み込んだ異物を除去するステップとを有する、
    ことを特徴とする加工方法。
  2. 支持したワークを前記ワークの回転軸回りに回転させる回転手段と、
    前記ワークの外周部を加工可能な加工手段と、
    前記ワークの回転軸に直交する方向から前記ワークに対して相対的に前記加工手段を進退移動させる切込み手段と、
    前記加工手段にて加工された前記ワークの外周部の外径を測定可能な測定手段と、
    前記ワーク回転手段と前記切込み手段を制御する制御手段と、
    を備えた加工装置であって、
    前記測定手段は、前記ワークの外周部に接触させる検出部と、前記検出部を前記外周部に押圧する押圧手段を有しており、
    前記制御手段は、
    前記回転手段を制御して前記ワークを前記ワークの回転軸回りに回転させながら、
    前記切込み手段を制御して前記ワークに対して前記加工手段が相対的に徐々に切込む方向に移動させて前記ワークの外周部を徐々に加工していくとともに、前記押圧手段にて前記検出部を前記外周部に押圧している前記測定手段からの検出信号に基づいて前記加工手段にて加工している外周部の外径を測定し、
    測定した前記外周部の外径が大きくなる方向に所定量以上変化した場合、前記検出部が異物を噛み込んだと判定し、前記切込み手段による相対的な移動を停止し、前記測定手段を前記ワークから離間することなく前記測定手段を前記ワークの外周部に接触させた状態を保持し、前記押圧手段の押圧力を一時的に低下させて前記検出部が噛み込んだ異物を除去する、
    ことを特徴とする加工装置。
  3. 請求項2に記載の加工装置であって、
    前記制御手段は、
    前記押圧手段の押圧力を一時的に低下させる際、前記外周部の外径の測定値の増減状態に応じて低下させる押圧力を変更する、
    ことを特徴とする加工装置。
  4. 請求項3に記載の加工装置であって、
    前記制御手段は、
    前記検出部が異物を噛み込んだと判定して前記切込み手段による相対的な移動を停止した後、所定時間経過毎に、または前記回転手段の所定回転毎に、前記増減状態を判定する、
    ことを特徴とする加工装置。
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