以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
まず、本発明に係る作業車両の実施の一形態であるトラクタ1の全体構成について図1及び図2を用いて説明する。なお、本発明に係る作業車両は本実施例で説明する農業用車両であるトラクタに限らず、ローダやバックホー等の建設機械等の作業車両にも利用可能である。また、以下の説明では図1における矢印X方向をトラクタ1の前方向、図2における矢印Y方向をトラクタ1の左方向として説明する。
トラクタ1は種々の作業機(ロータリ、フロントローダ等)を装着し、装着した作業機を用いて種々の作業を行うものである。トラクタ1は主として機体フレーム5、エンジン10、クラッチ20、トランスミッション30、後車軸機構40、キャビン50、油圧昇降機構70、前車軸機構80等を具備する。また、本実施例におけるトラクタ1は作業機であるフロントローダ60を装着している。
機体フレーム5はトラクタ1の骨格となる部材である。機体フレーム5は略長方形の板状の部材を複数用いて形成される略箱状の部材である。
エンジン10はトラクタ1の車輪を駆動する回転動力を発生させるものである。エンジン10は機体フレーム5の前後方向の中途部に固設される。エンジン10により発生された回転動力はエンジン10に具備される出力軸(図示せず)より出力される。エンジン10の上方にはエンジン10を覆う部材であるボンネット11が配置される。
クラッチ20はエンジン10により発生された回転動力を伝達するものである。クラッチ20はエンジン10の後部に配置される。クラッチ20はエンジン10の出力軸に連結され、出力軸から伝達されるエンジン10の回転動力をクラッチ20に連結される伝達軸(図示せず)へと伝達する。また、クラッチ20によってエンジン10の出力軸とクラッチ20の伝達軸との連結を解くことが可能である。エンジン10の出力軸とクラッチ20の伝達軸との連結が解かれた場合、エンジン10の出力軸からクラッチ20の伝達軸への回転動力の伝達が断たれる。
トランスミッション30は入力された回転動力を変速(減速)するものである。トランスミッション30は機体フレーム5の後端部に固設される。トランスミッション30は略箱状の部材であるトランスミッションケース31と、トランスミッションケース31内に配置された複数のギヤ(図示せず)と、から構成される。トランスミッション30はクラッチ20の伝達軸と連結され、クラッチ20の伝達軸から伝達される回転動力を前記複数のギヤにより変速する。
また、トランスミッションケース31の後面の略中央部には、後方へ向けてPTO軸32が突設される。PTO軸32の一端はトランスミッションケース31内に配置された複数のギヤに連結されており、トランスミッション30により変速された回転動力により回転する。
なお、本実施例におけるトランスミッションはギヤのみを用いて変速するもの以外に、油圧ポンプを駆動して発生させた油圧を油圧モータで回転力に変換するものや、摩擦により変速比を連続的に変化させるもの等を用いることも可能である。
後車軸機構40はトラクタ1を後輪42・42により支持すると共にトランスミッション30により変速された回転動力を後輪42・42へと伝達するものである。後車軸機構40は主として後車軸41、後輪42等を具備する。
後車軸41・41はトランスミッション30により変速された回転動力により回転するものである。後車軸41・41の一端はそれぞれトランスミッション30に連結され、トランスミッションケース31の左側面及び右側面からそれぞれ左方向及び右方向へ向けて突設される。
後輪42・42はトラクタ1を支持すると共にトラクタ1の駆動力を地面に伝達するものである。後輪42・42の中央部は後車軸41・41の他端にそれぞれ固設され、後車軸41・41が回転することにより後輪42・42も回転される。後輪42・42が回転することによりトラクタ1は前進又は後進することができる。
キャビン50はトラクタ1のオペレータが乗車する空間を覆うものである。キャビン50の内部にはシート51、ステアリングハンドル52、メータパネル53、クラッチペダル54、左ブレーキペダル55L、右ブレーキペダル55R等が具備される。
シート51はオペレータが着座するものである。シート51はキャビン50内の後部に配置される。
ステアリングハンドル52はオペレータがトラクタ1を操舵するために操作するものである。ステアリングハンドル52は略リング状の部材であり、キャビン50内の前部であってシート51に着座したオペレータにより操作することが可能な位置に配置される。ステアリングハンドル52は図示せぬ操舵機構に連結され、ステアリングハンドル52が操作されることによりトラクタ1の前輪85・85が操舵される。
メータパネル53はトラクタ1に関する情報を表示するものである。メータパネル53はシート51の前方に配置される。メータパネル53にはトラクタ1の走行速度やエンジン10の回転数、燃料の残量等の種々の情報を表示することができる表示部である。
クラッチペダル54はクラッチ20を操作するためのものである。クラッチペダル54はステアリングハンドル52の左方下方に配置される。クラッチペダル54はクラッチ20と連結される。オペレータによりクラッチペダル54が操作される(クラッチペダル54が踏み込まれる)とクラッチ20によるエンジン10の出力軸とクラッチ20の伝達軸との連結が解かれる。
左ブレーキペダル55L及び右ブレーキペダル55Rはトラクタ1を制動するための操作をするためのものである。左ブレーキペダル55Lはステアリングハンドル52の右方下方に配置される。左ブレーキペダル55Lはトラクタ1の左側の後車軸41を制動する左後車軸制動機構(図示せず)と連結される。オペレータにより左ブレーキペダル55Lが操作される(左ブレーキペダル55Lが踏み込まれる)と左後車軸制動機構によりトラクタ1の左側の後車軸41が制動され、ひいてはトラクタ1の左側の後輪42が制動される。右ブレーキペダル55Rはステアリングハンドル52の右方下方であって左ブレーキペダル55Lの右方に配置される。右ブレーキペダル55Rはトラクタ1の右側の後車軸41を制動する右後車軸制動機構(図示せず)と連結される。オペレータにより右ブレーキペダル55Rが操作される(右ブレーキペダル55Rが踏み込まれる)と右後車軸制動機構によりトラクタ1の右側の後車軸41が制動され、ひいてはトラクタ1の右側の後輪42が制動される。
また、キャビン50の外部にはフェンダ56・56が具備される。フェンダ56・56は後輪42・42の外周の前端から上端を経て上端の後方までを覆うように、キャビン50の左側面及び右側面にそれぞれ固設される。
フロントローダ60はトラクタ1の前部に装着され、土砂の運搬や掘削等の作業に用いるものである。フロントローダ60は主としてブラケット61、バケットリフトアーム62、バケットリフトシリンダ63、中間リンク64、バケットシリンダ65、バケットリンク66、バケット67等を具備する。
ブラケット61はフロントローダ60を支持するものである。ブラケット61・61はボンネット11の左右両側にそれぞれ配置され、当該ブラケット61・61の下端はそれぞれ機体フレーム5の左右両側に固設される。
バケットリフトアーム62は前後中央部が両端を結ぶ直線より上方に屈曲して形成される板状の部材である。バケットリフトアーム62・62の後端部はブラケット61・61の上端にそれぞれ上下に回動可能に支持される。
バケットリフトシリンダ63はバケットリフトシリンダ本体63a、及びバケットリフトシリンダ本体63aに摺動可能に挿入されたバケットリフトシリンダロッド63bからなる油圧シリンダである。バケットリフトシリンダ63・63のバケットリフトシリンダ本体63a・63a側の端部はそれぞれブラケット61・61の上下略中央部に上下に回動可能に支持される。バケットリフトシリンダ63・63のバケットリフトシリンダロッド63b・63b側の端部はそれぞれバケットリフトアーム62・62の中途部に上下に回動可能に支持される。
中間リンク64は略三角形状の板状の部材である。中間リンク64・64の下端部はそれぞれバケットリフトアーム62・62の前部に前後に回動可能に支持される。
バケットシリンダ65はバケットシリンダ本体65a、及びバケットシリンダ本体65aに摺動可能に挿入されたバケットシリンダロッド65bからなる油圧シリンダである。バケットシリンダ65・65のバケットシリンダ本体65a・65a側の端部はそれぞれバケットリフトアーム62・62の前後略中央部に上下に回動可能に支持される。バケットシリンダ65・65のバケットシリンダロッド65b・65b側の端部はそれぞれ中間リンク64・64の上後部に上下に回動可能に支持される。
バケットリンク66は丸棒状のものである。バケットリンク66・66の後端はそれぞれ中間リンク64・64の上前部に上下に回動可能に支持される。
バケット67はフロントローダ60の作業部となるものである。バケット67の後面下部はバケットリフトアーム62・62の前端に上下に回動可能に支持される。バケット67の後面上部はバケットリンク66・66の前端に上下に回動可能に支持される。
上記の如く構成されたフロントローダ60において、図示せぬ操作部によりバケットリフトシリンダロッド63b・63bを伸縮させることによりフロントローダ60の前側(バケット67側)を上下に昇降させることができる。また、図示せぬ操作部によりバケットシリンダロッド65b・65bを伸縮させることによりバケット67をバケットリフトアーム62・62に対して上下に回動させることができる。上記操作とトラクタ1の前後進とを組み合わせることにより、フロントローダ60を用いた土砂の運搬や掘削等の作業を行うことができる。
油圧昇降機構70はロータリ等の作業機を昇降可能に支持するものである。油圧昇降機構70は主として上部カバー71、昇降シリンダ72、リフトアーム73、リフトロッド74L・74R、リフトロッドシリンダ75、ロワリンク76、トップリンク77等を具備する。
上部カバー71は略箱状の部材である。上部カバー71はトランスミッションケース31の上部に配置される。
昇降シリンダ72は昇降シリンダ本体72a、及び昇降シリンダ本体72aに摺動可能に挿入された昇降シリンダロッド72bからなる油圧シリンダである。昇降シリンダ本体72aは昇降シリンダロッド72bが後方に向かって伸縮可能となる向きで上部カバー内に配置される。
リフトアーム73・73は板状の部材である。リフトアーム73・73の一端(前端)は上部カバー71の左側面と右側面とを貫通する孔に挿入された一本のリフトアーム軸73aの両端にそれぞれ固設される。リフトアーム軸73aの略中央部には棒状の連結部材73bの一端が前記リフトアーム軸73aに対して垂直に固設される。連結部材73bの他端は昇降シリンダロッド72bの端部と連結される。昇降シリンダ72が油圧により昇降シリンダロッド72bを伸縮させることで、連結部材73bを介してリフトアーム軸73aを回動させ、ひいてはリフトアーム73・73の他端(後端)を上下に昇降させる。
リフトロッド74L・74Rはリフトアーム73・73とロワリンク76・76とを連結するものである。リフトロッド74L・74Rは略棒状の部材である。リフトロッド74Lの一端(上端)はトラクタ1の左側のリフトアーム73の後端に連結される。リフトロッド74Rの一端(上端)はトラクタ1の右側のリフトアーム73の後端に連結される。
リフトロッドシリンダ75はリフトロッドシリンダ本体75a、及びリフトロッドシリンダ本体75aに摺動可能に挿入されたリフトロッドシリンダロッド75bからなる油圧シリンダである。リフトロッドシリンダ75はリフトロッド74Lの中途部に設けられる。リフトロッドシリンダ75が油圧によりリフトロッドシリンダロッド75bを伸縮させることで、リフトロッド74Lを長手方向に伸縮させることができる。
ロワリンク76・76はトラクタ1に装着される作業機を支持するものである。ロワリンク76・76は板状の部材であり、ロワリンク76・76の一端(前端)はトランスミッションケース31の左側面の後部及び右側面の後部にそれぞれ上下に回動可能に支持される。トラクタ1の左側のロワリンク76の中途部はリフトロッド74Lの下端に連結される。トラクタ1の右側のロワリンク76の中途部はリフトロッド74Rの下端に連結される。
トップリンク77はトラクタ1に装着される作業機を支持するものである。トップリンク77の一端(前端)はトップリンクブラケット77aを介して上部カバー71に上下に回動可能に支持される。
ロワリンク76・76の後端及びトップリンク77の後端をロータリ等の作業機に連結させることで、油圧昇降機構70を介してトラクタ1に当該作業機が装着される。昇降シリンダ72が昇降シリンダロッド72bを伸縮させることで、リフトアーム73・73、リフトロッド74L・74R等を介してロワリンク76・76の後端が上下に昇降され、ひいてはトラクタ1に装着された作業機が上下に昇降される。リフトロッドシリンダ75がリフトロッドシリンダロッド75bを伸縮させることで、トラクタ1の左側のロワリンク76がトラクタ1の右側のロワリンク76とは独立して昇降される。これにより油圧昇降機構70を介してトラクタ1に装着された作業機の左右方向の傾斜を変化させることが可能となる。
また、トラクタ1に装着された作業機とPTO軸32とをユニバーサルジョイント等を用いて連結することで、回転動力を当該作業機に伝達することができる。
前車軸機構80はトラクタ1を前輪85・85により支持すると共にトランスミッション30により変速された回転動力を前輪85・85へと伝達するものである。前車軸機構80は主としてセンターケース81、差動装置82、前輪駆動軸83、最終減速装置84、前輪85、独立型サスペンション90等を具備する。
センターケース81は箱状の部材であり、機体フレーム5の前部であって機体フレーム5の下部に固設される。
差動装置82は回転動力を分配するものである。差動装置82はセンターケース81内に配置される。トランスミッション30により変速された回転動力は推進軸(図示せず)を介して差動装置82に伝達される。トランスミッション30から伝達された回転動力は差動装置82によってトラクタ1の左右両方向へと分配される。
前輪駆動軸83・83は回転動力を伝達するものである。前輪駆動軸83・83の一端は差動装置82に連結され、センターケース81の左側面及び右側面からそれぞれ左方向及び右方向へ向けて突設される。
最終減速装置84・84は入力された回転動力を減速して出力するものである。最終減速装置84・84は遊星歯車機構等で構成される。最終減速装置84・84の入力側はユニバーサルジョイント83a・83aを介して前輪駆動軸83・83の他端とそれぞれ連結される。
前輪85・85はトラクタ1を支持すると共にトラクタ1の駆動力を地面に伝達するものである。前輪85・85の中央部は最終減速装置84・84の出力側に連結される。トランスミッション30により変速された回転動力は差動装置82及び前輪駆動軸83・83を介して最終減速装置84・84へ伝達される。最終減速装置84・84に伝達された回転動力は最終減速装置84・84により減速された後、前輪85・85へ伝達され、前輪85・85は回転される。前輪85・85が回転することによりトラクタ1は前進又は後進することができる。
以下では図2から図3を用いて本発明に係る作業車両の独立型サスペンションの実施の一形態である独立型サスペンション90について説明する。
独立型サスペンション90・90はトラクタ1が前輪85・85を介して地面から受ける衝撃を和らげるものである。独立型サスペンション90は主としてアッパーアーム91、ロワアーム92、ジョイント93、サスペンションシリンダ94、サスペンション油圧回路95等を具備する。なお、本実施例に係るトラクタ1においては、同じ構造の独立型サスペンション90・90(サスペンション油圧回路95を除く)がセンターケース81の左右両側に左右対称に設けられている。以下では一方(左側)の独立型サスペンション90についてのみ説明し、他方(右側)の独立型サスペンション90については説明を省略する。
アッパーアーム91はジョイント93を支持する部材である。アッパーアーム91の一端は機体フレーム5の左側面にアッパーアームブラケット91aを介して上下に回動可能に支持される。
ロワアーム92はジョイント93を支持する部材である。ロワアーム92の一端はセンターケース81の左下部に上下に回動可能に支持される。
ジョイント93は最終減速装置84を支持するものである。ジョイント93の上部はアッパーアーム91の他端に前後及び上下に回動可能に支持される。ジョイント93の下部はロワアーム92の他端に前後及び上下に回動可能に支持される。ジョイント93の左側面には最終減速装置84が回動可能に設けられている。上記の如く構成することにより、前輪85は最終減速装置84、ジョイント93、アッパーアーム91及びロワアーム92を介してトラクタ1の機体フレーム5及びセンターケース81に上下に回動可能に支持される。
サスペンションシリンダ94はサスペンションシリンダ本体94a、及びサスペンションシリンダ本体94aに摺動可能に挿入されたサスペンションシリンダロッド94bからなる油圧シリンダである。サスペンションシリンダ94のサスペンションシリンダ本体94a側の端部は機体フレーム5の左側面にシリンダブラケット94cを介して上下に回動可能に支持される。サスペンションシリンダ94のサスペンションシリンダロッド94b側の端部はロワアーム92の中途部に上下に回動可能に支持される。
サスペンション油圧回路95は独立型サスペンション90内の作動油の流れを制御するものである。サスペンション油圧回路95は主として第一油路100、第二油路200、第三油路300、制御機構400等を具備する。
第一油路100はトラクタ1の機体左右にそれぞれ設けられたサスペンションシリンダ94・94同士を連通接続するものである。第一油路100は主としてストップ弁101、圧力取り出しポート102、オーバーロード用油路103、オーバーロード弁104等を具備する。
ストップ弁101は油路を遮断することができるものである。ストップ弁101・101は第一油路100の中途部であってサスペンションシリンダ94・94の近傍にそれぞれ設けられる。サスペンションシリンダ94・94のメンテナンス時等にはストップ弁101・101を閉じることで第一油路100の連通を遮断し、第一油路100内の作動油の流出を防止することができる。
圧力取り出しポート102は第一油路100内の圧力を取り出すものである。圧力取り出しポート102は第一油路100の中途部であってストップ弁101・101の間に設けられる。不具合発生時等には、図3に示すように圧力取り出しポート102に圧力計102aを接続することで第一油路100内の圧力を確認することができる。
オーバーロード用油路103は第一油路100とトランスミッションケース31とを連通するものである。トランスミッションケース31はトランスミッション30を構成する部材の一つであると同時に、サスペンション油圧回路95に用いられる作動油を貯溜するオイルタンクでもある。オーバーロード用油路103の一端は第一油路100の中途部であってストップ弁101・101の間に連通接続される。オーバーロード用油路103の他端はトランスミッションケース31に連通接続される。
オーバーロード弁104は予め設定された圧力を超える圧力が加えられると開く弁である。オーバーロード弁104はオーバーロード用油路103の中途部に設けられる。第一油路100内の圧力がオーバーロード弁104に予め設定された圧力以下である場合、オーバーロード弁104は閉じられオーバーロード用油路103は遮断される。サスペンションシリンダ94・94に過大な負荷が加えられること等により第一油路100内の圧力がオーバーロード弁104に予め設定された圧力を超える場合、オーバーロード弁104が開かれることによりオーバーロード用油路103は連通され、第一油路100内の作動油をトランスミッションケース31へと流出させることでサスペンション油圧回路95の破損等を防止することができる。
第二油路200は第一油路100から分岐して連通している。第二油路200の一端は第一油路100の中途部であってストップ弁101・101の間に連通接続される。第二油路は主としてアキュムレータ201、第二油路遮断弁202等と連通している。
アキュムレータ201は作動油を介して伝達される衝撃を吸収するものである。アキュムレータ201・201は分岐点200aから2つに分岐された第二油路200の他端にそれぞれ連通接続される。
第二油路遮断弁202は電磁力により閉じられる弁である。第二油路遮断弁202は第二油路200の中途部であって、第二油路200が第一油路100と連通接続される一端と分岐点200aとの間に設けられる。
第二油路遮断弁202が開かれ第二油路200を連通している場合、前輪85・85が地面から受ける衝撃はサスペンションシリンダ94・94、第一油路100及び第二油路200内の作動油を介してアキュムレータ201・201に伝達され、アキュムレータ201・201によって吸収される。
なお、サスペンション油圧回路95に用いるアキュムレータ201の個数は1つ若しくは3つ以上でも良く、衝撃を吸収する機能を十分に果たすことができるだけの容量が確保されていればよい。
第三油路300は第一油路100とトランスミッションケース31とを連通接続するものである。第三油路300の一端は第一油路100の中途部であってストップ弁101・101の間に連通接続される。第三油路300の他端はトランスミッションケース31に連通接続される。第三油路300は主として油圧ポンプ301、サクションフィルタ302、上昇電磁弁303、下降電磁弁304、圧力補償型流量制御弁305、アンロード用油路306、アンロード用電磁弁307、リリーフ用油路308、リリーフ弁309等の間を連通する。なお、以下では説明の便宜上、第三油路300におけるトランスミッションケース31側を上流側、第一油路100側を下流側と定義し、当該定義に基づいて以下の説明を行う。
油圧ポンプ301はエンジン10の回転動力を用いて作動油を圧送するものである。油圧ポンプ301は第三油路300の中途部に設けられる。油圧ポンプ301はエンジン10の動力により駆動される。油圧ポンプ301が駆動することによりトランスミッションケース31内の作動油は第三油路300のトランスミッションケース31側の一端から吸い上げられ、第一油路100側の他端へと圧送される。
サクションフィルタ302は作動油内に混入した不純物を除去するものである。サクションフィルタ302は第三油路300のトランスミッションケース31側の一端部に設けられる。第三油路300のトランスミッションケース31側の一端から吸い上げられる作動油は、サクションフィルタ302を通過する際に不純物を除去される。
上昇電磁弁303は電磁力により作動する弁である。上昇電磁弁303は第三油路300の中途部であって油圧ポンプ301の下流側に設けられる。
下降電磁弁304は電磁力により作動する弁である。下降電磁弁304は第三油路300の中途部であって上昇電磁弁303の下流側に設けられる。
圧力補償型流量制御弁305は一方へ向かって通過する作動油の流量を一定に保つものである。圧力補償型流量制御弁305は第三油路300の中途部であって上昇電磁弁303と下降電磁弁304との間に設けられる。圧力補償型流量制御弁305は主としてチェック弁305a、絞り305b、スプール(図示せず)等を具備する。
作動油が第三油路300の上流側から下流側へと流れる場合、作動油は圧力補償型流量制御弁305のチェック弁305aを通過する。作動油が第三油路300の下流側から上流側へと流れる場合、絞り305bの前後の圧力差によって前記スプールが移動して圧力補償型流量制御弁305内の油路面積が変化する。つまり、圧力差が大きい場合には油路面積は縮小し、圧力差が小さい場合には油路面積は拡大する。このように圧力補償型流量制御弁305が作動することにより、絞り305bの前後の圧力差が変動しても作動油の流量を一定に保つことが可能となる。
アンロード用油路306は第三油路300の中途部とトランスミッションケース31とを連通接続するものである。アンロード用油路306の一端は第三油路300の中途部であって油圧ポンプ301と上昇電磁弁303との間に連通接続される。アンロード用油路306の他端はトランスミッションケース31と連通接続される。
アンロード用電磁弁307は電磁力により閉じられる弁である。アンロード用電磁弁307はアンロード用油路306の中途部に設けられる。
リリーフ用油路308は第三油路300の中途部とトランスミッションケース31とを連通接続するものである。リリーフ用油路308の一端は第三油路300の中途部であって油圧ポンプ301と上昇電磁弁303との間に連通接続される。リリーフ用油路308の他端はトランスミッションケース31と連通接続される。
リリーフ弁309は予め設定された圧力を超える圧力が加えられると開く弁である。リリーフ弁309はリリーフ用油路308の中途部に設けられる。第三油路300内(油圧ポンプ301と上昇電磁弁303との間)の圧力がリリーフ弁309に予め設定された圧力以下である場合、リリーフ弁309は閉じられリリーフ用油路308は遮断される。サスペンション油圧回路95に異常が発生する等によって第三油路300内(油圧ポンプ301と上昇電磁弁303との間)の圧力がリリーフ弁309に予め設定された圧力を超える場合、リリーフ弁309が開かれることによりリリーフ用油路308は連通され、第三油路300内の作動油をトランスミッションケース31へと流出させることでサスペンション油圧回路95の破損等を防止することができる。
制御機構400は種々の入力信号に基づいてサスペンション油圧回路95に具備される電磁弁を操作するものである。制御機構400は主としてポジションセンサ401、走行速度検出手段402、サスペンションロック切換スイッチ403、制御部450等を具備する。
ポジションセンサ401はサスペンションシリンダロッド94bの伸び量を検出するものである。ポジションセンサ401・401はサスペンションシリンダ94・94にそれぞれ設けられている。ポジションセンサ401・401はサスペンションシリンダロッド94b・94bが基準となる位置から伸びた量(若しくは縮んだ量)を検出する。
走行速度検出手段402はトラクタ1の走行速度を検出するものである。具体的には、走行速度検出手段402はトラクタ1の後車軸41の近傍に設けられ、後車軸41の回転数を検出する。
サスペンションロック切換スイッチ403は第二油路遮断弁202により第二油路200内の作動油の流れを遮断、または、流通させる旨の指示を出す指示手段である。サスペンションロック切換スイッチ403は、キャビン50内のシート51周辺に設けられている。シート51周辺とは、シート51に着座してトラクタ1を運転しているオペレータから操作可能な位置である。サスペンションロック切換スイッチ403の操作部(オペレータにより操作される部分)403aは、サスペンション機能を無効にさせる(第二油路遮断弁202により第二油路200を遮断する)位置(以下、この位置を「ロック位置A」と言う)と、サスペンション機能を有効にさせる(第二油路遮断弁202により第二油路200を遮断しない)位置(以下、この位置を「ロック解除位置B」と言う)と、のいずれかに切り換えられる。
サスペンションロック切換スイッチ403は、トグルスイッチや押しボタンスイッチ、スライドスイッチ等の各種スイッチやタッチパネル等により構成することが可能である。
制御部450は走行速度検出手段402によるトラクタ1の走行速度の検出に係る情報とサスペンションロック切換スイッチ403の操作部403aの位置に係る情報とに基づいて第二油路遮断弁202の作動を制御するものである。制御部450は、具体的にはCPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であっても良く、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御部450には第二油路遮断弁202の動作を制御するための種々のプログラム及びデータが格納される。
制御部450はポジションセンサ401・401に接続され、ポジションセンサ401・401によるサスペンションシリンダロッド94bの伸び量の検出を検出信号として受信することが可能である。制御部450は上昇電磁弁303に接続され、上昇電磁弁303の作動の制御に係る信号を上昇電磁弁303に送信することが可能である。制御部450は下降電磁弁304に接続され、下降電磁弁304の作動の制御に係る信号を下降電磁弁304に送信することが可能である。制御部450はアンロード用電磁弁307に接続され、アンロード用電磁弁307の作動の制御に係る信号をアンロード用電磁弁307に送信することが可能である。
制御部450が上昇電磁弁303の作動に係る信号を上昇電磁弁303に送信しない場合、上昇電磁弁303は上昇電磁弁303の下流側とトランスミッションケース31とを連通し、上昇電磁弁303の上流側からの作動油の流れを遮断する。この際、制御部450はアンロード用電磁弁307の作動に係る信号をアンロード用電磁弁307に送信せず、アンロード用油路306は第三油路300の中途部とトランスミッションケース31とを連通接続する。これにより、油圧ポンプ301の駆動によりトランスミッションケース31から吸い上げられた作動油はアンロード用油路306を通り再びトランスミッションケース31へと戻される。
制御部450が下降電磁弁304の作動に係る信号を下降電磁弁304に送信しない場合、下降電磁弁304は下降電磁弁304の下流側から上流側へ向かう作動油の流れを遮断し、上流側から下流側へ向かってのみ作動油を流通させる。この際、制御部450が上昇電磁弁303の作動に係る信号を上昇電磁弁303に送信することで上昇電磁弁303を作動させ上昇電磁弁303の上流側と下流側とを連通すると共に、制御部450がアンロード用電磁弁307の作動に係る信号をアンロード用電磁弁307に送信することでアンロード用電磁弁307を作動させアンロード用油路306を遮断すると、油圧ポンプ301の駆動によりトランスミッションケース31から吸い上げられた作動油は上昇電磁弁303、圧力補償型流量制御弁305及び下降電磁弁304を介して第一油路100へと圧送される。これによりサスペンションシリンダ94・94へと作動油を圧送し、トラクタ1の機体前方の車高を上昇させることが可能となる。
制御部450が上昇電磁弁303の作動に係る信号を上昇電磁弁303に送信せず、下降電磁弁304の作動に係る信号を下降電磁弁304に送信することで下降電磁弁304を作動させ下降電磁弁304の下流側と上流側とを連通すると、第一油路100及び第二油路200内の作動油は下降電磁弁304、圧力補償型流量制御弁305及び上昇電磁弁303を介してトランスミッションケース31へと戻される。これによりサスペンションシリンダ94・94内の作動油を流出させ、トラクタ1の機体前方の車高を下降させることが可能となる。
以下では図3から図5を用いて本発明に係る作業車両の独立型サスペンションの制御態様の実施の一形態について説明する。
図3に示す如く、制御部450は走行速度検出手段402に接続され、走行速度検出手段402によるトラクタ1の後車軸41の回転数の検出を検出信号として受信することが可能である。制御部450はサスペンションロック切換スイッチ403に接続され、サスペンションロック切換スイッチ403の操作部403aの位置に係る情報を検出信号として受信することが可能である。制御部450は第二油路遮断弁202に接続され、第二油路遮断弁202の作動の制御に係る信号を第二油路遮断弁202に送信することが可能である。制御部450はメータパネル53に接続され、第二油路遮断弁202の作動の情報に係る信号をメータパネル53に送信することが可能である。
制御部450は走行速度検出手段402から受信するトラクタ1の後車軸41の回転数の検出信号に基づいて、トラクタ1の走行速度Vを常時算出する。具体的には、後車軸41の回転数及び予め制御部450に記憶されている後輪42の直径(若しくは半径)に基づいてトラクタ1の走行速度Vを算出する。
制御部450はサスペンションロック切換スイッチ403の操作部403aの位置に係る情報を検出信号として受信し、当該検出信号の内容を判断する(図4、S110)。
制御部450はサスペンションロック切換スイッチ403からサスペンションロック切換スイッチ403の操作部403aの位置がロック解除位置Bである旨の検出信号(以下、「検出信号S」と言う)を受信している場合、第二油路遮断弁202が作動していない旨の信号(以下、「表示信号D1」と言う)をメータパネル53に送信する(図4、S140)。この際、制御部450は第二油路遮断弁202を作動させる旨の信号(以下、「制御信号C」と言う)を第二油路遮断弁202に送信しない。第二油路遮断弁202は第二油路200を連通するため、サスペンション機能が有効になる。メータパネル53は表示信号D1に基づき、第二油路遮断弁202が作動していない旨の表示、つまりはサスペンション機能が有効である旨の表示をする。
図5(a)に示す如く、制御部450はサスペンションロック切換スイッチ403からサスペンションロック切換スイッチ403の操作部403aの位置がロック位置Aである旨の検出信号(以下、「検出信号L」と言う)を受信している場合、トラクタ1の走行速度Vと所定の値である基準走行速度VTとの大小の関係を比較する(図4、S120)。基準走行速度VTは制御部450に予め記憶される一定の走行速度の値である。
制御部450は走行速度Vが基準走行速度VT未満であると判断した場合、制御信号Cを第二油路遮断弁202に送信すると共に、第二油路遮断弁202が作動している旨の信号(以下、「表示信号D2」と言う)をメータパネル53に送信する(図4、S130)。第二油路遮断弁202は制御信号Cにより作動し、第二油路200内の作動油の流れを遮断する。第二油路200内の作動油の流れが遮断されることにより、サスペンションシリンダ94・94とアキュムレータ201・201との連通が遮断され、サスペンション機能が無効になる。メータパネル53は表示信号D2に基づき、第二油路遮断弁202が作動している旨の表示、つまりはサスペンション機能が無効である旨の表示をする。
図5(b)に示す如く、制御部450はS120において走行速度Vが基準走行速度VT以上であると判断した場合、表示信号D1をメータパネル53に送信する(S140)。この際、制御部450は制御信号Cを第二油路遮断弁202に送信しない。第二油路遮断弁202は第二油路200を連通するため、サスペンション機能が有効になる。メータパネル53は表示信号D1に基づき、第二油路遮断弁202が作動していない旨の表示、つまりはサスペンション機能が有効である旨の表示をする。
なお、本実施の一形態において走行速度検出手段402は後車軸41の回転数を検出し、制御部450は検出された回転数に基づいてトラクタ1の走行速度Vを算出するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば走行速度検出手段は対地センサ等であって、トラクタ1の走行速度Vを直接検出するものであってもよい。また、走行速度検出手段はエンジン10の回転数及びトラクタ1の減速比を検出し、制御部450は前記回転数及び減速比に基づいてトラクタ1の走行速度Vを算出するものであってもよい。つまり本発明に係る走行速度検出手段は、制御部450がトラクタ1の走行速度Vを得るための情報を検出するものであればよい。
以上の如く、本実施例のトラクタ1の独立型サスペンション90は、前輪85を昇降可能に支持するサスペンションシリンダ94と、サスペンションシリンダ94に連通接続される第一油路100と、サスペンションシリンダ94に加わる衝撃を吸収するアキュムレータ201と、第一油路100とアキュムレータ201とを連通接続する第二油路200と、第二油路200の中途部に設けられ第二油路200内の作動油の流れを遮断することが可能な第二油路遮断弁202と、第二油路遮断弁202により第二油路200内の作動油の流れを遮断する旨の指示を出すサスペンションロック切換スイッチ403と、サスペンションロック切換スイッチ403の指示に従って第二油路遮断弁202により第二油路200内の作動油の流れを遮断させる制御部450と、を具備するものである。このように構成することにより、サスペンションロック切換スイッチ403の指示に従って第二油路遮断弁202により第二油路200内の作動油の流れを遮断させることができ、トラクタ1のサスペンション機能を無効にさせることが可能となる。さらに、ローダやバックホー等の作業時にサスペンション機能を無効にさせることにより、オペレータの乗り心地や操縦安定性の向上、及び作業精度を上げる等の作業性の向上を図ることが可能となる。
また、本実施例のトラクタ1の独立型サスペンション90は、トラクタ1の走行速度Vを検出する走行速度検出手段402を具備し、制御部450は、走行速度検出手段402による検出に係る情報に基づいて、トラクタ1の走行速度Vが所定の値(基準走行速度VT)以上の場合はサスペンションロック切換スイッチ403の指示にかかわらず第二油路遮断弁202に第二油路200内の作動油の流れを遮断させないものである。このように構成することにより、トラクタ1の走行速度Vが所定の値(基準走行速度VT)以上になった場合はサスペンションロック切換スイッチ403の指示にかかわらず第二油路遮断弁202により第二油路200内の作動油の流れを遮断させず、トラクタ1のサスペンション機能を有効にさせることが可能となる。これにより、移動時等にトラクタ1の走行速度が上昇した場合は自動的にサスペンション機能を有効にさせることができ、サスペンションロック切換スイッチ403を操作することなくオペレータの乗り心地や操縦安定性を向上させることが可能となる。
以下では図6から図8を用いて制御機構500について説明する。制御機構500は上記制御機構400の実施の別の一形態であり、基本的に上記制御機構400と略同じ構成の部材には同じ部材番号を付し、説明を省略する。なお、制御機構500はPTO軸32の回転動力により作業を行う場合(ロータリ耕耘作業を行う場合等)に用いられる制御機構である。
図6に示す如く、制御機構500は主としてポジションセンサ401、PTO回転検出手段501、振動検出手段502、制御部450等を具備する。
PTO回転検出手段501はPTO軸32が回転していることを検出する作業状態検出手段である。PTO回転検出手段501はPTO軸32の近傍に設けられ、PTO軸32が回転しているか否かを検出する。なお、PTO回転検出手段501は本実施の一形態の如く直接PTO軸32が回転していることを検出するものに限らず、PTO軸32の回転又は停止の切り換えを操作するレバーやスイッチ等の操作を検出することによりPTO軸32が回転していることを検出するものであってもよい。
振動検出手段502・502は対象物の振動数を検出するものである。振動検出手段502・502はサスペンションシリンダ94・94にそれぞれ設けられている。振動検出手段502・502はサスペンションシリンダロッド94b・94bの伸縮運動の振動数Fを検出する。
制御部450はPTO回転検出手段501に接続され、PTO回転検出手段501によるPTO軸32の回転の検出を検出信号として受信することが可能である。制御部450は振動検出手段502・502に接続され、振動検出手段502・502によるサスペンションシリンダロッド94bの伸縮運動の振動数Fを検出信号として受信することが可能である。制御部450は第二油路遮断弁202に接続され、第二油路遮断弁202の作動の制御に係る信号を第二油路遮断弁202に送信することが可能である。制御部450はメータパネル53に接続され、第二油路遮断弁202の作動の情報に係る信号をメータパネル53に送信することが可能である。
制御部450はPTO回転検出手段501からPTO軸32が回転している旨の検出信号(以下、「検出信号R」と言う)を受信しているか判断する(図7、S210)。
制御部450は検出信号Rを受信している場合、制御信号Cを第二油路遮断弁202に送信すると共に、表示信号D2をメータパネル53に送信する(図7、S220)。第二油路遮断弁202は制御信号Cにより作動し、第二油路200内の作動油の流れを遮断する。第二油路200内の作動油の流れが遮断されることにより、サスペンションシリンダ94・94とアキュムレータ201・201との連通が遮断され、サスペンション機能が無効になる。メータパネル53は表示信号D2に基づき、第二油路遮断弁202が作動している旨の表示、つまりはサスペンション機能が無効である旨の表示をする。
図8(a)に示す如く、制御部450は検出信号Rを受信していない場合、振動検出手段502・502から受信する検出信号に基づいて振動数Fと所定の値である基準振動数FTとの大小の関係を比較する(図7、S230)。基準振動数FTは制御部450に予め記憶される一定の振動数の値である。なお、本実施例において制御部450は基準振動数FTと比較する際の振動数Fとして、2つの振動検出手段502・502から受信する検出信号に基づいて算出されるサスペンションシリンダロッド94b・94bの伸縮運動の振動数の平均値を用いるものとするが、本発明はこれに限るものではなく、いずれか一方のサスペンションシリンダロッド94bの振動数を振動数Fとして用いることも可能である。
制御部450は振動数Fが基準振動数FT以上であると判断した場合、制御信号Cを第二油路遮断弁202に送信すると共に、表示信号D2をメータパネル53に送信する(S220)。第二油路200内の作動油の流れが遮断されることにより、サスペンションシリンダ94・94とアキュムレータ201・201との連通が遮断され、サスペンション機能が無効になる。メータパネル53は表示信号D2に基づき、第二油路遮断弁202が作動している旨の表示、つまりはサスペンション機能が無効である旨の表示をする。
図8(b)に示す如く、制御部450は振動数Fが基準振動数FT未満であると判断した場合、表示信号D1をメータパネル53に送信する(図7、S240)。この際、制御部450は制御信号Cを第二油路遮断弁202に送信しない。第二油路遮断弁202は第二油路200を連通するため、サスペンション機能が有効になる。メータパネル53は表示信号D1に基づき、第二油路遮断弁202が作動していない旨の表示、つまりはサスペンション機能が有効である旨の表示をする。
本実施の一形態においては、本発明に係る作業状態検出手段としてPTO回転検出手段501を用いるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えばトラクタ1に作業機が装着されているか否かを、油圧昇降機構70の作業機と連結される部分(ロワリンク76やトップリンク77)に設けたセンサで検出し、トラクタ1に作業機が装着された状態である場合に検出信号Rを制御部450へと送信する構成とすること等も可能である。つまり、本発明に係る作業状態検出手段はトラクタ1が作業状態であるか否かを検出できるものであればよい。「作業状態」とは、トラクタ1が何らかの作業機を用いて耕耘作業やローダ作業等の作業を行っている状態、若しくは前記作業を行う準備ができている状態である。
以上の如く、本実施例のトラクタ1の独立型サスペンション90は、前輪85を昇降可能に支持するサスペンションシリンダ94と、サスペンションシリンダ94に連通接続される第一油路100と、サスペンションシリンダ94に加わる衝撃を吸収するアキュムレータ201と、第一油路100とアキュムレータ201とを連通接続する第二油路200と、第二油路200の中途部に設けられ第二油路200内の作動油の流れを遮断することが可能な第二油路遮断弁202と、トラクタ1の作業状態を検出するPTO回転検出手段501と、PTO回転検出手段501による前記作業状態の検出に係る情報に基づいて第二油路遮断弁202により第二油路200内の作動油の流れを遮断させる制御部450と、を具備するものである。このように構成することにより、トラクタ1が作業状態である場合には第二油路遮断弁202により第二油路200内の作動油の流れを遮断させることができ、トラクタ1のサスペンション機能を無効にさせることが可能となる。これにより、サスペンション機能の有効又は無効の切り換えを自動で行うことで煩雑な切り換え操作を省略することが可能となる。また、手動で切り換え操作を行うことがないため、前記切り換え操作のミスを防止することが可能となる。
また、本実施例のトラクタ1の独立型サスペンション90は、サスペンションシリンダ94の伸縮の振動数を検出する振動検出手段502を具備し、制御部450は、振動検出手段502による検出に係る情報に基づいて、前記振動数Fが所定の値(基準振動数FT)以上の場合は第二油路遮断弁202により第二油路200内の作動油の流れを遮断するものである。このように構成することにより、トラクタ1にサスペンションシリンダ94の伸縮を原因とする異常な振動が発生することを防止することが可能となる。これにより、オペレータの乗り心地や操縦安定性を向上させることが可能となる。
また、本実施例のトラクタ1の独立型サスペンション90は、制御部450により第二油路200内の作動油の流れが遮断されているか否かを表示するメータパネル53を具備するものである。このように構成することにより、トラクタ1のオペレータがトラクタ1のサスペンション機能が有効であるか無効であるかを一目で確認することが可能となる。
なお、本発明に係る表示部は本実施例におけるメータパネル53に限るものではなく、メータパネル53とは独立したモニターやライト、若しくは発音機等を用いて構成することも可能である。