JP4996283B2 - セラミックヒータ及びグロープラグ - Google Patents

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Description

本発明は、モリブデンの珪化物、窒化物及び炭化物、並びに、タングステンの珪化物、窒化物及び炭化物のうち、少なくとも1つを主成分とする発熱体が、窒化珪素を主成分とする基体中に埋設されてなるセラミックヒータ及び当該セラミックヒータを備えるグロープラグに関するものである。
従来、ディーゼルエンジンの始動補助等に用いられるグロープラグは、筒状の主体金具、棒状の中軸、通電により発熱する発熱体を内蔵するヒータ、絶縁部材、外筒、かしめ部材等を備えている。昨今におけるグロープラグとしては、ディーゼルエンジンが要する性能やコスト面から、ヒータを金属製シースヒータとするメタルグロープラグや、ヒータをセラミックヒータとするセラミックグロープラグが適宜選択され使用されている。
ところで、このセラミックグロープラグは概略次の構成を備えている。すなわち、主体金具の内周側には後端側へ一端を突出させた中軸が配設され、該中軸の先端側には丸棒状のセラミックヒータが設けられている。また、主体金具の先端部には外筒が接合され、この外筒によってセラミックヒータが保持されている。一方、主体金具の後端側においては、環状の絶縁部材が中軸と主体金具との間隙に挿入され、絶縁部材の後端側にはかしめ部材が中軸を固定するようにして設けられている。
上記セラミックヒータは、導電性セラミックからなる発熱体が、絶縁性セラミックからなる基体中に埋設されて保持されることで構成されている。近年では、より高温条件下での使用に耐えうるよう、発熱体及び基体を構成する素材についても様々な検討が行われている。例えば、発熱体を構成する素材として、モリブデンの珪化物、窒化物及び炭化物、並びに、タングステンの珪化物、窒化物及び炭化物のうち、少なくとも1つを主成分としたものを採用することが考えられている。一方、基体を構成する素材としては、窒化珪素を主成分としたものが知られている。
しかし、一般的には、発熱体を構成する素材の方が、基体を構成する素材よりも熱膨張係数が大きい傾向にある。そして、両者間における熱膨張係数の相違が大きい場合には、例えば高温状態から冷却状態に至る過程で熱収縮量が大きく相違することとなり、熱応力に起因して基体に亀裂が生じてしまう等のおそれがある。そこで、基体の熱膨張係数を発熱体の熱膨張係数に近づけるべく、基体を構成する素材に、より熱膨張係数の大きいタングステンカーバイド等の金属炭化物等を含有させる技術がある(例えば、特許文献1等参照。)。
特開平10−25162号公報
ところが、上記技術では、熱膨張係数の相違に起因する亀裂の発生を抑制できるものの、次に記す課題が未だ残存する。すなわち、エンジンには金属同士の接触面を潤滑して摩擦を少なくするべく、エンジンオイルが介在しており、ピストンリングの不具合等に起因して、シリンダボア内にエンジンオイルが入り込むことが起こりうる。この場合、セラミックヒータの先端部分にエンジンオイルが付着し、当該オイル中のカルシウム成分等によって、セラミックヒータ先端の基体部分が腐食してしまうおそれがある。また、オイルの付着のみならず、オイルの成分を含む混合気や燃焼ガスによっても腐食のおそれがある。そして、腐食が進行すると、発熱体が露出して酸化が進み、グロープラグの機能が損なわれてしまうおそれがある。
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱応力に起因する亀裂等の不具合を防止するとともに、オイル中のカルシウム成分等による腐食を防止することのできるセラミックヒータを提供することにある。
以下、上記課題等を解決するのに適した各構成を項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果等を付記する。
構成1.本構成のセラミックヒータは、モリブデンの珪化物、窒化物及び炭化物、並びに、タングステンの珪化物、窒化物及び炭化物のうち、少なくとも1つを主成分とする発熱体が、窒化珪素を主成分とする基体中に埋設されてなるセラミックヒータであって、
前記基体は、
希土類成分を酸化物換算で4〜25質量%、
クロムの珪化物をクロムシリサイド換算で1〜8質量%含有するとともに、
アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で0.02〜1.0質量%含有することを特徴とする。
ここで、「主成分」とあるのは、材料中、最も質量比の高い成分を指すものである。また、「希土類成分」としては、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、イットリウム(Y)等が挙げられる。「希土類成分を酸化物換算で」とあるのは、本発明者等が本発明に想到する過程において、原材料として希土類酸化物を用いていることに基づくものである。従って、希土類成分が必ずしも酸化物としてのみ残存していなければならないという趣旨ではない。
また、クロムの珪化物とあるのは、純粋な(狭義の)クロムシリサイド(CrSi2)のみならず、クロムとタングステンのシリサイドの固溶体、及び、クロムとバナジウムのシリサイドの固溶体等、クロムの珪化物であればよいという趣旨である。「クロムの珪化物をクロムシリサイド換算で」とあるのは、上記同様、本発明者等が本発明に想到する過程において、原材料としてクロムシリサイド(CrSi2)を主として用いていることに基づくものである。従って、「添加されたほぼ全てのクロム成分が珪化物として残存している」のが望ましいが、必ずしも純粋なクロムシリサイド(CrSi2)のみがクロムの珪化物として残存していなければならないという趣旨ではない。
さらに、「アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で」とあるのは、上記同様、本発明者等が本発明に想到する過程において、原材料として、アルミナ(Al23)単体ではなく、窒化アルミニウム(AlN)を主として用いていることに基づくものである。
上記構成1によれば、発熱体がモリブデンの珪化物、窒化物及び炭化物、並びに、タングステンの珪化物、窒化物及び炭化物のうち、少なくとも1つを主成分としており、かつ基体が窒化珪素を主成分としていることから、より高温条件下(例えば1200℃以上)での使用に耐え得る。また、構成1のセラミックヒータの基体は、希土類成分を酸化物換算で4〜25質量%含有している。尚、より望ましくは、「希土類成分を酸化物換算で4〜15質量%含有している」ことである。これにより、セラミックヒータ焼成時の焼結性が改善されるのみならず、基体の熱膨張係数の向上が図られる。そのため、発熱体と基体との熱膨張係数の差を少なくすることができ、熱応力に起因する亀裂の発生を防止できるというメリットがある。これに対し、希土類成分の酸化物換算での含有量が4質量%未満の場合には、焼成時にうまく焼結しないおそれがある。また、熱膨張係数の向上も見込めず、熱応力に起因して亀裂が発生する等のおそれがある。一方、希土類成分の酸化物換算での含有量が25質量%を超える場合には、熱膨張係数は向上するものの、希土類元素(RE)、珪素(Si)、窒素(N)及び酸素(O)で構成される粒界結晶相が生成されてしまい、当該結晶相の存在により耐酸化性が低下してしまう。尚、このような結晶相としては、J相(Er4Si227)、H相(Er20Si12448)、メリライト相(Er2Si343)等が挙げられる。
また、構成1のセラミックヒータの基体は、クロムの珪化物をクロムシリサイド換算で1〜8質量%含有している。尚、より望ましくは、「クロムの珪化物をクロムシリサイド換算で1.5〜5質量%含有している」ことである。これにより、基体の熱膨張係数の向上が図られ、発熱体と基体との熱膨張係数の差を少なくすることができる。これに対し、クロムの珪化物の含有量がクロムシリサイド換算で1質量%未満の場合には、熱膨張係数の向上が見込めず、熱応力に起因して亀裂が発生する等のおそれがある。一方、クロムの珪化物の含有量がクロムシリサイド換算で8質量%を超える場合には、クロム成分の凝集が起こるおそれがある。その結果、部位によって熱膨張係数にムラが生じることとなり、強度の低下を起こすおそれがある。
さらに、構成1のセラミックヒータの基体は、アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で0.02〜1.0質量%含有している。尚、より望ましくは、「アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で0.02〜0.8質量%含有している」ことである。これにより、エンジンオイル中に含まれるカルシウム成分等による基体の腐食が抑制される。これに対し、アルミニウム成分の含有量が窒化アルミニウム換算で0.02質量%未満の場合には、上記基体の腐食抑制効果が十分に得られない。一方、アルミニウム成分の含有量が窒化アルミニウム換算で1.0質量%を超える場合には、高温下での基体の強度が低下してしまう。また、アルミニウム成分が上記規定量だけ含有されていることで、焼成過程でアルミニウム成分が発熱体中に拡散し、発熱体と基体との焼結挙動を一致させやすくなり、結果として焼結過程での歪みをより一層抑制することができる。その上、抵抗値の安定化が図られる。尚、「前記基体のうち少なくとも表面(表層)部位が、アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で0.02〜1.0質量%含有する」構成とすることで、上述した効果がより確実に奏されることとなる。
構成2.本構成のセラミックヒータは、モリブデンの珪化物、窒化物及び炭化物、並びに、タングステンの珪化物、窒化物及び炭化物のうち、少なくとも1つを主成分とする発熱体が、窒化珪素を主成分とする基体中に埋設されてなるセラミックヒータであって、
前記基体は、
希土類酸化物を4〜25質量%、
クロムシリサイドを1〜8質量%含有するとともに、
アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で0.2〜1.0質量%含有することを特徴とする。
ここで、「主成分」とあるのは、材料中、最も質量比の高い成分を指すものである。また、「希土類酸化物」としては、エルビウム(Er)の酸化物、イッテルビウム(Yb)、イットリウム(Y)の酸化物等が挙げられる。また、「希土類酸化物を4〜25質量%」とあるのは、本発明者等が本発明に想到する過程において、原材料として希土類酸化物を用いていることに基づくものであって、「希土類成分を酸化物換算で4〜25質量%」とほぼ同義である。
また、構成2においてクロムシリサイドとあるのは、純粋な(狭義の)クロムシリサイド(CrSi2)のみならず、クロムとタングステンのシリサイドの固溶体や、クロムとバナジウムのシリサイドの固溶体等、クロムの珪化物であればよい、つまり、広義での「クロムシリサイド」という趣旨である。すなわち、「クロムシリサイドを1〜8質量%」とあるのは、上記同様、本発明者等が本発明に想到する過程において、原材料としてクロムシリサイド(CrSi2)を主として用いていることに基づくものである。従って、「添加されたほぼ全てのクロム成分が珪化物として残存している」のが望ましいが、必ずしも純粋なクロムシリサイド(CrSi2)のみが残存していなければならないという趣旨ではない。それ故、「クロムシリサイドを1〜8質量%」とあるのは、むしろ「クロムの珪化物をクロムシリサイド換算で1〜8質量%」とほぼ同義である。
さらに、「アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で」とあるのは、上記構成1の場合と同様、本発明者等が本発明に想到する過程において、原材料として、アルミナ(Al23)単体ではなく、窒化アルミニウム(AlN)を主として用いていることに基づくものである。
上記構成2によれば、発熱体がモリブデンの珪化物、窒化物及び炭化物、並びに、タングステンの珪化物、窒化物及び炭化物のうち、少なくとも1つを主成分としており、かつ基体が窒化珪素を主成分としていることから、より高温条件下(例えば1200℃以上)での使用に耐え得る。また、構成2のセラミックヒータの基体は、希土類酸化物を4〜25質量%含有している。尚、より望ましくは、「希土類酸化物を4〜15質量%含有している」ことである。これにより、セラミックヒータ焼成時の焼結性が改善されるのみならず、基体の熱膨張係数の向上が図られる。そのため、発熱体と基体との熱膨張係数の差を少なくすることができ、熱応力に起因する亀裂の発生を防止できるというメリットがある。これに対し、希土類酸化物の含有量が4質量%未満の場合には、焼成時にうまく焼結しないおそれがある。また、熱膨張係数の向上も見込めず、熱応力に起因して亀裂が発生する等のおそれがある。一方、希土類酸化物の含有量が25質量%を超える場合には、熱膨張係数は向上するものの、希土類元素(RE)、珪素(Si)、窒素(N)及び酸素(O)で構成される粒界結晶相が生成されてしまい、当該結晶相の存在により耐酸化性が低下してしまう。尚、このような結晶相としては、J相(Er4Si227)、H相(Er20Si12448)、メリライト相(Er2Si343)等が挙げられる。
また、構成2のセラミックヒータの基体は、クロムシリサイドを(クロムの珪化物をクロムシリサイド換算で)1〜8質量%含有している。尚、より望ましくは、「クロムシリサイドを1.5〜5質量%含有している」ことである。これにより、基体の熱膨張係数の向上が図られ、発熱体と基体との熱膨張係数の差を少なくすることができる。これに対し、クロムシリサイドの含有量が1質量%未満の場合には、熱膨張係数の向上が見込めず、熱応力に起因して亀裂が発生する等のおそれがある。一方、クロムシリサイドの含有量が8質量%を超える場合には、クロム成分の凝集が起こるおそれがある。その結果、部位によって熱膨張係数にムラが生じることとなり、強度の低下を起こすおそれがある。
さらに、構成2のセラミックヒータの基体は、アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で0.2〜1.0質量%含有している。尚、より望ましくは、「アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で0.3〜0.8質量%含有している」ことである。これにより、エンジンオイル中に含まれるカルシウム成分等による基体の腐食が抑制される。これに対し、アルミニウム成分の含有量が窒化アルミニウム換算で0.2質量%未満の場合には、上記基体の腐食抑制効果が十分に得られないおそれがある。一方、アルミニウム成分の含有量が窒化アルミニウム換算で1.0質量%を超える場合には、高温下での基体の強度が低下してしまう。また、アルミニウム成分が上記規定量だけ含有されていることで、焼成過程でアルミニウム成分が発熱体中に拡散し、発熱体と基体との焼結挙動を一致させやすくなり、結果として焼結過程での歪みをより一層抑制することができる。その上、抵抗値の安定化が図られる。尚、「前記基体のうち少なくとも表面(表層)部位が、アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で0.2〜1.0質量%含有する」構成とすることで、上述した効果がより確実に奏されることとなる。
構成3.本構成のセラミックヒータは、上記構成1において、前記基体は、クロムとタングステンのシリサイドの固溶体、及び、クロムとバナジウムのシリサイドの固溶体のうち少なくとも一方を含むことを特徴とする。
上記構成3のように、基体には、クロムとタングステンのシリサイドの固溶体(CrW)Si、及び、クロムとバナジウムのシリサイドの固溶体(CrV)Siのうち少なくとも一方が含まれているのが望ましい。このような固溶体が含まれるということは、クロム成分が発熱体と基体との界面等に凝集してしまうといった事態がさほど起きていないことを意味する。すなわち、構成3のような固溶体が含まれるセラミックヒータにおいては、クロム成分の凝集による熱膨張係数のムラの発生を抑制でき、基体の強度低下防止を図ることができるという効果が奏される。また、構成3のように固溶体が含まれることで、熱膨張係数の増大が図られやすい。かかる意味で、純粋なクロムシリサイド(CrSi2)のみが残存している場合よりは、クロムとタングステンのシリサイドの固溶体(CrW)Siや、クロムとバナジウムのシリサイドの固溶体(CrV)Si等がクロムの珪化物として存在しているのがより望ましいといえる。尚、上記のように構成するには、セラミックヒータの製造過程(焼成前の粉体混入工程等)において、基体を構成する素材中に、タングステンシリサイド(WSi2)やバナジウムシリサイド(VSi2)を添加することが望ましい。このようにタングステンシリサイドやバナジウムシリサイドを添加することで、焼成に際して、上記のような固溶体が形成される。
構成4.本構成のセラミックヒータは、構成1乃至3のいずれかにおいて、前記基体の表面に、希土類元素、珪素、窒素及び酸素で構成される結晶相が存在しないことを特徴とする。
上述のとおり、希土類元素、珪素、窒素及び酸素で構成される粒界結晶相が存在すると、特に、当該粒界結晶相が基体の表面に存在すると、基体の表層が酸化してしまい、基体が脆弱化してしまうことが懸念され、特に、1000℃以上の高温下での耐酸化性が劣ってしまう。この点、構成4によれば、希土類元素、珪素、窒素及び酸素で構成される粒界結晶相が表面に存在しないことから、表面が酸化されてしまうといった事態が起こりにくく、結果として耐酸化性の向上を図ることができる。ここで、表面(構成1、2の項の「尚書き」で述べた「表面」も同様)とあるのは、具体的には、所定のX線分析装置を用いて分析できる程度のセラミックヒータの表層部分を指すものである(より具体的には、後述する[発明を実施するための最良の形態]を参照)。
構成5.本構成のセラミックヒータは、上記構成1乃至4のいずれかにおいて、前記基体に、希土類元素のモノシリケートの結晶相及び希土類元素のダイシリケートの結晶相のうち少なくとも一方が存在することを特徴とする。
基体表面に、希土類元素、珪素、窒素及び酸素で構成される結晶相が存在しない方がよい点については構成4において既に述べたが、一方で、構成5のように、基体には、希土類元素のモノシリケートの結晶相や、希土類元素のダイシリケートの結晶相が存在しているのがより望ましい。かかる結晶相が存在することで、耐熱性が向上し、高温条件下での基体の強度の向上を図ることができる。尚、希土類元素のモノシリケートの結晶相としては、Er2SiO5を、希土類元素のダイシリケートの結晶相としては、Er2Si27をそれぞれ例示することができる。
構成6.本構成のセラミックヒータは、上記構成1乃至5のいずれかにおいて、前記基体は、炭化珪素を2〜10体積%含有することを特徴とする。
上記構成6によれば、基体が炭化珪素を2〜10体積%含有していることから、セラミックヒータ焼成時の焼結性が改善されるのみならず、基体の熱膨張係数の向上が図られ、発熱体と基体との熱膨張係数の差を少なくすることができる。これに対し、炭化珪素の含有量が2体積%未満の場合には、熱膨張係数の向上が見込みづらく、高温強度も向上しにくい。また、炭化珪素の含有量が10体積%を超える場合には、焼成時における焼結性の向上が十分ではなくなるおそれがあり、また、絶縁性の低下を招くおそれがある。
また、焼結過程におけるマッチングを図るという趣旨からは、次のように構成するのが望ましい。
構成7.本構成のセラミックヒータは、上記構成1乃至6のいずれかにおいて、前記基体の熱膨張係数が、3.3×10-6/℃以上、4.0×10-6/℃以下であることを特徴とする。
一般に、モリブデンの珪化物、窒化物及び炭化物、並びに、タングステンの珪化物、窒化物及び炭化物のうち、少なくとも1つを主成分とする発熱体の熱膨張係数は、3.7×10-6/℃〜3.8×10-6/℃程度であることが多い。これに対し、構成7のように、前記基体の熱膨張係数が、3.3×10-6/℃以上、4.0×10-6/℃以下とすることで、発熱体と基体との熱膨張係数の差をより少なくすることができ、熱応力に起因する亀裂の発生をより確実に防止できるというメリットがある。
勿論、上記セラミックヒータを用いて、次の構成とすることも可能である。
構成8.構成1乃至7のいずれかに記載のセラミックヒータを備えるグロープラグ。
構成8のように、上記セラミックヒータを使用して、グロープラグを形成することによって、セラミックヒータに上記不具合の生じ得ないグロープラグを提供することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず、本発明に係るセラミックヒータを備えるグロープラグの一例について、図1,2を参照しつつ説明する。図1は、グロープラグ1の縦断面図であり、図2は、セラミックヒータ4を中心に示す部分拡大断面図である。尚、図1,2においては、図の下側をグロープラグ1(セラミックヒータ4)の先端側、上側を後端側として説明する。
図1に示すように、グロープラグ1は、主体金具2、中軸3、セラミックヒータ4、絶縁部材5,6、外筒7、かしめ部材8等を備えている。主体金具2は、略円筒状をなし、その長手方向中央部外周には、グロープラグ1をエンジンのシリンダヘッド(図示略)に取付けるための雄ねじ部11が形成されている。また、主体金具2の後端部外周には六角形状をなす鍔状の工具係合部12が形成されており、前記シリンダヘッドにグロープラグ1を螺合する際に、使用される工具が係合されるようになっている。
主体金具2の内周側には、後端側へ一端を突出させた金属製で丸棒状の中軸3の他端が収容されている。この中軸3の外周と主体金具2の内周との間にはリング状の絶縁部材5が設けられており、中軸3の中心軸と、主体金具2の中心軸とが軸線C1上で一致するように中軸3が固定されている。さらに、主体金具2の後端側より、中軸3を挿通させた状態で、別の絶縁部材6が設けられている。当該絶縁部材6は、筒状部13及びフランジ部14を具備しており、筒状部13が前記中軸3と主体金具2との隙間に嵌合されている。また、前記絶縁部材6の上端側に、略円筒状のかしめ部材8が中軸3に嵌合されている。かしめ部材8は、その先端面が前記絶縁部材6のフランジ部14に当接した状態で、その胴部外周から押圧されてかしめられている。これにより、中軸3と主体金具2との間に嵌合された絶縁部材6が固定され、中軸3からの抜けが防止されるようになっている。
また、主体金具2の先端部には金属製の外筒7が接合されている。より詳しくは、外筒7は後端側に厚肉部15を有しており、当該厚肉部15の後端外周には段状の係合部16が形成されている。そして、当該係合部16に前記主体金具2の先端内周が係合されている。
前記中軸3の先端側にはセラミックヒータ4が設けられている。セラミックヒータ4は、基体21及び発熱体22を備えている(図2参照)。すなわち、基体21は、先端が曲面状に加工された丸棒状をなし、その内部において、細長いU字状をなす発熱体22が埋設状態で保持されている。このセラミックヒータ4は、その胴部外周が、前記外筒7によって保持されている。尚、セラミックヒータ4のうち、外筒7よりも後端側の部分は、主体金具2内部に収容された格好となっているが、セラミックヒータ4が外筒7によって強固に位置決め固定されていることから、主体金具2には接触しない構造となっている。
さらに、前記中軸3の先端は、小径部17となっており、当該小径部17は主体金具2の長手方向略中央に位置している。また、前記セラミックヒータ4の後端には電極リング18が嵌め込まれており、当該電極リング18と、前記中軸3の小径部17とがリード線19によって接続され、両者間の電気的導通が図られている。
次に、セラミックヒータ4の詳細について図2を主として参照しつつ説明する。セラミックヒータ4は、絶縁性セラミックよりなり、軸線C1方向に延びる略同径で丸棒状の基体21を有し、その内部に、導電性セラミックよりなり細長いU字状をなす発熱体22が埋設状態で保持されている(これらを構成する材料組成については後に詳述する)。発熱体22は、導電部としての1対の棒状のリード部23,24と、前記リード部23,24の先端部同士を連結する連結部25とを備え、連結部25のうち特に先端側の部分が発熱部26となっている。発熱部26は、いわゆる発熱抵抗体として機能する部位であり、曲面状に形成されたセラミックヒータ4の先端部分において、その曲面に合わせた略U字形状をなしている。本実施形態では、発熱部26の断面積がリード部23,24の断面積よりも小さくなるように構成されており、通電時には、主に発熱部26において積極的に発熱が行われるようになっている。
また、リード部23,24は、前記連結部25の両端に接続されており、それぞれセラミックヒータ4の後端へ向けて互いに略平行に延設されている。そして、一方のリード部23の後端寄りの位置には、電極取出部27が外周方向に突設され、セラミックヒータ4の外周面に露出状態とされている。同様に、他方のリード部24の後端寄りの位置にも、電極取出部28が外周方向に突設され、セラミックヒータ4の外周面に露出状態とされている。前記一方のリード部23の電極取出部27は、セラミックヒータ4の長手方向(軸線C1方向)において、前記他方のリード24の電極取出部28よりも後端側に位置している。
電極取出部28の露出部分は、外筒7の内周面に対して接触しており、これにより外筒7とリード部24との電気的導通が図られている。また、電極取出部27の露出部分に対応して、前述した電極リング18が嵌められており、この電極リング18の内周面に電極取出部27が接触して、電極リング18とリード部23との電気的導通が図られている。すなわち、電極リング18にリード線19を介して電気的に接続された前記中軸3と、外筒7に係合し電気的に接続された主体金具2とが、グロープラグ1において、セラミックヒータ4の発熱部26に通電するための陽極・陰極として機能する。
さて、本実施形態では、上記セラミックヒータ4のうち、発熱体22は、モリブデンの珪化物、窒化物及び炭化物、並びに、タングステンの珪化物、窒化物及び炭化物のうち、少なくとも1つを主成分としている。勿論、その他の成分、例えば各種焼結助剤を含んでいてもよい。また、発熱部26においてより積極的に発熱が行われるよう、発熱部26に対してリード部23,24の導電性が高くなるように、両者の材質(配合比率)を若干異ならせることとしてもよい。これにより、発熱体22がより高温条件下(例えば1200℃以上)での使用に耐え得るようになっている。
一方、基体21は、窒化珪素を主成分としており、希土類成分を酸化物換算で4〜25質量%(より望ましくは4〜15質量%)、クロムの珪化物をクロムシリサイド換算で1〜8質量%(より望ましくは1.5〜5質量%)含有するとともに、アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で0.02〜1.0質量%(より望ましくは0.02〜0.8質量%)含有している。「希土類成分」としては、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、イットリウム(Y)等が挙げられる。「希土類成分を酸化物換算で」とあるのは、本発明者等による実施過程において、原材料として希土類酸化物を用いていることに基づくものである。従って、希土類成分が必ずしも酸化物としてのみ残存していなければならないという趣旨ではない。また、クロムの珪化物とあるのは、純粋な(狭義の)クロムシリサイド(CrSi2)のみならず、クロムとタングステンのシリサイドの固溶体、及び、クロムとバナジウムのシリサイドの固溶体等、クロムの珪化物であればよいという趣旨である。「クロムの珪化物をクロムシリサイド換算で」とあるのは、上記同様、本発明者等による実施過程において、原材料としてクロムシリサイド(CrSi2)を主として用いていることに基づくものである。従って、「添加されたほぼ全てのクロム成分が珪化物として残存している」のが望ましいが、必ずしも純粋なクロムシリサイド(CrSi2)のみがクロムの珪化物として残存していなければならないという趣旨ではない。さらに、「アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で」とあるのは、上記同様、本発明者等による実施過程において、原材料として、アルミナ(Al23)単体ではなく、窒化アルミニウム(AlN)を主として用いていることに基づくものである。
また特に、基体21のうち少なくとも表面(表層)部位において、アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で0.02〜1.0質量%(より望ましくは0.02〜0.8質量%)含有している。ここで、「表面(表層)」とあるのは、具体的には、所定のX線分析装置を用いて分析できる程度のセラミックヒータの表層部分を指すものである。より具体的には、ここでのX線分析装置としては、(株)リガク製の商品名ROTAFLEXを用い、X線源としてCuKα1を用いた。また、印加電圧を40kV、電流を100mAに設定した。さらに、光学系は、発散スリット1゜、散乱スリット1゜、受光スリット0.3mm、湾曲結晶モノクロメータで構成した。また、X線入射方向としては、図7に示すように、水平状態にあるセラミックヒータ4の平面視において、セラミックヒータ4の長手方向と平行となるように設定した。そして、スキャンモードが2θ/θにて、2θが20゜から80゜まで6゜/分の速さで0.01゜間隔で、セラミックヒータ4表面を照射して反射強度を測定した。「表面(表層)」における上記数値は、このような条件下での測定結果を指すものである。
さらに、基体21は、クロムの珪化物として、純粋なクロムシリサイド(CrSi2)のみならず、クロムとタングステンのシリサイドの固溶体、及び、クロムとバナジウムのシリサイドの固溶体のうち少なくとも一方を含んでいる。当該固溶体は、後述するセラミックヒータ4の製造過程(焼成前の粉体混入段階等)において、基体21を構成する素材中に、タングステンシリサイド(WSi2)やバナジウムシリサイド(VSi2)が添加されることによって形成されるものである。
また、本実施形態では、基体21の表面には、希土類元素、珪素、窒素及び酸素で構成される結晶相[例えば、J相(Er4Si227)、H相(Er20Si12448)、メリライト相(Er2Si343)等]が存在していない。勿論、上記「表面」についても、上述したX線分析装置を用いた手法により測定した結果を指すものである。
一方で、本実施形態における基体21には、希土類元素のモノシリケートの結晶相(Er2SiO5)及び希土類元素のダイシリケートの結晶相(Er2Si27)のうち少なくとも一方が存在している。
さらに、本実施形態における基体21は、炭化珪素(SiC)を2〜10体積%含有している。
以上、セラミックヒータ4を中心としたグロープラグ1の構成について説明したが、かかるセラミックヒータ4を作製するにあたり、本実施形態では以下の製造方法に従うこととしている。以下には、図3〜図6等を参照しつつ、セラミックヒータ4の製造方法について簡単に説明する。
図3は、セラミックヒータ4の各製造工程を示すフローチャートである。同図に示すように、セラミックヒータ4の製造工程においては、まず、発熱体成形体31(図4参照)の成形が行われる(S1)。発熱体成形体31は、前述した発熱体22のいわば前駆体である。当該発熱体成形体31の成形についてより詳しく説明すると、上記のとおり、モリブデンの珪化物、窒化物及び炭化物、並びに、タングステンの珪化物、窒化物及び炭化物のうち、少なくとも1つを主成分としたものに焼結助剤等の添加物を混入させたものを水の中でスラリー状とし、スプレードライを施すことで、粉末状態とする。当該粉末とバインダとしての樹脂チップとを混練し、射出成形を行い、その後、バインダの一部を灰化させる(取り除く)べく予備的に加熱乾燥を行うことで、発熱体成形体31が作製される。
作製される発熱体成形体31は、図4に示すように、未焼成のリード部33,34と、リード部33,34の先端側(図の左側)を連結する略U字形状の未焼成の連結部35とを備えている。さらに、本実施形態にあっては、リード部33,34の後端側を接続するサポート部39も一体形成されている。すなわち、焼成前のセラミックは機械的強度が弱く、また連結部35は比較的細いため、加工過程において割れや、折れといった不具合の発生が懸念される。本実施形態では、連結部35、リード部33,34及びサポート部39によって、発熱体成形体31を全体として環状に構成することで、リード部33,34の重量による負荷が連結部35とサポート部39とで分散され、これにより、連結部35の割れ等の不具合防止が図られている。なお、サポート部39は焼成後において切断されるものであるため、切断をより容易に行うという観点から同図よりも細いものを採用してもよい。勿論、かかるサポート部39を省略する構成を採用しても何ら差し支えない。
さて、セラミックヒータ4の製造過程の説明に戻り、発熱体成形体31の成形工程とは別に、基体21の半分を構成する半割絶縁成形体40の成形が行われる(図3のS2)。より詳しく説明すると、まず半割絶縁成形体40を構成する材料の粉末を用意する。上記のとおり窒化珪素(平均粒径0.7μm)を主成分とし、希土類酸化物、平均粒径1.0μmのCr23・CrSi2)等のCr化合物粉末、平均粒径1.0μmのWO3・WSi2等のW化合物粉末(や、V化合物粉末)、平均粒径1.0μmで結晶構造としてαあるいはβの炭化珪素粉末、アルミナ、窒化アルミニウム等を混入させたものを、窒化珪素製の球石を使用してエタノール中で40時間湿式混合し、次いで湯煎乾燥し、粉末(顆粒)状態とする。そして、当該絶縁性セラミック粉末を用いたうえで半割絶縁成形体40の成形が行われる。
半割絶縁成形体40の成形には所定の金型装置(図示せず)が使用される。金型装置としては、例えば枠形状をなす、つまり平面視長方形状をなす開口を有する外枠と、当該外枠に対し上下動可能な下型及び上型とを備えている。そして、外枠の開口に下型の凸部を挿通させた状態とし、開口内に、前述の絶縁性セラミック粉末を所定量充填し、この状態から上型を下動させ、所定圧力でプレス加圧する。これにより、図4に示すように、収容凹部48の形成された半割絶縁成形体40が得られる。尚、上記発熱体成形体31の成形(S1)と、半割絶縁成形体40の成形(S2)とは、どちらが先に行われてもよい。
次に、上記発熱体成形体31及び半割絶縁成形体40、並びに、絶縁性セラミック粉末を用いた保持体61(図5参照)の成形が行われる(図3のS3)。この保持体61の成形に際しても所定の金型装置(図示せず)が使用される。金型装置としては、例えば上記同様枠形状をなす外枠と、当該外枠に対し上下動可能な下型及び上型とを備えている。そして、外枠の開口に下型の凸部を挿通させた状態とし、その上に前記半割絶縁成形体40をセットして、セットされた半割絶縁成形体40上の収容凹部48に、発熱体成形体31を設置する。次に、前記開口内に、前述の絶縁性セラミック粉末を充填し、上型の凸部を開口に挿通させて上型を下動させ、所定圧力でプレス加圧する。これにより、図5に示すように、発熱体成形体31が絶縁成形体60で保持された保持体61が得られる。
次に、上記保持体61の成形後、脱脂が施される(図3のS4)。すなわち、得られる保持体61中には未だバインダが存在しているため、当該バインダを灰化する、つまり取り除くべく、窒素ガス雰囲気下800℃で1時間の仮焼(脱脂、脱バインダ処理)を行う。
その後、保持体61の外表面全体に離型剤が塗布される(図3のS5)。続いて、保持体61が焼成工程に供される(図3のS6)。この工程では、いわゆるホットプレス法による焼成が行われる。すなわち、図示しないホットプレス加工機を用い、非酸化雰囲気下で、1800℃、1.5時間、ホットプレス圧力25MPaで図6(a)に示す保持体61を加圧・加熱することによって、図6(b)に示す焼成体62を得る。尚、ホットプレス焼成炉では、焼成後の焼成体62が略円柱状となるように、その形状を矯正するための凹部が形成された(上述したセラミックヒータ4の外形に準じた形状が凹設された)カーボン治具が用いられてホットプレス焼成が行われる。このとき、保持体61は、図6(a)において矢印で示すように一軸加圧条件下で加圧され、焼成が施される。
その後、焼成体62の後端側を切断する端面切断工程が行われる(図3のS7)。すなわち、焼成体62の後端側がダイヤモンドカッタ等で切断される。これにより、上述したサポート部39が切除され、その端面からリード部33,34の後端面が露出した焼成体62が得られる。この切断は、発熱体22のリード部23とリード部24とが発熱部26を介さずに短絡することがないようにするために行うものであり、その切断位置は、前記電極取出部27よりも後端側であればよい。つまり、この切断工程を経ることで、前記射出成形工程において連結部35、リード部33,34及びサポート部39により構成されていた発熱体成形体31が、非環状となるように開放されることとなる。勿論、射出成形工程において、元来サポート部を有しない発熱体成形体を得るような場合には、当該端面切断工程は不要となる。
その後、前記焼成体62に対し、各種研磨加工(図3のS7)を施すことで、上述したセラミックヒータ4の完成体が得られる。尚、研磨加工としては、公知のセンタレス研磨機を用いて焼成体62の外周を研磨し、電極取出部27,28を外周面から露出させるセンタレス研磨や、基体21先端部の曲面加工を施し、外側面と発熱部26との距離の均一化を図るためのR研磨などがある。
以上詳述したように、本実施形態のセラミックヒータ4の基体21は、希土類成分を酸化物換算で4〜25質量%含有している。これにより、焼成時の焼結性が改善されるのみならず、基体21の熱膨張係数の向上が図られる。そのため、発熱体22と基体21との熱膨張係数の差を少なくすることができ、熱応力に起因する亀裂の発生を防止できるというメリットがある。これに対し、希土類成分の酸化物換算での含有量が4質量%未満の場合には、焼成時にうまく焼結しないおそれがある。また、熱膨張係数の向上も見込めず、熱応力に起因して亀裂が発生する等のおそれがある。一方、希土類成分の酸化物換算での含有量が25質量%を超える場合には、熱膨張係数は向上するものの、希土類元素(RE)、珪素(Si)、窒素(N)及び酸素(O)で構成される粒界結晶相が生成されてしまい、当該結晶相の存在により耐酸化性が低下してしまう。
また、基体21は、クロムの珪化物をクロムシリサイド換算で1〜8質量%含有している。これにより、基体21の熱膨張係数の向上が図られ、発熱体22と基体21との熱膨張係数の差を少なくすることができる。これに対し、クロムの珪化物の含有量がクロムシリサイド換算で1質量%未満の場合には、熱膨張係数の向上が見込めず、熱応力に起因して亀裂が発生する等のおそれがある。一方、クロムの珪化物の含有量がクロムシリサイド換算で8質量%を超える場合には、クロム成分の凝集が起こるおそれがある。その結果、部位によって熱膨張係数にムラが生じることとなり、強度の低下を起こすおそれがある。
さらに、基体21は、全体に関しても表面に関しても、アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で0.02〜1.0質量%含有している。これにより、エンジンオイル中に含まれるカルシウム成分等による基体21の腐食が抑制される。これに対し、アルミニウム成分の含有量が窒化アルミニウム換算で0.02質量%未満の場合には、上記基体21の腐食抑制効果が十分に得られない。一方、アルミニウム成分の含有量が窒化アルミニウム換算で1.0質量%を超える場合には、高温下での基体21の強度が低下してしまう。
併せて、本実施形態では、基体21を構成する材料中にタングステンシリサイド(や、バナジウムシリサイド)を混入することで、クロムの珪化物としての、クロムとタングステンのシリサイドの固溶体(や、クロムとバナジウムのシリサイドの固溶体)が含まれる。すなわち、クロム成分が発熱体22と基体21との界面等に凝集してしまうといった事態がさほど起きず、結果としてクロム成分の凝集による熱膨張係数のムラの発生を抑制でき、基体21の強度低下防止を図ることができる。
加えて、本実施形態においては、基体21の表面に、希土類元素、珪素、窒素及び酸素で構成される結晶相が存在しないことから、表面が酸化されてしまうといった事態が起こりにくく、結果として耐酸化性の向上を図ることができる。また、基体21に、希土類元素のモノシリケートの結晶相及び希土類元素のダイシリケートの結晶相のうち少なくとも一方が存在するため、耐熱性が向上し、高温条件下での基体の強度の向上を図ることができる。
その上、基体21は、炭化珪素を2〜10体積%含有していることから、焼成時の焼結性が改善されるのみならず、基体21の熱膨張係数の向上が図られ、発熱体22と基体21との熱膨張係数の差を少なくすることができる。これに対し、炭化珪素の含有量が2体積%未満の場合には、熱膨張係数の向上が見込みづらく、高温強度も向上しにくい。また、炭化珪素の含有量が10体積%を超える場合には、焼成時における焼結性の向上が十分ではなくなるおそれがあり、また、絶縁性の低下を招くおそれがある。
次に、上述した作用効果を確認するべく、種々の条件下で各種サンプルを作成するとともに、それら各サンプルの特性を評価するべく種々の実験を行った。
まず、平均粒径0.7μmの窒化珪素粉末に、希土類酸化物としてEr23、平均粒径1.0μmのCrSi2粉末、平均粒径1.0μmのWO3・WSi2等のW化合物粉末、平均粒径1.0μmで結晶構造としてαあるいはβの炭化珪素粉末及び二酸化珪素の粉末、窒化アルミニウム及びアルミナのアルミ化合物粉末を配合し、これを窒化珪素製の球石を使用してエタノール中で40時間湿式混合し、次いで湯煎乾燥した。その後、このようにして得られたヒータ部材の粉末を上記のように加工し、セラミックヒータを作成するとともに、これらセラミックヒータ(基体)とは別に、窒素雰囲気下、1800℃、25MPa、の条件で1.5時間かけホットプレスで焼成し、45mm×45mm×10mmの板状焼結体(テストピース=TP)を作製した。
この場合において、希土類酸化物(Er23)、クロムの珪化物(CrSi2)、アルミニウム成分の各配合比率を種々変更した上で上記セラミックヒータ(素子)、及び、テストピースを作製した。そして、セラミックヒータの基体部分に関して各成分割合を測定するとともに、結晶相についても観察を行った。尚、各成分割合については、セラミックヒータを最高発熱部(本例では先端から4mmの部位)に対応する部分において切断し、その断面に関し外周表面から100μm内側の位置において電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA、日本電子製JXA−8800)を用いて、波長分散型X線検出器(WDS、加速電圧20kV、スポット径100μm)により、希土類成分、クロム成分、アルミニウム成分を定量した。希土類成分は、定量した希土類成分から希土類酸化物換算して含有量を算出し、クロムの珪化物は定量したクロム成分からクロムシリサイド(CrSi2)換算して含有量を算出し、アルミニウム成分は、窒化アルミニウム(AlN)換算して含有量を算出した。
さらに、各テストピースについて、「熱膨張係数」「1100℃、1150℃でのCaSO4耐食性」を評価した。併せて、セラミックヒータ素子について「高温連続耐久性能」、「ONOFF耐久性能」を評価した。その結果を表1に示す。
なお、表中、結晶相の欄において、「DS」とあるのは結晶相として希土類元素のダイシリケートが主として確認され、「MS」とあるのは結晶相として希土類元素のモノシリケートが主として確認され、「MS,DS」とあるのは結晶相として希土類元素のモノシリケートとダイシリケートの混在物が主として確認されていることを意味する。また、「メリライト相」とあるのは、モノシリケート、ダイシリケートのいずれでもなく、「メリライト相」が主として確認されていることを意味する。
また、「熱膨張係数」は、次の式(1)に基づいて算出することができる。
熱膨張係数(ppm/℃)=−[(1000℃における標準サンプル長さ−1000℃における測定サンプル長さ)/{30℃における測定サンプル長さ×(1000℃−30℃)}]+8.45×10-6 ・・・(1)
但し、上記式(1)において、「1000℃における標準サンプル長さ」は、標準サンプルとして1000℃における熱膨張係数が8.45×10-6/℃であるアルミナを使用した場合の当該アルミナの1000℃における長さを意味する。また、この標準サンプルの30℃における長さは、測定サンプルの30℃における長さと等しい長さであるものとする。
また、「CaSO4耐食性」は、次のようにして評価することとした。すなわち、CaSO4粉末を入れたアルミナ製るつぼに、上記テストピースを3mm×4mm×15mmに加工したものを入れて大気中、1100℃において20時間保持したもの、1150℃において20時間保持したものをそれぞれ取り出し、その後CaSO4を取り除くべくサンドブラスを施して質量減少率を測定した。この場合において質量減少率が5%未満の場合には「○」の評価を、質量減少率が5%〜20%の場合には「△」の評価を、質量減少率が20%を超える場合には「×」の評価をすることとした。
さらに、セラミックヒータ素子についての「高温連続耐久性能」は、次のようにして評価することとした。すなわち、ヒータ最高表面温度が1350℃(さらには1400℃)になるようにヒータを昇温させて、連続通電試験を行った。そして、1000時間の通電を行った後、まず抵抗値を測定し、試験前後での抵抗値変化を計測した。抵抗値測定後、ヒータを軸方向に沿って切断し、鏡面研磨し、EPMAにて発熱体近傍の焼結助剤成分(希土類成分、クロム、アルミニウム)の移動(マイグレーション)の有無を観察した。この場合において、抵抗変化もなく、マイグレーションも無かった場合には「○」の評価を、抵抗変化はさほどなかったものの、マイグレーションがあった場合には「△」の評価を、抵抗値が10%以上増大し、かつ、マイグレーションがあった場合には「×」の評価をすることとした。
併せて、セラミックヒータ素子についての「ONOFF耐久性能」は、次のようにして評価することとした。すなわち、ヒータに電圧を印加した後、1秒で1000℃に達するように電圧を印加し、その昇温速度を維持したまま最高温度たる1400℃に到達させ、その後、電圧印加をオフして30秒間ファン冷却を行い、これを1サイクルとする試験を繰り返し、1000サイクル後の抵抗値を測定した。この場合において、1000サイクル後、抵抗変化がほとんどなかった場合(5%以内)には「○」の評価を、1000サイクル後、抵抗変化があり、その変化が5〜10%であった場合には「△」の評価を、1000サイクル以内で断線が生じてしまった場合には「×」の評価をすることとした。
Figure 0004996283
表1において、希土類酸化物(Er23)が6.0〜6.4質量%含有されてなり、かつ、クロムの珪化物がシリサイド換算で1.9〜2.3質量%含有されてなるサンプル1〜10を参酌すると、Al成分が窒化アルミニウム換算で0.02〜1.0質量%含有されてなるサンプル3〜9については、1100℃、1150℃におけるCaSO4耐食性が優れていることが明らかとなった。
これに対し、Al成分の含有量が窒化アルミニウム換算で0.02質量%未満の場合(サンプル1,2の場合)には、CaSO4耐食性が劣ったものとなってしまった。特に、1100℃でのCaSO4耐食性については、さほど顕著な差は認められなかったものの、1150℃でのCaSO4耐食性は、Al成分の含有量が窒化アルミニウム換算で0.01質量%以下の場合、著しく劣ったものとなってしまうことが判った。すなわち、サンプル3〜9の構成を採用することで、1150℃という高温域での耐食性が極めて優れたものとなるということが明らかとなった。
一方、Al成分の含有量が窒化アルミニウム換算で1.0質量%を超える場合(サンプル番号10の場合)には、高温連続耐久において抵抗値が変化してしまい、また、ONOFF耐久も断線が生じてしまうことが明らかとなった(ヒータ素子評価参照)。
また、表1において、クロムの珪化物がシリサイド換算で2.0〜2.5質量%含有されてなり、かつ、Al成分が窒化アルミニウム換算で0.07〜0.11質量%含有されてなるサンプル11〜17を参酌すると、希土類酸化物(Er23)が4.0〜25.0質量%含有されてなるサンプル12〜16については、CaSO4耐食性に優れ、かつ、「高温連続耐久性能」、「ONOFF耐久性能」の面でも優れることが明らかとなった。これに対し、希土類酸化物(Er23)が3.0質量%しか含有されていないサンプル11については、熱膨張係数が3.2と低く、また、高温条件下における「ONOFF耐久性能」の面でも劣ることが明らかとなった。一方、希土類酸化物(Er23)が27.0質量%も含有されているサンプル17については、結晶相としてメリライト相が確認され、「高温連続耐久性能」、「ONOFF耐久性能」が著しく劣ったものとなってしまうことが明らかとなった。
また、表1において、希土類酸化物(Er23)が5.9〜6.1質量%含有されてなり、かつ、Al成分が窒化アルミニウム換算で0.07〜0.09質量%含有されてなるサンプル18〜24を参酌すると、クロムの珪化物がシリサイド換算で1.0〜8.0質量%含有されてなるサンプル19〜23については、CaSO4耐食性に優れ、かつ、「高温連続耐久性能」、「ONOFF耐久性能」の面でも優れることが明らかとなった。これに対し、クロムの珪化物がシリサイド換算で0.7質量%しか含有されていないサンプル18については、熱膨張係数が3.2と低く、また、高温条件下における「ONOFF耐久性能」の面でも劣ることが明らかとなった。一方、クロムの珪化物がシリサイド換算で10.0質量%も含有されているサンプル24については、1400℃での「高温連続耐久性能」、「ONOFF耐久性能」が劣ったものとなってしまうことが明らかとなった。また、当該サンプル24に関しては抵抗体界面にCrの凝集が認められ、このことから高温下での耐久性能が低下したものと考えられる。
さて、上記表1では、希土類酸化物としてEr23を用いた場合の結果を示している。これに対し、他の希土類成分を含有させた場合についても同様の効果が奏されるか否かを検討するべく、上記同様にテストピース及びセラミックヒータを作製し、上記同様に各種評価を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0004996283
表2に示すように、希土類酸化物としてEr23以外の化合物(例えば、サンプル26=酸化イットリウム(Y23)、サンプル27=酸化イッテルビウム(Yb23)、サンプル28=Y23、Yb23の混合物、サンプル29=Er23、Yb23の混合物)を用いた場合であっても、Er23と同様の作用効果が奏されることが明らかとなった。
また、上記表1では、クロムの珪化物に関し、シリサイド換算した上での数値評価を行うこととしている。これは、上述したとおり、セラミックヒータを製造する過程において、原材料としてクロムシリサイド(CrSi2)を主として用いていることに基づくものであって、珪化物の添加の仕方として、上記クロムシリサイド(CrSi2)以外にも、タングステンシリサイドや、バナジウムシリサイドを混入することとしてもよい。そこで、配合される珪化物として、タングステンシリサイドや、バナジウムシリサイドを混入させた場合について、上記同様にテストピース及びセラミックヒータを作製し、上記同様に各種評価を行うこととした。その結果を表3に示す。
尚、表中、固溶体の確認方法としては、次の手法を採用した。すなわち、ヒータ素子の最高発熱部(本例では素子先端から4mmの部位)を輪切りにして断面サンプルを作製し、その断面を鏡面研磨後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて基体部分の組織を観察し、クロムの珪化物粒子を特定した。そして、そのクロムの珪化物粒子を、観察倍率5000倍で、エネルギー分散型X線分光(EDS)にてスポット分析し、元素分析を行った。その結果、検出された元素において、クロム、珪素以外に、タングステンやバナジウムが検出された場合に、固溶体が存在しているものと判定することとした。
Figure 0004996283
表3において、サンプル30は、クロムシリサイド(CrSi2)に加えてタングステンシリサイドを混入させたものであって、得られたテストピース及びセラミックヒータには、クロムとタングステンのシリサイドの固溶体の存在が確認された。また、サンプル31は、クロムシリサイド(CrSi2)に加えてバナジウムシリサイドを混入させたものであって、得られたテストピース及びセラミックヒータには、クロムとバナジウムのシリサイドの固溶体の存在が確認された。尚、サンプル32は、珪化物原料してクロムシリサイド(CrSi2)のみを用いたものであって、得られたテストピース及びセラミックヒータには、クロムシリサイド(CrSi2)の存在が確認された。
表3に示すように、必ずしも純粋なクロムシリサイド(CrSi2)のみが残存していなければならないということではなく、クロムとタングステンのシリサイドの固溶体や、クロムとバナジウムのシリサイドの固溶体が存在していても、同様の作用効果が奏されることが明らかとなった。尚、このような固溶体が含まれるということは、クロム成分が発熱体と基体との界面等に凝集してしまうといった事態がさほど起きていないことを意味する。すなわち、原材料の段階でクロムシリサイド(CrSi2)に加え、タングステンシリサイドやバナジウムシリサイドを複合添加することで、固溶体が形成され、当該固溶体が含まれるセラミックヒータにおいては、クロム成分の凝集による熱膨張係数のムラの発生を抑制でき、基体の強度低下防止を図ることができるといえる。
以上表1、表2、及び、表3に示す結果より、セラミックヒータの基体を構成する素材として、希土類成分を酸化物換算で4〜25質量%、クロムの珪化物をクロムシリサイド換算で1〜8質量%含有するとともに、アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で0.02〜1.0質量%含有していることで、「熱膨張係数」を高くでき、また、「1100℃、1150℃でのCaSO4耐食性」に優れ、しかもセラミックヒータとして用いた場合における「高温連続耐久性能」、「ONOFF耐久性能」に優れたものとなることが明らかとなった。
次に、基体中における炭化珪素の含有量の影響を確認するべく、希土類酸化物(Er23)、クロムの珪化物、Al成分の含有量をほぼ一定とした上で、炭化珪素の含有量を種々変更したサンプルを作製し、上記と同様熱膨張係数及び「ONOFF耐久性能」を評価した。その結果を表4に示す。尚、炭化珪素の含有量は次のように特定した。すなわち、ヒータ素子の最高発熱部(本例では素子先端から4mmの部位)を輪切りにして断面サンプルを作製し、その断面を鏡面研磨後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて基体部分の組織を観察し、炭化珪素粒子を特定し、その面積%を定量化するとともに、体積%に換算した。
Figure 0004996283
表4に示すように、希土類酸化物(Er23)が6.0〜6.2質量%含有されてなり、かつ、クロムの珪化物がシリサイド換算で1.9〜2.1質量%含有されてなり、かつ、Al成分が窒化アルミニウム換算で0.08〜0.10質量%含有されてなるサンプル33〜37において、炭化珪素の含有量が多くなるほど、熱膨張係数が増大することが明らかとなった。すなわち、炭化珪素を所定量含有させることで、基体の熱膨張係数の向上が図られ、発熱体と基体との熱膨張係数の差を少なくすることができるという効果が奏される。これに対し、炭化珪素の含有量が10体積%を超えるサンプル37(13.1体積%)の場合には、「ONOFF耐久性能」が若干、劣ったものとなってしまった。
さて、表1等の評価結果より、アルミニウム成分が窒化アルミニウム換算で0.02〜1.0質量%含有されている必要がある点については上述した。この場合において、原材料として、アルミナ(Al23)単体を用いた場合と、窒化アルミニウム(AlN)を主として用いた場合(例えば、Al23の質量が1に対してAlNの質量比が3のものを用いた場合)とを比較することで、1400℃という高温条件下での強度特性を評価する実験を行った。その結果を表5に示す。尚、「1400℃での高温曲げ試験」については、次のように行うこととした。すなわち、上記と同様にして3mm×4mm×40mmのテストピースを得、当該テストピースをJIS 1604に準じて、1400℃にて4点曲げ強度(上スパン10mm、下スパン30mm)を測定した。
Figure 0004996283
表5に示すように、AlNを主として用いた場合のほうが、Al23単体を用いた場合よりも、1400℃での高温曲げ強度が高いことが明らかとなった。すなわち、アルミニウム成分の添加に関しては、Al23のみではなく、Al23と、AlNとを混合添加することがより望ましく、その比率としては、例えばAl23の質量が1に対してAlNの質量比が3(或いはそれ以上)とすることがより望ましいといえる。こうすることで、JIS 1604に準じて1400℃にて4点曲げ強度を測定した場合に、600MPa以上(本例では639MPa)の高温曲げ強度を得ることができる。
なお、上述した実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
(a)上記実施形態では、保持体61(基体21)を構成する粉体に、アルミナを混入することとしているが、これは焼成後において窒化されるものである。従って、アルミナの混入を控えて、アルミニウム成分として窒化アルミニウムのみを混入することとしてもよいし、逆に、窒化アルミニウムの混入を控えて、アルミニウム成分としてアルミナのみを混入することとしてもよい。但し、アルミナが多く混入されていると1350〜1400℃で液相を形成してしまい、高温強度が低下してしまうことが懸念される。かかる観点からは、表5の項でも述べたことではあるが、当初から窒化アルミニウムを混入することとするのが望ましい。
(b)上記実施形態のセラミックヒータ4は、丸棒状、すなわち、断面円形状である場合に具体化されているが、必ずしも断面円形状である必要はなく、例えば断面楕円形状でも、断面長円形状でも断面多角形状でもよい。また、絶縁性の基体を板状に複数形成して、その間に発熱体を挟み込んだいわゆる板状ヒータに具体化することとしてもよい。
(c)上記実施形態では、保持体61の断面形状が略長円形状となるようにしたが、その断面形状は、円形であっても、矩形であっても、或いは多角形であってもよい。
(d)上記実施形態では、前記半割絶縁成形体40を成形したうえで保持体61を成形することとしているが、そのような段階を省略して、発熱体成形体31のまわりを、絶縁性セラミックを主成分とする粉末で一気に固めるプレス成形を施すことで、保持体を得ることとしてもよい。
(e)上記実施形態では、発熱体成形体31に関し予備的な乾燥を施すこととしているが、当該予備的な乾燥を省略することとしてもよい。
(f)上記セラミックヒータの構成に関し、発熱体の温度抵抗係数の変化を電圧から読み取ることに基づき、温度を検出する温度センサとしての利用も可能である。すなわち、温度センサの基体として、本発明にかかる基体の材料を用いることとしてもよい。
本実施形態のグロープラグの構成を示す縦断面図である。 セラミックヒータを中心に示すグロープラグの部分拡大断面図である。 セラミックヒータの製造方法を示すフローチャートである。 半割絶縁成形体上の収容凹部に発熱体成形体を設置する過程を説明する斜視図である。 保持体を示す斜視図である。 (a)は保持体の焼成時におけるプレス方向を示す断面図であり、(b)は得られる焼成体を示す断面図である。 基体の表面を計測する場合のX線の照射方向を説明する斜視図である。
符号の説明
1…グロープラグ、4…セラミックヒータ、21…基体、22…発熱体。

Claims (8)

  1. モリブデンの珪化物、窒化物及び炭化物、並びに、タングステンの珪化物、窒化物及び炭化物のうち、少なくとも1つを主成分とする発熱体が、窒化珪素を主成分とする基体中に埋設されてなるセラミックヒータであって、
    前記基体は、
    希土類成分を酸化物換算で4〜25質量%、
    クロムの珪化物をクロムシリサイド換算で1〜8質量%含有するとともに、
    アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で0.02〜1.0質量%含有することを特徴とするセラミックヒータ。
  2. モリブデンの珪化物、窒化物及び炭化物、並びに、タングステンの珪化物、窒化物及び炭化物のうち、少なくとも1つを主成分とする発熱体が、窒化珪素を主成分とする基体中に埋設されてなるセラミックヒータであって、
    前記基体は、
    希土類酸化物を4〜25質量%、
    クロムシリサイドを1〜8質量%含有するとともに、
    アルミニウム成分を窒化アルミニウム換算で0.2〜1.0質量%含有することを特徴とするセラミックヒータ。
  3. 前記基体は、クロムとタングステンのシリサイドの固溶体、及び、クロムとバナジウムのシリサイドの固溶体のうち少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
  4. 前記基体の表面に、希土類元素、珪素、窒素及び酸素で構成される結晶相が存在しないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセラミックヒータ。
  5. 前記基体に、希土類元素のモノシリケートの結晶相及び希土類元素のダイシリケートの結晶相のうち少なくとも一方が存在することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセラミックヒータ。
  6. 前記基体は、炭化珪素を2〜10体積%含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のセラミックヒータ。
  7. 前記基体の熱膨張係数が、3.3×10-6/℃以上、4.0×10-6/℃以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセラミックヒータ。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のセラミックヒータを備えるグロープラグ。
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