JP4994722B2 - 超小角x線散乱測定の測定結果表示方法、及び超小角x線散乱測定に基づく配向度の解析方法 - Google Patents

超小角x線散乱測定の測定結果表示方法、及び超小角x線散乱測定に基づく配向度の解析方法 Download PDF

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Description

本発明は、物質から超小角領域(例えば、2θ≦0.08°)内に出射する散乱線を測定する超小角X線散乱測定によって得られた測定データを表示するための表示方法、及びその測定データに基づいた配向度の解析方法に関する。
ある媒質内に微細な、例えば10〜1000Å(0.1μm)程度の粒子や、これに相当する大きさの密度の不均一な領域があると、小角領域(例えば、0°≦2θ≦5°の領域)内に散漫な散乱(中心散乱)が生じる。また、繊維試料に見られるラメラ構造のように結晶質と非晶質が周期的に並んでいる構造、いわゆる長周期構造があると、小角領域内に長周期散乱が生じる。これらのX線散乱を測定するための測定方法としてX線小角散乱測定が知られている。このX線小角散乱測定を行うための装置として、スリット系光学系を用いたX線小角散乱装置(例えば、特許文献1参照)や、クラツキUスリットを用いたX線小角散乱装置等が知られている。
また、近年、プラスチック、ゴム等といった高分子材料にける分子の高次の集合構造を解析するために、超小角領域(2θ≦0.08°)における散乱線を明確に捕えたいという要望が高くなっている。これに適した装置として、ボンゼ・ハート光学系を用いた超小角X線散乱測定装置が知られている(例えば、非特許文献1)。このボンゼ・ハート光学系では、試料に入射するX線及び試料から出射したX線を水平方向に高度に平行化する(すなわち、水平方向への発散を高度に規制する)ことにより、超小角領域での散乱線の検出を可能として、超小角領域での構造解析を可能としている。
なお、一般的に知られているボンゼ・ハート光学系では、横方向に精密に平行化された細いX線ビームが試料に照射されるが、縦方向に関しては横方向に比べて長いX線ビームが試料に照射される。超小角領域を取り扱う超小角X線散乱測定装置においては散乱線のデバイリングは非常に小さく、ボンゼ・ハート光学系において縦方向に長いX線ビームは散乱線のデバイリングに比べれば、十分に長い、あるいは無限に長いビームであるということができる。このように縦方向に長いX線ビームが試料に照射されるとスメアリング(smearing:塗りつぶされた)現象と呼ばれる現象が発生する。
ここで、スメアリング現象について説明する。今、図21(a)に示すように、縦横の両方向に関して平行であって細い理想的な点状の単色X線領域の放射光Rを試料S、例えば体心立方格子(Body Centered Cubic Lattice)を含む試料に照射する場合を考える。体心立方格子に理想的な点状の単色X線が<111>方向に照射されると、6回対称の{110}面に属する6つの等価な格子面に対応して6つの回折斑点(以降、回折スポットと言うこともある)K1〜K6が得られる。
図21(b)に示すように、X線検出器によるX線検出領域Dが回折スポットK1〜K6に対して図示の位置に在るとすれば、この検出領域D内に在る回折スポットK1の回折角度2θが検出される。このとき、検出領域Dの中には回折スポットK1以外の回折スポットは入っていないので、検出器は回折スポットK1の回折角度2θを正確に検出できる。次に、図21(a)において試料SをX線光軸に対して直角の面であるYZ平面内で矢印Aで示すように面内回転させると、回折スポットK1〜K6は矢印Bのように回転移動する。すると、図21(b)において回折スポットK1の隣りの回折スポットK2が検出領域Dに入り、回折スポットK2の回折角度2θが検出器によって検出される。これ以降、検出器による測定と試料Sの面内回転とを繰り返すことにより、6個の回折スポットK1〜K6の回折角度2θを正確に検出できる。
試料Sが単結晶の場合、試料Sに縦方向(H方向)に長いX線ビームRを照射すると、試料とX線ビームのどちらか小さいサイズで回折スポットは縦に広がるが、アナライザ結晶(2θ)をスキャンすると、図22(a)および図22(b)に示すような縦長の回折スポットK1’〜K6’が得られ、赤道方向(2θ)でスキャンする場合は縦長のスポットと考えてもよい。
以上のように試料に照射されるX線ビームが1つの方向に長くなることに起因して回折スポットが広がる現象、及び回折スポットがそのように広がることに起因してX線検出結果が不鮮明になる現象がスメアリング現象と呼ばれている現象である。試料に照射されるX線ビームが1つの方向に長く設定されている構成のボンゼ・ハート光学系は以上のようなスメアリング現象を生じることが知られているので、従来から、ボンゼ・ハート光学系は配向性を持った結晶の構造解析には不向きであると言われている。
なお、非特許文献1の184頁の図4.45には、水平方向の発散を規制する第1及び第4結晶に加えて、垂直方向の発散を規制する第2及び第3結晶を加えることにより、試料にポイント状のX線ビームを照射できるようにしたボンゼ・ハート光学系が提案されている。そして、この光学系を用いて超小角X線散乱測定を行えば、6回対称の{110}面によって6個のドット状の回折スポットが比較的鮮明に得られることが、185頁の図4.46に示されている。
しかしながら、図4.45に示されたボンゼ・ハート光学系は、4つのチャネルカット結晶によってX線を反射させる構成なので、X線強度の減衰が激しく、測定に関して十分なX線強度が確保できないという問題がある。因みに、図4.46に示された測定結果の全てを得るためには極めて長い測定時間、例えば数週間、数ヶ月が必要になると考えられ、実用的でない。
特開2001−356197号公報(第3〜4頁、図1) 伊勢典夫、曽我見郁夫、「高分子物理学」、朝倉書店、2004年12月5日、初版第1刷、第175〜187頁、図4.35、図4.45
ところで、近年、フォトニクス結晶と呼ばれる結晶が話題となっている。この結晶は、結晶内の構造が極めて均一であり、このフォトニクス結晶に熱、電圧、磁場等の刺激を与えると、通過する光の方向や色を変えたり、光を遮断したりできる結晶である。この結晶は内部に極めて均一な構造を有する必要があり、重力が存在する地球上ではひずみが生じるため、現状では宇宙空間内でそのフォトニクス結晶を製造することが考えられている。
フォトニクス結晶は結晶性が非常に良い結晶である。結晶性とは、例えば、格子面の対称性や、微結晶が混在しているか否かの特性や、配向性が高い(すなわち、配向にバラツキがない)等のことである。フォトニクス結晶のようにX線の波長オーダーからマイクロ波のオーダーまで様々な周期構造の結晶でありながら、結晶性の良い物質が作製可能となりつつある一方で、従来は、試料の結晶性を評価するための方法及び装置が確立されていなかった。
なお、縦方向及び横方向の両方向で平行性が非常に高く、両方向で断面形状が非常に小さく、しかも強度が非常に強い単色X線として放射光が知られている。この放射光を試料に照射して超小角領域(2θ≦0.08°)内における散乱線を測定すれば、縦方向及び横方向の両方向に関して分解能の高い測定ができるので、配向性試料の結晶性を高い信頼性で評価できると考えられる。しかし、実験室レベルの超小角X線散乱測定装置では、縦横両方向に関して高精度に平行であり且つ高強度である放射光のようなX線を得ることができず、従って、実験室レベルの超小角X線散乱測定装置では配向性試料の結晶性を正確に評価することはできなかった。
非特許文献1の184頁の図4.45に示されたピンホールコリメーション構造のボンゼ・ハート光学系を用いれば配向性試料の結晶性を測定できるかもしれないが、既述の通り、この光学系によって十分なデータを得るためには極めて長い測定時間が必要となり、全く実用的でない。
本発明者等は、水平方向のX線発散を規制する2つのチャネルカット結晶を用い、縦方向の発散を抑制するチャネルカット結晶は用いない構造のボンゼ・ハート光学系、すなわち縦方向に関しては無限の高さを有するX線ビームを試料に照射する構造のボンゼ・ハート光学系を用いて配向性試料に対して種々の研究を行うことにより、そのような構造のボンゼ・ハート光学系を用いる場合であっても、測定によって得られたデータに適正な処理を施せば、配向性試料の結晶性を正確に評価できることを知見した。
本発明は、上記の知見に基づいて成されたものであって、実験室レベルのX線小角測定装置を用いて配向性試料の結晶性を簡単且つ正確に評価できる、超小角X線散乱測定の測定結果表示方法及び超小角X線散乱測定に基づく配向度の解析方法を提供することを目的とする。
(I)超小角X線散乱測定の測定結果表示方法
本発明に係る超小角X線散乱測定の測定結果表示方法は、(1)X線の進行方向に関して試料の上流側に第1結晶を設け、前記試料の下流側に第2結晶を設け、該第2結晶の下流側にX線検出器を設け、(2)前記第1結晶でのX線回折によりX線を1つの方向に関してスメアリングを生じない、すなわち無視できる程度まで細く平行化し、(3)前記X線の進行方向に直交する面内における前記試料の面内(φ)角度位置を変えると共に、前記X線の進行方向に直交する軸線である2θ軸線を中心とする前記第2結晶の角度(2θ)位置を変えながら、(4)前記1つの方向に関して細く平行化された前記X線を前記試料へ照射し、(5)そのX線照射に応じて前記試料から出射した散乱線を前記第2結晶で分光した後に前記X線検出器によって受光し、(6)前記X線検出器の出力に基づいて散乱線強度(I)を求め、(7)前記第2結晶の角度(2θ)位置を径方向にとり、前記試料の面内(φ)角度位置を円周方向にとった極座標上に、測定結果のデータであるI(φ、2θ)のデータをプロット、又は2θをqに置き換えてI(φ、q)をプロット(8)前記散乱線強度(I)は視覚によって識別できる状態で強度の違いが表示されることを特徴とする超小角X線散乱測定の測定結果表示方法。
上記構成の測定結果表示方法において、前記1つの方向に直交する方向に関してはスメアリングを生じない、すなわち無視できる程度までのX線の平行化を行わないことが望ましい。高精度の平行化を行えばX線強度の減衰の程度が大きくなるので測定を短時間で行うことが難しくなるからである。
以下、この表示方法を詳しく説明する。
(X線光学系)
本発明で用いるX線光学系は、1つの方向(例えば、水平方向又は横方向)に精密に細く平行化が成されていて、それに直交する方向(例えば、垂直方向又は縦方向)には長い焦点サイズであるX線ビームを試料に照射できる構成の光学系である。このようなX線光学系は、例えば、図1に示す構成によって実現できる。
図1において、X線源Fから出射したX線は第1チャネルカット結晶1aによって水平面内(XY平面内)で細い平行ビームに形成されて試料Sへ入射する。試料Sの特性に応じてその試料Sから出射する散乱線は、第2チャネルカット結晶1bによって水平面内で分光され、その分光によって選択された散乱線がX線検出器のX線検出領域Dに受光される。X線検出器は、検出領域Dを通して受光したX線を位置分解することなく1つのX線として積算して検出する、いわゆる0次元X線検出器、例えばSC(Scintillation Counter:シンチレーションカウンタ)によって構成される。
第1チャネルカット結晶1aの作用により、試料Sに入射するX線は水平方向(XY面内の方向)での発散が規制されて水平面内で細く平行化されている。一方、垂直方向(YZ面内の方向)では発散の規制は行われず、そのため、入射X線は縦方向には長いサイズとなっている。本発明で取り扱うのが超小角領域(2θ≦0.08°)であることを考えれば、入射X線の縦方向の長さは無限長さであるということができる。
試料Sは入射X線に対して直角の面内(YZ面内)で矢印φで示すように回転でき、しかも、その回転した位置に静止保持できるようになっている。試料Sのそのような面内回転はφ回転と呼ばれることがある。試料Sを面内回転させることにより、試料Sの内部の結晶構造を入射X線に対して回転させることができる。なお、試料Sの入射X線に対する角度位置は、試料Sの内部の格子面が入射X線に対して一定の角度位置となるように予め調整されている(いわゆる軸立が行われている)ものとする。
図1の光学系において、試料Sを適宜のステップ角度で間欠的にφ回転させるか、又は適宜の角速度で連続的にφ回転させると共に、第2結晶1bをそれ自身を通る軸線X0の回りに2θ回転させながら、試料SにX線を照射すると、試料Sの特性に応じてX線検出領域Dの特定の2θ位置に散乱線が入射して散乱線の強度Iが検出される。こうして、(φ、2θ、I)が1つのセットとなった測定データが多数セット得られる。
(測定結果表示方法)
図2は、超小角X線散乱測定において従来から知られている測定データの表示方法の一例を示している。図2において、パラメータ「φ」は図1における試料SのYZ平面内における面内角度位置を示している。図2では、−30°から90°の角度まで10°きざみで面内角度位置が変化している。横軸には散乱ベクトル(q)値がとられ、縦軸には散乱線強度(I)がとられている。測定に際しては図1の第2チャネルカット結晶1bがそれ自身を通る軸線Xを中心として適宜のスキャン間隔で間欠的に、又は適宜の角速度で連続的に回転(いわゆる2θ回転)するが、上記のq値は2θをq値に変換した値である。なお、図2のグラフは、実験者の手書きによって作成できることはもとより、グラフ作成ソフトを装備したコンピュータによって自動的に作成することもできる。
「q」と「2θ」との変換関係は周知であり、具体的には、
q=(4πsinθ)/λ
但し、2θ=散乱角、
λ=X線の波長(CuKαであれば1.54Å)
である。また、ブラッグの回折条件が
2dsinθ=λ
但し、d=格子面間隔
であることを考慮すれば、
q=(2π)/d
である。この式は、格子面間隔dが小さい物質では広角側にピークが現れ、格子面間隔dが大きい物質では小角側にピークが現れることを示している。
なお、測定対象である配向性試料のどの面にX線を照射するかによって測定結果は異なってくる。1つの観察方法は、図3(a)に示すように配向性物質2を適所Pで切断して試料Sを作り、切った膜面に垂直の方向からX線Rを照射する方法である。この方法は、“Through View”と呼ばれている。他の観察方法は、図3(b)に示すように、物質2を先ずPで切断し、さらにPで切断し、その切断面に横方向からX線Rを照射する方法である。この方法は、“Edge View”と呼ばれている。図2に示す測定結果は配向性試料であるコロイド単結晶を“Edge View”に基づいて測定した場合の結果である。
図2において、矢印C1で示す線は{110}面を構成する1つの格子面に対応した回折ピークが試料の面内回転φの変化に従って位置変動する様子を示していると考えられる。また、矢印C2で示す線は{110}面を構成する他の格子面に対応した回折ピークが試料の面内回転φの変化に従って位置変動する様子を示していると考えられる。この散乱線図上で回折ピークが試料の面内回転φに従って変動するということは、図22(a)及び図22(b)に示すように、縦方向に広がりをもった回折スポットK1’〜K6’が面内回転φに従ってX線検出領域Dに対して多様な動きをすることにより回折角度2θ(q)が低角側又は広角側へ変動することから、容易に想像できることである。
しかしながら、回折スポットK1’〜K6’が種々に位置変動するとしても、回折スポットK1’〜K6’がとり得る最も右側の位置は図22(a)に示す位置以外には存在しない。この最も外側の位置は、回折スポットK1’〜K6’(図22(a)の場合は回折スポットK1’)の正確な回折角度2θを表すものである。このような正しい回折角度は、図2の散乱線図においては、C1線又はC2線に沿って位置変動する回折ピークのうちq軸上の値で最も大きい位置(qmax)に現れる回折ピークによって表されると考えられる。例えば、C1線に属する格子面を見れば、面内角度φ=10°の場合に現れる回折ピークが最も大きいq値(qmax)を有しており、このq値(qmax)がこの格子面に関する正しい散乱角を表していると考えられる。
図2のグラフに示された測定結果を見れば、試料のある程度の特性を観察できる。しかしながら、図2のグラフから試料の結晶性を観察すること、例えば、結晶構造の対称性が保たれているかどうか、試料に微結晶が混在していないかどうか等といった特性は容易には判別できない。本発明者等はそのような試料の結晶性を容易に判別できる表示方法について鋭意研究した。そしてその結果、回折角度(2θ)すなわち散乱ベクトル(q)を径方向にとり、面内(φ)角度を円周方向にとった極座標上に、(φ、2θ、I)のセットで得られる多数の測定データをプロットすれば、試料の結晶性をきわめて容易に且つ正確に判別できることを知見した。
例えば、図2に示した測定結果を上記の極座標上に変換して表すと、図4に示すような極座標グラフが得られる。図4に示すグラフでは、極原点O(オー)からφ軸が放射状に延びている。φ軸は−30°から90°まで10°きざみで等角度間隔で円周方向に広がるように表示されている。散乱角度q(又は2θ)は極原点Oからの半径方向の距離の長短で表示される。散乱線の強度の強弱はプロットする点の色の濃淡や色相の違い(例えば、赤色、青色、黒色等の違い)によって表示される。例えば、黒字に白のドットで散乱線を表示する場合は、白ドットの輝度の違いによって散乱線の強度の強弱を区別できる。例えば、輝度が高くて明るいドットによって強度が高い状態を表示し、輝度が低くて暗いドットによって強度が低い状態を表示できる。また、色の濃淡や色相の他に俯瞰図の形式にすることもできる。なお、図4のグラフは、実験者の手書きによって作成できることはもとより、グラフ作成ソフトを装備したコンピュータによって自動的に作成することもできる。
複数の測定データ(φ、q、I)が得られたとき、−30°〜90°の各φ軸線上で測定データqに対応する距離の点に測定強度Iに対応した濃淡又は色のプロットを行うと、各φ値において強度Iの強い点が異なるφ値間で連なる様子が観察できる。このように強度Iが強い点を連絡線Qで結ぶと、円環3a,3b,3c,3dのうちのφ=−30°〜90°の範囲内の部分を描くことができる。円環3bは図2におけるC1線に相当している。また、円環3cは図2におけるC2線に対応している。円環3a〜3dのうちφ=−30°〜90°の範囲外の部分は、φ=−30°〜90°の範囲内の部分から予測して描くことができる。また、φ=−30°〜90°の範囲外の領域内において、円環3a〜3dの位置から予測される位置に2つの円環3e及び3fを描くことができる。
円環3a〜3fに関する上記の記述から明らかなように、円環3a〜3fは、{110}面に属する6個の格子面の各々が各面内角度φをとるときに、それらの各格子面から回折した散乱線の強度を示していることが理解される。
次に、各円環3a〜3fの極原点Oから直径を引き、その直径の先端にマーク4を描くことができる。このマーク4は、円環3a〜3f上の点のうち極原点Oから最も離れた位置にある点である。例えば、円環3b上に描かれたマーク4は、図2においてC1線上に在るピーク波形のうちq値が最も大きいものqmax、すなわちφ=10°に属するピーク波形を示しているものと考えられる。qmaxはC1線に対応する格子面に関する正しい散乱角度を示していると考えられるので、図4において円環3b上に描かれたマーク4は円環3bに対応する格子面に関する正しい散乱角度を示していることが理解される。同様にして、3b以外の円環3a,3c,3d,3e,3f上に描かれたマーク4もそれらのマーク4が属する円環に対応する格子面に関する正しい散乱角度を示している。
円環3b上のマーク4はφ=10°の所に位置している。また、円環3c上のマーク4はφ=70°の所に位置している。これらの間の角度間隔は(70°−10°)=60°であり、これらの円環に対応する格子面は6回対称であることが容易に且つ明確に観察できる。また、6個の格子面が対称であることが容易に且つ明確に観察できる。また、測定対象としている円環以外に余分な円環が存在していないので、測定対象の試料に別の微結晶が混在していないことが容易に且つ明確に観察できる。
図2のグラフに示される測定データを図4の極座標グラフにプロットすると、円環3a〜3f以外に、それらの円環3a〜3fよりも大径である円環5a及び5bが描かれている。また、それとは別の種類の円環6a及び6bが描かれている。円環3a〜3fが{110}面に対応する円環であると考えられるところ、円環6a,6bは{220}面に対応する円環であり、円環5a,5bは{−113}面に対応する円環であると考えられる。これらの格子面の存在も容易に且つ明確に観察できる。図4のグラフは、体心立方格子(BCC)を[111]方向から見たものと一致している。
次に、同じ試料を図3(a)に示すような“Through View”で観察すると、図5に示すφqI平面座標系の散乱強度線図が得られる。そして、この散乱強度線図をφq極座標系に変換すると、図6に示す散乱強度線図が得られる。図6において、6個の円環3a’〜3f’が観察される。これらの円環3a’〜3f’は{110}面に対応していると考えられる。また、円環3a’〜3f’とは異なる大きさの6個の円環7a〜7fが観察される。これらの円環7a〜7fは{200}面に対応していると考えられる。図6のグラフによれば、軸方向が異なるBCCの[110]方向に並んだ結晶が複数あると考えられる。
測定対象の試料を“Through View”で観察すると、結晶性は悪い状態となっており、X線ビームの中にいくつかの微結晶が含まれ、散乱の重ね合わせが得られるのであるが、図5に示すφqI座標系の散乱強度線図ではそのことは容易には観察できない。しかしながら、図6のφq極座標系の散乱強度線図を見ると上記の結晶性の悪さ等が容易に且つ明確に観察できる。
(II)超小角X線散乱測定に基づく配向度の解析方法
次に本発明に係る超小角X線散乱測定に基づく配向度の解析方法について説明する。本発明に係る配向度の解析方法は、
(A)実測散乱線強度Iobsを実測によって求める実測工程と、
(B)散乱線強度の散乱角方向(q方向)の半値幅であるσの項及び散乱線強度の配向方向(μ方向)の半値幅であるσμの項を含んだ散乱線強度のモデル式にσ及びσμの値を代入して計算散乱線強度Icalを求める計算工程とを有し、
(C)前記実測工程においては、
(a)X線の進行方向に関して試料の上流側に第1結晶を設け、前記試料の下流側に第2結晶を設け、該第2結晶の下流側にX線検出器を設け、
(b)前記第1結晶でのX線回折によりX線を1つの方向(例えば水平方向)に関してスメアリングを生じない、すなわち無視できる程度まで細く平行化し、前記1つの方向に直交する方向(例えば垂直方向)にはスメアリングを生じない程度までの平行化は行わず、
(c)前記X線の進行方向に直交する面内における前記試料の面内(φ)角度位置を変えると共に、前記X線の進行方向に直交する軸線である2θ軸線を中心とする前記第2結晶の角度(2θ)位置を変えながら、
(d)水平方向に関して細く平行化された前記X線を前記試料へ照射し、
(e)そのX線照射に応じて前記試料から出射した散乱線を前記第2結晶で分光した後に前記X線検出器によって受光し、
(f)前記試料の面内(φ)角度位置を変えたときの1つの格子面についての個々の面内(φ)角度位置における実測散乱線強度Iobsを前記X線検出器の出力に基づいて求め、
(D)前記実測工程で求めた実測散乱線強度Iobsと、前記計算工程で求めた計算散乱線強度Icalとを比較して、実測散乱線強度Iobsと計算散乱線強度Icalとが一致又はそれらの違いが許容範囲内となるときのσ及びσμを真の値であると決めることを特徴とする。
以下、本発明に係る配向度の解析方法により、試料の配向分布及び格子面間隔の分布を評価する方法を詳しく説明する。
(X線光学系)
本発明で用いるX線光学系は、1つの方向(例えば、水平方向)に精密に細く平行化が成されていて、それに直交する方向(例えば、垂直方向)には長い焦点サイズであるX線ビームを試料に照射できる構成の光学系である。このようなX線光学系は、例えば、図1に示す構成によって実現できる。図1に示す光学系ついては既に説明したので、ここでの説明は省略する。
(散乱線プロファイル)
次に、試料Sから得られる散乱線のプロファイルについて説明する。図7(a)は、試料Sの内部の配向分布を有する結晶構造と、試料Sから得られる散乱線プロファイルIとの関係を模式的に示している。図7(a)において、模式的に示す試料Sの中に符号(1)〜(5)で示す5種類の格子面が含まれている。全ての格子面は{110}面に属する面であるとする。同じ符号の格子面は同じ向きに配向しており、試料Sは配向分布を有している。また、符号(1)〜(5)の格子面において、格子面間隔dは正確に一定ではなくバラツキがある。すなわち、格子面間隔dも分布を持っている。
円環Iは、{110}面からの散乱線を観察できる線、いわゆるデバイリングに相当する線を示している。円環Iはその中心からの距離が2π/d=qmaxによって規定される線である。格子面(1)、(2)、(3)、(4)、(5)から、それぞれ、プロファイル(1)(2)、(3)、(4)、(5)が得られるものとする。そして、プロファイル(1)〜(5)及びそれ以外の多数のプロファイルによって、三日月状又はアーク状の散乱線パターンIが得られている。図示の例では、プロファイル(1)の部分が最も高く、プロファイル(2)、(3)及びプロファイル(4)、(5)へ向かうに従って低くなっていることから、プロファイル(1)に対応する格子面(1)の数が最も多く、格子面(2)、(3)の順及び格子面(4)、(5)の順に数が小さくなっている状態を示している。なお、散乱線パターンIは円環Iに対して互いに対向する部分に一対の状態で現れるものであるが、図7(a)では上側の散乱線パターンIだけを示し、下側の散乱線パターンは図示を省略している。
図7(a)において、半径方向は散乱角方向(2θ方向)、すなわち散乱ベクトル方向(q方向)であり、円周方向は配向方向(μ方向)である。「q」と「2θ」との関係は既述の通り、 q=(4πsinθ)/λ である。
散乱線パターンIは、q方向及びμ方向のそれぞれの方向に沿って分布を有している。q方向に沿って分布が生じるのは、各格子面(1)〜(5)において格子面間隔dにバラツキ、すなわち分布があるからである。また、μ方向に沿って分布が生じるのは、各格子面(1)〜(5)間で配向方向にバラツキ、すなわち分布があるからである。換言すれば、散乱線パターンIにおけるq方向の強度分布σが求まれば、そのσに基づいて格子面間隔dの分布を評価できるということである。また、散乱線パターンIにおけるμ方向の強度分布σμが求まれば、そのσμに基づいて格子面の配向度分布が評価できるということである。
以上の説明から理解できるように、試料Sの配向度が高ければ(すなわち、試料Sが完全結晶に近い状態であれば)、散乱線プロファイルIの幅Wは狭くなる。試料Sの配向度が低くなれば(すなわち、バラツキが大きくなれば)、散乱線パターンIの幅Wは広くなる。試料Sが無配向(配向度が最も低い状態)であれば、散乱線パターンIは円環Iの全域に沿って一様な高さのリング状パターン、いわゆるデバイリングとして現れる。
(散乱線プロファイルのモデル化)
次に、散乱線プロファイルIをどのようにしてモデル化するかについて説明する。
(1)基本関数化
まず、散乱線プロファイルIのq方向(散乱角方向)の強度分布(1)〜(5)は、例えば、左右対称な形であるガウス関数を用いて図7(b−1)のように近似することができる。図7(b−1)の(1)〜(5)は、それぞれ、図7(a)のプロファイル(1)〜(5)に対応している。各プロファイルはガウス関数を用いて、
Figure 0004994722
で表される。但し、σはq方向の強度分布波形の半値幅、qmaxは{110}面の回折角度である。
式(1)において、I’(q)は、q方向(すなわち、2θ方向)の広がりを表す関数である。また、右辺の(q−qmax)は、q=qmaxの点を中心とするガウス関数を考えているという意味である。

図7(b−1)はq方向の強度分布をガウス関数で近似した例であるが、ガウス関数を用いることに代えて、左右非対称なローレンツ関数を用いることもできる。図7(b−2)はそのローレンツ関数を用いてq方向の強度分布を近似した例を示している。(1)〜(5)の各プロファイルはローレンツ関数を用いて
Figure 0004994722

で表される。但し、Sは波形の積分面積、Wはq方向の強度波形の半値全幅である。図22に関連して説明したスメアリング現象が発生すると、測定された強度波形は左側(小角側)に広がる傾向にあるので、ローレンツ関数はそのような強度波形を近似するのに適しているということができる。
図7(c)は、散乱線パターンIのμ方向(配向方向)の散乱強度分布を示している。該散乱強度分布を、左右対称であるガウス関数を用いて近似すると、該散乱強度はμの増加と共に下記の(3)式に従って減衰する。
Figure 0004994722
図7(a)のアーク状散乱強度Iは、上記(1)式と上記(3)式を組み合わせて、又は上記(2)式と上記(3式)を組み合わせて、

I(q,μ)=I’(q)×G(μ) …(4)

と書ける。上記(1)式を用いるものとすれば、(4)式は、
Figure 0004994722

となる。
(2)散乱線パターンのφ回転
次に、図1において試料Sがφ回転される場合を考える。この場合には、図7(a)のアーク状の散乱線パターンIが円環Iの中心点を中心として回転することになる。散乱線パターンIが角度φだけφ回転した状態をモデル化するためには、上記(5)式において「μ」の代りに「(μ−φ)」を入れれば良いので、
Figure 0004994722

を考えれば良い。この(6)式が、図7(a)の散乱線プロファイルIを個々のφ値において一般的にモデル化しているものと考えられる。
(3)スメアリングの影響
次に、スメアリングの影響をモデル式に含めることを考える。スメアリングを考慮するには縦方向と横方向とを考えた方が良いので、散乱線パターンをqμ極座標で表示することに代えて、XY直交座標で表示するのが良い。そのため、(6)式において、
x=qsinμ
y=qcosμ
とすることにより、

I(q,μ)→I(x,y) …(7)

の座標変換を行う。
次に、観測される2次元散乱強度Iobs(x,y)は、

obs(x,y)=I(x,y)*W*W*D*D …(8)

で表される。但し、
:X線ビームに関する鉛直方向の重み関数(Weighting Function)、
:X線ビームに関する水平方向の重み関数、
:X線検出器に関する鉛直方向の重み関数、
:X線検出器に関する水平方向の重み関数
である。また、「*」は周知の数学的な計算手法である「たたみ込み」、いわゆるコンボリューションを行うことを示している。
ここで、図1に関連して説明したように、水平方向(XY面内方向)に関しては第2チャネルカット結晶1bによって分光されるため、W*Dは無視できるので、(8)式は、

obs(x,y)=I(x,y)*W*D …(9)

とすることができる。
さらに、図1の光学系は縦方向に無限長さのビーム焦点サイズを有していると考えられるので、得られる1次元散乱強度Iobs(x)は
Figure 0004994722
とすることができる。
(4)フィッティング処理
上記(6)式により、配向性試料を面内でφ回転させた場合の散乱線パターンのモデル(アーク状モデル)が得られることが分かった。また、上記(9)式及び上記(10)式により、縦方向無限焦点サイズに起因するスメアリングを考慮した場合の散乱線パターンの1次元散乱強度Iobs(x)が得られることが分かった。(6)式や(10)式は、σ(q方向の強度分布の半値幅)及びσμ(μ方向の強度分布の半値幅)を含んでいる。σ及びσμとして適宜の数値を選定し、それらの値を例えば(10)式に代入すれば、散乱線パターンの1次元散乱強度Iobs(x)が計算によって求められることが分かった。
以上から、
(1)σ及びσμの適宜の値を、例えば(10)式に代入して計算上の1次元散乱強度Ical(x)を求め、
(2)図1の光学系を用いて実測によって1次元散乱強度Iobs(x)を求め、
(3)計算上の1次元散乱強度Ical(x)と実測した1次元散乱強度Iobs(x)とを比較し、
(4)Ical(x)とIobs(x)とが違う場合にはσ及び/又はσμの値を修正して再度、計算上の1次元散乱強度Ical(x)を求め、
(5)修正後のIcal(x)をIobs(x)と再度、比較する、
という工程を繰り返して行い、Ical(x)とIobs(x)との違いが許容できる範囲内に納まったときのσ及びσμの値を真のσ及びσμとして決めることができる。そして、この決められたσ及びσμから測定対象である配向性試料の結晶性を評価することができる。
(σ及びσμの初期値)
上記のフィッティング処理を行うにあたって、σ及びσμの初期値をどのようにして決めるかということは重要なことである。以下、そのようなσ及びσμの値の決定の仕方を含めて、上記のフィッティング処理を詳しく説明する。
今、図7(a)に示した散乱線プロファイルIを図8(a)、(b)、(c)に示すように円環Iの中心点を中心として回転させる場合を考える。この操作は、図1において試料SをYZ面内でφ回転させることによって行われる。なお、これ以降では、σ及びσμも一旦はフローティングパラメータとして取り扱うことにする。すなわち、

I(q,μ)=I(q,μ,σ,σμ,φ) …(11)

とする。
図8(a)では、散乱線プロファイルIがx軸の最大の位置(すなわち、q,2θで最大の位置)に位置している。今、この状態をφ=90°とする。図8(c)では、散乱線プロファイルIがφ=90°の位置から角度90°だけ回転してx=0の点に位置している。この状態をφ=0°とする。図8(b)では、散乱線プロファイルIが中間点に位置している。今、測定結果として図2に示す結果が得られているものとすれば、図8(a)に示す状態は、図2においてC1線に属する格子面のピーク波形がq軸上で最大となる点であるところのφ=10°のときに一致すると判断できる。また、図8(c)に示す状態は、図2においてC1線に属する格子面のピーク波形がq=0°の点にあるところのφ=100°(φ=10°から90°回転した状態)のときに一致すると判断できる。また、図8(b)に示すφ=φ0の状態は、図2においてφが10°から100°の間を移動する状態であると判断できる。
図8(a)に示す散乱線プロファイルIの散乱強度Iobs(x)は、スメアリング効果を考慮してローレンツ関数で近似できると考えられる。この散乱強度の半値全幅はWφ=90°である。同様にして、図8(b)の散乱線プロファイルIの散乱強度Iobs(x)は図8(a)の場合よりも少し広がった形として得られる。この散乱強度の半値全幅はWφ=φ0である。また、同様にして、図8(c)の散乱線プロファイルIの散乱強度Iobs(x)は最も幅の広い形として得られる。この散乱強度の半値全幅はWφ=φ0である。
σμは散乱線強度波形におけるμ方向(配向方向)の半値幅であるので、このσμの値は図8(c)の状態における散乱線プロファイルIから得られるIobs(x,y)の半値幅から求められると考えることができる。そして、Iobs(x,y)の半値全幅Wφ=0°は、
Figure 0004994722
とみなすことができる。よって、
Figure 0004994722
と仮定、すなわち第1次の近似とする。
一方、σは散乱線強度波形におけるq方向(散乱角方向)の半値幅であるので、このσの値は図8(a)の状態における散乱線プロファイルIの散乱線強度の半値幅であると考えることができる。従って、φ=90°におけるIobs(x)の半値全幅Wφ=90°から、
Figure 0004994722
と仮定、すなわち第1次の近似とする。
以上によりσ及びσμが近似できることが分かった。次は、φに90°〜0°の各値を代入しながら上記(6)式と同様にして散乱線パターンIcal(q,μ)を計算によって求める。Ical(q,μ)はモデル的には、
Figure 0004994722
によって表される。φに90°〜0°の各値を代入しながらIcal(q,μ)を計算するということは、具体的には、図8(a)(φ=90°)から図8(c)(φ=0°)に至る間のアーク形状の散乱線プロファイルIをφ角度ごとにコンピュータ上で2次元的なデータとして形成する、ということである。
ところで、σμの第1次近似が図8(c)で示す状態の散乱線プロファイルIによって決定できることを既述したが、図8(c)に示す状態は図2においてC1線上のピーク波形がq=0の位置まで移動した状態に相当する。ここで問題になるのは、q=0の近傍領域はX線検出器がダイレクトビームを検出する領域であり、ダイレクトビームをそのまま検出してしまうとX線検出器が破損してしまうので、通常はX線減衰部材によってダイレクトビームの強度を減衰させているため、この領域では散乱線プロファイルIの検出ができないということである。図2ではq=0の近傍領域のピーク強度がそれ程大きくないように実測されているが、これは予めX線光軸上に設けられたX線減衰部材の作用の結果であって、散乱線を検出できる程度までにダイレクトビームが小さいことを示すものではない。
このように、σμが図8(c)における散乱線強度Iobs(x,y)の半値幅と仮定できるといっても、その値は実際にはダイレクトビームとの関係上、実測することができないものである。そこで、本発明では、φ=90°〜φ0の間の数点のデータを測定した上で、φ=0°のときのIobs(x,y)をそれら数点のデータからの外挿によって得ることにする。
次に、無限高さビームを考慮したスメアリングに対応する処理として、
Figure 0004994722
を演算する。これにより、図8(a)、(b)、(c)におけるIobs(x)に相当する計算上の散乱線強度Ical(x)がφ角度ごと、すなわちアーク状散乱線プロファイルの傾斜状態ごとに求められる。
そして、以上のようにして計算によって求められた散乱線強度Ical(x)と、実測によって求められた図2におけるφ=10°〜φ=100°(図8における(a)〜(c)、すなわちφ=90°〜0°に相当する)にわたるC1線上の散乱線強度Iobs(x)とを比較する。そして、Ical(x)とIobs(x)との一致度が許容範囲内に入るまで、σ及びσμの値を入れ替えて計算及び比較を繰り返す。最終的に得られたσ及びσμがそれらの真の値である。σは散乱線強度のq方向(散乱角方向)の分布の半値幅であり、σμは散乱線強度のμ方向(配向方向)の分布の半値幅であるので、σの真の値から試料の格子面間隔のバラツキ状態を知ることができ、σμの真の値から試料の格子面の配向のバラツキを知ることができる。
本発明に係る超小角X線散乱測定の測定結果表示方法によれば、(面内角度φ、散乱角度2θ、散乱線強度I)の測定データを、直交座標上に表示するのではなく、qφ極座標上に強度Iの強弱情報として3次元的に表示するようにしたので、配向性試料の結晶構造の対称性を極めて容易に且つ正確に判断できるようになった。また、配向性試料の中に複数の微結晶が含まれる場合には、それらの微結晶の存在を極めて容易に且つ正確に判断できるようになった。
本発明に係る超小角X線散乱測定に基づく配向度の解析方法によれば、実験室レベルのX線小角測定装置のように1つの方向(例えば、縦方向)に無限焦点サイズを有するX線を用いて超小角X線散乱測定を行う場合であっても、注目する結晶格子面からの散乱線強度分布を正確に知ることが可能となり、それ故、配向性を持った物質の格子面の配向度や格子面間隔のバラツキ等を正確に知ることができる。つまり、本発明によれば、配向性試料の結晶性を高い信頼性で評価できる。
以下、本発明に係る超小角X線散乱測定の測定結果表示方法及び配向度の解析方法を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を参照するが、その図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
図9は、本実施形態に係る超小角X線散乱測定装置11を示している。ここに示す超小角X線散乱測定装置11は、X線発生装置12と、X線処理室13と、入射モノクロメータ室14と、試料室15と、アナライザ室16と、X線検出器17とを有する。X線発生装置12からX線検出器17へ至るX線光路は図示しない減圧装置の働きによって真空又はそれに近い減圧状態に保持されている。
図10は、図9の超小角X線散乱測定装置11の内部構成を示している。図10においては、矢印X,Y,Zで示す3次元空間を念頭に置く。XY平面は水平面であり、Z方向は垂直方向である。本実施形態の場合、XY平面は赤道面に相当し、Z方向は緯度方向に相当する。赤道面は、X線光軸Xを含み散乱角2θの中心となる2θ軸線に直角な平面である。また、赤道面に直交する方向、すなわちZ方向は緯度方向と呼ばれることがある。
X線発生装置12は、X線を発生するX線源としてのX線実焦点Fと、X線実焦点Fを包囲するハウジング21とを有する。X線実焦点Fから発生したX線はハウジング21に設けられたX線取出し窓22を通して外部へ取出される。X線を発生するX線源は、例えば図11に示すように、ロータターゲット(すなわち、回転対陰極)23と、それに対向するフィラメント(すなわち、陰極)24とを有する。フィラメント24に通電が成されると、そのフィラメント24から熱電子が放出され、その熱電子がターゲット23へ衝突する領域がX線実焦点Fである。
本実施形態では、ターゲット23の表面をCuによって形成し、CuKαの特性X線を用いて測定を行うものとする。また、X線実焦点FからのX線の取出し角度αは6°であり、6°の視射角での実効焦点サイズdを0.08mmφ(又は0.08mm×0.08mmの角が丸まった四角)に設定した。つまり、0.08mmφの焦点サイズのポイントフォーカスのX線を取出すことにした。なお、X線焦点サイズとしては、0.05mmφ以上0.1mmφ以下のサイズを採用できる。因みに、0.5mm×1mmの従来の焦点サイズに対しては18kWの回転対陰極型のX線源を用いていたが、0.05mmφ以上0.1mmφ以下、望ましくは0.08mmφの焦点サイズに対しては0.8kW又は1.2kWの回転対陰極型のX線源を用いることができる。図10において、X線実焦点Fから取出されたX線は、X線処理室13、入射モノクロメータ室14、試料室15、そしてアナライザ室16を通ってX線検出器17に取り込まれるが、X線実焦点FからX線検出器17へ至るX線光路の中心軸線をX線光軸Xということにする。X線実焦点Fから出たX線の進行方向が何等かの光学要素によって変化させられる場合には、X線光軸1はそのX線の進行方向の変化に従って変化する。
X線処理室13の内部にX線平行化ミラー26が設けられている。このX線平行化ミラー26は、図12(a)に示すように、互いに直角を成して接合された一対のX線反射ミラーである第1ミラー26a及び第2ミラー26bによって形成されている。第1ミラー26a及び第2ミラー26bのX線反射面27は、図12(b)に示すように、放物面となっている。また、X線反射面27は、重元素層28と軽元素層29との積層構造によって形成されている。図では、重元素層28と軽元素層29の層対が3対のみ示されているが、実際には、この層対は数百〜数千個設けられる。
重元素層28を構成する重元素としては、例えばタングステン(W)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)を用いることができる。また、軽元素層29を構成する軽元素としては、例えば炭素(C)、珪素(Si)を用いることができる。本実施形態では、重元素としてニッケルを用い、軽元素として炭素を用いることにする。ニッケルと炭素とを用いた場合に、超小角X線散乱測定に適した最も強度の強い平行X線を得ることができた。
X線実焦点Fから発生したX線がミラー26a,26bに入射したとき、X線の波長を「λ」、X線の入射角度を「θ」、層対28,29の厚さに相当する格子面間隔を「d」とすれば、周知のブラッグの回折条件
2dsinθ=nλ
が満たされたときに、回折X線が発生する。なお、上式において「n」は反射次数である。
本実施形態において、層対28,29によって形成される格子面間隔dは特定波長、例えばCuKα線に対してX線反射面27の任意の位置でブラッグの回折条件を満足するように放物面27に沿って連続的に変化する状態に形成されている。このような多層膜の製造は、例えば特開昭60−7400号公報に開示された方法に基づいて行うことができる。ミラー26a,26bのX線反射面27はこのように各点においてX線を回折できる複数の層対28,29によって形成されているので、X線実焦点Fから放射されてX線反射面27で回折したX線は平行X線ビームとなってミラー26a,26bから出射する。しかも、この平行X線ビームは、多層膜の各層対から発生したものであるので、強度が非常に強い。
図12(a)において、第1ミラー26a及び第2ミラー26bへ入射したX線は、それらのミラー26a,26b間で交互に反射を繰り返した後、平行X線ビームとして出射する。この場合、第1ミラー26aと第2ミラー26bは互いに直角の位置関係にあるので、出射したX線ビームは、図10に符号Bで示すように断面がひし形形状の平行ビーム、すなわち2次元的に平行化されたビームとなっている。
また、第1ミラー26a及び第2ミラー26bはそれぞれ垂直軸(Z軸)及び水平軸(Y軸)に対して45°の角度で傾けられている。そのため、X線ビームのひし形の断面形状Bは、赤道面(XY平面)内方向及び垂直方向Zに対角線を有するひし形形状となっている。X線平行化ミラー26を45°の角度で傾けるのは、平行X線ビームを赤道面(XY平面)内に取出し易くするためである。なお、X線平行化ミラーを傾けないで使用すると、まず第1に、反射ビームは赤道方向に対して45°傾いた方向に出射する。第2に、縦方向の反射ミラーを横方向の反射ミラーに分離してそれぞれ1回反射を使用した場合、反射ミラーに入射する立体角度が小さくなり強度が稼げないと共に、緯度方向の発散角が大きくなり入射ビームの平行性が悪くなる。これらのことを解消するためにも、X線平行化ミラー16は45°傾いた状態で使用されることが望ましい。
なお、図12(c)において、X線平行化ミラー26を構成する第1ミラー26a及び第2ミラー26bから出射する平行X線ビーム内の個々のX線ビームを見ると、個々のX線ビームは広がり角度δを持っている。この広がり角δは、放物面多層膜ミラー26a,26bに関してロッキングカーブを測定したときに、そのロッキングカーブのピーク幅、一般的には半値幅として与えられる。多層膜の層対を重元素であるニッケルと軽元素である炭素とによって形成した本実施形態では、ミラー26a,26bそれ自体によるX線ビームの広がり角度δは約0.04°であった。
このようにミラー26a,26bそれ自体によるX線ビームの広がり角度δは約0.04°であるが、本実施形態では、X線平行化ミラー26を45°の角度で傾けて使用するので、実際の使用時でのX線平行化ミラー26によるX線ビームの広がり角度は、
0.04×(1÷sin45)=0.057(約0.06°)
となる。つまり、図10において、X線平行化ミラー26から出射する2次元方向に平行なX線ビームは、Y方向及びZ方向に関して約0.06°の広がり角で分散するビームの集まりによって形成されている。
X線実焦点Fから発生し、0.08mmφの焦点サイズで取出されたポイントフォーカスのX線は、発散しながらX線平行化ミラー26のX線入射口から取り込まれる。この場合、発散するX線の断面サイズがX線平行化ミラー26のX線入射口の開口面積よりも小さ過ぎると十分な強度のX線が得られないし、X線の断面サイズが大き過ぎるとX線実焦点Fから出たX線のうち無駄に消費されるX線が多くなる、という不都合が発生する。本実施形態では、X線実焦点FからX線平行化ミラー26の中心位置までの距離Lを約125mm(X線入射口までは85mm)に設定し、X線入射口を1.3mm×1.3mmに設定することにより、X線実焦点Fから出たX線が無駄に消費されること無くX線平行化ミラー26によって取り込まれるようにし、強い強度の平行ビームが得られるように構成している。
なお、X線の実効焦点サイズを「F」とし、ロッキングカーブの半価幅を「w」とし、X線源とX線平行化ミラーの中心との間の距離を「L」とすれば、
=tan(w)×L
とすることが望ましい。例えば、ロッキングカーブの半価幅を0.04°とすると、X線源とX線平行化ミラーの中心との間の距離が125mmのときは、X線の実効焦点サイズFは0.087mmφが丁度良いことになる。また、Fが0.05mmφのときのX線源−ミラー間距離の最適値は約71mmであり、Fが0.1mmφのときのX線源−ミラー間距離の最適値は約143mmとなる。本発明者の考察によれば、直径0.05mm以上0.1mm以下のX線焦点サイズに対応してX線源−ミラー間距離Lは70mm≦L≦145mmであることが望ましいことがわかった。
次に、図10において、入射モノクロメータ室14内に第1結晶としての入射モノクロメータ32が設けられている。試料室15内に測定対象である試料Sが、試料支持装置34によって支持されて設けられている。また、アナライザ室16内に第2結晶としてのアナライザ33が設けられている。入射モノクロメータ32は、試料Sへ入射するX線を単色化及び赤道面(XY平面)内で平行化する作用を奏する。赤道面内で平行化するとは、赤道面内でのX線の発散を規制するということである。アナライザ33は試料Sから発生した散乱線から特定波長成分を選択してX線検出器17へ向かわせる作用を奏する。
モノクロメータ32及びアナライザ33は、いずれも、図13(a)に示すチャネルカット結晶35によって形成されている。チャネルカット結晶35は、例えば、ゲルマニウムの完全結晶のブロックに溝加工を施すことによって形成されている。溝加工によって形成された溝の両側面がX線反射面となっている。X線反射面にはゲルマニウム単結晶の結晶格子面が所定の格子面間隔で平行に配列されており、チャネルカット結晶35に入射したX線Rは一対のX線反射面で複数回、例えば4回反射した後に、XY平面内で平行なX線Rとして出射する。チャネルカット結晶35の長さL2は、X線反射面においてX線が4回反射できる程度の長さに設定されている。なお、X線反射面におけるX線の反射の回数は4回に限られず、2回又はそれ以外の回数であっても良い。
本実施形態では、図10に示すように、モノクロメータ32及びアナライザ33に断面ひし形形状の平行X線ビームが入射する。モノクロメータ32及びアナライザ33を構成するチャネルカット結晶35のX線反射面に入射した断面ひし形形状の平行X線ビームは、図13(b)において、XY平面内の発散を規制されて平行化され、同時に単色化される。このとき、出射ビームRを構成する個々のビームのXY平面内での広がり角度δをロッキングカーブ測定によって半値幅として測定したところ、δ=約0.002°であった。チャネルカット結晶35はZ方向に関してはX線の分散を規制する機能を持っていないので、チャネルカット結晶35から出射した平行X線ビームRのZ方向の広がり角度はチャネルカット結晶35に入射するX線ビームのZ方向の広がり角度そのものである。このZ方向の広がり角度は図10のX線平行化ミラー26によって規制される広がり角度δ(図12(c)参照)そのものであり、本実施形態の場合は、既述の通りδ=約0.06°である。
以上から明らかなように、図10において、試料Sに入射するX線は、X線平行化ミラー26及びモノクロメータ32によって赤道面(XY面)内及び緯度方向の2次元方向に高精度に平行化される。具体的には、赤道面内の発散角が約0.002°に規制され、緯度方向(Z方向)の発散角が約0.06°に規制される。
次に、試料室15内の試料Sは試料支持装置34によって支持されている。試料支持装置34は、図14(a)に示すように、XYステージ36、ω回転系37、φ回転系38、及びχ回転系39を有している。試料Sはχ回転系39によって支持され、χ回転系39はφ回転系38上に搭載され、φ回転系38はω回転系37上に搭載され、ω回転系37はXYステージ36上に搭載されている。
各回転系のうちω回転系37は試料Sを微細な角度単位、例えば0.0001°の単位で回転移動させてその試料Sの角度位置を変化させるための系である。その他の回転系は、例えば0.01°程度の単位で試料Sを回転移動する。各回転系は任意の微細回転駆動機構、例えばタンジェントバー方式の駆動機構によって構成できる。駆動源としてはパルスモータ、サーボモータ等といった位置制御可能な電動モータを用いることが望ましい。また、XYステージ36は周知の平面平行移動機構、例えば位置制御可能な電動モータによって回転駆動される送りネジ軸とその送りネジ軸にネジ嵌合するスライド部材を用いて構成できる。
ω回転系37はω軸線を中心とする試料Sの角度位置を変化させる。ω軸線はZ方向に延在し且つ移動しない軸線である。ω軸線を中心とする試料Sの回転移動をω回転と呼ぶことにする。φ回転系38は試料Sを横切るφ軸線を中心とする試料Sの角度位置を変化させる。φ軸線は試料Sのω回転に伴って回転移動する軸線である。φ軸線を中心とする試料Sの回転移動をφ回転又は面内回転と呼ぶことにする。χ回転系39は試料Sの表面を通るχ軸線を中心とする試料Sの角度位置を変化させる。χ軸線は試料Sのω回転及びφ回転に伴って回転移動する軸線である。χ軸線を中心とする試料Sの回転移動をχ回転、傾斜移動、又はあおり移動と呼ぶことにする。
今、図14(b)に示すようにω=0、φ=0、χ=0の場合にω軸線がZ方向に在り、φ軸線がX方向に在ってX線光軸Xと一致し、χ軸線がω軸線及びφ軸線に直交するとする。この状態から、試料Sをω軸線の回りに0°からωまでω回転すると、図15(a)に示すように試料Sがω軸線を中心として角度ωだけω回転し、φ軸線及びχ軸線の両方がω軸線を中心として角度ωだけ回転移動する。
また、ω=φ=χ=0の状態(図14(b)の状態)から、試料Sをφ軸線の回りに0°からφまでφ回転すると、図15(b)に示すように試料Sがφ軸線を中心として角度φだけφ回転し、ω軸線は不動でχ軸線がφ軸線を中心として角度φだけ回転移動する。また、ω=φ=χ=0の状態(図14(b)の状態)から、試料Sをχ軸線を中心として角度χだけχ回転すると、図15(c)に示すように試料Sがχ軸線を中心として角度χだけχ回転し、ω軸線及びφ軸線は不動である。
図10に示すアナライザ室16の内部において、ゲルマニウムのチャネルカット結晶から成るアナライザ33がアナライザ支持装置41によって支持されてX線光軸X上の所定位置に設けられている。アナライザ支持装置41は、X線光軸Xに直交し且つ垂直方向(Z方向)に延在する2θ軸線を中心としてアナライザ33を回転移動させる。この回転移動により、2θ軸線を中心とするアナライザ33の角度位置を変化させることができる。この場合のアナライザ33の角度位置を2θ角度位置と呼び、アナライザ33の2θ軸線を中心とする回転を2θ回転と呼ぶことにする。2θ方向は赤道面(XY平面)内の方向である。
アナライザ支持装置41は、アナライザ33を2θ軸線の回りに回転移動する機能を有すると共に、アナライザ33を矢印Eで示すようにX線光軸Xに対して直角方向に平行移動させる機能、又はアナライザ33を矢印Hで示すように試料Sを通るω軸線の回りに回転移動させる機能を有している。これらのE方向への平行移動又はH方向への旋回移動は、アナライザ33による散乱線の検出範囲を段階的に変化させて、アナライザ33による散乱線の検出領域を広げるためのものである。
試料支持装置34によって試料Sを平行移動及び/又は回転移動させると共にアナライザ支持装置41によってアナライザ33を2θ軸線の回りに回転移動させながらX線検出器17によってX線を検出することにより、試料Sの内部に在る結晶粒子からの散乱線を検出することができる。
X線検出器17は0次元X線検出器、例えばSC(Scintillation Counter)によって構成されている。SCは周知の通り図16に示すように適宜の面積のX線取込み口42を有している。このX線取込み口42によってX線Rを取り込む領域がX線検出領域D(図22(b)参照)である。X線検出器17は位置分解能を有しておらず、X線取込み口42から取り込んだX線を合計、すなわち積分して1つのX線強度信号として出力する。なお、本実施形態においてX線取込み口42の直前のX線の断面形状は、図10に示すように、対角距離(Z方向長さ)が約2mmで、一辺が約1.4mmのひし形形状である。これに対し、X線取込み口は25mm×25mm程度の大きさである。
図10において、X線平行化ミラー26の後方のX線光軸X上にアッテネータ43が設けられている。このアッテネータ43はアブソーバとも呼ばれるX線光学要素であり、X線実焦点Fから発生したX線の強度をX線を吸収できる物質によって減衰するものである。X線を吸収できる物質としては、例えばAl(アルミニウム)を用いることができる。通常は、複数種類の厚さのアルミニウムの板材を選択的にX線光軸X上に置くことにより、X線を希望の減衰率で減衰させている。このようにアッテネータ43を使ってX線を減衰するのは、本実施形態の超小角X線散乱測定装置の2θ測定領域が超小角領域、例えば0.08°以下の角度領域であり、この角度領域内におけるダイレクトビームの強度を抑えるためである。
入射モノクロメータ32の前方及び後方のX線光軸X上に4象限スリット44a及び44bが設けられている。4象限スリットとは、左右(Y方向)の2方向及び上下(Z方向)の2方向の4つの方向のスリット幅をそれぞれ個別に調節できるスリットである。モノクロメータ22の上流側に在る4象限スリット34aはX線平行化ミラー16で発生する1回反射及びその他の余分な反射をカットし、必要とする2回反射だけを取り出すことができる。一方、モノクロメータ2の下流側に在る4象限スリット34bはKα2をカットしてKα1だけを取り出すことができる。
図17は本実施形態の超小角X線散乱測定装置の制御系及び表示系の構成の一実施形態を示している。図17において、超小角X線散乱測定装置11は図9に同じ符号で示す超小角X線散乱測定装置であり、X線検出器17は図9及び図10に同じ符号で示すX線検出器である。これらの機器の動作は制御装置51によって制御される。
制御装置51は、CPU(Central Processing Unit:中央制御演算装置)52と、ROM(Read Only Memory)53と、RAM(Random Access Memory)54と、記憶媒体55と、それらを接続する信号線であるバス56とを有するコンピュータによって構成されている。CPU52はプログラムソフトに従った演算及び各種機器の制御を行う。RAM53は一時的な記憶領域を提供するテンポラリファイルとして機能する。ROM54はCPU52にとって基本的な情報を記憶している。
記憶媒体55は、例えば、ハードディスク、MO(Magneto-optic:光磁気)ディスク等といった機械メモリや、半導体メモリによって構成できる。記憶媒体55の第1ファイル55a内には超小角X線散乱測定プログラム57、解析プログラム58、及び画像計算プログラム59の各プログラムソフトが記憶されている。記憶媒体55の第2ファイル55b内には、測定結果のデータを記憶するための測定データファイル60、解析後のデータを記憶するための解析データファイル61、画像データを記憶するための画像データファイル62が設けられている。第1ファイル55a及び第2ファイル55bは1つの同じファイルとして設けても良いし、それぞれ独立した別々のファイルとして設けても良い。
バス56には入出力装置として、超小角X線散乱測定装置11、X線検出器17、VRAM64、ディスプレイ65、入力装置66が接続されている。ディスプレイ65は、CRTディスプレイ、液晶表示ディスプレイ等といった画像表示装置である。入力装置66は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、その他の情報入力用機器によって構成される。なお、図17の実施形態では、1つのコンピュータによって超小角X線散乱測定、解析、画像計算を行う場合を例示しているが、それら3つの機能を異なるコンピュータによって実現するようにして、各コンピュータ間を有線又は無線の信号線を介して連結することもできる。以下、図18及び図19に示すフローチャートを参照して測定方法及び解析方法を具体的に説明する。
(超小角X線散乱測定)
図17において入力装置66を通して測定開始の指示が成されると、図18のステップS1においてYESと判断されてステップS2の超小角X線散乱測定ルーチンに入る。測定者は構造解析を希望する配向性試料、例えばコロイド単結晶を図10の試料室15内の試料支持装置34に試料Sとして装着する。装着された試料SはX線光軸X上に配置される。CPU52は試料支持装置34を作動して、試料Sを必要に応じてXY平行移動、ω回転、及びχ回転させて、試料Sを所望の姿勢にセットする。また、試料Sの面内角度(φ角度)位置を所定のゼロ基準位置にセットする。
次に、X線発生装置12内においてX線実焦点FからX線を発生して、2次元的に平行化された断面ひし形形状の平行X線ビームを試料Sに照射する。この場合の入射X線は、多層膜放物面ミラーであるX線平行化ミラー26によって高精度に2次元的に平行化されていて強度が非常に強いX線であり、さらにモノクロメータ32によって単色化及びさらに高精度に平行化されたX線である。
モノクロメータ32から出射した平行X線束が試料Sに照射されると、試料Sの特性に応じて超小角領域内に散乱線が発生する。この散乱線はアナライザ33によって分光、すなわち、必要な波長のものだけが選択され、その選択された散乱線の強度がX線検出器17によって測定される。この測定は、図15(b)に示すようにφ軸線回りの試料Sの面内角度φを所定のステップ間隔で変化させながら、且つ、図10のアナライザ33の2θ軸線回りの角度2θを適宜のステップ幅で間欠的に変化させながら、又は所定の回転角速度で連続的に変化させながら行われる。面内角度φは−30°≦φ≦90°程度の角度範囲内で行われ、散乱角度2θは0°≦2θ≦5°程度の角度範囲内で行われる。
アナライザ33を矢印E方向へ所定距離だけ平行移動させるか、又は矢印H方向へ所定角度だけω軸線を中心として回転移動させることにより、アナライザ33による散乱線の検出角度範囲を段階的に広げることができる。本発明者の実験によれば、アナライザ33の段階的な移動により検出範囲を6°まで広げることができた。
以上の測定により、(面内角度位置φ、散乱線角度2θ、散乱線強度I)の測定データが個々のφ値及び個々の2θ値に対して求められる。こうして求められた(φ、2θ、I)の測定データは、図17において記憶媒体55内の測定データファイル60内に記憶される。
従来のボンゼ・ハート光学系のように、X線平行化ミラー26を用いることなく、モノクロメータ32だけによってX線を単色化及び平行化していた従来装置と、本実施形態の光学系とを比べると次のことが挙げられる。
(1)試料SとX線検出器17の受光面との間の距離を200mmとしたとき、緯度方向(Z方向)におけるX線の発散角度が、従来装置では約0.28°であり、本実施形態の装置では0.06°である。つまり、緯度方向のX線の発散角度が格段に抑えられて、X線の平行性が格段に向上した。これにより、緯度方向に発生する散乱線を明確に捕えることが可能になった。
(2)試料Sに入射するX線の強度に関して、X線平行化ミラー26を用いない従来の装置に比べて、本実施形態の装置は約3倍の強度が得られた。これにより、試料Sから十分な強度の散乱線を得ることが可能となり、測定の信頼性を高めることができた。
(3)従来のボンゼ・ハート光学系は、できるだけ強度の強いX線を得るためにX線源として大きな焦点サイズのラインフォーカスのX線を用いていた。しかしながら、この方法では、異なる2方向(すなわち、2次元方向)でX線ビームの平行性と強度の両方を得ることが難しかった。これに対し、本実施形態では、微小焦点のポイントフォーカスのX線と、放物面多層膜によって形成したX線平行化ミラーと、ゲルマニウムやシリコン等のチャネルカット結晶によって形成したモノクロメータと、同じくチャネルカット結晶によって形成したアナライザとの組合せによって、従来のボンゼ・ハート光学系では実現できなかった、2次元方向でのX線の平行性と高強度とが得られるようになった。
(4)本実施形態では、モノクロメータ32に入射するX線をX線平行化ミラー26によって高精度に平行化するので、チャネルカット結晶によって形成されたモノクロメータ32でのX線強度の減衰を小さく抑えることができる。
(測定結果の表示)
以上により超小角X線散乱測定が終了した後、測定者が測定結果の表示を希望する場合には、測定者は図17の入力装置66を介してその旨を指示する。すると、図18のステップS3においてYESと判断されて制御はステップS4へ進む。ステップS4では、CPU52は図17の画像計算プログラム59を起動し、1つの試料Sに関して求められた(φ、2θ、I)の測定データを読み出す。画像計算プログラム59は(φ、2θ、I)のデータを(φ、q,I)に変換し、その(φ、q,I)のデータに基づいて画像データ、例えばB,G,Rの画像信号を生成し、その画像データをVRAM64へ転送する。ディスプレイ65はVRAM64の出力信号に従って画面上に画像を表示する。例えば、図2に示すようにqI平面座標上でφ値をパラメータとした散乱線強度Iの波形表示が行われる。画像計算プログラム59によって作成された画像データは、必要に応じて、画像データファイル62に記憶される。
測定者が図4に示すようなqφ極座標表示を見たいと思う場合は、測定者は図17の入力装置66を介してその旨を指示する。すると、図18のステップS5においてYESと判断され、ステップS6の極座標表示のルーチンへ進む。ステップS6では、CPU52は図17の解析プログラム58を起動して(φ、2θ、I)の測定データをqφ極座標上のデータ(φ、q、I)へと変換する。さらにCPU52は画像計算プログラム59を起動して、変換後の(φ、q、I)極座標データに基づいて画像データ、例えばB,G,Rの画像信号を生成し、その画像データをVRAM64へ転送する。ディスプレイ65はVRAM64の出力信号に従って画面上に画像を表示する。例えば、図4に示すqφ極座標上に測定結果が表示される。解析プログラム58に基づいて行われた解析の結果データは、必要に応じて解析データファイル61に記憶される。
図4のグラフにおいて同一径の円環を観察すれば、結晶の対称性を直感的に簡単に識別できる。また、円環の数及び角度等を観察することにより、微結晶が混在していることを直感的に簡単に識別できる。
(測定結果の解析)
次に、測定者が配向性試料に関して結晶性を観察したいと思う場合、例えば、結晶の配向度のバラツキや格子面間隔のバラツキ等を観察したいと思う場合は、測定者は図17の入力装置66を介してその旨を指示する。すると、図18のステップS7でYESと判断され、ステップS8の解析ルーチンへ進む。ステップS8では、CPU52は図17の解析プログラム58を起動する。解析プログラムが起動すると、図19のステップS11において図17の測定データファイル60から1つの試料に関する測定データ(φ、2θ、I)が読み出される。このデータは仮に1次プロファイルとして表示すれば図2に示すようなプロファイルとなるものである。
次に、ステップS12において、図20(a)に示すように、目標とする1つの格子面に関するピーク波形を全ての測定データから分離する。この分離されたピーク波形は1つの格子面のφ角度を変化させたときの個々のφ角度における散乱線強度Iobs(x)である。次に、分離した散乱線強度Iobs(x)の全てについてステップS13において半値全幅Wを計算によって求める。求められたW値を仮にグラフによって示すとすれば、図20(b)に示すような実測のピーク幅曲線Wobsが求められる。図20(b)においてφ=90°のときにW=Wminをとり、φ=0°のときにW=Wmaxをとることは、図8に関連して行った説明から理解されることである。
次に、CPU52は、各φ値に対して求められた複数のW値の中から、ステップS14において最小値Wmin及び最大値Wmaxを計算によって求める。図8に関連して説明した通り、最小値Wminは図8(a)に示すφ=90°時(図2のqmax時、すなわちφ=10°時)のW値によって与えられる。また、最大値Wmaxは図8(c)に示すφ=0°時(図2のq=0°時、すなわちφ=100°時)のW値によって与えられる。この場合、Wmaxを与える図2におけるq=0°の状態は、散乱角度2θ(q)が0°近傍のときに散乱線が現れるという状態であり、この場合にはダイレクトビームの存在によって散乱線を実測できず、従ってWminも実測できない。このため、Wminは図20(b)のWを示す曲線の外挿によって求めるものとする。
以上によりWmin及びWmaxが求められた後、既に説明した
Figure 0004994722
及び
Figure 0004994722
の各式を用いて、図19のステップS15において、シミュレーションのためのσμ及びσの第1次の近似値を計算によって求める。
次に、今求めたσμ及びσを用いて、ステップS16において図7(a)のアーク状散乱線プロファイルIを例えば式(15)を用いてφ値ごとに計算によって作成する。さらに、ステップS17において無限ハイト焦点に起因するスメアリングを考慮した縦方向の積分を行ってφ値ごとの散乱線強度波形Ical(x)を計算によって求める。このIcal(x)を平面座標上に描くとすれば図20(a)のIobs(x)に近似するグラフが得られるはずである。
また、CPU52はφ値ごとに求められた複数のIcal(x)の個々に関してピーク幅の半値全幅Wcalを計算によって求める。このWcalをグラフによって示せば、図20(c)に示すように、実測のWobsに近似する曲線として与えられるであろう。図20(c)におけるWobs曲線及びWcal曲線の傾きは、図20(a)において矢印Jで示すように散乱線強度Iobs(x)又はIcal(x)がφ値の変化に応じて変化するときの、ピーク幅Wの変化の速さを示している。つまり、図20(c)に示した状態は、実測されたピーク幅Wobsの変化の速さの方が計算によってシミュレートされたピーク幅Wcalの変化の速さよりも速いこと、換言すれば実測結果の方がシミュレート予測よりもブロードニングの仕方が速いことを示している。
図19のステップS18では、実測値と計算値との間で、ピーク幅Wの広がり方(ブロードニング)の速さが比較され、一致しないか又は誤差が所定の許容範囲を外れる場合(ステップS18でNO)は、ステップS19へ進んでσμの値を修正し、Ical(x)を再度計算し、再計算後のIcal(x)をIobs(x)と再度比較する。この処理を繰り返し、ピーク幅Wの広がり方(ブロードニング)の速さが実測値と計算値との間で一致又は許容範囲内になったときに、そのときのσμの値を真のσμと決定する(ステップS20)。
次に、ステップS21において、実測値と計算値との間で、散乱線強度Iobs(x)と散乱線強度Ical(x)の縦方向の絶対値が比較され、一致しないか又は誤差が所定の許容範囲を外れる場合(ステップS21でNO)は、ステップS22へ進んでσの値を修正し、Ical(x)を再度計算し、再計算後のIcal(x)をIobs(x)と再度比較する。この処理を繰り返し、絶対値が実測値と計算値との間で一致又は許容範囲内になったときに、そのときのσの値を真のσと決定する(ステップS23)。
以上により決定された真のσμ及びσの値は、必要に応じて図17のディスプレイ65の画面上に表示される(ステップS24、S25)。この場合のσμ及びσの表示の仕方は、単に数値を数字の形で表示するものであっても良いし、何等かの絵柄、模様等を伴うものであっても良い。σμは散乱線強度の配向方向の半値幅であるので、σμを知ることにより測定者は試料の配向度を知ることができる。また、σは散乱線強度の散乱角方向の半値幅であるので、σを知ることにより測定者は試料の格子面間隔の分布を知ることができる。こうして、縦方向に無限高さの焦点を有するX線を試料に照射する構成のボンゼ・ハート光学系を用いた超小角X線散乱測定によって試料の結晶性、すなわち配向度及び格子面間隔のバラツキを知ることができる。なお、解析によって得られたデータは、必要に応じて解析データファイル61に記憶される。
以上により解析処理が終わると、制御の流れは図18のメインルーチンへ戻り、ステップS9において測定の終了が測定者によって行われたか否かが判断され、終了の指示が行われていなければ(ステップS9でNO)ステップS1へ戻って制御を繰り返す。終了の指示が有れば(ステップS9でYES)、制御を終了する。
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
例えば、図10に示したX線発生装置12、試料支持装置34、アナライザ支持装置41、X線検出器17に関しては、それらの構成を必要に応じて変更できる。また、4象限スリット44a,34bは用いないことにすることもできる。また、X線平行化ミラー26を用いなくても超小角X線散乱測定に関して十分な強度のX線が得られる場合にはX線平行化ミラー26は設けなくても良い。
本発明に係る超小角X線散乱測定装置の一実施形態を示す斜視図である。 従来の測定結果の表示方法の一例を示すグラフである。 試料へのX線の照射方法を示し、(a)は“Through View”を示し、(b)は“Edge View”を示している。 本発明に係る超小角X線散乱測定の測定結果の表示方法の一実施形態を示すグラフである。 従来の測定結果の表示方法の他の一例を示すグラフである。 本発明に係る超小角X線散乱測定の測定結果の表示方法の他の実施形態を示すグラフである。 散乱線強度のモデル化を説明するための図である。 散乱線強度のモデル化を説明するための図であって、σ及びσμの第1次近似値を説明するための図である。 本発明に係る超小角X線散乱測定装置の一実施形態を示す斜視図である。 図9の超小角X線散乱測定装置の内部構造を示す斜視図である。 X線発生装置の一例を示す図である。 X線平行化ミラーの一例を示す図であり、(a)は外観を示し、(b)は内部の多層膜構造を示し、(c)はX線の広がり特性を示している。 モノクロメータ及びアナライザの一例を示す図であり、(a)は外観を示し、(b)はX線の広がり特性を示している。 試料支持装置の一例を示す図であり、(a)は全体の構成を示し、(b)は機能を示している。 図14(a)に示す試料支持装置の機能を説明するための図である。 X線検出手段の一例を示す斜視図である。 本発明に係る超小角X線散乱測定装置に含まれる制御系及び表示系の一実施形態を示すブロック図である。 図17に示す制御装置によって実行される制御の流れを示すフローチャートである。 図18に示すフローチャート内の主要工程を示すフローチャートである。 本発明に係る超小角X線散乱測定に基づく配向度の解析方法を説明するためのグラフであり、(a)はピーク分離工程を示し、(b)は(a)におけるピーク幅Wの変化を示し、(c)は実測のピーク幅Wobsと計算のピーク幅Wcalを示している。 試料に放射光を照射した場合の散乱線の発生状態を模式的に示す図である。 スメアリング現象Wお説明するための図である。
符号の説明
1a.第1チャネルカット結晶、 1b.第2チャネルカット結晶、 2.配向性物質、
3a〜3d、5a,5b,6a,6b,7a〜7f.円環、 4.マーク、
11.超小角X線散乱測定装置、 12.X線発生装置、 13.X線処理室、
14.入射モノクロメータ室、 15.試料室、 16.アナライザ室、
17.X線検出器、 21.ハウジング、 22.X線取出し窓、 23.ターゲット、
24.フィラメント、 26.X線平行化ミラー、 26a.第1ミラー、
26b.第2ミラー、 27.X線反射面、 28.重元素層、 29.軽元素層、
32.入射モノクロメータ(第1結晶)、 33.アナライザ(第2結晶)、
34.試料支持装置、 35.チャネルカット結晶、 36.XYステージ、
37.ω回転系、 38.φ回転系、 39.χ回転系、 41.アナライザ支持装置、
42.X線取込み口、 43.アッテネータ, 44a,44b.4象限スリット、
51.制御装置、 55.記憶媒体、 55a,55b.第1ファイル、第2ファイル,
56.バス、 65.ディスプレイ、 66.入力装置、 B.ひし形ビーム、
D.X線検出領域、 F.X線焦点(X線源)、 I.デバイリング、
.散乱線パターン、 O.極原点、 Q.連絡線(円環)、 P,P.切断線
.放射光、 R〜R.X線、 S.試料、 K1〜K6.回折スポット、
.散乱線プロファイルの幅、 δ,δ.広がり角度、

Claims (12)

  1. X線の進行方向に関して試料の上流側に第1結晶を設け、前記試料の下流側に第2結晶を設け、該第2結晶の下流側にX線検出器を設け、
    前記第1結晶でのX線回折によりX線を1つの方向に関してスメアリングを無視できる程度まで細く平行化し、
    前記X線の進行方向に直交する面内における前記試料の面内(φ)角度位置を変えると共に、前記X線の進行方向に直交する軸線である2θ軸線を中心とする前記第2結晶の角度(2θ)位置を変えながら、
    前記1つの方向に関して細く平行化された前記X線を前記試料へ照射し、
    そのX線照射に応じて前記試料から出射した散乱線を前記第2結晶で分光した後に前記X線検出器によって受光し、
    前記X線検出器の出力に基づいて散乱線強度(I)を求め、
    前記第2結晶の角度(2θ)位置を径方向にとり、前記試料の面内(φ)角度位置を円周方向にとった極座標上に、測定結果のデータであるI(φ、2θ)のデータをプロット、又は2θをqに置き換えてI(φ、q)をプロット
    前記散乱線強度(I)は視覚によって識別できる状態で強度の違いが表示される
    ことを特徴とする超小角X線散乱測定の測定結果表示方法。
  2. 請求項1記載の測定結果表示方法において、前記1つの方向に直交する方向に関してはスメアリングを無視できる程度までのX線の平行化を行わないことを特徴とする超小角X線散乱測定の測定結果表示方法。
  3. 請求項1又は請求項2記載の測定結果表示方法において、前記散乱線強度(I)は色の濃淡又は色相の違いによって強度の違い表示されることを特徴とする超小角X線散乱測定の測定結果表示方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の測定結果表示方法において、前記極座標上において前記散乱線強度(I)が局所的に強い複数の点を連ねる連絡線を描くことを特徴とする超小角X線散乱測定の測定結果表示方法。
  5. 請求項4記載の測定結果表示方法において、前記連絡線上の点であって前記極座標の原点から最も遠い位置にある点にマークを描くことを特徴とする超小角X線散乱測定の測定結果表示方法。
  6. 請求項4又は請求項5記載の測定結果表示方法において、前記連絡線は円環形状であり、該円環形状の連絡線は複数個形成され、該複数個の連絡線は円環の大きさに関してグループ分けでき、同じグループに属する複数の連絡線は同じ半径で表示されることを特徴とする超小角X線散乱測定の測定結果表示方法。
  7. 請求項6記載の測定結果表示方法において、前記同じ半径の連絡線は、色が同じ又は線のパターンが同じであることを特徴とする超小角X線散乱測定の測定結果表示方法。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の測定結果表示方法において、前記極座標上における前記試料の面内(φ)角度位置の目盛り表示は角度10°間隔以下であることを特徴とする超小角X線散乱測定の測定結果表示方法。
  9. (A)実測散乱線強度Iobsを実測によって求める実測工程と、
    (B)散乱線強度の散乱角方向(q方向)の半値幅であるσの項及び散乱線強度の配向方向(μ方向)の半値幅であるσμの項を含んだ散乱線強度のモデル式にσ及びσμの値を代入して計算散乱線強度Icalを求める計算工程とを有し、
    (C)前記実測工程においては、
    X線の進行方向に関して試料の上流側に第1結晶を設け、前記試料の下流側に第2結晶を設け、該第2結晶の下流側にX線検出器を設け、
    前記第1結晶でのX線回折によりX線を1つの方向に関してスメアリングを無視できる程度まで細く平行化し、
    前記X線の進行方向に直交する面内における前記試料の面内(φ)角度位置を変えると共に、前記X線の進行方向に直交する軸線である2θ軸線を中心とする前記第2結晶の角度(2θ)位置を変えながら、
    水平方向に関して細く平行化された前記X線を前記試料へ照射し、
    そのX線照射に応じて前記試料から出射した散乱線を前記第2結晶で分光した後に前記X線検出器によって受光し、
    前記試料の面内(φ)角度位置を変えたときの1つの格子面についての個々の面内(φ)角度位置における実測散乱線強度Iobsを前記X線検出器の出力に基づいて求め、
    (D)前記実測工程で求めた実測散乱線強度Iobsと、前記計算工程で求めた計算散乱線強度Icalとを比較して、実測散乱線強度Iobsと計算散乱線強度Icalとが一致又はそれらの違いが許容範囲内となるときのσ及びσμを真の値であると決める
    ことを特徴とする超小角X線散乱測定に基づく配向度の解析方法。
  10. 請求項9記載の配向度の解析方法において、
    前記実測工程で求めた散乱線強度Iobsと前記計算工程で求めた散乱線強度Icalとを比較する工程では、
    実測散乱線強度Iobsと計算散乱線強度Icalとを、面内(φ)角度位置の変化に従ったピーク幅(W)の絶対値の違い及び面内(φ)角度位置の変化に従ったピーク幅(W)の変化の速さの違い、の少なくとも1つに関して比較を行う
    ことを特徴とする超小角X線散乱測定に基づく配向度の解析方法。
  11. 請求項9又は請求項10記載の配向度の解析方法において、
    前記試料の面内(φ)角度位置を変えたときの1つの格子面についての個々の面内(φ)角度位置における実測散乱線強度Iobsのピーク幅をWとし、
    そのピーク幅Wの最小値をWminとし、
    そのWminを与える面内(φ)角度位置から90°異なった面内(φ)角度位置における実測散乱線強度Iobsのピーク幅をWmaxとし、
    前記1つの格子面に対応する散乱角をqmaxとするとき、
    前記σμの初期値を
    Figure 0004994722
    によって与え、前記σの初期値を
    Figure 0004994722
    によって与える
    ことを特徴とする超小角X線散乱測定に基づく配向度の解析方法。
  12. 請求項9から請求項11のいずれか1つに記載の配向度の解析方法において、σの項及びσμの項を含んだ前記散乱線強度のモデル式は、散乱角qの項、配向度μの項、及び面内回転角φの項を含むモデル式I(q,μ,σ,σμ,φ)であることを特徴とする超小角X線散乱測定に基づく配向度の解析方法。
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