JP4994541B2 - 蛍光インク、該インクを用いたインクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛍光性を示す画像の形成が可能な蛍光インク、該インクを用いた、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法には、例えば、静電吸引方法、ピエゾ素子による機械的振動又は変位を利用する方法、インクを加熱することにより気泡を発生させ、このときに発生する圧力を利用する方法等、様々のインク吐出方式がある。近年、これらの技術を利用し、様々な用途で使用可能なインクが求められている。かかる用途は、単に美麗な有色画像を形成することに留まらず、例えば、インクに蛍光性を持たすことで、文字、数字、記号、バーコード等の情報を記録媒体に記録し、適当な波長の紫外光を照射することにより蛍光インクを発光させて、可視情報以外の情報(例えば、セキュリティ情報等)を付与する技術展開が提案されている。このように、蛍光性を示すインクの用途は多方面に拡大する余地があり、安定で信頼性のある蛍光強度の高い発色性に優れたインクの開発が待望されている。蛍光性を示す色材(以下、蛍光色材と呼ぶ)の蛍光性に着目したインクに関する提案としては、例えば、特開平8−151545号公報、同9−132729号公報、同10−193775号公報、同10−298462号公報、同10−298467号公報及び特許第233038号公報等に記載されたものがあり、新たな記録方法や蛍光色材が提案されている。
【0003】
蛍光色材を用いた提案としては、例えば、特開平5−293976号公報、同6−191143号公報、同6−322307号公報、同7−009755号公報、同7−305013号公報、同8−053639号公報、同9−003375号公報、同9−001294号公報、同9−137097号公報、同9−137098号公報、同9−137099号公報、同9−165539号公報、同9−241565号公報、同9−255904号公報、同9−286939号公報、同10−007962号公報、同10−183043号公報、同11−080639号公報、同11−320921号公報、特開2000−038529公報、特許第2995853号公報等が挙げられる。
【0004】
水性インク中で使用が可能な水溶性の蛍光性染料としては、例えば、C.I.(カラーインデックスナンバー)ベーシックレッド1、C.I.ベーシックレッド2、C.I.ベーシックレッド9、C.I.ベーシックレッド12、C.I.ベーシックレッド13、C.I.ベーシックレッド14、C.I.ベーシックレッド17、C.I.アシッドレッド51、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド92、C.I.アシッドレッド94、C.I.ベーシックバイオレット1、C.I.ベーシックバイオレット3、C.I.ベーシックバイオレット7、C.I.ベーシックバイオレッド10及びC.I.ベーシックバイオレット14等が挙げられる。
【0005】
これらの中で、励起波長が260nm付近、発光が580〜640nmであるC.I.アシッドレッド52は、蛍光強度が非常に強く、又、水に対する溶解性も非常に良好で、更には、他の塩基性蛍光染料等に比べ安全性にも特に問題がないために、インクジェット用の蛍光インクの色材として非常に適した染料である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、C.I.アシッドレッド52は、耐水性が非常に悪いために、かかる染料を含むインクジェット用蛍光インクで形成した印字物は、水に触れると、蛍光性という特徴が無くなるばかりでなく、印字した内容も完全に消失してしまう場合があった。即ち、記録した情報そのものが消失してしまうことがあった。
【0007】
従って、本発明の目的は、蛍光強度の強い画像を与え、しかも、耐水性が良好な印字物の形成が可能な蛍光インク、特に、蛍光強度の強い良好な色調の赤色画像を与え、しかも、耐水性が良好な印字物の形成が可能な蛍光インク、これらの蛍光インクを用いたインクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。尚、本発明における良好な耐水性の意味は、水に触れた際に蛍光画像が維持されている場合ばかりではなく、蛍光は失われていても、印字した情報が目視で認識可能な状態で維持されている場合をも包含している。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明の一実施態様は、少なくとも色材と、これを溶解するための水性液媒体とを有するインクにおいて、色材として、C.I.アシッドレッド52と、少なくとも1種の直接染料とを含み、C.I.アシッドレッド52の含有量がインク全量に対して0.1〜0.4質量%であり、直接染料の含有量がインク全量に対して0.11〜0.4質量%であり、且つ、C.I.アシッドレッド52に対して直接染料が1.6重量倍以下の範囲で含有されることを特徴とする蛍光インクを提供することである。
【0009】
又、本発明の好ましい形態としては、インクに含有させる直接染料の染料分子の構造が、2以上のアゾ基を有するもの、又、2量体構造を有する蛍光インクが挙げられる。
【0015】
本発明の他の実施態様は、上記のような構成を有する蛍光インク組成に加えて、更に、互いに相溶性がなく、水の蒸発に伴って液−液の状態で分離を生じる第1及び第2の有機化合物を含み、該第1及び第2の有機化合物は、前記水性液媒体に溶解又は分散されるものである蛍光インクを提供する。
そして、これらの蛍光インクは、例えば、インクジェット記録方式に用いることのできる蛍光インクとすることができるものである。
【0016】
又、本発明の他の実施態様は、上記のインクジェット用の蛍光インクを収容しているインク収容部、及び該インクを吐出させるためのヘッド部を備えていることを特徴とする記録ユニットを提供する。
又、本発明の他の実施態様は、上記の蛍光インクを収容しているインク収容部を具備していることを特徴とするインクカートリッジを提供する。
又、本発明の他の実施態様は、上記のインクジェット用の蛍光インクにエネルギーを与えて、記録ヘッドから吐出させる工程を有することを特徴とするインクジェット記録方法を提供する。
更に、本発明の他の実施態様は、上記のインクジェット用の蛍光インクを収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるための記録ヘッド部とを有することを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
(第一の実施態様)
本発明の第一の実施態様にかかる蛍光インク(以下「第1形態にかかるインク」と呼ぶ)は、色材として、C.I.アシッドレッド52と、少なくとも1種の直接染料と、これらを溶解している水性液媒体とを含んでいる点に一つの特徴を有している。ここで、C.I.アシッドレッド52は、先に挙げたような数ある蛍光性を有する染料の中から選択したものであって、蛍光強度が非常に強く、又、水に対する溶解度も非常に良好である。
【0018】
しかしながら、前述したように、この染料を単独で使用してインクとした場合には、形成された印字物の耐水性が非常に弱いという問題がある。これに対して、本発明者らは、鋭意検討した結果、先ず、蛍光強度の強い画像を与え、しかも印字物が水に触れた場合においても、印字した内容が消えることがない蛍光インクとするためには、色材として、上記C.I.アシッドレッド52に加えて、直接染料を少なくとも1種混合させ、且つ、C.I.アシッドレッド52と直接染料とを特定の量で含有させることが有効であることを知見して本発明に至った。
【0019】
更に、本発明者らは、印字物の耐水性が良好であって、しかも、蛍光強度の強い赤色の画像を与えることのできるインクについて検討を重ねた結果、併用させる直接染料を選択する場合に、色調が、L*a*b*表示系で、a*が−20以上60以下、b*が−5以上60以下、且つ、√(a*2+b*2)が30以上の範囲で示される色材を使用することが特に有効であることを見いだした。ここでいう上記の値は、ジエチレングリコール30質量%、色材5質量%及び水65質量%を含むインクを、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJC−4000(キヤノン製)を用いて、普通紙(キヤノン製PBペーパー)に100%のベタ印字を行い、村上色彩(株)の分光測色システムCMS−500により、JIS Z 8722に準じて、色彩の測定を行った時の数値である。
【0020】
又、本発明者らは、種々の直接染料について検討した結果、特に、染料分子の構造が、2以上のアゾ基を有し、且つ、2量体構造を有するもの、更に具体的には、先に挙げた一般式(I)で表される染料を併用すれば、特に耐水性に優れた印字物が得られ、又、他の染料を併用させた場合に比べて、C.I.アシッドレッド52の蛍光性が顕しく阻害されることがない点でも好ましく、更には、蛍光赤色インクとして使用する場合には最適な色味を有するものとなるため、この点でも好適であることがわかった。
以下、第1形態にかかるインクの構成材料について説明する。
【0021】
第1形態にかかるインクにおいて、C.I.アシッドレッド52と併用可能な直接染料について説明する。直接染料は、水溶液から直接、木綿やレーヨン等の植物性繊維(セルロース繊維)に染着する染料であり、その大部分はアゾ系の染料であって、一般的に、同一平面上にあって両端に−NH2、−OHを有する共役系の長く連なった細長い分子からなり、スルホン酸基又はカルボン酸基を有する構造をしている。具体的には、例えば、ダイレクトイエロー12、ダイレクトイエロー44、ダイレクトイエロー86、ダイレクトイエロー132、ダイレクトイエロー142、ダイレクトレッド4、ダイレクトレッド23、ダイレクトレッド31、ダイレクトレッド79、ダイレクトレッド80、ダイレクトレッド81、ダイレクトレッド89、ダイレクトレッド227、ダイレクトレッド243、ダイレクトブルー6、ダイレクトブルー22、ダイレクトブルー25、ダイレクトブルー71、ダイレクトブルー78、ダイレクトブルー86、ダイレクトブルー90、ダイレクトブルー106、ダイレクトブルー199、ダイレクトブラック51、195、ダイレクトグリーン11、21、34、42、60、C.I.ダイレクトオレンジ1、2、5、6、7、8、31、33、63、85、90、96、102、104、ダイレクトブラウン2、58、59、60、73、112、167、168、179及び185等が挙げられる。
【0022】
本発明者らの検討によれば、以上のような直接染料の中でも、アゾ基を2つ持つ、2量体構造を有するものが特に耐水性に優れているため、このような構造を有する染料を使用することが好ましいことがわかった。これは、上記のような構造を有する染料は、単体の染料構造が対称であるがゆえに立体配置をとり易く、このために染料分子同士の分子間力が強くなり、この結果、このようなインクを色材として含有するインクで形成した記録物は、耐水性が向上するものと考えられる。本発明の蛍光インクで形成した印字物が水と接触した場合に、印字した内容が消えないようにするという本発明の目的に対しては、上記したいずれの染料も適宜に使用することができ、特に限定されない。
【0023】
更に、第1形態にかかるインクにおいては、C.I.アシッドレッド52と併用する直接染料を選択する場合に、その色調が、L*a*b*表示系で、a*が−20以上60以下、b*が−5以上60以下、且つ、√(a*2+b*2)が30以上の範囲で示されるような少なくとも1種の色材を選択して混合させることが好ましい。
【0024】
具体的には、例えば、ダイレクトイエロー12、ダイレクトイエロー44、ダイレクトイエロー86、ダイレクトイエロー132、ダイレクトイエロー142、ダイレクトレッド4、ダイレクトレッド23、ダイレクトレッド31、ダイレクトレッド62、ダイレクトレッド79、ダイレクトレッド80、ダイレクトレッド81、ダイレクトレッド89、ダイレクトレッド227、ダイレクトレッド243、ダイレクトオレンジ1、2、5、6、7、8、31、33、63、85、90、96、102及び104等が挙げられる。
【0025】
本発明者らの検討によれば、C.I.アシッドレッド52と少なくとも1種の直接染料を併用して本発明のインクを調製する場合に、その色調が、L*a*b*表示系で、a*、b*及び√(a*2+b*2)の値が前記した範囲で示される色材を使用すれば、C.I.アシッドレッド52の蛍光性を阻害することが少ないことがわかった。これに対し、前記した範囲外の値を示す色調の染料は、C.I.アシッドレッド52の蛍光スペクトル600nm付近に最大吸収波長を持つため、C.I.アシッドレッド52の蛍光強度を、その色材の吸光が打ち消してしまうため、蛍光強度を阻害する傾向が高いものと考えられる。又、更に、色調を示す値が前記した範囲内にある染料を使用すると、インクの色味が赤色となり、蛍光赤色インクとして最適なものとなるため、この点からも前記した色調の直接染料を選択して使用することが好ましい。
【0026】
更に、第1形態にかかるインクは、下記一般式(I)で示される直接染料を少なくとも1種含んで構成されたものであることがより好ましい。本発明者らの検討によれば、下記一般式(I)で示される染料は、その構造式からわかるように、多くのCOOH基を有しており、特に酸性から中性領域の紙等に印字した場合に、耐水性に優れてた印字物を与えることがわかった。又、下記一般式(I)で表される染料は、他の染料に比べて、C.I.アシッドレッド52と併用させた場合に、C.I.アシッドレッド52の蛍光性を顕しく阻害することがないため、この点からも好ましいことがわかった。
【0027】
即ち、C.I.アシッドレッド52は、最大励起波長が253nmであり、かかる波長のエネルギーを吸収して励起し、600nmに最大蛍光波長を有し、強い蛍光色を有するが、C.I.アシッドレッド52と併用する直接染料の中にも、253nm近傍に僅かな吸収を有するものがある。このような直接染料を併用すると、C.I.アシッドレッド52の強い蛍光強度を損なうことが生じる場合がある。しかし、本発明で使用する下記一般式(I)で示される直接染料を用いれば、このような現象を殆ど生じることがない。
【0028】
しかし、この下記一般式(I)で表される染料はイエロー染料であるため、併用させる染料が、これだけであると、印字物が水に触れた時に印字した内容が判別しにくくなる恐れがある。従って、この場合においても、はっきりと内容を判別できるようにするためには、先に挙げた直接染料から適宜に選択して、更に併用させることが好ましい。
【0029】
以下、下記の一般式(I)で示される染料について詳細に説明する。
【化8】
[一般式(I)中、Ar及びAr1は夫々独立に、アリール基又は置換アリール基を示し、Ar及びAr1の少なくとも1つは、COOH又はCOSHから選ばれる置換基を有する置換アリール基であり、J及びJ1は夫々独立に、下記式(1)、(2)及び(3)からなる群から選ばれる構造を示す。
【0030】
【化9】
【0031】
(上記式(1)中のR5は、水素原子、アルキル基(例えば、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基等)、置換アルキル基(例えば、当該アルキル基の少なくとも1つの水素原子が、F、Cl及びBr等のハロゲン原子や、炭素数1〜3のアルコキシル基等で置換されているアルキル基等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl及びBr等)、CN基、ウレイド及びNHCOR6等から選択される。該R6は、水素原子、アルキル基(例えば、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基等)、置換アルキル基(例えば、当該アルキル基の少なくとも1つの水素原子が、F、Cl及びBr等のハロゲン原子や、炭素数1〜3のアルコキシル基等で置換されているアルキル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、置換アリール基(例えば、F、Cl及びBr等のハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基等から選ばれる少なくとも1つの基で置換されたフェニル基等)、アラルキル基(例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基等)、及び置換アラルキル基(例えば、当該アラルキル基を構成するアリール基が、F、Cl及びBr等のハロゲン原子、炭素数1〜3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基等から選ばれる少なくとも1つの基で置換されているアラルキル基等)から選択される。
【0032】
上記式(2)中、Tは、アルキル基(例えば、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基)若しくは置換アルキル基(例えば、当該アルキル基の少なくとも1つの水素原子が、F、Cl及びBr等のハロゲン原子や、炭素数1〜3のアルコキシル基等で置換されているアルキル基等)を示し、Wは、水素原子、CN基、CONR10R11、ピリジウム及びCOOHから選択され、(m)は、炭素数2〜8のアルキレン鎖を示す。上記R10及びR11は夫々独立に、水素原子、アルキル基(例えば、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基等)及び置換アルキル基(例えば、当該アルキル基の少なくとも1つの水素原子が、F、Cl及びBr等のハロゲン原子や、炭素数1〜3のアルコキシル基等で置換されているアルキル基等)から選択される。
【0033】
又、上記式(3)中のBは、水素原子、アルキル基(例えば、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基等)、置換アルキル基(例えば、当該アルキル基の少なくとも1つの水素原子が、F、Cl及びBr等のハロゲン原子や、炭素数1〜3のアルコキシル基等で置換されているアルキル基等)及びCOOHから選択される。)
【0034】
一般式(I)中のR1、R2、R3及びR4は夫々独立に、水素原子、アルキル基(例えば、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基等)及び置換アルキル基(例えば、当該アルキル基の少なくとも1つの水素原子が、F、Cl及びBr等のハロゲン原子や、炭素数1〜3のアルコキシル基等で置換されているアルキル基等)から選択され、Lは、2価の有機結合基(例えば、−NH−φ−NH;φはフェニレン基等)を示し、nは、0又は1を示す。Xは、カルボニル基、或いは下記式(4)、(5)又は(6)のいずれかの構造を示す。
【0035】
【化10】
【0036】
(上記式(4)〜(6)中のZは夫々独立に、OR7、SR7及びNR8R9から選択され、式(5)中のYは、水素原子、Cl、CN基及びZから選択され、式(6)中のEは、Cl及びCN基から選択される。上記R7、R8及びR9は夫々独立に、水素原子、アルケニル基(例えば、炭素数1〜20のアルケニル基等)、置換アルケニル基(例えば、当該アルケニル基の少なくとも1つの水素原子が、F、Cl及びBr等のハロゲン原子や、炭素数1〜3のアルコキシル基等で置換されているアルケニル基等)、アルキル基(例えば、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基等)、置換アルキル基(例えば、当該アルキル基の少なくとも1つの水素原子が、F、Cl及びBr等のハロゲン原子や、炭素数1〜3のアルコキシル基等で置換されているアルキル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、置換アリール基(例えば、F、Cl及びBr等のハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基等から選ばれる少なくとも1つの基で置換されたフェニル基等)、アラルキル基(例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基等)及び置換アラルキル基(例えば、当該アラルキル基を構成するアリール基が、F、Cl及びBr等のハロゲン原子、炭素数1〜3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基等から選ばれる少なくとも1つの基で置換されているアラルキル基等)から選択される。更に、上記R8及びR9は、これらが結合された窒素原子と共に5員環又は6員環を形成する場合もある。)
【0037】
一般式(I)がSO3H基をもたない場合は、少なくとも2つのCOOH基又はCOSH基から選ばれる基を有し、一般式(I)がSO3H基をもつ場合は、COOH基又はCOSH基から選ばれる基が少なくともSO3H基の数と同数以上有する。]
【0038】
上記一般式(I)に含まれる染料としては、具体的には、例えば、C.I.ダイレクトイエロー173や、以下に示す染料1〜11が挙げられる。
【化11】
【0039】
【化12】
【0040】
【化13】
【0041】
【化14】
【0042】
【化15】
【0043】
第1形態にかかるインクは、C.I.アシッドレッド52の含有量が、インク全量に対して0.1〜0.4質量%であることが好ましいが、より好ましくはインク全量に対して0.2〜0.3質量%となる範囲で使用する。一般的に、蛍光染料においては、染料濃度が少ない場合は勿論、ある規定濃度以上となると蛍光が弱くなるといった現象が知られており、強い蛍光強度を発現させることのできる濃度領域がある。この現象について、図8〜12に従って、被記録材が紙である場合を例にとって説明する。先ず、図8は、蛍光色材801と溶媒805とを含むインク滴803が、セルロース繊維807を含んでいる被記録材に付着する直前の状態を模式的に示している。そして図9に示したように、インク滴901が紙上に着弾し、定着した場合に、紙上の蛍光色材801が少ない場合は、蛍光強度が充分には高くならない。一方、図10に示したように、インク滴1001が被記録材に定着し、紙面上に蛍光色材が適当な量で存在した状態にあれば、強い蛍光強度が得られる。これは蛍光色材同士の相互作用(色材分子の凝集、会合等)を発生させない濃度では、蛍光色材の発光発色性が十分に発現するためと考えられる。一方、図11に示したように、インク滴1101が被記録材に定着し(1101)、蛍光色材が紙面上に大量に存在する状態にあると、色材分子同士の相互作用(凝集や会合等)の発生割合が増加していき、蛍光発色性が不十分となり、蛍光強度の低下を引き起こすと考えられる。本発明で使用するC.I.アシッドレッド52の場合も同様であり、その含有量がインク全量に対して上記の範囲内にある場合、充分な蛍光強度を得ることができる。
【0044】
更に、C.I.アシッドレッド52と、上記に挙げたような種々の直接染料から選択して併用させて本発明のインクとした場合に、インクに充分な蛍光色を発現させるためには、併用する直接染料の含有量を、インク全体に対して0.11〜0.4質量%とし、且つ、C.I.アシッドレッド52に対し、その含有比率が1.6重量倍以下の範囲となるようにすることが好ましい。特に、C.I.アシッドレッド52に対して1.4重量倍以下の範囲で直接染料を含有させることが好ましい。上記の範囲とすることによって、記録部に十分な蛍光強度を付与することができると共に、印字物が水に触れた時にも、記録内容が目視にて読み取れる程度には維持することができるものである。
【0045】
これは、図12や図13に示すように、図中に1201で示したC.I.アシッドレッド52と併用する色材1203が適量である場合には、具体的には蛍光色材量が蛍光を発現するに十分な量で、且つ併用されるその他の色材量が、セルロース繊維に化学的、物理的な結合を行う量の範囲であると、図13に示したようにインク滴が定着した部位1301においては、併用色材1203は、紙のセルロース繊維807に吸着している割合が多く、殆ど浮遊しておらず、1201で示したC.I.アシッドレッド52の蛍光性をあまり阻害しない。一方、図14に示したように、適量以上に併用色材を混入すると、インク滴が定着した部位1401においては、併用色材はセルロース繊維807に化学的、物理的に結合したもの1203−1の他に、セルロース繊維に吸着できない遊離の併用色材1203−3が多量に存在する状態となり、これがC.I.アシッドレッド52の蛍光性を急激に低下させたものと考えられる。これらの理由から、C.I.アシッドレッド52に対する直接染料の混合割合を1.6重量倍以下に抑えた場合には、本発明の目的の1つである印字物の耐水性を充分に満足することができると共に、強い蛍光強度を示す着色部を形成することができる。
【0046】
次に、上記で説明した染料と共に本発明にかかるインクを構成する水性液媒体について説明する。本発明で使用する水性液媒体としては、水を主成分とすることが好ましく、又、インク中の水の含有量はインク全重量に対して、10〜95質量%、好ましくは25〜93質量%、より好ましくは40〜90質量%の範囲とすることが望ましい。本発明で使用する水としては、イオン交換水が好ましく用いられる。
又、第1形態にかかるインクにおいては、水性液媒体として、水を単独で用いてもよいが、水に水溶性有機溶剤を併用させることによって、第1形態にかかるインクの効果をより顕著にすることもできる。
【0047】
第1形態にかかるインクに用いることのできる水溶性有機溶剤としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、へキシレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等のトリオール類;チオジグリコール;ビスヒドロキシエチルスルホン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル、ブチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、ブチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、ブチル)エーテル等の低級アルキルグリコールエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル等の低級ジアルキルグリコールエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記の如き水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。
【0048】
これらの水溶性有機溶剤のインク中の含有量は、一般的には、インクの全重量に対して合計して50質量%以下、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%の範囲とすることが望ましい。更に、上記に挙げた中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール及びビスヒドロキシエチルスルホン等の水溶性有機溶剤を使用することが特に好適である。
【0049】
本発明のインク中には上記成分の他、必要に応じて、尿素、チオ尿素又は尿素誘導体や、インクに所望の性能を与えるための、pH調整剤、粘度調整剤、防腐剤、酸化防止剤、蒸発促進剤、防錆剤、防カビ剤及びキレート化剤等の添加剤を配合してもよい。インクの物性としては、表面張力が、40mN/m(dyn/cm)以下、pHが8以上に調整されたインクが好ましい。
【0050】
(第二の実施態様)
本発明の第二の実施態様にかかる蛍光インクについて以下に説明する。
本態様にかかる蛍光インク(以下、「第2形態にかかるインク」と呼ぶ)は、上記で説明した第1形態にかかるインクのインク組成に、更に、互いに相溶性のない第1及び第2の有機化合物を含ませたものであるが、該第1及び第2の有機化合物は、前記で説明したような水性液媒体に溶解又は分散される化合物である。
【0051】
即ち、第2形態にかかるインクは、
(i)互いに相溶性のない第1及び第2の有機化合物と、
(ii)直接染料と、蛍光性色材であるC.I.アシッドレッド52と、
(iii)上記(i)及び(ii)を溶解又は分散する水性液媒体とを含み、
且つ、C.I.アシッドレッド52の含有量がインク全量に対して0.1〜0.4質量%であり、直接染料の含有量がインク全量に対して0.11〜0.4質量%であり、且つ、C.I.アシッドレッド52に対して該直接染料が1.6重量倍以下の範囲で含まれている点に特徴を有している。
そして、上記本発明の第2形態にかかるインクは、先に説明した第1形態にかかるインクによって達成することのできる効果に加え、蛍光特性がより一層改善された強い蛍光強度を有する着色部を形成することができるという顕著な効果が得られる、更に優れた蛍光インクとなる。
【0052】
本発明者らは、先に説明した第1形態にかかるインクに対して、より良好な蛍光インクが得られる実施形態について検討を重ねた結果、第1形態にかかるインクの組成に、互いに相溶性がなく、しかも水性液媒体に対しては共に溶解又は分散する第1及び第2の有機化合物を、更に含ませることによって、インクジェット記録方法等による画像形成に使用した場合における記録物の安定性及び信頼性が良好で、しかも、インクに使用する色材の蛍光特性を十分に生かすことができ、蛍光発色性に極めて良好な記録物を得ることが可能となることを見いだした。以下に、第2形態にかかるインクの場合における、蛍光強度を含めた発色のメカニズムについて説明する。
【0053】
本発明者等は、記録物の安定性及び信頼性が良好で、且つ、蛍光特性を含む発色性がより一層良好なインクを開発するために、多種多様なメカニズムを考え、多種多様な色材やインク組成について検討及び確認を行ってきた。その結果、従来では考えられていなかった、インクの構成成分として互いに相溶性のない2種類の化合物を用いることにより、得られる記録物の発色性を良好なものとできるという新たな事実にたどりつき、本発明の第2形態にかかるインクの構成に至った。
【0054】
即ち、互いに相溶性のない2種の有機化合物と、蛍光色材であるC.I.アシッドレッド52及び直接染料からなる色材の組み合わせと、これらを溶解又は分散する水性液媒体とから少なくとも成る第2形態にかかるインクを用い、被記録材上にインクを付与して画像を形成した場合に、蛍光特性や発色性等を含めた記録物の品位が向上し、且つ、安定性及び信頼性が良好な記録物が得られる。特に、本発明の第2形態にかかるインクは、インクジェット記録のような、被記録材に対して間隙を介してインクが供給される画像形成方式に用いた場合に、良好な結果を示す。更に、第2形態にかかるインクは、特に、記録物の蛍光強度という観点から捉えると、従来の蛍光インクを用いて形成した記録物と比べて、蛍光強度が格段に向上するという顕著な効果が得られる。
【0055】
記録物の安定性及び信頼性が良好で、且つ蛍光強度や発色性等の良好なインクに対するメカニズムを考える場合、記録物の蛍光性及び発色性を向上させる手段としては、一般的には、インク中で色材をいかに均一に良好な状態で溶解或いは分散させるかについて注目が集まる。言い換えれば、インク中における色材分子又は分散粒子の凝集をいかになくし、インク中の色材分子又は分散粒子を小さくするかであり、例えば、インクの特性で考えれば、インクの吸光度を高くすることができるか、更に、吸光度の高い状態をいかに保つかについて検討されて、インクの設計が為されている。即ち、このようにインクを設計することで、被記録材上に記録されたインク中の色材分子又は分散粒子を凝集しにくくさせ、これによって色材の発色性及び蛍光性を良好にしようとすることが試みられるのが一般的である。
【0056】
これに対し、本発明者等は、被記録材上にインクが付与されて形成された記録物(印字物)について、被記録材上でのインクの状態、及び、世の中にある多種多様な記録物について再度検討し、考察を重ねた。その結果、先ず、いかなる記録物も、被記録材上に、シャープではなくとも必ず被記録材とインクとの界面が存在していること、更には、被記録材上のインクは大気に対しても界面を有した状態で存在していることに注目した。又、例えば、上質紙に記録を行った場合に、インクの浸透を高めると、見た目の色材の発色性が低下し易くなること、更に、バックコートフィルムに記録を行ったり、記録物をラミネートすると、見た目の色材の発色性が良好になることに着目した。本発明者らは、これらの現象に対して、被記録材上において、色材の発色性が良好となる大気に対するインクの界面状態を記録後にいかに作るか、更に、その状態をいかにして保持させるかという観点からの検討を行なった結果、本発明の第2の形態にかかるインクの構成を見いだすに至った。
【0057】
本発明者らは、第2形態にかかる蛍光インクを被記録材に付着させた場合に、記録物の蛍光特性や発色性を格段に向上できた理由は、下記に説明する具体的なメカニズムによってもたらされたものと考えている。
先ず、図15に示したように、第2形態にかかるインクは、インクの状態では各成分が水性液媒体中に十分に溶解或いは分散して一様な状態で安定に存在している。尚、図15において、1501は第1の有機化合物、1503は第2の有機化合物であって、第1及び第2の有機化合物は互いに相溶性を有していない。このような第2形態にかかるインクが、図16に示したように、被記録材1509上に着弾して記録された場合、記録後に、図17に示したように、インク成分の一部(特に、水性液媒体1507)が大気中へ蒸発したり、被記録材1509内へ浸透し、拡散したりすることによって、被記録材1509上のインクの構成や成分比が変化する。すると、このことによって、インクの状態では安定に存在していた互いに相溶性のない2種の有機化合物1501及び1503が、被記録材1509上で層状に相分離を生じ、図18に示したように、インクと大気との間にインク成分同士による界面が形成される。この結果、あたかも記録物がラミネートされたような状態が形成される。
【0058】
図19は、図18に示した状態を分かり易くするために模式的に表現したものである。ここで、層1901は、有機化合物1503と色材1505とを含み、層1903は、有機化合物1501と色材1505とを含んでいる。そして層1901の表面は気液界面1905を構成し、層1901と1903とは、その間に液体同士の、液−液界面1907を形成している。以上の結果、第2形態にかかるインクによって形成された記録物では、液−液界面1907の発現により安定な厚みの層1901が形成されるため、同界面において光の反射を有効に発現させることができる。その結果として、蛍光強度を含む発色性が良好になり、記録物の蛍光性や発色性を格段に向上させる有効な手法となる。
【0059】
本発明者らの検討によれば、特に、互いに相溶性がない2種の有機化合物の一方に界面活性剤を用いた場合には、蛍光強度を含む発色性が特に良好である画像が得られることがわかった。本発明者らは、これは、界面活性剤を用いると、図20に示したように、表層に界面活性剤のミセル層2001が形成され、この層により、光の反射をより有効に発現させることができるので、蛍光強度を含む発色性が更に良好になったものと考えている。
【0060】
更に、本発明者らの検討によれば、本発明の第2形態にかかる蛍光インクを構成する互いに相溶性のない2種の有機化合物を、インク中で均一に近い状態で共存させるには、液媒体として水を使用することが好ましいことがわかった。即ち、液媒体として水を使用すると、他の水性液媒体と比べて多様な化合物を用いることができるので、インクの構成材料の選択の余地が広がるだけでなく、上質紙に対しては、非水系の水性液媒体を用いたインクと比べて記録物の品位を低下させにくく、更に、上質紙内への浸透により液媒体を除去させることもでき、しかも、液媒体の蒸発に対しても安定性があり、この面からも良好であった。
【0061】
又、第2形態にかかるインクは、被記録材に対して間隙を介してインクが供給される方式の記録に用いられることが好ましい。これに対して、例えば、ボールペンのような、被記録材に接触させて加圧した状態で記録を行う方式に用いた場合は、インクが被記録材内に押し込められて、本発明にかかるメカニズムが発現されにくくなってしまうためである。
【0062】
次に、上記メカニズムによって優れた効果が得られる第2形態にかかる蛍光インクの構成成分について、既に第1形態にかかるインクにおいて説明した色材以外について説明する。
第2形態にかかるインクを構成する、互いに相溶性のない第1及び第2の2種の有機化合物(i)としては、共に液体であって、或いは共に水溶性であり、共に非極性化合物であることが好ましい。更には、併用するC.I.アシッドレッド52及び少なくとも1種の直接染料を溶解し、分散し、又は溶解及び分散する化合物を用いることが好ましい。
【0063】
ここで、互いに相溶性のない2種の有機化合物とは、該2種の有機化合物のみを混合させた状態で、例えば、水と油の如く、層状に相分離するものを指す。具体的には、互いに相溶性のない2種の有機化合物と、液媒体として水を用いた3成分を例にとって説明すると、初期状態においては、上記2種の互いに相溶性のない有機化合物は、いずれも水に溶解した状態で存在しているが、例えば、50℃の環境で溶媒としての水を蒸発させていった場合に、上記2種の互いに相溶性のない有機化合物が、水の蒸発に伴って液−液の状態での分離を生じるものを意味している。本発明者らの検討によれば、このような組合せの2種の有機化合物をインク組成に用いることで、前記した本態様にかかるメカニズムが発現し易くなる。
【0064】
一方、これらの有機化合物に対する液媒体としては、多種多様な液体の中から、互いに相溶性のない2種の有機化合物の組合せと、これらとの相性とをにらみながら選択されるが、特に好ましいものは、液媒体を水にした形態である。この理由としては、インクの安定性の他に、前述したメカニズムに記載した非水系の液媒体を用いた場合の品位等の問題や、互いに相溶性のない2種の有機化合物を選択する場合の容易性が挙げられる。
【0065】
互いに相溶性のない2種の有機化合物としては、上記した様に、2種の有機化合物のみを混合させた状態で、例えば、水と油の如く層状に相分離するものであればいずれのものでもよいが、例えば、一方の有機化合物の溶解度パラメーター値が15以上で、他方の有機化合物の溶解度パラメーター値が13以下である組合せのものが好ましい。両者の溶解度パラメーター値が近すぎると、相溶し易くなり、本発明の効果が発現しにくくなる。尚、ここで示す溶解度パラメーター値は、Fedors法によって求められた値である。
【0066】
又、互いに相溶性のない2種の有機化合物の、一方(第1の有機化合物)は、グリセリン基を有している化合物であることが好ましい。グリセリン基は水和力が強く、第2形態にかかるインクによって蛍光強度を含む優れた発色性を有する記録物が得られる理由と考えられる、先に説明した現象(メカニズム)中、具体例として述べた「水と油」のうち、水側の化合物として働き易い物質である。グリセリン基を有している化合物の中でも、例えば、グリセリン、キシリトール、エリトリトール等のモノマーとしての糖アルコール、グリセリン、ジグリセリン等の二量体、三量体としての糖アルコールが良好である。
【0067】
又、上記化合物に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、夫々の組合せられたものを置換基として付加されたものであってもよい。以上の中で、特に好ましくは、水酸基を3個以上有しているもの、常温で液体のものである。これらのインク中における含有量は、インク全質量に対して、1.0〜30質量%、更に、5.0〜20質量%とするのが好ましい。しかし、画像形成に用いる被記録材によっては、これらに限定されない。
【0068】
次に、第2形態にかかるインクを構成する、上記第1の化合物に対して相溶性のない有機化合物(第2の有機化合物)について説明する。本発明においては、上記に挙げたような第1の有機化合物に対して、第2の有機化合物として、例えば、ノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。ノニオン系界面活性剤を用いれば、上記に挙げたような第1の有機化合物に対して、混合させた場合に層状に相分離する油に対応した作用を有するため、先に説明したメカニズムを良好に発現させることができる。
【0069】
本発明の第2形態にかかるインクを構成する際に、第2の有機化合物として使用するノニオン系界面活性剤は、水溶液状態で、該水溶液からそれ自身が相分離しないものであることが好ましい。これは、このような材料を用いれば、例えば、液媒体として水を用いてインク化したときに、インクが不安定化することを抑え、若しくは防ぐことができるためである。このことは、第2の有機化合物としては、見かけ上は水に溶けた状態や均一状に分散しているものを使用することが好ましいことを示している。従って、特に、水溶液に対してエマルジョン状態になるノニオン系界面活性剤を選択することが好ましい。更に、ノニオン系界面活性剤のインク中の含有量を、水溶液の状態でエマルジョン状態が保持できる添加量以下に選択すると、インクの安定性に対する不安がなくなるので、特に好ましい。
【0070】
ノニオン系界面活性剤の中でも、特に第2形態のインクに好適に用いることのできるものとしては、常温で液体であって、そのHLBが13以下のものが挙げられる。一般的に、HLBが13よりも大きくなると親水性が強くなり過ぎてしまうが、HLBが13以下のノニオン系界面活性を用いた場合には、本態様にかかるインクの構成成分である相溶性のない2種の有機化合物が、被記録材表面で相分離し、インクと大気の間にインク成分同士による界面を形成させ、これによって、記録物の蛍光強度を含む発色性が良好になるという前記したメカニズムが良好に発現する。
【0071】
更に、上記界面活性剤が、水と油の間の性質を持つもの、言い換えれば曇点を有するものを用いると、この界面活性剤の相において、蛍光強度を含む発色性が良好になるので好ましい。これは、上記したような界面活性剤の相に蛍光性を示す化合物及び/又は蛍光性を示す色材が、蛍光性を含む発色性に対して最も良好な状態である単分子に近い状態に溶解及び/又は分散し、且つ、蛍光性を示す色材等の過飽和分は、界面活性剤と相溶性のない相に溶解及び/又は分散するために、蛍光性を含む発色性がより良好に発現するのではないかと推測している。
【0072】
第2形態のインクにおけるノニオン系界面活性剤の含有量は、先に説明したC.I.アシッドレッド52及び少なくとも1種の直接染料を除いたインクの状態で、インク界面で分離することのない量をインク中に含有させることが好ましい。具体的には、インク全重量に対して1質量%以上、更には、1〜20質量%とすることが好ましい。1質量%より少ないと、先に述べたメカニズムの発現の効果が少なく、又、20質量%より多いと印字品位のバランス、例えば、濃度や定着性やヒゲ状の滲みであるフェザリングと定着性や濃度とのバランスが悪くなる傾向がある。
【0073】
以上に挙げた要件を具備するノニオン系界面活性剤の中でも、第2形態のインクの構成成分とするのに特に好ましいものとしては、下記のアセチレン基を有している一般式(II)で示される化合物、及び下記(III)〜(VIII)に列挙した化合物が挙げられる。
【0074】
【化16】
[上記一般式(II)において、A及びBは夫々独立に、CnH2n+1(nは1〜10の整数)を表し、X及びYは、開環したエチレンオキサイドユニット及び/又は開環したプロピレンオキサイドユニットを表す。]
【0075】
【化17】
【0076】
又、前記一般式(II)で表されるノニオン系界面活性剤の中でも特に好ましいのは、下記の式(IX)で示される化合物である。
【化18】
【0077】
ところで、これまで説明してきた本発明の第2形態にかかる蛍光インクに対しては、更に、蒸気圧がジエチレングリコールの蒸気圧以上のグリコール化合物を含有させることによって、より優れた別の効果を奏する蛍光性着色部を備えた記録物を得ることができる。ここで用いる蒸気圧がジエチレングリコールの蒸気圧以上のグリコール化合物は、互いに相溶性のない第1及び第2の有機化合物を溶解若しくは分散するものであることが好ましく、例えば、その溶解度パラメータが、第1の有機化合物と第2の有機化合物との間にあるものが好ましい。
【0078】
上記のような化合物を第2形態にかかるインクに含有させることによって、蛍光強度を含む発色性が良好になり、記録物の蛍光特性や発色性を格段に向上すると共に、従来の、光に当てられた蛍光色材の蛍光強度が経時的に低下する、という蛍光性を示す記録物の欠点が有効に抑制される、という別の優れた効果が得られる。このような化合物の具体例は、用いる互いに相溶性のない2種の有機化合物よっても異なるが、例えば、2種の有機化合物として、前記で説明したグリセリン基を有している有機化合物とノニオン系界面活性剤とを用いる場合には、下記に挙げるグリコール系化合物を用いることが好ましい。例えば、エチレングリコール(蒸気圧:6.7Pa(20℃))やジエチレングリコール(蒸気圧:<1.33Pa(20℃))等が挙げられる。
【0079】
上記した構成を有するインクが、上記の優れた効果を奏するものとなる理由については、本発明者らは、蒸気圧がジエチレングリコール以上の化合物、具体的には例えば、エチレングリコールやジエチレングリコールのグリコール系化合物の被記録材上で起こる蒸発に起因してもたらされたものと考えている。即ち、上記のようなグリコール系化合物の蒸発は、比較的緩やかであるため、インク滴が被記録材に付着した直後においては、当該インク中に、これらの化合物は豊富に含まれている。そのため、前記で説明した図19の層1901と層1903との間の液−液界面1907や、図20における層2001と層1901との間の液−液界面1907、及び層1901と層1903との間の液−液界面の少なくとも一方には、上記したようなグリコール系化合物が介在し、明確な界面の形成を阻害しているものと考えられる。即ち、このようなインクの状態により、記録直後の記録部においては、その蛍光強度は、上記したようなグリコール系化合物を含んでいない第2形態にかかるインクによって得られる記録部が示す蛍光強度よりも弱いものとなる。
【0080】
しかしながら、上記したようなグリコール系化合物は時間の経過と共に徐々に蒸発し、その結果として、上記に挙げた各液−液界面が明確となり、高い蛍光強度を得るための好ましい記録部の構造が形成されることとなる。記録物が置かれる環境によっては、その蛍光特性は経時的に劣化する場合があるが、上記の態様にかかるインクによって形成される記録部が示す見かけ上の蛍光強度は、経時的な劣化が極めて有効に抑制されており、或いは殆ど劣化しないという優れた効果が得られる。本発明者らの検討によれば、経時的な劣化が抑制されるどころか、蛍光強度が増大することすらあった。従って、より長期間に渡って持続する蛍光特性を記録物に期待する場合には、上記に説明した、第2形態にかかるインクの変形形態を採用することが好ましい。
【0081】
第2形態にかかる蛍光インクの変形形態は、上記で説明した互いに相溶性のない2種の有機化合物と、先に説明した蛍光色材であるC.I.アシッドレッド52と直接染料と、これらを溶解或いは分散する水性液媒体を用いて構成される。上記で説明したメカニズムによる蛍光強度の経時的な劣化の抑制効果は、特に、蛍光色材であるC.I.アシッドレッド52を用いた場合に十分に発現される。又、先に述べた理由により本形態のインクの場合も、液媒体を水とする水系とした場合に特に好ましい結果を示し易い。従って、使用する色材として、水との親水性の良好な、色材自身が水に溶解する直接染料を用いたり、或いは、使用する化合物や色材及びこれらの集合体について表面処理をすることで、本来は疎水性であるものを親水性とし、水にエマルジョン化させる等の方法で、あたかも水に溶解しているようにすることが可能な材料を用いることも好ましい。
【0082】
上記に説明した第2形態にかかる蛍光インクにおいては、インクの安定性の面から、インク中に更に、一価アルコールを併用させることが好ましい。第2の形態にかかるインク中において、一価アルコールは、例えば、ガソリンの水抜きのように、水と油を混合する効果を有している。このことは、先に説明したメカニズムを発現させる際のインクの安定性の面から、一価アルコールがインクに併用されている形態が好ましいものであることを意味している。更に、一価アルコールは、被記録材上にインクを付与した場合に、蒸発や、被記録材中への浸透に対して良好な効果があるため、本発明の効果をより良好に発現させるものとして有効である。一価アルコールの本発明のインク中への含有量としては、インク全重量に対して0.1〜20質量%、好ましくは、0.5〜10質量%である。本発明のインク成分として使用することのできる一価アルコールの具体例としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール及びn−ブタノール等が挙げられる。
【0083】
更に、第2形態にかかる蛍光インクには、保水剤が併用されていてもよい。保水剤としては、尿素及び尿素誘導体から選択される化合物を用いることが好ましい。尿素及び尿素誘導体をインク中に含有させると、インクの安定性が良好になる。即ち、尿素及び尿素誘導体から選択される化合物を含有させることで、インクの状態の気−液界面で、インク中に含有されている互いに相溶性のない2種の有機化合物が層状に相分離するというメカニズムが発現することがないようにさせるためである。更に、尿素及び尿素誘導体から選択される化合物は、溶剤助剤としての効果もあるので、インクの安定性に対しても好ましい。
【0084】
又、上記と同様に、例えば、被記録材が上質紙等であるような場合に、被記録材中に保水剤が含有されていれば、上質紙の水分保水性によって本発明のメカニズムの効果を発現し易くなると考えられる。即ち、被記録材中の水分が保持されることにより、インク成分の被記録材内や大気へ放出される時間を遅くさせることで、互いに相溶性のない2種の有機化合物が層状に相分離するのを良好にするのではないかと予測している。
【0085】
尿素誘導体としては、環状化合物ではない化合物が好ましく、例えば、尿素のアルキル誘導体及び尿素のエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物から選ばれた少なくとも1種、又は、上記誘導基の少なくとも2個で誘導された化合物から適宜に選択して用いることが好ましい。但し、インクを構成する各成分の量や種類によって選択は変わる。又、水溶性であるものを使用することが好ましい。上記使用量については特に制限されないが、一般的には、インクの全重量に対して0.1〜15質量%の範囲で含有させることが好適であり、更には0.1〜10質量%の範囲で含有させることが好適である。
【0086】
第2形態にかかるインクは、必要に応じて、更に、水溶性有機溶剤、界面活性剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー及びpH調整剤等の種々の添加剤を含有してもよい。インクの物性としては、表面張力が、40mN/m(dyn/cm)以下、pHが8以上に調整されたインクが好ましい。
【0087】
次に、上記で説明した色材の組み合わせ及び互いに相溶性のない2種の有機化合物と共に、本発明の第2形態にかかるインクを構成する水性液媒体について説明する。本発明で使用する水性液媒体としては、先に述べたように、水を主成分とすることが好ましく、又、水に水溶性有機溶剤を併用させることによって、本発明の効果をより顕著にすることもできる。
【0088】
本態様にかかる蛍光インクに使用できる具体的な水溶性有機溶剤の例としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、トリエタノールアミン、スルホラン、ジメチルサルフォキサイド、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等の環状アミド化合物、及びスクシンイミド等のイミド化合物等が挙げられる。
【0089】
以上のようにして構成される本発明の第1及び第2の実施形態にかかる蛍光インクは、通常の文具用の蛍光インクとしても用いることができるが、インクジェット記録で用いられる際に、特に効果的である。インクジェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを作用させて液滴を吐出する記録方法、及びインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡により液滴を吐出するインクジェット記録方法があり、それらのインクジェット記録方法に本発明にかかる蛍光インクは特に好適である。
【0090】
次に、上記した本発明にかかる蛍光インクを用いて記録を行うのに好適な、本発明のインクジェット記録装置の一例を以下に説明する。先ず、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部であるヘッド構成の一例を、図1及び図2に示す。図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は、図1のA−B線での切断面図である。
【0091】
ヘッド13は、インクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコン又はプラスチック板等と、発熱素子基板15とを接着して得られる。発熱素子基板15は、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等で形成される保護層16、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極17−1及び17−2、HfB2、TaN、TaAl等の高融点材料から形成される発熱抵抗体層18、熱酸化シリコン、酸化アルミニウム等で形成される蓄熱層19、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウム等の放熱性のよい材料で形成される基板20よりなっている。
【0092】
上記ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が突出し、インク21がヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、被記録材25に向かって飛翔する。図3には、図1に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図を示す。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
【0093】
図4に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
【0094】
62は、記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63は、ブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって、吐出口面の水分や塵埃等の除去が行われる。
【0095】
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する被記録材にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は、記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66は、ガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部は、モーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66は、ガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0096】
51は、被記録材を挿入するための紙給部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成により、記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ被記録材が給紙され、記録が進行するにつれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において、記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
【0097】
尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は、上記したワイピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0098】
図5は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジ45の一例を示す図である。ここで40は、供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は、廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
【0099】
本発明のインクジェット記録装置は、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示すような、それらが一体になったものも好ましい形態である。図6において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部(ポリオレフィンで形成されているものが好ましい)、例えば、インク吸収性を有するインク保持体が収納されており、かかるインク保持体中のインクが、複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。上記インク保持体は無機化合物を含んでいてもよく、無機化合物のポリマーで構成されているものが好ましい。又、インク保持体の材料としては、ポリウレタン、セルロース、ポリビニルアセテート及びポリオレフィン等から選ばれる化合物を含むことが好ましい。又、インク保持体は、例えば多孔質とすることもできる。更に、インク保持体は、多層構造体とすることもできる。この場合には、多層構造体の多層配列方向が、インク収容部のインク排出方向に配列していることが好ましい。更にまたインク保持体は、繊維集合体とすることもできる。この場合にも、繊維集合体がインク収容部のインク排出方向に配列していることが好ましい。いずれの場合においても、インク保持体は、インク収容部との接触面を有していることが好ましい。又、インク保持体を用いず、インク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72は、カートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は図4に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0100】
次に、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の好ましい一例としては、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成の一例を図7に示す。
【0101】
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板82等を指示固定するための基板84とから構成されている。
【0102】
図7において、インク流路80は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケル等の金属に、電鋳やプレス加工による穴あけ等により吐出口85が形成されており、振動板82は、ステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZT等の誘電体材料で形成される。以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、歪み応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧し、インク滴(不図示)をオリフィスプレート81の吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。このような記録ヘッドは、図4に示したものと同様なインクジェット記録装置に組み込んで使用される。インクジェット記録装置の細部の動作は、先述と同様に行うもので差しつかえない。
【0103】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載で%とあるものは、特に断りのない限り重量基準である。
(実施例群I:第一の実施態様にかかる実施例及び比較例)
本発明の第1形態にかかるインク、及びこれと比較するためのインクを下記の組成で調製し、実施例I−1〜21、及び比較例I−1〜20とした。夫々のインクは、下記の各成分を混合及び溶解した後、更に、ポアサイズが0.2μmのメンブレンフィルターにて加圧ろ過し、各実施例及び比較例のインクを調製した。尚、各実施例及び比較例のインクを構成する色材と、その量比について、表1及び2にまとめて示した。尚、本実施例に用いたC.I.アシッドレッド52以外の併用染料は全て、a*はー20〜60の範囲内、b*はー5〜60の範囲内、そして√(a*2+b*2)は30以上のものを選択した。
【0104】
<実施例I−1>
・C.I.アシッドレッド52 0.1%
・ダイレクトイエロー142 0.15%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・純水 82.25%
【0105】
<実施例I−2>
・C.I.アシッドレッド52 0.2%
・ダイレクトレッド227 0.3%
・2−ピロリドン 7.0%
・グリセリン 5.0%
・尿素 7.0%
・純水 80.5%
【0106】
<実施例I−3>
・C.I.アシッドレッド52 0.27%
・ダイレクトレッド80 0.02%
・ダイレクトイエロー132 0.1%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・純水 84.11%
【0107】
<実施例I−4>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド80 0.15%
・ダイレクトイエロー86 0.15%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・純水 81.95%
【0108】
<実施例I−5>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド227 0.35%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・トリエチレングリコール 3.0%
・純水 78.9%
【0109】
<実施例I−6>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド227 0.4%
・エチレングリコール 8.0%
・グリセリン 6.0%
・トリエチレングリコール 3.0%
・エタノール 5.0%
・純水 77.35%
【0110】
<実施例I−7>
・C.I.アシッドレッド52 0.3%
・ダイレクトイエロー132 0.25%
・ダイレクトブルー199 0.05%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・純水 83.9%
【0111】
<実施例I−8>
・C.I.アシッドレッド52 0.4%
・ダイレクトブルー199 0.16%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・トリエチレングリコール 3.0%
・純水 78.94%
【0112】
<実施例I−9>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド80 0.05%
・ダイレクトイエロー86 0.3%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・純水 81.9%
【0113】
<実施例I−10>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド80 0.05%
・前記に例示した染料1 0.3%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・トリエチレングリコール 3.0%
・純水 78.9%
【0114】
<実施例I−11>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド80 0.1%
・前記に例示した染料2 0.3%
・エチレングリコール 8.0%
・グリセリン 6.0%
・トリエチレングリコール 3.0%
・エタノール 5.0%
・純水 77.35%
【0115】
<実施例I−12>
・C.I.アシッドレッド52 0.3%
・ダイレクトイエロー132 0.25%
・ダイレクトレッド80 0.05%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・純水 83.9%
【0116】
<実施例I−13>
・C.I.アシッドレッド52 0.4%
・ダイレクトイエロー142 0.16%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・トリエチレングリコール 3.0%
・純水 78.94%
【0117】
<実施例I−14>
・C.I.アシッドレッド52 0.1%
・前記に例示した染料1 0.15%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・純水 82.25%
【0118】
<実施例I−15>
・C.I.アシッドレッド52 0.2%
・前記に例示した染料3 0.3%
・2−ピロリドン 7.0%
・グリセリン 5.0%
・尿素 7.0%
・純水 80.5%
【0119】
<実施例I−16>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・前記に例示した染料1 0.1%
・前記に例示した染料2 0.05%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・純水 84.1%
【0120】
<実施例I−17>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・前記に例示した染料1 0.3%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・純水 81.95%
【0121】
<実施例I−18>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・前記に例示した染料2 0.35%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・トリエチレングリコール 3.0%
・純水 78.9%
【0122】
<実施例I−19>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・前記に例示した染料5 0.4%
・エチレングリコール 8.0%
・グリセリン 6.0%
・トリエチレングリコール 3.0%
・エタノール 5.0%
・純水 77.35%
【0123】
<実施例I−20>
・C.I.アシッドレッド52 0.3%
・前記に例示した染料1 0.1%
・前記に例示した染料2 0.1%
・前記に例示した染料7 0.1%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・純水 83.9%
【0124】
<実施例I−21>
・C.I.アシッドレッド52 0.4%
・前記に例示した染料2 0.16%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・トリエチレングリコール 3.0%
・純水 78.94%
【0125】
【0126】
<比較例I−1>
・C.I.アシッドレッド52 0.3%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・純水 82.2%
【0127】
<比較例I−2>
・C.I.アシッドレッド52 0.2%
・ソルベントグリーン7 0.3%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・純水 84.0%
【0128】
<比較例I−3>
・C.I.アシッドレッド52 0.3%
・アシッドイエロー23 0.25%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・純水 83.95%
【0129】
<比較例I−4>
・C.I.アシッドレッド52 0.08%
・ダイレクトイエロー142 0.15%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・純水 82.27%
【0130】
<比較例I−5>
・C.I.アシッドレッド52 0.3%
・ダイレクトレッド80 0.05%
・ダイレクトイエロー86 0.05%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・純水 84.1%
【0131】
<比較例I−6>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトイエロー132 0.45%
・エチレングリコール 8.0%
・グリセリン 6.0%
・トリエチレングリコール 3.0%
・エタノール 5.0%
・純水 77.3%
【0132】
<比較例I−7>
・C.I.アシッドレッド52 0.45%
・ダイレクトイエロー132 0.3%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・純水 83.75%
【0133】
<比較例I−8>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド227 0.5%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・トリエチレングリコール 3.0%
・純水 78.75%
【0134】
<比較例I−9>
・C.I.アシッドレッド52 0.1%
・ダイレクトイエロー142 0.1%
・ジエチレングリコール 8.0%
・グリセリン 6.0%
・トリエチレングリコール 3.0%
・エタノール 5.0%
・純水 77.8%
【0135】
<比較例I−10>
・C.I.アシッドレッド52 0.2%
・ダイレクトレッド227 0.35%
・2−ピロリドン 7.0%
・グリセリン 5.0%
・尿素 7.0%
・純水 80.45%
【0136】
<比較例I−11>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド80 0.2%
・前記に例示した染料2 0.25%
・エチレングリコール 8.0%
・グリセリン 6.0%
・トリエチレングリコール 3.0%
・エタノール 5.0%
・純水 77.3%
【0137】
<比較例I−12>
・C.I.アシッドレッド52 0.45%
・ダイレクトイエロー132 0.25%
・ダイレクトレッド80 0.05%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・純水 83.75%
【0138】
<比較例I−13>
・C.I.アシッドレッド52 0.08%
・前記に例示した染料1 0.15%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・純水 82.27%
【0139】
<比較例I−14>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・前記に例示した染料1 0.05%
・前記に例示した染料2 0.05%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・純水 84.15%
【0140】
<比較例I−15>
・C.I.アシッドレッド52 0.3%
・前記に例示した染料5 0.45%
・エチレングリコール 8.0%
・グリセリン 6.0%
・トリエチレングリコール 3.0%
・エタノール 5.0%
・純水 77.25%
【0141】
<比較例I−16>
・C.I.アシッドレッド52 0.45%
・前記に例示した染料7 0.3%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・純水 83.75%
【0142】
<比較例I−17>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・前記に例示した染料2 0.5%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・トリエチレングリコール 3.0%
・純水 78.75%
【0143】
<比較例I−18>
・C.I.アシッドレッド52 0.1%
・前記に例示した染料9 0.2%
・ジエチレングリコール 8.0%
・グリセリン 6.0%
・トリエチレングリコール 3.0%
・エタノール 5.0%
・純水 77.7%
【0144】
<比較例I−19>
・C.I.アシッドレッド52 0.2%
・前記に例示した染料3 0.35%
・2−ピロリドン 7.0%
・グリセリン 5.0%
・尿素 7.0%
・純水 80.45%
【0145】
<比較例I−20>
・C.I.アシッドレッド52 0.2%
・ダイレクトレッド227 0.35%
・2−ピロリドン 7.0%
・エタノール 5.0%
・尿素 7.0%
・純水 残り
【0146】
【0147】
[評価]
次に、上記で得られた実施例I−1〜21及び比較例I−1〜20のインクを用いて、下記評価を行った。
(評価1:耐水性)
記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJC−4000(キヤノン製)を用いて、普通紙(市販の酸性紙)に英数文字を印字し、印字物を1時間以上放置後、文字部に水を滴下し、乾燥した後の印字状態を目視にて観察し評価した。その結果を表3に示した。
【0148】
A:印字内容がはっきり判別できる。
B:印字物が多少薄いが、判別するのに問題のないレベルである。
C:印字物は残るが、内容を判別しずらい。
D:印字物は全く残らず、内容を判別できない。
【0149】
(評価2:蛍光強度)
記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJC−4000(キヤノン製)を用いて、普通紙(市販の酸性紙)に50%の格子縞パターンを印字し、日本分光(株)社製の蛍光光度計(FP−750)を用いて下記の条件のもと蛍光強度を測定した。その結果を下記の基準に従って評価し、表3に示した。その際、励起波長を263nmとし、最大蛍光波長での蛍光強度を測定し、得られた測定蛍光強度値を、比較例1のインクの蛍光強度値を100として標準化し、下記の基準で評価した。その結果を下記表3に示した。
【0150】
A:測定蛍光強度値が80以上である。
B:測定蛍光強度値が60〜79である。
C:測定蛍光強度値が50〜59である。
D:測定蛍光強度値が49以下である。
【0151】
【0152】
(実施例群II:第二の実施態様にかかる実施例及び比較例)
本発明の第2形態にかかるインクを下記の組成で調製し、実施例II−1〜21とした。又、これと比較するためのインクとして、先の第一の実施態様にかかる実施例群Iで使用した比較例I−1〜9及び比較例I−11〜20のインクと同様の組成のものを調製し、比較例II−1〜9及び比較例II−11〜20のインクとした。実施例及び比較例の夫々のインクは、下記の各成分を混合及び溶解した後、更に、ポアサイズが0.2μmのメンブレンフィルターにて加圧ろ過して、各インクを調製した。尚、各実施例のインクを構成する色材と、その量比について、表4にまとめて示した。
【0153】
又、実施例で使用したノニオン系界面活性剤は、下記の一般式の構造のものを用いた。式中のn+mの値によってHLBの値は変化する。表4中に用いたノニオン系界面活性剤のHLB値を示した。
【化19】
【0154】
<実施例II−1>
・C.I.アシッドレッド52 0.1%
・ダイレクトイエロー142 0.15%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 2.0%
・純水 残り
【0155】
<実施例II−2>
・C.I.アシッドレッド52 0.2%
・ダイレクトレッド227 0.3%
・2−ピロリドン 7.0%
・グリセリン 8.0%
・エタノール 5.0%
・尿素 7.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 2.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=5) 0.1%
・純水 残り
【0156】
<実施例II−3>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド80 0.1%
・ダイレクトイエロー86 0.05%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 1.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=5) 0.1%
・純水 残り
【0157】
<実施例II−4>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド80 0.15%
・ダイレクトイエロー86 0.15%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 1.5%
・純水 残り
【0158】
<実施例II−5>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド227 0.35%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 2.5%
・トリエチレングリコール 3.0%
・純水 残り
【0159】
<実施例II−6>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド227 0.4%
・エチレングリコール 8.0%
・グリセリン 6.0%
・トリエチレングリコール 3.0%
・エタノール 5.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 2.0%
・純水 残り
【0160】
<実施例II−7>
・C.I.アシッドレッド52 0.3%
・ダイレクトイエロー132 0.25%
・ダイレクトブルー199 0.05%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 2.0%
・純水 残り
【0161】
<実施例II−8>
・C.I.アシッドレッド52 0.4%
・ダイレクトブルー199 0.16%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・トリエチレングリコール 3.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 2.0%
・純水 残り
【0162】
<実施例II−9>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド80 0.05%
・ダイレクトイエロー86 0.3%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 2.0%
・純水 残り
【0163】
<実施例II−10>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド80 0.05%
・前記に例示した染料1 0.3%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・トリエチレングリコール 3.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 1.5%
・純水 残り
【0164】
<実施例II−11>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・ダイレクトレッド80 0.1%
・前記に例示した染料2 0.3%
・エチレングリコール 8.0%
・グリセリン 6.0%
・トリエチレングリコール 3.0%
・エタノール 5.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 1.5%
・純水 残り
【0165】
<実施例II−12>
・C.I.アシッドレッド52 0.3%
・ダイレクトイエロー132 0.25%
・ダイレクトレッド80 0.05%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 1.5%
・純水 残り
【0166】
<実施例II−13>
・C.I.アシッドレッド52 0.4%
・ダイレクトイエロー142 0.16%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・トリエチレングリコール 3.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 2.5%
・純水 残り
【0167】
<実施例II−14>
・C.I.アシッドレッド52 0.1%
・前記に例示した染料1 0.15%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 2.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=5) 0.1%
・純水 残り
【0168】
<実施例II−15>
・C.I.アシッドレッド52 0.2%
・前記に例示した染料3 0.3%
・2−ピロリドン 7.0%
・エタノール 5.0%
・尿素 7.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 2.0%
・純水 残り
【0169】
<実施例II−16>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・前記に例示した染料1 0.1%
・前記に例示した染料2 0.05%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 2.5%
・純水 残り
【0170】
<実施例II−17>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・前記に例示した染料1 0.3%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 1.5%
・純水 残り
【0171】
<実施例II−18>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・前記に例示した染料2 0.35%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・トリエチレングリコール 3.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 2.0%
・純水 残り
【0172】
<実施例II−19>
・C.I.アシッドレッド52 0.25%
・前記に例示した染料5 0.4%
・エチレングリコール 8.0%
・グリセリン 6.0%
・トリエチレングリコール 3.0%
・エタノール 5.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 1.5%
・純水 残り
【0173】
<実施例II−20>
・C.I.アシッドレッド52 0.3%
・前記に例示した染料1 0.1%
・前記に例示した染料2 0.1%
・前記に例示した染料7 0.1%
・グリセリン 7.5%
・ジエチレングリコール 5.0%
・イソプロピレングリコール 3.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 2.0%
・純水 残り
【0174】
<実施例II−21>
・C.I.アシッドレッド52 0.4%
・前記に例示した染料2 0.16%
・チオジグリコール 10.0%
・グリセリン 7.5%
・トリエチレングリコール 3.0%
・上記一般式の化合物(A及びB=C4H7、
X=(C2H4O)n、Y=(C2H4O)m、
n+m=10) 1.5%
・純水 残り
【0175】
【0176】
[評価]
次に、上記で得られた実施例II−1〜21、及び比較例II−1〜9、比較例II−11〜20のインクを用いて、下記評価を行った。得られた結果は、表5にまとめて示した。
(評価1:耐水性)
先に説明した実施例群Iで行ったのと同じ方法にて耐水性を評価した。
【0177】
(評価2:蛍光強度)
励起波長を254nmに変えた以外は上記実施例I群で行った蛍光強度の測定方法と同様にして、蛍光強度の測定を行った。又、実施例IIの群にかかるインクが、実施例Iの群と比較して、より一層強い蛍光強度を示すことを予測して、下記のように、より強い蛍光強度を評価できるように評価基準を設定した。
A:測定蛍光強度値が120以上である。
B:測定蛍光強度値が119〜101である。
C:測定蛍光強度値が100〜80である。
D:測定蛍光強度値が79以下である。
【0178】
【0179】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、耐水性が良好で蛍光性を有する、特には、良好な色調の赤色蛍光インクが得られる。又、本発明によれば、このインクを搭載した記録ユニット、インクカートリッジの提供及び、これを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置により、印字物の耐水性に優れる蛍光画像が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置のヘッドの一例を示す縦断面図である。
【図2】インクジェット記録装置のヘッドの一例を示す横断面図である。
【図3】図1に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図である。
【図4】インクジェット記録装置の一例を示す概略斜視図である。
【図5】インクカートリッジの一例を示す縦断面図である。
【図6】記録ユニットの一例を示す斜視図である。
【図7】インクジェット記録ヘッドの別の構成例を示す概略断面図である。
【図8】色材濃度と蛍光強度の程度を説明するための図である。
【図9】色材濃度と蛍光強度の程度を説明するための図である。
【図10】色材濃度と蛍光強度の程度を説明するための図である。
【図11】別の色材を併用した場合の蛍光強度の程度を説明するための図である。
【図12】別の色材を併用した場合の蛍光強度の程度を説明するための図である。
【図13】別の色材を併用した場合の蛍光強度の程度を説明するための図である。
【図14】別の色材を併用した場合の蛍光強度の程度を説明するための図である。
【図15】本発明の蛍光強度を含む発色のメカニズムを説明するための図である。
【図16】本発明の蛍光強度を含む発色のメカニズムを説明するための図である。
【図17】本発明の蛍光強度を含む発色のメカニズムを説明するための図である。
【図18】本発明の蛍光強度を含む発色のメカニズムを説明するための図である。
【図19】本発明の蛍光強度を含む発色のメカニズムを説明するための図である。
【図20】本発明の蛍光強度を含む発色のメカニズムを説明するための図である。
【符号の説明】
13:ヘッド
14:ノズル
15:発熱素子基板
16:保護膜
17−1、17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス(微細孔)
23:メニスカス
24:インク小滴
25:被記録材
26:マルチノズル
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク袋
42:栓
44:インク保持体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通口
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基板
85:吐出口
801:蛍光色材
803:インク滴
805:溶媒
807:セルロース繊維
901:定着したインク滴
1001:定着したインク滴
1101:定着したインク滴
1201:蛍光色材
1203:併用される色材
1203−1:化学・物理的に結合した併用される色材
1203−3:遊離している併用色材
1301:定着したインク滴
1401:定着したインク滴
1501:第1の有機化合物
1503:第2の有機化合物
1505:色材
1507:水性液媒体
1509:被記録材
1901:色材と第2の有機化合物の層
1903:色材と第1の有機化合物の層
1905:気液界面
1907:液液界面
2001:界面活性剤のミセル層
Claims (23)
- 少なくとも色材と、これを溶解するための水性液媒体とを有するインクにおいて、色材として、C.I.アシッドレッド52と、少なくとも1種の直接染料とを含み、C.I.アシッドレッド52の含有量がインク全量に対して0.1〜0.4質量%であり、直接染料の含有量がインク全量に対して0.11〜0.4質量%であり、且つ、C.I.アシッドレッド52に対して直接染料が1.6重量倍以下の範囲で含有されることを特徴とする蛍光インク。
- 直接染料が、2以上のアゾ基を有する染料である請求項1に記載の蛍光インク。
- 直接染料が、2量体構造を有する請求項2に記載の蛍光インク。
- 水性液媒体が、水を含んでいる請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光インク。
- 水性液媒体が、水溶性有機溶剤を含んでいる請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光インク。
- 互いに相溶性がなく、水の蒸発に伴って液−液の状態で分離を生じる第1及び第2の有機化合物を更に含み、該第1及び第2の有機化合物は、前記水性液媒体に溶解又は分散されるものである請求項4又は5に記載の蛍光インク。
- 前記第1及び第2の有機化合物の一方は、溶解度パラメーター値が15以上であって、他方は溶解度パラメーター値が13以下である請求項6に記載の蛍光インク。
- 前記第1及び第2の有機化合物は、共に水溶性である請求項6又は7に記載の蛍光インク。
- 前記第1及び第2の有機化合物の一方がグリセリン基を有している請求項6に記載の蛍光インク。
- 前記グリセリン基を有している化合物が、水酸基を3個以上有している請求項9に記載の蛍光インク。
- 前記第1及び第2の有機化合物の一方が、ノニオン系界面活性剤である請求項6に記載の蛍光インク。
- 前記ノニオン系界面活性剤のHLB値が、13以下である請求項11に記載の蛍光インク。
- 前記ノニオン系界面活性剤は、色材を除いたインクの状態で、インク界面で分離しない量をインク中に含有されている請求項11又は12に記載の蛍光インク。
- 前記ノニオン系界面活性剤が、アセチレン基を有している請求項11に記載の蛍光インク。
- ノニオン系界面活性剤が、インク全量を基準として1質量%以上含有されている請求項11〜15のいずれか1項に記載の蛍光インク。
- 更に、一価アルコールを含んでいる請求項6〜16のいずれか1項に記載の蛍光インク。
- 前記直接染料の親水基の対イオンとしてアンモニウムイオンを含む請求項1〜17のいずれか1項に記載の蛍光インク。
- インクジェット用インクである請求項1〜18のいずれか1項に記載の蛍光インク。
- 請求項19に記載の蛍光インクを収容しているインク収容部、及び該インクを吐出させるためのヘッド部を備えていることを特徴とする記録ユニット。
- 請求項1〜19のいずれか1項に記載の蛍光インクを収容しているインク収容部を具備していることを特徴とするインクカートリッジ。
- 請求項19に記載の蛍光インクにエネルギーを与えて、記録ヘッドから吐出させる工程を有することを特徴とするインクジェット記録方法。
- 請求項19に記載の蛍光インクを収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるための記録ヘッド部とを有することを特徴とするインクジェット記録装置。
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