JP4994364B2 - 拡散媒体、燃料電池、及び燃料電池を電力源とするシステム - Google Patents

拡散媒体、燃料電池、及び燃料電池を電力源とするシステム Download PDF

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Description

本発明は概して拡散媒体に関し、本発明に従う拡散媒体を用いる燃料電池に関し、そしてそのような燃料電池を用いる燃料電池を電力源とするシステム(fuel cell powered system)に関する。より詳細には、本発明は、燃料電池や他のタイプの装置内の水の輸送の困難さに対処する拡散媒体の使用に関する。
燃料電池は多くの用途において電力源として用いられており、電気自動車用の電力プラントとして内燃機関エンジンの代わりに用いることが提案されている。プロトン交換膜(proton exchange membrane, PEM)型燃料電池では、燃料電池のアノードに水素が供給され、カソードに酸素が酸化剤として供給される。PEM型燃料電池は、薄いプロトン伝導性の非導電性固体ポリマー電解質膜を有する膜電極アセンブリ(membrane electrode assembly, MEA)を含む。固体ポリマー電解質膜(solid polymer electrolyte membrane)は、一方の面にアノードを有し、他方の面にカソードを有する。MEAは、一対の導電性要素の間にはさまれる。この導電性要素は、(1)アノード及びカソードについて電流コレクタとして働き、(2)燃料電池のガス状反応物をアノード触媒及びカソード触媒のそれぞれの表面へと分配する適切なチャネル及び/又は開口部をその中に有する。複数の個々の燃料電池は、通常束になって、PEM型燃料電池スタックを形成する。燃料電池という用語は、典型的に、文脈に依存して、単一のセルあるいは複数のセル(スタック)をいうのに用いられる。スタック内のセルの群は、典型的にクラスターと呼ばれる。典型的なスタック中の複数のセルの組合わせ方は、General Motors Corporationに譲渡された米国特許番号5,763,113に記載されている。
PEM型燃料電池では、水素(H2)がアノード反応物(即ち燃料)であり、酸素がカソード反応物(即ち酸化剤)である。酸素は純粋形態(O2)であってもよいし、空気(O2とN2の混合物)であってもよい。固体ポリマー電解質は、典型的に、パーフルオロスルホン酸イオノマーのようなイオン交換樹脂から製造される。アノード/カソードは、典型的に微細に分割された触媒粒子を含み、この触媒粒子はしばしば炭素粒子上に担持され、プロトン伝導性樹脂と混合される。触媒粒子は典型的にコストのかかる貴金属の粒子である。触媒化された電極を含むこれら膜電極アセンブリは、プロトン伝導性の最適化及びフラッディング(flooding)の回避のために、一定量の水和を維持するための一定の制御条件を必要とする。
燃料電池の効率的な作動は、反応が生じる電極の触媒部位において反応ガスを効率的に分散させる能力に少なくとも部分的に依存する。さらに、生成物である水を効率的に除去して、触媒部位への新鮮な反応物の流れを阻害しないようにすることが望ましい。従って、反応が生じるMEAへの、及びMEAからの、反応物及び生成水の移動を改善させることが望ましい。
反応が生じるMEAへの及びMEAからの反応物及び生成種の移動を改善させるために、燃料電池のMEA内の電極への及び電極からの物質移動効果を高める拡散構造(diffusion structure)が用いられる。拡散構造は、セルの膜電解質とは反対側の電極の主表面において、電極と協同し相互作用するので、導電性及び熱伝導性が必要とされる。拡散構造は反応ガスの電極への供給を促進させる。拡散構造は本明細書では拡散媒体(diffusion media)と呼ぶ。例えば、本願の譲受人に発行された米国特許番号6,350,539を参照のこと。拡散媒体は、個々の燃料電池のMEAとカソード又はアノード流路との間に配置される。比較的典型的である拡散媒体の一例には、カーボンペーパーのような導電性の多孔質媒体が含まれる。
PEM型燃料電池の作動の際、MEA内に生じる水素と酸素との間の電気化学的反応により、カソード側に水が生じる。水はまた、典型的には、反応ガス流を通じて燃料電池内へと導入され、膜を加湿して良好なプロトン伝導性を確保させる。PEM型燃料電池は相対的に過剰な水を有することがあり、もしシステムから水が除去されなければ、水は酸化性ガスとカソード電極との間の輸送路を妨害する可能性がある。カソード側での潜在的な酸化剤窮乏(oxidant starvation)に加え、ガス流路内の水の塊(water slug)はアノード側でも形成させる可能性があり、これは水素窮乏の原因となり得る。アノード側の水は、水素ガスの外部からの加湿や、膜を通じての逆向きの(カソードからアノードへの)拡散によって生じ得る。これらが生じると、燃料電池の効率が低下し、最終的にはシステムの停止につながり得る。この現象は“フラッディング”と呼ばれる。従って、水を管理することは燃料電池の効率的な作動のためには比較的重要な要素である。
拡散媒体はPEM型燃料電池の水管理において相対的に重要な役割を果たす。拡散媒体は水の移動を促進させ、MEA内の反応ガスと触媒電極との間の良好な輸送経路を確保させることができる。これを達成するための1つの慣用的な方法は、拡散媒体(例えばカーボンペーパー)を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような疎水性材料で被覆することである。このPTFE被覆は、拡散媒体をより疎水性にし、かくして水が拡散媒体中の流路をふさぐのを妨げる。いまだなお、より効率的な水の管理を提供する他の水管理特性の探求がされている。ガス拡散媒体により、燃料電池内の高い水管理性のための流路を提供することが望ましいだろう。
本発明の概要
少なくとも一態様において、本発明は、第一主面及び第二主面を含む外部表面を有する多孔質マトリクスと、多孔質マトリクスの少なくとも一部の上の親水性ポリマー被覆とを含み、該親水性被覆は、親水性モノマーを含む配合物(formulation)の硬化生成物(cured product)を含んでなる。
少なくとも別の態様において、本発明は、アノード、カソード、アノードとカソードとの間に配置されたPEM、及びアノード、カソードの少なくとも1とPEMとの間に配置された拡散媒体を有する燃料電池を含む。拡散媒体は、第一主面及び第二主面を含む外部表面を有する多孔質マトリクスと、該外部表面の少なくとも一部の上の親水性ポリマー被覆とを含む。該親水性被覆は、親水性モノマーを含む配合物の硬化生成物を含んでなる。
少なくともさらに別の態様において、本発明は、拡散媒体を製造する方法を含む。この方法は、多孔質マトリクスを準備すること、そして、該多孔質マトリクスの少なくとも一部を親水性ポリマー被覆で被覆すること、を含む。少なくとも一態様において、この被覆工程は、親水性モノマーを含む親水性配合物に多孔質マトリクスをさらして多孔質マトリクス上に被覆前駆体を形成させること、その前駆体が被覆された多孔質マトリクスの第1の部分をマスクし、一方で、マトリクスのマスクされていない第2の部分を残すこと、そして、この前駆体が被覆された多孔質マトリクスにUV光を当てて、該マトリクスの該第二の部分の上にある該被覆前駆体をUV硬化させ、該第二の部分の上に親水性ポリマー被覆を形成させること、を含む。
本発明の適用のさらなる領域は、本明細書に示される詳細な説明から明らかとなるだろう。詳細な説明と具体的な実施例とは、本発明の好ましい態様を示してはいるが、例示の目的のみが意図されており、本発明の範囲を制限することは意図されていない。
好ましい態様の詳細な説明
以下の好ましい態様の説明は、例示の性質のみを有し、本発明、その適用又は用途を制限することを意図しない。現在好ましいとされる本発明の組成、態様、及び方法についての言及が詳細になされ、これは本発明者らが現在知っている本発明を実施する最良の形態を構成している。図面は必ずしもみなくてよい。しかし、開示された態様は、本発明の例示のみを示し、多様な変更形態を包含することが理解されるべきである。従って、本明細書で具体的に開示された詳細は、限定の意味で解釈されるべきではなく、特許請求の範囲の代表的な基礎及び/又は当業者が本発明を多様に利用することへの教示のための代表的な基礎としてのみ解釈されなければならない。
実施例又は他のところで明確に示していない限り、本明細書で材料の量或いは反応及び/又は使用の状態を示す数値量は、本発明の最も広い範囲を説明する「約」の語により修飾されていると理解すべきである。言及される数値限定の範囲内の実施が一般に好ましい。また、特に反対のことが明示されていなければ:パーセント、“部”、及び比の値は重量基準であり;用語“ポリマー”は“オリゴマー”、“コポリマー”、“ターポリマー”等を含み;本発明に関連する目的のための適する又は好ましい材料の群又はクラスの記載は、その群又はクラスのメンバーの任意の2以上の混合物が等しく適する又は好ましいことを示し;化学用語の成分の記載は本明細書に特定した任意の組合わせに添加する際の成分を示し、一度混合された混合物の成分間の化学的相互作用を必ずしも排除せず;頭文字又は他の省略形の最初の定義は、本明細書にその後に用いられる同じ省略形のすべてと、最初に定義された省略形の通常の文法的な変更形とに適用され;そして、特に反対のことを明示しない限り、特性の測定は同じ特性について前又は後に言及されるのと同じ技法によって測定される。
図1を最初に参照する。本発明に従う多孔質拡散媒体20を組込んだ例示燃料電池10が示されている。詳細には、燃料電池10は、燃料電池10のアノード流動場(flow field)40とカソード流動場50との間にはさまれた膜電極アセンブリ30を含む。流動場40、50及び膜電極アセンブリ30は本発明の範囲から逸脱しない範囲で、慣用的な形態やさらに開発された形態の多様な形態をとることができる。特定の形態の膜電極アセンブリ30は本発明の範囲を超えるが、例示態様において、膜電極アセンブリ30は触媒電極層32とイオン交換膜34のそれぞれを含む。
図2を参照する。本発明の一態様に従う多孔質拡散媒体20が示されている。拡散媒体20は、親水性ポリマー被覆24を多孔質マトリクスの表面の少なくとも一部の上に有する多孔質マトリクス22を含む。少なくとも一の態様において、親水性ポリマー被覆24は硬化されたポリマーを含み、その硬化されたポリマーは、被覆された媒体20を、90°未満、他の態様では75°未満、さらに他の態様では50°未満、さらに他の態様では15°未満、さらに他の態様では10°未満、さらに他の態様では5°未満、そしてさらに他の態様では0°の接触角とするのに適する。親水性被覆24は、媒体20を通じて水を逃がすのに有効な水流路を提供することができる。多孔質媒体についての接触角0°は、水が拡散媒体20を通じて本質的に直ちに移動又は輸送されるであろうことを意味する。
少なくとも一の態様において、被覆24は、重合され架橋された親水性モノマーであり、これは被覆されたマトリクス22を親水性(即ち、90°未満の接触角)にする。モノマーは多孔質マトリクス22の表面上にグラフト重合及び/又は架橋モノマーの堆積により堆積させることができる。少なくとも一の態様において、被覆24は1nm(ナノメーター)〜1μm(ミクロン)の厚さであり、別の態様では5〜100nmの厚さであり、さらに別の態様では10〜50nmの厚さである。1nm未満の厚さでは、マトリクス22は十分には親水性にならないだろう。1ミクロンを超える厚さでは、マトリクス22の透過性が損なわれ得る。
多孔質マトリクス22は、導電性材料、カーボンペーパー、グラファイトペーパー、布、フェルト、フォーム、カーボン又はグラファイト織物、カーボン又はグラファイト不織布、金属製スクリーン又はフォーム、そしてこれらの組合わせのような、任意の適切な多孔質マトリクス材料を含むことができる。マトリクス22の寸法は、多孔質拡散媒体20が用いられるべき特定の用途に付随するデザイン要求に大きく依存するだろうが、20μm〜1000μm、又はより特定的には200μmの厚さdに用途が見いだされやすいことに言及しておく。同様に、例示であって非限定的であるが、多孔質マトリクスは、0.5インチの水で50ft3/分/ft2の透水値(permeometer number)(Gurley Permeometer、モデルNo.4301で測定)、より一般には0.5インチの水で20ft3/分/ft2〜100ft3/分/ft2のGurley透水値により特徴付けられる孔を画定することができる。この内容において、多孔度は、空気が材料のサンプル中をどの程度容易に通過できるかの測定値であることに言及しておく。Gurleyテストは、サンプル中を所与の容量の空気が通過するのに必要な時間を測定する。
重合可能なモノマーをグラフト及び/又は堆積(deposition)により多孔質マトリクス22へと重合及び架橋することは、孔の内部表面を含む多孔質マトリクスの実質的に全ての表面(即ち、多孔質マトリクス厚さd又はバルク(bulk)を通じての全ての表面)を架橋/グラフトポリマーにより完全に被覆するのに有効であるといえる。或いは、被覆24は、表面又はバルク全体の一部(d未満、例えばdの半分)、マトリクス22の一側面又は両面、マトリクス22の一又は両面の一部、及び/又はストリップ又は他の個々の形状の被覆のように、マトリクス22の表面全体よりも少なく制限されてもよい。
一プロセス態様において、フリーラジカル重合可能なモノマー、重合開始剤、及び架橋剤をその反応成分に適する溶媒や他の希釈剤中に含む反応剤浴(reagent bath)を、多孔質マトリクス22と接触させる。処理されたマトリクス22は、次いでモノマーのフリーラジカル重合と、架橋ポリマーによる多孔質マトリクスの被覆とが行なわれる条件下におかれる。モノマーが二官能性であるか又はより高い官能性を有しているときは、追加の架橋剤を用いる必要はない。
ポリマーを被覆するためのモノマーは、親水性であり、フリーラジカル重合により重合させることができ、そして架橋させることができるならば、いずれのモノマーでもここで用いることができる。適する親水性モノマーは、これらに限定されないが2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−及び3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエトキシエチルアクリレート、及びポリエトキシプロピルアクリレートを含むヒドロキシ置換エステルアクリレート及びエステルメタクリレートであり;これらに限定されないがN−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジメチル−アミノエチル、N,N−ジエチル−アミノエチル、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、N−[3−ジメチルアミノプロピル]アクリルアミド、及び2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリルアミドを含むアクリルアミド、メタクリルアミド、及びその誘導体であり;ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートであり;ポリプロピレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレートであり;アクリル酸であり;メタクリル酸であり;2−及び4−ビニルピリジンであり;4−及び2−メチル−5−ビニルピリジンであり;N−メチル−4−ビニルピペリジンであり;2−メチル−1−ビニルイミダゾールであり;ジメチルアミノエチルビニルエーテルであり;N−ビニルピロリドンであり;イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、及びマレイン酸であり;スチレンスルホン酸であり、そしてそれらの混合物であるが、これらに限定されない。少なくとも一の態様において、特に適するモノマーにはポリエチレングリコールアクリレートが含まれる。
上記のモノマーに適する架橋剤は、当該分野でよく知られている。適する剤には、これに限定されないが、2個又は複数の不飽和官能基を有するモノマーが含まれ、これには、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのジアクリレート及びジメチルアクリレート、トリメチロイルプロパントリアクリレート及びトリメタクリレート、ジ−トリメチロイルプロパン、テトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルスルホンシリコン含有ジアクリレート及びジメタクリレートが含まれるがこれらに限定されない。少なくとも一の態様において、特に適する架橋剤にはポリエチレングリコールジアクリレートが含まれる。
上記のモノマーに適する開始剤は、当該分野でよく知られている。適する開始剤には、過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)、過硫酸カリウム、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス塩酸(2−アミジノプロパン)、過硫酸水素カリウム、ケトン等が含まれるがこれらに限定されない。少なくとも一の態様において、特に適する架橋剤には、Ciba Specialty Chemicals IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−サイクル−フェニル−ケトン)のようなケトンが含まれる。
重合可能なモノマー、重合開始剤、及び架橋剤に用いられる特定の溶媒組成又は希釈剤は、用いられる特定の反応剤に依存するだろう。反応剤が溶媒に溶解し、溶媒が多孔質マトリクス22に攻撃を与えないことのみが必要とされる。代表的な適する溶媒組成物には、(a)水、そして(b)N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、イソプロパノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、炭酸プロピレン、ガンマブチロラクトン、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、テトラメチルウレア等のような水と混和できる有機溶媒、が含まれる。
一般に、重合可能なモノマーは、反応剤溶液中に、反応剤溶液の重量に基づいて少なくとも一態様において1〜100wt%の濃度で、別の態様で5〜50wt%にて、さらに別の態様で10〜30wt%にて一般に存在することができる。少なくとも一の態様において、架橋剤は一般に、反応剤溶液の重量に基づいて、0.5〜100wt%の量にて、別の態様では1〜25wt%にて、さらに別の態様では2〜10wt%にて存在することができる。少なくとも一の態様において、重合開始剤は、反応剤溶液の重量に基づいて、0.01〜10wt%の量にて、別の態様では0.5〜5wt%にて、さらに別の態様では1〜3wt%にて一般に存在することができる。上記の通り、架橋剤はモノマーなしで用いることができ、その場合は、重合可能なモノマーとして機能するだろう。
フリーラジカル重合を開始させるための任意の慣用的なエネルギー源、例えば、紫外線、加熱、ガンマ線、電子ビーム放射等を用いることができる。少なくとも一の態様において、重合反応は、多孔質マトリクス22の望まれる表面が堆積ポリマー組成物により被覆されるがマトリクス22の孔が実質的にふさがれないような時間において行なわれるべきである。少なくとも一の態様において、親水性ポリマー被覆24は、多孔質マトリクス22のガス透過性を、初めのガス透過性に対して40%未満に、他の態様では25%未満に、さらに他の態様では15%未満に低減させる。一般に、少なくとも一の態様において、適する反応時間は0.1〜30分であり、他の態様では1〜4分である。反応は、多孔質マトリクス22が溶液に浸漬される間有効であろう。しかし、これにより、溶液全体を通じてのモノマーの重合が起こり得るだろう。多孔質マトリクス22を反応剤溶液で飽和させることが好ましく、モノマーが無駄に消費されないように溶液の外で反応を行わせることが好ましい。かくして、反応は、バッチ式で行ってもよく、連続して行ってもよい。連続法を行なうときは、多孔質マトリクス22のシートを反応剤溶液で飽和させて、次いで反応ゾーンへと送り、そこで重合反応を起こさせるエネルギーにさらす。
上記の通り、少なくとも一の態様において、親水性ポリマー被覆24は多孔質マトリクス22の表面全体上に配置されてもよい。少なくとも別の態様において、親水性ポリマー被覆24は、多孔質マトリクス22の表面全体よりも少ない部分に配置されてもよい。例えば、少なくとも一定の態様において、親水性ポリマー被覆24は、マトリクス22の主面21又は23の一又は両方に配置されてもよく、マトリクスの主面21、23の一又は両方の一部に配置されてもよい。さらに、少なくとも別の態様において、親水性ポリマー被覆24は、マトリクス22の主面21、23の一又は両方の実質的に全て又は一部に配置されてもよく、主面21、23の被覆された部分の間でマトリクス22のバルク中へと実質的に伸びていてもよい。
図2及び4をまとめて参照する。親水性被覆24の例示的な間隔領域(spaced region)26が拡散媒体の第一及び第二主面21、23の間の多孔質拡散媒体20の断面を通じて分配され、第一及び第二主用面21、23にわたって交互に存在してもよい一定の例が示されている。この態様において、多孔質マトリクス22の実質的に被覆されていない領域28は、親水性被覆領域間にあることができる。例示の目的及び非限定的に、本発明の一態様によれば、親水性被覆の間隔領域26は、5.0cm未満の周期であり、別の態様によれば1.0cm未満であり、さらに別の態様によれば0.5cm未満であり、さらに別の態様によれば0.25cm未満であることにより特徴付けられることが着目される。当然であるが、親水性領域26の周期性、形状、及びサイズは、多孔質拡散媒体20が用いられるべき特定の用途に付随するデザイン要求に大きく依存する。
図2〜4に例示される本発明の親水性被覆領域26の間隔のあいた配置は、拡散媒体20を、水移動が促進される領域26と、ガス移動が促進される領域28とに分割することにより、水移動とガス移動との間の干渉を制限させることができる。
本発明の一定の態様において、親水性領域26は、接触角が90°未満、他の態様では75°未満、さらに他の態様では50°未満、さらに他の態様では25°未満、さらに他の態様では15°未満、さらに他の態様では10°未満、さらに他の態様では5°未満、そしてさらに他の態様では0°になるように十分に親水性であるように画定させることができる。
図2〜4にも示されるように、少なくとも一の態様において、多孔質拡散媒体20は、拡散媒体20の1つの面、例えば第二主面23の少なくとも一部に沿って配置された疎水性層の形態のような、疎水性材料25を含んでもよい。疎水性材料25は、典型的に、多孔質マトリクス22の表面上に比較的薄い疎水性の被覆層、例えば1μm以下の厚さ、を形成し、多孔質マトリクス22のガス透過性を有意に低減させないようにする。例示態様において、疎水性材料25は、拡散媒体20上の液体の水滴の蓄積を防止する役割をする。疎水性材料25は、多孔質拡散媒体20の被覆領域26及び未被覆領域28の両方に比べて、より水滴をはじく、即ち、より疎水性であることが好ましいことが意図される。
疎水性材料25は、通常、フルオロポリマーからなる。例示及び非限定的には、適するフルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、エチレン及びテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレン及びプロピレン(FEP)、パーフルオロメチルビニルエーテル、フッ化ビニリデン等、そしてこれらの組合わせ、から製造することができる。
少なくとも一の態様において、親水性ポリマー被覆24及び疎水性材料25は、多孔質マトリクス22について異なるパターンで配置されて、拡散媒体20内に、水輸送が促進される領域と、ガス輸送が促進される領域とを形成させることができる。このタイプの配置では、水輸送は親水性被覆24で被覆されたマトリクス22の一部26において促進され、ガス輸送は疎水性材料25で被覆された領域28で促進されるだろう。
少なくとも一の態様において、本発明の拡散媒体20は、多孔質マトリクス22を、溶媒(もし必要ならば)、親水性モノマー、架橋剤(もし必要ならば)、及び好ましくは開始剤の溶液にさらすことにより製造される。少なくとも一の態様において、多孔質マトリクス22は、多孔質マトリクス22を溶液中に漬けることにより溶液にさらされる。処理された多孔質マトリクス22は、次いで、乾燥されて、全ての溶媒が揮発されて、被覆前駆体をその上に有する処理された多孔質マトリクス22となる。被覆前駆体をその上に有する多孔質マトリクス22を次いで、UV光のような硬化手段へとさらして被覆24を多孔質マトリクス22上に硬化させ、拡散媒体20を形成させることができる。
代替態様において、親水性被覆24の選択位置は、被覆前駆体を上に有する多孔質マトリクス22を、金属又はプラスチック板のような適切なマスクで覆って、次いでマスクされた多孔質マトリクス22を適切な硬化手段へとさらして、多孔質マトリクス22の覆われていない(即ちマスクされていない)領域を硬化させることにより製造することができる。UV光は、マスクにより覆われた被覆前駆体を硬化させないので、この態様において特に適する硬化手段はUV光である。マスクを除去した後、所定の被覆層24を有する多孔質マトリクス22を次いで、溶媒でのすすぎにさらして、多孔質マトリクス22から未硬化の被覆前駆体を除去させることができる。親水性被覆24で被覆された部分を有する多孔質マトリクス22を次いで、乾燥させて、拡散媒体を形成させることができる。また、マスクを用いる以外の方法は、親水性モノマー溶液を、親水性被覆24で塗布されるべき個別の領域26のみに選択的に塗布することであり、これも意図されている。もし望むなら、任意の適切な方法で、親水性被覆24での被覆の前又は後に、疎水性材料25を拡散媒体20へと配置又は固定させてもよい。疎水性材料25を用いる場合、気相PTFE堆積(vapor phase PTFE deposition)のような任意の適切な方法で媒体20上に配置させることができる。
図5を参照する。本発明に従う装置が、本発明の燃料電池10及び燃料貯蔵機構15に組合わせて、燃料電池駆動モータ自動車100を画定する追加の構造を含んでもよいことが示される。しかし、他の燃料電池システムの用途、例えば、家庭用システムの領域なども本発明の恩恵を受けることができることを理解すべきである。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明は実施例により限定されないことが理解されるべきである。
0.1gのポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、0.4gのポリエチレングリコールアクリレート(PEGA)、0.02gの光開始剤Irgacure184(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能)、及び1.5mlのイソプロパノールを含む親水性被覆組成の配合物を調製する。炭素繊維拡散媒体を次いでその溶液に1分間浸漬させる。この拡散媒体を次いで溶液から取り出し、5分間空気にさらしてイソプロパノール溶媒を蒸発させる。処理された拡散媒体を次いでUV硬化にさらす。
親水性被覆の耐久性を試験するために、親水性被覆を有する拡散媒体を95℃に加熱された水に3日間さらして、その後に95℃の酸性水溶液(pH=2)に3日間さらす。水と酸性水溶液への被曝後、この拡散媒体は親水性を維持し、それはこの親水性被覆が非常に安定で、拡散媒体の多孔質マトリクスに適切に接着していることを示している。
「好ましくは」、「通常」、そして「典型的に」のような語は、本明細書において、特許請求された発明の範囲を限定するために用いられるのではなく、また、特許請求された発明の構造又は機能に一定の特徴が不可欠であり本質的でありまた重要であることを示すために用いられるのでもない。むしろ、これらの語は、本発明の特定の態様に用いても用いなくてもよい代替物や追加の特徴を強調することのみを意図している。
本発明を説明し定義する目的で、用語「実質的に」は、本明細書において、本質的に不明瞭な度合いを表すために用いており、これは量の比較、値、測定値、又は他の代表値のどれにも当てはまる。用語「実質的に」は、本明細書において、また、言及された量的な代表値が、論点となる構成の基本的な機能に変化を生じない程度に変動し得ることを表している。
本発明の態様を例示し説明してきたが、これら態様は本発明の可能な形態をすべて例示し説明することは意図されていない。むしろ、本明細書に用いられる用語は、限定というよりも説明のための語であり、本発明の精神及び範囲から逸脱しない範囲内で多様な変更がなされ得ることが理解される。さらに、本発明の幾つかの側面は、好ましい利益又は特定の利益として本明細書中に明らかにされているが、本発明は必ずしもこれらの本発明の好ましい側面に限定されるものではないことが意図されている。
図1は、本発明の多孔質拡散媒体を組込んだ燃料電池の拡大概略図である。 図2は、本発明の態様に従う拡散媒体の例示図である。 図3は、本発明の態様に従う拡散媒体の例示図であり、触媒層に接して配置されている。 図4は、本発明の他の態様に従う拡散媒体の代表的な概略である。 図5は、本発明に従う多孔質拡散媒体を用いる燃料電池を組込んだ自動車の例示図である。

Claims (17)

  1. 第一主面及び第二主面を含む外部表面を有する多孔質マトリクス;及び
    該外部表面の少なくとも一部の上にある親水性ポリマー被覆
    を有し、該親水性被覆が、親水性モノマーを含む配合物の硬化生成物を含み、該親水性モノマーはグリコールアクリレートまたはグリコールメタクリレートを含み
    該多孔質マトリクスは厚みを有し、該多孔質マトリクスは内部表面を規定する孔を有し、該多孔質マトリクス内の該孔の内部表面の少なくとも一部に該親水性ポリマー被覆が形成されており、
    該孔の内部表面の少なくとも一部は該多孔質マトリクスの厚み全体にわたって被覆されている、多孔質拡散媒体。
  2. 該親水性被覆が、該拡散媒体の第一及び第二主面の1に沿って90°未満の接触角を画定するのに十分なほど親水性である、請求項1に記載の多孔質拡散媒体。
  3. 該親水性被覆が、該拡散媒体の第一及び第二主面の1に沿って25°未満の接触角を画定するのに十分なほど親水性である、請求項1に記載の多孔質拡散媒体。
  4. 該親水性被覆が、該拡散媒体の第一及び第二主面の1に沿って0°の接触角を画定するのに十分なほど親水性である、請求項1に記載の多孔質拡散媒体。
  5. 該多孔質マトリクスが、カーボンペーパー、グラファイトペーパー、布、フェルト、フォーム、カーボン又はグラファイト織物、カーボン又はグラファイト不織布、金属製スクリーン又はフォーム、及びこれらの組合わせの少なくとも1を含む導電性材料を含んでなる、請求項1に記載の多孔質拡散媒体。
  6. 該多孔質マトリクスが20μm〜1000μmの厚さを有し、該親水性被覆が1nm〜1
    μmの厚さを有する、請求項4に記載の多孔質拡散媒体。
  7. 該親水性モノマーが、ポリエチレングリコールアクリレートを含む、請求項に記載の多孔質拡散媒体。
  8. 該親水性モノマーがUV硬化可能である、請求項に記載の多孔質拡散媒体。
  9. 該配合物が、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、光開始剤、及び溶媒を含む、請求項に記載の多孔質拡散媒体。
  10. 該多孔質拡散媒体がさらに疎水性材料を含む、請求項1に記載の多孔質拡散媒体。
  11. 該疎水性材料が、該拡散媒体の第一及び第二主面の1に沿って配置される、請求項10に記載の多孔質拡散媒体。
  12. 多孔質拡散媒体が親水性ポリマー被覆の領域と、未被覆の領域を含み、該親水性ポリマー被覆の領域と該未被覆の領域は、該拡散媒体の第一及び第二主面の少なくとも1にわたって交互に存在する、請求項1に記載の多孔質拡散媒体。
  13. 多孔質拡散媒体が親水性ポリマー被覆の領域と、疎水性材料被覆の領域を含む、請求項10に記載の多孔質拡散媒体。
  14. 該交互に存在する領域が、5cm未満の周期により特徴付けられる、請求項13に記載の多孔質拡散媒体。
  15. アノード;
    カソード;
    アノード及びカソード間に配置されたPEM;
    アノード及びカソードの少なくとも1とPEMとの間に配置された拡散媒体
    を含む燃料電池であって、
    該拡散媒体は:
    第一主面及び第二主面を含む外部表面を有する多孔質マトリクス;及び
    該外部表面の少なくとも一部の上にある親水性ポリマー被覆
    を含んでなり、
    該親水性被覆は、親水性モノマーを含む配合物の硬化生成物を含該親水性モノマーはグリコールアクリレートまたはグリコールメタクリレートを含み、
    該多孔質マトリクスは厚みを有し、該多孔質マトリクスは内部表面を規定する孔を有し、該多孔質マトリクス内の該孔の内部表面の少なくとも一部に該親水性ポリマー被覆が形成されており、
    該孔の内部表面の少なくとも一部は該多孔質マトリクスの厚み全体にわたって被覆されている、燃料電池。
  16. 請求項1に記載の拡散媒体を製造する方法であって、次の工程
    多孔質マトリクスを準備する工程;及び
    多孔質マトリクスの少なくとも一部を親水性ポリマー被覆で被覆する工程
    、この順で含む、方法。
  17. 該被覆する工程、次の工程
    該多孔質マトリクスを、親水性モノマーを含む親水性配合物にさらして該多孔質マトリクス上に被覆前駆体を形成させる工程
    該前駆体が被覆された多孔質マトリクスの第一の部分をマスクし、一方、マスクされていないマトリクスの第二の部分を残す工程;及び
    該前駆体が被覆された多孔質マトリクスをUV光へとさらし、該マトリクスの第二の部分上に該被覆前駆体をUV硬化させて、該第二の部分上に該親水性ポリマー被覆を形成させる工程
    、この順で含む、請求項16に記載の方法。
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