===電力系統安定化装置===
図1及び図2を参照しつつ、本実施の形態の電力系統安定化装置1の構成例について説明する。尚、図1は、電力系統安定化装置1の構成例を示すブロック図であり、図2は、本実施の形態の電力系統2の構成例を示す系統図である。
図1に例示されるように、電力系統安定化装置1は、系統情報収集装置(取得装置)12と、演算装置(制御装置)11と、親局(制御装置)10と、事故検出装置(検出装置)71及び子局70と、後述する送電線211、209の開閉器23、21及び子局22、20(制御装置)と、発電機用の遮断器31及び子局30(制御装置)と、負荷用の遮断器41及び子局40(制御装置)と、電力用コンデンサ(SC:Shunt Capacitor、調相器)51及び子局50(制御装置)と、分路リアクトル(ShR:Shunt Reactor、調相器)61及び子局60(制御装置)と、伝送路80とを備えている。
系統情報収集装置12は、電力系統2内に配置されて、同電力系統2における発電機の端子電圧Vs、送電線の有効電力P、送電線の無効電力Q、送電線の電流I、負荷母線の電圧Vr等の運用情報と、同電力系統2における開閉器23、21、遮断器31、41、電力用コンデンサ51、分路リアクトル61等の開閉状態の機器情報とを有する系統情報を取得する情報処理装置である。
演算装置11は、系統情報収集装置12により取得された系統情報に基づいて、電力系統2の過渡安定度を計算する情報処理装置である。この演算装置11は、具体的には、事故ごとに、電力系統2の動特性モデルを用いた過渡安定度計算を通じて同電力系統2の安定度(即ち、脱調するか否か)を判定しつつ、開閉制御するべき開閉器23、21(即ち、当該送電線とループを形成する又はしない送電線)の選択、同開閉制御のタイミング、開閉制御するべき調相器51、61の選択、開制御するべき遮断器31、41の選択等を行なう。ここで、本実施の形態では、事故後に調相器51、61の開閉制御及び送電線どうしでループを形成する又はしない制御のみを行なう想定で電力系統2の過渡安定度計算が行われ、もしこの計算結果が電力系統2の安定度として不十分という結果になった場合には、これらとともに遮断器31、41の開制御(即ち、電制、負制)を行なう想定で電力系統2の過渡安定度計算が再度行われる。
親局10は、CPU101、ROM102、RAM103、タイマ104、及び記憶装置105を備えた制御装置である。CPU101は、事故ごとに、演算装置11により過渡安定度計算に基づいて選択された開閉器23、21、調相器51、61、及び遮断器31、41にそれぞれ対応する子局22、20、50、60、30、40に対し所定の制御信号(投入指令及び遮断指令)を送信する処理等を実行する。ROM102は、例えばこのような処理の手順を定めるプログラム等を記憶する。RAM103は、例えばこのような処理に用いられる各種データ等を記憶する。タイマ104は、子局22、20、50、60、30、40に対し所定の制御信号を送信するタイミングを定める時間を計時する。記憶装置105は、例えば、事故位置及び事故様相ごとに、演算装置11による過渡安定度計算に基づいて選択された開閉器23、21、調相器51、61、及び遮断器31、41にそれぞれ対応する子局22、20、50、60、30、40を示す情報を予め格納する。
事故検出装置71は、例えば送電線に設けられた複数の保護リレー(不図示)の状態に基づいて、事故が発生した送電線や同送電線における事故点等を示す事故位置の情報と、同事故の種類や内容等を示す事故様相の情報とを生成し、この情報を検出信号として子局70を介して親局10に送信する検出器である。
子局22、20、30、40、50、60は、親局10から受信した所定の制御信号に基づいて、当該送電線と他の送電線とでループを形成する・しない制御を行なったり、電力系統2に対し、電力用コンデンサ(SC)51及び分路リアクトル(ShR)61を投入又は遮断したり、発電機及び負荷を接続又は遮断したりする制御装置である。
開閉器23、21は、子局22、20に制御されて、当該送電線に対し他の送電線を接続又は遮断する装置である。
遮断器31、41は、子局30、40に制御されて、電力系統2と発電機及び負荷とを接続又は遮断する装置である。
電力用コンデンサ(以後「SC」と略称する)51は、子局50を通じて電力系統2に対し投入又は遮断されることによって、母線の無効電力(Q)を制御する調相器である。具体的には、SC51の投入によって、該当の変電所における母線(例えば図2の母線201a)の電圧が上昇し、SC51の遮断によって、該当の変電所における母線の電圧が下降するようになっている。
分路リアクトル(以後「ShR」と略称する)61は、子局60を通じて電力系統2に対し投入又は遮断されることによって、母線の無効電力(Q)を制御する調相器である。具体的には、ShR61の遮断によって、該当の変電所における母線(例えば図2の母線205a)の電圧が上昇し、ShR61の投入によって、該当の変電所における母線の電圧が下降するようになっている。
伝送路80は、親局10と子局22、20、30、40、50、60、70との間を通信可能に接続する例えばLAN(Local Area Network)等の通信網である。
図2に例示される電力系統2は、同図の紙面の略上下方向に延在する送電線214(第1の送電線)を備えて構成されている。この電力系統2は、例えば3つの系統2a、2b、2cから構成されており、これらの系統2a、系統2b、系統2cは、それぞれ、送電線204a(第1の送電線)、送電線204b(第1の送電線)、送電線204c(第1の送電線)を備えている。本実施の形態では、図2の紙面の上下方向に短い線路として離散的に延在する送電線213(第1の送電線)、送電線208(第1の送電線)、送電線210(第1の送電線)、送電線212(第1の送電線)と、前述した系統2a、2b、2cごとに図2の紙面の左右方向に延在する短い線路である送電線204a、204b、204cとを全て接続して、前述した「送電線214」と総称する。尚、本実施の形態では、送電線204a、204b、204c、213、208、210、212のそれぞれは、一対の線路である。また、本実施の形態では、系統2cにも発電機(不図示)が設けられており、潮流全体の方向は、送電線214の図2の紙面下側から上側へ向いており、同潮流の上流側は系統2c側であり、同潮流の下流側は系統2b側であるものとする。
系統2aは、例えば1つの変電所等に対応し、図2の紙面の上下方向に平行に示される母線207a、205a、201aのうち、母線207aが前述した送電線208、210どうしを接続し、母線207a及び母線205aの間に一対の変圧器206aが並列に接続され、母線205a及び母線201aの間に前述した送電線204aが接続されている。尚、本実施の形態では、母線201aに発電機202a、203a及びSC51が接続され、母線205aにShR61が接続されている。また、母線201aには、所定の送電線(不図示)を介して負荷(不図示)が適宜接続されている。
系統2bは、例えば1つの変電所等に対応し、図2の紙面の上下方向に平行に示される母線207b、205b、201bのうち、母線207bが前述した送電線213、208どうしを接続し、母線207b及び母線205bの間に一対の変圧器206bが並列に接続され、母線205b及び母線201bの間に前述した送電線204bが接続されている。尚、母線201bには、所定の送電線(不図示)を介して負荷(不図示)が適宜接続されている。
系統2cは、例えば1つの変電所等に対応し、図2の紙面の上下方向に平行に示される母線207c、205c、201cのうち、母線207cが前述した送電線210、212どうしを接続し、母線207c及び母線205cの間に一対の変圧器206cが並列に接続され、母線205c及び母線201cの間に前述した送電線204cが接続されている。尚、母線201cには、所定の送電線(不図示)を介して負荷(不図示)が適宜接続されている。
本実施の形態では、系統2aの母線201aと、系統2bの母線201bとは、途中に開閉器21が設けられた送電線209(第2の送電線、第3の送電線)で接続されている。この送電線209は一対の線路であり、開閉器21は一対の送電線209のそれぞれに設けられる一対の開閉器である。尚、図2に例示される開閉器21は開状態であるため、送電線214(第1の送電線)と送電線209(第2の送電線)とは、この時点で、ループを形成していない。一方、後述するように、例えば一対の送電線204aの何れか一方が事故等により開放されたときに、発電機202a、203aの相差角を収束させるべくこの開閉器21を開状態から閉状態にすると、送電線214と送電線209とは、ループL1(図2の紙面を時計方向に見て、送電線209、母線201a、送電線204a、母線205a、変圧器206a、母線207a、送電線208、母線207b、変圧器206b、母線205b、送電線204b、母線201b)を形成することになる。
また、本実施の形態では、系統2aの母線201aと、系統2cの母線201cとは、途中に開閉器23が設けられた送電線211(第2の送電線、第3の送電線)で接続されている。この送電線211は一対の線路であり、開閉器23は一対の送電線211のそれぞれに設けられる一対の開閉器である。尚、図2に例示される開閉器23は閉状態であるため、送電線214(第1の送電線)と送電線211(第3の送電線)とは、この時点で、ループL2(図2の紙面を時計方向に見て、送電線211、母線201c、送電線204c、母線205c、変圧器206c、母線207c、送電線210、母線207a、変圧器206a、母線205a、送電線204a、母線201a)を形成している。一方、後述するように、例えば一対の送電線204aの何れか一方が事故等により開放されたときに、発電機202a、203aの相差角を収束させるべくこの開閉器23を閉状態から開状態にすると、送電線214と送電線211とは、ループを形成しないことになる。
尚、図2では、母線201a、205aにSC51及びShR61がそれぞれ1台ずつ設置されているように図示されているが、これに限定されるものではなく、図2における各母線には例えば1台以上のSC51や1台以上のShR61等が設置されていてもよい。以後、「調相器51、61」は、1台の調相器51、61及び複数台の調相器51、61の双方を含み、複数台の調相器51、61は、特にことわりがなければ、(1)異なる母線に設置された異なる調相器51、61、及び(2)同一の母線に設置された異なる調相器51、61、の双方を含むものとする。
また、一対の開閉器21及び一対の開閉器23についても、以後、「開閉器21、23を開制御し、次に開閉器21、23を閉制御する」等の場合、これらの開閉器21、23は、特にことわりがなければ、(1)一対の開閉器21の双方を開制御し、これと異なる一対の開閉器23の双方を閉制御する、(2)一対の開閉器21の双方を開制御し、これと同一の一対の開閉器21の双方を閉制御する、の双方を含むものとする。或いは、一対の開閉器のそれぞれが個別に開閉制御されてもよい。
===電力系統安定化方法===
図3乃至図6を参照しつつ、前述した構成を備えた電力系統安定化装置1の動作例について説明する。尚、図3(a)は、発電機202a、203aの相差角が拡大する際に送電線214のインピーダンスが一定の場合の電力相差角曲線を示すグラフであり、図3(b)は、発電機202a、203aの相差角が拡大する際に送電線214のインピーダンスが低減する場合の電力相差角曲線を示すグラフである。図4(a)は、発電機202a、203aの相差角が縮小する際に送電線214のインピーダンスが一定の場合の電力相差角曲線を示すグラフであり、図4(b)は、発電機202a、203aの相差角が縮小する際に送電線214のインピーダンスが増加する場合の電力相差角曲線を示すグラフである。図5は、図1の電力系統安定化装置1の親局10及び演算装置11の動作例を説明するためのフローチャートである。図6は、発電機202a、203aの相差角の時間変化の一例を示すダイアグラムである。
先ず、電力系統2における送電線214の事故後の開閉器21、23の開閉制御によって、同電力系統2における発電機202a、203aの相差角の変化範囲を狭めるメカニズムについて説明する。
<<<相差角拡大時にインピーダンス低減>>>
図3(a)に例示されるように、事故前の電力系統2の状態(即ち、発電機202a、203aの運転状態)は、発電機202a、203aの相差角と同発電機202a、203aからの出力(有効電力)との関係を示す「事故前」の電力相差角曲線と、同発電機202a、203aへの入力(機械的入力Pm)を示す直線とが交差する2点のうち、相差角が小さい方の運転点aで表わされる。尚、図3及び図4の電力相差角曲線は、一機無限大母線系統のモデルに基づくものである。例えば、図2における発電機202a、203a及び送電線214に接続された負荷(不図示)や発電機(不図示)等の間の相差角と、図2における送電線214上の有効電力との関係は、一機無限大母線系統のモデルに基づく図3及び図4の電力相差角曲線によって近似的に表わされるものとする。つまり、これから図3及び図4を参照しつつ詳述する電力相差角曲線は、図2に例示される本実施の形態の電力系統2の状態を概ね表わしているものとする。
電力系統2の送電線214で事故が発生した場合(例えば一対の送電線204aの何れか一方の線路の回線断事故等)、電力系統2の状態は、「事故前」の電力相差角曲線上の運転点aから「事故中」の電力相差角曲線上の運転点bへ相差角δ0を維持したままで遷移し、その後、相差角がδ0からδ1へと拡大するように「事故中」の電力相差角曲線に沿って運転点bから運転点cへ移動する。尚、図3(a)に例示されるように、「事故中」の電力相差角曲線は、「事故前」の電力相差角曲線よりも有効電力が小さい側に延在している。
例えば送電線214の事故原因が運転点cで除去された場合、電力系統2の状態は、「事故中」の電力相差角曲線上の運転点cから「事故後」の電力相差角曲線上の運転点dへ相差角δ1を維持したままで遷移し、その後、相差角がδ1からδ2へと拡大するように「事故後」の電力相差角曲線に沿って運転点dから運転点eへ移動する。ここで、相差角が拡大から縮小へ転じる運転点eは、以下述べる等面積の条件によって一義的に定まる。即ち、図3(a)に例示される機械的入力Pmを示す直線と「事故中」の電力相差角曲線との間の運転点bから運転点cまでの加速エネルギーに相当する面積SAは、同図に例示される「事故後」の電力相差角曲線と機械的入力Pmを示す直線との間の運転点dから運転点eまでの減速エネルギーに相当する面積SBに等しい。尚、同図に例示されるように、「事故後」の電力相差角曲線は、一般に、「事故前」の電力相差角曲線よりも有効電力が小さい側且つ「事故中」の電力相差角曲線よりも有効電力が大きい側に延在している。
図3(b)に例示されるように、前述した電力系統2の状態が「事故後」の電力相差角曲線に沿って運転点dから運転点eへ移動する途中で、送電線214のインピーダンスを低減させた場合について説明する。尚、同図に例示されるように、送電線214のインピーダンスを低減させた場合の「インピーダンス低減後」の電力相差角曲線は、「事故後」の電力相差角曲線よりも有効電力がより大きい側に延在している。
電力系統2の状態が運転点d及び運転点eの間の運転点d1にあるときに送電線214のインピーダンスを低減させると、電力系統2の状態は、「事故後」の電力相差角曲線上の運転点d1から「インピーダンス低減後」の電力相差角曲線上の運転点d2へ遷移し、その後、相差角が拡大するように「インピーダンス低減後」の電力相差角曲線に沿って運転点d2から運転点e1へ移動する。ここで、相差角が拡大から縮小へ転じる運転点e1は、前述と同様の等面積の条件によって一義的に定まる。即ち、図3(b)に例示される「事故後」の電力相差角曲線及び「インピーダンス低減後」の電力相差角曲線と機械的入力Pmを示す直線との間の運転点dから運転点d1、d2を経由して運転点e1までの減速エネルギーに相当する面積SB’は、前述した面積SAに等しい。つまり、面積SB’と、前述した面積SB(=面積SA)とは等しい。図3(b)の面積SB’の一部を画成する「インピーダンス低減後」の電力相差角曲線は、図3(a)の面積SBを画成する「事故後」の電力相差角曲線よりも有効電力がより大きい側に延在しているため、面積SB’及び面積SBが等しいという条件の下では、この有効電力が大きい分だけ、運転点e1の相差角δ3が運転点eの相差角δ2よりも小さい側に位置する。
尚、図3(b)では、電力系統2の状態が減速エネルギーの領域に入った時点で送電線214のインピーダンスを低減させたが、これに限定されるものではなく、加速エネルギーの領域内の時点で送電線214のインピーダンスを低減させても同様の結果が得られる。
<<<相差角縮小時にインピーダンス増加>>>
図4(a)に例示されるように、例えば図3(b)に引き続いて「インピーダンス低減後」の電力相差角曲線上の運転点e1で拡大から縮小へ転じた場合、電力系統2の状態(即ち、発電機202a、203aの運転状態)は、相差角がδ3からδ6へと縮小するように「インピーダンス低減後」の電力相差角曲線に沿って運転点e1から運転点fへ移動する。ここで、相差角が縮小から拡大へ転じる運転点fは、前述と同様の等面積の条件によって一義的に定まる。即ち、図4(a)に例示される、機械的入力Pmを示す直線と、「インピーダンス低減後」の電力相差角曲線との交差点を境とする減速エネルギーに相当する面積SC及び加速エネルギーに相当する面積SDは互いに等しい。
図4(b)に例示されるように、前述した電力系統2の状態が「インピーダンス増加前(前述したインピーダンス低減後)」の電力相差角曲線に沿って運転点e1から運転点fへ移動する途中で、送電線214のインピーダンスを増加させた場合について説明する。尚、同図に例示されるように、送電線214のインピーダンスを増加させた場合の「インピーダンス増加後」の電力相差角曲線は、「インピーダンス増加前」の電力相差角曲線よりも有効電力がより小さい側に延在している。
電力系統2の状態が運転点e1及び運転点fの間の運転点e2であるときに送電線214のインピーダンスを増加させると、電力系統2の状態は、「インピーダンス増加前」の電力相差角曲線上の運転点e2から「インピーダンス増加後」の電力相差角曲線上の運転点e3へ遷移し、その後、相差角が縮小するように「インピーダンス増加後」の電力相差角曲線に沿って運転点e3から運転点f1へ移動する。ここで、相差角が縮小から拡大へ転じる運転点f1は、前述と同様の等面積の条件によって一義的に定まる。即ち、「インピーダンス増加後」の電力相差角曲線が「インピーダンス増加前」の電力相差角曲線よりも有効電力がより小さい側に延在している分だけ、前述した減速エネルギーに相当する面積SC’は前述した面積SCより小さくなる。これにより、加速エネルギーに相当する面積SD’(=面積SC’)は前述した面積SD(=面積SC)よりも小さくなった分だけ、運転点f1の相差角δ5が運転点fの相差角δ6よりも大きい側に位置する。
尚、図4(b)では、電力系統2の状態が減速エネルギーの領域内の時点で送電線214のインピーダンスを増加させたが、これに限定されるものではなく、加速エネルギーの領域に入った時点で送電線214のインピーダンスを増加させても同様の結果が得られる。
以上から、例えば、電力系統2における送電線214の事故後に発電機202a、203a相差角が拡大する場合、同電力系統2において当初開状態にある開閉器21を閉制御することによって送電線214と送電線209とでループL1を形成することにより同送電線214のインピーダンスを低減させれば、相差角が拡大から縮小へ転じる最大値が小さくなる(図3(a)のδ2が図3(b)のδ3となる)。
また、例えば、電力系統2における送電線214の事故後に発電機202a、203aの相差角が縮小する場合、同電力系統2において当初閉状態にある開閉器23を開制御することによって送電線214と送電線211とで当初形成されていたループL2を遮断することにより同送電線214のインピーダンスを増加させれば、相差角が縮小から拡大へ転じる最小値が大きくなる(図4(a)のδ6が図4(b)のδ5となる)。或いは、この場合、先の手順で閉状態とされた開閉器21を開制御することによって送電線214と送電線209とで形成されていたループL1を遮断することにより同送電線214のインピーダンスを増加させてもよい。
つまり、電力系統2における送電線214の事故後に、開閉器21、23の開閉制御によって、電力系統2における発電機202a、203aの相差角の変化範囲を狭めることができる。
<<<親局及び演算装置の処理手順>>>
図5に例示されるように、電力系統安定化装置1の親局10は、電力系統2に含まれる送電線214において事故が検出されたか否かを判定する(S100)。具体的には、親局10は、送電線214における例えば事故位置に最も近い事故検出装置71から、事故位置の情報及び事故様相の情報を検出信号として受信したか否かを判定する。
事故が検出されたと判定した場合(S100:YES)、親局10は、記憶装置105から制御情報を読み出す(S101)。尚、この制御情報は、例えば、線路用の開閉器21、23の投入・遮断指令、SC51の投入・遮断指令、ShR61の投入・遮断指令、発電機用の遮断器31の遮断指令、負荷用の遮断器41の遮断指令等を示す情報である。
具体的には、親局10は、記憶装置105から、前述した検出信号が示す事故位置及び事故様相に関係付けられている開閉器21、23、SC51、ShR61、遮断器31、41等に係る制御情報を読み出す。記憶装置105に格納されているこの制御情報は、演算装置11が一定周期ごとに系統情報を取り込んでは過渡安定度計算を実行して得られた結果である。この過渡安定度計算では、一定周期で系統情報が更新される都度、(1)調相器51、61及び線路用の開閉器21、23の開閉制御のみで電力系統2の安定化を図った後に後述する発電機202a、203aの相差角の拡大又は縮小に応じた開閉器21、23の開閉制御によって相差角を所定範囲内に収束させるという条件(以下述べるステップS103以降に対応)で計算が実行される。そして、もしこの条件下の計算結果が電力系統2の動揺を十分に抑制しきれない場合、(2)調相器51、61及び線路用の開閉器21、23の開閉制御と電制及び負制とを併用して電力系統2の安定化を図った後に後述する発電機202a、203aの相差角の拡大又は縮小に応じた線路用の開閉器21、23の開閉制御によって相差角を所定範囲内に収束させるという条件(以下述べるステップS104以降に対応)で改めて計算が実行される。本実施の形態では、以上の計算結果である、或る事故位置に或る事故様相の事故が発生した電力系統2を安定化させるために開閉制御するべき線路用の開閉器21、23、投入するべきSC51、遮断するべきShR61、開状態とするべき遮断器31、41等を示す情報等が、一定周期で更新されつつ記憶装置105に格納されている。
前述したステップS101で記憶装置105から読み出された制御情報が調相器51、61及び線路用の開閉器21、23のみを示している場合(S102:「SC/ShR」+「線路接続」)、親局10は、選択されたSC51、ShR61、線路用の開閉器21、23の子局50、60、20、22に対し、母線201aの電圧を上昇させるべく且つ送電線214のインピーダンスを低減させるべく開閉制御をする動作を実行させる(S103)。
また、前述したステップS101で記憶装置105から読み出された制御情報が調相器51、61及び線路用の開閉器21、23と遮断器31、41とを示している場合(S102:「SC/ShR」+「線路接続」+「電制/負制」)、親局10は、選択されたSC51、ShR61、線路用の開閉器21、23の子局50、60、20、22に対し、母線201aの電圧を上昇させるべく且つ送電線214のインピーダンスを低減させるべく開閉制御をする動作と、選択された遮断器31、41の子局30、40に対し開制御をする動作とを同時に実行させる(S104)。
尚、前述したステップS102は、前述したステップS101で読み出された投入又は遮断指令を説明の便宜上場合分けするものであって、親局10の具体的な判定動作を表わすものではない。
親局10からの制御信号を受けて、演算装置11は、系統情報収集装置12に対し系統情報を取り込ませる(S107)。尚、この系統情報は、前述したように、電力系統2における送電線の有効電力P、無効電力Q、電流Iといった発電機202a、203aの潮流を示す情報である。本実施の形態の演算装置11は、例えば、これらの潮流を示す情報を、所定のタイマ(不図示)で計時した(事故後の)経過時間と対応付けて所定の記憶部(不図示)に格納し、同記憶部に格納された潮流の時間変化から発電機202a、203aの相差角の時間変化を逐次求めているものとする。
親局10は、取り込んだ系統情報に基づく演算装置11の計算結果を参照して、発電機202a、203aの相差角が縮小しているか否かを判定する(S108)。発電機202a、203aの相差角が縮小していないと判定した場合(S108:NO)、親局10は、演算装置11に対しステップS107の処理を再度実行させる。
発電機202a、203aの相差角が縮小していると判定した場合(S108:YES)、親局10は、前述したステップS101で読み出された制御情報における閉状態にある線路用の開閉器21、23の遮断指令を、該当する子局20、22に送信する(S109)。尚、この制御情報は、例えば、事故位置及び事故様相ごとに、発電機202a、203aの相差角を所定範囲内に収束させるために好適な送電線209、211の開閉器21、23に対し送信するべき遮断指令、投入指令を含んでいる。
次に、親局10からの制御信号を受けて、演算装置11は、系統情報収集装置12に対し系統情報を取り込ませる(S110)。前述したように、演算装置11は、事故後の潮流の時間変化から発電機202a、203aの相差角の時間変化を求める。
親局10は、取り込んだ系統情報に基づく演算装置11の計算結果を参照して、発電機202a、203aの相差角が所定範囲内にあるか否かを判定する(S111)。発電機202a、203aの相差角が所定範囲内にあると判定した場合(S111:YES)、親局10は、処理を終了する。
発電機202a、203aの相差角が所定範囲内にないと親局10が判定した場合(S111:NO)、親局10からの制御信号を受けて、演算装置11は、系統情報収集装置12に対し系統情報を取り込ませる(S112)。前述したように、演算装置11は、事故後の潮流の時間変化から発電機202a、203aの相差角の時間変化を求める。
親局10は、取り込んだ系統情報に基づく演算装置11の計算結果を参照して、発電機202a、203aの相差角が拡大しているか否かを判定する(S113)。発電機202a、203aの相差角が拡大していないと判定した場合(S113:NO)、親局10は、演算装置11に対しステップS112の処理を再度実行させる。
発電機202a、203aの相差角が拡大していると判定した場合(S113:YES)、親局10は、前述したステップS101で読み出された制御情報における開状態にある線路用の開閉器21、23の投入指令を、該当する子局20、22に送信する(S114)。尚、この制御情報は、例えば、事故位置及び事故様相ごとに、発電機202a、203aの相差角を所定範囲内に収束させるために好適な送電線209、211の開閉器21、23に対し送信するべき遮断指令、投入指令を含んでいる。
次に、親局10からの制御信号を受けて、演算装置11は、系統情報収集装置12に対し系統情報を取り込ませる(S115)。前述したように、演算装置11は、事故後の潮流の時間変化から発電機202a、203aの相差角の時間変化を求める。
親局10は、取り込んだ系統情報に基づく演算装置11の計算結果を参照して、発電機202a、203aの相差角が縮小しているか否かを判定する(S116)。発電機202a、203aの相差角が縮小していないと判定した場合(S116:NO)、親局10は、演算装置11に対しステップS115の処理を再度実行させる。
発電機202a、203aの相差角が縮小していると判定した場合(S116:YES)、親局10は、前述したステップS101で読み出された制御情報における閉状態にある線路用の開閉器21、23の遮断指令を、該当する子局20、22に送信し(S117)、前述したステップS110の処理を再度実行する。尚、この制御情報は、例えば、事故位置及び事故様相ごとに、発電機202a、203aの相差角を所定範囲内に収束させるために好適な送電線209、211の開閉器21、23に対し送信するべき遮断指令、投入指令を含んでいる。
図6において、発電機202a、203aの相差角が時間とともに正弦的に減衰振動する実線の例示(本実施の形態)では、事故が発生し(この時刻を0秒とする)、事故を除去した直後に所定のSC51を投入するとともに当初開状態にある開閉器21を投入して線路を接続し(前述したステップS103)、例えば相差角が最初に拡大から縮小へ転じた直後の時刻で、先の投入により閉状態にある開閉器21を遮断することによって先に接続された線路を遮断することによって(前述したステップS109)、相差角が所定範囲内に収束している(前述したステップS111:YES)。
一例として、図2における一対の送電線204aの何れか一方の線路に事故が発生すると、発電機202a、203aの相差角は拡大し続け、同発電機202a、203aは脱調に至ってしまう。
もし事故の直後に事故原因が除去される際に電制及び負制のみが行なわれても、図6の一点鎖線の例示では、発電機202a、203aの相差角は縮小に転じることなく拡大し続け、同発電機202a、203aは脱調に至ってしまう。
もし事故の直後に事故原因が除去される際に例えば事故位置の近傍のSC51が投入され且つ開閉器21を投入することにより送電線214と送電線209とでループL1が形成されれば、図6の点線の例示では、第一波脱調は回避される。しかし、同図の点線の例示では、発電機202a、203aの相差角は、例えば、2度目に拡大から縮小へ転じる際の最大値がより大きい方向に変位したことを契機として、3度目には拡大から縮小に転じることなく発散し、結局、発電機202a、203aは脱調に至ってしまう。
図6に例示される本実施の形態では、発電機202a、203aの相差角が最初に拡大から縮小へ転じた直後の時刻で、先に送電線214と送電線209とで形成されたループL1を開閉器21を通じて遮断することによって、図4(b)で説明した原理に基づいて、発電機202a、203aの相差角が最初に縮小から拡大へ転じた時刻での相差角の最小値をより大きくしている。このように、発電機202a、203aの相差角の最小値を大きくすることによって、同相差角を所定範囲内に収束させることができる。ここで、ループL1は常時形成されるものではない場合、図6に例示されるように、事故直後にループL1を形成した後に例えば数秒以内で遮断して元の状態に戻して終了することによって、電力系統2全体に及ぼす影響をできるだけ小さくしつつ同電力系統2の動揺を抑制できる。
尚、図6の例示では、事故直後の調相器51、61の開閉制御とともに行なわれたループL1の形成制御の後は、相差角の縮小時に送電線214のインピーダンスを増加させるためのループL1の遮断は、1回だけ実施された。但し、この1回は、調相器51、61の開閉制御と同時に行なったループL1の形成制御も1回分として加算して、2回と数えてもよい。これは、図5におけるステップS107乃至S110の処理が実行された直後に、ステップS111で発電機202a、203aの相差角が所定範囲内に収束していると判定された(S111:YES)場合に相当する。しかし、このような図5の処理手順に限定されるものではない。例えば、ステップS112乃至S117の処理を行うことなく、演算装置11の計算結果に基づいてループL1、L2の形成・遮断制御の回数(所定回数)が予め定められ、この所定回数の情報が前述した制御情報に含まれていてもよい。
また、図5のステップS103(A)と、ステップS107乃至S109(B)とは、事故直後にループL1、L2を形成制御し(Aに対応する)、発電機202a、203aの相差角が先ず縮小する(Bに対応する)ことが前提の処理であるが、これに限定されるものではない。例えば、ステップS103では、ループL1、L2の形成制御を行なうことなく、先ず調相器51、61のみの開閉制御によって母線201aの電圧を上昇させ(AからループL1の形成制御を省く)てもよい。また、例えば、発電機202a、203aの相差角が拡大又は縮小の何れであるかを判定しつつ、この判定結果に応じて開閉器21、23の開閉制御を通じてループL1、L2の形成・遮断制御を行なうものであってもよい。或いは、例えば、発電機202a、203aの相差角の拡大又は縮小を判定することなく、ループL1.L2の形成・遮断制御は、過渡安定度計算等によって予め定められた所定時間ごとのタイミングで実施されてもよい。以上の場合、図2に例示されるように、ループL1は、常時形成されていないことが好ましい場合、電力系統2全体に及ぼす影響をできるだけ小さくしつつ同電力系統2の動揺を抑制するためには、先ず、形成されていないループL1を形成し、次に、形成されたループL1を遮断する、という一対の処理を1回以上繰り返して、ループL1を形成しない状態で終了することが好ましい。一方、図2に例示されるように、ループL2は、常時形成されることが好ましい場合、電力系統2全体に及ぼす影響をできるだけ小さくしつつ同電力系統2の動揺を抑制するためには、先ず、形成されているループL2を遮断し、次に、遮断されたループL2を形成する、という一対の処理を1回以上繰り返して、ループL2を形成する状態で終了することが好ましい。
更に、図6の例示では、ループL1を遮断する際、この直前に形成された同一のループL1を遮断するとしたが、これに限定されるものではない。先に定義したように、第1回目で形成されたループ及び第2回目で遮断されたループは、例えばループL1及びループL2のように、異なっていてもよい。
本実施の形態の電力系統安定化装置1は、少なくとも、電力系統2の上流側(例えば系統2c側)と下流側(例えば系統2a側)との間に配設された第1の送電線(例えば送電線213、208、210、212、204a、204b、204cからなる送電線214)の事故を検出する検出装置(例えば事故検出装置71)と、電力系統2の状態を示す系統情報を取得する取得装置(例えば系統情報収集装置12)と、検出装置が第1の送電線の事故(例えば送電線214における一対の送電線204aの何れか一方の線路)を検出した場合、取得装置が取得する系統情報に基づいて、電力系統2の上流側と下流側との間の発電機202a、203aの相差角が所定範囲内となるように、検出装置が第1の送電線の事故を検出しない限り電力系統2とループを常時形成しない第2の送電線(例えば送電線209)が電力系統2とループ(例えばループL1)を形成するように制御する制御装置(例えば、演算装置11、親局10、子局20)と、を備えていればよい。
この電力系統安定化装置1によれば、第1の送電線の事故を契機として、系統情報が示す電力系統2の状態に応じて、電力系統2及び第2の送電線が互いにループを形成する制御を通じて、電力系統2のインピーダンスを低減させることによって、例えば第一波脱調を抑制できる。また、電力系統2の上流側と下流側との間の発電機202a、203aの相差角を所定範囲内に収束させて同電力系統2の動揺を抑制し、よって例えば第一波脱調のみならずその後の振動脱調を防止できる。つまり、電力系統2の電制量や負制量等といった制御量が抑制されつつ同電力系統2の動揺が抑制される。尚、第2送電線が、例えば、普段は異なる用途で使用されているものであれば、これを事故時に限って電力系統2の動揺の抑制のために活用できるため、その分だけ低コストになる。
また、前述した電力系統安定化装置1において、制御装置は、検出装置が第1の送電線(例えば送電線214)の事故を検出した場合、取得装置が取得する系統情報に基づいて、電力系統2の上流側と下流側との間の発電機202a、203aの相差角が所定範囲内となるように、検出装置が第1の送電線の事故を検出しない限り電力系統2とループを常時形成しない第2の送電線(例えば送電線209)が電力系統2とループ(例えばループL1)を形成するように制御するか、又は、検出装置が第1の送電線の事故を検出しない限り電力系統2とループ(例えばループL2)を常時形成する第3の送電線(例えば送電線211)が電力系統2とループを形成しないように制御している。
この電力系統安定化装置1によれば、第1の送電線の事故を契機として、系統情報が示す電力系統2の状態に応じて、電力系統2及び第2の送電線が互いにループ(例えばループL1)を形成する制御を通じて電力系統2のインピーダンスを低減させたり、電力系統2及び第3の送電線が互いにループ(例えばループL2)を形成しない制御を通じて電力系統2のインピーダンスを増加させたりすることによって、電力系統2の上流側と下流側との間の発電機202a、203aの相差角を所定範囲内に効果的に収束させて同電力系統2の動揺を効果的に抑制し、よって例えば第一波脱調のみならずその後の振動脱調を防止できる。つまり、電力系統2の電制量や負制量等といった制御量が抑制されつつ同電力系統2の動揺が抑制される。尚、第2及び第3の送電線が、例えば、普段は異なる用途で使用されているものであれば、これらを事故時に限って電力系統2の動揺の抑制のために活用できるため、その分だけ低コストになる。また、電力系統2のインピーダンスの増減を交互に行なう場合、第2の送電線と第3の送電線とは同一の送電線であってもよい。
また、前述した電力系統安定化装置1において、制御装置は、系統情報に基づいて、相差角が拡大する場合(例えば図5のステップS113:YES)、第2の送電線が電力系統2とループを形成するように制御し(例えば図5のステップS114)、相差角が縮小する場合(例えば図5のステップS108:YES、ステップS116:YES)、第3の送電線が電力系統2とループを形成しないように制御している(例えば図5のステップS109、ステップS117)。
発電機202a、203aの相差角が拡大する際に電力系統2のインピーダンスを低減させると、この相差角が拡大から縮小へ転じる最大値が小さくなり(図3(b))、発電機202a、203aの相差角が縮小する際に電力系統2のインピーダンスを増加させると、この相差角が縮小から拡大へ転じる最小値が大きくなる(図4(b))。よって、この電力系統安定化装置1によれば、電力系統2及び第2の送電線が互いにループ(例えばループL1)を形成する制御又は電力系統2及び第3の送電線が互いにループ(例えばループL2)を形成しない制御を通じて電力系統2のインピーダンスを増減させることによって、相差角の範囲がより速く狭くなる。つまり、相差角がより速く所定範囲内に収束する。
また、前述した電力系統安定化装置1において、制御装置は、第2の送電線が電力系統2とループを形成するように制御する動作と、第3の送電線が電力系統2とループを形成しないように制御する動作とを、所定回数繰り返している(つまり、図6に例示される1回(又は2回)は、前述したように、予め定められた所定回数であってもよい)。
この電力系統安定化装置1によれば、例えば発電機202a、203aの相差角が効果的に所定範囲内に収束するような予め定められた所定回数だけ電力系統2のインピーダンスを増減させることによって、電力系統2の動揺をより効果的且つ効率的に抑制できる。
また、前述した電力系統安定化装置1において、制御装置は、第2の送電線が電力系統2とループを形成するように制御する動作と、第3の送電線が電力系統2とループを形成しないように制御する動作とを、相差角が所定範囲内となるまで繰り返している(例えば図5のステップS110乃至S117を参照)。
この電力系統安定化装置1によれば、電力系統2の動揺をより効果的且つ確実に抑制できる。
また、前述した電力系統安定化装置1において、系統情報は、電力系統2の上流側と下流側との間の発電機202a、203aの相差角又は潮流を示す情報である。
この電力系統安定化装置1によれば、例えば電力系統2の動揺を表わす発電機202a、203aの相差角又は潮流の時間変化に応じて電力系統2のインピーダンスを低減させることができるため、電力系統2の電制量や負制量等といった制御量を抑制しつつ同電力系統2の動揺を効果的に抑制できる。
また、前述した電力系統安定化装置1において、制御装置は、検出装置が第1の送電線の事故を検出した場合、電力系統2に対して発電機202a、203aを遮断している(例えば図5のステップS104以降を参照)。
この電力系統安定化装置によれば、例えば、第1の送電線の事故に起因して不安定となると想定される発電機202a、203aを電力系統2から切り離すとともに、電力系統2及び第2の送電線が互いにループを形成する制御を通じて電力系統2のインピーダンスを低減させることによって第一波脱調を防止し且つその後の振動脱調を防止できる。
また、前述した電力系統安定化装置1において、電力系統2に接続される複数の変電所等の母線(例えば母線201a、205a)に配置され、母線に供給される無効電力を制御する調相器51、61を備え、制御装置は、検出装置が第1の送電線の事故を検出した場合、第2の送電線が電力系統2とループを形成するように制御する動作の前に、調相器を開閉制御している。
つまり、これは、図5及び図6とは別の態様として前述したように、先ず調相器51、61のみの開閉制御によって母線201aの電圧を上昇させ、次に、発電機202a、203aの相差角の拡大に応じて、開閉器21、23の閉制御を通じてループL1、L2の形成制御を行なうことに対応する。
この電力系統安定化装置1によれば、例えば、第1の送電線の事故に起因して電力系統2が不安定となると予想されるときに、調相器51、61の開閉制御とともに、電力系統2及び第2の送電線が互いにループを形成する制御を通じて電力系統2のインピーダンスを低減させることによって第一波脱調のみならずその後の振動脱調を防止できる。
また、前述した電力系統安定化装置1において、電力系統2に接続される複数の変電所等の母線に配置され、母線に供給される無効電力を制御する調相器51、61を備え、制御装置は、検出装置が第1の送電線の事故を検出した場合、第2の送電線が電力系統2とループを形成するように制御する動作と、第3の送電線が電力系統2とループを形成しないように制御する動作との前に、調相器を開閉制御している。
つまり、これは、図5及び図6とは別の態様として前述したように、先ず調相器51、61のみの開閉制御によって母線201aの電圧を上昇させ、次に、発電機202a、203aの相差角の拡大・縮小に応じて、開閉器21、23の閉制御を通じてループL1、L2の形成・遮断制御を行なうことに対応する。
この電力系統安定化装置1によれば、例えば、第1の送電線の事故に起因して電力系統2が不安定となると予想されるときに調相器51、61の開閉制御とともに、電力系統2及び第2の送電線が互いにループを形成する制御又は電力系統2及び第3の送電線が互いにループを形成しない制御を通じて電力系統2のインピーダンスを増減させることによって第一波脱調のみならずその後の振動脱調を防止できる。
また本実施の形態の電力系統安定化方法は、少なくとも、電力系統2の上流側と下流側との間に配設された第1の送電線の事故が検出された場合、電力系統2の状態を示す系統情報に基づいて、電力系統2の上流側と下流側との間の発電機202a、203aの相差角が所定範囲内となるように、第1の送電線の事故が検出されない状態では電力系統2とループを常時形成しない第2の送電線が、電力系統2とループを形成するように制御すればよい。
この電力系統安定化方法によれば、電力系統2の電制量や負制量等といった制御量が抑制されつつ同電力系統2の動揺が抑制される。尚、第2送電線が、例えば、普段は異なる用途で使用されているものであれば、これを事故時に限って電力系統2の動揺の抑制のために活用できるため、当該方法をその分だけ低コストで実施できる。
前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されるとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
前述した実施の形態では、発電機の相差角の拡大・縮小に応じた、第2の送電線とループを形成する指令及び第3の送電線とループを形成しない指令は、系統情報を用いた演算装置11の計算結果に基づいて親局10により生成される。但し、これに限定されるものではなく、例えば、子局20、22に対し、個別に演算装置を設けて、親局10の代わりに相差角の拡大・縮小の判定機能をそれぞれ持たせてもよい。これにより、例えば第2の送電線とループを形成する指令及び第3の送電線とループを形成しない指令を親局10から該当の子局20、22へ送信するために費やされる情報伝送時間等を省くことができる。つまり、ループ形成する・しない制御の遅れを抑制できる。
また、前述した実施の形態では、電力系統の送電線に事故が発生すると、発電機の相差角の拡大・縮小が検出され、その検出結果に応じて電力系統に対し第2の送電線とループを形成する及び第3の送電線とループを形成しない制御が行なわれるが、これに限定されるものではない。例えば、電力系統において想定される様々な事故位置及び事故様相ごとに、予め演算装置11が計算によって電力系統の動揺を抑制するのに最適なループ形成する・しない制御の時刻(例えば事故が発生した基準となる時刻を0秒とする)及び回数を求め、これらの時刻及び回数の情報を事故位置及び事故様相ごとに記憶装置105に予め格納しておいてもよい。事故が発生すると、同事故に対応する予め求められた時刻及び回数の情報を記憶装置105から読み出し、タイマ104及びカウンタ(不図示)を参照しつつ、事故前に求められた時刻に、事故前に求められた回数だけ、第2の送電線とループを形成する指令及び第3の送電線とループを形成しない指令を出力することにより、事故中の計算に費やされる時間を省ける分だけ、ループ形成する・しない制御の遅れを抑制できる。