JP4989515B2 - エアバッグ - Google Patents

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Description

本発明は、車両などに装着され、衝突や横転などの衝撃から乗員を保護するためのエアバッグに関する。さらに詳しくは、メインパネルとそれ以外の基布部材からなるエアバッグであり、該基布部材は2枚以上の裁断基布をあらかじめ接合してなるものであり、該基布部材を接着シール材によってメインパネルに接合してなるエアバッグであって、生産性、収納性、および接合部の強度に優れたエアバッグに関する。
車両用エアバッグとして、前面衝突に対応する運転席用エアバッグ、助手席用エアバッグ、後席用エアバッグが装着されるようになって久しい。また、近年では、側面衝突に対応するサイドエアバッグやカーテンシールドエアバッグの装着が増加している。これらのなかでも特に、車両の横転に対応するカーテンシールドエアバッグが注目されており、これには、乗員の頭部への衝撃を吸収するために、車両が横転している数秒間という長時間にわたっての内圧保持が求められている。これらの様々な形態、要求性能のエアバッグに対応するためには、従来以上に、エアバッグの気密性を高めて、膨張持続時間を長くすることのできるエアバッグの開発が急務である。
従来製造されているエアバッグは、エアバッグの主体となるメインパネルを必須部材とし、用途により、規制布、仕切布など(以下、これらを基布部材という)をエアバッグ内部に有し、メインパネル同士、および、メインパネルと基布部材を、縫合や接着などにより接合することでエアバッグを形成している。また、基布部材自体も、2枚以上の裁断基布同士の接合により構成されることが多い。そのため、エアバッグの製造において、縫合や接着などの接合工程は生産性に大きく影響し、また、接合性能はエアバッグの機能性に大きく影響する。
基布部材はエアバッグ展開時の厚さ寸法を規制したり、展開する形状を規制したりするなど、エアバッグの性能を高める上で重要な役割を果たしている。そして、基布部材はエアバッグ内部に配置されるため、展開時に受ける圧力や、メインパネルが膨張することによってメインパネルと基布部材との接合部にかかる負荷、人や物がエアバッグに衝突することによってエアバッグが外側から受ける衝撃、および、エアバッグに外から衝撃が加わることによるさらなる内圧増加と、それにともなう接合部負荷の増加など、様々な負荷が基布部材にかかることになる。特に、基布部材とメインパネルとの接合部には大きな負荷がかかることになり、エアバッグ性能を保持するためにはそれらの負荷に耐えうるだけの接合強度が必要とされる。
このようなエアバッグのうち、縫合により裁断基布を接合してなるエアバッグの場合、裁断基布を強固に縫い合わせるためには多数の針穴が形成され、縫合部の気密性が低下しやすい問題がある。さらに、エアバッグが展開する際に縫い目にかかる負荷によって縫い目が広がる現象、いわゆる目開きが生じ、気密性が低下する問題もある。このような問題を解決すべく、縫合部に接着シール材を組み合わせることにより縫い目を目止めする方法がとられているが、縫合のみを行う場合に比べて製造工程が複雑になり、製造コストも上昇する問題がある。
一方、裁断基布を接着により接合してなるエアバッグの場合、目開きなどの問題は解決されるが、単に接着する構成では、エアバッグが展開する際に接合部にかかる負荷に抗する強度は十分でなく、接合状態を保持することができない問題がある。また、接着による接合部は、特に端部から剥がれやすい傾向がある。
このような問題を解決する手段として、特許文献1には、接合裁断基布中に存在する接合片部の幅寸法を接合片部以外の部分における幅寸法よりも大きくし、接合片部に接着シール材を線状に配置し、さらに接着シール材の両端部を円形などに形成し接合面積を大きくすることによって、接合強度を改善する方法が開示されている。
この方法によれば、接着シール材の両端部の配置面積を大きくすることで、接着シール材が特に剥がれやすい部分での接合面積が大きくなり、接合面積が小さい部分に比べ接合強度が大きくなる。
しかし、接着シール材の厚みに関してはどの部分についても一定であるため、接着シール材自体の単位面積あたりの接合強度は変わらない。そのため、接着シール材の最端部からの剥がれやすさについては改善されておらず、接合強度はいまだ不十分である。
また、現在のエアバッグ生産において、軽量化や収納性の向上のため、接着シール材の塗布量をいかに減少させることができるかが課題となっている。よって、いかに少ない接着シール材塗布量で接着強度を上げることができるかが大きな課題となっている。
また、接着シール材により裁断基布を接合する場合、製造工程において、裁断基布にシワがある状態で接着シール材を配置すると、接着シール材の形状が安定せず、圧着後の接着シール材の厚みや幅にばらつきが生じ、接着シール材そのものの強度を十分に発揮することができない問題がある。特に、2枚以上の裁断基布をあらかじめ接合してなる基布部材に、接着シール材を塗布する場合では、該基布部材を構成する裁断基布が全て同じ形状で重なっていると、基布部材を吸引固定しても吸引盤に接する1枚目の裁断基布しか固定できず、2枚目以降の裁断基布は1枚目との接合部のみで固定していることになるため、基布部材のシワを抑えることが困難となり、エアバッグの機能性に大きく影響する。
特開2007−290622号公報
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生産性、収納性、および接着シール材の接合部の強度に優れたエアバッグを提供することである。
本発明者は、鋭意研究の結果、2枚以上の裁断基布をあらかじめ接合してなる基布部材をメインパネルに接合してなるエアバッグにおいて、少なくとも1枚の裁断基布に切り欠きを設けることにより、接着シール材の全体量を変えずに、所望の箇所の接着シール材の厚みを大きくすることができ、もって、従来の生産性、収納性を損なわずに、接着シール材の接合部における強度の改善が可能となるとともに、基布部材を吸引固定する際に発生しうるシワを抑制できることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成させるに到った。
すなわち、メインパネルとそれ以外の基布部材とを有し、該基布部材が略同型である2枚以上の裁断基布からなるエアバッグにおいて、該基布部材を構成する裁断基布のうち、少なくとも1枚の裁断基布が切り欠き部位を有しており、他の裁断基布は、該切り欠き部位と重なる位置に切り欠きを有してなく、さらに、少なくとも該切り欠き部位と重なる位置に接着シール材を有しており、該接着シール材を介してメインパネルが配置されてなるエアバッグに関する。
前記基布部材を構成する少なくとも1枚の裁断基布が有する切り欠き部位において、基布部材を構成する裁断基布の重なり枚数が部分的に異なり、異なる裁断基布の厚み分だけ、裁断基布の重なりが少ない部分に配置された接着シール材の厚みが大きいことを特徴とする。
本発明によれば、従来の基布部材に切り欠き部位を設けることにより、従来と同量の接着シール材で所望の箇所の接着シール材厚みを大きくすることができるため、従来の生産性を損なわずに、接着シール材の接合部における接合強度に優れたエアバッグを提供することができる。よって、強固な接合により高い気密性を得ることができるため、長時間にわたって内圧を保持することが可能であり、長時間の内圧保持を必要とするエアバッグの提供にも有用である。また、切り欠き部位を有する位置に接着シール材を配置することにより該接着シール材の厚みを大きくするため、接着シール材配置部分のエアバッグ厚みは均一となり、切り欠きを設けずに製造したエアバッグの厚みと比較しても変わらない。よって、エアバッグの収納性を低下させることなく、接着強度を改善することができる。
以下、理解を容易にするために具体例をあげて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、エアバッグの形状や用途は目的に応じて適宜選択することができる。また、本発明におけるエアバッグについての他の要素、例えばパネルの材料などは特に限定されず、エアバッグ用として通常用いられているものを適宜選択すればよい。
まず、本発明の一例として、運転席用エアバッグについて説明する。
その際、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の一例である運転席用エアバッグを示す概略説明図である。
図2は、同上エアバッグを示す他の概略説明図である。
図3は、同上エアバッグを示す図2のA−A線での概略断面図である。
図4は、同上エアバッグを示す図2のB−B線での概略断面図である。
図5は、同上エアバッグを構成するメインパネルおよびパッチの概略説明図である。
図6は、同上エアバッグを構成する基布部材(3+4)を示す概略説明図である。
図7は、同上エアバッグを構成する基布部材(3+4)への接着シール材配置位置を示す説明図である。
図8は、同上エアバッグを構成する基布部材(3+4)を示す図7のC−C線での、メインパネル1圧着後における概略断面図である。
本発明のエアバッグの一例である運転席用エアバッグは、図1に示すように、基布部材を構成する略同型の裁断基布(以下、パッチと称す)である、パッチ3とパッチ4が、パッチ接合部7によってあらかじめ接合されてなる基布部材(3+4)を有する運転席用エアバッグであり、パッチ4が切り欠き部位を有しており、パッチ3における、パッチ4の切り欠き部位と重なる位置を含む位置に、接着シール材5が配置され(図7参照)、さらに配置された接着シール材5により、パッチ3とメインパネル1が接合され、さらに基布部材(3+4)とメインパネル2が接合され、メインパネル1とメインパネル2が接合されてなる運転席用エアバッグである。
前記エアバッグの構造をわかりやすくするために、図2に前記エアバッグの概略説明図を示し、図3、4に前記エアバッグの図2に示す箇所の断面図を示す。また、図5に前記エアバッグを構成する裁断基布であるメインパネルおよびパッチの形状および重なり方を示す。
本発明の一例である運転席用エアバッグは、下記の方法により製造することができる。
まず、基布(前処理として後述する不通気処理剤を、少なくとも片面に付与し、これで被覆したもの)から、メインパネル1、メインパネル2、パッチ3およびパッチ4を所望の形状に切り出す。
この工程において、本発明では、基布部材(3+4)の構成裁断基布であるパッチを切り出す際に、略同型であるパッチ3およびパッチ4に対し、図5などに示すように、パッチ4には切り欠きを設け、切り欠き部位以外は略同型となるよう切り出す。
ついで、図6に示すように、パッチ3およびパッチ4を重ね合わせ、パッチ接合部7により接合することにより、基布部材(3+4)を得る。
この工程において、パッチ接合部7における接合手段は、特に限定するものではなく、接着シール材を配置することにより接合しても構わないし、接着シール材を使用せずに縫合しても構わない。
ついで、基布部材(3+4)に接着シール材を配置する。
この工程において、本発明では、パッチ4が吸引固定されるように、基布部材(3+4)を接着シール材配置装置にセットする。こうすることで、パッチ4が有する切り欠き部位より、パッチ3についても吸引固定される。この状態で、図7で接着シール材5として示すように、パッチ3上において、切り欠き部位と重なる位置を含む位置に、接着シール材を配置する。
なお、この例の場合は、インフレーターから噴射されたガスが、接着シール材の配置されていない部分を通過し、エアバッグを膨張させるため、メインパネル1とパッチ3との接合が保持されるのであれば、接着シール材は、少なくとも切り欠き部位と重なる位置に配置すればよい。
このとき、切り欠きによって得られる製造工程での効果として、切り欠き部位によりパッチ3とパッチ4が完全に重なることを避け、パッチ4と重なるパッチ3についても、切り欠き部位より吸引固定されることにより、基布部材を構成するパッチ3およびパッチ4を同時に固定できるため、製造工程において、接着シール材配置時でのシワ発生を抑制することができる。これにより、接着シール材を安定に、かつ生産性よく配置することが可能であり、接着シール材の形状や強度のばらつきを抑えることができる。
前記接着シール材の配置方法としては、液状のものについては、ディスペンサー、スクリーンプリント、スプレーなどにて配置する方法、粉体のものについては、型枠を通して配置する方法、フィルム状やテープ状のものについては、所望の形状に裁断して貼付する方法などがあげられ、適宜選択すればよい。
ついで、接着シール材を配置した基布部材(3+4)とメインパネル1とを、圧着により接合する。
このとき、図8に示すように、パッチ3がパッチ4の切り欠き部位に重なる位置に配置した接着シール材5´の厚みが、パッチ3がパッチ4の切り欠きのない部位に重なる位置に配置した接着シール材の厚みに比べ、パッチ4の基布厚み分だけ大きくなる。接着シール材の厚みを大きくすることにより、接着シール材の破断時伸びが大きくなり、パッチ3とメインパネル1との接合強度が大きくなる。特に、エアバッグ展開時に接着シール材に対して最も応力が集中する接着シール材端部の厚みを大きくすることにより、接着シール材の接着保持性能を向上させることができ、エアバッグの形状保持性能を向上させることができる。
ついで、パッチ4とメインパネル2とを、メインパネル−パッチ接合部8により接合する。
この工程において、メインパネル−パッチ接合部8における接合手段は、特に限定するものではなく、接着シール材を配置することにより接合しても構わないし、接着シール材を使用せずに縫合しても構わない。
最後に、メインパネル1とメインパネル2とを外縁接合部9により接合し、エアバッグを得る。
この工程において、外縁接合部9における接合手段は、特に限定するものではなく、接着シール材を配置することにより接合しても構わないし、接着シール材を使用せずに縫合しても構わない。
以上のような製造工程により、本発明の一例である運転席用エアバッグが得られる。
次に、本発明の他の一例として、カーテンシールドエアバッグについて説明する。
その際、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図9は、本発明の他の一例であるカーテンシールドエアバッグを示す概略説明図である。
図10は、同上エアバッグを構成するメインパネルおよびパッチの概略説明図である。
図11は、同上エアバッグを構成する基布部材(12+13)を示す概略説明図である。
図12は、同上エアバッグを構成する基布部材(12+13)に対し、パッチ12に接着シール材14を配置するときの位置を示す説明図である。
図13は、同上エアバッグを構成する基布部材(12+13)に対し、パッチ13に接着シール材14を配置するときの位置を示す説明図である。
図14は、同上エアバッグを構成する基布部材(12+13)の、エアバッグ展開時の説明図である。
図15は、同上エアバッグを構成する基布部材(12+13)についての、図12のD−D線での、メインパネル10圧着後における概略断面図である。
図16は、同上エアバッグを構成する基布部材についての、図13のE−E線での、メインパネル11圧着後における概略断面図である。
本発明の他の一例であるカーテンシールドエアバッグは、図9に示すように、略同型であるパッチ12とパッチ13がパッチ接合部16によってあらかじめ接合されてなる基布部材(12+13)を有するカーテンシールドエアバッグであり、パッチ12およびパッチ13が切り欠き部位を有しており、パッチ12における、パッチ13の切り欠き部位と重なる位置を含む位置に、接着シール材14が配置されることにより、パッチ12とメインパネル10が接合され、また、パッチ13における、パッチ12の切り欠き部位と重なる位置を含む位置に、接着シール材14が配置されることにより、パッチ13とメインパネル11が接合され、さらにメインパネル10とメインパネル11が接合されてなるカーテンシールドエアバッグである。
前記エアバッグの構造をわかりやすくするために、図10に前記エアバッグを構成するメインパネルおよびパッチの形状および重なり方を示す。
本発明の他の一例であるカーテンシールドエアバッグは、下記の方法により製造することができる。
まず、基布(前処理として後述する不通気処理剤を、少なくとも片面に付与し、これで被覆したもの)から、メインパネル10、メインパネル11、パッチ12およびパッチ13を所望の形状に切り出す。
この工程において、パッチ12およびパッチ13を切り出す際は、図10などに示すように、パッチ12およびパッチ13のそれぞれに対して切り欠き部位を設け、切り欠き部位以外は略同型となるよう切り出す。この例の場合は、パッチ12とパッチ13は上下左右が反転することで完全に重なる形状をしている。よって、この例の場合は、実際に製造する際は同形状のパッチを2枚切り出せばよい。
ついで、図11に示すように、パッチ12およびパッチ13を重ね合わせ、パッチ接合部16により接合し、基布部材(12+13)を得る。
この工程において、パッチ接合部16における接合手段は、特に限定するものではなく、接着シール材を配置することにより接合しても構わないし、接着シール材を使用せずに縫合しても構わない。
ついで、基布部材(12+13)に接着シール材14を配置する。この例の場合は、パッチ12とパッチ13は、上下左右が反転することで完全に重なる形状をしている。そのため、基布部材(12+13)を接着シール材配置装置にセットする際は、パッチ12が吸引固定されるように配置してもよく、また、パッチ13が吸引固定されるように配置してもよい。
説明する上で、パッチ13が吸引固定されるように接着シール材配置装置にセットすると仮定する。このとき、パッチ13が有する切り欠き部位より、パッチ12についても吸引固定される。この状態で、図12において接着シール材14として示すように、パッチ12上において、パッチ13の切り欠き部位と重なる位置を含む位置に、接着シール材を配置する。
なお、この例の場合は、パッチ12および13によってエアバッグ展開時の厚さ寸法を規制するため、切り欠き部位のみに接着シール材を配置したのでは、規制効果が十分でない。よって、切り欠き部位および切り欠きのない位置に接着シール材を配置する必要がある。
前記接着シール材の配置方法としては、前記運転席用エアバッグと同様である。
ついで、接着シール材を配置した基布部材(12+13)とメインパネル10とを、圧着により接合する。
このとき、図15に示すように、パッチ12がパッチ13の切り欠き部位に重なる位置に配置した接着シール材14´の厚みが、パッチ12がパッチ13の切り欠きのない部位に重なる位置での接着シール材の厚みに比べ、パッチ13の基布厚み分だけ大きくなる。接着シール材の厚みを大きくすることにより、接着シール材の破断時伸びが大きくなり、よって接合強度が大きくなる。特に、接着シール材に対して最も応力が集中する接着シール材端部の厚みを大きくすることにより、接着シール材の接着保持性能を向上させることができ、エアバッグの形状保持性能を向上させることができる。
ついで、メインパネル11が吸引固定されるように接着シール材配置装置にセットし、メインパネル11に接着シール材を配置し、さらにパッチ12に圧着する。このとき、メインパネル11をパッチ12側に圧着する際にパッチ12の図13に示す位置に接着シール材14がくるよう、メインパネル11に接着シール材を配置する。
この工程において、図16に示すように、パッチ13がパッチ12の切り欠き部位と重なる位置に配置した接着シール材14´の厚みが、パッチ13がパッチ12の切り欠きのない部位と重なる位置での接着シール材の厚みに比べ、パッチ12の基布厚み分だけ大きくなる。接着シール材の厚みを大きくすることにより、接着シール材の破断時伸びが大きくなり、よって接合強度が大きくなる。特に、接着シール材に対して最も応力が集中する接着シール材端部の厚みを大きくすることにより、接着シール材の接着保持性能を向上させることができ、エアバッグの形状保持性能を向上させることができる。
なお、エアバッグの展開時には、基布部材(12+13)は図14に示すような形状をとる。
最後に、メインパネル10とメインパネル11とを接合し、エアバッグを得る。
この工程において、外縁接合部17における接合手段は、特に限定するものではなく、接着シール材を配置することにより接合しても構わないし、接着シール材を使用せずに縫合しても構わない。また、接着シール材を使用して接合する場合は、前記のメインパネル11をパッチ12に接合する工程において、メインパネル10および11の接合も同時に行ってもよい。
以上のような製造工程により、本発明の他の一例であるカーテンシールドエアバッグが得られる。
以上説明したように、本発明のエアバッグの製造方法は、次のような特徴を有する。
基布部材を構成する2枚以上の裁断基布(運転席用エアバッグの例においてはパッチ3およびパッチ4)を切り出す工程においては、略同型である2枚以上の裁断基布のうち、少なくとも1枚(同じくパッチ4)が切り欠きにより形状の異なる部位を有するように切り出す。
なお、該切り欠き部位は、後工程で配置する接着シール材の、特に強度が必要とされる部分に該当する位置に設ける。
また、基布部材を構成する2枚以上の裁断基布(同じくパッチ3およびパッチ4)をあらかじめ接合させることにより、基布部材(同じく裁断基布(3+4))を得る。
前記基布部材に接着シール材(同じく接着シール材5)を配置する工程においては、接着シール材は、基布部材を構成する裁断基布のうち、切り欠き部位と重なる位置には切り欠きを有してない裁断基布(同じくパッチ3)の、切り欠き部位と重なる位置を含む位置に配置する。
なお、接着シール材の配置箇所は、切り欠き部位と重なる位置には切り欠きを有してない裁断基布(同じくパッチ3)の、切り欠き部位と重なる位置を含むことが必須であるが、切り欠き部位の周辺部については特に限定されず、エアバッグの用途および接着シール材の役割によって、適宜決定すればよい。
また、本発明において、接着シール材は圧着したときに基布部材上の目的とする位置に配置されていればよく、メインパネル(カーテンシールドエアバッグの例においてはメインパネル11)に接着シール材を配置した後で基布部材に圧着する方法であってもよい。ただし、2枚以上の裁断基布を重ねた状態のものを接着シール材配置装置にセットして吸引固定した状態で、その上に接着シール材を配置する必要がある場合には、切り欠き部位から、重ねた裁断基布についても同時に吸引固定した状態で、その上に接着シール材を配置することが、シワ防止などの観点より好ましい。
前記接着シール材により、基布部材(運転席用エアバッグの例においては基布部材(3+4))とメインパネルとを圧着によって接合する。
このようにして製造されたエアバッグは、基布部材を構成する裁断基布のうち、切り欠き部位と重なる位置には切り欠きを有してない裁断基布(同じくパッチ3)の、該切り欠き部位と重なる位置に配置した接着シール材(同じく接着シール材5´)の厚みが、切り欠きのない部位と重なる位置に配置した接着シール材の厚みに比べ、裁断基布の重なりの有無によって、基布厚み分だけ大きくなる。接着シール材の厚みを大きくすることにより、接着シール材の破断時伸びが大きくなり、よって接合強度が大きくなる。特に、接着シール材端部など、接着シール材に対して最も応力が集中する部分の厚みを大きくすることにより、エアバッグの性能が向上する。
また、切り欠き部位を有する位置に接着シール材を配置することにより該接着シール材の厚みを大きくするため、接着シール材配置部分のエアバッグ厚みは均一となり、切り欠きを設けずに製造したエアバッグの厚みと比較しても変わらない。よって、エアバッグの収納性を低下させることなく、接着強度を改善することができる。
以上に述べたことが本発明における特徴であるが、その他、メインパネル同士の接合や、その他の部位の接合など、エアバッグを形成するために必要な工程を経ることは言うまでもない。
なお、基布部材を構成する裁断基布のうち、2枚は略同型であることが好ましいが、3枚目以降に関しては、必ずしも略同型である必要はない。3枚以上の裁断基布を用いた基布部材としては、例えば、2枚の規制布の間に、目開きを防止するための補強布を挟んだケースなどがあげられる。
本発明で使用する接着シール材としては、例えば、クロロプレンゴム、ハイバロンゴム、フッ素ゴムなどの含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレン三元共重合ゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、ウレタンゴムおよびアクリルゴムなどのゴム類、および、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂およびフッ素樹脂などの含ハロゲン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、オレフィン樹脂およびシリコーン樹脂などの樹脂類があげられ、これらは単独または併用して使用される。なかでも、可撓性、耐熱性および耐候性に優れる点で、シリコーンゴムおよびシリコーン樹脂が好ましい。
前記シリコーンゴムとしては、具体的には、1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを主剤とするものがあげられる。このアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基をあげることができる。なかでも、ビニル基が好ましい。アルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基をあげることができる。なかでも、メチル基が好ましい。オルガノポリシロキサンの分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、網状、樹枝状があげられる。
このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体などがあげられる。
前記シリコーンゴムには、必要に応じて、
シリコーンゴムを架橋して硬化させるための硬化剤として、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノハイドロジェンポリシロキサンなど;
硬化反応を促進するための触媒として、例えば、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、四塩化白金、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒をメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂などの熱可塑性有機樹脂中に分散してなる微粉末など;
シリコーンゴムの補強、粘度調整、耐熱性向上、難燃性向上などを目的とする充填剤として、例えば、ヒュームドシリカ、沈降法シリカ、焼成シリカなどの微粉末状のシリカ、ヒュームド酸化チタンなどの補強性充填剤、粉砕石英、珪藻土、酸化鉄、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの非補強性充填材、これらの充填剤を脂肪酸や樹脂酸などの有機酸、またはオルガノシラン、オルガノポリシロキサン、オルガノアルコキシシラン、オルガノハロシラン、オルガノシラザンなどの有機ケイ素化合物で表面処理したものなど;
基布に対する接着性を向上させるための接着付与剤として、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有オルガノアルコキシシラン、ケイ素原子結合のビニル基とアルコキシ基を有するエポキシ基含有オルガノポリシロキサン、ケイ素原子結合水素原子を有するエポキシ基含有オルガノポリシロキサン、ケイ素原子結合水素原子とアルコキシ基を有するエポキシ基含有オルガノポリシロキサンなどのエポキシ基含有オルガノポリシロキサンなど;
その他、硬化抑制剤、オルガノポリシロキサンレジン、顔料、耐熱剤などの各種添加剤を含有することができる。
本発明のエアバッグを構成する基布には、繊維基布が用いられる。ここで繊維基布とは、繊維糸条を用いて製織される織物、繊維糸条を用いて製編される編物および不織布を意味する。
繊維基布を構成する繊維は、天然繊維、化学繊維、無機繊維など、特に限定するものではない。なかでも、汎用性があり、基布の製造工程、基布物性などの点から、合成繊維フィラメントが好ましい。例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612などの単独またはこれらの共重合、混合により得られる脂肪族ポリアミド繊維、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9Tに代表される脂肪族アミンと芳香族カルボン酸の共重合ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの単独またはこれらの共重合、混合によって得られるポリエステル繊維、超高分子量ポリオレフィン系繊維、ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの含塩素系繊維、ポリテトラフルオロエチレンを含む含フッ素系繊維、ポリアセタール系繊維、ポリサルフォン系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン系繊維(PEEK)、全芳香族ポリアミド系繊維、全芳香族ポリエステル系繊維、ポリイミド系繊維、ポリエーテルイミド系繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール系繊維(PBO)、ビニロン系繊維、アクリル系繊維、セルロース系繊維、炭化珪素系繊維、アルミナ系繊維、ガラス系繊維、カーボン系繊維、スチール系繊維などから適宜、1種または2種以上を選定すればよい。なかでも、物理特性、耐久性、耐熱性などの点からナイロン66繊維が好ましい。また、リサイクルの観点からは、ポリエステル系繊維、ナイロン6繊維も好ましい。
これら繊維には、紡糸性や、加工性、耐久性などを改善するために通常使用されている各種の添加剤、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤などの1種または2種以上を使用してもよい。また、カラミ織を製織する上で望ましい場合には、加撚、嵩高加工、捲縮加工、捲回加工、糊付け加工などの加工を施してもよい。さらに、糸条の形態は、長繊維フィラメント以外に、短繊維の紡績糸、これらの複合糸などを用いてもよい。
例えば、前記繊維基布が織物の場合は、平織、斜子織(バスケット織)、格子織(リップストップ織)、綾織、畝織、絡み織、模紗織、あるいはこれらの複合組織などいずれでもよい。場合によっては、経糸、緯糸の二軸以外に、斜め60度を含む多軸設計としても良く、その場合の糸の配列は、経糸または緯糸と同じ配列に準じればよい。なかでも構造の緻密さ、物理特性や性能の均等性が確保できる点で、平織が好ましい。
織物の製造は、通常の工業用織物を製織するのに用いられる各種織機から適宜選定すればよく、例えばシャトル織機、ウォータージェット織機、エアージェット織機、レピア織機、プロジェクタイル織機などから選定すればよい。
前記繊維基布が編物の場合は、シングルトリコット編、シングルコード編、シングルアトラス編などのたて編や、平編、ゴム編、パール編などのよこ編、などの編組織を単独またはそれらを組み合わせた二重組織などからなるものがあげられる。また、前記繊維基布が不織布の場合は、ケミカルボンド、サーマルボンド、ニードルパンチ、スパンレース、ステッチボンド、スパンボンド、メルトブロー、湿式などにより製造されるものがあげられる。
また、本発明で使用する糸の単糸太さは、同じでも異なってもいずれでも良く、例えば、0.5〜6dtexの範囲にあれば好ましい。また、単糸の強度も、5.4cN/dtex以上、好ましくは8cN/dtex以上の糸を用いればよい。また、これら繊維の単糸の断面形状も、円形、楕円、扁平、多角形、中空、その他の異型など、織物の製造、得られた織物の物性に支障のない範囲で適宜選定すればよい。また、太さや断面形状などが異なる複数の糸を、合糸、撚り合わせ、などにより一体化したものを用いてもよい。
これら繊維の総繊度は、150〜1000dtexであることが好ましく、さらに好ましくは235〜700dtexである。150dtex未満ではエアバッグに求められる強度が得られにくい傾向にあり、1000dtexより大きくなると、重量が大きくなりすぎると同時に、基布の厚みが増大しエアバッグの収納性が悪くなるおそれがある。
これらの糸からなる本発明の織物は、目付けが190g/m以下、引張強力が650N/cm以上であることが好ましい。目付けと引張強力がこの範囲であれば、軽くて物理特性に優れているといえる。なお、ここでいう目付けは、後述する不通気処理剤を塗布する前の未加工の状態の基布重量をいう。
前記繊維基布が織物である場合のカバーファクターは、1500〜2500であることが好ましい。カバーファクターが1500未満では、織物の開口部が大きくなるためバッグの気密性を得ることが困難となり、またカバーファクターが2500より大きいと、織物の厚みが増大し、エアバッグの収納性が悪くなるおそれがある。ここで、カバーファクターとは基布のタテ糸総繊度をD1(dtex)、タテ糸密度をN1(本/2.54cm)とし、ヨコ糸総繊度をD2(dtex)、ヨコ糸密度をN2(本/2.54cm)とすると(D1×0.9)1/2×N+(D×0.9)1/2×N2で表される。
また、繊維基布は精練および熱処理を施されたものであってもよい。
これらの基布は、耐熱性の向上および通気度の低下を目的として、不通気処理剤を有している。また、その目的から、前記不通気処理剤は、少なくともパネルの片面全面に付着しているが、パネル表面、パネルを構成する糸束の間隙部、または、繊維単糸の間隙部など、いずれに介在していてもよい。エアバッグ基布に外力が加わっても被膜の損傷が抑えられるという理由により、パネルの不通気処理剤を有する面同士を接合して、被覆面が内側になるようにエアバッグを作製することが好ましい。
不通気処理剤とは、実質的に空気を通さないようにする処理剤であり、不通気とは、JIS L1096「一般織物試験方法」における8.27.1 A法(フラジール法)において、測定値0.0のことをいう。
前記不通気処理剤としては、前記接着シール材に用いられるものと同様な樹脂またはゴムを使用することができる。不通気処理剤と、接着シール材を形成する成分は同一である必要はなく、不通気処理剤としての性能を満たすものであればよい。とくに、これらが類似の成分であると、パネルの不通気処理剤を有する面と接着シール材との界面の相性が向上し、結果的に接着性が良好となるため好ましい。さらに、これらが同一の成分であれば、品質管理や経済性の点で有利である。
このような不通気処理剤の25℃における粘度は、得られる被膜の強度および配合作業性などの点で、1000〜50000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
前記不通気処理剤の被覆前の形態は、特に限定されるものでなく、無溶剤型、溶剤希釈型、水分散型などをあげることができる。なかでも、作業性および環境の面で、無溶剤型が好ましい。
また、その被覆方法としては、1)コーティング法(ナイフ、キス、リバース、コンマ、スロットダイおよびリップなど)、2)浸漬法、3)印捺法(スクリーン、ロール、ロータリーおよびグラビアなど)、4)転写法(トランスファー)、5)ラミネート法、および6)スプレーなどにて噴霧する方法などがあげられる。なかでも、設定できる付与量の幅が大きい点で、コーティング法が好ましい。
また、その付着量は、乾燥重量で45g/mより少ない。下限は、5g/mであることが好ましい。付着量が5g/m未満では、基布の通気性が高くなってエアバッグの気密性に問題が発生する傾向にあり、付着量が45g/m以上であると、基布の厚みが増大し、エアバッグの収納性が悪くなるおそれがある。とくに、軽量性、収納性の点で、付着量が35g/m以下であることが好ましく、10〜25g/mであることがさらに好ましい。
さらに、エアバッグを滑らかに展開させる目的で、前記不通気処理剤により得られる被膜の摩擦を低減する処理をおこなうことが好ましい。前記処理としては、具体的には、被膜にタルク等の微粉体を塗布する方法、処理剤に有機チタン化合物等の硬化後の粘着性を低減する物質を配合して被覆をおこなう方法、および、被膜にエンボス加工装置などを用いて凹凸を付与する方法などがあげられる。
本発明で使用する接着シール材は、破断時伸びが800%以上の弾性を有するものである。破断時伸びが800%以上であると、エアバッグの膨張にも十分対応できるため、破断するおそれがなく、高い気密性が保たれる。破断時伸びは、1000%以上であることが好ましい。破断時伸びは大きいほうが好ましいが、現実的には、2000%以下である。
また、そのJIS K6251に準じた硬さは、5〜30であることが好ましい。硬さが5未満であると、シール部を触ったときの変形が大きくなり、エアバッグの気密性が悪くなる傾向にあり、30をこえると、エアバッグ全体の折り畳みがしにくくなり、収納性が悪化する傾向にある。
前記接着シール材は、2枚のパネルを強固に接合することが可能であれば、とくに限定されない。例えば、シリコーン系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリアミド系接着剤、ニトリルゴム系接着剤などから適宜選定すればよい。
なお、前記パネルが、シリコーンゴム系の不通気処理剤で被覆されている場合には、接着シール材もシリコーン系であることが好ましく、ウレタン樹脂で被覆されている場合には、ウレタン系であることが好ましい。
前記接着シール材の形態としては、一液、二液、三液以上の液状、粉体、フィルム、テープなどがあげられる。なかでも、均一に付与できる点や取り扱いの容易さの点で、液状であることが好ましい。とくに、主剤、硬化剤、触媒および充填剤等の各成分を少なくとも含んでなる組成物が、二液に分かれて保存されている、いわゆる二液型が、取り扱いが容易である点でさらに好ましい。
好ましい接着シール材としては、例えば、二液付加反応型シリコーンゴム組成物があげられる。
二液付加反応型シリコーンゴム組成物の主剤としては、1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが用いられる。このアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基をあげることができる。なかでも、ビニル基が好ましい。また、アルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基をあげることができる。なかでも、メチル基が好ましい。
前記オルガノポリシロキサンの分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、網状、樹枝状があげられる。
このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、式:(CHSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:(CH(CH=CH)SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、これらのオルガノポリシロキサンのメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基で置換したオルガノポリシロキサン、これらのオルガノポリシロキサンのビニル基の一部または全部をアリル基、プロペニル基などのアルケニル基で置換したオルガノポリシロキサン、およびこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物をあげることができる。
前記硬化剤としては、1分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが用いられる。前記ケイ素原子に結合する有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基をあげることができる。なかでも、メチル基が好ましい。
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、網状、樹枝状をあげることができる。
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンのメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基で置換したオルガノハイドロジェンポリシロキサン、およびこれらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンの二種以上の混合物をあげることができる。なかでも、得られる硬化物の物理的特性、特には、伸びが向上することから、分子鎖両末端にのみケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと分子鎖側鎖にケイ素原子結合を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの混合物であることが好ましい。
前記硬化剤の含有量は、主剤成分中のアルケニル基に対するケイ素原子結合水素原子のモル比が、0.01〜20となる量であることが好ましく、0.1〜10となる量であることがより好ましく、0.1〜5となる量であることがさらに好ましい。含有量が0.01となる量より少ないと、得られるシリコーンゴム組成物が十分に硬化しない傾向にある。また、含有量が多いと、硬化して得られるシリコーンゴムの物理的特性が低下する傾向にある。
また、硬化剤として、分子鎖両末端にのみケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと分子鎖側鎖にケイ素原子結合を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの混合物を用いる場合には、前者のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、主剤成分中のアルケニル基に対するケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜10となる量であることが好ましく、0.1〜10となる量であることがより好ましく、0.1〜5となる量であることがさらに好ましい。後者のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、主剤成分中のアルケニル基に対するケイ素原子結合水素原子のモル比が0.5〜20となる量であることが好ましく、0.5〜10となる量であることがより好ましく、0.5〜5となる量であることがさらに好ましい。
前記触媒は、主剤成分である1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、硬化剤成分である1分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの硬化反応を促進するためのものである。触媒としては、例えば、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、四塩化白金、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒をメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂などの熱可塑性有機樹脂中に分散してなる微粉末をあげることができる。
前記触媒の含有量は、主剤成分と硬化剤成分との硬化を促進するに十分な量であれば特に限定されない。なかでも、主剤成分100万重量部に対して触媒成分中の白金原子が0.01〜500重量部となる量であることが好ましく、0.1〜100重量部となる量であることがより好ましい。含有量が少ないと、硬化反応が十分に進行しない傾向にあり、また、多すぎると、原料費が高価となる傾向にあり、不経済である。
前記充填剤としては、炭酸カルシウム粉末、シリカ粉末、石英粉末等があげられる。
接着シール材が炭酸カルシウム粉末を含有することにより、基布を被覆する不通気処理剤に対する接着性を向上させることができる。
炭酸カルシウム粉末のBET比表面積は5〜50m/gであることが好ましく、10〜50m/gであることがより好ましい。BET比表面積が5m/gより小さいと、接着性向上の効果が十分に発揮されない傾向にある。BET比表面積が50m/gをこえると、炭酸カルシウムに含まれる不純物が多くなり、硬化した接着シール材の物理的特性が低下する傾向にある。
このような目的で用いられる炭酸カルシウム粉末としては、例えば、重質(または乾式粉砕)炭酸カルシウム粉末、軽質(または沈降)炭酸カルシウム粉末、およびこれらの炭酸カルシウム粉末を脂肪酸や樹脂酸などの有機酸で表面処理した粉末をあげることができる。なかでも、軽質(または沈降)炭酸カルシウム粉末が好ましく、脂肪酸や樹脂酸などの有機酸で表面処理した軽質(または沈降)炭酸カルシウム粉末がより好ましい。
接着シール材中の前記炭酸カルシウム粉末の含有量は、主剤成分100重量部に対して5〜200重量部であることが好ましく、10〜100重量部であることがより好ましい。含有量が5重量部より少ないと、接着性を向上させる効果が十分に発揮されない傾向にあり、また、200重量部をこえると、均一な接着シール材を調製することが困難となる傾向にある。
また、接着シール材がシリカ粉末を含有することにより、硬化して得られる接着シール材の機械的強度を向上させることができる。
このような目的で用いられるシリカ粉末としては、例えば、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、焼成シリカ、およびこれらのシリカ粉末をオルガノシラン、オルガノポリシロキサン、オルガノアルコキシシラン、オルガノハロシラン、オルガノシラザンなどの有機ケイ素化合物で表面処理した粉末をあげることができる。なかでも、硬化物の機械的強度を十分に向上させるためには、BET比表面積が50m/g以上であるシリカ粉末を用いることが好ましい。
接着シール材中の前記シリカ粉末の含有量は、主剤成分100重量部に対して1〜100重量部であることが好ましく、1〜50重量部であることがより好ましい。含有量が1重量部より少ないと、硬化物の機械的強度を向上させる効果が十分に発揮されない傾向にあり、また、含有量が100重量部をこえると、粘度が高くなり取扱性が低下する傾向にある。
また、接着シール材が石英粉末を含有することにより、硬化して得られる接着シール材を増量させることができ、また熱伝導性を向上させることができる。
石英は、無色透明〜白色の粉末で、モース硬度が7のものである。平均粒径が1〜25μmの石英を用いることにより、二液混合後の組成物の粘度低下をきたすことなく、経時によるシリコーンゴムの劣化を有効に抑制することができる。平均粒径が1μmより小さいと、二液混合後の組成物の粘度が著しく増加して、取扱性が悪化する傾向にあり、また、平均粒径が25μmをこえると、二液混合後の組成物の粘度が低下し、その硬化物からなる接合部の形状ばらつきが大きくなって、エアバッグの寸法精度が不良となる傾向にある。さらには、硬化物の物理的特性が低下する傾向にある。
接着シール材中の前記石英の含有量は、主剤成分100重量部に対して1〜200重量部であることが好ましく、5〜200重量部であることがより好ましい。含有量が1重量部より少ないと、経時によるシリコーンゴムの劣化を抑制する効果が十分に発揮されない傾向にあり、200重量部をこえると、硬化物の伸びが低下する傾向にある。
本発明で使用する接着シール材として例示した二液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物は、以上に説明した主剤、硬化剤、触媒、および特定の充填剤を少なくとも含んでいる。
さらには、その接着性を向上させるために、接着付与剤を含有してもよい。このような接着付与剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンなどのシランカップリング剤;テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンエチルアセトネート、チタンアセチルアセトネートなどのチタン化合物;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)などのアルミニウム化合物;ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテートなどのジルコニウム化合物があげられる。
また、その貯蔵安定性および取扱作業性を向上させるために、硬化抑制剤を含有することが好ましい。このような硬化抑制剤としては、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−フェニル−1−ブチン−3−オールなどのアセチレン系化合物;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インなどのエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体などの1分子中にビニル基を5重量%以上持つオルガノシロキサン化合物;ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール類、フォスフィン類、メルカプタン類、ヒドラジン類があげられる。
その他の任意成分として、例えば、ヒュームド酸化チタン、カーボンブラック、ケイ藻土、酸化鉄、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、銀、ニッケルなどの無機質充填剤;これらの充填剤の表面を前記の有機酸や有機ケイ素化合物で表面処理した充填剤、オルガノポリシロキサンレジン、顔料、耐熱剤などの各種添加剤を含有してもよい。
二液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物を調製する方法は、とくに限定されず、主剤、硬化剤、触媒、充填剤および必要に応じて任意成分を混合することにより調製する。なお、任意成分を含有する場合、これが加熱混合により変質する場合には、加熱工程後に添加することが好ましい。二液付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の調製には、2本ロール、ニーダーミキサー、ロスミキサーなどの周知の混練装置を用いることができる。
このような二液型の接着シール材は、二液を混合することで硬化反応が始まるように、硬化剤と触媒を分離して調製することが重要である。一方の液に硬化剤を配合した組成であれば、他方の液に触媒を配合する。主剤、充填剤、その他の任意成分の配合は安定性や流動性などを考慮して適宜設定すればよい。二液の流動性が同等になるよう調製すると、二液を混合して硬化させるときの取扱性や付与量制御が容易になり好ましい。
前記接着シール材の混合直後の25℃における粘度は、100〜500Pa・sであることが好ましい。粘度が100Pa・sより小さいと、流動しやすく、塗布後に広がったり、気泡が混入したりする傾向にある。また、粘度が500Pa・sをこえると、取扱性や塗布精度が不良となる傾向にある。また、混合前の二液の25℃における粘度は、それぞれ50〜1000Pa・sであることが好ましく、それぞれの粘度がほぼ同等であれば、混合時の取扱性や付与量制御が容易となる点で、より好ましい。
前記接着シール材の硬化後の幅は、5〜20mmが好ましい。幅が5mmより狭いと、接合部の接着強度が十分でないおそれがあり、幅が20mmより広いと、接合部が嵩高になるため、収納性に劣るものとなるおそれがある。
また、接着シール材の硬化後の厚みは、0.05〜2mmが好ましい。厚みが0.05mmより薄いと接着シール材の接合強度および伸びなどの性能が十分に発揮することが出来ないおそれがあり、厚みが2mmをこえるとバッグの収納性が悪くなるおそれがある。
縫合に使用する縫い糸は、一般に化合繊縫い糸と呼ばれるものや工業用縫い糸として使用されているものの中から適宜選定すればよい。例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエステル、高分子ポリオレフィン、含フッ素、ビニロン、アラミド、カーボン、ガラス、スチールなどがあり、紡績糸、フィラメント合撚糸またはフィラメント樹脂加工糸のいずれでもよい。
前記縫合は、本縫い、二重環縫い、片伏せ縫い、かがり縫い、安全縫い、千鳥縫い、扁平縫いなどの通常のエアバッグに適用されている縫い目により行えばよい。
縫い糸の太さは700dtex(20番手相当)〜2800dtex(0番手相当)、運針数は2〜10針/cmであることが好ましい。複数列の縫い目線が必要な場合は、縫い目線間の距離は2.2〜8.0mm程度として、多針型ミシンを用いればよいが、縫製部距離が長くない場合には、1本針ミシンで複数回縫合してもよい。エアバッグ本体として複数枚の裁断基布を用いる場合には、複数枚を重ねて縫合してもよいし、1枚ずつ縫合してもよい。
本発明のエアバッグには、乗員側へのエアバッグの突出抑制や膨張時の厚みの制御のために、内側に吊り紐またはガス流調整布、エアバッグ外側にフラップと呼ばれる帯状布または抑え布などを設けてもよい。
また、使用するインフレーターの特性に応じて、インフレーター噴出口周囲に熱ガスから保護するための耐熱保護布や力学的な補強布を設けてもよい。これらの保護布や補強布は、布自体が耐熱性の材料、例えば、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、PBO繊維、ポリイミド繊維、含フッ素繊維などの耐熱性繊維材料を用いてもよいし、エアバッグ本体用基布より太い糸を用いて別途作製した基布を用いてもよい。また、基布に耐熱性被覆剤を施したものを用いてもよい。
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例の中で行われているエアバッグの性能評価は、以下の方法に従った。
(1)シール剥離強度試験
(株)島津製作所製 オートグラフ(AG−IS)を用いて、200mm/minの速度でサンプルの接着シール材が剥離したときの強度を測定した。サンプルについては、不通気処理を施したコート布(塗布量25g/m)に、二液付加反応型接着シール材を塗布、圧着、接合し、25℃で24時間硬化させて作成した。なお、塗布、圧着、接合時における接着シール材の長さは50mm、幅は10mmとし、厚みはシックネスゲージにより調整を行なった。
(2)接着シール材の形状安定性
エアバッグ作成後の接着シール材の寸法を測定し、幅10±2mm、厚み1.0±0.2mm(1.3±0.2mm)の規格に入っているものは○、入っていないものは×とした。
(3)展開試験
エアバッグのインフレーター取付部に、固定金具とともにインフレーター(タンク圧150kPa、アトランティックリサーチ社製ハイブリッドインフレーター)を固定し、エアバッグを室温にて展開し、展開後、エアバッグ接合部の損傷の有無を観察した。
[実施例1]
総繊度470dtex、単糸繊度3.5dtex、単糸強度8.5cN/dtex、断面形状丸型のナイロン66フィラメント糸を用いて、経糸密度、緯糸密度がともに45本/2.54cmとなるようにウォータージェットルーム織機にて平織物を製織した。カバーファクターは1851、引張強力は650N/cmであった。この平織物を、界面活性剤を含む90℃の熱水中で精練した後、185℃で30秒間熱セットした。ついで、不通気処理剤として、二液付加反応型無溶剤型シリコーンゴム組成物をナイフコーターにより、乾燥重量が25g/mになるよう織物の片面にコーティングした後、180℃で2分間熱処理を行い、コーティング基布を得た。
得られたコーティング基布を、ナイフ裁断機にて、運転席用エアバッグの形状に裁断し、同形の2枚のメインパネル、および、切り欠きにより形状が異なる2種類のパッチ1枚ずつを得た。2種類のパッチはあらかじめ1400dtexのナイロン66縫糸を用いて、運針数を3.5針/cmとして本縫いにより縫合したうえで、二液付加反応型接着シール材を塗布した後、前記メインパネル1枚のコーティング面に接合し、平板により圧着した後取り出して、25℃で24時間硬化させた。ついで、前記メインパネルのもう1枚を重ね合わせ、外縁部を1400dtexのナイロン66縫糸を用いて、運針数を3.5針/cmとして二重環縫いにより縫合し、運転席用エアバッグを得た。
硬化後の接着シール材の幅は10mm、接着シール材の厚みはパッチ2枚部で1mm、パッチ1枚部(切り欠き存在部)で1.3mmであった。得られたエアバッグは、接着シール材の剥離がなく、問題なく展開した。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
形状が同一なパッチ2枚を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエアバッグを得た。得られたエアバッグは、接着シール材の端部に凝集破壊が見られた。また、接着シール材を塗布するときに、塗布する裁断基布が固定されていないため、接着シール材形状が安定せずに幅と厚みにばらつきが生じた。評価結果を表1に示す。
Figure 0004989515
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。自動車乗員保護用エアバッグに限らず、各種乗員保護用エアバッグ、例えば、運転席および助手席の前面衝突保護用エアバッグ、側面衝突保護用サイドエアバッグ、後部座席保護用エアバッグ、追突保護用のヘッドレストエアバッグ、脚部・足部保護用ニーエアバッグおよびフットエアバッグ、乳幼児保護用(チャイルドシート)ミニエアバッグ、サブマリン現象防止用エアバッグ、エアーベルト用袋体、歩行者保護用などの乗用車、商業車、バス、二輪車などの各用途の他、機能的に満足するものであれば、船舶、列車・電車、飛行機、遊園地設備など多用途に適用することができる。
本発明の一例である運転席用エアバッグを示す概略説明図。 同上エアバッグを示す他の概略説明図。 同上エアバッグを示す図2のA−A線での概略断面図。 同上エアバッグを示す図2のB−B線での概略断面図。 同上エアバッグを構成するメインパネルおよびパッチの概略説明図。 同上エアバッグを構成する基布部材(3+4)を示す概略説明図。 同上エアバッグを構成する基布部材(3+4)への接着シール材配置位置を示す説明図。 同上エアバッグを構成する基布部材(3+4)を示す図7のC−C線での、メインパネル1圧着後における概略断面図。 本発明の他の一例であるカーテンシールドエアバッグを示す概略説明図。 同上エアバッグを構成するメインパネルおよびパッチの概略説明図。 同上エアバッグを構成する基布部材(12+13)を示す概略説明図。 同上エアバッグを構成する基布部材(12+13)に対し、パッチ12に接着シール材14を配置するときの位置を示す説明図。 同上エアバッグを構成する基布部材(12+13)に対し、パッチ13に接着シール材14を配置するときの位置を示す説明図。 同上エアバッグを構成する基布部材(12+13)の、エアバッグ展開時の説明図。 同上エアバッグを構成する基布部材(12+13)についての、図12のD−D線での、メインパネル10圧着後における概略断面図。 同上エアバッグを構成する基布部材についての、図13のE−E線での、メインパネル11圧着後における概略断面図。
符号の説明
1 メインパネル
2 メインパネル
3 パッチ
4 パッチ
5 接着シール材
5´ 接着シール材(切り欠き存在部分に配置した接着シール材)
6 インフレーター取付部(メインパネル1側)
7 パッチ接合部
8 メインパネル−パッチ接合部(メインパネル2側)
9 外縁接合部
10 メインパネル
11 メインパネル
12 パッチ
13 パッチ
14 接着シール材
14´ 接着シール材(切り欠き存在部分に配置した接着シール材)
15 インフレーター挿入部
16 パッチ接合部
17 外縁接合部
18 車体取付用ボルト穴

Claims (3)

  1. メインパネルとそれ以外の基布部材とを有し、該基布部材が略同型である2枚以上の接合された裁断基布からなるエアバッグにおいて、該基布部材を構成する裁断基布のうち、少なくとも1枚の裁断基布が切り欠き部位を有しており、他の裁断基布は、該切り欠き部位と重なる位置に切り欠きを有してなく、さらに、少なくとも該切り欠き部位と重なる位置に接着シール材を有しており、該接着シール材を介して前記他の裁断基布にメインパネルが配置されてなるエアバッグ。
  2. 前記基布部材を構成する少なくとも1枚の裁断基布が有する切り欠き部位において、基布部材を構成する裁断基布の重なり枚数が部分的に異なり、異なる裁断基布の厚み分だけ、裁断基布の重なりが少ない部分に配置された接着シール材の厚みが大きいことを特徴とする、請求項1記載のエアバッグ。
  3. 切り欠き部位を有している裁断基布において、裁断基布における切り欠き部位を有する位置とメインパネルとの接着シール材端部の厚みが、裁断基布における切り欠きを有していない位置とメインパネルとの接着シール材端部の厚みより大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のエアバッグ。
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