JP2019025995A - エアバッグ - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量性、収納性および気密性のすべてに優れたエアバッグを提供する。
【解決手段】2枚のパネルの外周縁同士が接着シール材による接着および縫製糸による縫合により接合されてなるエアバッグであって、各パネルの少なくとも片面がコート樹脂で被覆されており、コート樹脂が被覆された面を相対させ、かつ、接着シール材を介して接合され、接着シール材の引張強度が25〜35N/mm2の範囲であり、接着シール材の凝集破壊強度(CFS)N/mm2と接着シール材の引張強度(TS)N/mm2との関係が、CFS > TS/5 であるエアバッグ。
【選択図】図1
【解決手段】2枚のパネルの外周縁同士が接着シール材による接着および縫製糸による縫合により接合されてなるエアバッグであって、各パネルの少なくとも片面がコート樹脂で被覆されており、コート樹脂が被覆された面を相対させ、かつ、接着シール材を介して接合され、接着シール材の引張強度が25〜35N/mm2の範囲であり、接着シール材の凝集破壊強度(CFS)N/mm2と接着シール材の引張強度(TS)N/mm2との関係が、CFS > TS/5 であるエアバッグ。
【選択図】図1
Description
本発明は、車両などに装着され、衝突や横転などの衝撃から乗員を保護するためのエアバッグに関する。さらに詳しくは、2枚のパネルが接合されてなるエアバッグに関する。
車両用エアバッグとして、前面衝突に対応する運転席用エアバッグ、助手席用エアバッグ、後席用エアバッグが装着されるようになって久しい。また、近年では、側面衝突に対応するサイドエアバッグやカーテンシールドエアバッグの装着が増加している。これらのなかでも特に、車両の横転に対応するカーテンシールドエアバッグが注目されており、これには、乗員の頭部への衝撃を吸収するために、車両が横転している数秒間という長時間にわたっての内圧保持が求められている。これらの様々な形態、要求性能のエアバッグに対応するためには、従来以上に、エアバッグの気密性を高めて、膨張持続時間を長くすることができるエアバッグの開発が急務である。
このようなエアバッグとして、特許文献1には、織布などからなる2枚のパネルの縁部同士を、弾性接着剤による接着と、糸による縫合とにより結合することにより、結合部からのガスリークを防止したエアバッグが開示されている。
ところで、近年のエアバッグには、軽量化や収納性の向上が求められており、その対策の一つとして、エアバッグ用基布の通気性を低くするために塗布されるコーティング量の削減が進んでいる。現状では、塗布量30g/m2以下が主流であり、さらには塗布量20g/m2以下になりつつある。通常、パネルは、そのコーティングが施された面同士が接着剤を介して接合されるが、塗布量20g/m2以下の場合には、弾性接着剤の接着力がいかに高くても凝集破壊率が100%にはならず、コーティングを施された面と弾性接着剤との界面が剥離し、その剥離部分からガスリークするおそれがある。この界面剥離を防ぐためには、接着シールを施す面のコーティング塗布量は少なくとも25g/m2以上必要であり、依然として重く高価なものである。
軽量化、収納性、気密性等の課題を解決するために様々な対策が行われており、例えば特許文献2には、接着シール剤とパネルとの間に、中間層が重量25g/m2以上で介在しており、接着シール剤の切断時伸びが800%以上であるエアバッグが開示されている。しかしながら、中間層形成剤と接着シール剤を同時に形成する際に、硬化させるための触媒を多量に添加する必要がありコストアップにつながる恐れがある。また、触媒添加量を削減すると硬化速度の調整が困難になり、硬化不良を生じる問題があった。
また、特許文献3には、基布に不通気処理剤を付与する工程、該基布から第1のパネルと第2のパネルとを切り出す工程、切り出された第1のパネルおよび第2のパネルの外周縁近傍に前処理剤を配置する工程、少なくとも一方のパネルの前処理剤が配置された位置に、さらに接着シール剤を配置する工程、および、第1のパネルと第2のパネルとを接合する工程を含むエアバッグの製造方法が開示されている。しかしながら、この技術では、ベースとなるコート剤(不通気処理剤)と中間層間、または、中間層とシール材間の接着性が不十分であることから気密性が不十分なものであった。
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軽量性、収納性および気密性のすべてに優れたエアバッグを提供することである。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、軽量性、収納性および気密性のすべてが向上することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明は、2枚のパネルの外周縁同士が接着シール材による接着および縫製糸による縫合により接合されてなるエアバッグであって、各パネルの少なくとも片面がコート樹脂で被覆されており、コート樹脂が被覆された面を相対させ、かつ、接着シール材を介して、2枚のパネルの外周縁同士が接合され、接着シール材の引張強度が25〜35N/mm2の範囲であり、接着シール材の凝集破壊強度(CFS)N/mm2と接着シール材の引張強度(TS)N/mm2との関係が、CFS > TS/5であるエアバッグである。
また、コート樹脂が、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、エステル樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
接着シール材が、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、エステル樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
コート樹脂の塗布量が、30g/m2以下であることが好ましい。
接着シール材の切断時伸びが、800%以上であることが好ましい。
本発明によれば、軽量性、収納性および気密性のすべてが良好なエアバッグを得ることができる。
本発明は、2枚のパネルの外周縁同士が接着シール材による接着および縫製糸による縫合により接合されてなるエアバッグであって、各パネルの少なくとも片面がコート樹脂で被覆されており、コート樹脂が被覆された面を相対させ、かつ、接着シール材を介して、2枚のパネルの外周縁同士が接合され、接着シール材の引張強度が25〜35N/mm2の範囲であり、接着シール材の凝集破壊強度(CFS)N/mm2と接着シール材の引張強度(TS)N/mm2との関係が、CFS > TS/5であるエアバッグである。
なお、本発明において、接着シール材の引張強度は以下のように求められる。
接着シール材に対し、JIS K 6251に準じて測定した最大引張力を、接着シール材の初期断面積で除した値を、接着シール材の引張強度とする。なお、評価対象が縫製品の場合には、縫製糸が通った部分を外して測定する。
接着シール材に対し、JIS K 6251に準じて測定した最大引張力を、接着シール材の初期断面積で除した値を、接着シール材の引張強度とする。なお、評価対象が縫製品の場合には、縫製糸が通った部分を外して測定する。
また、本発明において、接着シール材の凝集破壊強度は、以下のように求められる。
シール接着エアバッグ基布から、図2(a)に示すような試験片を切り出し、オートグラフに、図2(b)のように広げた状態で設置して、接着シール材を破壊させた際の応力から求められる。
シール接着エアバッグ基布から、図2(a)に示すような試験片を切り出し、オートグラフに、図2(b)のように広げた状態で設置して、接着シール材を破壊させた際の応力から求められる。
また、本発明において、接着シール材の切断時伸びは、JIS K 6251に準じて求められる。なお、評価対象が縫製品の場合には、縫製糸が通った部分を外して測定する。
本発明のエアバッグ1は、図1に示すように、第1のパネル2と第2のパネル2´の外周縁同士が、接着シール材(以下、単にシール材ともいう)からなる接合部6により接合されてなる。
なお、他の要素、例えばパネルの材料(以下、基布ともいう)やエアバッグの形状などは特に限定されず、エアバッグ用として通常用いられているものを適宜選択すればよい。なお、符号8は縫製糸であり、符号10は車体取り付け用ボルト穴を示している。また、エアバッグ1の構造をわかりやすくするために、切り欠き線11により、第2のパネル2´の一部を切り欠き、下に重ね合わされている第1のパネル2を示している。
接着シール材は、図1に示す、接合部6、環状接合部9、すなわち2枚のパネルを接合する縫製糸8の周囲に配置することができる。また、パネルを被覆しているコート樹脂の間に介在するように接着シール材を配置すればよい。
接着シール材の塗布量は、接着シール材の凝集破壊率が100%になる、すなわち、界面剥離でなくシール材自体のみで破断が生じるように適宜設定すればよく、とくに限定されない。なかでも、硬化後の接着シール材の厚さが、0.05〜2mmとなるように塗布することが好ましい。この厚さが0.05mmより小さいと、エアバッグの気密性を保持しにくい傾向にあり、2mmをこえると、エアバッグの収納性が不良となる傾向にある。
接着シール材の塗布幅は、硬化後のシール材の幅が、5〜20mmとなるように塗布することが好ましい。硬化後の幅が、5mmより小さいと、接合部の強度がばらつく傾向にあり、とくに接合部がエアバッグ膨張時の応力集中部であると、破断に到る場合もある。また、硬化後の幅が20mmをこえると、接合部が嵩高になるため、エアバッグの収納性が不良となる傾向にある。
接着シール材としては、例えば、クロロプレンゴム、ハイバロンゴム、フッ素ゴムなどの含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレン三元共重合ゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、ウレタンゴムおよびアクリルゴムなどのゴム類、および、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂およびフッ素樹脂などの含ハロゲン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、オレフィン樹脂およびシリコーン樹脂などの樹脂類があげられ、これらは単独または併用して使用される。なかでも、可撓性、耐熱性および耐候性に優れる点で、シリコーンゴムおよびシリコーン樹脂が好ましい。
接着シール材には、必要に応じて、架橋して硬化させるための硬化剤、硬化反応を促進するための触媒、補強、粘度調整、耐熱性向上および難燃性向上などを目的とする充填剤、基布に対する接着性を向上させるための接着付与剤、硬化抑制剤、オルガノポリシロキサンレジン、顔料、耐熱剤などの各種添加剤を含有することができる。
接着シール材としては、後述するコート樹脂と同様の樹脂またはゴムを使用することができるが、コート樹脂と同一である必要はなく、パネルを被覆しているコート樹脂に対して強固な接着性を有していればよい。とくに、これらが類似の成分であると、コート樹脂との界面の相性が向上し、結果的に接着性が良好となるため好ましい。さらに、これらが同一の成分であれば、品質管理や経済性の点で有利である。なお、類似の成分とは、コート樹脂がシリコーンゴム系の場合には、接着シール材もシリコーン系であり、コート樹脂がウレタン系である場合には、接着シール材もウレタン系であるということである。
接着シール材は、切断時伸びが800%以上の弾性を有するものであることが好ましい。切断時伸びが800%以上であると、エアバッグの膨張にも十分対応できるため、破断するおそれがなく、高い気密性が保たれる傾向にある。切断時伸びは、1000%以上であることがより好ましい。切断時伸びは大きいほうが好ましいが、現実的には、2000%以下である。
好ましい接着シール材として、保存安定性および経済性の点で、二液付加反応型シリコーンゴム組成物があげられる。
本発明で製造されるエアバッグを構成する基布には、繊維布帛が用いられる。ここで繊維布帛とは、繊維糸条を用いて製織される織物、繊維糸条を用いて製編される編物および不織布を意味する。
繊維布帛を構成する繊維は、天然繊維、化学繊維、無機繊維など、特に限定するものではない。なかでも、汎用性があり、基布の製造工程、基布物性などの点から、合成繊維フィラメントが好ましい。例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612などの単独またはこれらの共重合、混合により得られる脂肪族ポリアミド繊維、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9Tに代表される脂肪族アミンと芳香族カルボン酸の共重合ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの単独またはこれらの共重合、混合によって得られるポリエステル繊維、超高分子量ポリオレフィン系繊維、ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの含塩素系繊維、ポリテトラフルオロエチレンを含む含フッ素系繊維、ポリアセタール系繊維、ポリサルフォン系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン系繊維(PEEK)、全芳香族ポリアミド系繊維、全芳香族ポリエステル系繊維、ポリイミド系繊維、ポリエーテルイミド系繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール系繊維(PBO)、ビニロン系繊維、アクリル系繊維、セルロース系繊維、炭化珪素系繊維、アルミナ系繊維、ガラス系繊維、カーボン系繊維、スチール系繊維などから適宜、一種または2種以上を選定すればよい。なかでも、物理特性、耐久性、耐熱性などの点からナイロン66繊維が好ましい。また、リサイクルの観点からは、ポリエステル系繊維、ナイロン6繊維も好ましい。
これら繊維には、紡糸性や、加工性、耐久性などを改善するために通常使用さている各種の添加剤、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤などの一種または2種以上を使用してもよい。また、カラミ織を製織する上で望ましい場合には、加撚、嵩高加工、捲縮加工、捲回加工、糊付け加工などの加工を施してもよい。さらに、糸条の形態は、長繊維フィラメント以外に、短繊維の紡績糸、これらの複合糸などを用いてもよい。
たとえば、前記繊維布帛が織物の場合は、平織、斜子織(バスケット織)、格子織(リップストップ織)、綾織、畝織、絡み織、模紗織、あるいはこれらの複合組織などいずれでもよい。場合によっては、経糸、緯糸の二軸以外に、斜め60度を含む多軸設計としても良く、その場合の糸の配列は、経糸または緯糸と同じ配列に準じればよい。なかでも構造の緻密さ、物理特性や性能の均等性が確保できる点で、平織が好ましい。
織物の製造は、通常の工業用織物を製織するのに用いられる各種織機から適宜選定すればよく、例えばシャトル織機、ウォータージェット織機、エアージェット織機、レピア織機、プロジェクタイル織機などから選定すればよい。
また、本発明で使用する糸の単糸繊度は、同じでも異なってもいずれでも良く、例えば、0.5〜6dtexの範囲にあれば好ましい。また、単糸の強度も、5.4cN/dtex以上、好ましくは8cN/dtex以上の糸を用いればよい。また、これら繊維の単糸の断面形状も、円形、楕円、扁平、多角形、中空、その他の異型など、織物の製造、得られた織物の物性に支障のない範囲で適宜選定すればよい。また、太さや断面形状などが異なる複数の糸を、合糸、撚り合わせ、などにより一体化したものを用いてもよい。
また、糸の総繊度は、150〜1000dtexであることが好ましく、さらに好ましくは235〜700dtexである。150dtex未満ではエアバッグに求められる強度が得られにくい傾向にあり、1000dtexより大きくなると、重量が大きくなりすぎると同時に、基布の厚みが増大しバッグの収納性が悪くなるおそれがある。
これらの糸からなる本発明の織物は、目付けが190g/m2以下、引張強力が650N/cm以上であることが好ましい。目付けと引張強力がこの範囲であれば、軽くて物理特性に優れているといえる。なお、ここでいう目付けは、後述するコート樹脂を塗布する前の未加工の状態の基布重量をいう。
前記繊維布帛が織物である場合のカバーファクターは、1500〜2500であることが好ましい。カバーファクターが1500より小さいと、織物の開口部が大きくなるためバッグの気密性を得ることが困難となり、またカバーファクターが2500より大きいと、織物の厚みが増大し、バッグの収納性が悪くなるおそれがある。ここで、カバーファクターとは基布のタテ糸総繊度をD1(dtex)、タテ糸密度をN1(本/2.54cm)とし、ヨコ糸総繊度をD2(dtex)、ヨコ糸密度をN2(本/2.54cm)とすると(D1×0.9)1/2×N1+(D2×0.9)1/2×N2で表される。
また、繊維布帛は精練および熱処理を施されたものであってもよい。
これらの布帛は、気密性の向上を目的として、コート樹脂を有している。また、その目的から、前記コート樹脂は、少なくともパネルの片面全面に付着しているが、パネル表面、パネルを構成する糸束の間隙部、または、繊維単糸の間隙部など、いずれに介在していてもよい。エアバッグ基布に外力が加わっても被膜の損傷が抑えられるという理由により、コート樹脂を有する面同士を接合して、被覆面が内側になるようにすることが好ましい。
コート樹脂としては、例えば、クロロプレンゴム、ハイバロンゴム、フッ素ゴムなどの含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレン三元共重合ゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、ウレタンゴムおよびアクリルゴムなどのゴム類、および、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂およびフッ素樹脂などの含ハロゲン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、オレフィン樹脂およびシリコーン樹脂などの樹脂類があげられ、これらは単独または併用して使用される。なかでも、可撓性、耐熱性および耐候性に優れる点で、シリコーンゴムおよびシリコーン樹脂が好ましい。
このようなコート樹脂の25℃における粘度は、得られる被膜の強度および配合作業性などの点で、1,000〜50,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
コート樹脂の被覆前の形態は、とくに限定されるものでなく、無溶剤型、溶剤希釈型、水分散型などをあげることができる。なかでも、作業性および環境の面で、無溶剤型が好ましい。
また、コート樹脂の塗布量としては、乾燥後重量で5〜30g/m2が好ましい。塗布量が5g/m2より少ないと、布帛の通気性が高くなりエアバッグの気密性に問題が発生する傾向にあり、塗布量が30g/m2より多いと、布帛の厚みが厚くなってエアバッグの収納性に問題が発生するおそれがある。また、軽量性、収納性の点で、塗布量が20g/m2以下であることがより好ましく、気密性を得やすい点で、10g/m2以上であることがさらに好ましい。
さらに、エアバッグを滑らかに展開させる目的で、コート樹脂により得られる被膜の摩擦を低減する処理をおこなうことが好ましい。前記処理としては、具体的には、被膜にタルク等の微粉体を塗布する方法、処理剤に有機チタン化合物等の硬化後の粘着性を低減する物質を配合して被覆をおこなう方法、および、被膜にエンボス加工装置などを用いて凹凸を付与する方法などがあげられる。
本発明のエアバッグの製造方法を具体的に説明する。
まず、パネルを構成する基布に前記コート樹脂を塗布し、基布の少なくとも片面を前記コート樹脂により被覆する。
被覆方法としては、1)コーティング法(ナイフ、キス、リバース、コンマ、スロットダイおよびリップなど)、2)浸漬法、3)印捺法(スクリーン、ロール、ロータリーおよびグラビアなど)、4)転写法(トランスファー)、5)ラミネート法、および6)スプレーなどにて噴霧する方法などがあげられる。なかでも、設定できる塗布量の幅が大きい点で、コーティング法が好ましい。
ついで、第一の製造方法によれば、前記コート樹脂が塗布された基布から、第1のパネルと第2のパネルとを所望の形状に切り出す。
切り出された2枚のパネルの外周縁近傍に、接着シール材を配置する。接着シール材は、コート樹脂が塗布された面に配置しても、塗布されていない面に配置してもよい。なかでも、コート樹脂がアンカー効果を発現し、接着シール材の界面剥離を防ぐことができるという点で、コート樹脂が塗布された面に配置することが好ましい。
接着シール材の配置方法としては、液状のものについては、ディスペンサー、スクリーンプリント、スプレーなどにて塗布する方法、粉体のものについては、型枠を通して塗布する方法、フィルム状やテープ状のものについては、所望の形状に裁断して、貼付する方法などがあげられ、適宜選択すればよい。
最後に、コート樹脂を塗布した面同士を重ね合わせて、圧着することにより接合した後、接着シール材が硬化してから、接合部またはその近傍を縫合する。縫合することにより、接着シール材の強度を補強する効果が得られる。
なかでも、ミシン針への接着シール材の付着防止や、接合部に針穴を開けず傷つけないという点で、接合部の近傍を縫合することがより好ましい。エアバッグ膨張形状は接着シール材により規定されるため、エアバッグ膨張形状の保持と気密性のためには、接合部の外側を縫合することが、さらに好ましい。
縫合に使用する縫製糸は、一般に化合繊縫製糸と呼ばれるものや工業用縫製糸として使用されているものの中から適宜選定すればよい。例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエステル、高分子ポリオレフィン、含フッ素、ビニロン、アラミド、カーボン、ガラス、スチールなどがあり、紡績糸、フィラメント合撚糸またはフィラメント樹脂加工糸のいずれでもよい。
縫合は、本縫い、二重環縫い、片伏せ縫い、かがり縫い、安全縫い、千鳥縫い、扁平縫いなどの通常のエアバッグに適用されている縫い目により行えばよい。
縫製糸の太さは700dtex(20番手相当)〜2800dtex(0番手相当)、運針数は2〜10針/cmであることが好ましい。複数列の縫い目線が必要な場合は、縫い目線間の距離は2.2〜8.0mm程度として、多針型ミシンを用いればよいが、縫製部距離が長くない場合には、1本針ミシンで複数回縫合してもよい。エアバッグ本体として複数枚の裁断基布を用いる場合には、複数枚を重ねて縫合してもよいし、一枚ずつ縫合してもよい。
また、接着シール材とコート樹脂との光透過率や光反射率が明確に異なる設計にすることにより、縫製ミシンに光照射装置や光透過装置を設置し、センサーで感知することを可能とし、より正確に縫合することが可能となる。そのために、接着シール材およびコート樹脂のいずれか一方にあるいは両者に、酸化チタン、鉄黄、イソインドリン、ペリレン、アンスラキノン、フタロシアニン、ベンガラ、カーボンブラックなどからなる顔料や染料を、異なる光透過率や光反射率になるよう添加することが好ましい。このような方法により、縫合が適正な位置に正確に行うことができれば、従来のようにずれを想定して余分な幅で接着シール材を配置するロスが軽減される。
他の製造方法によれば、前述の製造方法と同様に第1の基布と第2の基布とを用意して、所望の形状に接着シール材を配置する。なお、所望の形状とは、後に続く工程を経て切り出されたエアバッグが、たとえば図1に示すような袋体となるように2枚の基布が接合される形状である。
ついで、第一の製造方法と同様に、コート樹脂を塗布した面同士を重ね合わせて、圧着することにより接合した後、接合された2枚の基布からエアバッグを切り出す。切り出し工程の前もしくは後に、接合部またはその近傍を縫合する。
この製造方法のように、接合した後、エアバッグを切り出すことにより、相対するパネルの重ねずれがないため寸法精度に優れ、基布に余分な部分を必要としないため、エアバッグを折り畳んだときの容積が小さくなり収納性に優れたものとなる。また、車両などへの取り付け用ボルト穴なども正確に位置決めすることが可能となり、所定の膨張形状を容易に得ることができる。さらに、エアバッグの製造を一連の装置で連続的に行うことができる点でも好ましい。
本発明で製造されるエアバッグには、乗員側へのエアバッグの突出抑制や膨張時の厚みの制御のために、内側に吊り紐またはガス流調整布、エアバッグ外側にフラップと呼ばれる帯状布または抑え布などを設けてもよい。
また、使用するインフレーターの特性に応じて、インフレーター噴出口周囲に熱ガスから保護するための耐熱保護布や力学的な補強布を設けてもよい。これらの保護布や補強布は、布自体が耐熱性の材料、例えば、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、PBO繊維、ポリイミド繊維、含フッ素繊維などの耐熱性繊維材料を用いてもよいし、エアバッグ本体用基布より太い糸を用いて別途作製した布帛を用いてもよい。また、布帛に耐熱性被覆剤を施したものを用いてもよい。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。例えば、運転席および助手席の前面衝突保護用エアバッグ、側面衝突保護用サイドエアバッグ、後部座席保護用エアバッグ、追突保護用のヘッドレストエアバッグ、脚部・足部保護用ニーエアバッグおよびフットエアバッグ、乳幼児保護用(チャイルドシート)ミニエアバッグ、サブマリン現象防止用エアバッグ、エアーベルト用袋体、歩行者保護用などの乗用車、商業車、バス、二輪車などの各用途の他、機能的に満足するものであれば、船舶、列車・電車、飛行機、遊園地設備など多用途に適用することができる。
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例の中で行っている物性試験および評価試験は、以下の方法に従った。
(1)接着シール材の引張強度と切断時伸び
得られたシール接着エアバッグ基布から、試験片として、幅5mm、長さ10mmの硬化したシール材を切り出した。この試験片に対し、JIS K 6251に準じて測定した最大引張力を、試験片の初期断面積(試験幅5(mm)×厚みD(mm))で除し、接着シール材の引張強度を求めた。また、同様に試験片として、幅5mm、長さ10mmの硬化したシール材を切り出し、この試験片に対し、JIS K 6251に準じて、切断時伸びを求めた。
得られたシール接着エアバッグ基布から、試験片として、幅5mm、長さ10mmの硬化したシール材を切り出した。この試験片に対し、JIS K 6251に準じて測定した最大引張力を、試験片の初期断面積(試験幅5(mm)×厚みD(mm))で除し、接着シール材の引張強度を求めた。また、同様に試験片として、幅5mm、長さ10mmの硬化したシール材を切り出し、この試験片に対し、JIS K 6251に準じて、切断時伸びを求めた。
(2)接着シール材の凝集破壊強度と凝集破壊率
得られたシール接着エアバッグ基布を用い、図2(a)に示すような試験片を切り出した。試験片の長さは測定治具に取り付けやすいよう100mm以上とし、シール塗布部の長手方向長さは50mmとした。
凝集破壊強度の測定にはオートグラフを用い、得られた試験片を図2(b)のように対になっている基布部、すなわち、第1のパネル2および第2のパネル2´を広げる様に応力をかけ、接着シール材3を破壊させた際の応力を読み取った。このときの引張速度は200mm/分であった。また、このときの接着シール材3の塗布面積に対する凝集破壊した面積の割合から凝集破壊率を求めた。
得られたシール接着エアバッグ基布を用い、図2(a)に示すような試験片を切り出した。試験片の長さは測定治具に取り付けやすいよう100mm以上とし、シール塗布部の長手方向長さは50mmとした。
凝集破壊強度の測定にはオートグラフを用い、得られた試験片を図2(b)のように対になっている基布部、すなわち、第1のパネル2および第2のパネル2´を広げる様に応力をかけ、接着シール材3を破壊させた際の応力を読み取った。このときの引張速度は200mm/分であった。また、このときの接着シール材3の塗布面積に対する凝集破壊した面積の割合から凝集破壊率を求めた。
(3)気密性試験
得られたエアバッグのインフレーター挿入部から加圧空気を注入し、エアバッグ内圧が50kPaに到達した後に、加圧空気の注入を停止して、5分後に内圧が30kPaを維持している場合を○、5分後に内圧が30kPa未満になる場合を×とした。
得られたエアバッグのインフレーター挿入部から加圧空気を注入し、エアバッグ内圧が50kPaに到達した後に、加圧空気の注入を停止して、5分後に内圧が30kPaを維持している場合を○、5分後に内圧が30kPa未満になる場合を×とした。
(4)収納性(折り畳み厚さ)
得られたエアバッグの長さ方向に対して略平行に、エアバッグを蛇腹状に10回折り畳み、折り畳んだときのエアバッグの厚さを測定し、相対比較した。数値が小さい程収納性に優れる。
得られたエアバッグの長さ方向に対して略平行に、エアバッグを蛇腹状に10回折り畳み、折り畳んだときのエアバッグの厚さを測定し、相対比較した。数値が小さい程収納性に優れる。
(5)軽量化
得られたエアバッグの重量を測定しその結果を相対比較した。数値が小さい程、軽量でよい。
得られたエアバッグの重量を測定しその結果を相対比較した。数値が小さい程、軽量でよい。
[実施例1]
総繊度470dtex、72フィラメント、単糸強度8.5cN/dtexの丸断面ナイロン66糸を用いて、経糸密度、緯糸密度がともに46本/2.54cmになるように平織物(目付け180g/m2 カバーファクター1995)を製織後、アルカリ性浴中で精練し、次いで熱処理した。この織物の片面に、コート樹脂として、無溶剤型加熱硬化型シリコーンゴムコーティング材(主成分メチルビニルシリコーンゴム)を、塗布量が20g/m2(乾燥後重量)になるようにナイフコーターで塗布し、熱処理することにより、コーティング織物を得た。
総繊度470dtex、72フィラメント、単糸強度8.5cN/dtexの丸断面ナイロン66糸を用いて、経糸密度、緯糸密度がともに46本/2.54cmになるように平織物(目付け180g/m2 カバーファクター1995)を製織後、アルカリ性浴中で精練し、次いで熱処理した。この織物の片面に、コート樹脂として、無溶剤型加熱硬化型シリコーンゴムコーティング材(主成分メチルビニルシリコーンゴム)を、塗布量が20g/m2(乾燥後重量)になるようにナイフコーターで塗布し、熱処理することにより、コーティング織物を得た。
次いで、上記コーティング織物を、タテ500mm、ヨコ2000mmの図1の側部エアバッグの形に裁断し、2枚のパネルを切り出した。得られた2枚のパネルのそれぞれのシリコーンゴム塗布面の所定の位置に、接着シール材として、処方1に示す組成の二液付加反応シリコーンゴム組成物を、硬化後の寸法が幅10mm、厚み1mmとなるようにディスペンサーで塗布した。なお、接着シール材は、塗布幅中央部がパネルの端部から20mmになるように塗布した。
処方 1(二液混合後)
主剤(ジメチルビニルポリシロキサン) 100重量部
硬化剤(ジメチルハイドロジェンポリシロキサン) 143重量部
(主剤成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.64となる量)
触媒(白金微粉末) 43×10−4重量部
充填剤1(平均粒径25μmの石英) 57重量部
充填剤2(炭酸カルシウム粉末(BET比表面積18m2/g))57重量部
充填剤3(シリカ粉末(BET比表面積200m2/g)) 14重量部
処方 1(二液混合後)
主剤(ジメチルビニルポリシロキサン) 100重量部
硬化剤(ジメチルハイドロジェンポリシロキサン) 143重量部
(主剤成分中のアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.64となる量)
触媒(白金微粉末) 43×10−4重量部
充填剤1(平均粒径25μmの石英) 57重量部
充填剤2(炭酸カルシウム粉末(BET比表面積18m2/g))57重量部
充填剤3(シリカ粉末(BET比表面積200m2/g)) 14重量部
次いで、それぞれのシリコーンゴム塗布面が内側になるようにもう一方のパネルを重ね合わせ、プレス機で圧着した後、常温で1日間静置して硬化させ、シール接着エアバッグ基布を得た。
最後に、接着シール材による接合部の幅方向中央部を、1400dtexのナイロン66縫製糸により、本縫いミシンを用いて運針数3.5/cmの本縫いで縫製することにより、本発明のエアバッグを得た。
最後に、接着シール材による接合部の幅方向中央部を、1400dtexのナイロン66縫製糸により、本縫いミシンを用いて運針数3.5/cmの本縫いで縫製することにより、本発明のエアバッグを得た。
[実施例2]
処方1の充填剤1を、平均粒径15μmの石英に変更した以外は、実施例1と同様にして本発明のエアバッグを得た。
処方1の充填剤1を、平均粒径15μmの石英に変更した以外は、実施例1と同様にして本発明のエアバッグを得た。
[比較例1]
コート樹脂の塗布量を35g/m2にし、且つ、処方1の充填剤1を平均粒径10μmの石英に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエアバッグを得た。
コート樹脂の塗布量を35g/m2にし、且つ、処方1の充填剤1を平均粒径10μmの石英に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエアバッグを得た。
[比較例2]
コート樹脂の塗布量を25g/m2にしたこと以外は、比較例1と同様にしてエアバッグを得た。
コート樹脂の塗布量を25g/m2にしたこと以外は、比較例1と同様にしてエアバッグを得た。
[比較例3]
コート樹脂の塗布量が20g/m2にし、且つ処方1の充填剤を次のように調整したこと以外は、比較例1と同様にしてエアバッグを得た。
充填剤1(平均粒径25μmの石英) 38重量部
充填剤2(炭酸カルシウム粉末(BET比表面積18m2/g))57重量部
充填剤3(シリカ粉末(BET比表面積200m2/g)) 33重量部
コート樹脂の塗布量が20g/m2にし、且つ処方1の充填剤を次のように調整したこと以外は、比較例1と同様にしてエアバッグを得た。
充填剤1(平均粒径25μmの石英) 38重量部
充填剤2(炭酸カルシウム粉末(BET比表面積18m2/g))57重量部
充填剤3(シリカ粉末(BET比表面積200m2/g)) 33重量部
実施例および比較例で得られたシール接着エアバッグ基布およびエアバッグについて、評価した結果を表1に示す。
1 エアバッグ
2 第1のパネル
2´ 第2のパネル
3 接着シール材
6 接合部
8 縫製糸
9 環状接合部
10 車体取り付け用ボルト穴
11 切り欠き線
2 第1のパネル
2´ 第2のパネル
3 接着シール材
6 接合部
8 縫製糸
9 環状接合部
10 車体取り付け用ボルト穴
11 切り欠き線
Claims (5)
- 2枚のパネルの外周縁同士が接着シール材による接着および縫製糸による縫合により接合されてなるエアバッグであって、各パネルの少なくとも片面がコート樹脂で被覆されており、コート樹脂が被覆された面を相対させ、かつ、接着シール材を介して、2枚のパネルの外周縁同士が接合され、接着シール材の引張強度が25〜35N/mm2の範囲であり、接着シール材の凝集破壊強度(CFS)N/mm2と接着シール材の引張強度(TS)N/mm2との関係が
CFS > TS/5
であるエアバッグ。 - コート樹脂が、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、エステル樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のエアバッグ。
- 接着シール材が、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、エステル樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載のエアバッグ。
- コート樹脂の塗布量が、5〜30g/m2である請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ。
- 接着シール材の切断時伸びが、800%以上である請求項1〜4のいずれかに記載のエアバッグ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017145431A JP2019025995A (ja) | 2017-07-27 | 2017-07-27 | エアバッグ |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2017145431A JP2019025995A (ja) | 2017-07-27 | 2017-07-27 | エアバッグ |
Publications (1)
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ID=65475454
Family Applications (1)
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JP2017145431A Pending JP2019025995A (ja) | 2017-07-27 | 2017-07-27 | エアバッグ |
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-
2017
- 2017-07-27 JP JP2017145431A patent/JP2019025995A/ja active Pending
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