JP4989154B2 - 気体圧縮機 - Google Patents

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Description

本発明は気体圧縮機に関し、詳細には、ロータとサイドブロックとの間の潤滑の改良に関する。
従来より、空気調和システム(以下、空調システムという。)には、冷媒ガスなどの気体を圧縮して、空調システムに気体を循環させるための気体圧縮機(コンプレッサ)が用いられている。
ここで、一般的なコンプレッサの1つとして例えばベーンロータリ形式のコンプレッサが知られている。このベーンロータリ形式のコンプレッサは、ハウジングの内部に、圧縮機本体が収容された構成となっている。
圧縮機本体は、回転軸と一体的に回転する略円柱状のロータと、ロータの外方を取り囲むシリンダと、ロータに埋設されて、突出側の先端が、断面輪郭形状が略楕円形のシリンダの内周面に追従するように該ロータの外周面からの突出量が可変とされた板状のベーンと、ロータやベーンを、ロータの両端面側から覆う2つのサイドブロックとを備えている。
そして、ロータの回転方向について相前後する2つのベーン、シリンダの内周面、ロータの外周面および両サイドブロックの端面により、ロータの回転に伴ってその容積が変化する複数の圧縮室が画成されている。
また、ハウジングの内面と圧縮機本体の外面とにより、圧縮機本体を挟んで一方の側に、圧縮機本体に吸入される気体が通過する低圧雰囲気の吸入室が形成されているとともに、圧縮機本体を挟んで他方の側に、圧縮機本体から吐出された気体が通過する高圧雰囲気の吐出室が形成されている。
ここで、吐出室を画成するサイドブロックには、圧縮室で圧縮された高圧の気体を、吐出室に導くための吐出路が形成されているとともに、吐出された気体に混じる冷凍機油等の潤滑油を分離するためのサイクロンブロックが取り付けられており、吐出路からサイクロンブロックに導かれた高圧の気体がサイクロンブロックを通過する間に、この気体に混入していた冷凍機油が分離されて、気体は吐出室に吐出され、一方、分離された冷凍機油は、吐出室の下部に滴下して溜められる。
サイドブロックの内部には、吐出室の底部から回転軸を支持する軸受け部まで延びた油路が形成されており、吐出室の下部に溜められた冷凍機油は、この吐出室に吐出された圧縮気体の高圧を受けて、底部の開口から油路に流入し、出口の軸受部に到達する。
軸受部に到達した冷凍機油は、回転軸と軸受部との間の微小な隙間を通過して、ロータの端面に向い合うサイドブロックの端面まで到達する。
このとき、回転軸と軸受部との間の微小な隙間は、流体である冷凍機油に対して絞りとして作用するため、油路における高圧状態から絞りによる圧力損失を受けて、サイドブロックの端面においては、吐出室の圧力(高圧)よりも低く、かつ吸入室の圧力(低圧)よりも高い中間圧となる。
ロータの端面に向い合ったサイドブロックの上述した端面のうち、軸受部の中心回りの所定角度範囲に亘って、略扇形状の凹部(サライ溝)が形成されており、微小隙間の通過によって中間圧まで低下してサイドブロックの端面に到達した冷凍機油は、このサライ溝に流れ込んで、サライ溝を満たす。
一方、ベーン溝は、ロータの両端面まで貫通しているため、ロータの回転に伴って、ロータの端面において露呈しているベーン溝が、サイドブロックのサライ溝を通過している間だけ、ベーン溝とサライ溝とが連通して、ベーン溝に中間圧の冷凍機油が供給され、ベーンはこの供給された冷凍機油の中間圧を受けて、シリンダの内周面に向かって突出する。
なお、ベーン溝の空間のうちベーンが入り込んでいない空間部分およびサライ溝の空間部分は、ベーンを突出させる中間圧が作用する背圧空間である(特許文献1)。
特開2005−273550号公報
ところで、ベーンロータリ形式のコンプレッサは、潤滑油によって多くの部分を封止しており、この封止は、吸入室から気体とともに圧縮室に吸い込まれる潤滑油の他、上述した軸受けの微小隙間を通って圧縮輝本体内部に供給される潤滑油にも大きく依存している。
しかし、微小隙間を通る潤滑油量は、その微小隙間の隙間量やコンプレッサの運転条件に依存するため、潤滑油量の増減に応じて上述した封止の特性が大きく変動し、安定した封止を得ることが困難となって、圧縮室から気体の漏れが生じると、コンプレッサの体積効率が低下する虞がある。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、圧縮機本体内部の封止を安定化することができる気体圧縮機を提供することを目的とする。
本発明に係る気体圧縮機は、低圧状態の圧縮室に対応したロータの回転角度範囲の部分に対向するサイドブロックの部分のみに、高圧の潤滑油を供給する高圧油供給通路の開口を形成することで、高圧油供給通路の入口(高圧)、出口(低圧)間で、大きな圧力差を確保し、この圧力差によって、高圧油供給通路の出口から圧縮機本体内部に、安定して潤滑油を供給するものである。
すなわち、本発明に係る気体圧縮機は、回転軸と一体的に回転する略円柱状のロータと、前記ロータの外方を取り囲むシリンダと、前記ロータに埋設されて、突出側の先端が前記シリンダの内周面に追従するように該ロータの外周面からの突出量が可変とされた板状のベーンと、少なくとも前記ロータおよび前記ベーンを、該ロータの両端面側から覆う2つのサイドブロックとを備え、前記ロータの回転方向について相前後する2つの前記ベーン、前記シリンダ、前記ロータおよび前記両サイドブロックにより、前記ロータの回転に伴ってその容積が変化する圧縮室が画成され、前記サイドブロックの端面のうち、低圧状態にある前記圧縮室に対応した回転角度範囲の前記ロータの端面に対向する部分のみに、高圧の潤滑油を供給する高圧油供給通路が開口していることを特徴とする。
ここで、低圧状態にある圧縮室とは、例えば吸入行程にある圧縮室など、低圧の低圧室(吸入室等)に連通した状態の圧縮室などであり、低圧状態にある圧縮室の圧力よりも高い圧力の潤滑油としては、例えば高圧室である吐出室の圧力が作用した潤滑油などを適用することができる。この場合、高圧油供給通路の入口を、高圧室に開口しておけばよい。
そして、高圧油供給通路の入口(高圧)、出口(低圧)間で、大きな圧力差が生じるため、高圧室の潤滑油が、高圧油供給通路を通って圧縮機本体の内部に安定的に供給され、これにより、圧縮機本体内部の封止を安定化することができる。
本発明に係る気体圧縮機によれば、圧縮機本体内部の封止を安定化することができる。
以下、本発明の気体圧縮機に係る最良の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る気体圧縮機の一実施形態であるベーンロータリ式コンプレッサ100を示す縦断面図、図2は図1におけるA−A線に沿った断面を示す図である。
図示のコンプレッサ100は、例えば、冷却媒体の気化熱を利用して冷却を行なう空気調和システム(以下、単に空調システムという。)の一部として構成され、この空調システムの他の構成要素である凝縮器、膨張弁、蒸発器等(いずれも図示を省略する。)とともに、冷却媒体の循環経路上に設けられている。
そして、コンプレッサ100は、空調システムの蒸発器から取り入れた気体状の冷却媒体としての冷媒ガスGを圧縮し、この圧縮された冷媒ガスGを空調システムの凝縮器に供給する。凝縮器は、圧縮された冷媒ガスGを液化させ、高圧で液状の冷媒として膨張弁に送出する。
高圧で液状の冷媒は、膨張弁で低圧化され、蒸発器に送出される。低圧の液状冷媒は、蒸発器において周囲の空気から吸熱して気化し、この気化熱との熱交換により蒸発器周囲の空気を冷却する。
また、コンプレッサ100は、ケース11とフロントヘッド12とからなるハウジング10の内部に収容された圧縮機本体と、フロントヘッド12に取り付けられ、図示しない動力源からの駆動力を圧縮機本体に伝える伝達機構13とを備える。そして、伝達機構13は、フロントヘッド12に対して、ラジアルボールベアリング14により回転自在に支持されている。
ケース11は、一端開放の筒状体を呈し、フロントヘッド12は、このケース11の開放された部分を覆うように組み付けられている。また、フロントヘッド12には、蒸発器から低圧の冷媒ガスGが吸入される吸入ポート12aが形成され、この吸入ポート12aには、冷媒ガスGの逆流を防ぐ逆止弁12bが設けられている。一方、ケース11には、圧縮機本体で圧縮された高圧の冷媒ガスGを凝縮器に吐出する吐出ポート11aが形成されている。
ハウジング10内に収容された圧縮機本体は、伝達機構13によって軸回りに回転駆動される回転軸51と、この回転軸51と一体的に回転する円柱状のロータ50と、ロータ50の外周面の外方を取り囲む断面輪郭略楕円形状の内周面49aを有するとともに、両端が開放されたシリンダ40と、ロータ50の外方に向けて突出可能にロータ50に埋設され、その突出側の先端がシリンダ40の内周面49aに追従するように突出量が可変とされ、回転軸51回りに等角度間隔で配置された5枚の板状のベーン58と、シリンダ40の両側開放端面の外側からそれぞれ開放端面を覆うように固定されたフロントサイドブロック30およびリヤサイドブロック20とからなる。
そして、2つのサイドブロック20,30、ロータ50、シリンダ40、および回転軸51の回転方向(図2において時計回りの方向)に相前後する2つのベーン58,58によって画成された各圧縮室48の容積が、回転軸51の回転にしたがって増減を繰り返すことにより、各圧縮室48に吸入された冷媒ガスGを圧縮して吐出するように構成されている。
なお、ロータ50の両端面50a,50bからそれぞれ突出した回転軸51の部分のうち一方の部分は、フロントサイドブロック30の軸受部32に軸支されるとともに、フロントヘッド12を貫通して外方まで延び、この貫通部分がフロントヘッド12により軸支され、外方に延びた部分が伝達機構13に連結されている。同様に回転軸51の突出部分のうち他方の側は、リヤサイドブロック20の軸受部22により軸支されている。
そして、フロントヘッド12による回転軸51の支持と、両サイドブロック20,30の外周部がOリング等によりケース11,フロントヘッド12の内周面に保持されることとによって、圧縮機本体はハウジング10内の所定位置に保持されている。
また、圧縮機本体がケース11の内部に収容された状態で、リヤサイドブロック20とケース11とにより吐出室21(高圧室)が形成され、一方、フロントサイドブロック30とフロントヘッド12とにより吸入室34(低圧室)が形成され、吐出室21は吐出ポート11aに連通し、吸入室34は吸入ポート12aに連通している。
なお、吸入室34と吐出室21とは、前述したOリング等によって気密に隔絶されている。また、リヤサイドブロック20には、冷凍機油Rを冷媒ガスGから分離するためのサイクロンブロック60が取り付けられており、このサイクロンブロック60は吐出室21内に配置されている。
そして、リヤサイドブロック20とサイクロンブロック60との間には、後述する、短円柱状の軸背圧空間66が形成されている。
圧縮機本体の回転軸51は、リヤサイドブロック20の軸受部22とフロントサイドブロック30の軸受部32にそれぞれ回転自在に軸支され、また、回転軸51のうち、フロントサイドブロック30の軸受部32よりも外側部分には、リップシール15が配置されて、冷凍機油Rが、回転軸51とハウジング10との隙間からハウジング10の外部に漏れるのを阻止している。
吐出室21の下部には、このコンプレッサ100の摺動部等を潤滑、冷却、清浄するとともに、ベーン58をシリンダ40の内周面49aに向けて突出させて、その先端を内周面49aに当接させた状態に付勢するように、ベーン58に背圧を作用させる冷凍機油Rが溜められている。
すなわち、ロータ50には、図2に示すように、スリット状のベーン溝56が放射状に、かつロータ50の回転中心回りに等角度間隔で5つ形成され、これらのベーン溝56に、前述のベーン58が挿入され、各ベーン58は、ロータ50の回転によって生じる遠心力と、ベーン溝56およびベーン58の底面によって画成された背圧室59(背圧空間の一部)に加えられる冷凍機油Rの油圧(背圧)とにより、シリンダ40の内周面49aに向けて突出し、このベーン58の突出した先端がシリンダ40の内周面49aに当接した状態に付勢され、回転軸51の回転に伴って、この先端は内周面49aに追従する。
これにより、シリンダ40と、ロータ50と、回転軸51の回転方向について相前後する2つのベーン58,58と、フロントサイドブロック30と、リヤサイドブロック20とにより画成された各圧縮室48は、ロータ50の回転にしたがって容積の変化を繰り返す。
また、フロントサイドブロック30には、吸入室34と圧縮室48とを連通させるフロント側吸入口31が開口しており、吸入ポート12aから吸入室34に導入された冷媒ガスGは、このフロント側吸入口31を介して圧縮室48に吸入される。
一方、シリンダ40の外周の一部には凹部が形成され、この凹部は、両サイドブロック20,30の各内側端面とケース11の内周面とによって囲まれた吐出チャンバ45を形成している。
そして、この吐出チャンバ45が形成されて薄肉化されたシリンダ40のうち、冷媒ガスGの圧縮行程に対応した圧縮室48に臨む部分に、圧縮室48内の冷媒ガスGを圧縮室48の外部、すなわち吐出チャンバ45に吐出させる吐出口42が設けられているとともに、圧縮室48の内部圧力に応じて吐出口42を開閉するリードバルブ43が配設されている。
リードバルブ43は板ばね状であって、圧縮室48の冷媒ガスGから吐出口42を通じて作用する圧力(詳細には、この圧力と吐出チャンバ44の内部の圧力(さらに、リードバルブ43を吐出口42に付勢している場合には、その付勢力に応じた初期負荷圧力も加算した圧力)との差)に応じて吐出チャンバ45の側に撓むように弾性変形し、この弾性変形によって、閉止していた吐出口42を開放する。
また、このリードバルブ43が、過大な撓みにより破損したり、大きな撓みの持続によって永久変形が生じるのを防止するために、リードバルブ43の変形量を規制するバルブサポート44が、リードバルブ43に重ね合わされて、シリンダ40に共締め固定されている。
そして、圧縮室48から吐出口42、リードバルブ43を通って吐出チャンバ45に吐出された高圧の冷媒ガスGは、リヤサイドブロック20に形成された連通孔20a、およびリヤサイドブロック20に固定されたサイクロンブロック60のオイルセパレータ60aを経て、吐出室21に吐出される。
一方、サイクロンブロック60およびオイルセパレータ60aによって、冷媒ガスGから分離された冷凍機油Rは、吐出室21の底部に滴下し、前述したようにこの底部に溜められる。
さらに、このコンプレッサ100には、回転軸51と軸受部22,32との間の潤滑、ロータ50の各端面と各サイドブロック20,30の内側端面との間の潤滑等する目的と、ベーン58をシリンダ40の内周面49aに付勢すべく背圧空間(背圧室59、後述するサライ溝25および軸背圧空間66)に油圧(背圧)を供給等する目的とにより、吐出室21の下部に貯留した冷凍機油Rを各部位に導く構造を備えている。
すなわち、リヤサイドブロック20に、軸受部22に至る油路23が形成され、また、リヤサイドブロック20の内側端面26(ロータ50の端面50aに向いた面)には、軸受部22における油路23の開口から、軸受部22と回転軸51との間の微小隙間(絞り)を通って、ロータ50の背圧室59に連通する凹部であるサライ溝25が形成されている。
また、軸受部22まで延びた油路23は、軸受部22と回転軸51との間の微小隙間(絞り)を介して、リヤサイドブロック20とサイクロンブロック60との間に形成された空間である軸背圧空間66にも連通し、この軸背圧空間66は背圧連通路27(図2参照)を介してサライ溝25に、圧力損失なく連通している。
これにより、背圧室59、サライ溝25、背圧連通路27および軸背圧空間66は、略同一の圧力Pvとなり、ベーン58の背圧空間を構成している。
この背圧空間に作用する圧力Pvは、具体的には、低圧室である吸入室34の圧力Psよりも高い圧力であって、軸受部22と回転軸51との間の微小隙間(絞り)を通過した分だけ、高圧室である吐出室21の圧力Pdよりも低い中間圧(Ps<Pv<Pd)となる。
なお、軸背圧空間66に作用する圧力Pvは、この軸背圧空間66に臨んだ回転軸51の端面にも作用し、回転軸51を軸方向に沿って伝達機構13側に向けて押圧している。
サライ溝25は、軸受部22の中心回りの所定角度範囲に亘って、略扇形状の輪郭(図2において破線で示す)を有する凹部であり、上述した微小隙間を通過して中間圧Pvまで低下した冷凍機油Rが溜められる。
そして、ロータ50の回転に伴って、ロータ50の端面50aに露呈しているベーン溝56の背圧室59がリヤサイドブロック20のサライ溝25を通過している間だけ、ベーン溝56の背圧空間59とサライ溝25とが連通して、ベーン溝56の背圧空間59にサライ溝25の中間圧Pvの冷凍機油Rが供給され、ベーン58はこの供給された冷凍機油Rの中間圧Pvを受けて、シリンダ40の内周面49aに向かって突出する。
また、シリンダ40の底部側には、リヤサイドブロック20の油路23に接続する貫通孔46が設けられ、フロントサイドブロック30に、この貫通孔46のフロントサイドブロック30側の開口と軸受部32とを連通させる油路33が形成され、冷凍機油Rは、軸受部32と回転軸51との間の微小隙間を通過して中間圧Pvまで降圧され、フロントサイドブロック30の内側端面に形成された凹部であるサライ溝35等に導かれる。
なお、フロントサイドブロック30のサライ溝35も、リヤサイドブロック20のサライ溝25と同様、ロータ50の背圧室59に連通している。
サライ溝25,35に供給された冷凍機油Rは、ロータ50のベーン溝58の背圧室59が連通したときに、この背圧室59にベーン58の突出力を作用させるが、背圧室59が連通しない角度範囲も含めて、ロータ50の端面50a,50bと各サイドブロック20,30の端面26,36との間などにそれぞれ浸透して、これらの端面50a,26間、端面50b,36間や、サイドブロック20,30の端面26,36とベーン58の側面との間、ベーン58の先端とシリンダ40の内周面49aとの間など、摺動部分における摺動摩擦力を低減させている。
そして、各摺動部分に浸透した冷凍機油Rは、圧縮室48内の冷媒ガスGに混入し、冷媒ガスGとともに圧縮室48から吐出され、サイクロンブロック60を介して吐出室21に吐出される。
さらに、本実施形態のコンプレッサ100のリヤサイドブロック20およびフロントサイドブロック30には、それぞれ高圧油供給通路28,38が形成されている。
この高圧油供給通路28は、圧力損失無くリヤサイドブロック20の油路23に連通し、高圧油供給通路38は、圧力損失無くフロントサイドブロック30の油路33に連通している。
この結果、高圧油供給通路28,38により供給される冷凍機油Rの圧力は、絞りを介して供給されたサライ溝25,35における冷凍機油Rの中間圧Pvとは異なり、油路23,33内の冷凍機油Rの圧力のままである高圧Pdとなる。
そして、この高圧油供給通路28は、リヤサイドブロック20の端面26のうち、低圧状態にある圧縮室48に対応した回転角度範囲S1のロータ50の端面50aに対向する部分に開口している。
ここで、低圧状態にある圧縮室48に対応した回転角度範囲S1は、ロータ50の回転方向に相前後する2つのベーン58,58で囲まれた圧縮室48が、吸入室34に通じるフロント側吸入口31(図2参照)に連通している期間中を、圧縮室48を画成する2つのベーン58,58のうち回転方向の前側のベーン58の回転角度位置によって規定したものである。
同様に、高圧油供給通路38は、フロントサイドブロック30の端面36のうち、低圧状態にある圧縮室48に対応した回転角度範囲(回転角度範囲S1と一致)のロータ50の端面50bに対向する部分に開口している。
以上のように構成された本実施形態に係るコンプレッサ100によれば、高圧油供給通路28,38の入口(高圧Pdの油路23,33)、出口(低圧Psの圧縮室48)間で、大きな圧力差ΔP(=Pd−Ps)が生じるため、冷凍機油Rが高圧油供給通路28,38を通って圧縮機本体の内部に安定的に供給され、これにより、圧縮機本体の内部への冷凍機油Rの供給を回転軸51と軸受部22,32との間の隙間の大きさに依存していた従来の気体圧縮機とは異なり、回転軸51と軸受部22,32との間の隙間の大きさの管理を緩和することができるとともに、冷凍機油Rの安定した供給を確保して、圧縮機本体内部の封止の安定化を図ることができる。
また、高圧油供給通路28,38は、図2に示すように、サライ溝25,35(ベーン背圧空間)が形成された部分とは異なる部分に開口している。
これにより、中間圧Pvの冷凍機油Rが供給されるべきサライ溝25,35に、中間圧Pvを超える高圧Pdの冷凍機油Rが供給されるのを防止することができる。つまり、サライ溝25,35に高圧Pdの冷凍機油Rが供給された場合には、シリンダ40の内周面49aに対するベーン58の先端の当接圧力が過度に高くなり、これによって、圧縮機本体の運転に要する消費動力が過大となるが、サライ溝25,35に高圧Pdの冷凍機油Rが供給されることが防止されるため、そのような過大な動力の消費を回避することができる。
さらに、高圧油供給通路28,38は、サライ溝25,35と比較して、ロータ50の外周寄りに開口している(図1)。
このように、高圧油供給通路28,38が、サライ溝25,35よりもロータ50の外周側において開口しているため、サライ溝25,35は、高圧油供給通路28,38の開口から吸入行程の圧縮室48(ロータ50の外周側)に冷凍機油Rが流れる経路上から外れた位置となり、高圧油供給通路28,38の開口から流れ出た高圧Pdの冷凍機油Rがサライ溝25,35に流入するのを、さらに確実に回避することができる。
本発明に係る気体圧縮機の一実施形態であるベーンロータリ式コンプレッサを示す縦断面図である。 図1におけるA−A線に沿った断面を示す図である。
符号の説明
20,30 サイドブロック
21 吐出室
26,36 サイクロンブロックの端面
28,38 高圧油供給通路
48 圧縮室
50 ロータ
50a,50b ロータの端面
100 コンプレッサ(気体圧縮機)

Claims (3)

  1. 回転軸と一体的に回転する略円柱状のロータと、前記ロータの外方を取り囲むシリンダと、前記ロータに埋設されて、突出側の先端が前記シリンダの内周面に追従するように該ロータの外周面からの突出量が可変とされた板状のベーンと、少なくとも前記ロータおよび前記ベーンを、該ロータの両端面側から覆う2つのサイドブロックとを備え、
    前記ロータの回転方向について相前後する2つの前記ベーン、前記シリンダ、前記ロータおよび前記両サイドブロックにより、前記ロータの回転に伴ってその容積が変化する圧縮室が画成され、
    前記サイドブロックの端面のうち、低圧状態にある前記圧縮室に対応した回転角度範囲の前記ロータの端面に対向する部分のみに、高圧の潤滑油を供給する高圧油供給通路が開口していることを特徴とする気体圧縮機。
  2. 前記ベーンが埋設された前記ロータのベーン溝に連通して、前記ベーンの前記突出側とは反対側である埋設側の端部に該ベーンの突出用圧力を供給するように、該ロータの端面に対向した前記サイドブロックに形成されたベーン背圧空間とは異なる部分に、前記高圧油供給通路が開口していることを特徴とする請求項1に記載の気体圧縮機。
  3. 前記高圧油供給通路は、前記ベーン背圧空間と比較して、前記ロータの外周寄りに開口していることを特徴とする請求項2に記載の気体圧縮機。
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